一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
57回大会(2005年)
選択された号の論文の296件中201~250を表示しています
  • 望月 美也子, 重村 隼人, 長谷川 昇
    セッションID: 2Da-8
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
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    【目的】炎症性腸疾患は、腸粘膜に慢性の炎症または潰瘍を引き起こす難治性特定疾患の総称であり、過剰な過酸化物の生成により発症することが明らかとなっている。我々は、既に、脂肪細胞において、緑茶がSOD活性を増加させ、過酸化物の生成を抑制することを明らかにしている(第54回日本家政学会、東京、2003)。そこで、本研究は、2,4,6-trinitrobenzene sulfonic acid(TNBS)によって誘発される、炎症性腸疾患動物モデルに対する緑茶カテキン(-)-epigallocatechin-3-gallate (EGCG)の保護効果を確かめるために行われた。【方法】雄SDラット(180±20g)を用い、EGCG(30mg/kg)を10日間連続的に経口投与した。炎症性腸疾患は、TNBS50%エタノール水溶液(120mg/Kg)を直腸内投与することにより誘発させた。12時間後、大腸を採取し、炎症部位のダメージスコア、好中球浸潤の指標であるmyeloperoxidase(MPO)活性、superoxide dismutase(SOD)活性を測定した。【結果・考察】本研究の結果、TNBSによる潰瘍、出血を伴う炎症性大腸炎の症状と、MPO活性の有意な増加が見られた。この際、あらかじめ緑茶カテキンの主成分であるEGCGを投与しておくと、粘膜肥厚と出血が抑えられ、白血球の浸潤も抑制された。この原因として、EGCGがSOD活性を有意に増加させたため、ラジカルが補足され、腸粘膜が過酸化物による損傷から保護されたことによると考えられる。以上の結果を総合すると、EGCGは炎症性腸疾患に有効であることが明らかとなった。
  • 藤田 修三, 佐藤 伸, 嵯峨井 勝
    セッションID: 2Da-9
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
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    【目的】「健康日本21」の目標値達成には、住民の意識改革に伴う行動変容が大切である。我々は県内市町村と連携した健康寿命延伸の介入調査を昨年よりすすめており、健康指標と食生活改善健康教室との関連性を検討している。本発表では健康指標及び調査時期との両面から健康教室の食生活改善についての影響を報告する。【方法】対象者は青森県内3カ所の住民60名で、介入群と非介入群に無作為に二分して調査を実施した。調査期間は5ヶ月間とし、時期は1_から_6月、5_から_10月とずらして2回実施した。健康指標として身体測定値、血液検査値、動脈硬化度、血液サラサラ度などとした。健康教室はグループ学習と個人指導を併用したかたちで4回実施し、食生活に対する改善効果を検討した。【結果】1_から_6月に調査を行った場合は、健康指標となる体重、総コレステロール、酸化LDLコレステロール、血糖、動脈硬化度、血液サラサラ度などに改善効果が認められたが、5_から_10月に行った場合は、傾向が見られたものの季節による食生活の影響が健康指標に大きく反映していた。またグループ学習と個人指導を併用した健康教室は、住民の意識および食生活のとらえ方に変化を与えた。
  • -特にスーパーマーケットに買い物に来る母親を対象として-
    越智 亜希, 石永 正隆
    セッションID: 2Da-10
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
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    目的:小児期は食行動の形成期である。その為、その時期に適正な食行動の基礎的習慣を獲得することが、その後の生活習慣病予防、健康の保持増進の点からも重要であるということが指摘されている。しかし、子育て中の母親にとって、栄養教育を受ける時間は十分とはいえない。そのような現状で、身近なスーパーマーケットを新たな栄養教育の場として考えることは現実的である。そこで、スーパーマーケットにおける食・栄養教育を将来的な目標とするために、利用する母親を対象に、母親の食生活状況及び意識調査と子どもの食生活、身体状況の調査を実施した。方法:2003年8月_から_9月に広島市内のスーパーマーケットでアンケートを配布し、郵送回収を行ない、単純集計とクロス集計により解析した。(回収率46.3%、有効回答数566)結果:・ 健康情報、料理栄養情報ともに入手源はテレビや本が主であった。・ 母(祖母)から娘(母親)間の情報について母親達はその他の媒体と比較して信頼している。・ 健康日本21の認知については、知っている(1.4%)、聞いたことはある(5.1%)、知らない(93.5%)。考察:最近の情報化技術の発展で母親も様々な情報入手先を手に入れてはいるが、やはり身近なところから情報を得ていることが見受けられた。そのことから見ても、身近かつ利用頻度も高いことを含めても、スーパーマーケットは栄養教育の一つの場になりうる可能性があると考えられた。また、健康日本21について啓発活動を活発にしている反面、非常に低い認知度にとどまった。食・栄養教育は継続しなければならない、そこで、スーパーマーケットでの情報提供は容易に続けられる啓発活動のひとつとなるのではないかと考えられる。
  • 濱西 知子, 平尾 和子, 高橋 節子
    セッションID: 1Ea-1
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
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    【目的】 米は日本人の主食として親しまれ,食品素材としても広く用いられている.米粉は小麦アレルギー疾患用の食材として注目され,小麦粉の代替として利用されている.食パンにおいては米粉を強力粉と置換し製パンする方法が知られている.本研究では炊飯米を強力粉と置換し,食パンの物性ならびに食味特性に及ぼす影響を検討した.
    【方法】 試料は強力粉(日清製粉(株)),米(栃木県産コシヒカリ)および米粉(群馬製粉(株))を用いた.米は加水量1.5倍とし炊飯器を用いて炊飯し,冷凍保存したものを電子レンジにて解凍し用いた.食パンの調製は米飯または米粉を強力粉の0(対照),10,20および30%置換し,他の材料と合わせ,家庭用製パン機を用いて行った.なお,米飯添加食パンは米飯の水分含量を差し引いて加水量とした.測定はファリノグラフィーによる生地の混捏特性,膨化倍率,水分含量ならびに改良型テンシプレッサーによる物性について行った.官能評価は評点法により本学学生ならびに調理学研究室員約20名をパネルとして行った.
    【結果】 1)生地の混捏特性から,米飯置換食パンは生地形成時間が長く,置換率が増すに従い生地は硬くなり,弱化度は増した.米粉置換食パンは置換率が増すに従い生地は軟らかくなった.2)膨化倍率は米飯30%置換食パンでは対照の約15%増加し,米粉30%置換食パンでは98%の値であった.3)物性測定から,米飯置換食パンは,置換率が増すに従い硬さは減少した.一方,米粉置換食パンでは,置換率が増すに従い硬さは大となった.4)対照および米飯10,20,30%置換食パンの官能評価では,米飯20%および30%置換食パンが色,硬さ,弾力,しっとり感および総合評価の項目において高い嗜好性を示した.
  • 堀 光代, 阿久澤 さゆり, 下山田 真, 吉田 一昭, 長野 宏子
    セッションID: 1Ea-2
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
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    【目的】国内産・県内産小麦の生産量が年々増加している現状である。各地で生産から消費までの取り組みについて行われているが、今回は、製粉工程が異なる岐阜県内産小麦について製パン性を比較検討することを目的とした。【方法】2003年に岐阜県で生産された小麦「中国152号」と「タマイズミ(関東123号)」の2種類について製粉工程の違いから(細)と(粗)に分類した計4種類と、対照として外国産小麦1CW(カナダ産)を用いた。パンの材料配合は、小麦粉に対し、砂糖(6.8%)食塩(2.0%)酵母(1.12%)水(68.0%)とした。小麦粉は粒度分布と色差を測定し、ドウはファーモグラフによるガス発生量の測定を行った。ホームベーカリーにてパンを焼成後、質量・体積・色差等の測定とあわせてパンの品質評価と官能検査を行った。【結果】(1)小麦粉の粒度分布は(細)と(粗)では差が認められ、色差も感知できる程度の差が見られた。(2)ガス発生量は、県内産小麦粉は対照である1CWと異なった結果を示し、ガス保持力等に差が見られた。(3)パンの比容積は1CWが高く、県内産小麦粉両品種の(細)と(粗)ではいずれも(粗)ほうが低い比容積であった。色差の測定結果は、小麦粉の測定値より製パン時の色差に顕著な差が見られた。パンの品質評価では、(粗)が(細)より低い評価であった。両品種の(細)における比較は、品質評価では外観は1CWに劣る評価であったが、味・香りは1CWに近い評価であり、官能検査の結果もほぼ一致していた。
  • 小川 宣子, 山中 なつみ, 伊藤 敬恵
    セッションID: 1Ea-3
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
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    目的:卵白を麺作製材料として使用することによる麺に及ぼす影響を物性から検討し、その要因について表面構造およびたんぱく質の結合状態から調べることを目的とした。
    方法:卵白を添加していない麺と水分含量を同じに調製した濃厚卵白を添加した麺についてクリープメータを用い、硬さは破断応力、弾力は瞬間弾性率(E0)、粘性は付着性、定常粘性率(ηN)から調べた。また、麺の構造は走査電子顕微鏡により観察を行った。たんぱく質の結合状態は、ゆでる前の麺(ドウ)をホモジナイズし、この上澄み液中の水溶性たんぱく質を試料とし、ポリアクリルアミド電気泳動法(pH9.0トリスホウ酸電極用緩衝液、30mA定電流で泳動後、CBBR染色)およびDTNP溶液によるSH基量から検討した。
    結果: 卵白を麺に使用することで破断応力、E0、ηN、付着性が大きくなった。卵白を添加した時のドウの構造は添加しなかった場合のドウに比べ網目が太くなっていることが確認できた。また、卵白を添加したドウは、無添加の場合に存在した泳動帯の一部がみられず、SH基量が高かった。これより、卵白を添加することで、SH基量が増えSS結合が形成されることでドウの網目構造が強固になり、さらにでんぷんやたんぱく質が絡みやすくなり、フリーの水溶性たんぱく質が減少したことが麺の物性に影響を及ぼしたと推定した。
  • 香西 みどり, 高橋 恵子, 杉山 宏, 椿 和文, 石川 京子, 畑江 敬子
    セッションID: 1Ea-4
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
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    [目的] 大麦β-グルカンはグルコースが(1→3)及び (1→4)結合した可溶性多糖類であり、血中コレステロール値の低下や免疫増強作用があることが報告されている。本研究では大麦β-グルカンの調理への応用として油脂との組み合わせに着目し、市販の乳化剤との比較においてその乳化特性を調べ、さらに添加材料の影響、ゲル化特性についても検討を行った。
    [方法] 試料は大麦β-グルカン(旭電化工業)、ソルビタン脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステル(理研ビタミン)、ペンタグリセリンステアリン酸エステル及び酵素分解レシチン(太陽化学)を用いた。各試料(0-0.25g)に食用油10ml、水10mlを加え6000rpmでホモジナイズして乳化液を調製した。目盛付試験管に移し、_丸1_20℃で静置し、一定時間ごとに乳化層液量を測定して全液量に対する割り合を乳化力、_丸2_80℃30分間加熱後水冷し、乳化層液量を測定し全液量に対する割り合を乳化安定性として測定した。また水相を4%酢酸10ml、NaCl2gを溶解した水10mlとして同様に乳化液を調製し、乳化力を測定した。水・油・β-グルカン混合物の貯蔵弾性率(G’)をレオログラフゾルにより測定した。
    [結果] 1.25%大麦β-グルカンとソルビタン脂肪酸エステルは48h後の乳化力がほぼ100%と他より高く、低濃度添加では後者の方が乳化安定性と共に値が高かった。1%大麦β-グルカン添加エマルションでは酢酸により乳化力が増加し、NaClにより減少した。水・油・β-グルカン混合物のG’の値から油があるとゲル化し易いが水と油が半々のとき最もゲル化し易く、また20℃の方が5℃より水と油の比によらずゲル化し易いことが示された。大麦β-グルカンの乳化及びゲル化特性が他の乳化剤やゲル化剤と異なることが示唆された。
  • 矢内 絵里, 平尾 和子, 高橋 節子
    セッションID: 1Ea-5
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
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    【目的】 日常食としての利用が少ないどんぐり澱粉は,韓国ではムッあるいはムクと呼ばれるゲル状食品として緑豆澱粉やそば粉と同様に利用されている.前報においてはどんぐり澱粉の一般成分ならびに調理への利用として餅を取り上げ,白玉粉に加えた場合の物性および官能評価について報告した.本報告ではどんぐり澱粉の理化学的性質,各種添加物の影響ならびにゲル状食品への利用について検討した.
