一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
61回大会(2009年)
選択された号の論文の316件中1~50を表示しています
  • 東京女子高等師範学校卒業生と家政学専門職に関する研究の一環として
    八幡(谷口) 彩子
    セッションID: 2A-1
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    目的 筆者は、東京女子高等師範学校卒業生と家政学専門職に関する研究の一環として、同校家事科の卒業生である鹿内瑞子氏の旧蔵資料を読み進めている。すでに、昭和20年代における小学校家庭科の存置運動と「小学校家庭生活指導の手びき」(昭和26年)等の刊行に携わった「小学校家庭委員会」における議論を検討した。本研究では、それに引き続き昭和31年の小学校学習指導要領改訂に関わった委員会における審議過程を検討する。
    方法 国立教育政策研究所教育図書館所蔵「鹿内瑞子旧蔵資料」のうち、昭和31年の「小学校学習指導要領」(家庭科)改訂に関連する資料を用いた。とくに、「昭和30年代 要領筆記」(資料No.209)と標題のある資料を中心に検討する。
    結果 (1)昭和29年10月20日に開催された第1回委員会では、初等教育課長より、昭和20年代における小学校家庭科の教育課程行政に関する説明と、委員会で取り組む課題が示された。(2)特に、それまで充分に研究がなされていなかった小学校家庭科の性格、目標、中学校との関係等についても研究すること、「裁縫」を小学校としてどのように位置づけるのか、他教科との関係などの課題が示された。(3)改訂作業を進めるにあたっては、小学校社会科の学習指導要領編集試案が参考にされた。(4)家庭科の学習内容を小学校第5・6学年に配当するにあたっては、主眼となるべき内容、児童の発達段階、基礎的なものから応用的なものへ発展させる等の諸点が検討された。(5)「小学校家庭生活指導の手びき」等の内容を敷衍し、両者の関係性についても模索された。
  • 家庭科教員養成課程における「家政学原論」関連科目の検討
    大本 久美子, 小倉 育代, 表 真美, 岸本 幸臣, 長石 啓子, 宮崎 陽子, 吉井 美奈子
    セッションID: 2A-2
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    目的 本研究の目的は、家庭科教員養成課程における「家政学原論」関連科目の位置づけを明らかすることにより、学問としての家政学が担うべき課題や家政学原論の役割について検討し、家庭科教育の充実をはかることである。
    方法 全国国公立大学の家庭科教員養成課程における開講科目について、2008年度シラバスを用いて以下の調査を行った。主な調査内容は 1)「家政学原論」の有無、2)その他の名称の科目における「家政学」に関連する内容の有無である。シラバスの検討が可能であった国立45大学、公立8大学、計53大学を対象とした。
    結果 調査結果の概要は以下のとおりである。
    1)「家政学原論」の名称で開講していた大学は1割に満たなかった。そのなかには、学問論とは異なる内容の授業を行っているものも含まれていた。しかし、「生活研究論」など、「家政学原論」以外の名称で、「家政学原論」に相当する内容の授業が行われている大学があった。
    2)授業科目名に「家政」が含まれるものの、「家政学」とは関連しない内容の授業が行われているケースが、複数の大学にみられた。
    3)専門科目、教職科目の授業計画の一部に、「家政学とは」「家政学と家庭科教育」など、「家政学」に関連する内容をもつケースがみられたが、全体的には、「家政学」についてまったく言及しない大学が多数であった。
    以上の結果から、家庭科教員養成課程において、「家政学」という学問との接点を持ち得ない状況にある大学が多く存在していることが明らかになった。
  • 職業歴を中心に
    山本 奈美, 渡邉 照美, 諸岡 浩子, 橋本 香織, 高木 弘子, 中村 喜久江
    セッションID: 2A-3
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    【目的】
    生き方も働き方も多様化した現代において、家事や育児、介護等のケア体験と職業体験に折り合いをつけながら、柔軟に人生を取捨選択することが望まれる。そこで本研究では、家庭科教員が、家庭人として、職業人として、どのようなキャリア形成をおこなっているのかを明らかにすることを目的とした。その中でも、本報告では家庭科教員を志した時期や理由、ロールモデルの有無、離職意識といった職業歴に注目し、その実態を報告する。

    【方法】
    広島県、岡山県の高等学校、中高一貫校、中学校の家庭科教員に郵送法による質問紙調査を2008年2~3月にかけて実施した。1839部配布し、159部を回収、157部を分析対象とした。調査対象者の年齢は平均42.99歳(SD9.68)、最終学歴は大学卒業(短期大学含む)が大半を占め、教育系学部よりも家政系学部出身者が多かった。

    【結果】
    家庭科教員歴 平均19.72年(SD10.06)であった。
    家庭科教員を志望時期とその理由 大学時代70名が最も多く、次に高等学校時代45名と続き、青年期に職業選択を行っていたことがわかる。家庭科教員を志した理由については、自由記述で回答を求め、KJ法により分類を行った。その結果、「家庭科への興味・関心」カテゴリーが66名と最も多かった。
    ロールモデルの存在 ロールモデルがいると回答した対象者は101名であり、ロールモデルとなった人物は、職場での先輩教員や学生時代の教員が多かった。
    離職意識とその理由 離職を考えたことのある対象者は78名、離職経験者は9名であった。その理由としては、「仕事と家庭の両立の困難さ」が最も多く、ワーク・ライフ・バランスの実現に向けて多くの女性が葛藤を経験していることが示された。次いで「教員としての力量不足」、「職場環境への不満」であった。
  • 職業アイデンティティ・職業キャリアに関連する要因の検討
    渡邉 照美, 山本 奈美, 諸岡 浩子, 橋本 香織, 高木 弘子, 中村 喜久江
    セッションID: 2A-4
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    【目的】
    家庭科教員のキャリア発達を明らかにすることを目的とし、本報告では、職業アイデンティティ・職業キャリアに関連する要因の検討を報告する。

    【方法】
    広島県、岡山県の高等学校、中高一貫校、中学校の家庭科教員に郵送法による質問紙調査を2008年2~3月にかけて実施した。1839部配布し、159部を回収、157部を分析対象とした。使用した家庭科教員の職業アイデンティティ尺度11項目については、看護教員の職業アイデンティティ尺度(石田・塚本・望月・関根,2003)を参考に、筆者らが作成。職業キャリア成熟尺度9項目については、成人キャリア成熟尺度(坂柳,1999)の職業キャリアの一部分(関心性尺度、自律性尺度、計画性尺度の下位尺度からなる)を使用。

    【結果】
    家庭科教員職業アイデンティティ尺度の因子構造 11項目中2項目に天井効果が認められたため、それらを除外した9項目に対して、主因子法による因子分析を行い、2因子構造を得た。因子1は、「家庭科教員は私に適している」や「家庭科教員は私の能力を生かせる」といった職業に関する適性、自信、有能感、満足感が含まれるので、「職業的自認・自尊感情」と命名した。因子2は、「自分の子どもが家庭科教員になりたいといったら勧める」、「友人や後輩など身近な人が家庭科教員になりたいといったら勧める」の2項目であったので、「職業的推薦」と命名した。
    職業アイデンティティ・職業キャリアに関連する要因 「家庭科教員歴」、「教員以外の職業経験の有無」、「離職意識の有無」といった職業歴に関する項目と「結婚経験の有無」、「子どもの有無」、「介護経験の有無」といった家族歴に関する項目それぞれと各尺度との関連を検討し、その結果を報告する。
  • 土佐和紙を使った実践的教育の試み
    松本 由香
    セッションID: 2A-5
