一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
58回大会(2006年)
選択された号の論文の317件中151~200を表示しています
口頭発表 食物
  • 池田 昌代, 加藤 みゆき, 香西 美恵, 長野 宏子, 阿久澤  さゆり, 大森 正司
    セッションID: 2Da-1
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    目的 演者らはこれまでに、東南アジアの各地域で食されている、米を原料とした麺の製造方法と原料米の特徴について報告してきた。今回は、カンボジアの米麺を対象に、未発酵米麺の製造方法と一般成分の特徴を明らかにすると共に、発酵米麺との相違点について検討したので以下に報告する。方法 2004年8月に、カンボジアの各地で、米麺(クイティウ)製造に関する聞き取り調査及び試料採取を行った。原料米及び米麺を、現地にて常温乾燥後持ち帰り磨砕後80メッシュに調製した。一般成分は、(水分、粗タンパク、粗脂肪、灰分)、アミノ酸、有機酸の分析を行った。また、SDS-PAGEでタンパク質の挙動を確認した。結果 カンボジアにおける未発酵米麺はクイティウ(Kvtiav)と呼ばれ、原料米には米飯やお菓子に用いる長粒種の粳米が使われていた。麺形成の方法は、シート状に蒸したシトギを切断しており、発酵米麺であるノム・バンチョック(Nom Banvuchock)のようなシトギ放置や「シトギ塊」の工程を必要としない点で異なっていた。原料米の一般成分は、粗タンパク12.3‐13.3%、粗脂肪0.43‐0.53%、灰分0.2‐0.4%であり、製麺後の灰分は原料米の5倍程度に増加していた。発酵米麺製造過程での成分の変化は、総遊離アミノ酸量の増加、γ‐アミノ酪酸の生成、乳酸の生成、タンパク質の低分子化などが特徴的であったが、未発酵米麺では、これらの特徴がみられず、総遊離アミノ酸量は原料米より減少していた。
  • 篠原 寿子, 田畑 武夫
    セッションID: 2Da-2
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    【目的】ヒラタケは、世界各地で栽培されているポピュラーな食用キノコで、味はくせがなく、香りも少ないので料理の種類も多い。著者等はこれまでシイタケ,ヒラタケ,ブナシメジ, アラゲキクラゲ、ナメコ等の子実体のカルシウムおよびマグネシウム塩添加培地からのカルシウムおよびマグネシウムの吸収について研究を行ってきた。先に無機亜鉛化合物添加培地からのヒラタケ子実体の亜鉛の吸収について報告したが、本研究ではさらに亜鉛の有機酸塩について、菌糸の生育や子実体収量に対する影響および亜鉛の吸収含量についてその無機化合物添加と比較検討した。【方法】供試菌のヒラタケ種菌は、_(株)_北研のH2号菌を使用した。亜鉛化合物は亜鉛、塩基性炭酸亜鉛,酸化亜鉛,乳酸亜鉛およびクエン酸亜鉛の5種類を用いた。オガクズ培地にこれらの亜鉛化合物を0.1_から_1.0%濃度になるよう添加し常法により培養し、子実体を発生させた。ヒラタケ子実体は収穫・乾燥後、ミルを用いて粉砕し均一な粉末試料とした。子実体中の亜鉛含量は、灰化後、ICP発光分光分析装置で分析した。【結果】(1)各種亜鉛化合物0.1_から_1.0%添加濃度での菌糸伸長は、無添加のものと比較し、0.5%以上添加した場合は乳酸亜鉛添加を除いて良好であった。(2) 子実体の収穫量は、化合物により多少異なるが 0.25%より0.5%の添加濃度の方が高い傾向を示した。(3)子実体中の亜鉛含量は、0.25_から_0.50%濃度の亜鉛化合物の添加により増加した。(4)培地pHは、塩基性炭酸亜鉛添加を除いて、培養2週間で低下傾向を示した。
  • 小谷  スミ子
    セッションID: 2Da-3
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    【目的】非加熱処理技術である超高圧処理による食品の機能成分の変化に関する研究はわずかである。本研究では渋柿を対象として、超高圧処理による可溶性タンニンと総ビタミンCの変化を明らかにすることで新しい食品加工の基礎データを得ることを目的とした。【方法】新潟県紫雲寺町および山形県鶴岡市で収穫された渋柿(平核無)の果実約5gを17℃で10分間超高圧処理(200、300、400MPa)を行った。処理前と処理後4℃で5日間保存した際の柿果実中の可溶性タンニン量をFolin-Denis法で、総ビタミンC量をDNP法で測定した。可溶性タンニンの不溶化を促進するアセトアルデヒド生成に関与するアルコール脱水素酵素(ADH、EC.1.1.1.1)およびピルビン酸脱炭酸酵素(PDC, EC.4.1.1.1)の活性はNADHの増減を波長340nmにおける吸光度の変化から求めるUV法で測定した。【結果】(1)無処理の柿の可溶性タンニン量は5日間保存で44_から_71%に低下した。超高圧処理した柿は、いずれの圧力でも処理直後に120_から_248%まで増加した。その後300MPa処理のみ徐々に減少し67_から_86%まで低下した。(2)無処理の柿の総ビタミンC量は5日間保存で90_から_96%であった。400MPa処理では処理直後136%、24時間後156%と増加した果実や処理直後は変化がないが、その後徐々に増加した果実が観察された。200、300MPa処理では無処理と変わらなかった。(3)超高圧処理によりADH活性およびPDC活性の変動が認められた。
  • 住谷 美紗, 摩郡 千香子, 森 晴子, 白石 淳
    セッションID: 2Da-4
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    目的 2005年3月から2006年2月に採集したアサリの遊離アミノ酸を測定し、その変動を調べ、アサリの旬の時期に、どのアミノ酸が、旬と関係しているかを調べた。
    方法 2005年3月から2006年2月、毎月1回、福岡市東区西戸崎にて、アサリを採集した。採集したアサリは研究室に持ち帰り、2日間絶食させた後、軟体部を取り出し、筋肉部分と内臓部分に分け、それぞれを凍結乾燥して、均一に粉末状にして試料とした。この試料から遊離アミノ酸を抽出し、20種類のアミノ酸を高速液体クロマトグラフィーで分析を行った。アミノ酸の測定は、月3回ずつ行い、各々の含有量の平均値と標準偏差を出した。糖質とグリコーゲンはフェノール硫酸法で測定した。これらの増加する時期が旬として知られているので、句の時期にどのアミノ酸が変動するかを調べた。
    結果(1)アサリの旬の時期は、糖質とグリコーゲンの増加時期より、3月から5月と7月から9月だということが確認できた。(2)アサリに多く含まれているアミノ酸は、タウリン、ヒスチジン、アラニン、グリシン、γーアミノ酪酸、アルギニン、グルタミン酸、リジンであった。(3)筋肉部分の旬の時期に関係していると思われるアミノ酸は、3月から5月はタウリン、グリシン、アラニン、アルギニンで、7月から9月はヒスチジン、アルギニンあった。(4)内臓部分の旬の時期に関係していると思われるアミノ酸は、3月から5月はタウリン、ヒスチジン、リジンで、7月から9月はタウリン、ヒスチジン、グリシンであった。
  • 広井 勝
    セッションID: 2Da-5
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    【目的】油脂は揚げ物などの調理にかかせないものであるが、加熱により変質を生じ易い。そのため油脂の劣化防止は大変重要である。近年、炭の活用の一つに油脂劣化防止効果が注目されている。しかし、炭の劣化防止効果は用いる炭の種類や炭化温度によりその効果が異なることも示されてきている。そこで本研究では、市販の竹炭および炭化温度の明らかな竹炭を用い、熱酸化および自動酸化に対する劣化防止効果を検討した。【方法】試料油としてキャノーラ油を使用した。実験では温度コントロールの精度の高いホットプレートを用い、500mlビーカーに油脂を100gとり、竹炭5g(5%相当)を入れて、220℃または250℃で、1時間、2時間の加熱を行い、油脂の劣化度やトコフェロール(Toc)残存率を調べた。また、同様に60℃の定温器で、加熱油脂、未加熱油脂を数週間自動酸化させ、その劣化防止効果も調べた。さらに加熱した油脂を室温放置した場合の影響についても検討した。油脂の劣化度の判定は、過酸化物価(PV)・アニシジン価(AnV)・極性化合物量の測定などで行い、合わせて油脂中のTocの分析を行った。【結果】1)竹炭を5%添加し加熱した場合、油脂劣化防止効果が認められたが、竹炭の種類により劣化防止効果に差が見られた。2)自動酸化(60℃)においても、竹炭はその効果が認められた。3)劣化防止効果が認められたものはTocの残存率が高かった。4)加熱油脂の一部を取り、60℃の定温器に放置した場合でも竹炭の劣化防止効果は大きかった。5)竹炭添加油脂を加熱後さらに自動酸化させた場合、炭をそのまま入れておいた方が、炭を除いたものに比べ劣化防止効果が高かった。
  • 斉藤 まゆ美, 加藤 みゆき, 大森 正司, 澤井 祐典, 山口 優一
    セッションID: 2Da-6
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    【目的】紅茶をいれたときの鮮やかな赤褐色は紅茶製造工程を通して形成される。本研究では紅茶製造工程における成分変化を調べると共に,紅茶水色成分の中心物質として重要であると考えられるテアルビジン(TR)についても検討した。紅茶浸出液のブタノール可溶成分をTRと一般的に呼称されているが,今回は酢酸エチル可溶の比較的低分子TRについて検討した。
    【方法】(独)野菜茶業研究所におけるべにひかり,べにほまれ,べにふじ等の1番茶から3番茶を用いて紅茶を製造した。これら製造工程の各ステップごとに,生葉,揉捻葉,発酵1時間葉,発酵2時間葉を採取し,試料とした。各試料の浸出液を調製し,水色を測定した後,ポリフェノール(酒石酸鉄法),カテキン及びアミノ酸(HPLC法)を分析した。紅茶浸出液を酢酸エチルで分画後,その酢酸エチル層をHPLC法により分析すると共に,SephadexLH-20でTR画分を得,HPLCデータと照合した。また,紅茶浸出液を各分子量分画膜を用いて調製し、その変化を検討した。
    【結果】HPLC法を用いてカテキン類を分析したところ,主要カテキンEGCG,ECG,EC,EGCは製造工程が進むにつれて減少し、DPPHにより抗酸化性を検討したところ,製造工程で漸減傾向として示された。酢酸エチル可溶性TRについては揉捻葉と比較すると発酵1時間で増加し,発酵2時間以降ではプラートとなっていた。また、紅茶浸出液の分子量分画では,分子量膜1000以下の酢酸エチル可溶性画分にTRが観察された。
  • 森田 理恵子, 取越 佳代子, 森 晴子, 白石 淳
    セッションID: 2Da-7
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    目的)ポリ-γ-グルタミン酸(γ・PGA)を生分解性プラスチックなどに利用するためにPGAの生産機構を含め、その性質や構造を特定する必要がある。本研究では、研究室に保存してあった土壌菌N0.153株の酵素を精製しその性質を調べた。
