一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
60回大会(2008年)
選択された号の論文の356件中1~50を表示しています
2日目口頭発表
  • 内田 友乃, 池田 彩子, 市川 富夫
    セッションID: 2A1
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    【目的】トコフェロールは、主に肝臓でシトクロームP450(CYP)4Fを律速酵素として、カルボキシクロマン(CEHC)に代謝されるが、肝臓以外の臓器でのトコフェロールの代謝は明らかではない。私たちは、小腸でCYP4FとCEHCの存在を確認しており、小腸でトコフェロールが代謝されるのではないかと考えている。本研究では、摂取したトコフェロールが、小腸で代謝されるかどうかを明らかにすることを目的とし、トコフェロール阻害剤のケトコナゾール(KCZ)の投与で、小腸トコフェロール濃度が上昇するかどうかを調べた。なお私たちは、リポタンパク質リパーゼ(LPL)活性の阻害で、トコフェロールが肝臓へ輸送されないことを見出しているため、その手法にて肝臓から小腸に排泄されるトコフェロールの影響を除いた条件で実験を行った。
    【方法】ビタミンE欠乏ラットを半分に分け、一方にはLPL阻害剤のTriton WR1339 (Triton)を尾静脈投与した。その後、トコフェロールのみ又はトコフェロールとKCZを含むエマルジョンを経口投与し6時間後に屠殺し、血清及び臓器のα及びγT濃度を測定した。トコフェロールには、αトコフェロール(αT)又はγトコフェロール(γT)を用いた。
    【結果】体内のα及びγT濃度は、Triton投与で血清では高く、肝臓及び小腸では低くなった。血清、肝臓及び小腸のαT濃度は、KCZ投与による変化は見られなかった。Triton投与時の小腸γT濃度は、KCZ投与によって有意に上昇したが、血清γT濃度に有意な上昇は見られなかった。よってTriton投与時にKCZ投与によって小腸γT濃度が上昇したため、γTは小腸からの吸収時に一部が代謝されていると考えられた。
  • 曽我部 夏子, 丸山 里枝子, 祓川 摩有, 五関-曽根 正江
    セッションID: 2A2
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    【目的】アルカリホスファターゼ(ALP) は、アルカリ性に至適pHを持つ亜鉛含有酵素で、リン酸エステルを無機リン酸とアルコールに加水分解する反応を触媒する。小腸ALPは、小腸刷子縁膜に高濃度に存在し、食事性因子によって活性が上昇することが示されているが、その生理機能については不明な点が多い。近年、緑色野菜や納豆に多く含まれているビタミンKには、骨代謝に対する作用など様々な生理機能があることが注目されている。本研究では、小腸ALP活性へ及ぼすビタミンK経口投与の影響について検討を行った。
    【方法】7週齢SD系雄ラットを3群に分け、ビタミンK(フィロキノン:PK)を経口投与したPK群、ビタミンK〔メナキノン-4:MK-4(メナテトレノン)〕を経口投与したMK群およびコントロール群とした。投与後1.5時間、3時間、4.5時間において、小腸粘膜を十二指腸、空腸上部、空腸下部、回腸上部、回腸下部の5部位にわけて採取を行い、ALP活性を測定した。
    【結果】ビタミンKの経口投与によって、小腸ALP活性の上昇が認められた。すなわち、PK群では十二指腸および回腸上部において、ALP比活性がコントロール群に比べて有意に高値を示した(それぞれp<0.05, p<0.001)。また、MK群でも、十二指腸、空腸下部および回腸上部において、ALP比活性がコントロール群より高値を示した(それぞれp<0.001, p<0.001, p<0.05)。本研究から、PKまたはMK-4のいずれにおいても経口投与による小腸ALP活性上昇作用が明らかになった。
  • 望月 美也子, 長谷川 昇, 山田 徳広, 東 善行
    セッションID: 2A3
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    【目的】
     アスタキサンチンは、カロテノイドの一種であり、エビやカニの殻、鮭の身などに含まれている赤橙色の色素である。既に、肥満マウスにおいて、アスタキサンチンの抗肥満作用が報告されているが、細胞レベルでのメカニズムの検討は行われていない。
     そこで本研究では、3T3-L1脂肪細胞を用いて、細胞増殖の程度と脂質代謝に及ぼす影響を明らかにするために行われた。
    【方法】
     細胞増殖に及ぼす影響を調べる際には、3T3-L1細胞を培養し、アスタキサンチンを添加して、細胞がconfluenceに達するまでの経過を観察した。脂質代謝に及ぼす影響を調べる際には、細胞がconfluenceに達した時点で、インスリンを培養液に加え、脂肪細胞へと分化させた。充分に脂肪を取り込んだ細胞に、アスタキサンチンを添加し、取り込まれた脂肪がどのように変化していくかを観察した。
    【結果・考察】
     3T3-L1細胞を培養し、あらかじめアスタキサンチンを添加しておくと、前脂肪細胞の増殖を有意に減少させた。一方、充分に脂肪を取り込んだ成熟脂肪細胞に、アスタキサンチンを添加すると、コントロールに比べ蓄積脂肪が減少し、細胞質グリセロール量が増加する傾向がみられた。
     以上のことから、アスタキサンチンは、脂肪細胞の増加を防ぎ、成熟脂肪細胞の蓄積脂肪を積極的に分解することが明らかとなった。
  • 佐藤 香澄, 佐々木 梢, 加藤 みゆき, 大森 正司
    セッションID: 2A4
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    【目的】GABAは、乳酸菌などの微生物に広く分布するグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)の作用により、グルタミン酸が脱炭酸されて生成される。GABAの主な生理活性作用としては、脳の血流改善、血圧降下、精神安定などが知られており、現在、GABAを多く富加させた食品が注目されている。本研究では、肝臓におけるGABAの代謝産物の同定、および代謝酵素の特性を明らかにすることを目的とした。
    【方法】ラット肝臓を摘出し、摩砕後透析することにより、in vitroでのGABA含量の変動をアミノ酸自動分析計により分析した。ラットに10%GABA水溶液を強制経口投与後、肝臓摩砕液を硫酸および水酸化ナトリウムで各々酸性とアルカリ性にし、これを酢酸エチルで分画してGCおよびHPLCで分析した。透析によるGABA代謝酵素の安定性試験を行うと共に、硫安分画、ゲルクロマトグラフィーで部分精製を試みた。
    【結果】1.肝臓摩砕液にGABAを添加して反応させると、GABAは増加した値として示され、肝臓摩砕液を透析してからGABAを添加し反応させると、GABAは減少してくるのが観察された。 2.ラット肝臓を放置したときの肝臓100g当たりのGABA含量は、1時間後で14.70mgに達していた。 3.熱安定性試験では、40℃以上では不安定であることが認められた。
  • 尾崎 直子, 岩村 真実, 池本 慎二, 藤原 葉子
    セッションID: 2A5
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    目的:2型糖尿病の発症に関与する脂肪組織での炎症状態に多価不飽和脂肪酸がどのような影響を及ぼすか、またそのメカニズムは未だ明らかでない。本研究室の以前の研究で成熟脂肪細胞にAAおよびEPAを添加したものをDNA microarrayを用いて遺伝子発現を網羅的に解析したところ、炎症関連遺伝子の発現上昇が見出された。本研究ではその中でも発現上昇が顕著であったinterleukin6(IL-6)遺伝子に注目し、プロスタグランジンE2生成と酸化の観点からその発現上昇メカニズムについて検討した。 方法:SGBSヒト脂肪細胞は4日間の分化誘導後10日間成熟させた。成熟脂肪細胞細胞にAAおよびEPAを添加し24時間後リアルタイムPCR法にてIL-6遺伝子発現を測定した。プロスタグランジンE2の生成については生成酵素であるCOXの阻害剤であるインドメタシンをAAまたはEPAと同時に添加し、IL-6遺伝子発現とプロスタグランジン量を測定した。酸化については抗酸化剤として知られるα-トコフェロールおよびレスベラトロール、セサミンをそれぞれ添加し、IL-6遺伝子発現と過酸化脂質の量を測定した。 結果:IL-6遺伝子はAAおよびEPA添加で有意に発現が上昇し、そのメカニズムとしてAAではプロスタグランジンE2の生成が関与していることが示唆された。またAAとEPA両方で過酸化脂質の関与が示唆された。同じく抗酸化作用を持つα-トコフェロールおよびレスベラトロール、セサミンではその効力に違いが見られたため、それぞれの持つ作用についても今後検討する必要がある。
  • 市 育代, 小城 勝相
    セッションID: 2A6
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    <目的>動脈硬化発症には血管内皮細胞における過剰なアポトーシスが関与している。セラミドはアポトーシスを有する生理活性脂質であり、以前我々はヒトの血漿セラミドが動脈硬化危険因子と相関関係にあることを報告している。中でも血漿コレステロールとは最も高い正の相関がみられた。そこで本研究では動脈硬化モデル動物であるアポE欠損マウスにコレステロールを与え、セラミド代謝及びLDLの酸化物に及ぼす影響を検討した。
    <方法>アポE欠損マウス及び野生型マウスに、コントロール食(AIN76)もしくは1%コレステロール添加食を与え8週間飼育した。各組織のセラミドはLC-MS/MSにて測定し、LDLのタンパク質であるapoBの酸化産物はWestern blotにて測定した。
    <結果>コレステロール負荷により、アポE欠損マウスで血漿コレステロールが増加した。血漿セラミドはアポE欠損マウスで野生型マウスの5倍高く、アポE欠損マウスでのみコレステロール負荷により数種類のセラミドが増加した。肝臓のセラミドもアポE欠損マウスで高かったが、血漿ほどではなかった。脂肪組織のセラミドは両マウスで違いはみられなかった。また肝臓と脂肪組織は両マウスともコレステロールによるセラミド増加は確認できなかった。更にapoBの酸化物はアポE欠損マウスでのみコレステロール負荷により増加していた。以上より、アポE欠損マウスにおけるコレステロールの蓄積は血漿セラミド及びLDLの酸化物を増加させることが分かった。コレステロールはセラミドに比べると毒性は低いことから、セラミドが新たな動脈硬化危険因子であることが示唆された。この研究は高島夕佳、足達乃理子、中原佳代子、上川千明(奈良女大)、斯波真理子(国立循環器病センター)との共同研究である
  • 藤井 佳代子, 下野 真未, 塚本 幾代
    セッションID: 2A7
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    【目的】Znがストレプトゾトシン(STZ)誘導糖尿病ラットにおける骨量減少を抑制するかを調べた。【方法】ラット(10週齢,雌)をSTZで糖尿病誘導させた群(STZ群),STZ投与後7日目からZn含有水を自由摂取させた群(STZ+Zn群),各々の対照をCon群,Con+Zn群の4群に分けた。STZ投与後2週間飼育し24時間尿,血液,遠位大腿骨を採取した。血漿Glucose濃度,骨形成の指標である血漿Osteocalcin(OC)量,骨中アルカリホスファターゼ(ALP)活性,骨吸収の指標である骨中Cathepsin K(CK)活性,尿中デオキシピリジノリン(Dpd)量を測定し,Ca量,ヒドロキシプロリン(Hyp)量を定量した。更に,RT-PCR法を用い骨中のALP,OC,CKのmRNAを測定した。【結果】STZ群で血漿Glucose濃度は約3倍に上昇した。血漿OC量,骨中ALP活性は各々Con群の約12,45%に有意に減少し,これらのmRNAレベルも有意に減少した。またCK活性,CK mRNA,尿中Dpd量は各々Con群の約1.5,2.6,1.6倍に有意に上昇した。Ca,Hyp量は各々Con群の約80,65%に有意に減少した。即ち,STZ投与により骨形成の低下と骨吸収の上昇による骨量減少が認められた。STZ+Zn群では血漿OC量,骨中ALP活性,各々のmRNAはSTZ群と同程度であったが,CK活性,CK mRNA,尿中Dpd量は有意に減少し,Ca,Hyp量はCon群と同程度まで回復した。なお,Con群へのZn投与の影響はなかった。即ち,Znは骨吸収活性を抑制する事でSTZ誘導糖尿病による骨量減少を抑制する事が示唆された。