    【方法】 試料は韓国産どんぐり澱粉を蒸留水で数回精製後乾燥し200メッシュを通して用い,とうもろこしおよび馬鈴薯澱粉と比較した.測定は電流滴定法によるアミロース含量,X線回折,透光度,示差走査熱量計(DSC)による熱的性質,膨潤力・溶解度,加熱過程における粘度変化について行い,ゲルの物性はテンシプレッサーにより求め低温保存安定性についても検討した.添加物は糖,寒天および牛乳について行った.
    【結果】 1)どんぐり澱粉のアミロース含量は約24%でX線回折図形はA形を示し,90℃における膨潤力は20であり溶解度は18%と低く,これらはとうもろこし澱粉に近似の値であった.2)どんぐり澱粉の透光度は95℃においても13.8%と低い値を示した.3)DSCの結果から,どんぐり澱粉は糊化開始温度が54.3℃と試料中最も低く,糊化ピーク温度は71.9℃,糊化終了温度は84.1℃と高く,糊化に要する温度範囲は3種の澱粉中最も広く糊化しにくい性質を示した.吸熱エネルギー量は8.9J/gと最も小さい値であった.4)ゲルの物性から,どんぐり澱粉に寒天を0.2-0.6%添加した場合0.6%添加において有意に硬さの増加が認められた.
  • 河原崎 志保乃, 貝沼 やす子
    セッションID: 1Ea-6
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
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    目的 粥は咀嚼・嚥下機能の低下した高齢者の主食として重要になってきており、家庭等においても日常的に粥を調製する機会が増えてきている。本研究では、粥調製における簡便化の方策として粥の冷凍保存を試み、保存温度、保存形態を変えて検討し、最良の保存条件を明らかにすることを目的とした。方法 冷凍保存粥は、粥メーカー((株)象印社製)を用い、8.5分粥相当に炊きあげた粥を直ちに秤量、成形し、冷凍保存した。保存条件は温度については-20℃または-40℃、保存形態についてはシート状または塊、重量は100gまたは200gであり、これらを組み合わせ、計8種類の保存条件を設定した。シート状は、ジッパー付の冷凍保存用袋を用い、粥をシート状に薄くのばしたものであり、塊は、冷凍保存用容器に粥を入れたものである。これらを実験直前に電子レンジで解凍したもの(60℃以上)を試料とし、破断強度測定、テクスチャー測定、粥飯粒の形状観察、官能検査などを行った。結果 テクスチャー測定では殆どの冷凍保存粥が炊きたての粥と比べて、かたさ応力、付着性が大きくなっていた。この変化の程度には冷凍保存時の最大氷結晶生成帯通過時間が関係していた。粥飯粒の形状観察では-20℃・塊の粥飯粒の表面が崩れている様子が観察され、_-_20℃・塊・200gの粥には崩れた粥飯粒片が多く見られた。保存条件別では、-20℃より-40℃、塊よりシート状、200gより100gの方が炊きたての粥に近い性状であった。官能検査では多くの冷凍保存粥において粒の形が残っていず、粘りが強く、さらさら感がないと評価されたが、-40℃・シート状・100gは炊きたての粥に最も近い性状であった。
  • 山田 千佳子, 和泉 秀彦, 平野 順子, 松田 幹
    セッションID: 1Ea-7
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
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    【目的】これまでに我々は米の主要アレルゲンを単離・精製し、その構造と性質を明らかにしてきた。さらに、米の低アレルゲン化についても酵素処理など様々な手法により検討されている。また、米を一定条件下で浸漬すると可溶性タンパク質が溶出することが明らかとなっており、アレルゲンにおいても浸漬による溶出が考えられる。そこで本研究では、米の浸漬条件を変化させて可溶性タンパク質、特にアレルゲンの溶出量を調べることで、浸漬による低アレルゲン化を目的とした。【方法】白米を0、0.1、0.5MのNaCl溶液に浸漬させ4℃、30℃、50℃で一晩置いた。米から浸漬溶液中に溶出したタンパク質量をLowry法で、タンパク質組成をSDS-PAGEにより解析した。さらに、主要アレルゲンに対するモノクローナル抗体を用いたイムノブロットを行い、浸漬条件によるアレルゲン溶出量の変化を調べた。また米種子中に残存しているタンパク質についても浸漬後、米種子を回収、洗浄し凍結乾燥したものを粉砕後、PBSで可溶性タンパク質を抽出し、溶出タンパク質と同様に解析した。【結果】Lowry法の結果から、塩濃度が上昇するにつれて浸漬による可溶性タンパク質の溶出量は増加した。また温度上昇にともない可溶性タンパク質の溶出量に顕著な増加がみられた。さらにSDS-PAGEおよびイムノブロットの結果からアレルゲンにおいても塩濃度、温度依存的に溶出量が増加しており、50℃、0.5MのNaCl溶液に浸漬した場合に最も多量のアレルゲンが溶出された。以上の結果から、炊飯前の浸漬による低アレルゲン化が示唆された。
  • 平島 円, 高橋 亮, 西成 勝好
    セッションID: 1Ea-8
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
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    【目的】離水は高分子が形成するゲルや固体粒子溶液の凝集により起こる。澱粉糊液の場合,加熱時に澱粉粒子から溶出したアミロースやアミロペクチン鎖が冷却時に再配列するため離水が起こる。これは澱粉の老化として知られているが,澱粉製品には一般的に好ましい現象ではない。本研究では,澱粉の中でも離水の起こりやすいコーンスターチを用いて,代表的な調味料のショ糖と食塩が澱粉の離水に対して抑制効果を持つか検討した。
    【方法】3.0 wt%の澱粉にショ糖(0-50 wt%)または食塩(0-25 wt%)を添加した分散液を加熱・冷却後,1-45日間5℃で保存したものを試料とした。調味料を添加していない澱粉と水のみで調製した試料をコントロールとした。離水測定には遠心分離による方法を用い,上澄み液の重量を全試料重量で除して,離水率を求めた。
    【結果】ショ糖を添加した試料において,14日以内の短期保存後では10-20wt%ショ糖を添加した試料では澱粉粒子の膨潤が促進されるため,離水率はコントロールよりも小さくなった。高濃度の食塩(5wt%以上)を添加した試料では,全保存期間を通して,離水率は大きく減少した。25wt%の食塩を添加した試料では離水はほとんど起こらなかった。これは溶出したアミロースやアミロペクチン鎖の数が多いために,新たな網目構造を多く形成し,その中に水を取り込んだためと考えられる。
  • -鰹だし・混合だしを用いて-
    藤川 奈穂, 堀木 梨衣, 井上 直美, 小橋 好美, 真部 真里子
    セッションID: 1Ea-9
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
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    緒言 日本では、従来より食塩の過剰摂取による生活習慣病罹患者が多く、減塩の必要性が唱えられている。しかし、塩味強度は、食品のおいしさを決定する重要因子であるため、嗜好形成後の減塩は難しい。嗜好を満足させる減塩調理の方法の1つに、うま味物質のMSGの効果をだしのうま味を強く効かせる方法があるが、これはうと考えられている。そこで、本研究では、だしに含まれるうま味以外の風味が減塩効果のおよぼす影響について検討した。
    方法 うま味強度をそろえた鰹だし・混合だし・MSG溶液の塩分濃度を0.62_から_1.00%の5段階に調整し、0.80% NaCl溶液と組み合わせ、被験者(20歳代前半の本学在学生および職員)23名に、2個の試料間で塩味を強く感じる試料を選択してもらった。また、だしのにおいをGC-O分析し、各だしのにおいの特徴を検討した。
    結果 官能評価より得られたデータをプロビット法にて解析した結果、鰹だし・混合だしともにMSG単独溶液と比較して、塩分濃度0.80%以下で高い減塩効果がみとめられた。このだしの減塩効果には、だしのにおいやうま味以外の呈味物質が影響していると考えられたので、だしのにおいの有無が食塩水の塩味強度の認識に及ぼす影響を検討した。その結果、鰹だしではにおいだけでも減塩効果が認められた。
  • 長尾 慶子, 喜多 記子, 天野 里香, 森田 真由美, 香西 みどり, 畑江 敬子
    セッションID: 1Ea-10
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
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    目的“包み焼き”は肉や魚などの食材を和紙や塩などの包材で包んで焼く調理法であり、日本の伝統的な“塩釜焼き”や、欧米料理の“パイ包み焼き”などがある。中の食材は旨味や香りが保持され、包材の違いで外観や嗜好性の異なる製品になる。本研究ではこれら包材に焦点をあて、各伝熱係数の算出ならびに包材内部一次元方向の内部温度の追跡と遅延時間定数1)の算出をし、包み焼きに用いる包材の種類による加熱特性について検討した。
    方法包材は、小麦粉ドウ、パイ生地、マッシュポテト、味噌釜、塩釜とした。それらの熱伝導率(λ)、熱容量(c)および密度(ρ)を測定し熱拡散率(λ/cρ)を算出した。さらに加熱用金属容器に包材を詰め、試料底部を160℃で加熱した際の内部一次元方向の温度変化と、試料内部10mm点が80℃に到達後に金属容器を熱源からはずして室温(24℃)に放冷した際の温度降下状況を追跡した。得られた加熱・冷却曲線よりそれぞれの遅延時間定数(τx)を算出し、包材の種類による加熱速度および余熱効果の違いを比較検討した。
    結果熱伝導率では塩釜が最も大で、次いでマッシュポテト、小麦粉ドウ、味噌釜、パイ生地の順に低下した。熱拡散率は塩釜が最も大で熱源からの伝熱が速いことが確認された。その他の包材間では大差がみられなかった。包材の加熱速度の指標となる遅延時間定数(τx)は各包材間で熱伝導率と同様の傾向がみられた。冷却曲線より求めた遅延時間定数から余熱効果を検討したところ、小麦粉ドウ、味噌釜の保温効果が高く、塩釜は最も低かった。塩釜については食塩の結晶と気泡卵白の混合・分散状態が伝熱に影響しているのではないかと考えられる。1) K. Nagao et al., J. Home Econ. Jpn., 52, 241(2001)
  • 宮下 朋子, 長尾 慶子
    セッションID: 1Ea-11
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
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    目的ババロア調製時の重要な調理要領の1つに、生クリームの起泡程度やゼラチンゾルの混合温度が上げられる。しかし、一般の調理では、その見極めは目視や手に伝わる粘り、硬さなどの主観的感覚に頼る事が多く、明確な基準は見当たらない。本研究では、ゼラチンゾルに加える起泡生クリームの性状およびゾルの温度に焦点を当て、ゼラチンゾルと起泡生クリームを用いたモデル実験からババロアの調理要領について検討した。