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    研究目的高知女子大学は、県立大学として地域貢献を教育研究テーマの一つとしている。そして生活科学部生活デザイン学科は、衣環境教育、住環境教育と生活環境教育を柱とし、生活にあるさまざまなモノ、ことがら、環境のあり方について考察する教育体系をもっている。本研究では、2005年度から現在まで演者が行ってきた、高知県の伝統的工芸品である土佐和紙を使ったバッグなどの生活デザインの提案が、大学教育と地域社会にとってどのような意義をもたらすのかを明らかにする。 研究方法2005年度から現在まで行ってきた、学生による高知県吾川郡いの町の博物館および紙産業技術センターでの土佐和紙の歴史・文化学習と和紙づくり体験、障がい者共同作業所での紙布織ボランティア活動、和紙製造会社との協働のバッグ・デザインおよび試作といった、一連の実践的教育のもつ意味を明らかにし、それらを総合して考察を導く。 研究結果および考察生活デザインとは、モノやことがら、環境を考察対象に、調査研究だけでなく実際に設計しつくるという点に教育的特徴をもつ。とくに土佐和紙をとりあげることで、学生はその物性とデザインとのかかわり、企画設計、マーチャンダイジング、ファッションを通したグローバルな世界とローカルな地域の理解、地場産業の歴史と現状、地域の自然環境の変化などについて学ぶことができる。また大学と地域の企業などが協働して、若者の感性・ファッション情報をとり入れたこれまでにない新しい生活デザインを創造することで、行政が現在最重要課題とする地域産業振興への貢献が期待できる。
  • 今後の家庭科「保育体験学習」のあり方を探る
    小川 裕子, 土屋 絵里
    セッションID: 2A-6
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    目的:少子化の進行や虐待の増加を背景として、乳幼児との「ふれあい体験」が注目されており、中・高校生にとっての教育効果を検討する試みは数多く報告されてきたが、もう一方の当事者である乳幼児側の視点からも、そのより良いあり方を検討していく必要がある。本研究では、「ふれあい体験」の受け入れ側である幼稚園・保育園からみた実態や意見を把握し、乳幼児にとっても意味のある体験のあり方に示唆を得たい。
    方法:静岡市葵区、駿河区内の幼稚園・保育園、計112園の管理職と保育者を対象として、郵送による質問紙調査を実施した。調査時期は2008年8,9月。回収数は76園(回収率は67.9%)。保育者用質問紙の回収数は、計670部である。
    結果:まず、「ふれあい体験」によって、乳幼児にも変化が見られることが分かった。「興奮状態になる」場合も多いが、「別の面を表す」「いつもと違った遊びが出来る」と指摘する保育者が多く、乳幼児にとって擬似的な兄姉と接する機会となり、兄弟の少ない現在の子ども達にとっては貴重な体験となるようだ。また、これらは一般に乳幼児の年齢が高くなるほど高まるが、特に「遊びにおいて主導権を持つこともあり、自信を持つ」という様子で顕著である。ただし、家庭科の保育学習の一環としての「ふれあい体験」は未だあまり広まっておらず、受け入れを経験している幼稚園・保育園は42.2%と半分以下であった。また、園の方針や体験する生徒数の多さから、今後も受け入れていく予定のない園もあった。また、「負担が大きい」「安全面で心配」といった意見も多い。しかし、事前・事後指導での内容に関することに多くの記述があり、中・高校生に「ふれあい体験」での学びを大切にして欲しいという思いが強いことがわかった
  • 社会生活基本調査ミクロデータの再集計による分析
    大竹 美登利, 中山 節子
    セッションID: 2B-1
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    目的:世界経済の急速な悪化は、人々の生活を直撃している。日本では、派遣、パートなどの低賃金で不安定な労働市場が拡大し、その結果、生活費の最低限を確保するために、長時間労働や複数の仕事を掛け持ちするダブルワークが増えているといわれている。長時間労働者像は、会社人間として働く見返りとしての高い地位と賃金を得るイメージから、長時間労働と低収入がセットとなったワーキングプアー像へ大きく転換している。労働時間は一般に職場側で把握されるが、生活者の側からは複数の働き先を合計した労働時間が生活の質に大きく影響する。そこで本研究では、生活者の側から捉えられる生活時間調査データを使用して、収入階層の相違が、生活時間配分にどのような影響を与えているかを明らかにすることを目的とする。
    方法:一橋大学経済研究所附属社会科学統計情報研究センターでは、総務省統計局の依頼に応えて、学術研究目的使用する研究者に、秘匿処理を施したミクロデータを試行的に提供している。この募集に応募し承認を受けた(2007年12月官報4969号)、1991、1996、2001年の社会生活基本調査のミクロデータを使用し、クロス集計を行って、収入階層による相違を分析した。
    結果:社会生活基本調査の収入情報は世帯単位であり、個人の労働時間とその個人の収入との関連は直接的には比較できない。そこで、データの属性情報に基づいて分析した結果、男女、既婚・未婚、年齢階層、就業形態(雇用か自営か)、共働きか否か、家族形態別、収入階層別の集計によって、一定の傾向が明らかになり、それによると、収入階層の高い層では、低い層より仕事の時間は短いことと、趣味、娯楽などの文化的生活時間の長いことが明らかとなった。
  • 李  秀眞
    セッションID: 2B-2
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    研究の背景および目的:韓国ソウルと京幾道に居住する20代から40歳の男女を対象としたF-GES韓国(ソウル)パネル調査によると、生活時間項目のうち、増やしたい項目として余暇時間をあげる人の割合が4割近くになることが確認できた。特に有配偶女性において、余暇時間の不足を感じる人はより多い傾向にあることも明らかになった。余暇時間は、仕事時間や家事時間などをはじめ、様々な要因との関係で決められると考えられるが、本研究では,家計構造と余暇活動との関係に注目する。したがって、本研究の目的は、家計構造を把握し、家計の所得・支出と夫妻の余暇活動の関係を明らかにすること、また、余暇活動における夫妻間格差を明らかにするすることである。本研究で用いる余暇活動とは、余暇活動の種類・頻度、余暇費用などを含む概念とする。 データ:本研究に用いるデータは、お茶の水女子大学F-GENSで実施した「家族・仕事・家計に関する国際比較研究-韓国(ソウル)パネル調査」である。本調査は、2003年から2007年までの5年間のパネル調査であるが、本研究では、2007年度の調査を用いる。調査対象者は、30歳から50歳の男女(男性535人、女性596 人)である。 分析結果:第1に、家計支出構造のなかで、夫のこづかいの平均金額は、2万4千ウォン(調査当時のレートで換算すると2400円)、妻のこづかいの平均金額は1万2千ウォン(約1200円)である。家計支出から、夫妻間の余暇活動および余暇費用に格差が存在することが予想される。第2に、余暇活動を、スポーツ、日常的趣味、旅行などに分けてみたところ、スポーツと旅行への参加経験は、有配偶女性より有配偶男性の方が高い傾向にあるが、日常的趣味は有配偶女性の経験率が高いことが確認できた。第3に、日常的趣味にかかる費用をみたところ、有配偶女性は約5万ウォン、有配偶男性は約6万ウォンで、活動の経験率とは異なる結果であった。
  • -米国とスペインの事例から-
    角間 陽子
    セッションID: 2B-3
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    目的 近年,高齢者の社会的孤立や要介護の予防,コミュニティの再構築などの世代間交流の効果を期待した取り組みが医療や福祉,教育,行政といった分野で実施されてきている.世代間交流の効果は他にも,若年世代の自己有用感を育み,限定された人間関係を拡大させることなどが挙げられている.これまでは,主に学校で子どもに関与する中年や高齢者の支援内容や関わり方から交流の影響や活動の質的向上を追究してきた.今日の「『後期子ども』の時期への対応の社会化」が課題となっている状況を鑑み,青年の「社会参加」に焦点をあて,これを志向した米国とスペインの世代間交流プログラムについて検討する.
    方法 プログラムの実地調査と参加者やスタッフへのインタビュー調査による.実施時期は米国が2007年5月,スペインが2008年10月であった.