  • 稗 万美子, 下野 真未, 藤井 佳代子, 塚本 幾代
    セッションID: 2A8
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    [目的] ストレプトゾトシン誘導糖尿病ラットを用いて,糖尿病が骨代謝に及ぼす影響について検討した。[方法] ラット(10週齢,雌)にストレプトゾトシン(STZ;45mg/kg)を腹腔内投与後,1週間飼育し,24時間尿及び血液、遠位大腿骨を採取した。尿中の1型コラーゲン架橋N-テロペプチド(NTx)量,及び,血清中のグルコース(Glu)濃度,オステオカルシン(OC)濃度を測定した。また,骨中のアルカリホスファターゼ(ALP)活性,酒石酸耐性酸ホスファターゼ(TRAP)活性,カテプシンK(CatK)活性,カルシウム(Ca)量,ヒドロキシプロリン(Hyp)量を測定し,CatKタンパクレベルをウエスタンブロット法を用いて測定した。さらに,RT-PCR法を用い,骨中のALP,OC,TRAP,CatKのmRNAを測定した。[結果と考察] STZ投与群の血清Glu濃度は対照群の約3.2倍に有意に上昇した。尿中NTx量は対照群の約3.6倍に有意に上昇し,骨中のCa量,Hyp量は対照群の約76,90%に各々有意に減少した。骨形成活性の指標である血清OC濃度及びALP活性は対照群の約40,70%に各々有意に減少した。STZ投与群のALP mRNAレベルに対照群との差異は認められなかったが, OC mRNAは対照群の約40%に有意に減少した。また,STZ投与によって骨吸収活性の指標であるTRAP活性とmRNAレベルは対照群の約2倍に有意に上昇した。CatKの活性,タンパク,およびmRNAレベルも対照群の約2倍に有意に上昇した。即ち,STZ誘導糖尿病において,骨形成活性の減少と骨吸収活性の増加が起こり,骨量が減少することが示唆された。
  • 中田 理恵子, 藍谷 教夫, 作田 智洋, 井上 裕康
    セッションID: 2A9
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    【目的】生活習慣病予防には、適切な食事に加えて、適度な運動が重要であることが注目されているが、両者のバランスや相互作用については不明な部分が多く、分子レベルでの解明が遅れている。最近、赤ワインに含まれるポリフェノール・レスベラトロールの経口投与によりミトコンドリアの機能が改善され、運動持久力が向上することが報告された。一方で私たちは、レスベラトロールが生活習慣病予防の薬剤標的である核内受容体PPARを活性化するリガンドとして作用すること、PPARαの活性化を介して脳保護作用を有することを報告している。そこで、レスベラトロールによるPPARの活性化が、運動持久力改善効果に関与するのかを明らかにするため、レスベラトロールを豊富に含むブドウ新芽エキスを野生型およびPPARα欠損型マウスに経口投与し、運動持久力への影響を比較検討した。 【方法】野生型(129系)およびPPARα欠損型雄性マウスを4群に分け、基本食(AIN-93G),20%高脂肪食,それぞれにブドウ新芽エキスを1%添加した食餌を、各々16週間摂取させた。運動持久力は、トレッドミル走行テストにより測定した。
    【結果】普通食にブドウ新芽エキスを添加した食餌を摂取した野生型マウスにおいて、運動持久力が改善する傾向がみられたが、PPARα欠損型マウスでは改善効果は認められなかった。また、高脂肪食群ではブドウ新芽エキス添加による改善効果は見られなかった。このことより、ブドウ新芽エキスは、PPARαを介して運動持久力の改善効果を示す可能性が示唆されたが、一緒に摂取する脂肪含量の違いが改善効果に影響を与えるのではないかと考えられた。(研究協力者:田添三良子・田村恵美)
  • 曽根 保子, 藤原  綾, 桐谷 美鈴, 宮倉 玲子, 清水 有理, 小寺  貴子, 上田 悦子, 森田  寛, 成瀬  一郎, 大塚 譲
    セッションID: 2A10
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    [目的] 活性酸素は、細胞情報伝達、侵入異物攻撃、生体内でのエネルギー生産などにおいて有用な物質である。しかし、生体内で生じる活性酸素は反応性が高いため、抗酸化機構で捕捉しきれないほどの余剰な活性酸素種が生じると、生体内の遺伝子やタンパク質などに損傷を与え、老化や疾患の一因となることが知られている。これまでに、活性酸素種が様々な細胞情報伝達に関連することが報告されているが、免疫反応を誘導するサイトカインの遺伝子発現およびタンパク質発現に及ぼす活性酸素の影響については、詳細に解明されていない。そこで、初代マウス脾臓細胞を用い、免疫反応に関連する遺伝子発現レベルおよびタンパク質発現レベルに対する過酸化水素の影響を検証した。

    [方法] 初代マウス脾臓細胞の培地へ300μMの過酸化水素を添加し、インキュベートを行った後、免疫反応に関連する遺伝子発現レベルおよびタンパク質発現レベルを経時的に測定した。また、過酸化水素の添加によるアポトーシス誘導率をフローサイトメーターによって確認した。

    [結果・考察] 過酸化水素の添加により、サイトカインの遺伝子発現レベルに変動が認められたが、タンパク質発現レベルには大きな差は認められなかった。また、過酸化水素による顕著なアポトーシスの誘導は生じていないことが示された。これらの結果より、活性酸素はマウス脾臓細胞において、遺伝子レベルで免疫反応に何らかの影響を与えている可能性が考えられる。
  • 井上  裕康, 中田 理恵子
    セッションID: 2A11
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    【目的】味覚は豊かな生活にとって必須の感覚であり、老化やストレスによって変質することがわかっている。近年、甘味、酸味、旨味、苦味の受容体が発見されたが、味覚研究は未開拓の部分が多く残されている。ミラクリンはミラクルフルーツに含まれる糖タンパク質で、霊長類において酸味を甘味に変換する味覚修飾作用を持つ。この作用には糖鎖必要の可能性が報告されているが、ミラクリンが甘味受容体や酸味受容体とどのような相互作用をするかなど、分子レベルでの作用機構は明らかではない。そこで我々はミラクリンの味覚修飾作用の分子作用機構解明を目指す第一歩として、活性型組換えミラクリンの発現の研究を開始した。【方法】ミラクルフルーツからRNAを抽出し、定法に従いミラクリンのクローニングを行った。組換えタンパク質の発現には、効率的であるが糖鎖を付加しない発現系である大腸菌と、糖鎖を付加される発現系であるシロイヌナズナの2つの系を構築した。【結果】天然ミラクリンはジスルフィド結合を介したホモダイマーを形成して活性を持つが、大腸菌で発現させたミラクリンにおいても、ウエスタンブロット法で解析した結果、部分的にホモダイマーを形成していることが明らかとなった。また、シロイヌナズナで発現させたミラクリンでは、ほとんどがホモダイマーを形成していた。さらに組換えミラクリンを精製後、官能検査による活性評価を行ったところ、シロイヌナズナで発現させたミラクリンは酸味を甘味に変換する味覚修飾作用を持つことが明らかとなった。一方、大腸菌で発現させたミラクリンにも同様な活性を持つ可能性が高いことがわかり、その結果を含めて発表する予定である。(研究協力者:松山友美)
  • 磯部 由香, 辻 友衣, 湯川 夏子, 平島 円, 久保 加織
    セッションID: 2A12
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    【目的】近年、食生活および食生活を取り巻く環境が変化しており、その影響が顕在化している。これに対応し、解決を目指す取り組みとして食育が推進されている。これまで行われてきた食育は、栄養や食品の知識習得など、身体的健康の充実を目指すものが主流であった。これは、正しい栄養摂取と身体的健康との関係が明白であり、指導を具体的に行いやすいところにあると思われる。一方、食育の指導目標には、身体的健康に加え、精神的健康の充実があげられている。しかしながら、食育に起因されるとする精神的健康との関連については明確にされていない。そこで本研究では「幼少期の豊かな食生活が精神面を育成し、ひいては豊かな人間性を形成する」という仮説をもとに因果関係を検証した。
    【方法】三重、大阪および滋賀の幼稚園、保育園、小学校(1~3年)に通う子を持つ保護者(調理担当者)を対象に、2007年10~11月に質問紙調査を行った。475部を配布し、420部を回収(回収率88.4%)、有効回収数は345部(72.6%)であった。調査項目を「幼少期の食生活」と「人間性」に分け、これらの相関、因果関係について分析を行った。
    【結果】幼少期の食生活と人間性の間に、正の有意な相関がみられた。下位尺度間においても幾つかの相関が見られたことから、幼少期の食生活と人間性は、密接な関係にあることがいえる。また、幼少期の食生活を構成する中の「家族との充実した食生活」因子が、共感性、道徳性、社会性、そして人間性の形成に、最も強い影響を与えていたことが明らかとなった。以上より、仮説は証明され、豊かな人間性の形成に、幼少期の食生活は影響を及ぼしていることが認められた。
  • 木村 安美, 南里 明子, 溝上 哲也
    セッションID: 2A13
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    [目的] 生活習慣病の発症に関わる肥満を予防することは大きな関心事である。肥満と食行動との関連は身近な話題としてよく取り上げられているが、科学的に調べた報告は意外に少ない。そこで成人を対象にした調査のデータを用いて食行動と肥満との関連について検討した。
    [方法] 対象者はがん、心疾患、脳血管疾患、糖尿病の現病歴および既往歴のない21~66歳の九州地区の公務員488名(男性290名、女性198名)である。2006年7月~11月の職場健康診断において自記式による健康調査票、食行動に関する12の質問(回答形式:Yes, No)による調査を行った。男性BMI≥25、女性BMI≥24を肥満と定義した。多重ロジスティック回帰分析により交絡要因を調整し男女別に解析を行った。
    [結果] 肥満者の割合は、男性91名(31.4%)、女性31名(15.7%)であった。肥満者では非肥満者に比較して男女ともに年齢が有意に高かった。男性肥満者は既婚率、エネルギー摂取量が有意に高く、「いつもお腹いっぱい食べる」、「食べるスピードは早い」、「油っこいものをよく食べる」のそれぞれの食行動項目と肥満との有意な関連がみられた。女性では、「外食をすることが多い」の食行動項目で肥満リスクの上昇傾向がみられた他は、関連はみられなかった。また、単独の食行動のみでなく複数の食行動項目が重なることにより、肥満リスクが大きく上昇することが示唆された。
  • 河野 節子
    セッションID: 2A14
