【目的】 衣服の洗浄に関する実験的研究を行う場合、固体粒子汚れのモデルにカーボンブラックがよく用いられる。この場合、汚染布の表面反射率から洗浄性の評価を行なうが、反射率には洗浄前後のカーボンブラックの粒度や付着状態の変化が影響する。本研究では、水晶振動子(QCM)を微小質量天秤および洗浄基質として利用し、カーボンブラックの付着重量からの洗浄性評価を行なう。得られた結果と粒子脱離に伴う自由エネルギー変化の関係を調べる方法で、評価法の妥当性を検証した。
【方法】 基質には、QCMの金電極表面、および金電極に被覆したポリエチレン膜表面を用いた。固体粒子汚れには、東海カーボン製の炭素微小球(平均粒径264 nm)を用いた。粒子分散液中にQCMを浸漬する方法で粒子を付着させ、QCMの周波数変化から付着重量(W
D)を求めた。次に、種々体積比の水/エタノール混合液中に上記のQCMを浸漬し、超音波洗浄(36kHz,5 mV)を行った。洗浄前後のQCMの周波数変化から粒子脱離重(W
R)を求め、W
R /W
Dを脱離率とした。脱離に伴う自由エネルギー変化ΔGは、実験的に求めた表面自由エネルギーや接触角から算出した。
【結果】 粒子脱離率の経時変化を調べたところ、洗浄時間とともに増大して20分後にほぼ一定となった。そこで洗浄時間を20分とし、水/エタノール混合液中での脱離率を求めた。その結果、金基質では、エタノール濃度が増加しても脱離率に大きな変化は見られなかったが、ポリエチレン基質では、エタノール濃度が高くなると脱離率が大きくなる傾向が認められた。ΔGの値は全ての洗浄系で正の値となり、超音波が粒子除去の機械力となっていることが示唆された。脱離率とΔGの関係を調べたところ、ポリエチレン基質では、ΔGが増加すると脱離率が減少する傾向を示し、QCMを用いた洗浄性評価が妥当であることがわかった。
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