    結果 米国テンプル大学世代間学習センターのプログラム(SHINE)への参加は大学の単位として認定され,学生はサービスを提供するだけでなくコーディネーターとして新たな交流活動を創り出している.現在,高齢者を対象としたボランティアでは全米最大の組織となっているDOROTはコロンビア大学院生によって始められた.スペインのCAIXAカタルーニャが主催するプログラムでは参加する学生が一定の経済支援を受けることができる.これらの事例から,次代を生きる子どもや青年にとって真に意義あるものとして機能する世代間交流のあり方についての示唆を得た.
    ※広井良典;持続可能な福祉社会,ちくま新書,85~108(2006)
     本調査の一部は平成19~20年度科学研究費基盤(C)19530548(研究代表者:草野篤子)の分担金を受けて実施された.
  • 石橋 鍈子, 草野 篤子
    セッションID: 2B-4
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    目的 急速に進行する高齢社会においては、世代間で協力しながらそれぞれの力を発揮し、社会に貢献することが必要である。そのためには、世代間交流プログラムによる意図的な「仕組み」が、非常に有効な問題解決策の一つとなる。現在の日本では、いまだ自然発生的にゆっくりと進められ、社会のニーズに充分に応えていない。一方、日本と同様に、急速な高齢社会に突入しているドイツでは現在いち早く行政と民間が一体となり、積極的にまた戦略的に世代間交流プログラムに取り組んでいる。その実践と理論を学び、日本における世代間交流の実践と理論化に更なる発展をもたらすことを、今回の目的とする。 方法 世代間交流プログラム研究の中心となっている米国ペンシルバニア州立大学ドイツ・ベルリンに本部を置く「ドイツ国立世代間交流実践サービス・センター」の企画による「2008年ドイツ世代間交流学習ツアー」に参加し、ドイツの世代間交流プログラムの実践と理論を学んだ。訪問先は、ベルリン、ドレスデン、ハーレの3ケ所で、セミナーと実際の施設訪問をとおして、実態と課題を見出だした。 結果 ドイツでは、全体的な人口の高齢化とともに、家族の形態が著しく変化している。単独世帯、夫婦のみ世帯が著しく増加し、三人以上の世帯が減少している。こういった社会の高齢化と世代間関係の変化は、現在進行中のドイツ市民の社会参加への動きに伴い、ドイツの社会政策に大きな影響を与えている。ドイツ連邦政府は迅速に社会政策の一つとして、世代間交流プログラムに資金を提供し、モデル・プログラムを実施している。加えて民間でも、様々なプログラムが実施されていることが明確になった。
  • 尾崎 裕子
    セッションID: 2B-5
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    【目的】中国における婚姻に関する意識におけるジェンダー格差やそれへの経済の影響を、急激な経済発展を遂げている都市部と郊外を対象として比較分析を行い、相違を明らかにする。
    【方法】お茶の水女子大学「21世紀COEジェンダー研究フロンティア」プロジェクトにおいて、2003-2007年度に実施した、中国・北京での「家族・仕事・家計に関する国際比較」調査のパネルデータ(サンプル数:2004)と、2007年度に実施した、北京と隣接する河北省での農村調査データ(サンプル数:503)を基に、婚姻観に関する同様の設問に対する回答を比較する。
    【結果】それぞれの地域における婚姻状況、平均初婚年齢、配偶者と知り合ったきっかけをたずねた結果や、結婚相手を探すとき重視する点や非婚、離婚に対する見方等についての調査結果を報告する。
     たとえば、非婚に対しては「男性が生涯独身で過ごすことを望ましくない」と考える割合は、北京では86.3%、河北省農村では83.5%、「女性が生涯独身で過ごすことを望ましくない」と考える割合は北京では86.2%、河北省農村では84.1%と、どちらの地域も8割以上が非婚に否定的な考えを持っているものの、未婚者割合や初婚年齢の高い北京が河北省農村を上回る結果となった。
     また、離婚の影響については、「男性のほうが不利」、「女性のほうが不利」、「無差別」と3つの選択肢を設定したところ、「無差別」の割合が北京では7割、河北省農村では8割というものであった。そして「女性のほうが不利」と考えている回答者割合は、北京が河北省農村を上回った。
  • 東京都下A小学校の低学年児への質問とスケッチによる調査報告より
    井上 恵子, 草野 篤子
    セッションID: 2B-6
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    [目的] 急激な社会変動と多様化する家族形態の中での、子どもの生活と遊びの実態を明らかにし、分析を加えることで、家庭、学校、地域に求められていることを明確にする。[方法] 2008年 東京都下小学校低学年児(1年生~の3年生)293名を対象に配票調査を実施し、247名から回答を得た。回収率および有効率は84.3%である。[結果] 調査は性別、家族構成、学校や放課後、家庭での過ごし方や好きなことについて尋ねた。また、学校、放課後、家での楽しいときを問うスケッチには説明も加えてもらった。「学校で楽しい時」を問う項目は休み時間がもっとも多く(34.8%)、鬼ごっこが盛ん(25.3%)だが、各学年の遊びには成長発達に即した特色がある。絵画では運動のみならず勉強中を描いたものも多く(14%)、低学年児のバランスのとれた活発な学校内の生活がうかがわれた。放課後は家(22.9%)や公園(19.8%)で過ごすのを好むと答える子どもが多いが、スケッチでは家庭内(14.7%)ゲームやTVで過ごす(17.0%)以上に外遊びが好まれている(33.8%)。学童保育で楽しみを見出す子どもも17.4%おり、その多くは1.2年生である。「家で楽しい時」を問うスケッチではゲームやTV(29.7%)、食事(10.6%)の描写が特徴的である。放課後や家で一人で過ごす子どもたちのスケッチには人と人とのつながりが希薄なものも見られ、何らかの働きかけが必要と考察される。こうした観点から高齢者のいる世帯の子ども(13%)が描いたスケッチとの比較もおこなった結果、高齢世代とのかかわりが子どもの精神的安定度の高い生活に必要ではないかと推察された。
  • 木村 安美, 吉田 大悟
    セッションID: 2C-1
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    【目的】朝食摂取の重要性は広く知られているが、平成19年国民健康・栄養調査結果における朝食欠食の状況では、女性は20歳代で最も高く、10年前、20年前に比較し増加傾向にあることが報告されている。本研究は、女子学生の朝食摂取と喫煙・飲酒、他の生活習慣との関連を検討することを目的とした。 【方法】対象者は福岡県内の大学、専門学校に通う女子学生319名(22.0±5.3歳)である。2008年4月~10月に自記式による生活習慣調査、食物摂取頻度調査を行った。朝食摂取については6つの頻度カテゴリーによる質問を行い、朝食の摂取が週5回以上を摂取ありと定義した。喫煙状況(現在喫煙、なし、過去喫煙、喫煙本数、喫煙年数)と飲酒状況(酒の種類、頻度、量)を質問し、喫煙量、飲酒量を計算した。年齢、居住形態、総エネルギー摂取量、飲酒および喫煙を交絡要因として調整し、多重ロジスティック回帰分析により朝食欠食のオッズ比を算出した。 【結果】朝食欠食者の割合は、86名(27.0%)であった。欠食者では非欠食者に比較して平均年齢、ひとり暮らしの者、アルバイトをしている割合および健康状態の低下を感じている者の割合が有意に高かった。朝食欠食は、喫煙、飲酒、不規則な生活時間、インスタント食品の摂取と正の関連性を示した。層別化による傾向性の検討を行った結果、喫煙量、インスタント食品の摂取回数は、朝食欠食と有意な正の関連性を認めた。(喫煙量:傾向性P値<0.0001, インスタント食品摂取:傾向性P値=0.001)一方、飲酒量と朝食摂取の間に有意な関連性は見られなかった。以上の結果より、喫煙やインスタント食品摂取が、朝食摂取と強い関連を持っていることが示唆された。
  • 野村 幸子, 加賀谷 みえ子, 木村 友子
    セッションID: 2C-2
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    [目的] 管理栄養学部(管理栄養士・栄養教諭:K学部と略記)とヒューマンケア学部(養護教諭・幼稚園教諭・保育士養成:H学部と略記)の学生は,卒業後,食育の一翼を担うことが求められている.そこで,学生の食教育と健康教育の必要性を見出す目的で,健康行動と食行動に関するアンケート調査を実施し,学部間の比較を行った.[方法] 対象:1年生,K学部172名,H学部151名,回収率91%,調査時期:2008年7~11月,調査方法:質問紙法・留置法,調査内容:健康行動:健康への関心,健康状態,健康食品の利用・目的,運動習慣,生活の自己評価,食行動:栄養への関心,栄養の偏り・不足の自己評価,食事の栄養バランス配慮,食事摂取状況,調理の好き嫌い,外食及び食品購入時の成分表示利用等である.結果の解析はχ2検定を行った.[結果] 現在の健康状態は,K学部生とH学部生は類似していた.健康に対する関心度は,H学部生が24%,K学部生はその約2倍であった(p<0.01).健康食品を利用する割合は,H学部生の方がやや多かった.栄養に対する関心度は,「ある」の回答がK学部生は86%に対し,H学部生は20%であり,有意差がみられた(p<0.01).栄養バランスへの配慮は,K学部生の方がH学部生より有意に高く,調理の好き嫌いでは,「好き+まあまあ好き」の回答者はK学部生が91%に対し,H学部生は70%であり,外食及び食品購入時の成分表示の利用では,「よく見る+まあまあ見る」の回答者は,K学部生の方がH学部生より有意に高く(p<0.01),学部間に意識の相違がみられた.H学部では栄養への関心と健康行動が結ぶつく教育の必要性が示唆された.