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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     近年、女性、特に若年層の痩せ志向により、適正体重であるにも関らず自身を肥満だとする誤認が食事制限に向かわせるとして注目されている。そこで、女子大学生を対象として、主観的体格評価と実際の体格評価との違いが、体組成、骨量及び食行動に及ぼす影響について検討した。【方法】自身の体格について「肥満だと思う(H)」「適度(M)」「痩せと思う(L)」の質問に回答した561人を3群に分けた。実際体格区分はWHOのアジア系人種の評価基準を参考に、18.5>BMIを低体重者、18.5≦BMI<23.0を適正体重者、23.0≦BMIを高体重者とした。体組成はタニタ社製体組成計BC118、骨量は超音波踵骨測定装置(LUNAR社製)で測定した。食行動異常の指標はBITE、及び日本語版EAT-26を用いた。【結果】561名のうち、H 328人(58%)、M 190人、L 43人であり、HのBMI平均は21.8、そのうち高体重者は22%であった。逆にLのBMI平均は17.3、86%が低体重者であった。Hに体格誤認が多かったが、Mにも低体重者が31.6%存在した。骨量は、Hが93.5(Stiffness)と高値であったが、他の2群と有意差は無かった。Hの64%が摂食制限経験者であり、BITE及びEATは他の2群に比し高値を示した。Lでも16.3%が摂食制限経験者であり、痩せ志向が低体重者にまで広まっていた。運動経験及び歩数については3群に差を認めなかった。【結論】若年女性の広範囲で、自身の体格誤認が摂食行動異常に向かわせ、また、運動をとり入れていないことは不健全である。今後の栄養指導においては、こうした体格誤認という主観的要素をもっと考慮する必要がある。
  • 葭田野 加奈, 平山 清美, 新井 加受子, 弘中 優子, 國井 悠加, 衣笠 治子
    セッションID: 2A15
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    目的 食育推進の為にさまざまな分野でアプローチがなされている。我々は、家族と参加できる地域食育推進活動の1つとして実施された『朝食の食事診断プログラム』に参加した児童のエネルギー及び栄養素摂取量の摂取傾向について検討した。
    方法 大阪市H区在住の小学生男女70名:5,6歳(n=7)、7歳(n=11)、8歳(n=13)、9歳(n=12)、10歳(n=7)、11歳(n=14)、12歳(n=6)を対象とした。メニューカードから当日の朝食を選び、食事診断ソフトウェアを用いて栄養素等摂取量を算出した。結果は各自にフィードバックした。エネルギー摂取量および栄養素摂取量(たんぱく質、脂質、炭水化物、カルシウム、鉄)は集計し、一日の必要摂取量に対する朝食の割合を算出するとともに、朝食摂取量を一日の3/10と仮定した場合の充足率を算出した。また、プログラム前後に簡単なアンケートを行った。
    結果 対象児童は平成18年度学校保健統計調査と比較し、平均的な身体レベルであった。児童全体の朝食からの栄養素等摂取量の割合はほぼ20~30%であった。朝食摂取量を1日の3/10と仮定した場合の充足率はどの年齢もたんぱく質は満たされたが、エネルギーは不足であった。脂質の充足率は低学年では約80%で高学年では約90%であった。炭水化物の充足率は低・高学年ともに60%以下であった。微量栄養素であるカルシウム充足率は低学年では約70%であったが、高学年では60%なり、体格の発達に対し十分な摂取を意識する事が必要であると思われた。一方、鉄分の充足率は低学年で40%、高学年で50%となり、低年齢での不足が深刻であった。またアンケートでは、個々に栄養素摂取の傾向を返却することで食事に気をつけるという意識が向上している事が明らかとなった。 
  • 村田 美穂子, 杉山 寿美, 石永 正隆
    セッションID: 2A16
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    目的 一日当たり350g以上野菜を使用した食事について,亜硝酸イオンおよび硝酸イオン濃度を測定し,ヒトにおける亜硝酸塩及び硝酸塩の一日摂取量について検討した.
    方法 食事試料は一日当たり350g以上の野菜を使用した食事献立とし,平成17年度は20日分,平成19年度食事試料は市販の料理本をもとに22日分の食事を作成し,試料とした.分析は,試料溶液を調製後,フローインジェクション法により分析を行った.
    結果 硝酸塩の含有量は平成17年度試料では,321.0±135.8mg, 亜硝酸塩は1.2±0.3mgであった.平成19年度試料では硝酸塩が267.9±127.0mg,亜硝酸塩は3.0±1.3mgであった.またADIと比較すると,硝酸塩では平成17年度はADIの174%,平成19年度では145%に相当しており,いずれもADIを超えていた.亜硝酸塩では平成17年度はADIの40%,平成19年度ではADIとほぼ等しい値を示しており,摂取量が増加していた.一日当たり野菜350g以上の食事を摂取することにより,ADIを超える硝酸塩を摂取する可能性が示唆された.
  • 岩田 彩見, 小林 由実, 小川 宣子, 加藤 邦人, 山本 和彦, 長屋 郁子
    セッションID: 2B1
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    [目的] 調理経験の異なる人が、同じ手順、同じ作業で調理した場合、出来上がりのおいしさに差が生じることが多い。これは調理経験に基づく何かしらの技術が要因となり、料理に影響を及ぼすと考えられる。ところで、調理時の行動を観察した際に、人が行動を起こす前に動作点へ目が動くことを確認した。このことから目配りは動作に大きく影響し、つまりこれは調理技術に相当すると考えた。以上より、出来上がりに影響する調理技術の要因の1つとして、調理時の目配りに着目し有効性を確認することで、調理技術評価手段としての目配りの確立を目的とする。
    [方法] 調理技術の指標として目配りの有効性を確認するために、本研究では基本的な調理加工作業であり、調理動作の統一が可能な「練る(ごま豆腐)」について、調理経験の異なる2人が同じ手順で行った。その際、調理時の目配りを比較するために、第三者が調理時の目の動向を観察して、調理技術に関係した配点で目配りを点数化した。また同時に、客観的に目配りを評価するために、画像処理による目の移動量検出を行った。そして物性測定および官能検査からおいしいとされた硬さをおいしさの指標とし、2人の出来上がりと比較することで、調理技術の差を見出す。これら3つの結果より、調理技術と目配りの関連性を確認する。
    [結果] 出来上がりを物性測定したところ、熟練者はおいしさの指標に近い硬さとなり、非熟練者では有意に違いがみられ、同じ調理過程でも調理技術の違いがおいしさに現れたことを確認した。また目配りでも同様に、双方で熟練者の方が調理に重要な目配りをしており、その移動量も大きいことから、目配りが調理技術評価の新たな手段として有効であることが判明した。
  • 飯 聡, 西村 由二三, 白土 男女幸, 久米 雅, 田中 辰憲, 濱田 明美, 仲井 朝美, 芳田 哲也
    セッションID: 2B2
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    目的日本料理は,多種多様な食材を器に美しく盛りつけるために,切り型や形など,特に美しく切ることを重視してきた.そのため,刃の薄い片刃包丁を使用するが,この形状のものは世界に例をみない.片刃包丁は,その切れ味を保つために常に手入れをして研ぎ澄まさなくてはならず,日本料理の職人にとって,包丁を上手に研ぐことは,大変重要な修練の一つである.そこで本研究は,職人の経験や勘(暗黙知)で研いでいた包丁研ぎの動作を形式知化し,後継者育成や教育現場の支援と,その技術を現在のものづくりへ活用することを目的とした.
    方法料理歴30年と19年の日本料理職人2名を被験者(熟練者)とし,片刃鎌型薄刃包丁を用いて,包丁研ぎを行った.被験者の身体上の19点に赤外線反射マーカーを貼付し,3次元動作計測装置にて得られたデータから包丁研ぎ動作を分析し,同時に上肢における筋電図計測を行った.また,研ぎあがった包丁の刃先を光学顕微鏡で観察した.
    結果熟練者2名とも1ストローク(包丁を前方向に押し,再び引き戻すまで)の動作時間および動作範囲が安定しており,高い再現性が確認された.筋活動では,尺側手根屈筋(包丁を押さえる筋肉)と三角筋(腕を後方に引く)の筋活動が顕著に認められた.また,上肢の動作だけではなく,下半身もリズミカルに連動させて動作を行っていた.さらに,2名の間で,研磨時間と筋活動に差が認められた.1ストロークにおける筋活動量と研磨時間をあわせて考えると,1名は小さな力で長時間,もう1名は力をいれて短時間で仕上げていた.研ぎあがった包丁の刃先の観察では,刃の先端部と中央部において凹凸が認められた.
  • 濱田 明美, 大西 明宏, 太田 達, 濱崎 加奈子, 荻野 秀行, 田中 辰憲, 白土 男女幸, 久米 雅, 仲井 朝美, 芳田 哲也
    セッションID: 2B3
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    目的日本の伝統文化のひとつに宮廷や茶道とともに発展してきた京菓子がある.その京菓子づくりにかかせない基本技術のひとつに,手だけで包む京都独特の包餡(餡を皮で包む)がある.本研究では,京菓子職人の後継者育成の支援と,その技術を現在のものづくりへ活用するため,包餡の熟練技術を解析した.
    方法職歴14年の京菓子職人1名を被験者とした.餡(小豆こし餡,20g)を,皮(こなし,30g)で,包餡した.被験者の両手指の関節に赤外線反射マーカーを貼付し,3次元動作計測装置にて得られたデータから,手指の屈曲・伸展運動について検討した.また,包餡された菓子の重量と形状を定量的に評価した.
    結果包餡の工程は,手指の運動の特徴および被験者が"目的別に分割される"とのコメントに基づき,以下の3相に分割した.(第1相)直径約6cmにのばしたこなしの上に丸めた餡をのせ,左手掌内で時計回りに回転させながら皮を上に押し上げる工程.(第2相)両手の拇指と示指で反時計回りに回転させながら皮を閉じる工程.(第3相)菓子の上下を反転し,両手の手掌で小刻みな回転を加えて形を均一に整える工程.包餡時間は菓子1個につき平均11.3秒であった.左示指の運動をみると,第1相では10度から60度の間で屈曲・屈伸運動を規則的に行っていることがわかった.出来上がった菓子の重量は平均50.6gであり,目標値に対するばらつきは1g以内であった.菓子の高さは約34.3mm,直径は平均50.7mmであり,目標値に対するばらつきも1mm以内であったことから,重量,形状ともに高い再現性で包餡していることが明らかになった.
  • 太田 達, 濱崎 加奈子, 松下 久美子, 井植 美奈子, クリスティ シュラック, 濱田 明美, 仲井 朝美, 芳田 哲也
    セッションID: 2B4
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    目的茶道は,日本の伝統産業の多くの(茶碗,炉,茶杓,土壁等)”もの”を使い,およそ五百年の歴史を重ねてきたと報告され,伝統芸能,そして精神文化,神道的な部分をも点前の中に見る事が出来ると考えられている.また茶道の点前は茶という飲料を調理する生産技術でありながら美の所作として認識されているとの報告もあり,その伝統技術に内在している暗黙知を形式知化することによって,点前の動作に潜む美しい動作とは何かを明らかにできると考えられる.本研究では風炉の薄茶点前の作業工程を分割し,それを基に動作解析を行なうことで点前動作の美しさの要因を検討した.
    方法被験者は,茶道歴29年の成人男性(51歳)で行なった.動作解析に必要な赤外線反射マーカーは,身体上の10点に貼付した.風炉の薄茶点前の作業工程は,準備動作(10行程),帛紗捌き(7行程),棗をきよめる(5行程),帛紗の捌き直し(6行程),茶杓をきよめる(3行程),茶筅通し(31行程),菓子挨拶(2行程),茶を点てる(22行程),茶をすすめる(4行程)の9段階90工程に分割した.それを基に準備動作(10行程)の中の,柄杓を左手で取り体正面で構える,居前を正す,棗を取り茶碗と膝の間に置く,3つの工程の動作を解析対象とした.
