一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
60回大会(2008年)
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2日目口頭発表
  • 熊谷 伸子, 山本 嘉一郎, 岡田 明子, 芳住 邦雄
    セッションID: 2D6
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    【目的】人材不足の景況感に伴いアルバイトの雇用方法を多様化させる企業が増えている。特に、コンビニ、スーパー、ファミリーレストランといった業種での人材不足が深刻化していると言われている。こうしたところでアルバイトをすると見込まれるのは、大学生をはじめとする若年層である。本研究は、このような状況における若年層のファッション意識がアルバイト先を選択する際にいかに影響するかを明らかにすることを目的としている。
    【方法】 2008年1月に関東圏に在住する大学生男女291名を対象に質問紙による集合調査法で調査を実施した。質問内容は、ファッションに関する項目、アルバイト先の選択に関する項目などである。これらの項目に対して4段階尺度で評価を求めた。なお、データ分析には多変量解析を適用した。
    【結果】潜在変数として「ファッション意識」と「アルバイト選択の意識」を設定し、前者が後者の原因となるパスモデルを構築した。潜在変数「ファッション意識」においては、さらに「流行重視」「ステイタス重視」という2つの潜在変数を設定し、各観測変数へのパスを設定した。一方、潜在変数「アルバイト選択の意識」においても、「みかけ」「内容」「付加価値」という3つの潜在変数を設定し各観測変数へのパスを設定した。その適合度は、CMIN=270.947 (p<0.01),GFI=0.907,RMSEA=0.068であり、このモデルは受容出来る範囲内にあると判断した。「ファッション意識」から「アルバイト選択の意識」へのパス係数は0.39であった。このことから、ファッション意識は、アルバイト先選択に対して少なからぬ影響を与えていると結論される。
  • 池田 真由美, 石原 世里奈, 芳住 邦雄, 深沢 太香子, 熊谷 伸子
    セッションID: 2D7
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    [目的]若い女性のファッション行動においては、形態的なデザインだけではなく、その色彩も重要な影響要因である。特に、色彩は年単位の準備・企画過程を経て、設定されているとされているが、その受容の実態は明確ではない。流行している色彩の認識、情報源としてのファッション雑誌の存在に留意しながら、若い女性のファッション意識を解明することを本研究の目的としている。
    [方法]調査対象者は、東京、福岡に在住する女子大学生429名であった。調査時期は2007年11月であり、アンケート用紙による集合調査法により実施した。調査内容は、ファッション行動、ファッション雑誌、2007年秋・冬の流行色5色(ブルー、ブラウン、グリーン、レッド、パープル)関する設問より構成された。こうしたデータに主成分分析を含む多変量解析を適用した。
    [結果]ファッション行動についての主成分分析により、第1主成分に「流行追随意識」、第2主成分に「個性的ファッション意識」、第3主成分に「独自的価値意識」抽出され累積寄与率は51.3%であった。「流行追随意識」の高い人は低い人に比べ、流行色の受容により積極的であることがわかった。パープルはこの時期の流行色であるとの認識は最も強かった。しかし、多くの被験者からは好みの色との評価は低かった。一方では、「個性的ファッション意識」の強い人には実際に購入する人が相対的に多かった。ブラウンは、今年の流行色としての認識があると共に、自らの嗜好と合致すると意識している人が多かった。これまでにもいわば定番色として定着している基盤が反映していると考えられる。さらに、ファッション雑誌の好みと色彩の流行の認識とに関連が存在することが認められえた。
  • 内田 直子
    セッションID: 2D8
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    目的 対人の服装の第一印象とその対人距離感とは関係している。昨年度の本大会で、服装の違いによる対人距離感の特徴と、空間別での対人距離の不快感について報告1) した。この時、空間は都会的要因の強い場となるにつれ、不快感は減少する傾向がみられた。本研究はさらにこれに時間的要因を付加した場合について検討した。
    方法 調査1では、先行研究で用いた10種類の服装写真と5種類の空間の写真を示し、評価者に、夜間に各空間で提示した服装の人と2~3m内ですれ違う時、どのくらい不快感があるかを5段階で尋ねた。調査2では、「都会的」および「非都会的」の場の昼夜別写真において、2種類の服装の間を10段階に区分した試料を提示し、評価者に2~3mの道幅の両側に、提示した服装の人間が立っているとした場合、この間のどこを歩くかを記入してもらった。服装組合わせは6種類である。調査1、2とも2008年1月に女子学生67名に行った。
    結果 調査1では、女性・男性服装とも同一空間において、昼より夜にすれ違うほうが不快感が高くなる傾向であった。ただ、最初から不快感が他より非常に高い服装では、昼夜関係なく高い不快感を示している。調査2では、先行研究の空間を加味しない場合の結果と比較すると、場や両者間の服装の種類によって、夜のほうが敬遠される服装、昼のほうが敬遠される服装、ある条件の時だけ敬遠さが緩和される服装、空間や昼夜に関係なく距離感が一定の値を持つ服装などに分類される。以上から、空間別、時間別の対人距離感における不快感は、服装の印象や空間の要因の他、昼夜の違いによっても影響があることが認められた。
    【文献】1) 内田;日本家政学会第59回大会、研究発表要旨集、p.212(2007)
  • 長内 優樹, 永井 一幸, 飯嶋 慧
    セッションID: 2D9
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    目的
     被服行動は,流行への関心や独自性の表現,社会的評価の希求など様々な心理的要素が複雑に働く行動であるといえ,それぞれの要素の比重も世代や時代によって変化することが仮定できる。よって,単一の要素の精緻な分析も重要であるが,より包括的な視点からのアプローチも必要であろう。そこで,本報告では現代の若者の被服に関する意識構造の仮説モデルを構成することを目的とした。
    方法
     大学生210名を対象に自記入式の被服に関する意識・行動を問う独自の20項目(6件法)の調査紙を,講義時間内の集合形式および手動配布・手動回収形式で実施した。
    結果
     各項目の関係を検討するために,全20項目に探索的な因子分析(主因子法・プロマックス回転)を行った。その際,因子負荷量が.35以上で,2つ以上の因子にまたがって示されることのない12項目を選出した。その結果,4因子が抽出され,第1因子から順に,「着こなし」,「トレンド志向」,「独自性」,「葛藤」と解釈した。
     また,各因子の合成得点を算出し,因子ごとの相関係数を求めたところ,第4因子のみが独立するような傾向を示しており,その他の因子間では有意な相関関係がみられた。さらに,合成得点について性別を要因とした平均値の差の検定(t検定)を行ったところ,第4因子において有意差がみられた。
    考察
     大学生の被服に関する意識は,4つの因子から構成されていた。また,各因子の相関から考察すると,「トレンド志向」を中立として,社会意識寄りの「着こなし」,個人意識寄りの「独自性」,それらの意識間で悩む「葛藤」,という仮説的な被服に関する意識の構造モデルを構成することができた。
  • 男子大学生たちのカジュアルウエアに対する報告
    辻 幸恵
    セッションID: 2D10
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    目的男子大学生が好む和柄について調査をした.彼らのカジュアルな服装において、どの程度和柄模様が取り入れられるのか、どのような和柄模様に人気があるのかを調査をし、その要因を明らかにすることを目的とした. 対象関西圏に在住する男子大学生420名に対して質問紙による調査を実施した.回収率66%、記述不備を除いたので有効回答数273であった. 方法予備調査では、記述式での回答をもとめた.具体的には、和柄に対してどのようなイメージがあるのか、どの程度、和柄模様の衣服を所持しているのか等を調査した.本調査では予備調査の結果から、所持が多かったTシャツ、ポロシャツ、ジーパンの3種類の品目に対して、それぞれ、どのような和柄模様に人気があるのかを調べた.人気のある和柄模様とはどういうものかを知るために、5段階評価での調査を実施した.分析手法は主成分分析を用いた.
    結果男子大学生が好む和柄の特徴は、色の配色がよいこと、全体のバランスがとれていること、龍や虎よりも魚や風景(植物を含む)に人気があること、大柄よりも小柄で緻密な感じを好むことがわかった.
    考察色やデザインへのこだわりは和柄模様だけではなく、衣服を購入する際にあらわれる.和柄で好まれるのは大柄の龍や虎ではないことから、全体に美的な感じがするもの、繊細な感じがするものが好まれていることがわかる.これは、いかついものを和柄に求めているのではなく、自然におしゃれに着るものを求めていることがうかがえる.人気がある風景や植物のデザインはそれを裏付けていると考えられる.
  • 関東地方の資源回収ルートの実態調査
    玉田 真紀, 三戸 詩織
    セッションID: 2D11
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    目的: 大量生産、大量消費型の社会となった今日、伝統的な衣生活では大切に繰り回して使ってきた布や衣服もごみとして捨てられる問題を抱えるようになった。生活者は着られないまま保管している衣服の処理に困っている状況にある。循環型社会に向けて、繊維製品を再生利用できる社会システムを構築するために、問題点を明らかにすることが本研究の目的である。繊維製品の資源回収ルートの存在を、地方自治体から配布されるごみと資源の分別パンフレットから調査した中で、関東地方の結果を報告する。
    方法: 平成19年関東地方7都県各市町村区に、一般家庭に配布している資源分別パンフレットの送付依頼をし、回収した。それらに、布・衣類・寝具・カーペット・じゅうたん・皮類(鞄・靴)など繊維製品がどのように記載されているかを分析した。
    結果: 関東地方7都県334市町村区のうち314市町村区について把握できた(回収率は94.0%)。総計では可燃扱い92.7%、資源扱い80.3%、粗大扱い84.1%、不燃扱い28.0%となり、資源回収の割合は高かった。しかし県によりばらつきがあり、埼玉、神奈川、千葉、東京、茨城が83~91%資源扱いとしているのに対して、栃木55%、群馬47%が低かった。資源回収品目は衣類全般(下着も含)、シーツ・毛布・カーテン等まで書かれており、東京ウエスト組合や神奈川のナカノなど故繊維業者が充実している関東域の特徴が見られた。報告(1)の東北地方と大きな差異があり、受入先の利用状況が明確なこれら県では、それを踏まえた回収ルートが確立していることがわかった。
  • 橋本 光代, 小林 茂雄
    セッションID: 2D12
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    【目的】近年,環境問題への関心が高まり,「エコ」という言葉をよく耳にする.身近な衣料品についてはどうだろうか.女子学生とその母親を対象に,衣料品の廃棄行動の実態,衣料品の廃棄やリサイクルに対する意識,環境への関心について調査し,考察した.
    【方法】女子学生とその母親を対象にアンケート調査を2008年1月に実施した.調査内容は,(1)衣料品の廃棄方法(17質問項目,4段階評価) (2)衣料品の廃棄やリサイクルに対する意識(38質問項目,4段階評価) (3)フェースシート(女子学生:11質問項目,母親:8質問項目)である.調査データは,t検定,因子分析などの統計処理により解析したが,特にフェースシートの環境への関心度と廃棄方法,および衣料品の廃棄やリサイクルの意識との関係について考察した.