  • 川島 愛子, 菅原 詩緒理, 山崎 真理子, 沖田 美佐子, 赤羽 たけみ, 塚本 幾代
    セッションID: 2C-3
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    目的 肥満男性における食事摂取状況と血漿中脂肪酸組成、脂肪酸代謝について検討した。
    方法 奈良県健康づくりセンターにおいて健診を受診し、同意が得られた男性119例を対象とした。健診時に血液生化学検査と食物摂取頻度調査および身体計測を実施し、さらに血漿中のコレステロールエステル(CE)画分の脂肪酸組成を分析した。
    結果 身体計測の結果、BMI≧25の対象は59例(肥満群)、BMI<25の対象は60例(対照群)であった。食物摂取頻度調査から算出した栄養素等摂取量では両群間に差異は見られなかった。血漿CEの脂肪酸組成は、肥満群においてパルミチン酸(16:0)、パルミトレイン酸(16:1n-7)、γ-リノレン酸(18:3n-6)、ジホモ-γ-リノレン酸(20:3n-6)が有意の高値を示し、リノール酸(18:2n-6)が有意の低値を示した。脂肪酸組成から算出したdesaturaseの活性は、16:1n-7/16:0(D9D)と18:3n-6/18:2n-6(D6D)が肥満群で有意の高値を示し、20:4n-6/20:3n-6(D5D)が有意の低値を示した。BMIと脂肪酸摂取量および血漿脂肪酸との関連性を検討したところ、n-3PUFA摂取量、血漿中n-6PUFAの低下とD5Dの活性低下が肥満の予測因子と推測された。さらに血漿中n-6PUFAおよびD5Dと栄養素等摂取量との関連性を検討したところ、n-6PUFAと食事との関連は見られなかったが、食事中のn-6/n-3比率の減少がD5Dの上昇をもたらすことが推測された。以上の結果から、n-3PUFAの摂取を推奨した食事指導が肥満予防に有用であることが示唆される。
  • 曽根 保子, 山口 敬子, 河原 和夫, 近藤 和雄, 冨永 典子, 大塚 譲
    セッションID: 2C-4
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    [目的] 肥満症を含めた生活習慣病は集団や民族間において有病率が異なることから、その発症には個人の生活習慣、遺伝因子の関与、生活習慣と遺伝因子の相互作用が重要であると報告されている。これに対し、より有効な予防法・治療法が期待される。そこで、本研究では日本人成人男性を対象とし、脂質代謝に関与する候補遺伝子の一塩基多型、臨床的指標、生活習慣との関連性を検討した。〈BR〉 [方法] 福岡労働衛生研究所が行った健康診断受診者から集めた40~60歳の日本人男性148名について遺伝子多型、生活習慣、臨床的指標との関連を調査した。生活習慣病との関連を検討する候補遺伝子として、PLIN1、PLIN4、PLIN rs8179043、LIPE、ADIPOQ等を選択した。〈BR〉 [結果・考察] PLIN4ではAA遺伝型でBMI・腹囲が有意に高くなったが、PLIN1、PLIN rs8179043では臨床的指標と遺伝型との間には有意な関連が認められなかった。また、転写領域のSNPであるLIPEではCG遺伝型の血清中性脂肪濃度が有意に低くなった。生活習慣(食生活)との県連性より、LIPEの転写をコントロールすることで中性脂肪のコントロールの可能性が示唆された。〈BR〉
  • 中田 理恵子, 勝川 路子, 井上 裕康
    セッションID: 2C-5
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    目的 レスベラトロールは、赤ワインに含まれるポリフェノールで、「フレンチパラドックス」に関与する分子として注目されている。一方、核内受容体PPARは、α,β/δ,γの3種のサブタイプが存在しており、生活習慣病予防の標的分子として認められている。我々はこれまでに、レスベラトロールがPPARα,β/δ,γを選択的に活性化することを細胞培養系で明らかにした。そこで今回は、野生型およびPPARα欠損型マウスにレスベラトロールを摂取させ、PPARαを介した個体レベルでの作用機構について検討した。
    方法 雄性(11~12週齢)の野生型(129系)およびPPARα欠損型マウスに、レスベラトロールを0,0.02,0.04%添加したAIN93G基本配合食をそれぞれ4週間摂取させた。摂取後の組織からRNAを抽出し、定量RT-PCR法により遺伝子発現の変動を調べた。
    結果 野生型マウスの肝臓では、レスベラトロールの摂取により、PPAR応答配列を持つアシルCoAオキシダーゼ,Cyp4a14,脂肪酸結合タンパク質1,長鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼの各遺伝子発現が、有意に上昇した。一方、PPARα欠損型マウスでは、発現の増加は見られなかった。以上より、レスベラトロールは脂肪酸の輸送や燃焼に関与する遺伝子の発現を、PPARα依存的に誘導することが個体レベルで明らかとなり、この分子作用機構を介して、生活習慣病予防に寄与する可能性が示唆された。
    (研究協力者:田村恵美,小菅由希子,刈谷 斐)
  • 勝川 路子, 中田 理恵子, 井上 裕康
    セッションID: 2C-6
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    目的 機能性食品成分による生活習慣病予防の分子機構解明を目指して、我々はプロスタグランジン産生の律速酵素である誘導型シクロオキシゲナーゼ(COX-2)の発現抑制、そしてその発現抑制に関与する核内受容体PPAR活性化を指標にした研究を続けている。今までに赤ワインに含まれるポリフェノール・レスベラトロールがPPARα活性化を介して脳保護効果を持つことを報告してきた。また、種々の植物油の機能性を評価したところ、タイム油等の精油においてCOX-2の発現抑制が見出され(1)、さらにCOX-2発現抑制およびPPAR活性化の効果をもつタイム油の成分を同定した。今回は、タイム油以外の精油およびその成分について、両効果を検討したので報告する。
    方法 COX-2発現抑制は、ウシ血管内皮細胞にCOX-2レポーターベクター・PPARγ発現ベクターを共導入した後、種々の精油及びその成分を添加し、LPS刺激によるCOX-2発現誘導に対する抑制効果を測定した。3種類のPPAR(α, β/δ, γ)の活性化は、同細胞にPPREレポーターベクターとそれぞれのPPAR発現ベクターを共導入して測定した。
    結果 バラ油においてCOX-2発現抑制、PPARα,γの活性化が認められ、その効果にはバラ油の2種類の成分が主に関与することを見出した。
    (1) 堀田真理子、中田理恵子、井上裕康 日本家政学会誌 59, 373-378 (2008)
  • 稗 万美子, 下野 真未, 塚本 幾代
    セッションID: 2C-7
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    [目的]抗酸化作用を有するクルクミン(Cur)がストレプトゾトシン(STZ)誘導糖尿病時の骨代謝に及ぼす影響を検討した。
    [方法]ラットを対照群、STZを投与したSTZ群、STZ投与後4日目からCur 0.5%添加粉末飼料を自由摂取させたCur群の3群に分けた。STZ投与から2週間飼育後、血漿Glucose(Glu)濃度、骨形成の指標として血漿Osteocalcin(OC)濃度、骨のアルカリホスファターゼ(ALP)活性、骨吸収の指標として骨の酒石酸耐性酸ホスファターゼ(TRAP)活性、Cathepsin K(CK)活性を測定した。また、骨からRNAを抽出し、RT-PCR 法によって、破骨細胞分化因子RANKLの受容体であるRANK、破骨細胞分化に必須である転写因子c-FosのmRNAレベルを測定した。