    結果柄杓や棗を取りにいく動作時に,肩は大きく動かずに顔を動かし,道具のある位置を確認していた.また,柄杓を体の前で構えた時,棗を膝の前に移動した時,礼をした時に動作が静止する場面が見られた.これらのことから,姿勢を大きく崩すことなく,道具を取りに行く部位のみが大きく動いていたことから無駄がない動き・美しい姿勢につながるのではないかと考えられる.
  • 水 珠子, 長尾 慶子
    セッションID: 2B5
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】これまでに、我々は食材加熱中の内部熱移動現象の解明を目的として、多様な加熱操作および種々の食材成分をモデル化した一連の加熱実験を行ってきた。今回は気泡分散系食材のモデルとして、ベーキングパウダー(B.P.)を添加した小麦粉ドウを調製し、加熱中のドウの膨化が内部熱移動速度に及ぼす要因について検討した。
    【方法】水とコーン油の量比を変えることで水分量(wt%)を10.1~43.1に変えた6種類の小麦粉ドウを対照試料にしてそれらにB.P.を3wt%添加した系を調製した。測定温度20℃,40℃,60℃および80℃での熱伝導率 λ 、定圧比熱容量 Cp ならびに密度 ρ の実測値を用いて熱拡散率 α ( λ /Cpρ ) を算出した。同時に、試料加熱中の底面から垂直一次元方向(x) 0,3,5,7,および10 mm各位置における温度変化を追跡し、それらの内部温度上昇曲線から熱移動速度の指標となる時定数 τ (x) を算出し、熱拡散率 α との関係を検討した。
    【結果】B.P.添加系および無添加系の熱伝導率は、これまでと同様に水分量および加熱温度の増加と共に上昇した。一方、定圧比熱容量および密度は、水分量の増加と共に上昇し、加熱温度の増加と共に低下した。特にB.P.添加系は無添加系に比べて、品温40℃~60℃での温度上昇に伴うCO2発生量に起因するドウの体積増加とともに、水分量(%)が多い試料ほど熱拡散率値が増大した。さらに、加熱昇温曲線より算出した時定数 τ (x) の逆数も同様に増大した。そして、試料の熱拡散率と加熱実験より求めた時定数との間に両対数上で正の一次式の関係が存在することが認められた。すなわち、本実験結果から小麦粉ドウにB.P.を添加することで内部熱移動速度が極めて良くなり、加熱時間が短くてすむことが示唆された。
  • 西村 公雄, 宮本 有香
    セッションID: 2B6
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    目的 演者らは,ビタミンC(L-ascorbic acid, AsA)によるパン品質改良は,AsAより生じるスーパーオキシドアニオンラジカル(O2-)が関与することを提唱している。今回,(1) AsAによる小麦タンパク質由来ペプチド(GP-1)のSS結合重合体形成促進,(2) 電子スピン共鳴(ESR)法によるGP-1上でのO2-由来チイルラジカル(S・)発生確認,(3)ミキソグラフを用いたO2-によるパン生地テクスチャーへの効果検討により,提唱機構に従い,AsAによるパンの品質改良が生じる可能性を調べた。
    方法及び結果 (1) 0.2% AsA及び20% GP-1を含む15mM リン酸緩衝液(pH7.0)を調製し,60℃で24時間保持したところ,AsAの存在により巨大なSS結合重合体形成が,Tris-Tricine SDS-polyacrylamide gel電気泳動法により認められた。(2) スピントラップ剤存在下において20%GP-1を含む25mM PIPES緩衝液(pH7.0)にRiboflavin由来O2-を作用させたところ,GP-1上にS・のシグナルを認めた。(3) ミキソグラムより,混合耐性及びディベロップタイムが,AsA存在下有意に増加するが,O2-のスカベンジャーであるTironの添加により抑えられることが判明した。以上のことは,AsAから発生してくるO2-がパンの品質改良をもたらす可能性を示唆していた。本研究は,(財)タカノ農芸化学研究助成財団平成19年度研究助成金により行なった。
  • 小谷 スミ子
    セッションID: 2B7
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】小麦アレルギー患者が安心して摂取できるグルテンフリー米粉パンを製造するため、昨年度使用制限が解除された増粘多糖類ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCと略)添加米粉パンの適切な製造条件を見出した(小谷2007)。本年度は、生地の粘度を測定し製品の焼き上がりとの関連を検討する。 【方法】1.試料:主材料として米粉・コーンスターチを、副材料として食塩・上白糖・乳製品・油脂・HPMC(信越化学_(株)_)・水を用いた。2.コーンスターチ添加量・加水量・HPMC添加量を変えて調製した生地の粘度をコーンプレート型粘度計TVE-22(東機産業_(株)_)で測定した。コーンロータは標準およびSPP、試験温度は20℃、サンプル量は0.4ml、プレヒートは60秒とした。3.ずり履歴生データからチクソトロピー特性値Th、粘稠性係数K、流動性指数n、Casson降伏値Scを求めた。試料間の差はt検定により解析した。 【結果】1.ずり履歴:HPMC添加米粉パン生地はロータの回転数を上げると構造破壊が観察された。一方回転数を下げると著しい構造回復が見られ、HPMCによる極めて興味深い現象と思われる。2.基本配合割合の生地(主材料:米粉70%・コーンスターチ30%、副材料:食塩2%、上白糖7%、スキムミルク4%、マーガリン7%、HPMC1.6%、水76%)の流動特性値は、Th=638±32 %・rpm、K=33.3±4.6 ×10^4mPa・s、n=0.546±0.025、Sc=156±10 Paであった。3.コーンスターチ添加量、加水量、HPMC添加量を変化させた生地の粘度とパンの比容積と官能検査の関係を検討した結果、HPMC添加米粉パン生地はみかけの粘度を20~40 ×10^4 mPa・sに調整すると製パン性が良好になることが示唆された。
  • 喜多 記子, 辻 沙織, 牧田 寛, 谷端 淳一郎, 長尾 治, 長尾 慶子
    セッションID: 2B8
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】小麦の原種であるスペルト小麦は、普通小麦に比べてタンパク質含量が高く、アミノ酸やビタミン、ミネラルを豊富に含んでいることと、小麦アレルギー耐性が高いといわれて、注目され始めている小麦である。昨年度の調理科学会大会では、オーストラリア産・現地製粉のスペルト小麦と日本製(市販)普通小麦粉を用いて調製したベーグルパンの調理性について報告したが、物性面では製粉時期や製粉条件等が一致しないことによる問題点が危惧された。今回スペルト小麦の日本国内での製粉が開始されたことより、同条件で製粉されたスペルト種と普通種の小麦粉とでベーグルパンを調製し、生ドウ及び焼成パンの力学特性と官能評価ならびにタンパク質の分子量分布を比較し、調理性を検討した。
    【方法】製粉条件を統一したスペルト及び普通小麦粉に、一定量のドライイースト、砂糖(白砂糖又は黒砂糖)、塩、水を加えてよく混捏した生地のテクスチャー試験を行った。次いで、190℃のオーブンで15分間焼成したパンの色差と比容積及び放置時間を変えたパンの破断試験を行い、官能評価と併せて品質を総合的に判定した。さらに、小麦粉ならびにパン生地のSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い、タンパク質の分子量分布を比較した。
    【結果】ドウの圧縮応力はスペルト小麦の方が低値を示し、砂糖の種類(白砂糖と黒砂糖)に関らず同様の傾向であった。焼成パンの比容積はスペルト小麦の方が大であり、破断試験ではスペルト小麦と普通小麦に大差はみられなかった。官能評価では、外観評価以外にスペルト小麦と普通小麦に有意差はなく、普通小麦の代替小麦としての可能性が期待できた。SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動測定より、たん白質分子量に違いがみられた。
  • 小口 悦子, 山越 美歩, 香西 みどり
    セッションID: 2B9
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    目的 シューの膨化は、生地に含まれる水の蒸気圧によることが知られており、その材料配合割合、調製法、生地の粘性などが膨化や形状に影響を与える。通常、シュー生地調製において小麦粉は90℃以上に加熱されるため生地は一定の粘性と保形性があり、焙焼時の生地の形状がシューの膨化、空洞化に及ぼす影響についてはこれまでほとんど報告されていない。そこで本研究では、第一加熱条件の異なるシュー生地について、焙焼時の形状がシューの空洞化に及ぼす影響を比較し、その要因と条件について検討した。
    方法 シュー生地調製時の第一加熱温度を20℃から90℃までの10℃ごとの各温度と95℃以上の9段階に設定し、各生地10gを底径30、40、45、50、55、60、65mm、高さ20mmのアルミ製カップに入れ200℃11分、150℃11分焙焼した。焙焼前の生地の糊化特性(DSC装置)、粘性(VISCOMETER TV-30)、シューの体積(菜種法)を測定し、均整比(高さ/底径)、比容積(体積/重量)を求め、縦断面を複写して空洞を観察した。
    結果 いずれの第一加熱温度の生地においても、底径30~45mmでは空洞化した。特に底径30、40mmの細長い形の焙焼ではシューの底径に対する高さの比(均整比)が大きく、縦方向に空洞形成した。いずれも焼き上がり重量と均整比の間に相関があり、大きく空洞化したシューほど焼き上がり重量が重かった。20~50℃および60~95℃の生地では焙焼時の底径が55~65mmと平たい形のときシューに複数の空洞が形成され、生地の粘性によらず平板状にみられる水分蒸発速度の上昇がシューの空洞過程に影響することが示唆された。
  • 粟津原 理恵, 金安 絵美, 原田 和樹, 長尾 慶子
    セッションID: 2B10
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】ソバ葉はソバ種子に比較して抗酸化作用などを有するルチンが多く含まれることから、その健康増進効果が注目されている。本研究では、未だ利用度の低いソバ葉の食品への有効利用を目指してソバ葉の添加量を変えたパウンドケーキを調製し、物性、嗜好およびラジカル捕捉活性能の観点から、ソバ葉の最適添加量を検討した。
    【方法】試料は、小麦粉にソバ葉乾燥粉末(日穀製粉_(株)_製)をそれぞれ0、5、10、15wt%添加し全量を100gとした粉に、定量のバター、砂糖、卵、膨化剤を混和したバッター試料と、それらを170℃で14分間焼成したケーキ試料とした。物性評価には、バッター試料のCasson降伏値および粘度と、焼成ケーキ試料内部の圧縮エネルギーを測定した。外観評価には、明度(L)、色度(a,b)および色差(?E)を測定し、官能評価とあわせて品質を総合的に評価した。抗酸化能は、凍結乾燥後粉砕した各試料のエタノール抽出液10mg/mlを原液として、化学発光法によりペルオキシラジカル捕捉活性を測定し、発生したラジカルの半分量を捕捉するIC50値で比較した。
    【結果】15wt%ソバ葉添加バッター試料のCasson降伏値および粘度は無添加試料に比べ有意に上昇し、焼成ケーキ試料の圧縮エネルギーはソバ葉添加量の増加に伴い増大した。ソバ葉添加により、ケーキのL、b値が低下し色調が暗く青味が増して無添加に比べ?Eが顕著に変化した。ソバ葉添加量の増加に伴いIC50値が低下し、15wt%添加試料では0.35%と高い抗酸化能を示した。ソバ葉添加量が大なほどケーキの抗酸化能は高まるが、食感が硬くなり焼き色も暗くなるため、総合評価ではソバ葉10wt%添加が有意に好まれた。