    方法)PGAを分解する土壌由来の菌N0.153株をMCY液体培養基で37℃、13時間振とう培養を行った。この培養液の硫安塩析0.7飽和沈殿画分を粗酵素とした。この粗酵素をSephadex社製CM-Celluloseカラム、DEAE-Celluloseカラム、G-100カラムの順に通し、酵素活性が高い画分を回収し部分精製酵素とした。酵素液中のタンパク質含量はLowry法で測定し、タンパク質の回収量を求めた。また各精製段階の酵素溶液を泳動用試料溶液としてSDS-PAGE、銀染色を行った。更にγ-D-グルタミン酸、L-γ-グルタミン酸のみからなるペプチドを合成し部分精製酵素を作用させた。
    結果)(1)培養液中のタンパク量を100%としたとき、G-100カラムに通した後回収した晴製酵素のタンバク回収率は0.03%であった。(2)SDS-PAGEにおいて精製酵素の最も濃いバンドの分子量は27500であった。(3)基質特異性について、吸光度の結果より今回実験に用いた基質に対する特異性はみられなかった。
  • 原 寛子, 加藤 みゆき, 庄司 善哉, 大森 正司
    セッションID: 2Da-8
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    【目的】茯茶はプアール茶と共に黒茶に分類される茶であるが、茯茶は中国湖南省で製造され、プアール茶は雲南省で製造されている。共に類似の製法で製造されるが、その水色や風味はかなり異なっている。それは、その製造工程中に関与する微生物類が異なるためであろうことは容易に推測される。ここでは、茯茶からこれらの微生物を分離すると共にその諸性質の一端を明らかとしたので報告する。
    【方法】(1)茯茶を試料として、まずこの中に存在する生菌数をMPN法により測定した。 (2)普通寒天培地、ポテトデキストロース培地、MY20培地を用いて微生物の分離を試み、バクテリア6種、カビ1種を分離した。(3)MY20培地で分離した微生物は、鶴田の方法に準じて光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡を用いてEurotium sp.と同定した。(4)Eurotium sp.について糖濃度を変化させることにより生育の変化、また、N源を変化させることにより同様に生育の変化を検討した。
    【結果】(1)茯茶中の生菌数は、1g当り74.5MPNであった。(2)グルコースを用いた糖濃度を変化させることによりEurotium sp.を培養し、25%の場合が最も培養度がよかったので、以後のN源の実験においてはこの糖濃度を用いて実験を行った。(3)ペプトンを用いたN源の濃度を変化させることにより0.1%の場合が最も培養度がよかった。
  • 菅原 悦子, 角田 朋香, 大畑 素子
    セッションID: 2Da-9
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    [目的] 現在、醤油の香気成分は270種類以上確認されている。その中でもmethionol、4-ehtylguaiacol、HEMFは、醤油香気を特徴付ける重要な香気成分として報告されている。本研究ではこの3成分に焦点化し、AEDA法によりFlavor Dilution(FD)-factorを求めることによって、醤油の香気に及ぼす寄与度を明らかにすることを目的とした。[方法] 本研究には本醸造醤油を用い、醤油100mlに蒸留水400mlを添加した20%水溶液を試料とした。調製した試料から、ポーラスポリマーを用いたカラム濃縮法により香気濃縮物を調製した。この操作を計5回繰り返し、香気濃縮物を得た。この濃縮物を10倍から段階的に50000倍まで順次希釈し、GC-O分析を行った。各香気成分のFD-factorを求め、醤油香気への寄与度を検討した。[結果] 試料2500mlから得られた醤油の香気濃縮物の収量は101mg(収率0.02%)であり、この香気濃縮物をGC-O分析した結果、感知できた匂い数は102種であった。AEDAの結果、methionol、4-ehtylguaiacol、HEMFのFD-factorが他の香気成分と比較して非常に高く、それぞれFD-factor=10000、5000、10000であった。このことから、この3つの香気成分は、醤油香気への寄与度が高いことが明らかとなった。[HEMF; 4-hydroxy-2(or 5)-ethyl-5(or 2)-methyl-3(2H)-furanone]
  • 久保田 紀久枝, 勝見 優子, 黒林 淑子, 森光 康次郎
    セッションID: 2Da-10
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    目的 セルリアク(Apium graveolens var. rapaceum)はセロリの変種で、ヨーロッパでサラダやスープなどによく利用されている。生ではセロリ様の風味を呈するが、加熱すると甘く香ばしいにおいとなる。本研究では、生および煮熟セルリアクの香気特性および主な香気寄与成分について明らかにすることを目的とする。方法 セルリアクの皮をむき2等分した後、細断後水とともにミキサーでホモジナイズし、一方は1h静置、他方は1h沸騰加熱した。遠心分離により上澄液を得、Porapak Qを充填したカラムにて香気成分を捕集した。有機溶媒で脱着・濃縮した画分をさらに高真空蒸留法により香気濃縮物を得、GC, GC-MS, GC-Olfactometryにより分析した。また、生と煮熟セルリアクのにおい特性を官能評価法により比較した。結果 官能評価の結果、セルリアクは煮熟するとみずみずしい青臭いにおいからキャラメル様の甘さや煮た野菜の甘さを感じさせ、まろやかさと深みのあるにおいになると評価された。香気成分組成を見ると、セロリ様の香りを有するフタライド類が生と煮熟いずれにおいても主成分であった。その他、生には青臭い香りを有するβ_-_ピネンなどのテルペン炭化水素類が多いのに対し、煮熟したものにはフラネオール、バニリン、マルトール、ソトロンなど甘い香りに寄与する成分の生成が認められた。さらに、クローブ様のスパイシーなにおいをもつ2-メトキシ-4-ビニルフェノールの顕著な生成が認められ、これらが官能評価で煮熟セルリアクが甘みや深みのあるにおいと評価された特徴香気に寄与していると考察された。
  • 和泉 秀彦, 山田 千佳子, 加藤 保子
    セッションID: 2Da-11
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    【目的】これまでに我々は、精白米のNaCl溶液浸漬によるアレルゲンの低減化について報告している。そこで本研究では、精白米を浸漬する塩溶液を変化させることによる可溶性タンパク質、特にアレルゲンの溶出量の変化について明らかにすることを目的とした。【方法】精白米を0、0.1、0.5Mの各種塩溶液に浸漬させ、4℃、30℃、50℃で一晩置いた。米粒から浸漬溶液中に溶出したタンパク質量をLowry法で定量し、タンパク質組成をSDS-PAGEで、アレルゲン量の変化をイムノブロットにより解析した。また、米粒中に残存したタンパク質ついても溶出タンパク質と同様に解析を行った。さらに、米粒残存アレルゲン量については、阻害ELISA法を用いて定量した。【結果】米粒中の可溶性タンパク質の溶出量は塩濃度および温度の上昇に伴い増加した。浸漬後の残存可溶性タンパク質については、塩濃度および温度の上昇に伴いタンパク質量、アレルゲン量ともに塩濃度、温度依存的に残存量が減少した。50℃、0.5Mの場合に最もアレルゲンが減少しており、精白米中にもともと存在しているアレルゲン量に比べ約45%に減少していた。一方、米粒残存総タンパク質に関しては米の主要貯蔵タンパク質であるグルテリンには顕著な変化が見られなかった。さらに、浸漬溶液をCaCl2溶液にした場合、溶出タンパク質量はNaCl溶液の場合に比べて約2倍になった。
  • 安藤 真美, 河邊 陽子, 橋場 奈美子, 人見 英里, 山根 昭彦
    セッションID: 2Da-12
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    【目的】山口市の特産品のひとつに「さちのか」という銘柄のイチゴがある。イチゴは年間を通じて需要の高い果物であるが,数日間しか品質が保持できないため,収穫期以外の需要の多くは輸入品によってまかなわれている。しかし,長期保存が可能になれば最盛期以外の時期は高値で出荷することが可能となり,広い意味での地産地消への貢献も期待できる。そこで今回は,「さちのか」の鮮度保持さらには付加価値をあげることを将来的な目的として,「さちのか」に対する氷温貯蔵の有効性を調べた。
    【方法】地元農家から購入した「さちのか」を用い,常温(25℃),冷蔵(5℃),氷温(_-_1℃)にて,最長7週間まで貯蔵した。貯蔵1週間ごとにそれぞれ4_から_6個を用い,外観・重量・水分・糖度・物性・組織観察・ビタミンC量・抗酸化能・酸度・官能検査による品質評価を行った。
    【結果および考察】氷温試験区では,4週間後でも外観の劣化が抑制されており,官能検査では色に関して冷蔵試験区よりも有意に高い評価が得られた。重量は冷蔵試験区で4週間後57%減少したのに対し,氷温試験区では7週間後でも25%の減少にとどまり、水分量の減少も少なかった。物性に関しても7週間後においても最初の硬さを維持し,これと相関して細胞壁の変形・破壊は他の試験区よりも顕著に少なかった。個体あたりの糖量はそのまま維持されており,呼吸が低く抑えられたことを示唆した。本研究の結果から,イチゴを氷温貯蔵すると呼吸作用がきわめて低く抑えられると考えられた。これによりイチゴが最初の生理状態を長期間に渡って保持することが可能となり,結果的に初期の品質を維持できるものと考えられた。
  • 久保村 喜代子, 佐藤 香澄, 大森 正司
    セッションID: 1Ea-1
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    【目的】高度経済成長を遂げた我が国においては、使い捨てによる経済発展趣向からリサイクル型経済成長へと変化しつつある.そこで本研究では、バイオマス資源の用途開発の観点から、ベリー類の一種であるボイセンベリーの葉の成分を分析し、大量に廃棄されている葉の多目的利用性を検討することを目的とした.
    【方法】凍結乾燥されたボイセンベリー葉の熱湯抽出試料を用い、一般成分分析として、全波長、粗脂肪、還元糖、総たんぱく質、微量成分分析として、遊離アミノ酸、ポリフェノール、有機酸の定量を行った.また、Bacillus subtilisEscherichia coliに対し、ろ紙ディスク寒天平板法による抽出試料の抗菌性を検討した.
    【結果】遊離アミノ酸の定量でγ-アミノ酪酸(GABA)が215.52mg/100g含まれていた.加水分解後試料ではGlyが44倍、Gluが22倍、Alaが13倍と顕著に増加していた.ろ紙ディスク寒天平板法により、抽出試料の抗菌性試験を行った結果、調製直後の抽出液で、Escherichia coli 16.5mm 、Bacillus subtilis 15.6mmの阻止円が認められた.抽出液調製後1週間経過した抽出液では、調製直後に比べ抗菌性が79%に減少し、更に2週間経過した抽出液では63%に減少していた.