    【結果】(1)衣料品の廃棄行動について,女子学生と母親との間に多くの統計的有意差が認められた.また,女子学生,母親共に環境への関心度が高い人は,低い人よりもリユースを行うことがわかった.(2)衣料品の廃棄やリサイクルに対する意識について,女子学生と母親との間に多くの統計的有意差が認められたが,母親は女子学生に比べてリサイクルに対する意識が強い傾向を示した.因子分析の結果,女子学生では「衣料品リサイクルへの協力性」「リサイクル衣料への嫌悪感」「衣料品リサイクルの知識不足」などの因子が,母親では,「衣料品リサイクルの知識不足」「衣料品リサイクルへの協力性」「衣料品の長期使用」などの因子が抽出された.また,女子学生,母親共に環境への関心が高い人は関心の低い人に比べて,「衣料品リサイクルへの協力性」の平均因子得点が有意に高いことが認められた.
  • 杉浦 愛子, 森 俊夫, 日下部 信幸
    セッションID: 2D13
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    目的 衣服はその色や柄,形などを媒介に着用者の様々な情報を発信しており,衣服に用いられる柄はその情報を左右する重要な要因のひとつである.従来,縞柄や水玉柄といった基本的な柄について様々な研究が行われてきたが,複雑な要素をもつ柄について研究されたものはあまりみられなかった.本研究では,近年,色々な服飾品に取り入れられているアニマルプリント柄に注目し,アニマルプリントに対する嗜好性とテクスチャ特徴との関係について検討した.
    方法 試料はレオパード柄やゼブラ柄,ホルスタイン柄などのアニマルプリント10種類である.嗜好性の評価は,被験者43名(男性20名,女性23名)を対象に,アニマルプリント柄の布の外観をカラースキャナで読み込み印刷したものを用い、官能評価を行った.また,テクスチャ特徴は,アニマルプリントのカラー画像を256階調のグレイレベル画像に変換し,輝度平均(MIU),角二次モーメント(ASM),コントラスト(CON),相関(COR),エントロピー(ENT),フラクタル次元(D)を抽出した.
    結果 アニマルプリントの嗜好性はテクスチャ特徴のうち,CORやMIUと高い相関がみられた.このことから,アニマルプリントは柄の明るさや線状性が高いものほど嗜好性が高く評価されると推察された.
  • 伊村 則子, 石川 孝重
    セッションID: 2E1
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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     目 的 本研究は、地方自治体での防災教育の現状を把握するとともに、幼稚園での防災教育の実態を調査し、現場ニーズに基づいた教育用絵本教材の開発を目的としている。
     方 法 防災課や教育委員会による防災教育の指針を調査した。また幼稚園での防災教育の現状と現場の要望を把握するため、2005年8~10月に文京区と豊島区の私立幼稚園6園の園長にヒヤリングを実施した。また絵本制作後は幼稚園の教員の評価を受け改定を加え、2園で読み聞かせを行い、園児の反応により内容を検証し、防災教育絵本を制作した。
     結 果 地域防災計画では幼児期の防災教育について47件中11件が言及していた。教育委員会による学校防災の方針を9自治体11指針で明確に提示していた。しかし幼児期の防災教育の詳細は3件のみの公開にとどまっている。また、幼稚園では児童期の前段階として、災害に関心をもつこと、自らの安全のために大人の指示に従うことが求められている。
     現在、幼稚園の防災教育は集団避難を目的とした訓練が中心で、地震・火事・不審者を想定して平均年間7.3回行われている。教材については、間接的な学習となる絵本では、幼児の心に響く要素を含む物語で、訓練などの体験学習の内容を知識として整理し学習できる内容が求められた。そこで、災害時の行動を学ぶ物語絵本とし、幼稚園の女の子が防災対策をしていないウサギと対策をしているサルの家の発災時の状況を比較して理解する内容とした。また完成本の読み聞かせでは、園児が絵本の内容と自分の体験を重ねて理解している発言があり、主題である「地震の危険性」と「地震の備え」が伝わったことが確認できた。本研究は調査時に研究室所属であった小川裕美君の協力を得た。謝意を表する。
  • 「こんな部屋いいな」をテーマとした描画の分析 その2
    藤野 淳子, 北浦 かほる
    セッションID: 2E2
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    目的前報では描かれている対象物を分類することによって、子どもの興味について傾向を捉えた。本報では子どもの空間表象の特徴について分析する。
    方法空間表象とは「刺激の存在がなく、受容器に興奮が生じないにもかかわらず直感的に心に浮かぶ像」とされる。即ち理想の家や好きな部屋についての描画は、過去の空間経験に基づいて心に浮かぶ象徴的な空間の像が表現されたものと考えることができる。これに基づき、再度一点ずつ検討し、空間表象の特徴を探った。
    結果子どもは「好きな物」「好きな行為」「自分の考え」から好きな部屋を発想していた。物から空間を発想すると、物自体に価値を見出した場合は、低学年では対象物を大きく描き、高学年になると詳細に描くことで好きな空間を表現しており、発達によって空間表象に違いがみられた。愛着物や好物など物の形に着目した絵では、象徴機能の出現とともに形をモチーフにして空間や空間内にある物を構成していた。好きな行為から空間を発想すると、行為を表現しよういう強い思いの結果、時間や空間に対する意識が低下し、昼や夜などの違った時間や違った季節を同時に描き異なった時間を一枚の絵の中に共存させたり、屋外の設備や店舗を室内に持ち込んでいる絵がみられ、小学生期に限った興味深い特徴であった。「自分の考え」を表現している絵では、部屋の雰囲気や空想の世界をイメージしたり、機械や装置を用いて願望を実現させたり、絵の中に既存の物語の要素を取り入れたり独自の物語を作り上げていた。空間表象の特徴は描画能力の発達と共に変化しており、表現方法は総じて高学年になるにつれて写実的になる傾向がみられたが、自分の考えを表現した絵ではそうした影響を受けにくい。
  • 小林 文香, 妹尾 理子
    セッションID: 2E3
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    【目的】現在、住まいに関する情報は大量に提供されており、住まい手にとっては、情報を選択すること自体が困難になっている。中でも住まいづくりの最も初期段階における依頼先の選定に関する情報は、重要であるにもかかわらず適切に提供されているとは言い難い。そこで本研究では、住まい手が依頼先について理解をし、信頼できる依頼先を選定するための情報整備を目的とする。
    【方法】以下の調査を行った。調査A:岡山市内在住の住まいづくり経験者10名を対象に、これまでの住まいづくり経験、住情報、依頼先への認識についてヒアリング調査を行った。調査B:調査Aの対象者10名のうち6名を対象にワークショップ形式で、依頼先の認識および住まいづくり時に入手した依頼先情報に関する聞き取りを行った。
    【結果】調査A、調査Bより把握できた住まい手の現状は以下になる。(1)住まいの情報はテレビ番組、一般雑誌、広告チラシなどから入手している。(2)住まいづくりの依頼先の選択肢として認識しているのは主にハウスメーカー、工務店であり、それらを自分自身で探すことは可能と考えているが、設計事務所に関してはどのように探せばよいかわからないでいる。(3)住まいづくり初期段階において、住まいづくりのプロセス、住まいづくりにかかる費用、依頼先の種別を具体的に知りたいが、的確な情報にアクセスできないでいる。(4)専門家とのコミュニケーションに不安を感じている。
    以上より、今後は住まいづくりの段階に沿った依頼先選定のための情報内容、情報提供形式の検討を行い、住まい手の依頼先選択支援のための補助資料を作成する。尚、本研究は科研費基盤研究(C)(18500588)の助成を受けたものである。
  • その2:教員養成に関わる大学での住教育経験
    岡村 美穂, 宮崎 陽子, 岸本 幸臣
    セッションID: 2E4
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    目的 前報に同じ。
    方法 前報に同じ。
    結果(大学での住教育経験)家庭科教員養成上の教科専門として受けた大学での住教育の経験については、約2割の教員が学習内容を覚えておらず、家政系学部の出身者ほどその傾向がみられた。(大学での住教育の学習内容)受けた大学住教育の印象では、約半数が「建築物としての住まい」、次いで3割が「家庭生活の場としての住まい」を挙げ、全体としてみるとハード的な内容とソフト的な内容に2分された。一方、現職に就いて後に学びたいと思った内容では「家庭生活の場」「居住地・環境」などがそれぞれ3割弱ずつで、9割がソフト的な内容を挙げている。(大学での住教育の役立ち感)大学で学んだ住教育が現場で役立っているかについて尋ねると、約7割が役立っていないと考えており、「全く役立っていない」は4分の1も存在した。(大学の住教育への提案)教員になるために必要な大学での住教育に対しては「家庭科教材を意識した住居学の学び」を半数以上が提案しており、大学での住教育経験が役立っていないと感じている人ほどその提案が多くみられた。(出身学部による大学住教育の特徴)教員養成系学部出身の教員では、ソフト的内容を学んだ人ほどそれが現場で役立っていると捉えていた。一方で家政系学部出身者ではハード的内容を学んだ人ほど役立ち感を抱いており、出身学部別の違いがみられた。(まとめ)高校家庭科での住居学習は、学校現場での位置づけに未だ課題がある。また大学での住教育経験と教員になってからの住居学習指導との関係性を明らかにし改善課題を探りたい。
  • その1:家庭科と住居学習の実態
    岡村 美穂, 宮崎 陽子, 岸本 幸臣
    セッションID: 2E5
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    目的本研究は、高校家庭科での住居学習についての教員の意識と授業実態を把握し、その特徴や改善課題を検証して家庭科での住居学習の必要性を考察することが目的である。
    方法大阪府と群馬県の全ての普通科高等学校(一部実業科)の家庭科教員を対象に、郵送方式でアンケート調査を実施した。調査時期は平成19年9月~10月で、有効回収票は大阪府75票、群馬県43票で、全体の有効回収率は37.0%である。
    結果(基本属性)回答者は40代を中心とした教員が多く平均教師歴は20年で、家政・生活科学系学部や食物・被服系専攻の出身者が多かった。住居系専攻は全体の3.4%であった。(勤務校特性)公立校が全体の4分の3で、教員の主観的判断からみた学校特性では、受験校と非受験校は半数ずつに分かれた。また学校で家庭科が軽視されていると感じている教員は4分の1存在し、受験校ほどその傾向が強くみられた。(家庭科の実態)2単位を中心とする「家庭基礎」の採用は約半数であるが、家庭科が軽視されている学校において「家庭基礎」の定着率が高い。(住居学習の実態)住居学習を教えていない教員は3割で、実施している場合の平均指導時間は約7時間であった。また、担当科目が家庭基礎であるほど指導率も指導時間も低下している。(住居学習についての意識)住居学習を「教えにくい」と思う教員は65%で多い。その理由としては、「自分自身の住居の知識不足」が約6割で最も多いが、「生徒の家庭環境に関わる」や「授業時間数が少ない」なども多くみられる。「教えにくさ」は教師の問題にとどまらず、住居学習の持つ内容特性や学習環境そのものなど複合的に生じていることがうかがえた。