  • 綾部 園子, 阿部 芳子, 香西 みどり, 市川 朝子, 下村 道子
    セッションID: 2B11
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 中華麺には種々の製法があるが、小麦粉にかん水や卵を加えた麺は独特の食感をもつ麺となる。麺の物性には添加物と同時に小麦粉デンプンの糊化度の影響が大きいと考えた。そこで、かん水麺、卵麺および卵かん水麺を調製して、ゆで麺の糊化度および物性に及ぼすかん水と卵の影響について検討した。。
    【方法】 小麦粉は手打ちうどん用の中力粉、かん水は粉末かん水(35% K2CO3+55% Na2CO3 + 10%NaHPO3 12H2Oを混合調製)、鶏卵は千代田区内の小売店より一定条件で購入した卵を用いた。加水量は小麦粉重量の40%、粉末かん水の添加量は1%で中華麺を調製した。対照麺として水と食塩を加えて調製した麺を用いた。麺重量の20倍以上の沸騰水中で生麺を4,8,12分間ゆで、直ちに流水で30秒間冷却し、ゆで直後および24℃1日放置後の麺の硬さをレオメーターで測定した。さらに、同試料を脱水粉砕して粉末試料とし、糊化度をBAP法およびFT-IR/ATR法により測定した。
    【結果】 ゆで直後の麺の最大荷重および破断応力は卵麺=卵かん水麺>かん水麺>水麺の順で卵を添加した麺が最も硬くなった。1日保存後では水麺で値が大きくなったが、他の麺では大きな変化は認められなかった。BAP法とFT-IR/ATR法の糊化度は40%以上の範囲において高い相関(r=0.92)があった。麺のゆで時間が長いほど糊化度は高くなり、同一ゆで時間においては、水麺>かん水麺>卵麺>卵かん水麺の順となった。1日保存後の麺の糊化度はいずれの試料においても低下し、糊化度と麺の硬さの間には負の相関が認められた。。
  • 宮本 ひとみ, 山根 千弘, 瀬口 正晴, 岡島 邦彦
    セッションID: 2B12
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】セルロースに爆砕などの物理的処理を行うと,セルロースが水酸化ナトリウムに溶解することが近年見出された。本報では,セルロースもしくはセルロースを含む多糖複合フィルムと現在市販されている可食性フィルムの温度・湿度における影響と緩和ピークについて動的粘弾性を用いて比較・検討した。
    【方法】爆砕パルプを低温の水酸化ナトリウム水溶液に溶解させた。これにデンプンを所定の割合で混合し,セルロース/デンプン/水酸化ナトリウム水溶液とした。この混合液をガラス板上にキャストし,低温の硫酸浴で凝固してセルロース/デンプン複合体を得た。この膜を定長乾燥し,動的粘弾性測定を行った。この他,市販の可食性フィルム(デンプン,寒天,プルランなど)も同様に動的粘弾性測定を行った。
    【結果】損失弾性率(Ei),貯蔵弾性率(Er),tanδおいて最も特徴的な点は,高温・高湿度時のErの低下である。複合フィルムはセルロースフィルムよりやや低下するものの,デンプンフィルムで見られるような大きな低下は観察されなかった。現在市販されている例えばデンプン,寒天,プルランなどの可食性フィルムは湿度の影響を極端に受けやすい。しかし,複合フィルムは温度・湿度に影響されにくいセルロースにデンプンが複合されることで今までにない特性をもった可食性フィルムである。一方,セルロースの主鎖の緩和ピークはデンプンと複合することで活性化エネルギーが高くなった。これは非結晶領域でセルロースとデンプンが密接に複合していることを示唆している。
  • 合谷 祥一, 田鍋 舞
    セッションID: 2B13
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】これまでの研究で、食品用乳化剤であるデカグリセリンモノラウリン酸エステル(ML-750)/水の系に食用油を滴下撹拌して得られたエマルションの油滴の粒径よりも、ML-750/40wt%スクロース溶液の系に食用油を滴下撹拌して得られたエマルションの油滴の粒径の方が微細であった。これはML-750/水/食用油系の相状態がスクロースによって変化したためと推測してきたが、これまでは明確な相図が少なく、推論の域を出なかった。そこで、今回はML-750/水/食用油系及びML-750/40wt%スクロース溶液/食用油系の相図を作成し、スクロースが相状態にどのような影響を与えているかを明確にし、また、他の乳化剤と比較し、相状態に対する乳化剤の影響について明らかにすることを目的とした。
    【方法】種々の比率の食品用乳化剤/水(スクロース溶液)/食用油を調製し、90℃の高温槽で加熱溶解後撹拌し、常温でそれぞれ1日、1週間、及び1ヶ月静置し、状態観察により相図を作成した。
    【結果及び考察】ML-750/40wt%スクロース溶液/食用油系ではML-750/水/食用油系と比べ、D相及び液晶を含む領域(LC領域)が増大し、乳化の過程でこの領域を通過していることから、スクロースによりML-750の親水性疎水性バランス(HLB)が疎水性側に傾き、液晶を形成しやすくなったことが、微細エマルション生成の原因であると考えられた。また、用いた全ての食品用乳化剤/水/食用油系の相図で、D相及びLC領域が増大する傾向が見られた。さらに、炭素鎖の長い乳化剤の方が炭素鎖の短い乳化剤に比べてD相及びLC領域が増大することも明らかになった。これは、乳化剤の炭素鎖が長いほど炭素鎖間の相互作用が強く働き、液晶構造を形成しやすくなったためと考えられた。また、静置時間が長いほど液晶を含む領域が増加する傾向も見られた。
  • -食器素材を中心とした素材-
    阿部 麻衣子, 林 正之
    セッションID: 2B14
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    目的乾燥は、家事においての日常いろいろな場面にある。そこで、食器につく水滴の乾燥について本研究では水滴の乾燥速度が及ぼす食器の基板素材並びに気温、湿度、気流、水温の影響について考察した。
    方法電子天秤の上皿に基板素材を載せ、その基板素材のうえにイオン交換水を注射器を用いて水滴を作り、その重量を電子天秤で基板素材を載せたままの状態で一定間隔で測定し、同時に水滴のなす球冠の直径を測定した。基板素材は7種、温度は25℃から80℃、湿度は50%から95%、気流は3段階、水温は30℃から80℃と、それぞれの違いについて調べ、蒸発速度を計算した。
    また、水滴を球の一部と考え、中心を通る垂直面の断面について、円の上側部分と考え、水滴の幅と高さを算出した。さらに、体積・表面積・水滴が素材に対してなす角度、すなわち接触角について計算によって導き出した。そして、時間に対して、蒸発量/表面積を表した直線の傾きを蒸発速度Eとした。
    結果基板素材と温度の影響として、温度が低いと乾燥しにくいが、温度が高くなるにつれて乾燥しやすくなることがわかった。しかし、素材によってその乾燥のしやすさは異なっていた。25℃では6種類の蒸発速度はほとんど変わらないが、温度が上がるに従って、蒸発速度に差が出てくる。また50℃での乾燥のしやすさの順番は、液滴の球冠底面の直径、つまり幅の大きさの順に関係していることを見出した。そのほか、湿度・風速・水温によって蒸発速度が影響されるという結果が得られた。
  • 高橋 智子, 宮下 博紀, 大越 ひろ
    セッションID: 2B15
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    目的 摂食機能が低下した障害(児)者が食べやすい食品の代表であるヨーグルトは、たんぱく質およびカルシウムなどの良質の給源である。そこで、本研究では、市販のプレーンヨーグルトに異なるゲル化剤を添加し、2段階の硬さに調製したヨーグルトゲルの力学的特性と食べやすさ、嚥下筋活動の関係について検討した。
    方法 市販プレーンヨーグルトにゼラチン、寒天、および分子量を減少させた寒天の3種類のゲル化剤により、1×103および5×103N/m2の2段階の硬さのヨーグルトゲルを調製した。力学的特性として、テクスチャー特性、破断特性、および動的粘弾性の測定を行った。食べやすさの官能評価はシェッフェの一対比較原法により口中のべたつき感、口中におけるまとまりやすさ、口腔から喉への食塊の移動しやすさ、および風味について評価した。併せて舌骨上筋群の嚥下時筋活動の測定を行った。
    結果 硬さを同程度に揃えた場合、寒天で調製したヨーグルトゲルの付着性、凝集性は他の2種類のゲル化剤により調製したものよりも有意に小さいものとなった。また1×103N/m2の硬さのゲル試料にはいずれも明確な破断点は認められなかったが、5×103N/m2の硬さの寒天ゲル試料には明確な破断点が認められた。また、ひずみ依存測定より、非線形領域における寒天ゲル試料のG’は小さいものとなった。官能評価、および嚥下筋活動の測定結果はいずれも、1×103よりも5×103N/m2の硬さのゲル試料の方が試料間の差が大となり、寒天で調製したヨーグルトゲルは食べやすいと評価され、筋活動量も有意に小さいことが認められた。
  • 馬橋 由佳, 矢吹 理美, 大倉 哲也, 香西 みどり
    セッションID: 2B16
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    【目的】 米飯の食味にはテクスチャーと共に化学成分が関係し, 糖やアミノ酸が炊飯によって増すことが知られている。先にコシヒカリを用いて炊飯温度履歴の違いが米飯の糖およびアミノ酸量に及ぼす影響を示した(1)。本研究では温度履歴の違いが米飯の化学成分へ及ぼす影響を品種, 搗精度の異なる米について比較検討した。
    【方法】 試料米は85, 90, 95, 100%搗精のコシヒカリおよび90%搗精の日本晴, 羽二重餅, 夢十色, ジャスミンライスとし, 1.5倍加水下で20℃, 1h浸漬後, 沸騰までの時間を6, 11(標準), 45minおよび標準炊飯昇温期に40, 60, 80℃を15min保持した計6条件とし, 沸騰継続13min, 蒸らし15minの炊飯を行った。50%エタノールによる振とう抽出で米飯抽出液を調製し, 全糖量(フェノール硫酸法), 還元糖(ソモギー・ネルソン法), グルコース量(酵素法)および遊離アミノ酸(アミノ酸分析計)を測定した。
    【結果】 90% 搗精日本晴および95%搗精コシヒカリを用いて種々の炊飯を行った米飯抽出液の全糖, 還元糖, グルコース量は90%搗精のコシヒカリ同様昇温速度が遅いほど多く, 遊離アミノ酸は昇温時間に依存した変化はみられなかった。いずれの試料米でも60℃の温度保持で各糖量が有意に増加し, 遊離アミノ酸量は糖より低い増加率ながら40, 60℃保持で有意に多くなった。以上より炊飯の温度履歴の影響は品種, 糖精度が異なっても共通の傾向であることが示された。また, 品種や搗精度の異なる8種の米で増加率は異なるが炊飯による糖, 特にグルコース量の著しい増加が共通して見られた。
    (1)馬橋ら:日調科誌, 40, 323-328(2007)
  • 佐川 敦子, 金子 仁美, 寺島 真美恵, 志賀 清悟, 森高 初恵
    セッションID: 2C1
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    目的高齢者施設で一般に用いられている介護食はおかゆやとろみをつけた刻み食など固体分散ゾル状の食事であることが多い。そこで、分子構造が異なる3種の増粘剤と水の連続相中に固体試料として寒天ゲルを分散し、固体分散ペーストをモデル試料とし、力学特性、飲み込み特性、嚥下時の咽頭部での最大通過速度と摂食量の関係について検討した。