  • 湯浅(小島) 明子, 亀井 正治, 湯浅 勲
    セッションID: 1Ea-2
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    【目的】我々は昨年の本大会において、西洋ニンジン葉抽出物は、細胞分裂を阻止することによってガン細胞の増殖抑制効果を有することを報告した。そこで、本研究では、西洋ニンジン葉抽出物の抗ガン作用メカニズムについて検討し、その作用物質の同定を試みた。
    【方法】ガン細胞としてエールリッヒ腹水ガン細胞を用いた。ニンジン葉の乾燥粉末を有機溶媒(エタノール、クロロホルム、酢酸エチル、ブタノール)で分画し、凍結乾燥したものを実験に供した。
    【結果】ガン細胞の増殖は、西洋ニンジン葉の各抽出画分を添加することによって濃度依存的に抑制されたが、最も効果を示したものは酢酸エチル抽出画分であった。酢酸エチル抽出画分を添加してガン細胞に0?24時間曝露させた時の細胞増殖能を調べたところ、2時間の曝露で、細胞増殖能が急激に低下していたことから、細胞増殖能を停止させるシグナルは非常に速く伝達されることが示唆された。さらに、このメカニズムには活性酸素種が関与しているかどうかを検討するために、酢酸エチル抽出画分とカタラーゼを同時に添加したところ、細胞増殖能は回復しなかった。一方、酢酸エチル抽出画分の細胞周期におよぼす影響を調べたところ、高濃度の場合では細胞周期をG1期(DNA合成準備期)で停止させ、低濃度の場合ではG2/M期(細胞分裂準備期/分裂期)で停止させた。これはルテオリンの挙動と同様であったことから、酢酸エチル抽出画分にはルテオリンが含まれていることが示唆された。
    【結論】西洋ニンジン葉抽出物はガン細胞の増殖抑制効果を有すること、そのメカニズムとして、活性酸素種は関与しないことが明らかとなった。また、西洋ニンジン葉抽出物によるガン細胞の細胞周期におよぼす影響はルテオリンの挙動と同様であったことから、その作用物質は、ルテオリンであることが示唆された。
  • 湯浅 勲, 小島(湯浅) 明子
    セッションID: 1Ea-3
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】食物繊維による大腸ガンの予防メカニズムとして、発ガン物質の吸着や希釈による腸管上皮への曝露の減少、食物繊維中のフィチン酸による鉄ラジカルのキレートあるいは胆汁酸の抱合による排泄などが考えられているが、その詳細についてはいまだ明らかにされていない。本研究では食物繊維が腸内細菌による発酵・分解によって生成される短鎖脂肪酸に着目し、ヒト大腸ガン細胞(HT-29)の増殖におよぼす影響について検討した。
    【方法】HT-29細胞は10%FBSを含むDMEM培地に播種し、細胞を付着させた後、培地交換をおこない実験に供した。短鎖脂肪酸はナトリウム塩を用い、蒸留水に溶かした後、最終濃度が1または2mMになるように添加した。細胞生存率はTrypan-blue法を、細胞周期はLaser Scanning Cytometerを用いて測定した。
    【結果】食物繊維の発酵・分解により生成される酢酸、プロピオン酸と酪酸についてヒト大腸ガン細胞の増殖におよぼす影響について調べたところ、酪酸が最も強くガン細胞の増殖を抑制した。また、その抑制は細胞周期をG2/M期で停止させることによって誘導されることが明らかとなった。一方、酪酸と同時に活性酸素の消去酵素であるカタラーゼを添加すると、細胞増殖能は回復することから、酪酸によるガン細胞増殖の抑制作用には活性酸素が関与していることが示唆された。
    【考察】腸内細菌による食物繊維の発酵・分解によって生成される酪酸は、強いヒト大腸ガン細胞増殖抑制効果を有することが明らかとなった。また、その有効濃度は大腸内で生理的に産生される濃度(約10 mM)以下であった。これらのことから、食物繊維による大腸ガン抑制のメカニズムに酪酸が関与する可能性が示唆された。
  • 善方 美千子, 水野 時子, 山田 幸二
    セッションID: 1Ea-4
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    (目的)会津地方の伝統野菜の一つであるアザキ大根は、小規模生産だが「高遠そぱ」の薬味に利用され、会津の食文化として伝承されている。先に、演者らは現在多く栽培・消費されている青首大根に比べ、アザキ大根は遊離アミノ酸総量が多く、近年機能性が期待されているアルギニン(Arg)、グルタミン(Gln)、y・アミノ酪酸(GABA)などのアミノ酸が特異的に多い事を明らかにした。本研究は、アザキ大根が会津地方の各地で栽培されていることから、産地の異なるアザキ大根の機能性アミノ酸について検討した。
    (方法)実験には、会津の3地方で栽培されたアザキ大根と、比較のため郡山地域で生産された辛味大根と青首大根を供した。小型の大根以外は、根元部と先端部に分割して粉砕機で粉砕後、分析まで_-_30℃で保存した。遊離アミノ酸は、粉砕したサンプルの20倍量の75%エチルアルコールを加え、80℃で還流抽出を行い2回洗浄抽出した。アミノ酸の分析は、日立L-8800形高速アミノ酸自動分析計を用い、生体液分析法で行った。
    (結果)遊離アミノ酸総量(生鮮品100g当り)は、青首大根117mgに対してアザキ大根855_から_1018mg、辛味大根492mgであった。青首大根の主なアミノ酸はGlnとGABAであるのに対して、アザキ大根と辛味大根はさらにArgの多い事が特徴であった。産地の違いによるアザキ大根の遊離アミノ酸、特に機能性が指摘されているArg、Gln、GABAの含量に大きな違いは見られなかった。アザキ大根を凍結乾燥した粉末大根(水分6.2%)1g当りの遊離アミノ酸総量は65.5mg、Argは6.7mg、Glnは34.5mg、GABAは6.1mgであった。
    以上の結果、アザキ大根の機能性アミノ酸であるArg、Gln、GABA含量は産地の違いによる差異は少なく、健康食品としての価値が商い食材である事が示唆された。
  • 加藤 保子, 池田 なつみ, 洞崎 涼子
    セッションID: 1Ea-5
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    目的:前回、テンペから乳酸発酵大豆加工品を調製し、この抗酸化能および便秘改善効果について報告してきた。今回は、この発酵方法とテンペ菌を用いないでたんぱく質分解酵素を用いて乳酸発酵大豆を調製する方法をアレルゲンたんぱく質の消失程度および抗酸化能から比較検討した。更にマウスに止瀉薬を投与し便秘モデルマウスを作成しこれを用いて乳酸発酵大豆の便秘改善効果について検討した。方法:浸漬大豆にRhizopus oligosporus NRRL 2710を接種・発酵して、テンペを調製した。これに水を加えフードプロセッサーで滑らかなペーストにしたものを滅菌し、グルコース、ペプチダーゼRを加えよく攪拌し、乳酸菌を接種後、pH4.8前後まで発酵させた。一方、テンペ発酵を行わないものは、煮大豆をペースト状とし、ペプチダーゼRで加水分解後、同様に乳酸発酵した。含有たんぱく質はSDS-PAGEで分画し、大豆アレルゲンたんぱく質の残存状況は、28及び30kDaの抗体を用いたimmunoblottingで判定した。抗酸化能は発光試薬(MPEC)を用いて測定した。ICRマウスにロペラミド塩酸塩(0.3mg/匹)を調合飼料に混ぜて投与し便秘モデルマウスを作成した。これに乳酸発酵大豆を投与、投与前後の糞を集めて重量、水分含量を測定した。結果:プロテアーゼRで分解後乳酸発酵した加工品と比べ、テンペから乳酸発酵した乳酸発酵大豆の方が、より低分子化された加工食品となった。更に、抗酸化能は高く、28及び30kDaのアレルゲンたんぱく質はより低減化された。ロペラミドを投与して便秘にしたマウスに乳酸発酵大豆を投与すると、対照とした調合飼料投与マウスに比べて有意に糞重量、水分含量が増加し、便秘改善効果が認められた。
  • 森山 三千江, 大羽 和子
    セッションID: 1Ea-6
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    【目的】 野菜は機能性成分であるビタミンC(VC)やポリフェノール、ミネラルなどの良い供給源である。植物の発芽時には様々な機能性成分に変化がある事が良く知られている。本件研究では貝割れ大根および緑豆もやしを用いて発芽後のVC量、ポリフェノール量、ラジカル捕捉活性を経時的に追跡し、最も効率よく機能性成分を摂取できる発芽後の日数を知ることを目的とした。さらに発芽初期に活性が高くなると知られているアスコルビン酸ペルオキシダーゼ(APO)活性の変化も同時に追跡した。【方法】 発芽後の日数の異なる貝割れ大根、緑豆もやしは実験当日の朝、栽培業者より入手した。試料を部位別に分けそれぞれVC量、ポリフェノール量、ラジカル捕捉活性およびAPO活性を測定した。ビタミンC量はHPLC-ポストカラム誘導体法、ポリフェノール量はFolin-Denis法、ラジカル捕捉活性は1,1-Diphenyl-2-picrylhydrazyl(DPPH)法、APO活性はMiyakeらの方法によって測定し、個体当たりの値に換算した。【結果】 貝割れ大根の幼芽では発芽後4、5日目にVC量、ポリフェノール量、DPPHラジカル捕捉活性ともに最も高く、胚軸では6日目に高かった。緑豆もやしの子葉部ではVC量、ポリフェノール量、DPPHラジカル捕捉活性が発芽後3日目までが高く、胚軸では5、6日後に高くなった。したがって、1個体当たりを食する際に、緑豆もやしでは発芽後5日目および6日目に、貝割れ大根では発芽後6日目に機能性成分が最も多く摂取できると考えられる。発芽後7日目にはAPO活性が高く、VC量も減少していた。
  • 手塚 悦子, 大森 正司
    セッションID: 1Ea-7
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    【目的】ヤマブシタケは、中国では古くから食用のほか、漢方薬としても利用され、乾燥させたものが猴頭茹(ホウ、トウ、クウ、シシガシラ)と呼んで市販されている。消化不良や身体の虚弱改善、また頭がよくなる働きなど様々な効果があるとして煎じたり、醸造酒(黄酒)に漬けたものが広く利用されている。ヤマブシタケの薬理効果についてガンの抑制作用、脳機能、脳血流改善が文献から明らかになっているが、ここでは、ヤマブシタケの血中コレステロール、中性脂肪の抑制効果について明らかとしたので報告する。
    【方法】(1)試料調製は、ヤマブシタケを粉砕して1gを精秤し、これに熱湯を加えて1時間攪拌抽出した。冷却後100mlに定容し、ろ過して試料液とした。(2)ヤマブシタケのタンパク質、有機酸、遊離アミノ酸、還元糖、及び香気成分をSPME法によりGC/MSを用いて行った。(3)Wister系♂ラット6週齢36匹(1群6匹)を用いて、6群とし、予備飼育を含め30日間飼育した。解剖後は体重、心臓、脾臓、睾丸、睾丸脂肪、背筋脂肪の重量測定、及び血液生化学値の分析を行った。