    方法アルカリ処理高温抽出ゼラチン2gを10gの蒸留水で膨潤した後、50℃で溶解し、40_から_14℃までの8水準とした各々のゼラチンゾル中に、一定時間攪拌した起泡クリーム(中沢製純生クリーム)10gを120rpm/secで15秒間攪拌しながら加え、100gに調整した。混合後、直ちに5℃の冷水で冷却し、各々のモデルババロア試料を得た。なお、起泡生クリームの調製は、5℃に設定した生クリームを定速で攪拌し、各々を6分立て、8分立て及び全立てとした。得られた各試料の比重及び力学測定、顕微鏡観察を行った。
    結果モデルババロア試料は、起泡生クリームへの混合温度が高いほど、比重の小さい上部起泡クリーム混合ゲル層と下層のゼラチンゲル層に分離しやすく、両層の比重差が大となった。また上層部体積は、攪拌時間の長い起泡生クリームほど大きかった。いずれのゲルも、混合温度が18℃、16℃の時、最も均一に分散した。また起泡生クリームは、6分立てが最もゼラチンゾル中に分散しやすかった。この事は、ゲルの比重測定でも同様の結果が観察された。以上より、ゼラチンゾルに起泡生クリームを均一に分散させるには、ゾル温度18_から_16℃で、攪拌程度が6分立ての生クリームを混合すると良いと考えられる。
  • 山田 朋美, 貝沼 やす子
    セッションID: 1Ea-12
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
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    目的 機能性食品としても注目を集めている緑茶は、嗜好飲料としてだけではなく、食べる茶として様々な食品・料理にも活用されており、その一つに茶飯がある。茶は高い温度での浸出や、長時間の加熱によりその緑色は失われ、褐色化するため、炊きあがった茶飯に緑色を期待するのは難しい。本研究では水だし茶を使用し、緑茶の色を生かした茶飯を調理することを目的に、茶浸出液の調製方法を検討した。方法 茶はパックに入れた水だし用の茶葉と茶葉をミルサーで粉砕した粉末茶を使用した。浸出液は水(水出し、湯出し)と竹炭水、茶使用量は2.2%と1.1%とし、0、4、24時間浸出させ、茶浸出液の調製を行った。4、24時間浸漬は冷蔵庫内(8℃)で行った。米をこの茶浸出液に30分間浸漬した後、食塩を加えて、ビーカー炊飯または炊飯器炊飯で茶飯の調理を行った。測定項目は茶浸出液についてはL・a・b値、濁度、色の吸収スペクトル、粘度、沈殿物量などの測定、茶飯についてはL・a・b値、テクスチャー・破断強度の測定、官能検査などである。結果 茶浸出液、茶飯の色を色差計で測定した結果、竹炭水使用の場合には茶浸出液では緑色度が高かったが、赤みがかった茶飯になり、緑色度が低下した。浸出時間は長い方が、茶使用量は2.2%の方が緑色が強く、味の評価も高い茶飯になる傾向にあった。湯で浸出したものは黄色みを帯び、適さなかった。そこで、浸出水は水、茶使用量は2.2%とし、茶葉と粉末茶の2つの形態で4、24時間浸出を行って比較したところ、茶浸出液の調製における再現性、茶飯としての色、香り、味などの点から、安定して一定の品質の茶浸出液が得られる粉末茶、24時間浸出が最適の条件であると結論づけた。
  • 永塚 規衣, 倉内 真友美, 長尾 慶子
    セッションID: 2Ea-1
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
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    【目的】昨年度の調理科学会大会において、加熱時間及び加熱温度を変えて調製した煮こごり煮汁中に溶出したコラーゲンの可溶化の程度を煮こごりの物性面と合わせて微視的に追跡した。今回は、各種の和・洋調味料を添加して調製した煮こごりの物理特性に及ぼす影響を特にpH及び脂肪面から検討した。
    【方法】試料の鶏手羽先を約1cm角切りにし、50gに全面が水に浸る水量30gを加え600Wの電熱器で加熱、沸騰後火力を300Wに調節して、10分_から_120分までの定時間加熱した。加熱終了後、試料をろ過し、煮汁が30mlとなるように調製した(対照水煮試料)。同様に食酢、ワインビネガー、醤油、塩、牛乳及びマヨネーズの調味料をそれぞれ煮汁の10%(内割り)添加した試料を調製した。なお、マヨネーズは加熱終了後煮汁に添加した。各試料ゾルの透過色、pH、動的粘弾性、17O-NMRによる緩和時間(T1)、電気泳動による分子量分布の測定及び光学顕微鏡による脂肪球の観察を行った。次いで各試料を内径32mm、高さ15mmのペトリ皿に分注し、冷蔵庫で24時間保蔵後のゲルの破断特性を比較した。
    【結果】食酢及びワインビネガー添加試料のpHはいずれも水煮試料と比べて酸性側(pH5.0_から_6.0)にあり、得られたゲルは破断特性・動的粘弾性ともに加熱時間に伴い硬さを増した。牛乳・塩添加も同様に硬いゲルとなった。加熱60分における電気泳動結果より、食酢及びワインビネガー添加試料は他に比べ低分子化の状況が認められた。マヨネーズ添加試料は対照に比べ弱いゲルとなった。抽出ゼラチンに水と油の乳化液を添加したモデルゲルも対照より弱くなったことより、油はゲル形成に抑制的に働くことが推測された。
  • 笠松 千夏, 米田 千恵, 村上 知子, 香西 みどり, 畑江 敬子
    セッションID: 2Ea-2
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
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    目的 カキは生食の他,牡蠣そば,カキフライ,土手鍋など様々な調理方法で食されている。近年,天然のカキが減少し,養殖カキの消費量が増加する中,養殖カキの一般成分の季節変動および加熱による物性変化を明らかにすることを目的とした。
    方法 北海道厚岸産養殖マガキを殻付きのまま入手し,一般成分(水分・タンパク質・脂質・灰分・炭水化物),グリコーゲン量を測定した。加熱試料は,広島県産養殖マガキを剥き身で購入し,ポリプロピレン袋に脱気密封し,沸騰水中で2,10,30分間加熱後室温に冷却した。物性は,テクスチャーアナライザTA-XT plus(SMS製)にφ5mmシリンダー,カッターの刃,ニードルの3種のプランジャーを装着し,それぞれ圧縮強度,剪断力,貫通による破断強度を求め官能評価と対応させた。
    結果 マガキ試料の一般成分の季節変化は,夏季の産卵直後に水分の割合が増加し,その後炭水化物量が徐々に増加した。呈味に関与する成分であるグリコーゲンは産卵期前後で最小となり,秋から初冬にかけて最大となった。加熱によりカキ表面の膜は凝固変性し硬化するのに対し,カキ体幹部は生が最も剪断力が強く,加熱2分でゲル化しやわらかくなった。加熱10分以降は収縮し脱水により硬くなった。最も身がふっくらしエキスの流出が少なかったのは,加熱2分以下(試料の中心が70℃まで)の状態であった。
  • 久保 加織, 平谷 綾希子, 堀越 昌子
    セッションID: 2Ea-3
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
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    【目的】 滋賀県や福井県のさば街道筋で漬けられているさばなれずしの熟成過程中の成分変化を調べ、熟成中に付与される栄養価や嗜好性について検討した。
    【方法】 大津市内で購入した塩さばを飯漬けし、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月後の水分、灰分、脂質の含量、および塩分濃度、pHを常法どおり測定した。核酸関連物質は液体クロマトグラフィーにより定量し、脂肪酸組成はガスクロマトグラフィーにより分析した。揮発成分はSPMEファイバーに吸着させ、直ちにGCMSに導入することにより分析した。
    【結果】 塩さばを飯漬けすることなく保存するとIPAの減少がみられたが、さばなれずしの脂肪酸組成は熟成6ヶ月間でほとんど変化しなかった。n-3系多価不飽和脂肪酸を多く含むさばの栄養価に変化がないだけでなく、飯にさばの脂質が移行したことによる脂質面での栄養的価値が付加されていた。カルシウムは飯漬け期間が長くなるにつれて可食部に移行し、さばなれずしはカルシウムの供給源としても有効であると考えられた。さらに脂質同様、カルシウムでも飯への移行が認められた。その他の成分は飯漬け1ヶ月の間に大きな変動を示し、その後の変化は小さかった。すなわち、IMPは飯漬け1ヶ月の間にほとんどが消失し、HxRやHx含量の最大値は1ヶ月後にみられた。pHの低下も1ヶ月の間で起こり、その後はほぼ一定であった。揮発成分は、飯漬け1ヶ月後で新たに37種の成分が検出され、その中にはふなずしの主要揮発成分と共通するなれずしに特徴的であると考えられるエステル類や、酸類、アルコール類が多く含まれていた。その後も飯漬け期間が長くなるにつれて新たな揮発成分が検出されたが、微量成分が多く、なれずしの風味を複雑にする成分ではないかと考えられた。
  • 長野 隆男
    セッションID: 2Ea-4
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
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    目的)豆腐の製造において,異なる種類の凝固剤が使用される。本研究では,豆腐の凝固機構が異なる,塩化マグネシュウム(MgCl2)とグルコノデルタラクトン(GDL)を凝固剤に用いて豆腐を作製し,力学物性,保水性,ゲル構造について調べた。方法)一晩浸漬した大豆に蒸留水を加えて(豆に対して5倍量)ミキサーにかけ,生呉を絞り生豆乳を得た。生豆乳を,96℃,5分間加熱してすぐに室温まで冷却し,豆乳を得た。得られた豆乳に蒸留水を加えて,様々な濃度の豆乳を調製した。濃度を調製した豆乳に0.3%の凝固剤を加え,GDLを添加した豆乳は85℃,MgCl2を添加した豆乳は70℃で,それぞれ30分間加熱をおこない豆腐試料を得た。力学物性は破壊試験,保水性は遠心法,豆腐のゲル構造は共焦点レーザー走査顕微鏡による観察をおこなった。結果)豆乳固形分が,MgCl2塩添加豆腐では3.7%,GDL添加豆腐では10%以上の濃度で豆腐を形成するようになり,GDL添加豆腐の方が低い豆乳濃度で作製できた。MgCl2とGDL塩添加豆腐の両方とも,豆乳固形分の増加に伴い,力学物性値(破断応力,破断歪,ヤング率)と保水性は高くなり,タンパク質のネットワーク構造は密な構造となった。豆乳濃度が同一の条件でMgCl2とGDL添加豆腐を比べると,GDL添加豆腐の方が,力学物性値,保水性は高い結果となり,タンパク質の凝集物は小さくより均一なゲル構造であった。ゲル構造は,豆乳の濃度を低下させて豆腐を作製すると,より明らかになった。現在,豆腐の力学物性とゲル構造の関係を,詳しく解析しているところである。