  • ベース臭気の特性とその影響要因に関する検討
    毛利 志保, 棚村 壽三, 光田 恵, 小林 和幸, 濱中 香也子
    セッションID: 2E6
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年、高気密・高断熱の住宅が増加するとともに、間取りにおいてはLDK一体型のプランが主流になりつつある。そうした住宅で発生したにおいはLDK全体に拡散し、居住者の快適性を損なう可能性があるため、筆者らはLDK内に発生する臭気について検討してきた。研究を進める過程で実際に居住者のいる住宅での検討が必要と推察されたことから、本研究では実住宅のLDK空間における臭気の特性および調理によるその変動を把握することを目的とした。本報では、ベース臭気の特性とそれに影響を与える要因について検討する。LDKのにおいは、住宅の属性(築年数や空調設備、規模等)に影響を受けると推察されるが、特に近年では、居住者による消臭対策への意識が高まっていることから、その状況がにおいを規定する新たな要因となることが考えられる。
    【方法】戸建・集合の住宅形式、築年数、調理熱源を考慮して選定した実住宅40件を対象とし、それぞれ3期(夏期、中間期、冬期)にわたりLDK空間のベース臭気を採取した。
    採取した臭気については、被験者による三点比較臭袋法による臭気濃度の算出と感覚評価を実施した。居住者については、においへの感じ方や消臭対策についてアンケート調査を実施した。
    【結果】LDK空間のにおいの質に対する被験者の評価結果は多様であり、酸っぱいにおい、食品・生ごみ臭といった回答割合が高かった。一方、居住者は8割が無臭と回答しており、両者に大きなズレが見られた。
    臭気に与える影響要因については、換気設備やレンジフードの種類といった住宅設備のほか、居住者のにおいへの意識やにおいへの対策などが影響を与えていると思われる。
  • 調理行動による臭気レベルの変動
    棚村 壽三, 光田 恵, 毛利 志保, 小林 和幸, 濱中 香也子
    セッションID: 2E7
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    【目的】本報では、実住宅のLDKにおけるにおいに対する居住者および被験者の臭気感覚評価を実施し、戸建住宅と集合住宅の住宅形式、季節別、およびIHレンジ(以下、IH)とガスレンジ(以下、ガス)の調理熱源別の臭気特性について明らかにすることを目的とする。
    【方法】調査を行った住宅は、東海地区の住宅40件で、期間共に前報と同様である。居住者には、指定した材料と調理方法で調理を行い、調理前、調理直後、調理1時間後、調理3時間後のそれぞれのタイミングで、LDKの環境について評価させた。評価項目は、においの容認性、強さ、不快さ、温冷感である。居住者が調理を行い、環境評価を行うのと並行してLDKの中心付近で空気を採取させた。採取方法は、床上120cmの高さでハンディ型のポンプを使用して嗅覚測定用の採取バックに20リットル捕集することとした。空気を採取するタイミングは調理前、調理直後、調理1時間後の3回で、その試料を使い、大同工業大学内で嗅覚測定を行った。嗅覚測定は、三点比較式臭袋法による臭気濃度測定と原臭の評価を行った。居住者の評価と比較を行うため、においについては居住者と同様の評価項目を評価させた。
    【結果】調理によるLDKの臭気濃度の上昇率は戸建住宅より集合住宅の方が大きかった。このことにはLDKの体積が影響していることが示唆された。
    被験者は住宅形式や季節、調理熱源に関係なく、LDK内のにおいを強い、あるいは不快と感じる傾向にある。逆に居住者は調理直後以外のにおいを強い、あるいは不快と感じることは少なく、両者の評価に明確な違いがみられた。
  • 臭気の許容レベルの検討
    光田 恵, 棚村 壽三, 毛利 志保, 小林 和幸, 濱中 香也子
    セッションID: 2E8
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    【目的】前報までに実住宅のLDK空間におけるベース臭気とその影響要因、および調理による臭気の変動について報告した。本報では、LDK空間における臭気の許容レベルを明らかにすることを目的とする。LDK空間の臭気に関しては、ベース臭気と調理行動による臭気では質が大きく異なることが把握されており、それぞれに対する許容レベルも異なることが予想される。また、居住者と外来者を想定した嗅覚測定のパネルの評価も異なることから、立場の違いによって許容レベルが異なるものと考えられる。本報では、これらの点を踏まえ、LDK空間の臭気の許容レベルを検討する。
    【方法】測定に用いた臭気試料の採取方法は前報と同様である。本報では許容レベルを求めるため、試料(調理前、調理直後、調理1時間後)の臭気濃度測定を行い、原臭の臭気強度、快不快度、容認性、臭気質評価を実施した。また、調理直後の試料を用いて、臭気濃度100、30、10、3に調整した試料を作成し、それぞれの試料の非容認率(容認性の評価で「受け入れられない」と回答した人の割合)を求めた。臭気濃度と非容認率の関係については、ロジットモデルを適用して解析した。
    【結果】調理直後の試料を用いてパネルによる許容レベルを求めたところ、臭気濃度10であることが明らかとなった。居住者とパネルの評価を比較すると、パネルの許容レベルが臭気強度1.4であるのに対し、居住者では3.2であったことから、居住者はパネルに比べ、においが強くても許容できる実態が明らかとなった。LDK空間のベース臭気においては、居住者はほとんどが受け入れられるが、パネルは臭気のレベルに関係なく非容認率が70%以上で高い値を示した。
  • 板倉 朋世, 光田 恵
    セッションID: 2E9
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    目的 おむつ交換時に発生する排泄物臭が病室内で問題となっているが、本研究では、実際の病室内の臭気のレベルを把握し、その変動要因と臭気の特性を明らかにすることを目的とする。
    方法 病室の四隅ににおいセンサーを設置し、センサー値の変動と処置や人の動きの対応から臭気のレベルに影響する要因を把握した。病室の空気を採取し、嗅覚測定法による臭気感覚評価を行った。臭気の発生のない通常の病室とおむつ交換時病室、築32年病室の臭気を比較した。
    結果 おむつ交換時、食事注入時、体位変換時ににおいセンサー値が上昇し、病室内の臭気のレベルに影響する要因と推察できた。臭気感覚評価結果では、通常病室とおむつ交換時病室の臭気濃度は31と同等であり、築32年病室は230であった。通常病室の臭気強度は2.5、おむつ交換時病室は3.9、築32年病室は4.0であった。通常病室とおむつ交換時病室の臭気濃度は同等であるにも関わらず、おむつ交換時病室の臭気強度は高くなっており、これらの病室で臭気強度が上がりやすい刺激性の強い物質の存在が示唆された。非容認率はいずれの病室でも20%を越えており、日本建築学会の示す室内の臭気規準の許容レベルを超えていた。臭気質評価では、通常病室に比べておむつ交換時病室は「腐った卵の臭い」「し尿のような刺激臭」「酸っぱい臭い」の評価が1~2段階高くなり、刺激性に対する評価の上昇がみられた。GC分析の結果では、いずれの病室でも特に高濃度になる物質はなかった。全体的には硫化水素、メチルメルカプタン、アセトアルデヒドの閾希釈倍数値が20程度あり感覚量に影響を与えている物質と考えられた。場合によりトリメチルアミンも影響を与える物質となった。
  • 長谷 博子, 光田 恵
    セッションID: 2E10
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    目的
    におい感覚は空間の温湿度の変化により影響を受けることは知られている。室内には様々なにおいの発生源があり1)、におい感覚が温湿度の影響をどの程度受けるかは、におい物質によって異なる2,3)。そこで本研究では、室内の温熱環境がにおい感覚に与える影響を明らかにすることを目的とした。
    方法
    嗅覚テストの試験方法である5-2法により官能試験を行った。室内の温熱環境は、室温と相対湿度を28℃60%、25℃50%、22℃50%、22℃20%の4条件とした。被験者は若年者の男女各8名を対象とした。におい物質は嗅覚テストに使用される基準臭の中からスカトールとイソ吉草酸、β-フェニルエチルアルコールの3種類を選択し、嗅覚閾値、臭気強度、快・不快度を測定し温湿度条件とにおい感覚の関係について検討を行った。
    結果
    スカトールとβ-フェニルエチルアルコールは、嗅覚閾値、臭気強度、快・不快度に関して温湿度条件からの影響は少なく、イソ吉草酸のみ温湿度条件の影響を受けることが分かった。性別とにおい質については、男性被験者はβ-フェニルエチルアルコールを不快と申告し、女性被験者は快と申告していた。イソ吉草酸に関して女性被験者の方が同じ物質濃度における臭気強度が高く、男性よりも敏感であることが明らかとなった。
    文献
    1)光田 恵;室内における臭気発生源と対策,空気清浄41巻2号p135-140(2003)
    2)岡田誠之; におい環境と脱臭・防臭,建築設備と配管工事p14-19(2000)
    3)羽根久史、辻幸志、光田恵、渡邊慎一、山中俊夫、竹村明久; 室内における熱とにおいの複合効果に関する研究,第26回人間―生活環境系シンポジウム報告集p13-16(2002)
  • 東 実千代, 久保 博子, 磯田 憲生
    セッションID: 2E11
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    【目的】真菌は主要なアレルゲンとして指摘されているが、一般の住環境における対策は未整備であるといえる。真菌濃度には温湿度環境や住宅構造、建築材料、住まい方などが複合的に影響すると考えられ、詳細な実態調査データの蓄積が必要である。本研究では浮遊真菌と住宅の床・壁表面の付着菌濃度の季節変動と温湿度と住まい方との関係を中心に報告する。【対象】奈良市内の住宅(木造2階建・地下RC造)の地下室と1階居間とした。【方法】空中浮遊菌はRCSエアサンプラーにより床上120cm付近の室内空気を1分間で40L採取した(培地:アガーストリップ真菌用)。付着菌はクリーンスタンプ25を使用し、地下室の床面と壁面(床上20cm・120cm)で採取した(培地:CP加サブロー寒天)。採取後は培地を25℃に設定した恒温器(PR-2KTW)で72時間培養し、コロニー数をカウントした。温湿度はサーモレコーダー(RS-12,RT-12)により10分間隔で連続測定した。温度は床温度,床上10cm,60cm,110cm、湿度は床上60cmで測定した。真菌測定時は壁表面温度(床上20cm・120cm)も測定した。測定時期は2007年8月,9月,11月,2008年1月である。【結果】夏期の地下室の温度は25℃でほぼ一定、平均湿度は80%を超えていた。この時の地下室の空中浮遊菌濃度は約5000CFU/m3、同北側納戸付近は約12000CFU/m3で、除湿すると約1/3に減少した。空中浮遊菌濃度と壁面付着菌(床上120cm)は湿度と相関があり夏期が冬期より高かった。床上20cmの付着菌は季節差が顕著にみられず、湿度分布と生活用品設置による空気の滞留の影響と推察された。