    【結果】(1)ヤマブシタケのタンパク質定量結果は完全抽出では2.8g/100g、TCAを添加したものでは1.78g/100gであり、遊離アミノ酸定量は4.56g/100gであった。(2)ヤマブシタケに含まれている有機酸としては酒石酸(2.22g/100g)、蟻酸(1.26 g/100g)、コハク酸(1.23 g/100g)が見出され、そしてアミノ酸としてはGlu(205mg/100g)、Gln(207mg/100g)が見出された。(3)ラットにヤマブシタケを餌料として投与したところ、脂肪負荷にもかかわらずその血中上昇を抑制した。
  • 原 寛子, 加藤 みゆき, 庄司 善哉, 大森 正司
    セッションID: 1Ea-8
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    【目的】茯茶は、中国湖南省で主に作られている茶で新疆、ウイグル地方で消費されている。また、これは緑茶を自然発酵させた茶で、プアール茶などと同じ「黒茶」の仲間であるが、茶葉が発酵する過程で、「金の花」と呼ばれる黄色い粉を吹くのが特徴である。本論文では茯茶の一般成分(カテキン・カフェイン・アミノ酸・香気成分)の特徴とラットに投与した時の生体への影響、特に中性脂肪の影響について明らかにしたので報告する。
    【方法】試料を熱湯抽出し、浸出液の水色、遊離アミノ酸、結合アミノ酸、カテキン、有機酸含量の測定、SPME法による香気分析、透析性ポリフェノール含量、生菌数を測定した。また、ラットに茯茶を投与し、ラット血液生化学恒数および各臓器への影響について検討した。
    【結果】(1)遊離アミノ酸は、Gluが14.47mg/100g、Aspが15.82mg/100g、これを加水分解するとGluは84.89g/100gに、Aspは48.35mg/100gまで増加した。有機酸は、蓚酸が2.56mg/100g含まれており、香気成分は、その多くがカプロン酸であることがわかった。(2)ラットへの茯茶投与した実験においては、血液中のトリグリセライドが減少することが示された。
  • 竹内 晶子, 小久保 清子, 菅家 祐輔, 碓井 之雄, 廣末 トシ子
    セッションID: 1Ea-9
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    目的 ニコチンは喫煙により妊婦の体内に吸着され、胎児の発育遅延、低体重児の出生などをもたらすといわれている。一方、エタノールは妊娠時の飲酒で催奇形性のあることなどが知られている。このように両者の単独での作用については以前からかなりの知見があるが、同時に摂取された場合の胎児への影響については殆ど知られていない。そこでその手がかりを得る目的で、白色レグホン種のニワトリ胚を用いて本実験を実施した。方法 受精11日卵を、1:生理食塩水、2:5mMニコチン、3:40%エタノール、4:5mMニコチン/40%エタノールを投与する4群に分け、18日目まで連日それぞれの検液を100µlずつ気室部に開けた小孔から投与し、19日目に割卵した。生存胚から全脳と肝臓を摘出し、前者を脂肪酸組成の測定に、後者を薬物代謝酵素の活性測定に供した。結果 2:群でみられた胚の死亡、発育阻害、奇形発生や内臓異常の事例が、4:群においてさらに増加した。脳組織の全脂肪酸量、個々の脂肪酸量等には、4群間に顕著な差は認められなかった。しかし、肝薬物代謝系においては、アニリン水酸化酵素活性が2:群で1:群の1.63倍にも高値を示したのが、4:群ではそれが1.13倍に低下、また、UDPーク゛ルクロン酸転移酵素活性も有意差こそなかったものの2:群での高値が4:群で低下する傾向を示した。 以上の結果は概ねニコチンの有害作用がエタノールによって増強されることを示唆するものと思われる。
  • 中田 理恵子, 石田 麻夏, 井上 裕康
    セッションID: 1Ea-10
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 葉酸は、核酸の生合成,アミノ酸の代謝,メチル基転移反応に関与するビタミンである。葉酸が欠乏すると、細胞増殖の障害や、動脈硬化のリスクファクターである血漿ホモシステインの上昇などが起こり、生体に種々の影響を与えることから、生体内での葉酸の機能が注目されるようになっている。しかしながら、葉酸代謝が遺伝子レベルでどのように調節されているかは、明らかにされていない、本研究では、葉酸欠乏過程において、葉酸代謝に関連する酵素の遺伝子発現がどのように変化しているのかを検討した。【方法】 離乳直後の雄ラットに、欠乏食(葉酸フリー diet)または対照食(葉酸 8mg/kg deit)を、各々自由摂取させた。欠乏食開始4,6,8週目に血液と肝臓を採取し、血漿と肝臓の葉酸量とホモシステイン濃度を測定した、さらに、肝臓の葉酸代謝酵素のmRNA量をRT-PCR法により測定した。【結果】 血漿および肝臓中の葉酸量は、欠乏4週目から有意に減少した。また、血漿と肝臓のホモシステイン濃度は、4週目から有意に上昇した。葉酸代謝酵素11種のmRNA量を測定したところ、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR),メチオニン合成酵素(MS),シスタチオニン-β-合成酵素(CBS)のmRNA量が、葉酸の欠乏により減少した。MTHFR, MS, CBS は、いずれもホモシステインの代謝に関与する酵素であることから、葉酸欠乏によるホモシステイン濃度の上昇には、MTHFR, MS, CBS の発現抑制が関係していると考えられ、遺伝子レベルでの調節をうけていることが明らかになった。
  • 市 育代, 小城 勝相
    セッションID: 1Ea-11
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
    会議録・要旨集 フリー
    目的 以前我々は、肝臓毒であるガラクトサミン投与によりラットの肝臓でアポトーシスが誘導され、その際にビタミンCが減少し、その後ヒドロペルオキシドが増加することを報告した。MAPKは細胞シグナル伝達の重要な経路であり、アポトーシス誘導に関与している。そこで、ガラクトサミン投与によるラット肝臓でのMAPKの変化について検討を行った。
    方法 食塩水のみ投与したラット (Control) とガラクトサミン (1 g/kg body weight) を投与したラット (1.5、3、6、12、24時間) の血漿GOTおよびGPTを測定した。酸化ストレスの指標として肝臓のビタミンCをHPLCにて測定した。また、MAPK (p38、ERK、JNK) のリン酸化をWestern blotにて測定した。
    結論 血漿GOTとGPTはガラクトサミン投与後6時間に増加し、24時間後まで増加し続けた。このことより、ネクローシスは投与後6時間で起こることが示された。また、肝臓のビタミンCは投与後3時間に減少した。MAPKについては、リン酸化p38が投与6時間後にControl群に比べて増加したが、リン酸化ERKやJNKは投与後3時間で増加した。以上の結果から、ガラクトサミンの投与によるJNKおよびERKのリン酸化と酸化ストレスは同時に起こることが示された。また、酸化ストレスがJNKやERKのリン酸化の原因であるか、あるいはJNKやERKのリン酸化が酸化ストレスの原因であるかについては、さらに検討する必要がある。本研究は西岡瞳、岸岡輝美、飯田ちなつ、藤井こずえとの共同研究である。
  • 大塚 譲
    セッションID: 1Ea-12
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
    会議録・要旨集 フリー
    目的 食品の安全性や生理機能について真に知るためには、それらが遺伝子レベルでどう関わっているかについて知ることが必須である。本研究では抗酸化や薬物代謝への影響が知られているビタミンC、Eや母乳を用いて、培養細胞への影響を遺伝子レベルで解析した。方法 ヒト肝癌由来HepG2細胞およびマウス肝臓由来の初代細胞を培養し、培養液中にビタミン類や母乳、薬物としてβ-NF等を加えたものと、無添加のもので生育状況を確認した。酸化ストレスの影響もあわせて調べるため過酸化水素を与えた系と低酸素の系も解析に用いた。各々の細胞からmRNAを抽出し、薬物代謝や抗酸化機能に関わる遺伝子の発現量をRealTimePCR法で決定した。さらにヒトゲノムに存在する全ての遺伝子(32878遺伝子)を網羅したマイクロアレイを用いてゲノムワイドに遺伝子発現量の変化を調べた。結果 培養細胞に母乳を加えた結果、種々のシグナル伝達に関与する遺伝子、ERKやJNKの発現量が大きく動いていることが判明した。一方で直接活性酸素の除去に関わるSOD、GPX、OGG1等の遺伝子発現量は対照に比べて有意な変化が見られなかった。つまり母乳の抗酸化機能は単純に抗酸化遺伝子の発現を誘導することによるものでなく、ERKやJNKなどのリン酸化カスケードを通じたシグナル伝達系が関与している可能性が示唆された。 薬物代謝に関与する遺伝子CYPの発現量はβ-NF添加により増大し、AsAで抑制されるという結果がマウス肝細胞で確認されたが、HepG2細胞ではβ-NF添加により増大し、AsAでさらに誘導されているという、異なる結果が得られた。またAsA添加によって薬物代謝の第二相酵素であるGSTAの発現が誘導され、AsAの薬物代謝への関与が確認された。
  • だいこん煮ものについて
    池内 ますみ, 内山 綾子, 奥田 展子, 金城 友子, 澤田 崇子, 花崎 憲子, 藤本 さつき, 升井 洋至, 水野 千恵, 山下 英代 ...
    セッションID: 2Ea-1
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】我々はこれまでに煮もの調理における醤油の調理特性について種々の検討を行ってきた1).本報告では,うすくち醤油とこいくち醤油を用いて調製しただいこん煮ものについて,煮もの調味に用いられる醤油の使用量が煮もののおいしさに及ぼす影響を明らかにするため,醤油の使い方と嗜好性について検討した.
    【方法】添加塩分が煮もの材料の0.5,1.0,1.5,2.0%になるように各醤油を使用してだいこんと厚揚げの煮ものを調製し,以下の事柄について分析した.女子大学生(19から22歳)40名をパネルとして,だいこんの色,かたさ,甘さ,塩味,総合評価について順位法による官能評価を行った.さらに最も評価の高かったうすくち醤油使用煮ものとこいくち醤油使用煮ものについて2点嗜好試験法による官能評価を行った.煮ものおよび煮汁の塩分をモール法により測定した.また、煮もの表面と内部および煮汁のa値,b値,L値も測定した.
    【結果】順位法による官能評価では,うすくち醤油,こいくち醤油ともに添加塩分1.5%の煮ものがすべての項目で1位となり,有意な差が認められた(<0.05).また,順位法で好まれた煮ものの塩分は,うすくち醤油使用煮ものは0.7%,こいくち醤油使用煮ものは0.8%であった.2点嗜好試験法による官能評価では,うすくち醤油使用煮ものがこいくち醤油使用煮ものよりも総合評価で有意(<0.01)に好まれる結果となった.