  • 渡邉 智美, 西ノ明 瑞穂, 朝倉 富子, 阿部 啓子, 舟木 淳子
    セッションID: 2Ea-5
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
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    【目的】大豆イソフラボンは、更年期障害の軽減、骨粗鬆症や循環器疾患の予防などが期待されている。大豆イソフラボンは豆腐、納豆などの大豆加工食品には主に配糖体として存在するが、配糖体のままでは吸収されにくいといわれている。そこで大豆の配糖体型イソフラボンをアグリコン型に容易に変換する方法の開発が望まれる。本研究は、食品加工用耐酸性プロテアーゼ製剤モルシン(キッコーマン株式会社)がβ-グルコシダーゼ活性を有することを見出し、これを用いてきな粉中の配糖体型イソフラボンのアグリコン型への変換を試みた。
    【方法】きな粉50mgにきな粉の1%のモルシン、50mMグリシン-塩酸緩衝液(pH3.0)500μlを加え、37℃で2時間反応させた。これを90%メタノール/0.5%酢酸でイソフラボンを抽出し、HPLCシステムを用いた逆相クロマトグラフィー{シリカゲルカラムTSXgel ODS-80Ts QA(東ソー株式会社)}によりイソフラボン量を測定した。
    【結果】モルシンを作用させるとダイジン配糖体(ダイジン、アセチルダイジン、マロニルダイジンの合計)は50%減少し、ゲニスチン配糖体(ゲニスチン、アセチルゲニスチン、マロニルゲニスチンの合計)は37%減少した。アグリコン型を測定したところ、ダイゼインはモルシンを作用させた前後で0.08mg/g(dry matter)から0.39mg/gに増加した。またゲニステインは0.09mg/g(dry matter)から0.38mg/gであった。きな粉にモルシンを作用させると、配糖体型イソフラボンがアグリコン型に効率良く変換されることがわかった。
  • 松尾 眞砂子
    セッションID: 2Ea-6
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    [目的] 演者らが先に塩分4%のオンチョム味噌開発した。今回は実用的な味噌にするため塩分6%のオンチョム味噌(O-味噌)を調製し、その成分、呈味性、抗酸化力、抗変異原力を塩分6%大豆味噌(S-味噌)比較した。さらに、ラットを用いて生体内抗酸化作用とコレステロール低下作用を比較した。 [方法] 大豆とおからをオンチョム菌で発酵させたS-オンチョムとO-オンチョムの9:1混合物を原料として6%塩分味噌を調製した。抗酸化力はDPPH-IC50とスーパーオキシドアニオン-IC50を測定し、抗変異原性はAmesテストによって測定した。生体内抗酸化作用とコレステロール低下作用はラットに味噌を40%含む飼料を14日間投与して調べた。 [結果] O-味噌にはかすかな苦味があったが無視できる程度に弱く、O-味噌で調理した料理は和・洋風のいずれも美味しいと評価された。O-味噌はイソフラボンのアグリコンが少なかった。O-味噌は加熱の有無にかかわらず抗酸化力と抗変異原性が強かった。かすかな苦味、調理した料理の高呈味性、抗酸化力と抗変異原性の強さはイソフラボンのアグリコン量にもとずくものであろう。O-味噌を投与したラットは血清コレステロールレベルが低く、糞中胆汁酸排泄量が多かった。また、血清α-トコフェロールレベルが高く、TBARS値は血清と肝臓のいずれにおいても低く、血清GSH-Px活性と肝臓カタラーゼ活性が高かった。O-味噌の血清コレステロール低下作用は、難消化性タンパク質による糞中ステロイド排泄作用やイソフラボンアグリコンによる抗酸化作用によるものであろう。これらの結果から、O-味噌は実用性と機能性が共に優れた味噌であることが判明した。
  • 池内 沙耶香, 宮本 有香, 西村 公雄
    セッションID: 2Ea-7
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】演者らは,タンパク質系ゲル状食品へのビタミンC(L-ascorbic acid(AsA))の品質改良効果が,AsAより発生するsuperoxide anion radical(O-)によることを提唱している。今回,全タンパク質間架橋の約30%をSS結合に依存している豆腐において演者らが提唱している品質改良機構によりAsAの改良効果がもたらされる可能性を検討した。【方法および結果】2-mercaptoethanol処理により還元した大豆11S globulin(0.5%)と75mM 5,5-dimethyl-1-pyrroline-N-oxide及び0.2μM riboflavinを含む水溶液に光照射しO-を発生させた。電子スピン共鳴法によりthyil radicalの特徴的なsignalを認めた。このことは演者らの機構に従い豆腐においてもAsAの品質改良が生じる可能性を示すものである。この点を検討するために,凝固剤(0.75% CaSO4)を添加し木綿豆腐を調製した。同時に0.5%AsAを加えたものも調製し,SDS-polyacrylamide gel electrophoresis(PAGE)法により観察したが,AsAによるタンパク質SS結合重合体形成促進は認められなかった。次に,豆乳を加熱する段階において各温度での0.5%AsAの添加効果をSDS-PAGE法により調べたところ,80℃時にAsAを添加した豆乳は無添加のものに比べタンパク質SS結合重合体形成が促されていた。この効果は100℃時では認められないことから,凝固剤添加時にはすでにAsAの添加・無添加にかかわらずタンパク質間SS結合形成が終了していることが,豆腐においてAsA添加による品質改良効果が顕在化しない原因であると考えた。
  • 高橋 智子, 川野 亜紀, 大越 ひろ, 中川 令恵, 道脇 幸博, 飛田 昌男, 長門石 亮, 別府 茂
    セッションID: 2Ea-8
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的 ユニバーサルデザインフード区分の「容易にかめる(かたいものや大きいものはやや食べづらい人を対象)」に分類されるレトルト市販介護食品について、咀嚼運動の特徴をあらわすことができる物性を検討した。
    方法 レトルト市販介護食品17品目に含まれる肉、魚、豆腐、芋、根菜類等の調理品32種類のテクスチャー特性、および破断特性を測定した。ことに硬さについては、圧縮速度を変えて測定を行い、圧縮速度依存性を検討した。併せて、同程度の硬さではあるが硬さの圧縮速度依存性が異なる4種類の材料(太刀魚、揚げ豆腐、里芋、ごぼう)について、2次元6自由度顎運動測定器により下顎運動の測定を行った。21_から_25歳までの健常な女性5名の被験者が、同一試料について4回の咀嚼を行った。咀嚼時における下顎運動の垂直成分を示すパターンより、第一咀嚼の波形から最大開口量、最大閉口速度、閉口相時間、最大閉口速度が出現した閉口相開始よりの時間、平均閉口速度、および嚥下開始迄の咀嚼回数、咀嚼時間を求めた。
    結果 線維の多いごぼうの硬さは圧縮速度が遅い方が硬いことが認められ、他の3種類の試料とは異なる圧縮速度依存性を示した。他の3種類の試料よりも、一口量が大きい揚げ豆腐の最大開口量、嚥下開始迄の咀嚼回数および咀嚼時間は有意に長いものとなった。また、圧縮速度依存性の異なるごぼうは他の3種類の試料に比べ、最大閉口速度に有意差は認められなかったが、最大閉口速度が出現した閉口相開始よりの時間は有意に遅くなり、また平均閉口速度も有意に遅いことが認められた。
  • 森高 初惠, 今井 由紀, 木村 修一
    セッションID: 2Ea-9
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的:これまでにジェランガム微小粒分散ゲルの力学特性について検討してきた。本報告では、寒天、κ-カラギーナン、ジェランガムの多糖類をマトリックスのゲル化剤として用い、塩化カルシウムを添加したジェランガム微小粒ゲルの分散の影響について力学的手法を用いて比較検討した。また、弾性率の複合則から相対理論値を求め相対実測値との比較を行った。
    方法:クリープメータ(山電製)を用いて定速圧縮による破断特性値を、レオロメータ(シーベルヘグナー社)を用いて貯蔵弾性率および損失弾性率を測定した。また、Nielsenの弾性率の複合則から弾性率の相対理論値を、Griffithの脆性破壊応力からは破断応力の相対理論値を算出した。
    結果:寒天マトリックスゲルの破断応力と貯蔵弾性率は、マトリックスに塩化カルシウムを添加した系および無添加の系共に微小粒ゲルの分散により減少した。κ-カラギーナンマトリックスゲルでは、破断応力は塩添加マトリックスの系および無添加共に減少したが、塩無添加マトリックスの貯蔵弾性率は微小粒ゲルの分散により増加し、反対に塩添加の系では減少した。ジェランガムマトリックスゲルでは、破断応力と貯蔵弾性率は共に塩無添加では増加し、塩添加では減少した。弾性率の複合則およびGriffithの脆性破壊応力から算出した相対理論値と相対実測値を比較した結果、微小粒ゲルの分散により寒天ゲルにおいて最もゲルの強度は低下した。
  • 今井 悦子, 安部 和香子, 小林 朋子, 佐久間 智子, 平山 紘美
    セッションID: 2Ea-10
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的 老人福祉施設や病院で行われているきざみ食は,口中でまとまりにくく食べにくいと言われているが,それがどのような食品についても言えるのかは明確にされていない.そこで,食べやすさに及ぼす食品の大きさと物性の影響を検討した.
    方法 大根,魚肉ソーセージ,こんにゃくを用い,加熱時間を変えることにより物性の異なる10種類の試料を調製した.大きさは,それぞれ 2×2×2_cm_を元に順次1/2の大きさに切って8種類とした.全ての測定は,試料を元の大きさと同形に整え,同体積で行った.測定項目は官能評価4項目(やわらかさ,まとまりやすさ,飲み込みやすさ,食べやすさ),筋電位測定6項目および破断試験3項目とした.
    結果 二元配置の分散分析の結果,13項目の測定値はすべて,試料の種類によって有意に異なり,咀嚼筋活動量と咬合力以外は大きさによって有意に異なった.さらに試料の種類すなわち食品の物性の違いを排除して,大きさのみの影響を多重比較により検討したところ,大きさが小さくなるほど官能的にやわらかく,まとまりにくく感じ,咀嚼に要する一噛み時間が短く,破断エネルギーが小さくなることが分かった.これらから,官能的総合評価の食べやすさは大きさ以外の要因の影響が大きいと考えられた.また相関分析の結果,食べやすさ,やわらかさおよび飲み込みやすさはお互いに相関が高かったが,それらとまとまりやすさとは相関がないまたは低かった.重回帰分析の結果,食べやすさ,やわらかさおよび飲み込みやすさは筋電位測定値と破断測定値でかなり説明できるが,まとまりやすさは十分に説明できないことが分かった.