    [結果]STZ群、Cur群のGlu濃度は対照群より有意に上昇した。STZ群において、対照群に比してOC濃度、ALP活性は有意に減少し、TRAP、CK活性は有意に増加した。Cur群において、OC濃度、ALP活性はSTZ群と有意差が認められなかったが、TRAP、CK活性はSTZ群に比して有意に減少し、対照群と同レベルまで回復した。STZ群のRANKとc-FosのmRNAレベルは対照群に比して有意に増加した。Cur投与によって、RANK mRNAレベルに変化は認められなかったが、c-Fos mRNAレベルは有意に減少し、対照群と同レベルまで回復した。以上の結果から、CurはSTZ誘導糖尿病においてc-Fosの発現上昇を阻害し、破骨細胞形成を抑制することによって、骨吸収活性上昇を抑制することが示唆された。
  • 萱島 知子, 金川 沙夜, 松原 主典
    セッションID: 2C-8
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    【目的】血管新生は,がん・糖尿病性網膜症・認知症をはじめとする様々な疾病と関連している。食品由来の血管新生抑制物質は,これらの疾病を予防する機能性成分としての可能性を有する。一方,血圧降下剤が直接または間接的に血管新生を抑制し,がんや認知症のリスクを低減することが近年明らかになりつつある。そこで,卵由来降圧ペプチドの血管新生に対する影響を検討した。 【方法】経口投与により血圧降下作用が報告されている卵白由来のペプチドArg-Ala-Asp-His-Pro-Phe(EP1)及びTyr-Ala-Glu-Glu-Arg-Tyr-Pro-Ile-Leu(EP2)を合成して実験に用いた。血管新生抑制作用については,ラット動脈片をコラーゲンゲル中で培養するex vivo血管新生モデルにて評価した。またヒト臍帯静脈由来血管内皮細胞(HUVEC)を用いたin vitro血管新生モデルにて,血管内皮細胞の遊走,増殖,血管様構造形成への影響を検討した。 【結果】EP1及び2はex vivoモデルでの微小血管形成を10 μMで10%程度,100 μMで20%程度抑制した。EP1と2はHUVECの遊走を有意に抑制し(25μM≧),100 μMで40%程度抑制した。さらにEP2のN末端及びC末端の3アミノ酸残基を除去した各ペプチドもEP2とほぼ同様の抑制効果を示した。一方,細胞増殖と血管様構造形成に対してはEP1及び2の有意な抑制効果は認められなかった。以上より,卵由来降圧ペプチドの血管新生への影響として,血管内皮細胞の遊走を特異的に抑制することが明らかになり,特にEP2については中央部分の3アミノ酸残基が重要であることが示唆された。
  • 辻 美智子, 長野 宏子, 下山田 真, 柳 陳堅, 諸 葛健
    セッションID: 2D-1
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    【目的】大豆は微生物による発酵や熟成の過程を経ると,消化吸収率も高くなり,旨味増加や食感変化等が起こる。このような大豆の発酵食品は,照葉樹林帯の中心である中国をはじめ,東南アジアで食されている。中国の大豆発酵食品「豆豉」は,塩味が強く,旨味があり,中国では調味料として利用されている。本研究では,豆豉のタンパク質挙動について検討するとともに,プロテアーゼ産生微生物を分離・同定し,その微生物の産生酵素と大豆タンパク質分解の関係を明らかにすることを目的とした。
    【方法】実験試料の豆豉は,2005年に中国雲南省の西双版納にて採集した5試料である。(1)豆豉のタンパク質挙動(タンパク質含量,遊離アミノ酸含量および組成,SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動,抗原抗体反応),(2)豆豉に存在する微生物の分離および同定(API50CH試験,16S rDNA解析),(3)分離した微生物の産生酵素による大豆タンパク質の分解挙動,について検討を行った。
    【結果】(1)豆豉はグルタミン酸,ロイシンを多く含み,SDS-PAGEでは試料によって分解パターンは異なるが,20kDa付近にバンドが多く検出された。(2)豆豉から微生物を純粋分離することにより50菌株を得,プロテアーゼ活性(ゼラチン液化試験)の高い7菌株をスクリーニングした。これらはすべてグラム陽性の桿菌であり,そのうち5菌株に耐塩性が認められた。各菌株から粗酵素液を調製し,アゾカゼインを基質としたときのプロテアーゼ活性において,最も活性の高い菌株を選択した。この微生物を16S rDNA解析したところBacillus subtilisであると同定された。(3)B.subtilisの粗酵素(プロテアーゼ)を大豆タンパク質に作用させると,反応時間とともに,タンパク質の高分子部分が分解され低分子化し,遊離アミノ酸ではバリン,ロイシン,グルタミン酸の増加が認められた。
  • 中村 洋
    セッションID: 2D-2
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目 的】食料自給率向上のための小麦品種開発として、めん適性に優れる品種開発は特に重要であるが、日本のめんにおいて求められているめん適性は食感が重要なポイントで、主にめん官能評価試験(評点)および成分特性値により評価、選抜を行っている。そこで、個々の官能評価値がめん適性に及ぼす影響、関連についてのデータ解析を行ったので報告する。 【方法】めん適性の解析事例として、小麦品種改良における成分分析値、めん官能評価試験データについて、蛋白質含量、澱粉アミロース含量、アミログラフ値(最高粘度、ブレークダウン値)、めん官能評価評点{色、外観、食感(ゆでめんの固さ、粘弾性、滑らかさ、食味、評点の合計点数}を測定し、それぞれの成分分析値と官能評価評点値データとの関係を解析した。めん適性は官能評価の合計評点とした。 【結 果】めん適性は、ゆでめんの粘弾性、滑らかさ、固さ、ブレークダウン・食味、澱粉アミロース含量、アミログラフ最高粘度、蛋白質含量の順で相関が高かった。ゆでめんの粘弾性がめん適性と最も高い相関を示し、また、蛋白質含量、澱粉アミロース含量、アミログラフ値、他の官能評価評点におけるすべての特性と高い相関が認められた。めん適性は、成分特性値、官能評価における各評点項目が密接に関連していたが、ゆでめんの粘弾性に優れないとめん適性が明らかに低くなるので、ゆでめんの粘弾性が品種改良における最も重要な選抜指標になることがわかった。
  • 水野 時子, 山田 幸二
    セッションID: 2D-3
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】福島県会津地方には、江戸時代から栽培され、皮が固いため長期保存ができると言われている「会津小菊カボチャ」がある。近年、地産地消や伝統野菜に加え、健康志向から食品に含まれている機能性成分についての関心が高まっている。とくにカボチャは、血圧上昇抑制や精神安定作用等が知られているガンマーアミノ酪酸(GABA)の生成酵素活性が高いことが知られている。そこで、伝統野菜である「会津小菊カボチャ」の栄養成分とGABAを含む遊離アミノ酸組成について検討した。
    【方法】試料には、会津の生産農家より入手した会津小菊カボチャ(小菊)と都カボチャ(都)、市販の北海道産カボチャ「雪化粧」およびメキシコ産カボチャの4種を用いた。一般成分は常法、カロテン含量は高速液体クロマトグラフ法、ミネラル成分はICP発光分析法、遊離アミノ酸は75%エタノールを用いて還流抽出(80℃、20分)を行い、日立L-8800型高速アミノ酸自動分析計の生体液分析法で分析した。