    1)池内ら;日本調理科学会誌,38,163-169(2005)
  • _-_ かぼちゃ・さといも煮ものについて_-_
    升井 洋至, 池内 ますみ, 内山 綾子, 奥田 展子, 金城 友子, 澤田 崇子, 花崎 憲子, 藤本 さつき, 水野 千恵, 山下 英代 ...
    セッションID: 2Ea-2
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】第1報に続き,かぼちゃ・さといも煮ものについて,使用する醤油(うすくち醤油またはこいくち醤油)の違いと使用量(塩分)の点から煮ものに使用する醤油の嗜好性について検討を行った.
    【方法】前報1)を参考に,かぼちゃ・さといもはそれぞれ市販の冷凍品を用いて煮ものを調製した.かぼちゃ煮ものでは添加塩分が材料の0.5,0.8,1.1,1.4%,さといも煮ものでは添加塩分が材料の1.0,2.0,3.0,4.0%になるようにうすくち醤油またはこいくち醤油を用いた煮ものを調製し,煮もの・煮汁の塩分(モール法),色差測定および官能評価(項目;色,かたさ,甘さ,塩味,総合評価)を順位法により行った.さらに順位法の結果から評価の高かった各醤油の塩分量の煮ものについては2点嗜好試験法も実施した.
    【結果】かぼちゃ煮ものについての官能評価(順位法)の結果,うすくち醤油で添加塩分0.5%,こいくち醤油で0.8%の煮ものが好まれた.2点嗜好試験法では両者の差は明確に認められなかった.さといも煮ものではうすくち醤油,こいくち醤油とも添加塩分3.0%の煮ものが好まれた.2点嗜好試験法の結果,うすくち醤油を用いた煮ものが,かたさ,塩味(p<0.05),総合評価(p<0.001)で有意に好まれた.
    1)池内ら;日本調理科学会誌,38,163_-_169(2005)
  • 木下 枝穂, 小池 恵, 津田 淑江
    セッションID: 2Ea-3
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】煮物調理において本みりんは、甘味の付与、てり・つやの付与、消臭効果、煮崩れ防止などの効果があると報告されている。しかし、保存時の効果についての報告はない。そこで本研究では、煮物調理によく用いられるジャガイモを試料とし、煮熟時の糊化度及び保存時の老化に対する本みりんの効果について検討を行った。
    【方法】ジャガイモは、新ジャガイモと貯蔵ジャガイモの2種類を用いた。基部から先端の中心部を2.5cm角に切り、水に10分間浸漬後、水、15%本みりん溶液、15%本みりん溶液のアルコール濃度に相当する2.1%エタノール溶液、本みりんのアルコール分を加熱除去し、もとの液量にもどして調整した15%煮きりみりん溶液、15%みりん風味調味料溶液で20分間加熱した。煮上がったジャガイモの煮上がり直後、室温8時間保存後、冷蔵24時間保存後、冷凍1週間保存後の糊化度を測定した。測定はβ!)アミラーゼ・プルラナーゼ法により行った。
    【結果】煮上がり直後の糊化度について、本みりん溶液は高い値を示した。しかし水、エタノール溶液、煮きりみりん溶液、みりん風味調味料溶液は、本みりん溶液と比べやや低い値を示した。すべての溶液において、保存時間の経過に伴い糊化度は低下していったが、本みりん溶液は全体的に高い値を示した。以上のことから、煮熟後のジャガイモを保存する場合、本みりん溶液で煮ることにより保存時の老化を抑制する効果があることが示唆された。
  • 今井 悦子, 宮田 渚沙, 濁川 千, 関 友恵
    セッションID: 2Ea-4
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    目的 刻み食の食べやすさに関する基礎的研究の一環として,食品の大きさと一口量の関係を検討した。
    方法 材料の大根を1cm角に切って加熱後(味付き及び味付けなし), さらに1/2,1/4,1/8,みじん切りに切断し,元と同型に整えた。一口量は1cm角1から6個分とした。以上5(大きさ)×6(一口量)×2(味の有無)=60種類を試料とし,官能評価(7段階尺度の採点法,食べやすさなど4項目),破断試験(破断荷重など3項目),筋電位測定(咀嚼筋活動量など6項目)を行った。解析はSPSSを用い,二元配置分散分析,相関分析および主成分分析を行った。
    結果 味付き試料では,大きさが小さくなるほど噛みにくく,まとまりにくく,食べにくくなると評価され,一噛み当りの咀嚼筋活動量が減少し,咀嚼回数は増加した。一口量は多くなるほど噛みやすく,食べやすいと評価され,咀嚼回数・時間が増加した。味付けなしと比較したところ,味を付けることは食べやすさ,噛みやすさ,咀嚼時間などに影響を与えるが,まとまりやすさ,一噛み当りの咀嚼筋活動量や咬合力などへの影響は小さいと考えられた。味付き試料について,大きさと一口量の影響を総合的にとらえるために主成分分析をした結果4主成分が抽出され,第一主成分は硬さ・食べやすさ,第二主成分は口中滞留時間を表す成分と考えられた。大きさが小さくなるほど硬さ・食べやすさが小さく,口中滞留時間がやや長くなること,一口量が多くなるほど硬さ・食べやすさがやや大きく,口中滞留時間が長くなることが明らかになった。
  • 高橋 智子, 川野 亜紀, 大越 ひろ
    セッションID: 2Ea-5
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
    会議録・要旨集 フリー
    目的 摂食機能が低下した人が経口摂取を可能とするためには、形態別食事の物性管理が重要となる。そこで、本研究では、市販増粘剤を添加して調製される液状食品を試料とし、簡便な物性面の品質管理法であるリング法の有効性について検討した。
    方法 粘稠性発現物質が異なる市販増粘剤4種類により、ヨーグルト程度の3段階の異なる硬さに調製した粘稠な液状食品について、リング法は相似形の3種類のリングを用いて測定した。一方、機器測定として、圧縮速度を変えたテクスチャー特性、回転数を変えたB型粘度計による粘度測定、定速回転法およびバネ緩和法による流動特性、動的粘弾性の測定を行った。併せて、シェッフェの一対比較法により、口腔感覚および飲み込みやすさの官能評価を行い、リング法より得られた結果との関係について検討した。
    結果 遅い圧縮速度におけるテクスチャー特性とリング法の広がり係数は高い相関関係が得られ、低ずり速度領域より得られた流動特性と広がり係数の間にも、高い相関関係が認められた。このことより、変形速度が遅い領域の物性をリング法の広がり係数は示していることが示唆された。B型回転粘度計による粘度と広がり係数には高い相関関係は認められなかった。動的粘弾性では、非線形領域における挙動と広がり係数は高い相関関係が得られた。官能評価では、口中のまとまりやすさと広がり係数に高い相関関係が得られた。
  • 水 珠子, 岩田 美生, 長尾 慶子
    セッションID: 2Ea-6
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】我々研究室では、伝熱現象の解明を目的に食材成分を単純化したモデル系を用いて加熱実験を行っている。これまでにデンプン系モデルを調製し内部熱移動と水分量との関係が、熱移動に遅延現象が伴うとして算出した遅延時間定数と熱拡散率との簡単な指数式で表せることを報告している。今回は乳化系での伝熱現象に注目し、水と油の量比を変えたマヨネーズ様(O/W型)乳化モデル系を調製し、加熱温度に対応させた伝熱係数と粘度測定、油滴の分散状況の顕鏡観察を行い、油相体積分率と熱移動との関係を検討した。
    【方法】水、コーン油、卵黄を材料とし、マヨネーズ調製法に準じて油相体積分率(φ)を0.3_から_0.8に変えたO/W型乳化モデル系を調製した。それらモデル系の一次元方向0, 1,3,5,7,10mm内部の各位置における加熱中の温度変化、熱伝導率や比熱容量の測定、E型粘度計によるずり応力一定下での粘度測定ならびに顕鏡観察による分散油滴の粒子分析を行い、各乳化系モデル中の熱移動現象とレオロジー的性質を比較・検討した。
    【結果】内部温度及び熱伝導率測定の結果、各乳化モデル試料は100℃までの加熱温度では熱の移動が伝導伝熱形式を維持し、熱移動速度は水分量に比例して増加した。E型粘度計測定の結果、油相体積分率(φ)の増加は粘度と降伏応力を増大させた。エマルションの安定化機構は油相体積分率の増加と卵黄中の食品生体高分子の相互作用の相乗効果によると推測した。O/W型乳化系の伝熱機構はエマルションの油相体積分率によるレオロジー的性質の付与、乳化剤(卵黄)の界面活性作用、乳化剤(卵黄)と分散油滴の構築状況等が水分子の運動性を制御し、1次元方向への伝導伝熱機構に影響を与えると推測した。
  • 永谷 明子, 太田 尚子
    セッションID: 2Ea-7
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
    会議録・要旨集 フリー
    目的可食性フィルムに関する研究は、資源の有効利用と環境保全の立場から注目されている。本研究では、既に明らかにした知見である脂肪酸塩添加によるβ-ラクトグロブリン(β-LG)ゲルの物性の改変効果を活かし、この系を用いて更にフィルムを調製しその諸性質を調べた。
    方法機械的特性として曲げ強度を、粘弾性測定装置RFS-_III_(TAインスツルメント社製)にて調べた。フィルムの微細構造観察は、走査型電子顕微鏡SSX-550型(島津製作所製)を用いて行った。フーリエ変換赤外分光分析は、FT-IR 8300型(島津制作所製)を用いて、全反射法により分析した。
    結果カプリン酸ナトリウム(NaC10:0)添加分離ホエータンパク質(WPI)フィルムとβ-LGフィルムの曲げ強度を比較したところ、いずれも、タンパク質濃度の増加に依存して伸展性が増加したが、後者のほうが約20倍高かった。フィルム表面観察では、無添加WPIフィルムとβ-LGフィルムでは、前者の方が表面の凹凸が多く観察された。これらとNaC10:0添加フィルム比較したところ、共にNaC10:0添加フィルムでは、凹凸が少なく観察された。ここで認められたβ-LGフィルムとWPIフィルム間の結果の違いは、WPI中に含まれる共存タンパク質に基づくと考えられた。さらにフィルム形成機構をタンパク質二次構造変化の観点から調べたところ、ゲル化及びフィルム化に伴って、アグリゲーションバンドに帰属される1612cm-1から1614cm-1付近のバンドが次第に増加することが判った。
  • 石川  恵美, 落合 寛, 金子 としみ, 太田 尚子
    セッションID: 2Ea-8
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    目的 既に私たちは種々の食品タンパク質について脂肪酸塩誘導ゲル形成能があることを報告した。本研究では更に詳細な知見を得るため、物性の異なるゴマ13Sグロブリン(13S)を用いてゲル形成時におけるタンパク質二次構造変化の挙動を明らかにすると共に、異なる物性を呈する要因の一つと考えられるタンパク質の表面疎水性を明らかにし、その相関性について考察することを目的とした。