  • -プレハブ住宅居住者の夏期の防暑行為に関する研究-
    澤島 智明, 松原 斎樹
    セッションID: 1Fa-1
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的 本研究は居住者が暑さをしのぐためにとる行為・行動の実態を統括的に把握することを目的とする。前報1)では防暑行為の実施状況や暑さに関する不満事項などと住宅温熱環境に対する総合的満足度の関係について述べた。本報では居住者の住まい方(在室状況、行為内容)の季節変化を暑さへの適応行動と捉えてその実態を把握する。方法 大手住宅メーカーの一戸建て、持家住宅の居住者を対象に防暑行為に関するWEBアンケート調査を行った。詳細は前報を参照のこと。結果 「夏期の住まい方の変化」7項目について該当/非該当で回答を得た。該当率は「家族が冷房室に集まる:集合」が最も高く(63%)、次いで「日中は休憩していることが多くなる:休憩」(26%)、「2階が暑いので下階で過ごす:下階」(20%)である。「集合」該当者はエアコン(AC)使用頻度が高く、使用時間が長いが、他の住まい方の変化はAC使用と有意な関係がみられない。「夏だけ別の涼しい部屋で寝る」該当者は就寝時の窓開放頻度が高く、AC使用を控える割合が高い。通風を得やすい部屋で就寝し、AC使用を抑えようとしていると思われる。しかし、AC使用時間・頻度に該当/非該当による差はない。暑さに関して困ることとの関係では、「壁や天井が暑くなり熱気を感じる」該当者は「下階」「休憩」の該当率が、「2階に熱気がたまる」該当者は「下階」の該当率が高い。住まい方の変化が不快な温熱環境からの逃避であることを示している。また、「下階」「廊下」の該当者は夏の過ごしやすさに対する満足度が低い。本調査における住まい方の季節変化は暑さによる生活の制約の意味合いが強いといえる。[文献] 1)澤島ら;日本家政学会第56回大会研究発表要旨集 p148 (2004)
  • 久保 博子
    セッションID: 1Fa-2
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的:高齢者の入浴環境の安全性と快適性を検討する目的で、コミュニティー施設の浴室と、自立した生活を送る高齢者の自宅の浴室で、夏期、中間期、冬期の3期わたり入浴に関する実態調査を行い、高齢者の入浴時の温熱環境とその生理反応を測定した。方法:高齢者のためのコミュニティー施設で、浴室、脱衣室等の温湿度および浴槽の湯温を測定し、当日の来所者で了承を得られた入浴者の血圧、心拍数、皮膚温を入浴前、入浴後等に測定した。入浴中の行動を追跡調査し入浴時間・浴槽浸水時間等を計測し、入浴時の温熱環境等の感覚についてアンケートに答えてもらった。自宅についても、同様の方法で、温熱環境、入浴時間、生理心理反応を計測した。夏期、中間期、冬期の3期で、施設では60歳_から_91歳の女性延べ92名の、自宅では72歳_から_83歳の女性26名の結果を得た。結果:(1)施設では浴室室温は一定に保たれ、冬期でも20℃以上の比較的高めの室温であったが、自宅においては季節による温度差が大きく、特に冬期の浴室・脱衣室がかなり低めの室温で入浴していた。浴槽湯温は施設では40℃以上と高く保たれており、自宅では個々の差が大きかった。(2)入浴時間は個人差が大きいが平均すると20分程度で、施設の方が自宅よりも長いが、浴槽浸水時間は自宅の方が長かった。また、施設でも自宅でも、夏期がもっとも短く、温熱環境の良い中間期がもっとも長い傾向にあった。(3)血圧は入浴による変動が大きく、60mmHgにも及ぶ場合もあった。長く浴槽に浸水している者ほど、血圧が低下する傾向が認められた。心拍数は入浴中がどの季節も早くなり、冬期が他の季節より早かった。入浴による血圧や心拍への生理的負担は大きいと考えられる。
  • 柴田 祥江, 松原 斎樹
    セッションID: 1Fa-3
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的 高齢者にとって調理空間としての台所の安全性、作業性、快適性を確保することは重要で、これまで、調理台の適正高さ、配置計画などの研究がされているが、台所環境について、音、光、空気、熱の物理環境要因を評価した研究はあまりない。本研究は高齢者が居住している住宅の台所環境について、現状を把握し、バリアフリー環境の視点から物理環境要因を評価することを目的として実施した。
    方法 兵庫県内の高齢者と一般成人(高齢者大学受講生と講座修了生)を対象に2004年7月にアンケート調査を実施した。調査項目は、住宅、台所の状況、バリアフリー化の設備機器の設置率、台所で危険・不具合経験、台所環境物理環境要因のあり方の重要度(5段階評価)と現在の台所環境について満足度(5段階評価)である。
    結果 アンケート調査の有効回収票は472票(有効回収率40.8%)であった。重要度の平均値が、最も高かったのは、安全性で4.93(SD0.28)、次に機能性・使用性4.74(SD0.47)、清潔・掃除のしやすさ4.63(SD0.52)、光環境4.61(SD0.56)であった。満足度が低かったのは、夏の暑さ-0.07(SD1.10)、ゴミ処理のしやすさ0.12(SD1.05)、換気扇の作動音0.13(SD1.05)、他室との温度差0.16(SD0.88)、冬の寒さ0.18(SD0.98)であった。台所の温熱環境については満足度が低く、重要度でも比較的低い評価であったことが関係していると考えられる。台所で経験した不具合では、温熱環境項目の、「夏は暑くて、火を長く使う調理などはしたくない」ことは57.6%が、経験しており、最も不具合率が高かった。本研究の結果、高齢者の台所環境バリアフリー化において物理環境要因の重要性が示された。
  • 荒川 友美子, 田中 辰明
    セッションID: 1Fa-4
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的 平成15年6月「高齢者、身体障害者の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(交通バリアフリー法)」が改正された。これにより、公共交通機関においてもユニバーサルデザインの考え方に基づくバリアフリーが広まっている。福祉後進国といわれているわが国であるが現状でのバリアフリーの普及はどの程度であるか、福祉先進国であると予想したイギリス、ロンドン地下鉄と東京メトロのバリアフリー施設の設置について比較検討することで、今後日本が公共交通機関においてバリアフリーをどう普及していくべきか提案することを目的とした。
    方法 日本とイギリスの公共交通機関のバリアフリー施設の設置について比較するために、日本においては東京メトロ各駅、イギリスにおいてはロンドン地下鉄各駅を調査対象とし、エレベーター、エスカレーター、ホームドアシステム、電車内での車椅子スペースなど、バリアフリー設備の有無を調査した。
    結果 東京メトロ駅総数169駅のうち81駅が、ロンドン地下鉄駅総数323駅のうち66駅においてエレベーターの設置があった。ホームドアシステムについては東京メトロ19駅に対し、ロンドン8駅という結果であった。バリアフリー設備の有無の割合では東京がロンドンより大幅に高いという結果になった。
  • 配光を変化させた場合   
    西村 麻希, 石田 享子, 井上 容子
    セッションID: 1Fa-5
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】くつろぎ空間の為の照明方式に関する著者らの研究では、くつろぎ空間としての満足度は、天井照明よりも壁照明の方が高く、壁照明では器具の設置位置に影響を受けるという知見を得ている。本報では、壁照明で配光を変化させた場合の影響を明らかにすることを目的とし、照明方式による設定照度と評価への影響について検討する。【方法】被験者は顔面の鉛直面照度を15lxに設定した無彩色の実験室(2.7m四方、壁面の反射率は83%,床面は26%)に入室し、ソファ(反射率26%)に座る。5分間くつろいだ後に「1人で何もしないでくつろぐ空間にふさわしい明るさ」に調光し、調光後にくつろぎ空間としての満足度を評価する。実験条件は、「光天井」「天井点光源」「壁点光源(配光3条件=全配光,上配光,下配光)」の5条件である。被験者は8名である。測定回数は各条件3回である。【結果】くつろぎ空間として「満足,やや満足」と評価した割合は、壁点光源下配光83%,壁点光源上配光及び全配光79%,天井点光源70%,光天井17%の順に高く、条件による満足度の違いが見られたが、配光3条件は満足度の差は小さく、79_から_83%である。「満足,やや満足」と評価した照度は、光天井29lx, 壁点光源下配光21lx, 壁点光源上配光及び全配光16lx,天井点光源14lxの順に高く、配光の違いによる輝度分布の影響が考えられる。以上より、満足度と照度は照明方式の違いに影響を受けると考えられるが今回の条件では満足度については配光の影響はほとんど見られない。また、配光により室内の雰囲気は変わると考えられるので、今後は更に配光と設置位置との関係について検討を行う。
  • -1人でくつろぐ場合と2人で会話をする場合-
    石田 享子, 西村 麻希, 井上 容子
    セッションID: 1Fa-6
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】本研究は、くつろぎ空間に適した明るさの範囲とその明るさを決定する要因の影響を明らかにすることを目的としている。くつろぐための行為には視作業の有無など幾つかのパターンが想定される。そこで、本報では、1人でのくつろぎと2人で会話をするくつろぎの場合について行い、照度や満足度評価について検討する。【方法】実験室、条件、評価項目、実験の流れは前報と同様である。前報の1人で何もしないでくつろぐ場合に、2人で会話をしながらくつろぐ場合を加えて行う。2人で会話をする場合は、実験室にソファ2脚とテーブルを置き、教示は『2人で会話をしながらくつろぎ空間にふさわしい明るさに調光して下さい』とする。【結果】くつろぎ空間の満足度で、「満足,やや満足」と評価した被験者の割合は、光天井で1人の場合17%、2人の場合33%、光天井以外の条件では行為の違いによる評価割合の差はなく50_から_83%の間に分布し、光天井に比べて高い割合である。また、「満足,やや満足」での平均照度は、光天井で1人の場合29lx、2人の場合82lxだが、光天井以外の条件では1人の場合14_から_21lx、2人の場合21_から_30lxであり、光天井では行為による設定照度の違いが他の条件より大きい。さらに、1人と2人の場合の設定照度を比率(2人の場合の設定照度/1人の場合の設定照度)にすると、どの条件でも1以上となり、2人の場合の方が明るく設定されている。この原因は、2人の場合は相手の表情を読み取るなど1人の場合とは異なる要素が必要となること、1人と2人の場合では室内平均反射率が僅かに異なることが考えられる。よって、今後は室内平均反射率も配慮しながら、会話以外の行為について検討する。
  • 衣笠 奈々恵, 久保 博子, 佐々 尚美, 磯田 憲生
    セッションID: 1Fa-7