    【結果】「小菊」は「都」に比べて、水分、タンパク質、脂質含量は低値で、アルファーカロテンは約6倍、ベーターカロテンは約1/5倍、鉄は約3倍であった。主要な遊離アミノ酸は、4種ともGABA、グルタミン酸、アスパラギン酸、グルタミンであった。GABA含量は4種に顕著な違いは見られなかったが、遊離アミノ酸総量に占めるGABAの割合は「小菊」が最も高かった。0.1%のグルタミン酸溶液を加え40℃に1・2・3時間放置した結果、4種のカボチャとも1時間でグルタミン酸は顕著に減少しGABAは顕著に増加した。「小菊」はグルタミン酸からGABAへの変換率が高かった。
  • 新海 シズ, 竹山 恵美子, 福島 正子
    セッションID: 2D-4
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    [目的]市田柿は長野県飯田・下伊那地方に多く見られる在来の渋柿であり,果肉成分や脱渋機構は明らかにされている.一方,柿の葉はラジカル消去作用,アレルギー抑制作用などが明らかにされているが市田柿の葉においての報告はほとんどみられない.そこで,市田柿の葉の有用性を探るために抗酸化力および抗菌効果について検討した. [方法] 試料は,飯田女子短期大学構内の市田柿の葉を5月から9月にかけて採取し,蒸留水で洗浄後凍結乾燥した.その乾燥葉に100倍量の沸騰蒸留水を加え5分抽出後,No.2のろ紙で濾過し抗酸化試験に用いた.抗菌試験は7月に採取した葉を用いて,抽出時間10分および20分で行った.抗酸化力は抗酸化能測定キットを用い,発生したCu+をマイクロプレートリーダー(490nm)で測定した.抗菌試験は Escherichia coli および Staphylococcus aureus 株を用い,カップ法で行った.また,試料に含まれるポリフェノール含量はFolin-Denis法で定量した. [結果] 市田柿の葉の熱水抽出物の抗酸化力は,5・6月に採取した葉がおよそ1,300μmol/L( Cu還元力)と高く,8・9月に採取した葉は814,853μmol/Lと低下し5・6月の葉の6割程度であった.また,抗菌試験においてはStaphylococcus aureusに対して抗菌効果が見られたが,Escherichia coli に対しての抗菌効果はあまりみられなかった.ポリフェノール含量は,柿の葉抽出時間20分のものが2,016μg/mlであり10分のものより多かった.
  • 韓 順子, 佐々木 舞, 中川 瞳, 名倉 秀子
    セッションID: 2D-5
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】食料の60%を海外からの輸入に依存している日本の食料自給率は、主要先進国のなかでも最低の水準といわれている。このような状況のなか、平成20年より食料自給率を向上させるための運動として『FOOD ACTION NIPPON』が展開され、その取り組みの一つとして国内産食材を使ったメニューの開発が提唱されている。本研究は、献立作成において担当者が食料自給率を高めるための工夫や配慮が必要であると考え、管理栄養士養成施設で実習した昼食の献立から食料自給率に及ぼす要因について検討した。【方法】平成17年~19年の給食経営管理実習の授業で作成した41種類の昼食献立を対象に主材料を魚・肉・豆および卵の3パターンに分類した。食料自給率は、農林水産省の料理自給率計算ソフトを用いて算出し、料理様式別、料理区分別、主材料別に集計を行った。統計処理はχ2検定、平均値の差の検定、ダミー変数を用いた重回帰分析を行った。統計ソフトはSPSS 16.0を用いた。【結果】3観測年に出現した料理様式の頻度には有意な差がみられず、年度による偏りはなかった。献立の自給率は15.0~85.7%を示した。料理様式別による献立の自給率は、洋風・中国風より和風が高く、有意差が認められた。主材料別による献立の自給率では、魚が肉および豆・卵よりも有意に高かった。自給率に影響を及ぼす要因を料理様式、料理区分、主材料から検討した結果、自給率を決定づける最も大きな因子は主食であり、次いで主材料、主菜、副菜となった。一般に献立作成の要件とされるのは栄養・嗜好・経済面などであるが今後、積極的に食料自給率を上げていくためには、本研究の結果を念頭に入れた献立計画が有効であると思われた。
  • 宮本 ひとみ, 吾郷 万里子, 山根 千弘, 瀬口 正晴, 岡島 邦彦
    セッションID: 2D-6
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    目的:セルロースに爆砕などの物理的処理を行うと,セルロースが水酸化ナトリウム水溶液に溶解する。この溶解方法は水酸化ナトリウムと水しか使用していないため,得られた成型体は法的に可食であり,世界で唯一の可食性セルロース成型体と言える。また得られた成型体は極めて高い保水性・保油性を有することからセルロース/コーンスターチ複合体はセキセル™として製造販売されていた。このコーンスターチと構造や構成が明らかな分子量を調整されたアミロースを用い,複合体のより広範な利用を目的とした新機能の発見のため,その構造解析など系統的な検討を行ったので報告する。
    方法:爆砕処理したパルプを水酸化ナトリウム水溶液に溶解させた。同様に,コーンスターチと分子量を調整された江崎グリコ(株)のアミロース(分子量(Mw) 5,000,20,000,200,000)を水酸化ナトリウム水溶液に溶解した。それぞれの水溶液を所定の割合で混合した後,この溶液をガラス板上でキャストして膜とし,複合体を得た。
    結果:複合体の凝固•水洗過程での重量減少は分子量の低いアミロース(Mw=5,000)を用いた複合体ではやや高かったものの,他の複合体では10wt%程度で一旦複合体になると熱水中でもデンプンの溶出はほとんど見られなかった。一方,X線回折はセルロース/コーンスターチ複合体では,結晶化度の低下やピーク位置のシフトがほとんどないのに対し,セルロース/アミロース複合体は,アミロースの分子量の増加に伴った明らかな結晶化度の低下とセルロースの(1-10)結晶面のピークトップ位置の広角側へのシフト(面間隔の減少)が観察された。NMR測定からセルロース/アミロース(Mw=200,000)複合体は部分的に相溶していることが推察された。
  • 岩崎 裕子, 高橋 智子, 大越 ひろ, 西成 勝好
    セッションID: 2D-7
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    目的 現在多くのトロミ調整食品が開発、販売されているが、メーカーごとにトロミ表現が異なっているため使用者にとっては分かりにくい。近年、統一化の試みが行われているが、明確な表現はまだ確立されていない。そこで本研究では、トロミ調整食品を添加した飲料の力学的特性より、市販ゾル状食品との適合性を検討した。
    方法 試料はトロミ調整食品を蒸留水に添加し調製したものと、市販のゾル状食品とした。トロミ調整食品は、キサンタンガム系及びグアーガム系については2%・3%を、デンプン系試料は4%・6%を添加した。調製した濃度範囲の試料では、はちみつ状及びヨーグルト状などという表現が多く用いられていたため、この2つをモデルとした。そこで、非経口型官能評価を行い、モデル試料とトロミ調整食品との比較を行った。客観的測定として、テクスチャー測定、流動測定、動的粘弾性測定を行い、検討を行った。なお、市販ゾル状食品についてはトロミ調整食品と同様に、60回/分撹拌後、20℃恒温器に1時間静置し、試料とした。
    結果 官能評価の結果、はちみつ状と標記された試料はいずれも類似性が認められなかったが、ヨーグルト状と標記されたキサンタンガム系試料は、ヨーグルトと類似していると評価された。また、「傾けた時の流れやすさ」「撹拌した時の抵抗」は、テクスチャー特性の硬さ、付着性、及び流動特性の粘性率と相関関係が認められた。しかし硬さと付着性だけでは、市販食品のうち、はちみつなどのニュートン流体を区別することができない。流動性指数、粘性率をマッピングすることにより、ニュートン流体の区別がされ、官能評価の結果を裏付けることができるのではないかと示唆された。