    方法 試料はゴマ種子から調製した粗13S画分を用いた。この13Sにカプリン酸ナトリウムを加え食塩存在下pH8.4に調整後、常温下でのゲル状凝集体形成の有無を視覚的に観察した。次に、ゲル状凝集体が形成される過程を動的粘弾性の時間依存性測定により調べた。タンパク質二次構造変化はFT-IR分光分析を用い、表面疎水性は蛍光プローブ(プロダン)を用いた蛍光分光分析法により測定した。
    結果 14.5%13S、付加食塩濃度0.35M、カプリン酸ナトリウム濃度3.5%以上の場合、透明度の高いゲルが得られた。この機構をFT-IR分光分析により解析したところ、ゲル形成時には分子内β-シート(1636cm_-_1付近のピーク)が減少し、同時に分子間β-シート(1616cm_-_1付近のピーク)が増加している事が明らかになった。次に動的粘弾性測定によりゾル‐ゲル転移時間がそれぞれ40分(A)、9時間(B)、24時間(C)の異なる3つの試料が得られた。それらの表面疎水性を測定したところA、Bの傾きはCのそれよりも大きく、ゾル_-_ゲル転移時間が早い試料ほど表面疎水性が高くなった。脂肪酸塩誘導ゲルの形成性とタンパク質の表面疎水性の強さには正の相関があることが示唆された。
  • 金親 あつ美, 高木 稚佳子, 藤井 恵子, 大越 ひろ
    セッションID: 2Ea-9
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    <目的>大豆は良質なタンパク質を含み、近年では大豆の3次機能を期待した商品も広く出回っている。本研究では豆乳の起泡性に着目し、豆乳泡沫と米粉を用いて含泡食品の創製を試み、含泡米粉食品の品質に及ぼす泡沫特性の影響について検討した。<方法>無調製豆乳100gをハンドミキサーを用いて撹拌することにより泡沫を調製した。温度を25℃、撹拌速度を650または950rpmとし、撹拌翼を3種、撹拌時間を1_から_10分の5条件でそれぞれ泡立てた15種類の泡沫を用いた。豆乳泡沫に米粉65gの割合で混合したバッターを35gカヌレ型に詰め、スチームコンベクションで300℃5分+100℃5分で焼成し含泡米粉食品を得た。比較対照として卵白を用い、同様に試料を調製した。焼成一日後の製品について比容積、レオロジー特性、水分含量を測定した。バッターについては動的粘弾性を測定した。<結果>調製法の工夫により豆乳泡沫と米粉のみで含泡食品を創製できた。豆乳、卵白いずれの泡沫を用いた製品でも、比容積が大きいほど柔らかくなる傾向が認められた。豆乳泡沫では、平均気泡径が20μm以上であると平均気泡径と製品の硬さに比例関係が見られたが、それ以下の気泡径では逆の傾向となった。豆乳泡沫の気泡径分布における歪度と製品の硬さには相関関係は得られなかったが、豆乳泡沫の平均気泡径を20μm付近に調製すると比容積が大きくかつ、柔らかいケーキが得られることが明らかとなった。このバッターの流動性(?G’)は他の泡沫を用いた試料よりも高値を示す傾向にあった。以上の結果から豆乳を用いた含泡米粉食品を創製する際にはその平均気泡径を制御することで、バッターの流動性を決定づけ、製品の比容積と硬さを調節することができると考えられた。
  • 佐藤 久美, 久米谷 寛子, 永塚 規衣, 長尾 慶子
    セッションID: 2Ea-10
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    【目的】我々はこれまでに材料及び調製条件の異なる煮こごりを調製し、煮汁中に溶出したコラーゲンの可溶化の程度を煮こごりの物性面と合わせて微視的に追跡してきた。今回は廃棄物である魚のあら及びうろこの再利用を目的とした“煮こごり”を調製し、その調理特性について検討を行った。
    【方法】鯛のあら(皮・骨・頭・尾・内腹部)及びうろこは解体後の新鮮なものを魚専門店より購入し、直ちに小分けして冷凍(-50℃)保存し、その都度必要量を低温(5℃)解凍して用いた。あら100gに水60gを加え、10_から_90分までの定時間加熱し、ろ過後の煮汁を60gとなるように調製した。一方、うろこは50gに水100gを加え、あらと同様に定時間加熱し、煮汁が100gとなるように調製した(対照の水煮試料)。さらにうろこ特有の生臭さをマスキングするために、加熱初期から酒、醤油、酢を各々内割りで10%添加した(調味料添加試料)。各試料ゾルの透過色、pH、動的粘弾性及び電気泳動による分子量分布を測定した。冷蔵庫で24時間保蔵した煮こごりゲルの力学試験及び官能試験を行った。
    【結果】あらの水煮試料は短時間加熱で硬いゲルを形成したが、うろこは長時間加熱でも硬く安定したゲルが得られた。上記調製条件により得られた煮こごりゲルの硬さはいずれも咀嚼困難者用基準の範囲にあった。ゲルの動的弾性率は破断試験結果と同様の傾向が観察された。一方、調味料添加試料は調味料の種類によりゲルの物性が異なることが明らかとなった。特に食酢添加試料は対照に比べ溶液のpHが低く、短時間加熱で低分子化が見られ、硬いゲルを形成した。醤油の添加はうろこ臭のマスキング効果が大で好まれた。
  • 森高 初恵, 三ツ橋 友美, 橋本 千晴
    セッションID: 2Ea-11
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    目的 寒天、ジェランガムおよびκ-カラギーナンのゾルーゲル転移に及ぼす降温速度の影響を、塩化ナトリウム (NaCl)添加試料と無添加試料の貯蔵弾性率、損失弾性率およびDSC曲線を測定することにより検討した。
    方法 0%、0.1%、0.3%、0.5% NaClを添加した0.8%濃度の寒天ゾル、ジェランガムゾル、κ-カラギーナンゾルの貯蔵弾性率および損失弾性率を、65℃-5℃の温度帯で降温速度0.07℃-6℃でMCR-300により測定した。また、0%、0.3%NaCl添加の0.8%濃度の各ゾルについて、65℃-5℃の温度帯を0.07℃-1.2℃の降温速度でMicro-DSC_III_を用いてDSC曲線を測定した。
    結果 降温速度の影響はすべてのゾルで認められ、降温速度が遅いものほど貯蔵弾性率および損失弾性率は高く得られた。ジェランガムゾル、κ-カラギーナンゾルではNaClの濃度が増加するに従い、貯蔵弾性率と損失弾性率は顕著に増加した。また、寒天ゲルについても降温速度が遅いものではNaClの高濃度で、貯蔵弾性率は僅かに高くなった。
    ゾルーゲル転移時のピーク温度は、すべてのゾルで降温速度が遅くなるに従い高温側にシフトした。寒天ゾルを除いて、ジェランガムゾルとκ-カラギーナンゾルではNaCl添加によりDSC曲線ではピーク温度が高温側にシフトした。エンタルピーは寒天ゾルではNaCl添加の有無による違いは認められなかったが、ジェランガムゾルとκ-カラギーナンゾルでは僅かに増加した。しかし、降温速度による影響は認められなかった。
  • 粟津原 理恵, 野村 孝弘, 栗原 孝行, 二階堂 修, 長尾 慶子
    セッションID: 2Ea-12
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    目的: そばのポリフェノール成分であるルチンは、タンニンのように異種タンパクと相互作用して食品の物性を変化させることが考えられる。そこで、そば添加食品の良好なテクスチャーを見出すために、ルチンとタンパク質の相互作用について追究した。用いたタンパクはタンニンと親和性が高いゼラチンで、混合比、pHを変えてゲル特性の解明を試み、ゲル中におけるルチンの結晶性との関連性についても検討した。
    方法: アルカリ処理低温抽出、高温抽出の各ゼラチンを50℃蒸留水に溶解し、ルチン-メタノール溶液を添加してルチン濃度50、100、500、750、1000、2500、5000ppmのサンプル(全量100g)を調製した。pHを、5、5.7、6.5、7.5に調整して5℃で2時間冷却ゲル化後、破断特性などを検討した。また、0、0.5、3、10%の各ゼラチンゾルに5000ppm濃度でルチンを添加し、24時間冷蔵庫(5℃)で保持してルチン結晶を顕鏡観察した。
    結果: pH未調整試料(pH5.7)では、ゼラチンの種類に関係なくルチン添加濃度が高くなるに従い破断応力、破断歪はともに低下した。特にルチン2500、5000ppm試料中には結晶構造が出現し、脆くやわらかいゲルとなった。pH5では添加ルチン濃度による破断特性値の差は些少であった。またpH7.5では高濃度ルチン添加においても結晶が見られず破断特性値の低下は抑制された。一方、蒸留水中ではルチンは毛足の長い針状結晶が絡まりあって析出したが、ゼラチンゾル中では濃度が高くなるに従い、短くて細い結晶が塊状に出現した。さらに、電気泳動による各種条件下での分子量分布を測定し、電子顕微鏡によるゲル構造解析と合わせてルチンとゼラチンの相互作用について検討した。
  • 東口 みづか
    セッションID: 1Fa-1
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    [目的]けいらんは岩手県遠野市,青森県むつ市,秋田県鹿角市とその周辺地域に古くから伝わる伝統料理であり,主として冠婚葬祭や小正月,来客をもてなす際に食されるハレの日の料理である。その名称は,あんの入った卵型の白玉だんごが2つ並んで汁の中に浮かんでいる様子からついたとされているが,伝承経路など不明な点が多い。地域により副材料に遠いがあるため,同じけいらんでもその嗜好特性には大きな相違があるものと考えられる。そこで,種々の官能検査を行うことによりそれらを明らかにした。
    [方法](1)岩手,青森,秋田のけいらん3種類をサンプルに,けいらんの食経験のない学生108名をパネルとしてシェツフェの一対比較法による好ましさの評価を行い,分散分析により解析を行った。(2)副材料を1材料ずつ除去して調製したけいらん7種類をサンプルに,味覚訓練を一定期間行った学生15名をパネルとしてSD法による印象についての評価を行い,評価項目は主成分分析,サンプルはクラスター分析により解析を行った。(3)(1)と同様のサンプル,_丸2と同様のパネルを対象として一対比較法による他の料理との類似度の評価を行い,多次元尺度法により解析を行った。
    [結果]3種類のけいらんにおいて最も好まれたのは青森であり,岩手と秋田間において嗜好差は認められなかった。副材料の相違は外観や親しみやすさなどに影響を及ぼし,副材料としてそうめんが加わることにより,秋田は岩手や青森に特性が近づいた。岩手はあんを使用した菓子に,青森と秋田はしょうゆ味の汁物に類似する傾向を示した。
  • 笠松 千夏, 高岡 素子, 戸田 貞子, 飯島 久美子
    セッションID: 1Fa-2
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
    会議録・要旨集 フリー
    目的 精進料理は動物性食品を一切使用しないことから、カロリー控えめでヘルシーであると思われている。精進料理メニューの実態調査を行い、精進料理の栄養と食味の特徴を明らかにすることを目的とした。