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    [目的]夏期の室内環境において高齢者の至適温度範囲を検討するために、既報1)では被験者自身による自由選択気温実験により検討した。本研究では設定された気温下における生理的・心理的影響を測定し、高齢者のための至適温度範囲を明らかにすることを目的とする。[方法]人工気候室にて不感気流、相対湿度50_%_の下、前室気温27℃又は29℃にて30分間滞在後、実験室内温度条件23℃、25℃、31℃、33℃の環境下に60分間椅座安静状態で暴露した。生理反応として皮膚温(9点)、心拍数、血圧、体重減少量を測定、心理反応としては温冷感、快適感、満足感等の申告を受けた。着衣量は0.4cloとし、被験者として既報1)2)にて用いた被験者と同様の19名の健康な高齢女性(平均70.7±3.3歳)を採用した。[結果・考察]気温と温冷感の関係において有意な相関関係が認められ、27℃近傍で熱的中立申告「0:どちらともいえない」が得られた。また、気温と快適感申告の関係においては気温26℃付近で最も高い快適申告率が得られた。これらよりやや涼しい側の温冷感申告において快適性が得られやすいと考えられる。被験者19名のうち既報1)においてより低い気温を好んだ高齢者6名は、気温23℃と33℃との10℃の設定気温差で平均皮膚温が約3℃程度異なるにもかかわらず、温冷感や快適感申告にあまり差がみられなかった。 1)衣笠奈々恵,久保博子,佐々尚美,磯田憲生;高齢者の選択気温下における生理・心理反応 2004.8 日本家政学会第56回大会 2)衣笠奈々恵,久保博子,佐々尚美,磯田憲生;高齢者の選択室温下における生理・心理反応_---_その2.季節差に関する検討_---_ 2004.11 第26回日本家政学会関西支部発表会
  • その3 内装材の化学物質低減化対策が自覚症状に及ぼす効果について
    東 実千代, 磯田 憲生
    セッションID: 1Fa-8
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的化学物質による室内空気汚染問題の改善に向けて、低減化対策を施した内装が室内空気環境に及ぼす効果について報告した前報1)に引き続き、本報では、居住者の自覚症状について比較検討することを目的とする。
    方法1)調査対象:従来の内装仕様のRC造5階建の学生寮(以下新築寮)に竣工後半年以内に入居した居住者と、ホルムアルデヒド低減仕様の内装材で改装工事が行われたRC造2階建の学生寮(以下改装寮)に工事終了半年後に入居した居住者とした。2)調査方法・時期:留置自記法による質問紙調査とした。新築寮は1997年(回収/配布:140/190部)、改装寮は2003年(回収/配布:58/72部)に実施した。調査項目は居住者属性、自覚症状(12項目)申告の有無と感じる場所、換気の方法や頻度等とした。
    結果と考察自覚症状(異臭・刺激臭、目がチカチカ、喉の痛み等)のいずれかを申告した割合は、新築寮に比べて改装寮が低かった。各症状別にみても、改装寮の申告率が低いものが大半を占めた。症状を感じる場所については、新築寮では居室における申告率が高かったが、改装寮では共用ラウンジ、廊下や階段など居室外の申告割合が高く、居室に関しては内装対策の効果が現れていると考えられた。また、在室時間の多くを占める夜間における窓開放状況について比較すると、改装寮の開放率が高い傾向が認められた。これは改装工事と同時に学生寮入口のセキュリティが改善された効果と推察され、室内空気環境の改善のためには安全性の確保等、換気が行われやすい環境を整備することも重要と考えられた。
    文献 1)東ら;日本家政学会第55回大会研究発表要旨集,p.240(2003)
  • 宮原 律子
    セッションID: 1Fa-9
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
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    香気成分セドロールの負荷方法の違いが昼間の睡眠に及ぼす効果○宮原 律子*  梁瀬 度子**  溝端 友希**(*奈良女子大学・院 **武庫川女子大学 )【目的】現代は24時間化が進み、昼間活動して夜間休息するという本来の体内リズムに反して生活をする人が増加している。夜間勤務者にとって昼間に十分な睡眠をとることが必要になるが、昼間に満足な睡眠をとることは難しい。前報1)では天然樹木の香気成分セドロールが昼間の睡眠においても効果的であることを報告した。本報では簡便に使用できる方法として枕カバー方式を加えた3種の負荷方法により昼間の睡眠への効果を検討する。【方法】被験者には健康な青年女子5名を起用し、武庫川女子大学内の環境実験室において午後1時から3時間の睡眠をとらせた。セドロールの負荷方法は1.セドロール結晶粉末を室内に揮散(以下揮散)、2.セドロール吸着マスクを使用(以下マスク)、3.セドロール吸着枕カバーを使用(以下枕カバー)の3条件とし、比較対象としてコントロールを条件に加えた。被験者1名につき各条件2回ずつ測定し、睡眠中の脳波と心拍数の測定を行った。また、睡眠前後には睡眠についての主観的申告を得た。【結果】セドロールを負荷した場合、覚醒が減少し、コントロールで81%であった睡眠効率が90%近くまで改善した。揮散では中途覚醒が最も減少し、マスクでは入眠潜時が大幅に短縮した。(p≦0.05)また、マスクでは寝つきが早まり起床後の申告で高い評価を得た。枕カバーでは、被験者によってはカバーのにおいが気になりコントロールと違いが見られない被験者もいたが、それ以外の被験者では揮散と同様に中途覚醒が減少し、睡眠深度得点も高くなった。枕カバーを実用化に向けて改良をすることで、高い睡眠効果が期待できる。1)宮原他;日本家政学会第56回大会研究発表要旨集、p.154(2004)
  • ‐セドロール吸着マクラカバーについて‐
    溝端 友希, 宮原 律子, 梁瀬 度子
    セッションID: 1Fa-10
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    香気成分セドロールが終夜睡眠に及ぼす効果〈BR〉-セドロール吸着マクラカバーについて-〈BR〉【目的】前報の昼間睡眠においてセドロールの入眠及び睡眠促進効果が確認され、なかでもセドロール吸着枕カバーにおいて高い評価が得られた。そこで本研究では、この枕カバーを中心に日常の夜間睡眠における効果を実験室実験で検証するとともに、フィールド測定も併せて行った。〈BR〉【方法】〈B〉実験室実〈/B〉:被験者には21_から_23歳の青年女子4名を起用し、武庫川女子大学内実験室にて23時から約8時間の睡眠をとらせ、セドロールを吸着枕カバーと同素材・同型で非吸着枕カバー(コントロール)との2条件で被験者1人につき2例ずつ、合計16例の実験を行った。睡眠中の脳波、心拍数、皮膚温、寝床内環境を終夜連続記録し、実験終了後に起床時の感覚評価などについて申告を受けた。フィールド実験:高齢女性9名(63_から_83歳(平均74.2歳)にそれぞれの自宅において上記と同様の2種の枕カバーを3日間ずつ使用して睡眠をとらせ、睡眠中の心拍数と体動を終夜連続記録し、それらの挙動及び感覚申告からから睡眠状態を検討した。〈BR〉【結果】〈B〉実験室実験結果〈/B〉より、脳波上の睡眠経過は前報の昼間睡眠に比べ、全条件で通常の睡眠経過が認められた。とくにセドロール負荷時には、睡眠前半に徐波睡眠(St.3,4)量の増加傾向が認められ、レム睡眠出現量も増加した。実験日の4日間中2日において体調不良であった被験者1名を除くと、セドロール負荷時で睡眠効率が高くなり、中途覚醒時間も大幅に減少していた。これらの結果から、セドロールの副交感神経の機能を高め、鎮静作用によるセドロールの睡眠持続効果が確認出来た。〈B〉フィールド実験結果〈/B〉より、睡眠中の体動のうち四肢を動かす程度の小さい体動回数が約半数の被験者でセドロール負荷時に減少し、トイレ行動のような大きな体動による中途覚醒回数も減少傾向にあった。しかし、枕カバーの香りが気になる被験者では睡眠満足度の低下が認められた。
  • 加島 靖江, 金 貞均
    セッションID: 1Fa-11
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】人はあらゆる色に取り囲まれて生活を営んでいる。その色彩(空間)が人の心理面・生理面にもたらす影響について色彩学・心理学・建築学などの様々な分野で研究が行われている。近年、学校・病院をはじめ多くの施設で色彩計画に配慮したサイン表示やゾーニング、建物の外観・内装などが増えている。本研究は、生徒が興味・関心を持って実践できる住教育教材作成を目的とし、生活空間の中での色彩計画の在り方を通して色彩を導入した住教育教材の有効性や課題を検討する。
    【方法】1.「色彩と生活行動」「色彩と住空間」に関する既往の研究を考察する。2.病院や公共施設等の色彩計画(サイン表示・ゾーニング・内装など)の事例を調査し、色彩と空間の関係とその効果を考察する。
    【結果】文献考察から、生活空間の中にある色彩は感情やストレスに影響し、快適性や健康面との関わりが明らかにされている。一方調査によると、道路標識やサイン表示の色は速やかに情報伝達でき安全性を高め、色によるゾーニングは利用者の理解を助け快適な行動を促す効果が得られている。こうした考察の結果から、個人の住空間にも、色彩の効果を意識した積極的な選色の必要性があると考えられる。自己の住まいに関心を持てない生徒が増えている中、色彩に関心を持つ生徒は多い。住まいに興味・関心を向ける手段として生活の中の身近な色彩を導入することは有効であり、高齢者の安全に配慮する色彩計画の提案など発展性が期待できる。引き続いて、高校生の住まいと色彩に関する認識や関心についての調査を実施し、高校生の実態と課題にあった教材開発をすすめていきたい。
  • 湯浅 純子, 大図 雅美, 芳住 邦雄
    セッションID: 1Fa-12
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】色彩による知覚への影響の大きいことは論を恃ない。しかし、その定量的評価はこれまで充分とは言い難い。本研究では、ビルの屋上に設けられた屋外広告物を対象とし、異なる色彩による視覚効果を検討することを目的としている。【方法】女子大学生85名を対象にプロジェクターを用いて評価景観を提示して集合調査法でアンケート調査を実施した。11の評価項目に対し7段階の選択肢で回答を求め、7点から1点までの評価得点を割り当てた。刺激として5色(赤、青、水色、ピンク、白黒)を用いた。主成分分析によりその結果を解析し、因子軸の回転にはバリマックス法を適用した。本研究ではボンド法を適用し、11項目に対する5色の相対評価の解析を行なった。【結果および考察】屋外広告物に対する意識を主成分分析を用いて解析した結果、好感性、鮮明性、ソフト感、個性的、軽快性という5つの主成分が抽出された。これらの累積寄与率は81.1%である。この5主成分と5色との関係を主成分得点を用いて検討した。その結果、第1主成分の好感性と第2主成分の鮮明性の2軸から5色の特性を捉えると、好感性、鮮明性共に高いのは青であり、好感性が高く鮮明性が低いのは水色であった。また、好感性が低く鮮明性が高いのは赤とピンクであり、好感性がやや低く鮮明性が低いものは白黒であった。さらに、主成分得点の分散が色彩によって異なることが見い出された。すなわち、中間色であるピンクと水色においては、好感性の評価で各被験者のバラツキが特に大きく、一方、赤と青においてはバラツキが小さかった。本研究では、色彩の効果は屋外物においても大きいことを認め、広告物における重要な選択要因であることを明らかにした。
  • 平田 京子
    セッションID: 2Fa-1