    方法固体試料は1.5 w/w%寒天ゲルを5mm角の立方体とし、分散媒(ペースト)は貯蔵弾性率および硬さが同程度の3種の増粘剤(キサンタンガム、グアーガム、澱粉)を用い、0、25、50、75、100w/w%混合して試料とした。摂食量は3、6、9、12gの4段階で実施した。力学特性として、テクスチャー特性、動的粘弾率を測定し、主観測定として官能評価を実施した。また、咽頭部での食塊の最大速度を超音波画像診断装置により測定し、咀嚼回数は5回および30回とした。
    結果最大通過速度は、水100%時のみ摂食量が増加するに伴い有意に高くなったが(p<0.05)、その他の分散媒では摂食量の影響をほとんど受けなかった。添加効果は各摂食量においてグアーガムが最も高かった。咽頭部の通過時間はすべての分散媒で摂食量の増加に伴い長くなった。キサンタンガムは他よりも通過時間が短い傾向がみられた。官能評価の硬さでは、摂食量の増加に影響を受けずほぼ同じ評価となり、キサンタンガムが最もやわらかいと評価された。飲み込む力はすべての試料で摂食量の増加に伴い高くなり、4段階の各摂取量において、キサンタンガム>グアーガム>澱粉>水の順位で高い評価であった。
  • 高橋 享子, 一橋 沙織
    セッションID: 2C2
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    【目的】食物アレルギーの治療はアレルゲンの多様化・個人差等により困難とされているが、食物アレルギー患者に対する微量アレルゲンの経口投与による減感作治療が注目されている。我々は卵白アレルゲンの低減化に成功し、すでに低減化卵ボーロ(LAB)を用いた減感作治療の臨床研究を進めている。一方、軽症のアレルギー児の食事レシピには代替食などが見られるが、アレルゲン低減化レシピについてはほとんど開発されていない。本研究では、卵白メレンゲの低減化とレシピ開発を行った。 【方法】卵アレルゲン低減化法として100%卵白・60%卵白でメレンゲを形成した後、高温加圧処理を行い、アレルゲン量を測定した。次に、そのメレンゲを用いてLAB及びスポンジケーキのレシピ開発を行った。アレルゲン量については、アレルゲン・オボムコイドモノクローナル抗体によるIgG結合性をELISA法により測定した。また、アレルギー患児の血清を用いたIgE反応により、アレルゲン量を測定した。 【結果・考察】高温加圧処理メレンゲのアレルゲン量は、生卵白メレンゲの10分の1に低下し、低減化効果が認められた。低減化メレンゲを用いたスポンジケーキでは、生卵白メレンゲに比較して3分の1の膨化であった。しかし、アレルゲン・オボムコイドのIgG結合性は約10分の1に低下し、患児血清によるIgE結合性では、個人差が見られたものの4分の1から32分の1の低下が認められた。以上の事から、低減化メレンゲは、スポンジケーキなど、ボーロ以外の食品への応用が可能であり、卵アレルギー患児の食生活QOL向上に貢献できるものと考えられる。
  • 山田 千佳子, 和泉 秀彦
    セッションID: 2C3
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    【目的】食物アレルギーは摂取されたタンパク質が抗原性を保持したまま消化管から体内へ取り込まれることにより引き起こされる。そこで本研究では、食餌性タンパク質の消化性および腸管吸収性と食物アレルギー誘発性との関連を明らかにすることを目的として、卵白の主要アレルゲンであるオボアルブミン(OVA)、リゾチーム(LY)の消化性および吸収性について解析した。 【方法】20mgのOVA、LYをマウスに胃内投与し30分後に門脈血を採取した。さらに屠殺後消化管を摘出、分割し内容物を回収した。門脈血清および消化管内容物中の各タンパク質について、SDS-PAGEおよび特異抗体を用いたイムノブロットにより解析した。また、麻酔下で開腹したマウスの十二指腸内に各タンパク質溶液を直接投与後(4mg/mouse)、0-10分後に採取した門脈血中のタンパク質を定量し吸収時間、吸収量を解析した。さらに投与する各タンパク質をパパイン処理し、部分分解物を含む溶液を投与して分解物の吸収も調べた。 【結果】消化管内および門脈血中の各タンパク質をイムノブロット解析した結果、OVAは検出されない場合があったが、LYは全てのマウスの小腸内および門脈血中から検出された。吸収時間および吸収量を解析した結果、OVAは十二指腸投与5分後に最も血中濃度が上昇したが、LYは5-10分にかけて血中から検出された。しかし吸収量に差はなかった。各タンパク質の分解物の吸収性を調べた結果、門脈血中から分解物は検出されなかった。以上の結果より、タンパク質によって消化性および吸収性に差が見られ、未分解の状態で吸収されることがアレルギーの発症につながると考えられた。
  • 赤木 祐子
    セッションID: 2C4
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    【目的】近年,健康志向が高まる中で,食品保存時における栄養成分の損失防止が求められている.食品中の脂肪酸,ビタミン類,アミノ酸は,常圧における冷蔵下よりも減圧下において損失を防止できることが判った.そこで,真空チルド法を家庭用冷蔵庫に活用した場合の食品に及ぼす効果および弊害について検討した.
    【方法】冷蔵室下部に設置した密閉容器内に入れたのち,空気を真空ポンプで吸引後一定減圧下で保存した.その間の,酵素的褐変,メト化,K値および生きた食材の生死を品質の指標として,食品に対する減圧冷蔵の影響を検討した.酵素的褐変については,0.5,0.7,0.85気圧下で各24時間保存したときのりんごの切断面の色変化について,測色計(コニカミノルタ製CR-13)を用いてL*a*b*を測定し,減圧量と酵素的褐変の関係を調べた.メト化およびK値については,マグロの赤身を用いて,0.2~0.9気圧まで0.1刻みに各3日間保存し,色変化は酵素的褐変化と同様に,K値は魚介類の鮮度を測ることができる試験紙を用いて行った.生きた食材の生死については,あさり,活エビ,納豆菌およびヨーグルトの乳酸菌について0.3~大気圧下で1~3日間保存し,生死を測定した.
    【結果】リンゴの酵素的褐変は減圧量に比例して褐色変化量が軽減した.マグロの赤身の色変化は,0.2気圧~0.4気圧で表面が褐色になり肉眼で識別できる感覚と一致し,0.8~1.0気圧で赤色が向上した.一方,マグロの赤身のK値は0.6気圧最大とした近似曲線となった.色変化およびK値の結果より,マグロの赤身は0.2気圧~0.4気圧では低酸素化によりメト化が進行し,0.8~1.0気圧では表面が酸化して赤色を呈したと考えられ,0.6気圧近傍がマグロの保存性には最も適している結果を得た.生きた食材の生死は,0.7気圧と大気圧とで差がなかった.
  • 森山 三千江, 大羽 和子
    セッションID: 2C5
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    【目的】ビタミンC(VC)やイソフラボンはガンを始めとする様々な疾病を予防する抗酸化能を持つ機能性成分として良く知られている。加えてイソフラボンは女性ホルモンと似た働きを持っていることも広く知れ渡っている。そこで、大豆に含まれるイソフラボン(グルコース配糖体、マロニル配糖体、アグリコン)およびVCが乾燥大豆を異なる時間と温度で浸漬させた場合にどのように変化するか、VCの合成酵素及び酸化酵素の変動とともに追跡し、VCおよびイソフラボン量の最も多くなる大豆の浸漬条件を見いだす事を目的とした。 【方法】色の異なる(黄、緑、黒)三種の乾燥大豆(りゅうほう、秋田みどり、東光)を用い、時間及び温度を変えて浸漬させた。イソフラボン量は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用い、酢酸およびアセトニトリルを溶離液としODSカラムにて分離した。VC量はHPLCポストカラム誘導体法にてアスコルビン酸(AsA)とデヒドロアスコルビン酸(DHA)を定量した。合成酵素であるガラクトノラクトンデヒドロゲナーゼ(GLDH)活性は大羽らの方法、酸化酵素であるアスコルビン酸オキシダーゼ(AAO)活性は安井らの方法により測定した。 【結果および考察】総イソフラボン量は乾燥大豆では秋田みどりで最も多く、浸漬後はりゅうほうと秋田みどりでは25℃18時間浸漬で最も多くなったのに対し、東光では25℃24時間で最も多くなった。これは総イソフラボン量の70_%_以上を占めるマロニル配糖体が最も多くなる条件と一致していた。VC量は乾燥大豆中にDHAは検出されず、総VC量はりゅうほうでは25℃24時間、秋田みどりは5℃18時間、東光は5℃24時間で最も多くなりGLDH活性の高い浸漬条件でVC量が多く、AAO活性はGLDH活性に対しどの大豆でも低くなっていた。
  • 辻 美智子, 長野 宏子, 下山田 真
    セッションID: 2C6
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    【目的】大豆は微生物による発酵や熟成の過程を経て,消化吸収率も高くなり,旨味増加や食感変化等が起こる。このような大豆の発酵食品は照葉樹林帯の中心である中国をはじめ,東南アジアや日本で食されている。中国の大豆発酵食品「豆豉」は,日本の寺納豆や浜納豆の起源とされ,塩味が強く,調味料として利用されている。本研究では,豆豉のタンパク質量,遊離アミノ酸量,遊離アミノ酸組成,SDS電気泳動,抗原抗体反応を行い,食品中の微生物によるタンパク質の分解とアレルゲン分解について検討することを目的とした。
    【方法】実験に用いた豆豉は,2005年8月中国・雲南省・西双版納にて収集した5試料である。比較試料として日本の浜納豆,寺納豆を用いた。各試料を凍結乾燥させ粉砕後,10倍量の30mMトリス塩酸緩衝液を加え,4℃で一晩撹拌し可溶性タンパク質を抽出した。遠心分離後,上清液を分子量3,000(YM-3)で分けた。高分子部分をタンパク質定量,SDS電気泳動,抗原抗体反応に,低分子部分を遊離アミノ酸定量,遊離アミノ酸組成分析に用いた。
    【結果】(1)豆豉を生大豆と比較すると,タンパク質量は少なく,遊離アミノ酸量は多かった。大豆タンパク質が微生物発酵作用を受け,低分子化されることが明らかとなった。またアミノ酸組成では,いずれの試料ともグルタミン酸(Glu),ロイシン(Leu)が多く認められ,豆豉のなかにはGlu量が全アミノ酸量の約3割を占めるものがあった。(2)SDS電気泳動の結果,生大豆と比較して豆豉はタンパク質分解が進んでいたが,そのバンドには差があった。(3)抗原抗体反応の結果,豆豉はアレルギー反応部分が低減化させており,なかには大豆アレルギーの主要タンパク質とされる部分にバンドがみられなかった。
  • 牟田口 光美, 白石 淳
    セッションID: 2C7
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    目的大豆煮汁廃液の有効活用について研究を行った。本研究では、大豆煮汁成分中のたんぱく質に着目し、チーズ様食品を作製し、食材化することを目的とした。前熊本工業大学教授上田誠之助氏1)が製造したチーズ様食品の製造法を参考にして熟成チーズ様食品の作製を試みた。また作製した熟成チーズを食材として商品化することを目的とした。方法前熊本工業大学教授上田誠之助氏により実施されていた方法により、大豆煮汁とスキムミルクからチーズ様食品を作製し、熟成を行った。しかし熟成中に予想以上に雑菌(カビ)の繁殖があり、食材としては不適であった。種菌として用いたのは市販のヨーグルトであったので、植物性乳酸菌に着目し、三種の植物性乳酸菌を選択した。植物性乳酸菌で作製したチーズ様食品には機能性食品としての効果があると推察されたが、食味の点でなめらかさに欠けていたため、食味向上・保存性の向上を目的としてSaccaromyces cerevisiaeをチーズ様食品作製時に加え、熟成する方法を用いた。また、チーズ様食品熟成時に酸性下に置くことで雑菌の増殖を抑えることを目的として熟成時に黒酢を添加し、その効果を検討した。また、製品としての保存性を高める目的で、熟成チーズ様食品を凍結乾燥し、粉末にした。この粉末を用いて一般成分分析とアミノ酸組成を分析した。アミノ酸組成について、大豆煮汁原料やスキムミルクと比較検討した。結果大豆煮汁廃液でのチーズ様食品作製は、植物性乳酸菌とSaccaromyces cerevisiaeの混合により長期間の熟成に成功した。黒酢を添加することによりさらに長期間の熟成が可能という結果が得られた。さらに凍結乾燥粉末を含めて種々の商品化の検討を行った。(1)上田誠之助「食品工業における廃棄物の再資源化」食品と開発1991;Mar:15-17