    方法 鎌倉に店舗を構える精進料理専門店で季節のメニューを注文し、食品ごとの重量を測定した。栄養価計算はエクセル栄養君にて行い、50-69歳女性、身体活動レベルIIの1日の推奨量を基準に、各専門店の1食分のメニューの栄養バランスを検討した。また、白和え、きんぴらごぼうを”炒め”および”ゆで”の2通りで調製し、官能評価により香り、塩味、甘味の強さ、食感の好ましさについて比較した。
    結果 調査した専門料理店メニュー1食分のエネルギーは、876-1222kcalであり、エネルギー比率ではたんぱく質の割合が少なかった。不足している栄養素はビタミンDとビタミンB12であった。野菜の使用量は150-360gと多かった。白和えは具材を油で炒めることにより塩味を強く感じ、食感が好まれた。きんぴらごぼうは油で炒めた方が、甘味を強く感じた。精進料理メニューは食味の点で単調にならないよう、野菜類のうまみを存分に引き出すためにだしと油を効果的に使用した調理であることが確認できた。
  • 江間 三恵子
    セッションID: 1Fa-3
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】乾燥食品は天日や風力などを利用して乾燥したものである。古来から乾燥野菜は日本人の食生活に深い関係のある食品である。そこで野菜類の加工食品化の発展の時代背景とその変遷の過程を明確にし、またその目的、栄養価、利用法などを示し、食文化や食生活へ与える効果やその影響などを考察する。【方法】乾燥食品の種類および製法、用途を特許庁公報の台帳(明治18年:1885から平成16年12月:2004までの119年間)をもとに乾燥野菜、キノコ、果実類などの特許公報を検索し、特許の内容から乾燥食品の種類、特性およびその製法等を特許を調査した。【結果】乾燥野菜に関する特許は234件あった。乾燥粉末54(23.1%)、ガーリックパウダー30(12.8%)、乾燥野菜22(9.8%)、他種類を混合したもの15(6.4%)、麦若葉14(6.0%) の順(%は総数に対する割合を示す)であった。乾燥法では自然乾燥、凍結真空、加熱、熱風などが非常に多く用いられいる。【結論】乾燥食品は健康志向型食品で食物繊維やミネラルなども多く含有しているので生活習慣予防になるし、乾燥食品のメリットを見直す必要がある。乾燥野菜、果実類の加工に関する特許件数は年々増加している。特許は食文化に貢献している。最後に、日頃ご指導、御鞭撻をいただいている東京農業大、田所忠弘教授、鈴木和春教授、中島常雄名誉教授、及び相模女子大、野田艶子助教授の各先生に感謝します。
  • 佐原 秋生
    セッションID: 1Fa-4
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
    会議録・要旨集 フリー
    〈目的〉わが国、特に東京では、フランス料理店の動きが再び活性化しており、本家フランスなど外資系の出店も目立つ。そこでまた議論となるのは、「本場そのまま」の味と「日本人に合わせた」味のいずれがおいしいか、という問題である。日本人の海外経験が豊かになり、料理の嗜好が大きく変化している今日、古くて新しいこの問題を整理したい。
    〈方法〉まず空間的に、すなわち各国に於いて現在どのようなフランス料理が行われているかを見る。次いで時間的に、すなわちたとえばフランスと日本に於いて、どの時期にどのようなフランス料理が好まれてきたかを知る。
    〈結果〉「おいしさ」は食べる主体と食べられる客体との関係で決まる。主体による判断の背景は動物性=生理と、人間性(文化)=心理とである。心理の内訳は体験・習慣・知識である。客体たる料理は、選択素材・質・量・取り合わせ・火具合・味付け・盛り付け・提供温度からなる。そして主体客体の双方に「状況」があり、主体側の個別状況は主体の生理と心理に影響を与え、客体側の共通状況である供食環境としてのハードウェア・ソフトウェア・対価は、主体の心理に働きかける。
     一般の人々にとっても食が「必要」から「娯楽」に転じた先進地域では、「おいしさ」の判定に際して、主体の心理部分の比重が高まっている。旅行経験が増大し、食に関する情報量が豊富な場合は、知識によって測られる傾向がある。現在の日本では、「日本人に合わせた」味に親しみを覚えつつも、知識にリードされて「本場そのまま」の味に「おいしさ」を感じる層がふえていると窺える。
  •  20年間の調査から 
    名倉 秀子, 大越 ひろ, 茂木 美智子
    セッションID: 1Fa-5
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    目的 日常の食生活の外部化は,女性の社会進出と同時に食品産業や外食産業の商品開発により増加している.特別な日も例外ではなく,その外部化は中食の担い手であるCVSでのお節料理の販売実態から増加傾向にあることは明らかであるが,その質的実態は明らかではない.また正月の外食実態の調査報告もみられない.著者らは,これまで正月三が日の家庭内の食を報告してきた.ここでは,正月の外食実態の質的変化を時系列的に分析する.方法 1986年から20年間,首都圏にある大学(短大含む)の学生を対象として,正月三が日に喫食した食品・料理を調査した.毎年80名から200名に調査票を配布し,自記式留置法により記録調査した.有効回答票は,観測年,日,時刻,料理名,作り手,喫食場所,その他の項目について分類ごとのコード番号を付し,データベースを作成した.作り手と喫食場所の要素から,家庭以外で喫食した食品・料理を抽出し,それらに関する情報を集計し,SPSSによる統計処理を行なった.結果 1986年_から_2005年の調査回答総数は2,789人,有効回答率は各観測年91.2%以上を示した.三が日に喫食した総料理数は87,234品,主食,副食,汁物の67,147品を分析した.外食率は20年で7.3%_から_16.5%を推移し,観測開始年より増加傾向が見られ,元日の外食率が高くなった.外食内容はパン,洋風の麺料理,お節料理以外の副食が多かった.外食の理由について,元日は初詣や旅行, 2日は娯楽, 3日は新年会が多く,またアルバイト等の理由もみられた.若年者の三が日の外食は新年の行事に伴うものの他に,日常生活の延長による理由もかなりあった.
  • 坂本 加奈, 住 正宏, 木村 敬, 宮崎 裕介
    セッションID: 1Fa-6
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
    会議録・要旨集 フリー
    (目的) 健全な食生活は健康の維持・増進にとって欠かせないものであり、最近、健康志向が高まる中で、ヨーグルトの消費量が牛乳・乳製品の中でも特に増大している傾向にある。本研究ではヨーグルトについて、食生活でのヨーグルトの位置付けや、どのような人に食べられているのか等の現状を調査した。
    (方法) 2005年12月に往復郵送による留め置き法でアンケート調査を行い、首都圏に在住する12歳から69歳の男女1087名から有効回答を得た。ヨーグルトについて、好みや食頻度、イメージ、よく食べているもの等の質問から得られた回答について解析を行った。
    (結果) ヨーグルトは「美肌効果が期待できそう」、「栄養バランスが良さそう」等の美容や栄養イメージに比べ、「健康に役立ちそう」、「胃腸の調子を整えてくれそう」という健康イメージを持つ人が非常に多かった。ヨーグルトに対して「おいしい」というイメージを持っていない人でも健康イメージを持つ人は多く、健康感は共通イメージであると考えられた。ヨーグルトを「ほぼ毎日食べる」と回答した人は全体で21%であったが、50代女性ではほぼ毎日食べる人が40%、60代男性では35%認められる等、特に高年齢層で食頻度が高い人が多かった。また、高年齢層の特徴として、「整腸作用があるものをよく食べる」という人が多かったのに対し、低年齢層では「デザート感が強いものをよく食べる」と嗜好性を求める人が多かった。ヨーグルトに対する意識は年代などで異なり、その点がヨーグルトの食頻度に関係していると考えられた。
  • 武藤 亜有, 山内 知子, 南 廣子
    セッションID: 1Fa-7
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】茶は日本の主要な農産物の1つである。近年、茶の機能性成分の研究成果が認められ、ガンやその他の生活習慣病の予防を考慮するとき、成分的に優れた飲料・食品である。〈BR〉 1993年お茶料理研究会が発足し、この研究会では、茶の機能性成分をはじめ、生産から消費にいたるまでの各分野からの話題を提供してきた。また、茶を食品材料として調理に利用したレシピを公募して『茶料理コンクール』を行っている。今回は、1995年から2004年までの10年間の『茶料理コンクール』への応募レシピから、茶が飲料だけでなく調理へ利用されている現状について、検討したので報告する。〈BR〉【方法】1995年から2004年までの10年間(10回)における茶料理の応募作品から、利用されている茶の種類、レシピ中に出現した食品の種類、茶の種類と調理への利用法などについて検討した。〈BR〉【結果】利用されていた茶の種類は、緑茶(玉露、煎茶、抹茶、ほうじ茶)、紅茶、ウーロン茶をはじめ、茶の新芽、飲んだ後の茶殻など多種類であり、最も多く利用されていたのは抹茶であった。レシピ中の茶以外の食品は、魚類や肉類、野菜類ではたまねぎやにんじんをはじめ45_から_50種類、いも類ではじゃがいも、さつまいも、ながいも、やまいもなど、油脂類ではバター、サラダ油、ゴマ油など、多様な食品が出現していた。茶の種類と調理への利用法は、抹茶を菓子に、煎茶をご飯ものにするレシピが多くみられた。
  • 岡田 千穂, 柳沢 幸江
    セッションID: 1Fa-8
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
    会議録・要旨集 フリー
    目的 中高年男性の料理づくりを中心とした食生活や家事の状況を明らかにするとともに、近年健康運動の一環として広がりを見せつつある男性の料理教室の効果について研究することを目的とした。
    方法  首都圏在住の40歳以上の男性211名に対するアンケート調査、および市川市周辺の公共施設で活動する男性料理教室に参加している40歳以上の男性100名に対するアンケート調査を実施した。
    結果  中高年男性の家事では、食品の買物や食事の後片付けは比較的よくしており、料理づくりや献立の決定はあまりしていないことが明らかとなった。一般男性と料理教室参加者を比較すると、材料の切り方を含む日常的な家庭料理経験や家庭での料理づくりを中心とした家事頻度において料理教室参加者が有意に高いことが示された。中高年男性の食生活では、中高年男性全般に食生活に対する意識が高く、多くの人が食事の際の食品摂取量にも気を配っていることが明らかとなった。食生活全般において料理教室参加者の意識がより高いことが示され、料理教室の参加により、料理づくりを中心とした家事頻度が高くなることや食生活意識の向上効果があることが示唆された。また、料理教室参加者は、一般男性と比較してサークル等の地域活動に参加している割合が有意に高いことが明らかとなった。