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    目 的 日本で発生する主な災害とは,地震災害のほかに,台風や土砂崩れ等があり,頻度は低いが火山噴火や津波等がある。今日メディアを通じて情報が国際的にリアルタイムで報道されるなかで,大都市においてこれらの災害発生度が高く人口密度の高い日本は,世界有数の災害国であるという認識が国際社会において高まっている。一方で日本は津波や地震情報の速報体制を整備し,災害関連情報の質が高く,災害や安全をめぐる情報・教育体制が整っている。住宅の耐震安全性を中心として,これらの情報公開状況を2国間で比較し,そこから日本の置かれている状況と今後の対策のあり方を考察する。方 法 比較対象としたカナダ西海岸のVancouver市は,大地震の発生が将来的に予想されている都市である。また住宅構法も木造が中心という類似した特徴をもつ。アンケート調査と文献調査から,日本とカナダでの安全情報の公開や市民の関心の度合いに関する比較を行った。調査はVancouverで市民を対象に2004_から_2005年にかけて実施したものである。またカナダのウェブサイトおよび主要新聞紙等を主な資料とした。結 果 Vancouverにおける予測震度は比較的規模が小さい。高層コンドミニアムの建設が続くが,地震リスクについて市民の関心は低い。また避難訓練や基礎的な知識の浸透度では日本が先進的である。住宅の耐震安全性に関する情報も,日本が質・量ともカナダを上回る。ただし研究レベルの情報公開度は高く,カナダではウェブで広く耐震性についての情報が公開されている。住宅購入時の情報や性能表示などの住宅購入者に向けた情報公開度合いでも日本が勝るが,民主的な意思決定と市民の積極性に学ぶ点がある。
  • 伊村 則子, 石川 孝重
    セッションID: 2Fa-2
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    目 的 阪神・淡路大震災では、死亡の約8割は家具・家屋の転倒・倒壊等による圧死、けがの原因の第1位は家具等の転倒であった。これより、地震時の住宅内部被害の対策が重要であることがわかり、住宅内部被害に注目した住民の意識や対策の実態を明らかにした。 方 法 調査は住宅内部被害のために実用化されている防災用品を調べた後、近年地震発生が予想される関東地方と、最近大地震を経験した関西・中国地方の一般市民を対象にアンケート調査を実施(配布210、回収198、有効回答197部)した。アンケートは防災用品の認知度や住宅内部の対策状況、地震体験の有無、各家庭での独自の防災対策や工夫などを調査した。 結 果 調査より1.防災・地震に対する姿勢:「日常的に」「約1ケ月に1度」と頻繁に防災を意識している人は全体の25%、また防災対策の姿勢を「積極的である」と回答した人は15%にとどまった。2.防災対策実施の理由:「阪神大震災の被害にあったから」などの実体験によるものが約46%、「震災の被害を見て恐ろしくなったから」などの恐怖感によるものが約39%と大半を占め、対策のきっかけは自分の身近に感じる出来事にある。3.各家庭における独自の防災対策:約44%の人が独自の対策を実施し、「積極的に対策していると自分で思っていないが自分なりの工夫はしている」人が多い。4.防災用品の認知度・使用率・利用したい割合:認知度と利用率は連動する傾向にあり、認知度の高い防災用品は利用率も高い。しかし、認知されている防災用品は「突っ張り棒」「ピアノ転倒防止具」と種類が少ない。今後の課題として、多くの防災用品を多くの人に知ってもらうことが必要である。 本研究は調査時に当研究室所属の杉田尚子君の協力を得た。ここに感謝する。
  • 野田 千津子, 石川 孝重, 細野 晴代
    セッションID: 2Fa-3
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    目 的 地球規模の環境問題は深刻さを増し,身近な環境問題に向き合うためには,住まいから排出される環境負荷を低減することが必要である。このような背景をふまえ,本研究では,環境負荷低減を目指した住宅や技術の現状を把握し,環境負荷低減を目的とした取り組みを普及促進していくために必要な要因を考察する。 方 法 環境共生住宅36事例を取り上げ,文献を中心に,各事例の竣工時期・所在地・規模・コンセプト・特徴・居住者等による事後評価などについて調査した。なかでも,環境負荷低減を目指した取り組みの採用状況に着目し,各事例において,地球環境に直接影響をおよぼす取り組みが具体化されている状況を詳細に調査した。 結 果 戸建てと集合,地域や敷地条件などの違いによって取り組みの採用状況にはばらつきがある。また,同じ手法でも具体的な実現方法は様々であり,各事例が目指す目的,地域性や気候風土,負荷低減の対象,構造,敷地条件などを考慮して,適切な手法を選択している。一方,多くの手法が日常的な生活から生み出される環境負荷を積極的に低減するには至っていない。手法の採用にかかわる要因を抽出した結果,地球環境に対する直接的な効果は重視されておらず,基本性能とコストが第一条件として位置づけられる。しかし,イニシャルコストが高く,基本性能が低い取り組みでも,ユーザーへの意識啓発力や還元性,日常生活への馴染みやすさなど,人間に対する働きかけが強いために採用されている場合もある。これらの結果から,環境共生住宅の現状として,地球環境負荷低減の効果よりも,住民への意識啓発や周辺環境との調和を意図した事例が多いことがわかる。
  • 久木 章江, 細谷 侑衣
    セッションID: 2Fa-4
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 近年、住宅性能表示制度の制定などをきっかけに、安全性の高い住宅、健康住宅、環境に配慮した住宅なども注目されるようになり、住宅のあり方も多様化している。しかし、一方で欠陥住宅などのトラブルも少なくない。そこで建築主の満足度が高い住宅建築のポイントを明らかにするため、建築経験者を対象に調査を行った。注文住宅を建築する際の建築主の不安や疑問なども明らかにし、今後の課題等について整理した。【方法】 過去10年間に木造戸建注文住宅の建築経験者100名を対象に、検討時、設計時、施工時などの時系列ごとに取り組み姿勢に関する実情調査を行った。さらに判断が難しくて困った点、専門家とのコミュニケーションにおける問題点等を調査した。また調査結果をもとに、建築主の建築に対する取り組みの積極度と満足度の関係についても分析した。【結果】 結果の一部を以下に示す。満足度の高い住宅建築のポイントが抽出できた。1)住宅建築に対して積極的に取り組んだ建築主は、最終的に住宅の満足度が高くなり、計画段階でまめに情報収集し、専門家との打ち合わせ内容も記録するなどの行動をしている。2)自宅の成功度を高く評価した建築主は、契約以前の計画期間が長く、契約後着工日までの期間が短い。また時間をかけて情報を入手し、知識を得た人は、満足度の評価も高い。3)現場を訪れる回数が多い人は、施工者とコミュニケーションが築け、業者への不信感や不安感が少なくなる。施工中に疑問を解決するため、居住後の不満度合も少ない。また営業担当者との関係も建築した住宅の満足度合に大きく影響していることがわかった。4)建築主の性格により、取り組むべきポイントには違いがある。その傾向も明らかにした。
  • 磯田 憲生, 佐々 尚美
    セッションID: 2Fa-5
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】夏期において冷房機器の使用に頼らず室内暑熱緩和効果が期待される緑化の中で、一般住宅でもできるベランダや庭を利用した窓際植生による、日射遮蔽効果と心理的効果を明らかにすることこと目的として、温熱環境実測調査と被験者実験を行った。【方法】奈良女子大学内の南向きの隣接した2室、窓際屋外側をあさがおで覆った部屋(あさがお室)およびブラインド使用の部屋(ブラインド室)を対象室とした。温熱環境要素として気温を床上高さ0.1m、0.6m、1.1m、1.6m、床上高さ0.6mにて黒球温度と相対湿度、外気温湿度は奈良女子大学内の百葉箱にて5分間隔にて連続測定した。測定は2004年6月下旬_から_10月にかけて実施した。被験者実験は窓・扉の開放条件を同じとし、ブラインド室は日射が入らない様に調整した。被験者は前室にて10分間椅座安静状態を保った後、各部屋にて30分間椅座安静状態を保った。測定項目は、室内温熱環境に加え、温冷感、快適感、室内雰囲気評価等の主観申告を10分毎に測定した。【結果】7月から9月の晴天日で2室の窓・ドアの開放条件が一致し、日射の影響を受けやすい12時から16時の平均値にて検討すると、黒球温度はあさがお室では29.7度_から_32.6度、ブラインド室では30.2度_から_33.1度の範囲であった。同一日では2室の黒球温度はほぼ同じであり、あさがおの葉がブラインドと同程度の日射遮蔽効果がみられた。被験者実験では、2室の室内温熱環境はほぼ同じであったが、あさがお室の方が、涼しい、快適、居心地が良い、のびのびとしたなどが高い評価であり、雰囲気が高く評価され、総合的にはあさがお室の方がブラインド室より暑熱緩和効果が大きいことが示された。
  • -居住者を対象として-
    藤平 眞紀子
    セッションID: 2Fa-6
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】本研究では、解体木材の再利用・再使用について、なるべく原形に近い形での再利用・再使用方法を検討することを目的としている。ここでは、居住者の解体木材の再利用・再使用に関する意見や意識について、住宅の手入れやリサイクルに関する実態等のかかわりを調べ、再利用・再使用方法を検討した。【方法】昭和40年代に整備された住宅地および町並み保存への取り組みのさかんな古くからの住宅地に居住する居住者を対象として、アンケート調査を行った。有効回答数は215であった。【結果】現在の住まいに使われている部材について、回答者の約半数は「再利用できると思う部材がある」と答え、築後10年未満の比較的新しい住宅および築後40年以上の住宅の居住者が多かった。一方、回答者の約4割は「再利用できる部材はなし」と回答し、その理由として「再利用するほどの部材はない」が高い割合であげられた。廃棄物の削減や生活用品のリサイクルに関して、日常的に心がけている居住者は多く、具体的には、「ごみの分別回収」や「ものを修理して長く使う」など、モノの使用や廃棄の段階での取り組みが多く、「中古品の利用」や「リサイクル製品の積極的購入」といったモノの購入段階での取り組みは少なかった。また、解体木材の再利用について、「自分の家のなら使いたい」という意見が多くあげられたことから、解体木材の過去の使用場所、使用者などが明らかでないと再利用されにくいことがわかる。一方、「使いたくない」の理由をみると、「強度や耐久性、安全性などが不安だから」が多くあげられ、解体木材の性能面への不安が大きいことがわかる。今後、解体木材に関する幅広い情報が求められるが、日頃からの材の手入れや補修、循環利用や環境問題への意識など、居住者自身を中心とした身近な分野からの取り組みも必要である。
  • 岩重 博文
    セッションID: 2Fa-7
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的 我々の周囲には常に音が存在する。その音には「好ましい音」と「好ましくない音」があり,後者を「騒音」と呼ぶ。騒音は不快感,集中力低下,睡眠妨害など心理的生理的影響を及ぼしている。この生活音を我々はどのように評価し今後活用するか,より望ましい姿を考察する。方法 被験者に対し24時間音(騒音)暴露調査を行った。大学生など20歳代の若者を中心に,40歳代,50歳代も含め,計25名の被験者であった。肩上の耳近くに録音用マイクを取り付け,音収録装置を携帯して24時間生活音の収録を行った。また,被験者に時間軸の記録用紙を配付し,収録中の生活行動および音に関する評価(「音の大きさ」,「快適感」,「音の評価」)を30分毎(睡眠中除く),または生活行動が変化する毎の記入を依頼した。結果 1)1日24時間の最大騒音レベルは個人差もあり100_から_110dBAで,等価騒音レベルでは70dBA程度である。2)「音の大きさ」についは,40dBA以下で「小さい」,75dBA以上で「どちらでもない,大きい」と評価している。3)「快適感」については,騒音レベルの増加と共に不快感を増す人が64%を占める。4)「音の評価」については,「静かな方がよい,丁度よい」の回答が56%である。5)食事中・会話中の騒音レベルは比較的大きく60dBA以上である。6)勉強中の騒音レベルは常に60dBA以下であるが,50dBAでも「やや不快」と評価する人もあり,極めて音に敏感な空間と言える。7)テレビ視聴時の「快適感」は「快適,どちらでもない」が多く,「音の評価」は「丁度よい」が多い。テレビの音は,自己調整していると考えられる。8)徒歩移動中の「快適感」に「不快」の回答が無い。徒歩の場合,音環境以外の要素も加味されている。