  • 石田 享子, 原 直也, 後藤 浩一, 崎山 昌治
    セッションID: 2E12
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    【目的】本研究の目的は、被験者への室内照明環境に関する提示情報量の違いが、室のイメージ把握に与える影響を明らかにすることである。
    【方法】実在する16畳の寝室兼書斎(以下評価空間)で夜間に室内でくつろぐ場合に対して被験者に室内照明環境に関する情報を4段階で提示し、各段階で光環境を評価する主観評価実験である。情報量は、1:平面図評価(平面図、断面図、照明器具と内装の仕様情報から評価)→2:平面図+写真評価(1の情報に加え、評価空間の照明点灯写真の情報から評価)→実在の評価空間に移動し3:消灯時評価(照明を消灯した昼光のみの状態で評価)→4:点灯時評価(昼光を遮光し照明を点灯した室の状態で評価)とした。評価項目は室内の明るさ、室内の明るさのバランス、まぶしさなど、室内照明のパターンは3種類(シーリング、コーブ照明、シーリング+ダウンライト)であり、被験者は9名である。
    【結果】最終評価となる点灯時評価に対する、各情報量段階での評価の類似度を印象の伝達の程度の視標として考察する。平面図に写真の情報を加えた段階で、コーブ照明は点灯時評価から僅かに離れた評価になり、他の照明は近付く傾向にある。シーリングはコーブ照明の条件より少ない情報量で点灯時評価に近い評価となる。シーリングが住宅照明として一般的であり点灯状況のイメージが容易であるためと考えられる。照明に関する予備知識のない被験者は、情報量が増えるに伴い段階的に点灯時評価での評価に近付くように変化することが多い。(本研究は関西大学学術研究高度化推進事業の一部として実施している。また、健康住宅協会の協力を得たことをここに記して深く感謝する。)
  • 田中 辰明, 柚本 玲
    セッションID: 2E13
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    目的原油価格の高騰により薪を燃料とする鉄製や陶製の暖炉が興味をもたれている。ここではドイツを中心に発達した陶製暖炉カッヘルオーフェンについて調査研究を行った。方法ドイツの暖房博物館、城、住宅、暖房等の国際見本市での実地調査、専門家への聞き取り調査及び文献調査を実施した。結果ドイツの建物は外壁が厚く建物の熱容量が大きかったので、熱容量の大きいカッヘルオーフェンのような暖房方法が好まれ、後世の温水暖房へと発展していった。その歴史は紀元前約2500年青銅器時代に南ドイツなどにいたインドゲルマン民族が使用していた暖炉に遡る。その後、石と粘土製の半円球の暖炉が作られ、蓄熱の役割を果たした。10世紀頃には下半分が矩形で、その上部に半球形の上質粘土製の放熱面が乗る形の炉ができ、排煙の煙道も付けられるようになり、今日のカッヘルオーフェンの原型が出来た。筆者らは陶製暖炉のデザインを建築方式にあわせて分類し、調査により有名建築家がデザインした暖炉も確認した。最近、優れたデザイン、環境への配慮からカッヘルオーフェンが見直され、一般住宅などで使用されている。ドイツでは木を使用することは環境に優しい行為とされており、薪を燃料として使用し、伐採を行った森林に植樹をしようという運動がある。樹木は成長の段階で二酸化炭素を吸収し、炭素として固定するためである。2007/3開催の国際見本市では薪とともに多くのカッヘルオーフェンが展示され、環境問題を訴えていた。環境派の人々は「自分は化石燃料でなく薪を使用している」とし、外に薪を積む住宅も見られた。この暖炉は本来放射を主としたが、温風の吹き出す形式も使用されている。
  • 塩谷 奈緒子, 五十嵐 由利子
    セッションID: 2E14
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】高断熱高気密住宅の普及、また、生活者の清潔志向の高まりにより、住宅の居住性能は改善されてきている。一方、日常生活に伴い様々な臭気の発生があり、消臭剤等の利用も多いように見受けられる。そこで本研究では、住宅の臭気環境に着目し、生活者の臭気についての意識、及び改善のための生活行動の実態を把握することを目的とする。
    【方法】生活者が日常生活の中で感じている様々な臭いに対する意識を把握するために、居間を中心に気になる臭いとその程度、さらにそこから生活者の行動・対策について、一般住宅を対象にアンケート調査を実施した。調査期間は2007年12月~2008年2月で、アンケートの回収数は299件(回収率70.5%)であった。
    【結果】7割以上の人が居間で感じる臭いについて気にしており、特に気になる臭いとして「調理後の臭い」「タバコの臭い」「ゴミの臭い」があげられた。また、「ゴミの臭い」については不快だと4割の人が感じていた。対策として、「頻繁に掃除をする」と回答した人が9割、「気になる時には換気をする」という人が7割を超えており、大部分の人が臭気環境改善のための対策を行っていた。また、市販の消臭剤を使用している人も半数近くおり、近年の清潔志向が示唆された。
  • ―調理中・後のLDK内での換気を中心として―
    萬羽 郁子, 五十嵐 由利子
    セッションID: 2E15
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】省エネルギー基準の制定に伴い建築物の断熱・気密性能が向上しているが、計画的に換気を行わなかった場合には室内で発生した空気汚染物質がこもりやすい状況となるため、高断熱・高気密住宅における換気不足が懸念されている。また、近年増加しているオープンタイプの一体型リビングダイニングキッチン(以下、LDK)では、調理臭が拡散してLDの快適性にまで影響を及ぼすことが考えられる。そこで、新潟県における住宅の換気計画およびLDK内での居住者の換気に係る行動について調査を行うこととした。
    【方法】新潟県内を対象に、直接配票直接回収方式(一部、回収のみ郵送方式)でアンケート調査を行った。2008年1月に行い、有効回収票は55票(2008年2月現在)である。
    【結果】戸建住宅のうち、約8割は省エネ基準が制定された1980年以降に建てられており、それ以前の住宅と比べて「すきま風を感じにくく」、「暖房を消した後にも温かさは維持される」など断熱・気密性能は向上していた。また、LDK内の換気口やLD内の換気扇を設置する住戸が増加していた。換気口について、約7割の居住者が言葉を元々知っていたと回答したが、給気の認知度は低く換気口を閉めているか不明の住戸が多かったことから、設置目的等を理解している居住者は少ないと考えられた。調理中~直後にはほとんどの住戸でレンジ上部の換気扇を稼動していたが、排出しきれなかった残臭等を対象に換気を行っている住戸は半数以下であった。
  • 今村 律子, 中岡 由季, 矢野 勝
    セッションID: 2G1
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
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    目的競泳水着は、年々素材やカッティングの改良設計がなされ、競技能力(運動機能性)向上が図られている。競泳水着の機能性に関しては、布の物理特性やヒトの着用感、生理特性などの測定からこれまでにも多くの研究が認められる。しかし、競泳選手を対象として、競泳水着の機能性に関する意識を研究したものは見あたらないようである。そこで本研究では、大学競泳選手を対象に、競泳水着の使用実態と機能性に関する意識を調査することにした。方法関西の国公私立大学水泳部に所属する男女競泳選手を対象に、2005年11~12月にアンケート調査を実施した。有効回収数は492票(女子167名、男子325名)であった。調査内容は、対象者の性別、競技歴、専門種目及び専門距離、競技成績と使用水着の種類、価格、形及び機能性についての意識とした。水着の機能性は、運動機能性、快適性、耐久性にかかわる22の質問項目について「とても重視する」から「重視しない」までの5段階評定尺度で回答を求め因子分析をした。結果試合時における女子の使用水着型は、ハイレグ型が85%を占めていたが、スパッツ(S)型、ロングスパッツ(LS)型もそれぞれ8%、7%見られた。男子では、S型が74%、LS型が18%であった。競技レベル別に見ると、男女ともに上位群ほどLS型の使用率が高く、競技レベルが高いほど、水着による被覆面積が多いことがわかった。機能性に関する意識を因子分析した結果、スピード感、動作、素材、外観、耐久性の5因子が抽出された。競技レベル上位群は、スピード感、動作の因子を、下位群は素材、耐久性の因子を重視していることがわかった。
  • 井上  尚子, 冨田  明美, 高橋  勝六
    セッションID: 2G2
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    目的衣服を通しての移動には衣服間空隙、布および外気層における移動抵抗が考えられるが、水分移動が熱移動と最も異なる布について水分移動特性を検討する。
    方法布の両側に厚さ1ミリの流路を設け、一方には高湿度の空気を、他方には低湿度の空気を同じ流速で流し、入口出口の湿度差と流量から布を通しての水分移動量を求め、両流路の湿度差を使って総括物質移動係数を算出する。布1枚と2枚の実験を行い、2枚の総括物質移動抵抗(総括物質移動抵抗の逆数)から1枚の総括物質移動抵抗を差し引けば、流路の移動抵抗を除いて布1枚だけの移動抵抗が得られる。
    結果綿織物では湿度が高くなると繊維中でも水分移動が起こり、全体としての透湿性は高くなると考えられているが、今回の実験ではそのような傾向は見られなかった。布中の空気相を水分が拡散移動するとき、拡散経路が真直ぐであれば布中の空気の体積分率と布厚さから物質移動係数は計算できる。しかし、実際には拡散経路は曲がって長くなったり、移動しにくいネックがあったりするので移動速度は低下する。速度低下を拡散経路の増長として屈曲係数として表す。測定は綿、麻、毛、絹、ポリエステル、ナイロンの布について行ったが、布の種類より布中の繊維体積分率の影響が大きく、屈曲係数は1.3から3程度が多いが、体積分率によっては非常に大きい値になるものもあった。
  • 田中 由佳理, 鋤柄 佐千子
    セッションID: 2G3
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    目的 化粧品、医薬品、衛生用品、塗料品など幅広い分野でエアゾールスプレー状の商品がある。ここでは、スプレーによって噴霧を与えた時、人体の感覚に与える影響を検討し、冷たさの感覚における「心地よい冷たさ」と「不快な冷たさ」の閾値を見出すことを目的とする。
    方法噴霧を発生させるために噴霧器を使用し、中身は、噴射剤と原液(水・エタノール)とした。噴射剤の割合は、2種のシリーズ(A:噴射剤50% B:噴射剤75%)を準備し、それぞれのシリーズにおいて、原液の配合率を変えたものを4種計8種類用いた。
    1. 環境温度+10℃に設定した熱板(5×5cm)に濾紙を貼り付け、そこに向けて3秒間噴射し、濾紙表面の温度と熱損失量を測定した。
    2. (1) 被験者の冷温感の閾値を調べるため、サーモラボの熱板を上腕の内側に当て、冷温感を10段階スケールで質問した。この時、熱板の温度は1℃ずつ上昇させた。(2) 試料をシリーズごとに分け、試料間の「冷たさ」と「心地よさ」を被験者に質問した。手法は一対比較法を用いて官能評価を行った。噴霧時間は1.と同様の3秒間とした。