  • 島田 玲子, 澤畑 絢子, 木村 靖子, 川嶋 かほる
    セッションID: 1Fa-9
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    <目的> 従来、食生活に対する考え方や行動はそのほとんどの部分が家庭内で親から子へと伝承されるものと考えられてきた。しかし、近年生活の変容が著しいこと、家庭の教育力が衰えていることを背景として、家庭内で食に関わる認識や技術が伝承されなくなっているのではないかと危惧されている。そこで、本研究では家庭内での食に関わる伝承の実態把握の一端として、家庭において調理がどの程度親から子へ伝承されているかを知ることを目的として、親子のそれぞれが調理した試料の類似性の検討を行った。
    <方法>大学生とその親22組のそれぞれに肉じゃがを調理してもらい、使用した調味料の報告とともに、試料として入手し、親子間でどの程度の類似性が認められるのかを検討した。使用具材の比較検討を行い、また調味の特徴をつかむために、煮汁の塩分濃度(電極法)、糖度(屈折計)ならびにL-グルタミン酸量(酵素法)を測定し、類似性を検討した。試料提供を受けた後一定の時間をおいてから、子世代に対して、家庭での調理や調味への実態や意識、また家庭内での食生活行動の伝承について、インタビューによる調査を実施して、試料分析の結果と合わせて、伝承の実態について検討した。
    <結果>親子間では、使用具材と使用調味料はほとんど重複しており、類似性が高く、家庭での経験が影響しているものと考えられた。調味に関しては、グルタミン酸量は全体的にほぼ同じ水準にあったが、塩分濃度は0.8%から2.5%、糖度は6.9%から24.6%とばらつきが大きかった。親子間でも塩分濃度、糖度は相違が大であり、調味については類似性が高いとは言えない結果であった。
  • 佐藤 真実, 岸松 静代, 南 アイコ, 橋本 明子, 谷 洋子
    セッションID: 1Fa-10
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
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    目的 料理は盛り付けの色や量、バランスによって大きく印象が異なり、おいしさに関しても影響を与える。すでに食品特性にはテクスチャーおよびフレーバーの次に食品の色が強い影響を示すことがいわれ、さらには食欲の増進や減退には色が関わることが報告されている。そこで、本研究においては、盛り付ける際の付け合せと皿の色から、色と嗜好に関する検討を行った。
    方法 日常的に食べられる料理として揚げ物を選んだ。料理本などから盛り付け方をまとめ、実際に盛り付けしたものを写真撮影し、好まれる盛り付け方についてアンケート調査を行った。調査対象は本学学生114名の女子とした。調査項目は(1)付け合せの色と嗜好(2)盛り付けの皿の色と嗜好である。(2)に関しては主成分分析を行い、盛り付ける皿の色と嗜好について検討した。
    結果 一般的なコロッケの盛り付けをイメージした場合の付け合せとしては、トマトの赤色をいれたものがもっとも好まれた。赤色としてラディシュやにんじんを使用した場合には、嗜好的な理由で好まれる傾向がみられた。コロッケとキャベツを盛り付けるには、白い皿がもっとも好まれ、青や緑の皿は好まれなかった。すでに報告がある色の組み合わせでは茶には緑や黄が好まれる1)とあるが、今回、白が好まれた理由としては一般的で、シンプルであるからがあげられた。盛り付けは、色に判断されながらも、経験的な嗜好に左右されていることがわかった。
    〔文献〕1)奥田ら:食品の色彩と味覚の関係,日本調理科学会誌,35,p2-9(2002)
  • 石山 真由美, 佐藤 之紀
    セッションID: 1Fa-11
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】旧厚生省の通知による高齢者用食品試験法にしたがって蒸留水などのニュートン流体の溶液物性を調べ、その溶液物性の理論解析を試みた。【方法】直径20mmの円柱状のプランジャーを用い、20℃で行った。蒸留水や粘度校正標準液などのニュートン流体をそれぞれ直径40mmのセルに充填し、一定速度でプランジャーを下げた際にプランジャーにかかる力をレオメータ(RS 3305、山電)で追跡した。その際、0.01sに1回の割合(プランジャーが0.1mm進むごとに1回)でデータを記録した。【結果】蒸留水などのニュートン流体の応力ープランジャー貫入距離曲線は、プランジャー貫入距離が長くなると応力も高くなる直線に近似できた。しかし、表示される応力はプランジャーにかかった力をプランジャーの底面積で除しているため、応力をプランジャーにかかっている力に代えてもそれらの曲線の形状は基本的に変わらないと考えられた。そこで、プランジャーにかかる力をすべてプランジャーの側面から受けると仮定して応力_-_プランジャー貫入距離曲線を描いたところ、プランジャーが試料の液面に接した直後からプランジャーが液面より3mm押し進むまで応力は減少し、それ以降では応力はほぼ一定になった。このことから、プランジャーにかかる力にはプランジャー底面からの寄与とプランジャー側面からの寄与の総合的な結果が表れると考えられたため、高齢者用試験法での応力表示の物理学的解釈はきわめて複雑であると思われた。また、セルの高さやプランジャーの長さで生じるエンドエフェクトは、曲線の解析にはほとんど影響を与えていなかった。一方、プランジャーを下降させる際の一定速度を変化させても、ニュートン流体の粘度の違いを反映させることができなかった。
  • 三森 一司, 宮田 奈々
    セッションID: 1Fa-12
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
    会議録・要旨集 フリー
    目的 演者らは前報で、松皮餅に使用するために処理された松皮のポリフェノール量が未処理の松皮に比べ著しく減少する事を報告した。本報では、松皮ポリフェノールがどの処理工程で減少するのか検討するために、重曹添加や叩き工程が松皮のポリフェノールに及ぼす影響を調べたので報告する。方法 ポリフェノールの抽出は中林らの方法に準じて行った。ポリフェノールの定量はFolin Denis 法で行い、760mμにおける吸光度を測定して求めた。結果 重曹濃度を0_から_8%に変えて加熱処理した松皮では、重曹濃度が高いほどポリフェノールが減少し、重曹濃度8%で加熱処理した松皮の大部分のポリフェノールは損失していた。叩き処理が松皮のポリフェノール量に及ぼす影響を調べたところ、叩き時間0分から60分にかけては直線的に減少したが、60分から90分にかけての減少は緩やかだった。さらしを敷いた台の上で松皮を叩き、さらしに吸着したポリフェノール量を調べると、叩き時間が長くなるにつれその吸着量は増加した。松皮餅に使用する処理松皮のポリフェノール損失量は、さらしに吸着したポリフェノール量より多かったので、叩くことでポリフェノールが酸化されたり、他の物質に変化していることが考えられた。以上のことから、松皮を加熱処理するときの重曹濃度を高くしたり、叩き処理の時間を長くすることで、ポリフェノールの損失が大きくなることがわかった。今後、松皮餅のもつ健康食品としての側面に着目し、松皮抽出液や短時間加熱処理した松皮粉末の松皮餅への利用を検討したい。
  • 本間 育恵, 貝沼 やす子
    セッションID: 2Fa-1
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
    会議録・要旨集 フリー
    目的 咀嚼・嚥下機能の低下した高齢者の主食となる粥を調製するにあたり、真空包装して湯煎で加熱する方法がある。湯煎加熱では消火後の保温力も期待できるので、本研究では真空包装後の加熱方法が粥の性状に与える影響を蒸らし操作も含めて検討し、熱効率よく、かつ嗜好性も高く調製する加熱方法を明らかにすることを目的とした。方法 米と水を真空包装専用フィルムに入れ、30分浸漬後真空度99%で真空包装した。加熱は蒸らしも含めた全調理時間を50分とした。加熱速度は沸騰までの時間が6分(S)、20分(M)、30分(L)の3種類とし、最後まで加熱して沸騰を継続する(加熱)、15分前に消火しコンロ上で15分蒸らす(コンロ上蒸らし)、コンロから降ろして15分蒸らす(コンロ下蒸らし)の3条件を加えた。測定した項目は粥からの分離液量と遊離水分量、破断強度測定、テクスチャー測定、粥飯粒の形状観察、粥のα_-_アミラーゼによる還元糖生成量、官能検査などである。結果 分離液および遊離水分量は昇温速度の速い粥(S)が少なく、加えた水を十分に吸水した状態であり、粥飯粒も大きく膨潤しており、長さ、面積が大きくなっていた。これらの粥は破断応力、破断エネルギーおよびかたさ応力の値が低く、軟化が進んだ状態であった。加熱速度Sの加熱とコンロ上蒸らしの2条件では、この傾向に殆ど差が見られず、コンロ上蒸らしが熱効率の点からは有効な方法であった。家庭規模での加熱を想定し、Sの加熱条件で湯煎用の湯を少なくして調製した場合、コンロ上で蒸らせばSのコンロ上蒸らしとほぼ同じ物性となり、官能検査においても同程度の評価であることが確認できた。
  • 松本 祥子, 大庭 千尋, 山口 誠之
    セッションID: 2Fa-2
    発行日: 2006年
    公開日: 2008/02/28
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】有色米は薬膳料理や健康ブームから注目されている。東北農業研究センターで育成された赤米品種‘紅衣’は食物繊維、ポリフェノール、アントシアニジンの含量が高く、活性消去能も高いことが報告された。また、血糖上昇抑制効果の可能性も示唆されている。そこで本研究では‘紅衣’の消化性の観点から、食味特性を発揮させるための米の浸漬時間、吸水率、加水量等の調理における最適条件をも検討した。
    【方法】材料に東北農業研究センター2003年度産の‘紅衣’、対照として‘あきたこまち’を用いた。‘紅衣’米飯のαアミラーゼによる消化性を調べるため、米の種類、搗精度、炊飯方法の違いによって還元糖生成量を比較した。炊飯条件の浸漬吸水率、加水量による飯の炊きあがり倍率、蒸発率を調べた。炊飯後の米飯の食味に影響を及ぼす硬さ、粘りと官能評価、おいしさの指標である遊離糖含量も測定した。
    【結果】赤米‘紅衣’玄米の還元糖生成量は対照のあきたこまち玄米よりも30%低く、‘紅衣’全粥の還元糖生成量は対照の‘あきたこまち’全粥よりも約6%低かった。‘紅衣’と‘あきたこまち’玄米の還元糖生成量の経時的変化では0分では両品種にほとんど差が見られなかったがそれ以降では‘紅衣’の方が低く、‘あきたこまち’より明らかに消化性が低いことが確かめられた。米の美味しさの指標である遊離糖含量は、‘紅衣95%搗精’においてグルコース、スクロース、フルクトースで対照より高く、おいしさの条件を供えていることがわかった。以上の結果から‘紅衣’米飯を家庭の食事に取り入れる可能性が示唆された。
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