  • 田中 辰明, 林 美木子
    セッションID: 2Fa-8
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    ドイツの住宅展示場調査目的:ドイツ人は住宅を大切にし、一般に我が国の住宅よりも立派である。戸建量産住宅は住宅展示場で展示が行われている。我が国と展示方法などの相違、住宅自体の相違を調査した。方法:2004年9月にBerlinの郊外Königs Wusterhausen,2004年11月にはStuttgartの郊外Fellbachの住宅展示場を訪問し、直接調査を行った。結果:ドイツの住宅展示場はBaden Württemberg州に5ケ所,Bayern州に4所,Brandenburg州に1ケ所,Hessen州に1ケ所,Mecklenburg-Vorpommern州に1ケ所, Niedersachsen州に2ケ所, Nordrhein-Westfalen州に1ケ所, Rheinland-Pfalz州には1ケ所, Saarland州には1ケ所, Sachsen州には5ケ所, Sachsen-Anhalt州に2ケ所, Thüringen州に2ケ所存在する。調査したKönigs Wusterhausenは33棟の住宅、23の会社が展示を行っている。Fellbachでは64棟の住宅、46の会社が展示を行っている。多くの住宅は地下室を有効に利用しており、様々な工夫が凝らされている。太陽熱利用(アクテイブ、パッシブ)をうたっているものが多く、特に外壁の断熱仕様は模型を設置し断熱材の種類、厚さ、構成を示している。断熱材の厚さ、外壁の厚さに驚かされる。浴室、シャワーに凝ったものが多い。窓周りの構成、扉の防犯対策も展示住宅内に実物を示し、工夫を見せている。室内からは外部が見え、外部からはたとえ室内で点灯していても室内を覗けない工夫をした玄関扉も展示住宅されていた。住宅展示場には係員が詰めており、子供の遊び場も用意され遊園地の要素も含んでいる。展示場への入場に際し、入場料を徴収される。要請に応じて説明をしてくれる。どこも無料のパンフレットがおいてある。また10EUR程度の手数料を支払うことにより立派な総合カタログを配布しているメーカーもある。
  • 児玉 佑希子, 田中 辰明
    セッションID: 1Ga-1
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
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    目的 住環境で、真菌は室内空気汚染の一因である。健常者に対しては大きな問題とはならない事が多いが、身体的弱者に対しては真菌感染症を引き起こす恐れがある。さらに病院においては院内感染の原因となることもあり、室内空気中の真菌を抑制することは重要である。真菌の生育を促進するものとして、室内の水蒸気の結露というものがある。結露防止策の一つとして、建築に外断熱を施すというものがある。これにより真菌生育を抑制することができる可能性がある。今回、外断熱・内断熱両方の構造を持つ長野県の総合病院で測定を行った。その結果について報告する。対象 測定は、2004年7月・2004年10月・2005年1月の3回行った。東棟…内断熱工法。1971年竣工、2001年外断熱へ改築。A・B・C病室を測定。西棟…外断熱工法。1994年竣工。D・E・F病室を測定。方法 MAS式エアーサンプラー、PDA培地・M40YA培地を用い、吸引空気量は150Lとして測定を行った。測定後、25℃で7日間培養し計数と同定を行った。結果 空中浮遊真菌数・真菌種にわけて述べる。真菌数…断熱工法ごとに比較すると、外断熱の病室の方が真菌数が少ないことがわかった。特に10月の測定において顕著な差がみられた。真菌種…外断熱・内断熱で差はみられなかった。7月・10月の測定では、好湿性真菌が多く検出されたが、1月の測定では耐乾性真菌が多く検出された。
  • 片倉 あすか, 田中 辰明, 仲西 正
    セッションID: 1Ga-2
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
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    目的 シックハウスの原因の一つとして、塗料から放出される化学物質が挙げらる。一般的に使用される多くの塗料は、塗膜形成過程において化学物質の放散は避けられない。塗料の水性化は進んでいるが、用途或いは性能面で全てを水性化することは困難である。そこで本研究では、水性塗料と油性塗料の塗膜形成過程における化学物質の放散速度を測定し、塗膜の構造と透過性との関係を検討することを目的とした。
    方法 市販の水性塗料と油性塗料をそれぞれアルミ板に塗布し、20 Lの小型チャンバーによって7日間VOC及びアルデヒド類の測定を行った。VOCはTenax管で捕集した後GCMSで、アルデヒド類はDNPHで捕集した後高速液体クロマトグラフィーで分析し、次の操作をした。
    _丸1_各化学物質の放散速度と物質移動係数を求めた。
    _丸2_走査型電子顕微鏡で塗膜の拡大観察を行った。
    結果水性塗料は化学物質の含有量自体が少ないということもあるが、塗膜形成前に全てが放散し終わった、或いは塗膜が密なため形成後はほとんど放散されないということが考えられる。一方、油性塗料は塗膜が疎なため、塗膜形成後も放散が続くと可能性として考えられる。また、塗膜の透過性の高い物質ほど、塗膜形成後の放散速度の割合が大きい。
  • ディアス デェイシー, 小林 靖尚, 中井 敏博, 田中 辰明
    セッションID: 1Ga-3
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
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    目的 塗料や接着剤と並んでワックスからの揮発性有機化合物(VOCs)放散はシックハウス症の原因となることが多いと考えられる。対策品はエコワックス、健康ワックスの名称で市販されているが、これらのVOCs放散についての性能を明らかにする目的でVOCsの放散、特に放散速度の経時変化を測定した。方法 JISA1901に準拠した方法によって放散速度の経時変化を測定した。市販のエコワックスをアルミ板に塗布し、20Lの小形チャンバ_-_内に設置し、流出気流中のVOCsを吸着管で捕集した。アルデヒド・ケトンはDNPHカ_-_トリッジで捕集し、アセトニトリルで抽出し、抽出液を液体クロマトグラフィ_-_で分析した。その他のVOCsはTenax TA 管で捕集し、熱脱着GCMSで分析した。結果 主成分として亜麻仁油を含む植物性100%のワックスでは、プロピオンアルデヒドの放散が目立った。これは、亜麻仁油からプロピオンアルデヒドの放散が顕著であることと一致した。しかしこのワックスでは、亜麻仁油で見られるような空気酸化によって生成するアルデヒド・ケトンの放散は見られなかった。主成分として荏胡麻油、ライスワックス等を含む植物性100%のワックスでは、塗布して4日程度経過した後、空気酸化によって生成したと考えられるアルデヒド・ケトンが放散し始めた。天然系塗料・ワックスを開発してきたリボス社(独)製で、主成分にシェラックワックス、コ_-_ン胚油、植物グリセリン等を含む水性ワックスでは、低級脂肪酸の放散が見られた。蜜蝋ワックスは植物性ワックスと比較し、概してVOCs放散が少なかった。
  • 野中 有夏, 田中 辰明
    セッションID: 1Ga-4
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的 近年、住環境中のカビがアレルギーの原因として注目されている。現在、この問題への対策としては、防カビ剤の使用などが一般的である。しかし、根本的な対策として、断熱施工という手段を用い、カビを防ぐことができるのではないかと考えた。本研究では、内断熱工法と外断熱工法において、日本各地の気象データを用いた長期間の非定常解析を行い、壁内の温湿度性状を算出する。また、計算結果とカビの生育条件を比較し、カビの発生しにくい断熱工法を提案することを目的とする。方法 WUFI:Wärme und Feuchtetransport in Bauteilen (建物の熱水分同時輸送解析プログラム、ドイツFraunhofer研究所製作)を用いて一次元非定常解析を行った。対象とした壁体はRC構造、断熱施工として1.外断熱工法、2.内断熱工法(両方とも断熱材はウレタンフォームを次世代省エネルギー基準値に準じて使用)を施工したものとした。対象都市は札幌、盛岡、新潟、東京、名古屋、福岡、那覇の7都市とし、拡張アメダス気象データ(日本建築学会)を用いた。結果 非定常解析によって得られた各壁体内の相対湿度と温度の年間変化をカビの生息条件と比較した。1. 外断熱工法:札幌・盛岡・新潟・東京・名古屋・福岡・鹿児島の6都市では、壁体内の温湿度変化は年間通じてカビの生息条件と一致しなかった。那覇では夏期の一時期にカビの生息条件と一致した。2. 内断熱工法;那覇では年間通じてカビの生息条件と一致しなかった。その他の6都市では冬期にカビの生息条件と一致した。特に、札幌・盛岡・新潟では年間通じて常に壁体内部がカビの生息条件下におかれている結果となった。 参考文献 Hartwig M. Kuenzel, 田中辰明 WUFIを使った建築部位における非定常熱湿気同時移動のシミュレーション 建築仕上技術_No._355
  • 栗山 恵都子, 田中 辰明
    セッションID: 1Ga-5
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的:本研究は、素材や表面性状が異なる内装材の汚れ付着の特性について検討を行うことを目的とした。まず、コルクシート、たたみ(イグサ)、カーペット、布クロス(凹凸あり)(平滑)、紙クロス(凹凸あり)(平滑)、塩ビクロス(凹凸あり)(平滑)、じゅらく、珪藻土の11種の壁床材に対し、居室内部の湿度の変化による吸湿性の違いを調べた。次いで、空気中に浮遊する粉塵等の汚れが内装材へ付着することを想定して、タバコ煙による汚れの付着実験を行った。これは、内装材の素材や表面の性状の違い、また素材が持つ吸湿性の違いにみられる汚れ付着の特徴を確認することが目的である。
    方法:内装材の吸湿性能比較の実験は、低湿度内に長時間置いた試験片を高湿度に移し、その際の質量変化から吸湿性の違いを計測した。汚れ付着実験は、ビーカー内に試験片を置き、一定条件に従ってタバコの副流煙によって気体曝露させ、汚れの付着の仕方、付着量は顕微鏡による観察を行うと同時に、表面付着汚れ簡易評価法によって比較した。本評価法は、視覚的な色差の濃淡と量をヒストグラムで示し、色差の変化によって汚れ付着や汚れの除去の評価を容易に行うことができるものである。
    結果:本実験で使用した内装材がもつ吸湿性は、一般的に言われているとおり、布素材、紙素材、たたみ(イグサ)が高く、塩ビ素材は低い結果であった。本内装材を使用した気体曝露汚れの付着は、素材別にみると珪藻土、たたみ(イグサ)は他の素材と比較して汚れが多く付着し、続いて、紙素材、布素材の内装材は曝露汚れが付着しやすい傾向がみられ、素材が持つ吸湿性能との関係があることが示唆された。また、表面性状の細粗の違いによる特徴的な差は見られなかった。
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