  • 佐川 敦子, 小暮 英梨子, 中島 綾, 村上 伊都, 小林 奈央樹, 神山 かおる, 森高 初惠
    セッションID: 2D-8
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    目的食品を嚥下するためには、咀嚼により食片サイズを小さくすること、唾液との混合により食物の表面が滑らかになることなどの条件を満たす必要がある。また、咀嚼機能が低下している人に対しては食塊をまとまりやすくする増粘剤が利用されることが多い。これまでに、増粘剤が食物の破砕に与える影響について検討した例はみられない。そこで、本研究では前報1)に引き続き、増粘剤に固形試料を分散したモデル試料を調製し、固形試料の咀嚼に及ぼす増粘剤の影響ついて数値的に解析を行い、物性特性、官能評価や食塊の移動速度とあわせて検討した。
    方法固形試料には10×10×20mm3に切断した魚肉ソーセージ(日本水産_(株)_)を、分散媒には貯蔵弾性率および硬さが同程度の増粘剤(キサンタンガム、グアーガム、馬鈴薯澱粉)と水を用い、両試料を0、25、50、75、100w/w%混合して試料とした。1回の咀嚼量は6gとし、被験者は20歳代10名とした。固形試料の食片サイズ解析は画像処理ソフトImage J、統計ソフトRを用い、咽頭部での食塊の移動については超音波画像診断装置(東芝メディカル社製)を用いて測定した。また、テクスチャー特性をレオナー(山電製)により測定し、あわせて官能評価を行った。
    結果咀嚼後の食片サイズが小さく、咽頭部での食塊の移動速度を最も抑制する効果があるのはキサンタンガム25%添加試料であった。官能評価では分散媒の添加割合が高いキサンタンガム75%添加試料が最も噛みにくいと評価され、水添加試料は分散媒無添加試料より噛みにくいと評価された。
    1)佐川ら;日本家政学会第60回大会,固体分散ペーストの咽頭部における最大通過速度と摂食量の関係,p.165(2008)
  • 長野 隆男
    セッションID: 2E-1
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    〔目的〕豆腐の凝固には,大豆タンパク質の主要成分である11Sが最も重要であり,そのゲル形成にはS-S結合の寄与が大きいと報告されている。本研究では,11Sのゲル形成におけるS-S結合の役割を明らかにするため,11Sと分離大豆タンパク質(SPI)のゲル形成性とゲル構造を比較検討した。
    〔方法〕ゲルは,11SまたはSPI溶液(3.5%)を96℃,10分間加熱した後に室温に冷却し,凝固剤を加えて70℃,30分間加熱して形成させた。S-S結合を切断する試薬として2-メルカプトエタノール(2ME)を,タンパク質を蛍光標識する試薬としてローダミンBを用いた。ゲル形成性は動的粘弾性測定装置を用い,ゲル構造は共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM)を使用して調べた。
    〔結果〕NaCl濃度がゲル形成性に与える影響について動的粘弾性測定法を用いて検討し,11Sは0.2M,SPIは0.15Mが適切なNaCl濃度と考えられた。その条件におけるゲルのG’は,11SがSPIよりも約1.8倍高い値を示した。次に,ゲル形成性に与えるS-S結合の役割を調べるため2ME添加の影響を検討した。その結果,2MEの添加濃度が高くなるに従い,G’は11Sのゲルで大きく低下したがSPIのゲルでは大きな低下は見られず,11SとSPIのゲルでのG’の差は小さくなった。さらに,CLSMを用いてゲル構造を観察した結果,11Sゲルの網目の平均密度は2MEの添加で低くなることが示された。以上の結果から,11SはSPIよりも硬いゲルを形成し,その分子間力にはS-S結合の寄与が大きいこと,S-S結合は11Sゲルの網目の密度を高くしていることが示された。
  • 桑田 寛子, 治部 祐里, 寺本 あい, 槙尾 幸子, 林 真愉美, 渕上 倫子
    セッションID: 2E-2
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    目的
    野菜や果実の煮熟軟化にはペクチンの挙動が大きく影響する。本研究ではユズを用いて、クエン酸浸漬、高圧力処理、加熱処理によるペクチンの溶出と、果皮の軟化の関係について検討した。
    方法
    ユズの外果皮、中果皮、内果皮、果肉の各部位ごとの重量、水分含量、pHを測定した。ユズの外果皮を3 mm幅に切り、pH 2.0、2.5、2.7のクエン酸浸漬、500 MPa 30分高圧力処理、100℃10分加熱処理を行った。処理後の外果皮の硬さをクリープメータで破断強度解析し、組織構造をクライオ走査電子顕微鏡で観察した。生および処理後の各部位よりペクチン質を分別抽出し、ガラクツロン酸量を定量した。また、ペクチン以外の食物繊維量も定量した。
    結果
     ユズ外果皮をpH 2.0、2.5、2.7のクエン酸溶液に浸漬すると、pH 2.0が最も軟化しやすく、浸漬後30分である程度軟化したが、pH 2.5、2.7では1~2時間後に軟化が始まった。また、浸漬時間が長く、pHが低いほど軟化が促進した。加熱処理やクエン酸浸漬によって細胞壁に緩みが生じ、軟化したが、高圧力処理では軟化はわずかで、細胞壁の緩みも少なかった。ペクチン量は中果皮>外果皮>内果皮>果肉の順に多く、どの部位も高メトキシルペクチンの割合が多かった。外果皮をpH 2.0に24時間浸すと、約30 %、pH 2.7では24%のペクチンが溶出した。加熱すると、いずれの部位も生、高圧力処理したものより低分子の水可溶性ペクチンの割合が増加した。果皮のpHが約3~4、ゆで汁のpHが4.02であったので、β-脱離ではなく、加水分解により低分子化したものと思われる。
  • 合谷 祥一
    セッションID: 2E-3
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    【目的】平均粒径が小さな微細O/Wエマルションは、クリーミングしにくく安定であるなど、有用な性質を有している。その調製には高圧ホモジナイザーなどを用いる物理的乳化法と、乳化剤/油/水の状態変化を利用する省エネな化学的乳化法がある。我々は、食品用乳化剤を用いた省エネな化学的乳化法により微細なエマルションの調製を試みている。今回は、ポリグリセリン脂肪酸エステル系における乳化と状態図の関係について報告する。 【方法】ポリグリセリン脂肪酸エステルとしてデカグリセリンモノカプリル酸エステル(MCDG)、デカグリセリンモノラウリン酸エステル(MLDG)及びヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル(MLHG)を用いた。  ポリグリセリン脂肪酸エステルと水を混合して一晩放置後、食用油を滴下しながらアンカー型撹拌翼で撹拌し、乳化した。予め撹拌翼の回転速度の影響を調べたところ、回転速度50rpmから150rpmまでは回転速度の上昇により平均粒径は低下したが、150rpm以上では変化が見られなくなった。以後、回転速度200rpmで実験した。エマルションの平均粒径はレーザー回折式粒度分布測定装置により求めた。乳化剤/油/水の状態は目視、偏光顕微鏡観察、自作の偏光観測装置により判断した。 【結果と考察】乳化剤の中ではMLDGを用いると最も微細なO/Wエマルションが調製できた。相図から、MCDGは液晶相をほとんど形成しないこと、また、MLHGとMLDGは液晶を形成するが、MLHGの液晶が強固で撹拌が不十分になることが微細エマルションを調製できない理由と考えられた。調製されたエマルションの平均粒径とMLDGの相状態及び乳化における課程から、ミセル相だけを経由して乳化されると平均粒径は0.9マイクロメートル以上であり、液晶を含む系を経由すると0.9マイクロメートル以下となり、さらに、液晶を多く含む相を通過すると平均粒径マイクロメートル以下のエマルションが調製されることが分かった。