  • 柳内 志織, 佐藤 香澄, 加藤 みゆき, 庄司 善哉, 大森 正司
    セッションID: 2C8
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】愛媛県西条市石鎚地区には、微生物による二段階発酵を行う製造工程を有する石鎚黒茶と呼称される茶がある。発酵に関与する微生物が、石鎚黒茶製品にどのように影響しているのかは明らかにされていない。本研究では第1段階の発酵にかかわる真菌を分離同定し、その真菌の特徴を捉え、また石鎚黒茶の風味にどのような影響を与えているのかを明らかにすることを目的とした。
    【方法】試料は2006年8月に石鎚黒茶のカビ付け工程で採取した真菌を用いた。
    (1)カビ付け工程の茶葉よりPDA培地に25℃5日間インキュベートし、真菌を分離した。この分離株について標準株との比較、検討を行い、形態学的同定を行った。またDNAの塩基配列を明らかにし、相同性を比較、同定を試みた。(2)分離株をPD培地に接種、25℃で10日間インキュベートした。この培地から分子量14,000以上の粗酵素を分画し、粗酵素とヤマチャ抽出液を37℃恒温下で反応させ、カテキン類を逆相HPLCで分析した。(3)(2)で特に粗酵素の影響の大きかった(-)-EGC及び(-)-EGCGを用い、これらカテキンへの影響を検討した。
    【結果】(1)真菌分離株の形態観察において、Mucor hiemaris f.sp.hiemalisNBRC9405T及び分離株に仮根形成は認められなかった。Rhizopus oryzaeNBRC31005には胞子嚢胞子にひだ状の模様が確認され、分離株の至適生育温度は25℃付近であった。分離株の28SrRNA遺伝子D2領域のシークエンス解読を行ったところ、相同性はRhizomucor variabilisと98.7%であった。(2)ヤマチャ抽出液へ分離株産生粗酵素を5時間反応させたところ、カテキン分析において(-)-EGCが約14%、(-)-EGCGが65%程度に減少していた。(3) (-)-EGC及び(-)-EGCG単体へ、分離株産生粗酵素を反応させたところ、(-)-EGCでは反応5分で4.3%まで減少、(-)-EGCGにおいても7.5%まで減少した。
  • 久保 加織, 堀越 昌子
    セッションID: 2C9
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】ふなずしはふなを飯漬けにして発酵させたすしで、滋賀県の代表的な伝統食品の一つである。ふなに含まれるn3系多価不飽和脂肪酸は発酵が進んでも酸化されずに安定であり、乳酸発酵食品としての機能性も期待される。ふなずしには特有の風味があり、そのため好みがはっきりと分かれる。本研究では、ふなずしの風味に関与すると考えられる遊離アミノ酸、核酸関連物質、揮発性成分を分析するとともに、官能検査を実施し、ふなずしの嗜好に影響する成分を明らかにし、ふなずしの伝承について検討した。
    【方法】試料には、大学研究室で調製したふなずしと3軒のふなずし専門店から購入したふなずしの合計4種類のふなずしを用いた。それぞれのふなずしの遊離アミノ酸と核酸関連物質は、常法どおり測定した。揮発性成分は、40℃で20分間SPMEファイバーに吸着させた揮発性成分をGCMSに導入して分析した。官能検査は、女性46人をパネルとし、4種類のふなずしの味、香り、口ざわり、総合評価を順位法で評価した。
    【結果】ふなずしには多くの甘味や旨味を持つ遊離アミノ酸が含まれ、味に関与していると考えられた。一方、核酸関連物質の多くは分解され、味への影響はほとんどないと考えられた。各ふなずしから検出された揮発性成分は30種類以上であったが、どのふなずしからも検出されたのは12種類で、これがふなずしの香りの基本になっていると考えられた。官能検査では、香りと酸っぱさが総合評価に大きく影響を及ぼしており、ふなずしを食べた経験がほとんどないパネルで酸やケトン、アルデヒドがあまり検出されないふなずしを好む傾向が認められた。一方、ふなずしの食経験が多いパネルの好みには個人差が顕著に認められ、ふなずしの風味が家や店ごとに異なっていることを反映していた。
  • 高橋 秀子, 河合 成直
    セッションID: 2C10
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    目的ヒトにおけるカドミウム(Cd)の摂取・蓄積の害の報告がある。そのため、食品中のCd量を低下させるために、作物栽培土壌中のCdの除去と生物利用性の低下に関する取り組みが行われてきた。日本では、鉱山周辺等で土壌中のCd濃度の高い地域がある。2種類のCd汚染土壌を用いてコマツナをポット栽培し、Cd吸収の差異を比較した。
    方法栽培土壌はA(高濃度汚染)とB(低濃度汚染)で、0.1M塩酸可溶性Cdはそれぞれ2.95、1.56μgCd/ g 風乾土、土壌pHはそれぞれ5.4、6.0であった。1リットル容ポットに化成肥料を添加した栽培土壌を入れ、コマツナを1ポットあたり3個体ずつ自然環境下の温室で栽培した。播種4週後に地上部を収穫し、70℃で乾燥後硝酸過塩素酸による分解を行い、原子吸光光度計によりCd量を測定した。栽培後の土壌に化成肥料を添加し、コマツナの栽培をA土壌は3回、B土壌は5回繰り返し実施し同じく分析した。
    結果生育:A土壌が悪く、B土壌が良かった。A・B土壌とも、栽培2回目において生育が良く、繰り返し数が増えると生育量が低下する傾向であった。Cd吸収:生育の良い区で多かった。A土壌の2回目がポットあたり18μg と高かった。Cd濃度:A・B土壌とも栽培の繰り返し数が増えると高くなった。B土壌に比較しA土壌が高く、1作目で4倍の18.8μg / gd.w.であった。土壌pH:栽培の繰り返し数が増えると低下した。A土壌は4.3、B土壌は4.0まで低下した。土壌pHが低下すると、コマツナのCd濃度は増加した。A・Bの土壌pHが同じ場合、Cd濃度はA土壌のコマツナが高かった。土壌Cd濃度が高くpHの低い土壌において、コマツナの生育は悪くCd濃度が高いことがわかった。
  • 藤井 可奈, 大森 正司, 庄司 善哉, 加藤 みゆき, 長野 宏子
    セッションID: 2C11
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】廃棄物として問題視されている米ヌカを有効活用されている食品として「へしこ」がある。へしこは郷土料理のひとつで、かつて冬の雪に閉ざされた人々の生活を支えてきた保存食である。サバやイワシなど近海で豊富にとれる青魚を、塩漬け工程を経てヌカ漬けにし、発酵させることにより保存性を高め、生鮮食品が不足する冬に取り出して食べるものである。この製造工程の中で米ヌカは、漬け込む前と比べて味や栄養成分などが全く異なる食品となる。
    本研究では、へしこから分離した微生物の同定とその微生物によるへしこの成分変化、特にヌカタンパクの変動について明らかにすることを目的とする。
    【方法】(1)_一般成分分析 (2)へしこの微生物の分離・同定 (3)ヌカタンパクとプロテアーゼ活性の相互作用 の検討を行なった。
    【結果】(1)へしこヌカは漬け込み前の米ヌカと比べると粗タンパク含量は減少し、粗脂肪含量、還元糖含量、アミノ酸含量は増加していた。(2)へしこから微生物を分離し、純粋分離することにより31株を得た。この31株を用いて、アミラーゼ活性、プロテアーゼ活性の測定を行なった。アミラーゼ活性の強く見える5株を得、この5株は耐熱性試験において高温加熱後においてもアミラーゼ活性が認められた。プロテアーゼ活性では活性の非常に強い3株を得、この3株をDNA塩基配列によって同定したところBacillus subtilisと同定された。(3)Bacillus subtilisの粗酵素(プロテアーゼ)を米ヌカのアルブミン・グロブリン画分(水溶性・塩可溶性タンパク)に反応させると遊離アミノ酸、特にグルタミン酸の増加が認められ、電気泳動解析では反応時間に沿ってバンドが薄まり、低分子側に新たにバンドが出現した。
  • 佐藤 香澄, 豊川 歩巳, 大森 正司, 加藤 みゆき
    セッションID: 2C12
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    (目的)茶は、世界で最もに多くの人に飲まれている飲料である。アジア圏では緑茶が中心として利用されているが、世界的には紅茶が多く飲まれている。紅茶は、主にインド・スリランカ・中国・ケニア・インドネシアにおいて生産されており、風味成分も各産地それぞれの特徴がある。スリランカ紅茶は、バラ様の香りを有しており、ケニア紅茶は、水色の濃厚なのが特徴とされる。中国のキームン紅茶は、スモーキーな香りを、インド紅茶は、マスカットフレーバーといわれているダージリン紅茶と発酵臭の強いアッサム紅茶が代表である。製造方法は、オーソドックス製法とCTC製法に分かれており、ダージリン紅茶は、主としてオーソドックス製法が用いられ、スリランカ、アッサム、ケニア紅茶は、主としてCTCの製法が用いられている。近年、茶の生産は、安全性の問題から減農薬または有機農法で栽培を行っているところが増加している。今回は、ダージリン紅茶の通常栽培と有機栽培における風味成分の変化について検討したので報告する。
    (方法) 試料 2003年にダージリンで製造した茶を用いた。有機栽培は、Makaibari tea etateで通常栽培はGoomtee tea estateで製造したファーストフラッシュ(Spring teas (1st flush),セカンドフラッシュ(Summer teas(2nd flush),秋茶(Monsoon teas),冬茶(Autumnal teas)について検討した。以上の試料について、水分、ポリフェノール、カテキン、アミノ酸、香気成分などのついて分析した。
    (結果) 春茶や夏茶は、栽培条件の影響を大きく受けることが明らかとなった。アミノ酸含量は、有機栽培茶の方がファーストフラッシュなど初期に多い傾向にあった。香気成分中の低沸点化合物は、通常栽培茶に多く認められ、有機栽培茶には、ゲラニオールや2-フェニールエタノールなどが認められた。色素成分については、TFやTR化合物が有機栽培茶の方に多く認められた。
  • 千田 眞喜子, 葛葉 泰久
    セッションID: 2C13
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    目的飲用水中の硝酸態・亜硝酸態窒素は,以下の理由により,健康を害する可能性があると考えられている.(1)硝酸態窒素には大きな毒性はないが,体内で還元された亜硝酸が発ガン性の疑いのあるニトロソアミンに変化する可能性がある.(2)亜硝酸態窒素は,乳幼児にメトヘモグロビン血症を発症させる可能性がある.ただし,特に(2)については,還元が乳幼児の胃内で起こるという説1)と,体外の微生物(飲食物への汚染)が還元の原因であるという説2)がある.リロンデル2)が,後者の立場により,硝酸含有量が多い野菜スープを室温下で腐敗させ,亜硝酸を増加させる研究をいくつか紹介しているが,著者らは特に,上記の還元と水道水中の塩素の関係について調べた.