    結果噴霧直後の濾紙表面温度の低下が最も大きくなるのは、水とエタノールの割合が一対一の配合の試料であった。又、水を含まない(原液がエタノールのみ)試料の表面温度の低下は他よりも小さいが、噴霧後の温度上昇は急激であり、冷たさの持続には水の影響が大きいことが分かった。
    熱板からの熱損失量に関しては、水を多く含むスプレー剤ほど少なく、これは、先の表面温度の変化と一致した。
  • 水野 一枝, 水野 康, 山本 光璋, 白川 修一郎
    セッションID: 2G4
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】季節が睡眠に及ぼす影響については多くの報告があるが、幼児と母親に着目したものは少ない。そこで、本研究では、アクチグラフを用いて、季節差が幼児と母親の睡眠に及ぼす影響を検討することを目的とした。
    【方法】被験者は、心身ともに健康な幼児(3~4歳,男女児各5名)と母親10組であった。夏(7月下旬~8月)、秋(9~10月)、冬(1~3月)に測定した。測定項目は寝室内温湿度、アクチグラフ(連続活動量)、主観的睡眠感、温冷感、快適感とした。被験者の自宅でアクチグラフ、寝室内温湿度を7日間連続測定した。7日間の間に2晩、就寝前、起床時の主観的睡眠感、温冷感、快適感を申告してもらった。
    【結果】夜間の寝室の温度は有意な季節差が見られ、夏(27.1±0.6℃)で最も高く、秋(23.0±2.1℃)、冬(15.4±2.3℃)の順に低かった。湿度に季節差は見られなかった。寝具の枚数は、母親、幼児ともに掛け寝具の枚数が夏で秋と冬よりも有意に減少した。アクチグラフによる睡眠変数には、母親では季節による差は見られなかった。幼児では、睡眠中の活動量に有意な季節差が見られ、夏、秋、冬の順に多かった。母親の主観的な睡眠感に差は見られなかったが、母親からみた幼児の睡眠では、有意に夏で睡眠が悪い評価であった。
    【結語】季節差は、母親のアクチグラフにおける睡眠変数に影響は見られないが、幼児では睡眠中の活動量で示される体動に影響することが示唆された。
    *本研究は平成19年度文部科学省科学研究費の補助を受けて実施された。
  • 道正 真由利, 石原 世里奈, 芳住 邦雄
    セッションID: 2G5
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    [目的]快適な日常生活を確保するには、充分な睡眠が必要とされる。その際には寝具、特に、敷布団の影響は小さくないと見込まれる。こうした寝具の快適性の評価を主観申告のみならず、客観的物理現象として把握することは、寝具設計および選択における大いなる助けとなる。本研究では就寝時の体動に着目して、快適な睡眠を得ることに対する敷布団の影響を検討した。
    [実験]試験対象の寝具は、柔らかめのポリウレタン詰め敷布団である。コントロールは、被験者が従前より4年間全継続使用している硬く、かつ、薄めのポリエステル詰め敷布団である。被験者は、20~23歳の女子学生15名である。後述の被験者Aは23歳の女子学生である。就寝時の体動の測定には、A.M.I.社製アクティグラフを用い、活動指数と睡眠効率を求めた。
    [実験結果および考察]被験者15名による各自の寝室における一夜間平均の体動の特性は、アクティグラフの活動指数では15~45程度に分布しており、平均値は、27.2であった。被験者Aが従前使用のポリエステル詰めの敷布団での活動指数の平均値は、27.9であり、柔らかめの敷布団を使用した時には19.7であった。体動指数からは、明らかに、従前の敷布団使用時よりも体動は減少することが認められた。また、被験者15名との比較においても柔らかめの敷布団での体動は少なめであり、安寧な睡眠が得られたと言える。一方、睡眠効率においても柔らかめのポリウレタン詰め敷布団とコントロールの敷き布団使用時には同様に有意な差があるとの結果が得られた。以上から、自らにフィットした敷布団を用いることにより快適な睡眠が得られることが物理的測定において認められたと結論される。
  • 小野 泰代, 田村 照子
    セッションID: 2G6
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    目的 ストレッチ性衣服の適合性・適応性の評価には、衣服圧の測定が不可欠である。しかし、生体上とハードマネキンモデル上における測定値の乖離が衣服圧研究上の課題であり、生体と同程度の硬さをもつソフトマネキン開発の必要性が指摘されている。本研究は下半身を中心とするソフトマネキン開発を視野に入れた基礎研究として、生体における皮下脂肪の分布及びこれに対応する皮膚及び皮下組織の圧縮特性を測定し、両者の関係を検討した。
    方法 1)アロカ株式会社製の汎用超音波画像診断装置を用いて、皮膚及び皮下脂肪の厚さを測定した。測定点は下半身41点、被験者は平均年齢18.9歳の健康な女性20名である。2)カトーテック株式会社製のKES-G5ハンディ圧縮試験機を用いて、圧縮速度・上限荷重・再現性・呼吸、姿勢の保持などに関する予備実験を実施した。3)ハンディ圧縮試験機を用いて、皮下脂肪と同一の被験者・部位の圧縮特性を測定した。
    結果 1)皮下脂肪分布は、臀部近傍で最も厚く、腹部前面では被験者によってばらつきが大きくなった。下肢部は、末梢にむけて減少傾向にあった。2)圧縮条件は上限荷重を150gf/cm2とし、下肢部の圧縮速度は0.1cm/sec、体幹部は0.5cm/secに設定した。3)圧縮特性は、150gf/cm2荷重時の押し込み量を生体皮膚の軟らかさの指標とした。押し込み量が最も大きい部位は体幹部で臀部、次いで胴部側面、胴部前面の順であった。下肢部は、臀溝位内側であり、末梢部にむけて減少傾向にあった。4)押し込み量と皮下脂肪厚との間には有意な相関が得られた。押し込み量から推測する皮膚の軟らかさには、皮下脂肪の厚さが関係していることが明らかになった。
  • 冨田 明美, 中山 晃
    セッションID: 2G7
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 本研究は、これまで見落とされてきた着用過程で起きるパンツのサイズ変化がもたらす身体拘束圧低減効果について、着用時間をパラメータとして検討することを目的とした。
    【方法】 実験試料は、本学学生の62%が着用しているウエストサイズ61~63cmの市販パンツである。被験者は、61~63cmのパンツを日常着用している21~22歳の女子学生4名とした。パンツの変形量は、未着用のパンツを解体してパーツ毎に幅と面積を測定し、これを基準として着用直後、8時間・ 40時間・160時間着用後の変形量を算出した。身体拘束圧は、エアパック式衣服圧測定器を用いて腹部・腰部・大腿部の22部位について、立位静止→立位から椅座移行→椅座静止→椅座から立位移行→立位静止に至る一連の動作を設定して測定した。身体拘束感については、圧測定部位に対応した部位について、被験者の申告により評価した。
    【結果・考察】 パンツがもたらす身体拘束圧について、腰囲位と前正中線の交点を例に、パンツ着用時間と圧の関係をみると、着用時間が長くなる程拘束圧が減少する傾向が認められた。立位静止時の場合、160時間着用したパンツの拘束圧は、着用直後の約50%、椅座静止時の場合、約75%に低減することがわかった。また、大腿中間位と右肩甲線の交点では、立位静止時の場合、着用時間に関わらず0.2kpa以下の微圧であるが、椅座静止時の場合、着用直後に5.5kpaであった拘束圧が、160時間着用した後には約67%にまで減少することがわかった。拘束感についても、着用時間が長くなれば「きつい」は「ややきつい」へ評価が移行し、特に8時間から40時間で拘束感の緩和が大きいことが確認された。
  • ―衣服重量を要因として―
    下坂 知加, 石垣 理子, 猪又 美栄子
    セッションID: 2G8
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    目的 若年者と高齢者の動作適応性評価に、上半身用衣服の重量が与える影響について、官能評価、衣服圧、筋電図の3手法を用いて検討した。
    方法 実験服は重量の異なる2種類のジャケット(A:ツィード 平均364g、B:メルトン 平均529g)とした。実験服A、Bは各着用者の身体計測値を基に、同一パターンで作製した。着用者は18~21歳の健康な若年女子10名と67~78歳の健康な高齢女子9名の計19名である。実験動作はジャケットの着衣動作と脱衣動作、右上肢5動作とし、立位にて2回ずつ行った。官能評価はジャケット着脱時と動作時の動きやすさについて5段階で行い、衣服圧は頸側部、肩先部、その中間の3箇所を測定した。筋電図は上腕三角筋の前部、中部、後部の3箇所を測定し、同時に右肩関節角度の測定、正面と側面からのビデオカメラによる記録撮影も行った。
    結果 (1)今回の実験範囲では、官能評価の分散分析の結果、若年者では衣服重量が有意となり、動きやすさの感覚に衣服重量が影響を与えていたが、高齢者では衣服重量が有意とならなかった。(2)若年者では肩先部、高齢者では頸側部において各自の最大衣服圧を示す着用者が多かった。最大衣服圧を示す部位が、肩先部の着用者と頸側部の着用者では、肩傾斜角度に有意な差が認められ、それぞれの平均肩傾斜角度は前者が17.8度、後者が24.2度であった。(3)実験服AのmEMGで実験服BのmEMGを除した規格化mEMGでは、90度前挙、90度側挙の場合に、上腕三角筋の前部と後部に年齢による有意な差が認められた。即ち、衣服重量の増加によって大きくなる筋負担の程度は、高齢者の方が有意に大きかった。
  • 中井 梨恵, 渡邊 敬子, 矢井田 修
    セッションID: 2G9
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    目的:本研究は肩関節の可動域との関連から,高齢女性の前あき上衣の着衣動作が困難となるメカニズムを明らかにし,さらにこれを解消するために必要なゆとりの位置と量を明らかにすることを目的とした.
    方法:67~97歳までの高齢女性46名の肩関節の自動可動域と構造の異なる3種類の上衣の着衣の所要時間,上肢の位置関係との関連について検討した.さらに,必要最低限度のゆとりの量と位置を明らかにするため,高齢女性を模して,肘屈曲時の水平伸展運動の可動域を平均-9度,外転運動の可動域を平均110度に制限した若年女性12名を対象として,上衣の背面の2か所のプリーツの位置と幅を変化させて着衣の所要時間を比較した.
    結果:外転運動の可動域が120度以下の被験者は,146度以上の被験者に比べて‘後から通す方の袖ぐりを探る時間’が有意に長いことが明らかとなった.肩峰点,肘点,手首点の位置関係を検討した結果,高齢女性は後から通す方の袖ぐりに手首を入れる際,肘を屈曲して手首を肩より後ろへ引く動作(肘屈曲時の水平伸展運動)が困難であるため,背面のゆとりが少ない場合,肘を外転させて手首を頸の後ろの方へ移動させていた.外転運動の可動域が小さい被験者はこの動作が困難なため,所要時間が長くなると言えた.高齢女性のように肘屈曲時の水平伸展運動と外転運動の可動域が小さい場合,袖ぐりの底の高さを含んでそれより上部に12~18cmのゆとりを入れると着衣しやすいと言えた.これに対して,外転運動の可動域のみが小さい場合には袖ぐりが広い構造や後ろ身頃に6cmのゆとりがあれば着衣しやすいことから、身体機能に応じた着衣のためのゆとりの設計が必要であると言えた.
  • 平林 優子, 布施谷 節子, 大村 知子, 駒城 素子
    セッションID: 2G10
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    目的 障害者は着脱や着装状態に不満を感じながらも健常者用の既製服を着用している現実がある.そこで,まず,障害者の着脱動作の実態を調査し,健常者との相違について検討する.さらに,事例研究から着脱手順の違いについて言及し,障害に合った,より少ない負担でできる着脱手順の提案をすることを目的とした.
    方法 (1)市川市内の障害者就労施設5箇所に通所している25名を対象とし,適正サイズの前あきシャツを着脱する場合の,各被験者が日常的に行っている手順について観察をし,先行研究1)で明らかとなっている健常者の着脱手順との比較をした.
    (2)身体障害者2名(高次脳機能障害による左半身麻痺の50代男性・脊髄損傷による四肢麻痺の40代女性)を対象とし,健常者と今回の観察で明らかとなった全て着脱手順を行ってもらった.その様相を4台のデジタルビデオカメラで捉え,3次元動作分析ソフトを用いて上肢の動きを数値化して解析し,各手順の特性を軌跡から明らかにした.
    結果 観察により,「先に両腕を袖に通してから被る」着衣手順といった,健常者ではみられない障害者特有の着脱手順があることが明らかとなった.また,同一被験者での全ての着脱手順の比較により,自身が日常的に行っている着脱手順よりもシンプルでスムーズに着脱できる手順があることがわかり,障害に合わせて着脱手順を選ぶことで効率的になり,かつ負担を軽減する可能性が示唆された.
    [文献] 1)大村知子・平林優子:前あきシャツのバリアフリー設計のための着脱動作に関する研究,静岡大学教育学部研究報告(自然科学篇),56, 25-40(2006)
  • 衣服と靴の選択ならびに着脱の支援を中心に
    布施谷  節子, 平林  優子, 岸田  宏司
    セッションID: 2G11
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    目的障害者にとって、生活習慣の一つである衣服の着脱は大きな問題である。特に知的障害の児童生徒にとって、着脱の自立は、家族・学校の教師・介助スタッフなどのたゆまぬ指導と支援が必要となる。そこで、本研究では、知的障害児の保護者の家庭での取り組みを明らかにすると共に、子どもと実際に接する中で有効な働きかけを見出そうとしたものである。
    方法NPO法人Pが運営するI市の知的障害児のデイサービス施設に通所する4歳から18歳までの子ども102人の保護者を対象に着脱に関する記名式アンケート調査を行い、72名の回答を得た。これを資料に解析を行った。調査時期は2007年9,10月である。また、同施設に7月から12月までボランティアを兼ねて子どもと接する中で、数例の子どもを経過観察すると同時に、繰り返し着脱への働きかけを行いその有効性を検討した。
    結果(1)丸首シャツを着ることができるかどうか、シャツの前後の区別ができるかどうかに着目して、家庭での衣服への工夫の仕方との関わりを見ると、有意差が認められ、家庭での工夫の影響が大きいことがわかった。靴下をはくことについても同様の結果が得られた。前面か背面のいずれかに柄があるものや独自に目印を付けたり、正しい向きに手渡すなどの工夫が見られた。(2)靴の左右を間違えずにはける子どもと、はけない子どもに分けて、家庭での取り組みの違いを見ると、左右・前後に印を付ける点に違いが見られ、自立以前の子どもでは声掛けに留まっている例が多かった。(3)目印を使用した事例研究では、丸首シャツ・靴ともに、数ヶ月の働きかけでは自立の定着に至るような目立った効果は得られず、息の長い働きかけが必要なことがわかった。
  • 千葉 桂子, 長谷川 加奈子
    セッションID: 2G12
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    目的 今日,日本の女子スポーツ選手の実力が国際的にも高く評価されるようになってきている。なかでも陸上競技については注目度が高まっている。女子選手にとって運動時の乳房のサポートは,心身の安全性・快適性という観点からも重要であり,メーカーもブラジャーの運動機能性向上のために多様な製品展開を行っている。本研究ではその陸上競技に着目し,大学生および高校生選手のブラジャーの着用実態の把握を行う。それにより競技生活への支援のための基礎的情報を得ることを目的とする。
    方法 ブラジャーの着用実態について,留置・郵送法による質問紙調査を行った。調査概要は以下の通りである。調査期間:2007年11~12月,調査対象:福島県内大学・高校の陸上競技部に所属する女子部員,回収率:77.0%(配布数287部,回収数221部),主な質問内容:回答者の属性(専門種目,競技歴,練習の状況等含む),日常時・練習時・競技時に着用するブラジャーについて,問題点の有無,購入時に重視することなど。得られた回答結果に基づいて単純集計およびクロス集計等により分析を行った。
    結果 練習の実施日数については,平均すると高校生が週6日,大学生が週5日であり,練習時間は全体の平均で2.5時間であった。練習時において着用するブラジャーについては「いつも一般的なタイプ(ホックあり,1/2・3/4・フルカップ)」(78.7%)が多く,「時々スポーツブラジャー」は13.1%,「いつもスポーツブラジャー」は6.9%とかなり少なかった。また全体の68.3%が一般的なタイプでも「特に問題を感じていない」と回答していたが,「問題を感じる」と回答した者では肩ひもに関する指摘が最も多かった。
  • 岡部 和代, 出口 明子, 杉本 次代, 知念 葉子
    セッションID: 2G13
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    〈B〉目的〈/B〉 ブラジャーと人体との関係の解明は,若年女子については進んでいるが,中年女子については遅れている.しかし,ブラジャーの整容性や動きやすさといった機能を必要とするのは,乳房形状が整った若年女子よりも乳房形状が崩れた中年女子であろう.そこで,本研究では年代の異なる被験者の,上肢挙動に伴うカップ内の乳房の動きやブラジャーフレームのズレを明らかにして,年代に応じたブラジャー設計の指針を得ることを目的とした.〈BR〉〈B〉方法〈/B〉 被験者は22歳,25歳,36歳,45歳,56歳の成人女子5名とした.試料はフルカップブラジャーでカップ部が半透明のものである.乳房上の測定点に発光ダイオードをつけ,上肢挙動に伴う測定点の動きを運動画像解析システムで取り込んだ.フレームのズレは,皮膚上に印したブラジャーの輪郭線とフレーム上下辺が離れる距離を,取り込んだ画像上で測定して求めた.〈BR〉〈B〉結果〈/B〉 上肢挙動による乳房の動きは水平方向より垂直方向に大きいが,それは硬く乳房の形の整った若年女子より,柔らかく乳房が下垂した中年女子に大きかった.ブラジャー着用時には,乳房の動きが全体に均一化する傾向が認められ,年代間の差が縮まった.ブラジャーフレームのズレ量は,カップ上辺の正中側が少なく,腋窩に近い脇上辺や下辺の正中線近傍が多くなった.また,若年女子は前面が,中年女子は背面がズレ易い傾向にあった.ブラジャーと人体の関係は年代や部位によって異なることから,年代別の生体特性を考慮した設計が求められる.
  • 渡邊 敬子
    セッションID: 2G14
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    〈B〉目的〈/ B〉幼児ではズボンのずれを防ぐためのウエストゴムによる腹部の圧迫等が問題となっているが、衣服設計のための幼児の寸法や形態に関するデータは少ない。本研究では幼児の身体寸法や成長量、および立体形状についてデータを得て、幼児の体つきに適合し、圧迫やズボンのずれなどの問題を解消するズボンの設計を目的とした。〈BR〉〈B〉方法〈/B〉京都市内の保育園でズボンの着用状態の観察調査を行った。平成18年5月~19年8月に京都市内と愛知県の保育園・幼稚園に通う幼児計189名を対象に身体計測を行った。計測方法は巻尺による12項目とデジタルカメラによる写真計測である。一方、非接触3次元計測デジタイザ6台を使用し、62名の3次元計測を行い年齢毎の平均形状モデルを算出した。さらに、幼児2名の3次元計測データをLookStailorXにボディとして取り込み、仮想空間内で立体裁断と型紙作成を行い、デニムの製作を試みた。〈BR〉〈B〉結果〈/B〉幼児の身体計測値を比較すると、高径項目は年齢間の差が有意で、股下の高さの変化が相対的に大きかった。しかし、股上(後胴高―股下高)と臍囲などの周径は年齢間の差が小さかった。個人の年間増加量からも同様の傾向がみられた。一方、JISの100cmサイズに相当する被験者の腰囲は最大で約14cmの差がみられた。したがって、身長だけでは下衣のサイズ表示として不十分ではないかと考えられた。さらに、3次元計測の結果、下半身の平均形状は既存の幼児用ボディよりも腹部や臀部の突出が大きいことが明らかとなった。幼児の着衣の観察なども踏まえて、3次元CADでパターン作成したデニムは腹部の圧迫がなく活動時にも安定していた。
  • 松本 朋子, 高橋 佐智子, 高部 啓子
    セッションID: 2G15
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    目的 日本では65歳以上の人の全人口に占める割合は、本年3月には21%を超えるという。ここ数年で団塊世代が高齢者の仲間に入ってくると高齢化率はさらに急速に増加し、元気でおしゃれな高齢者が増え、既製服に対するニーズも広がってくると考えられる。一方、現在の既製服生産では購買力が高いという理由から若年または中年を対象とする製品を生産の中心にすえる傾向が強い。また、同じサイズ表示でも対象となる身体形状は若年と高齢者では非常に異なっている。しかし高齢者体型の裁断用ボディの開発は十分に行われていない。そこで本研究ではまず、高齢女性を対象に変化の大きい腰腹部の立体形状について特徴を検討した。将来的には高齢者体型の裁断用ボディの開発につなげたい。
    方法 2007年12月~2008年2月に、65歳以上の高齢女性ボランティア41名の直接計測11項目および三次元計測を行った。三次元計測にはコニカミノルタ製VIVID910を2台と回転台を使用し、4回計測、8枚の画像を貼り合わせ、全周画像を作成した。この画像上で3D-Rugleを用いて、断面計測を行い、立体形状の観察や横断面重合図の形状、直接計測値の分析等から高齢女性の腰腹部の特徴を検討した。
    結果 (1)高齢女性の腰腹部は、立体形状の観察からは腹部前面の大きな丸み、側部上方での張り出し、後面大殿筋の衰えによる腰部の扁平化が顕著であった。(2)腰腹部の横断面重合図からは、後面より前腹部の急速なふくらみが大きく、ウエスト部から腹部最突部までの矢状径は1~2.5cmもありパターン設計上工夫が必要である。(3)腹部最突部の位置はウエストラインから10cm前後下あたりが多い。
  • 鈴木 佐代, 石渡 瑞枝, 沖田 富美子
    セッションID: 2H1
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    〈目的〉今日、分譲後の年数が経過した郊外戸建住宅地を、良質な住宅ストックとして維持・活用していくことが求められており、そのためには持続的な新規転入を促すことが必要と考える。そこで本研究では、既存戸建住宅地に新規転入を促すための条件を検討するために、新規転入世帯、とくに中古住宅購入世帯の動向を把握する。本稿では、横須賀市の郊外戸建住宅地を事例として、中古住宅購入世帯の特徴とその住宅更新の実態を分析した報告をする。
    〈方法〉1970年代前半に分譲開始された横須賀市の馬堀海岸団地を対象にアンケート調査を実施した(2005年9月)。当団地は、戸建住宅(建売分譲が中心)、テラスハウス、集合住宅からなるが、本稿では、戸建住宅に居住する481世帯を分析対象とする(有効回答率44.7%)。
    〈結果〉1)対象住宅地では、分譲後約40年が経過し、中古住宅購入世帯が約2割を占めるようになっている。中古住宅購入世帯は、横須賀市内の同じ鉄道沿線(約半数)や団地内(約1割)など近隣地域からの転入者が多い。また1980年代に比較的新しい中古住宅を購入した世帯が多いため、現在、その世帯年齢は高くなっている。2)中古住宅の規模は、宅地面積は建売住宅と同程度であるが、延べ床面積はやや小さく100m2未満が約2割を占める。また中古住宅は、建売住宅よりも建替えまたは設備更新の実施率が高く、増改築はあまり行われていない。3)近年、中古住宅購入世帯は減少傾向にあるが、これは新規転入が、中古住宅購入よりも、追加分譲宅地や更地にされた宅地の購入の方に移行しているためと考えられる。 *本研究の調査にあたり、日本女子大学卒論生田中淑子さんの協力を得た。