    方法純水により作成したほうれん草ジュース(以下A液),水道水によるほうれん草ジュース(同B液)を冷蔵庫(7℃)と恒温室(30℃)で数日間保存し,亜硝酸態窒素と塩素濃度を測定した.
    結果(1)A液B液とも,冷蔵保存した場合と比較して恒温室保存の場合に亜硝酸態濃度の増加が顕著(90時間で100倍程度)であった.(2)B液を冷蔵保存した場合,ほとんど亜硝酸の増加が見られなかった.(3)冷蔵保存した場合でも,A液は90時間で数倍程度の濃度増加が見られた.(4)B液作成時に塩素濃度が検出限界以下に降下した.これらは,水道水中の塩素がジュースを殺菌し,アンモニアや有機アミンと結合して消費され,さらに冷蔵が効果的に微生物増加を抑制したことを示している.つまり,塩素と冷蔵の組み合わせが,亜硝酸の害を抑えることが示唆された.
    [文献]1)林:水と健康,日本評論社, 2)リロンデル:硝酸塩は本当に危険か,農文協
  • 公共トイレに対する意識
    畑 久美子, 井澤 尚子, 佐々木 由美子, 長塚 こずえ, 成田 巳代子, 花田 美和子, 吉田 千恵子
    セッションID: 2D1
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】前回実施したユニバーサルデザイン研究の結果、公的設備に対する問題点や課題が多く抽出された。そこで、今回は公共トイレを取り上げ、一般生活者を対象として公共トイレの利用前後の行動に対する意識と実態に関するアンケート調査を実施し、色彩・意匠学の専門性からユニバーサルデザイン(UD)研究に資することを目的とする。 【方法】アンケート調査:配票留置法、時期:2007年10月~11月、対象:16才以上の男女1480名。質問は、基本属性と身体不自由の有無、公共トイレの使用目的、快適性・使用性、案内板について、個室に入るまで・個室内・洗面所の設備・環境・視認性・使用性について等、全96項目に対して調査を行い、単純集計とクロス集計、他の解析を行った。 【結果】トイレの使用目的は、排泄以外に手洗い、化粧、歯磨き、乳幼児の世話、休憩など個室外での使用が高い割合であった。快適性評価の高いトイレは、宿泊・ショッピング・飲食・文化施設等で、最も評価が低かったのは公園・道路であった。交通機関は快適と不快の評価に割れ、バラつきが認められた。トイレ場所を示す案内板に対する評価は、見つけにくい、見えにくい、絵や文字が小さい等の項目で否定的回答が多く、視認性、誘目性、可読性等に関して再検討が望まれる。個室に入るまでと個室内の環境・設備では、床の汚れ等の衛生上の問題や個室数が少ない、使い捨て座面シート、荷物置場、手すり、消音装置、防犯設備が不十分等設備面の他に様式や空き状況がわからない、使用方法の絵文字の案内が見えにくい、説明不足等の不満も高い割合であった。使用目的としてニーズの高い洗面所に対しては、荷物置場、スペースが不十分、濡れや汚れ、水道の自動センサーがわかりにくい等、設備・環境等のハード面と使いやすさ等のソフト面に対する要望が高い結果を得た。
  • 公共トイレの視認性、使用性
    武井 玲子, 芦澤 昌子, 伊藤 陽子, 蒲池 香津代, 斎藤 祥子, 田岡 洋子, 橘 喬子
    セッションID: 2D2
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】公共トイレに対する意識と行動実態に関するアンケート調査結果及び全国各地の公共トイレ写真を分析・評価し、一般用公共トイレに対するユニバーサルデザイン(UD)要件を抽出し、今後の検討に資する。
    【方法】アンケート調査時期・手法は第3報と同様である。クラスター分析、主成分分析等による解析結果や公共トイレに対する要望(自由記述)及び全国各地165箇所の公共トイレを視認性、使用性の視点から撮影した写真とともに分析、評価を行った。
    【結果】従来4Kと言われていた公共トイレは、快適性、衛生・安全面等全体的にレベルアップされてきていることが今回の調査で示唆された。但し、UD視点の評価からみると、公園と新しい多目的ビル等公共トイレの設置場所や設置時期(新旧)の違いによるUDレベルには大きな差が認められた。(1)トイレ表示やピクトグラムは、形、色、サイズなど種々様々であったが、視認性、可読性、誘目性等の視点から改善の余地があるトイレも認められた。(2)「トイレに入るまで」~「トイレ内」の環境・設備についてみると、階段や段差の存在、荷物置場・フック不足、設備の使用方法のわかりにくさ、等の問題点や課題が抽出された。(3)トイレ個室様式は、衛生的、慣れ等の理由で「洋式」53.6%、「和式」18.1%、「どちらともいえない」28.3%の割合で選択されていたが、入口ドアへの様式表示の要望が多く認められた。(4)トイレの使用目的は排泄以外に「手洗い」59.8%、「化粧」25.0%、「着替え・着装チェック」22.0%、その他歯磨きや乳幼児の世話等多様であり、排泄だけを目的とした空間から脱却し、化粧ブース、休憩ブースなどを併設することが示唆された。(5)UD視点においてレベルの高い多機能・多目的トイレに、一般用公共トイレのレベルがより近づくことが今後の課題と考える。
  • (1)アパレル商品における色表示の現状
    橋本 令子, 内藤 章江, 石原 久代, 稲垣 有美子, 井澤 尚子, 田岡 洋子, 成田 巳代子, 芦澤 昌子
    セッションID: 2D3
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】現在社会において「色」は重要な伝達手段となっているが、その色使いは正常色覚者を対象にして考えられ、これまで色弱者に対する配慮は皆無であったといってよい。これを解決するため2004年、NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構が設立され、近年、多数の企業や団体から注目を浴び、路線図や案内図、オフィス商品、教科書など改善が進められている。しかし、衣服に関しては着目されていない。そこで本研究は、色弱者に配慮した衣服の色表示の方法について提案するため、アパレル商品に表示されているタグや品質表示に焦点をあて現状把握を行い、今後の基礎資料を得ることとした。
    【方法】調査は2007年11~12月に行った。調査方法は、購入衣服(男性服33点、女性服63点)について、商品自体と商品タグ(縫いつけてあるもの、取り外し可能なもの)、値段タグ、品質表示に使用されている色を、配色カード199aをもとに照合し、実態調査した。
    【結果及び考察】商品タグは2色~4色で構成されるものがほとんどである。タグの背景色と図色の配色関係は、いずれかに白、黒、灰が使用され、全体に濃淡色、明暗色、対照色の組み合わせが多く訴求効果をねらった配色とみられるが、色弱者に配慮している様子は読みとれない。値段タグは白地に黒文字表示であったが、この部分に極少数であるが淡黒、ブラック、グレー、ネイビー、カーキと記されたタグが存在した。しかしこの表示は、正常色覚者に対し類似した色に間違いが生じないよう記したものであり、色弱者のために記したものではないと推察される。以上、アパレル商品の色表示は、色弱者に対しての配慮が皆無といってよいことが確認できた。今後は色弱者と正常色覚者が同様な立場で、衣服の色表示が識別できるよう実験を行う。
  • (2)消費者と衣料品販売員の意識
    内藤 章江, 橋本 令子, 石原 久代, 稲垣 有美子, 井澤 尚子, 田岡 洋子, 成田 巳代子, 芦澤 昌子
    セッションID: 2D4
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】現在、様々な色の衣服が販売されており、私たちの衣生活を豊かにしている。しかし、色弱者は正確な色情報を読み取れず、衣服の選択・購入に不便を感じていると思われる。そこで本研究は、衣服の色情報を誰にでも正確に伝達する方法を提案するために、衣料品及び衣料品販売店における色表示の現状を把握し、それらに対する衣服購入者(消費者)と店舗側(衣料品販売員)の意識を調査することにした。
    【調査及び解析方法】調査は2007年11~12月に行い、調査対象者は、20~60歳代の衣料品販売員43名と20~60歳代の消費者254名であり、カラーユニバーサルデザインについての認知度や、衣服の色表示における配慮の必要性について意識調査を行った。解析には単純集計、分散分析(多重比較)、平均値の差の検定を用いた。
    【結果及び考察】消費者、衣料品販売員ともに、カラーユニバーサルデザインの認知度は非常に低く、それらを導入している衣料品及び衣料品販売店は皆無であった。消費者にカラーユニバーサルデザインの意味を理解させ、衣料品や衣料品販売店に取り入れた方がよいか質問したところ、93%の人が「取り入れた方がよい」と回答した。しかし、同様の質問を衣料品販売員にしたところ、重要性は理解できても費用や手間の問題により「取り入れるのは難しい」と回答する人が40%を占め、早急な変革は困難であることが示唆された。以上の結果から、色弱者に配慮した衣服の色表示を導入するには、カラーユニバーサルデザインの重要性を世間に周知させることが有効と言える。なお、アパレル業界では早急な変革が困難なため、まずは販売員教育に「色弱者の色の見え方」を導入するなどの意識変革が急務と言える。
  • 岡田 明子, 芳住 邦雄, 熊谷 伸子, 山本 嘉一郎
    セッションID: 2D5
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    [目的]若い女性のファッション行動における高級ブランドによるハンドバッグの存在感の大きなことは衆目の一致するところである。その中でもルイ・ヴィトンのブランド力は抜き出ていると言われている。本研究は、女子学生を対象としてルイ・ヴィトンのハンドバッグが、いかに認識され、また、評価されているかを、共分散構造分析により解析することを目的としている。
    [研究方法]本研究におけるアンケート調査は、項目選定のための予備調査を経て高級ブランド・ハンドバッグのイメージについて計11項目を選定した。これらに関して4段階の評定尺度による回答を求めた。ルイ・ヴィトンの使用頻度についても調査した。調査対象は女子学生481名である。そのうち、ルイ・ヴィトンをよく使用すると回答した102名について標記の解析を行った。
    [研究結果および考察]解析に当たっては、高級ブランド・ハンドバッグにおける「同調・差別化の流行意識」、「性能・品質評価意識」、「ブランド価値による高揚感」を構成概念とした。前述の11項目を用いて、因果関係を共分散構造モデルによって分析した。各適合性指標は本研究のモデルが充分な適合性を有していることを示していた。「同調・差別化の流行意識」および「性能・品質評価意識」から「とブランド価値による高揚感」へのパス係数はそれぞれ、0.73および0.18のであった。ルイ・ヴィトンにあっては、性能・品質をブランド力維持の重点としてのフレーズが喧伝されているが、必ずしも大きな要因とはなっていないことが窺われた。むしろ、流行における定番意識である同調・差異化によりブランドが浸透していると言いうることが本研究の結論である。
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