  • 神奈川県の郊外住宅団地居住者の場合
    石渡 瑞枝, 鈴木 佐代, 沖田 富美子
    セッションID: 2H2
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    〈B〉目的〈/B〉近年、必ずしも持家にこだわらない層や戸建住宅へのステップであったマンションを高齢期の住まいとして考える層が徐々に増加し、住宅需要が多様化しつつある。それにともない人々の住居選択に対する価値観も今後変化し、選択行動はさらに多様化すると予測される。そこで本研究は、従来住替えの最終目標とされてきた郊外住宅を対象とし、居住者の住意識を把握・分類し、さらにそれら住意識が今後の住居選択行動に及ぼす影響について考察することを目的とする。〈BR〉〈B〉方法〈/B〉 横須賀市M団地(戸建・集合混合)と横浜市Kニュータウン(戸建のみ)を対象にアンケート調査を行った(2005年・2006年実施)。配布数は4,496件で回収数は1,467件である。なお本研究では年齢、世帯構成等が明らかな1,282件を分析対象とする。〈BR〉〈B〉結果〈/B〉 (1)住意識のタイプ分類にあたり、住宅に対する考え方を12項目設定して因子分析を行った。その結果『生活便利』型、『生活楽しみ』型、『安全格式』型、『複合』型の4タイプを得た。(2)各タイプの属性分析から、加齢に伴い『複合』型の割合が増加すること、戸建住宅居住者には『生活便利』型や『生活楽しみ』型が多く、日常生活を重視するタイプが必ずしも集合住宅を志向するとは限らないことが見出された。(3)直前住宅→現住宅→今後の希望住宅の住替え過程を住宅種類の変化(戸建住宅、集合住宅、高齢者施設の組合せ)からとらえた結果、様々な住替えパターンが得られた。(4)現住宅から今後の希望住宅への住替え過程については、住意識タイプによる差異が認められた。〈BR〉*調査及び分析にあたっては卒論生田中淑子さん、片江真惟子さんの協力を得た。
  • 奈良県宇陀市榛原区における
    伊東 理恵, 今井 範子
    セッションID: 2H3
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】高度経済成長期に開発が開始された郊外住宅地では,近年,開発当初からの居住者の高齢化が急速に進行しつつある.とりわけ都心から遠く離れた遠隔郊外住宅地においては,新規流入者が少なく,今後高齢化と人口減少が深刻化することが予測され,これに対応した居住環境の整備が求められる.これまで遠隔郊外住宅地については,奈良県榛原町の住宅地を対象に,親子の居住形態は遠居が特徴であり,駅から遠く,日常生活の問題からひいては居住の継承の問題など,将来にわたって居住地として種々の問題をはらんでいることを指摘した*1,*2.本報では,居住者の生活行動に着目し,生活環境の志向性,および行動範囲にかかわる生活行動から, 遠隔郊外住宅地居住者の類型化を行うことを目的とする.
    【方法】1970年代に開発された奈良県宇陀市榛原の住宅地において,居住者を対象に質問紙調査を実施した(2007年11月).調査票は,世帯票,世帯主および配偶者対象の個人票からなり,世帯票238,個人票440 の有効サンフ゜ルを得た(回収率:世帯票83.2%,個人票79.0%).
    【結果】植物を育てる,ペットの世話等自然性の高い行動はよく行われているが,大阪などにコンサート,美術館に行く等都市性の高い行動はあまり行われていない.性別や年齢により差がある.数量化_III_類とクラスター分析により居住者は4タイプに類型化された.自然環境のよさを享受しながら地域外にも出かけ,現在の住環境に満足している居住者がいる一方,働き盛りの中年層では交通の不便さから活動性の低い居住者が存在する.また地域に積極的に関わるものの,都市性の高い行動が少なく,やむを得ず居住し続ける者が存在するなど,遠隔地ゆえに生活行動が制約されている実情が明らかになった.
    *1今井・伊東:家政誌, Vol.57, No.11, p.761-774, 2006
    *2伊東・今井:日本家政学会大会要旨集, p.188, 2006
  • 米村 敦子, 山下 葉留佳, 益田 真奈美
    セッションID: 2H4
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    目的:日向市美々津の重要伝統的建造物群保存地区における住環境整備の課題について、伝統的建物の保全、室内環境、高齢化・空き家対策、防災、住民コミュニティと町づくり、観光対策等、住民と来訪者の双方から検討する。 方法:美々津の伝建地区において住民の意識調査と住まい方調査、空き家調査、来訪者の意識調査を実施した。調査期間は2005年10月~2008年1月。 結果:美々津の伝建地区(1986年指定)は日向市南部、耳川河口の港町で、天保期以降の通り庭形式を基本とする町家が残り、妻入りと平入りが交互する独特の町並みが海岸線に沿って三筋に連なっている。地区の2005年時人口は282人、老年人口101人、高齢化率35.8%で、人口減少と高齢化が著しい。地区内の建物156戸の内、町並み保全対応に改修した伝統的建物65戸、一方、住人が美々津地区外に住んで日常は空き家状態の住戸24戸(08年時22戸)がある。住民調査からは、美々津の誇りとして自然環境と町並みがあがり、伝建地区指定後も住みやすさの評価に変化は少ない。住戸内の評価は全般に良好で、室内温度・間取りの評価がやや低い。町並み保全対応の改修をしていない世帯では、経済的負担と住み続けるか未定なことを未改修の理由としていた。今後の自宅の保存については未定が全体の3割を占める。地区の課題として、後継者育成・食事処・高齢者福祉・電柱の地中化の要望があがった。防災では台風の不安が最も高く、住民参加で新設された地区公民館は災害時の避難所として活用されていた。来訪者は美々津の町並みをこのまま残して欲しいと高く評価していたが、宮崎県の観光再生に伴い、外国人観光客への対応等、新たな課題が認められた。
  • 徳島県三好郡旧漆川村の事例
    三浦 要一, 谷 直樹
    セッションID: 2H5
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    目的徳島県祖谷地方の民家は,「中の間」の奥に「ねま」という寝室がつく三間取が特徴である。先行研究は現存する上層の住宅に限られ,平面の全体像が解明されておらず,本研究は文献資料にもとづいて明治前期の住宅の平面構成について検討を加える。
    方法明治17年「家屋絵図面」(旧池田町公民館蔵)には,全部で274戸の家屋の平面が綴られている。現状図をラインプランで書き上げ,「寝所」「庭」「営業所」「床」「ヲシ入」が明記され,その坪数が記入されている。この資料を精査した結果,住宅平面が判明した家屋は265戸を数え,同一時期における一村内の住宅平面をトータルに把握することが可能となる。平面図に加えて「徴発ニ供スル坪数」という記載があり,この資料の作成は,陸軍省が明治16年以降に刊行した『徴発物件一覧表』との関係が想定できる。
    結果住宅の平均坪数は15.25坪であり,桁行5間半,梁間3間が平均的な規模となった。住宅平面は,二間取が151戸(57%),四間取が58戸(22%),三間取中の間型が43戸(16%),三間取広間型が3戸,一間取が8戸,六間取が1戸,その他の1戸に類型化できた。平面類型と総坪数合計の関係は,二間取は12.5坪が25戸,14坪が40戸,15.5坪が21戸,三間取中の間型は15.5坪が13戸,18.25坪が10戸,四間取は18.25坪が29戸,20坪が10戸となり,平面類型には坪数の明瞭な格差が認められた。住宅の規模が大きくなると,室数の多い平面類型となる傾向が明らかになった。四間取は約2割で上層の住宅に位置づけられ,全体の半数を占める二間取が当時の一般的な平面と考えられる。
    [文献]三浦他;山間集落における農家住宅の住空間の変容,家政誌56,317~328(2005)
  • 桂 重樹
    セッションID: 2H6
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー

    目的
     近年、婚姻率や出生率の低下に伴い独身者や夫婦のみの世帯が増加してきている。従来、独身者と言えば所帯を持つまでの過渡的な若者、という捉え方ができたが、最近では収入も年齢もそれなりになっている独身者も増加してきている。また、夫婦のみの世帯の住要求は子供がいる世帯のそれとは異なってくる。すなわち、これまでとは異なった住要求を持つ層が増大してきている。そこで、本研究では仙台市の分譲集合住宅および賃貸住宅の間取りの特徴について分析し、独身者や夫婦のみ世帯を意識した間取りとしてどのようなものがあるかを調べた。
    方法
     仙台市において2007年8月時点で販売されている大手による分譲集合住宅157戸、および2008年2月時点で大手ハウスメーカーの不動産部が賃貸住宅の空室としてホームページに掲載している40平米以上の住宅の面積と間取りについて分析した。
    結果
     分譲集合住宅の間取りを分析した結果、3LDKなどの子供がいる家族世帯を想定した間取りが93%であった。独身者を意識したと思われる、リビングルームや個室を広く取った70平米以上を2LDKとした間取りは全体の4%とわずかであった。このことから分譲集合住宅の購入層として子供がいる世帯を意識しているということができる。一方、賃貸住宅をみると1990年代に建設されたものは40ないし50平米の広さを2DKといった小さい部屋を複数作る間取りがほとんどであったが、ここ数年は同じ広さを1LDKとしてリビングルームや個室を広くとる間取りが見られるようになってきている。 このようなことから、集合住宅において独身者や夫婦のみの世帯を意識した間取りが見られるようになってきているが、賃貸住宅における対応が分譲住宅よりも充実しているように見受けられた。
  • 接客空間に関する意識と実態
    岸本 幸臣, 宮崎 陽子, 岡村 美穂
    セッションID: 2H7
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    目的 本報告は、同題の過去3報の続報である。研究目的は、住宅の建てられた時点のLDK平面構成と、入居後に生じる住み方としてのLDK実態との乖離現象の要因を探るものである。本報では前報に引き続き接客行為に着目し、その意識と実態の特性を報告する。
    方法 住み手の住宅平面と生活行為を図上採取し、併せて住宅・住生活意識についてアンケート調査を実施した。調査対象・調査時期は前報に同じで有効回収票は264票である。
    結果 (接客空間の分離志向)接客行為と家族生活空間との分離要求は強く、分離志向は76.1%に達している。分離志向層では、実際の住み方でも玄関での接客対応が増えている。(接客空間の和洋志向)接客空間の構成としては和室志向が強く64.3%を占め洋室志向の1.8倍に達している。接客空間に求められるくつろぎや就寝の機能を配慮した要求と見られる。また、接客空間の和洋性の志向は接客室の家具のしつらえ志向と整合性しており、居室と持ち込み家具の統一性は、他の居室より高い点が注目される。更に、実際のリビングへの持ち込み行為も、洋室志向層では「食事+接客」行為を持ち込んでいる割合が65.2%と、極めて多くなっている。(接客空間の実態)実際の接客空間では、洋室が56.3%と過半を占め和室は36.1%と少ない。また、和室の接客室がある場合、団らん室への接客行為の持ち込み率は14.3%と低下している。(まとめ)接客空間については、接客対応の質的多様性から家庭生活空間との分離を志向する傾向と、来客の就寝を想定した場合の部屋機能の多様化を求め和室を志向する傾向とが混在している。この二つの志向の現実的処理の難しさが、「LDKの乖離」現象を惹起させる主要な要因の一つとなっていることが指摘できた。
  • その1 コートと外出着の更衣
    小林 亜矢香, 今井 範子, 牧野 唯
    セッションID: 2H8
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】住宅内には,さまざまな種類の衣類が持ち込まれており,住まいにおいて衣類の収納は常に問題となっている.また,衣生活は多様化しており,居住者の生活と整合性のとれた収納計画がよりいっそう求められる.本報では,コートと外出着の帰宅後の更衣から収納までの流れに着目し,衣類の収納の現状と問題点を明らかにすることを目的とする.
    【方法】全国各地の,独立住宅の居住者を対象に,質問紙調査を実施した.有効サンプルは,世帯票256 ,個人票505である(2007年11月実施).
    【結果】1)コートの脱衣場所は,玄関の割合が最も高く,続いて,リビング,主寝室の割合が高い.玄関で脱ぎ,収納している世帯では,1階にコート用収納のある割合が高く,脱いだコートを「すぐに収納」している割合が高い.また,コートをリビングで脱ぎ,主寝室など個室に収納している世帯では,1階にコート用収納が「あると便利」と感じている割合が高い.2)一方,主な外出着の脱衣場所は,主寝室の割合が最も高く,次いで,リビングの割合が高い.夫妻が,主寝室で脱ぎ,主寝室に収納している世帯では,「収納スペースが足りないこと」や「更衣時に就寝中の家族のじゃまになること」に対する不満が比較的多い.また,外出着の収納について,不便を感じている世帯では,1階に外出着用収納が「あると便利」としており,とくに,「収納場所が分散していること」や「更衣場所と収納場所が離れていること」について,不便を感じている世帯では,1階の外出着用収納に対する要求の割合が高い.コートや外出着の収納に関しては,更衣場所も考慮し,計画することが必要である.
  • 奥田 紫乃, 岩井 彌
    セッションID: 2H9
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    目的 実生活で整容行為が行われる空間は、洗面室に限定されてはおらず、居間、食事室、寝室など様々である。また、住宅内の室内照度に関して、生活行為とその行為が行われる室ごとに照度基準範囲が示されているJIS Z9110-1979においては、「髭剃り」行為は浴室/脱衣室、「化粧」行為は浴室/脱衣室・居間・寝室の各室における生活行為とされており、補助照明を含めて200~750 lxの平均照度が推奨されている。しかし、本来これらの推奨値は、整容行為が自身の顔を見る作業を伴うことに基づいて決定されるべきであり、行為が行われる空間の設定についても再検討する必要がある。
    方法 本研究では、外出前に自宅内で行う整容行為として整髪・髭剃り(男性)・化粧(女性)の3種の行為に着目し、行為に要する用品の使用状況、行為が行われる空間の把握などを目的としたアンケート調査を行った。男子大学生、女子大学生、男性会社員、女性会社員を調査対象とし、計401件の回答を得た。
    結果 調査結果より、社会人、大学生に関わらず、7割以上の男性が洗面室の鏡を使用し、洗面室で整髪・髭剃りを行っていることが示された。また、女性社会人の約半数が洗面室の鏡を使用し、洗面室で整髪行為を行っているのに対し、女子大学生の約4割は卓上鏡などを使用して、自室で化粧行為行っていることがわかった。更に、社会人、大学生に関わらず、半数以上の女性が自室で化粧を行い、卓上鏡や手鏡などの持ち運び可能な鏡を使用していることが示された。整容行為に必要な用品や空間の特性を明らかにすることにより、快適な住宅内衛生空間を提案することができると考えられる。
  • 『婦人公論』を通してみる戦後混乱期の情報
    小倉 育代
    セッションID: 2H10
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    目的 食事の家族団らん機能の復権のための課題を検討するにあたり、特に朝食を中心とした食生活や食空間が歴史的にどのように位置づけられてきたのかについて、昭和一桁世代に焦点を当て家政的見地から検証することを目的とする。 方法 戦後の家庭生活創造に影響を与えた諸要素と論点を捉える手がかりとして,女性一般を対象にした総合雑誌の一つである『婦人公論』を取り上げる。戦後復興の時期に提供された食生活や食空間形成に関わる情報を抽出し、その特性並びに今日の食生活や食空間との関わりを探る。 結果 戦後の混沌とした時期、近代的な家庭を創造するための手段として提供されたのが生活全般にわたる洋風化情報であった。食生活においても同様で、家事労働からの女性の解放と密接な関係にあった台所の合理化、機械化、食事の摂り方、空間設計のあり方、そして食材の流通過程を含む社会構造に至るまで、海外事情を取り入れようとした痕跡を確認することができた。 1 海外志向が強く、模倣意識が極めて高かったこと  2 住宅改善はあくまでも台所の合理化に終始したこと  3 食生活の改善は何より家事労働の削減、すなわち作業工程からの女性の解放が優先課題であったこと  4 食空間については、女性の立場からの住宅問題として取り上げられはしているものの、家族生活形成にかかわる家政的課題としての展開はみられなかった。食生活や食空間の変容を意図した当時の一般大衆向けの情報は、無反省の中で形成された生活を家政的視点から根本的に再検討していこうとする姿勢が希薄であったことを指摘できる。
  • 大谷 由紀子
    セッションID: 2H11
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    「研究目的」 子育て中の親が孤立しないよう地域の親子が交流できる拠点整備が進められている。地域子育て支援拠点は2007年度より「ひろば型」「センター型」「児童館」の3タイプとなり、「ひろば型」は地域の様々な資源を活用しながら、親子にとって身近な居場所となることが期待されている。「ひろば型」はこれまで取り組まれてきた「つどいの広場」の他に新たに設置されたものもあり、運営主体や運営内容など明らかになっていない。そこで本研究では「ひろば型」の現状を把握し、運営実態と抱えている問題を考察する。 「研究方法」 全国の地域子育て支援拠点「ひろば型」を対象に、運営団体の代表者に郵送による質問紙調査を実施した。調査期間は2007年10月、有効回収票数は676票(回収率45%)である。また、質問紙調査のサンプルから近畿圏の5事例を視察し、スタッフに聞き取り調査を実施した。 「調査結果」 運営体制は、自治体が直接運営する「自治体直営」が約半数、残りの半数は、自治体が社会福祉協議会など組織的な民間団体に運営委託している「組織的団体への委託」と、自治体がNPOやボランティアなど地域住民を中心とした団体に委託している「NPOなどへの委託」に分かれた。活動内容は各運営者の「ひろば型」に対する思いが反映されているが、運営資金や実施されている施設、他機関との連携などにおいては運営体制の3タイプにより異なっている。中でも「NPOなどへの委託」は全体的に運営が厳しい状況にあり、スタッフへの報酬も充分に払えない団体が多くみられた。事業の委託期間が終了した場合、「ひろば型」を継続したくても難しいと考えていることも明らかになった。
  • 住民による高齢者の居場所としてのサロンの評価とそのあり方 第2報 
    中村 久美
    セッションID: 2H12
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/10
    会議録・要旨集 フリー
    目的 昨年の個人宅開催サロンの調査において,生活の質を高めるうえでのサロンの有用性と,コミュニティ拠点としてのサロンの可能性を明らかにした.本報は,サロンの定着に向けてかぎとなるサロンの公共性,運営の持続性に着目し,サロンのあり方を検討する.
    方法 宇治市社会福祉協議会に登録された高齢者サロンのうち,市内2地域3学区に立地する,集会所開催の7サロンを調査対象とし,運営者へのヒアリングや参与観察調査,および参加者への質問紙調査(n=82)を実施した.調査期間は2007年5月~7月.
    結果 7サロンのうち5サロンが運営者自身が高齢者,うち2サロンは後期高齢者である.参加者は6割が後期高齢者,1/3が単身者または夫婦のみ世帯である.「人との交流」「健康維持」「生活情報収集」を目的に,3/4がほとんど毎回出席している.集会所開催は,個人宅に比べ,住民に対し開放的で安定的に開催できることから,公共性の点で優れている一方,建築年数の古いものを中心に,バリアフリーへの未整備や床座の不都合が指摘される.非常時に頼るものとして,「サロンの運営者」「サロンの仲間」をあげる者が少なくない.特に単身高齢者,夫婦のみの後期高齢者で,唯一サロン関係者を頼りとする者の存在は見過ごせない.一方,参加者の半数が閉じこもり高齢者の情報をもっており,彼らに対し,「サロンに誘う」「サロン関係者に存在を伝える」「民生委員,学区福祉委員に伝える」などの対応をしている.サロンを拠点に非参加者も組み込む地域の人的ネットワークの可能性が示唆された.このようなサロンの持続性を保証するためには,対象サロンの1つにみられた世代交流と,安定的な場としての集会所の整備と管理・運営が重要である.
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