  • 野村 知未, 杉山 寿美, 保井 りさ, 田中 すみれ, 多田 美香, 石永 正隆
    セッションID: 2E-4
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    【目的】従来のプディングは全卵・牛乳・砂糖が材料であるが、現在では全卵や牛乳の一部または全てを置換したプディングが多く販売されている。このプディングの多くは上層と下層に分かれており、食感が上層と下層で異なると言われている。本研究ではこのことが卵黄と生クリームに起因すると推察し、上層と下層のレオロジー測定,脂質成分量測定を行った。
    【方法】生クリーム(乳脂肪分48%),牛乳,砂糖によりプディングを調製した。生クリームと牛乳を1:1とし、卵黄が生クリーム重量の40%をプディング(A),12%を(B)とし、比較のため卵白40%を(C)とした。さらに(A)の牛乳を全て生クリームに置換した(A*)も調製した。静的粘弾性測定 (流動曲線),動的粘弾性測定(応力依存,周波数依存)はレオストレス6000(Thermo HAAKE)で、直径35mmのコーンプレート1°を用いて行った。また(A)(B)は脂質抽出も行い、リン脂質中リン量,コレステロールを測定した。
    【結果と考察】流動曲線履歴より(B)はチキソトロピー性を示さなかった。卵黄配合(A)と卵白配合(C)は上層と下層ともに見かけの粘度ηに差は認められなかった。しかし応力依存測定では(C)と比較して(A)のG’とG”の値およびそれらの差が大きく線形領域も広かった。また、卵黄配合の(A)(B)では(A)でG’とG”が逆転するτは大きかった。さらにプディング (A*)の上層はG’とG”の値およびそれらの差が著しく大きく、下層では(A)とあまり変わらなかった。周波数依存測定から、卵黄の増加や加熱によりG’とG”の差が大きくなり、ゲル的になることが確認された。以上のことから卵黄は上層と下層の、生クリーム量は上層の構造形成に関与していると示唆された。また(A)(B)の脂質分布の検討の結果、上層と下層のリン脂質リン量の差が小さい一方、コレステロールは下層に多かった。
  • 平尾 和子, 町田 優子, 梅國 智子, 近堂 知子, 貝沼 やす子
    セッションID: 2E-5
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    【目的】 無洗米は洗米せずに炊飯できるため,水溶性ビタミンの損失が少なく研ぐ手間が省け,水質汚染を防ぎ環境保全に役立つという利点がある. 本研究では,平成18年度産の3種の米を用いて無洗米を調製し,それらの米粒の性状,米飯の理化学的特性および官能評価の結果から,保温保存による影響の少ない品種,加水倍率,炊飯方法を検討した.
    【方法】 試料はあさひのゆめ(栃木),ほしのゆめ(北海道)およびひとめぼれ(宮城) の3種の無洗米および普通精米の計6種とした. 無洗米の炊飯は電子炊飯ジャーを用いて普通炊きおよび玄米炊きを行い,普通炊きは洗米した場合も検討した. 米粒は粒径,吸水率,走査型電子顕微鏡観察を行い,米飯の物性はテンシプレッサーを用いて集団粒法により測定した. 保温保存による物性の変化は変化度として求め,順位法により官能評価を行った.
    【結果】 無洗米3種の吸水率は25℃ 45分間で平衡に達し,その値は約23~24%であった. 保温保存における無洗米飯の変化度をみると,(1)加水倍率ではあさひのゆめ,ひとめぼれは1.6倍加水,ほしのゆめは1.7倍加水で変化度が小さく,(2)品種別ではあさひのゆめの変化度が小さかった。(3)炊飯方法では玄米炊飯法,洗浄普通炊飯法で得られた無洗米飯の変化度が小さく,保温保存による影響を受けにくいことが明らかとなった. 官能評価では,ひとめぼれは無洗米,普通精米ともに好まれ,ほしのゆめは無洗米処理により普通精米よりも食味評価が向上した. 加水倍率1.5~1.6倍ではひとめぼれの品種が好まれ,炊飯方法間では無洗米を洗米してから炊飯する洗浄普通炊飯法が有意に好まれた. 保温保存による物性の変化が少ない玄米炊飯法による米飯は,つやはよいが,軟らかく,好まれなかった.
  • 水 珠子, 宮下 朋子, 長尾 慶子
    セッションID: 2E-6
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    【目的】生クリームの泡立て程度を変えて調製した起泡クリームの物性と分散気泡の状態とが内部熱移動速度に及ぼす影響を追跡した。
    【方法】材料は純生クリームとし、家庭用ハンドミキサーを用い、回転速度950/rpmとし、攪拌時間を変えて泡立て程度の異なる4種類 (泡立て度0,60,80および100%) の起泡生クリームを調製した。それらの熱伝導率、定圧比熱容量および密度を実測し、熱拡散率を算出した。同時に底面積1250㎟、高さ50mmの加熱・冷却用金属容器に試料を入れ、40~5℃の範囲で底面から加熱・冷却した際の内部一次元方向0,1,3,5,7および10mm各位置での昇温(加熱)ならびに下降(冷却)曲線より遅延時間定数τh ( x ) ならびに緩和時間定数τc ( x ) を求めた。比重およびオーバーランの測定より気泡含有率の算出、粘度測定での流動曲線からCasson降伏値および見かけの粘度の算出、検鏡による含有気泡の分散状況を観察した。
    【結果】検鏡、比重およびオーバーラン測定の結果、最大気泡含有率87.4%を示し、泡立て度を高めることで細かい気泡が均質に分散した。粘度測定の結果、起泡生クリームは降伏値を有する塑性流動体であり、泡立て度を高めるとCasson降伏値、見かけの粘度共に増大した。熱伝導率および密度は泡立て度の高い方が低く、加熱温度が高い方が高値を示した。比熱容量は逆の傾向を示した。熱拡散率および加熱時の遅延時間定数τh ( x ) ならびに冷却時の緩和時間定数τc ( x ) の逆数も泡立て度に依存し、泡立て度100%で最小値を示した。すなわち、泡立て度100%の起泡生クリームは、内部熱移動速度が緩慢で、加熱・冷却時間が長くなることが明らかとなった。
  • 喜多 記子, 長尾 慶子
    セッションID: 2E-7
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    【目的】昨今、健康と安全から天然酵母パンへの注目が高まっており、ドライイーストにはない独特のフレーバーと食感が好まれている。これら天然酵母は嗜好性面だけではなく、機能性面にも影響を及ぼしていると考えられる。そこで今回は市販のドライイーストを対照にレーズン、米こうじ、ヨーグルトより得られた発酵液を用いてスペルト小麦並びに普通小麦でパンを焼成し、その物性と抗酸化性に及ぼす影響について検討した。
    【方法】発酵液はレーズン、プレーンヨーグルトには各々一定量の砂糖と滅菌水を加え、米こうじには粥と滅菌水を加え、密封瓶にて、30℃、65%rhで72h発酵させた。その発酵液を小麦粉(スペルト小麦又は普通小麦)、砂糖、塩に加え、よく混捏し、一次発酵を行った。その後25gずつに成型し、二次発酵後のドウのテクスチャー測定を行った。次いでスチームコンベクションオーブン(180℃、スチーム80%3min→0%5min)にて焼成した各パンの比容積及び破断試験を行った。さらに上記焼成パンを凍結乾燥後、水及びエタノールで抽出した各部と発酵液について、化学発光(ケミルミネッセンス)法を用いてペルオキシラジカル捕捉活性を測定した。
    【結果】二次発酵後のドウの圧縮応力はドライイーストとこうじで低値を示した。焼成パンの比容積はドライイーストに比べいずれの発酵液を用いたパンもその値は低くなった。破断エネルギーはいずれの小麦粉もレーズン発酵液で特に大となった。発酵液の抗酸化能はレーズンとこうじが最も高く、次いでドライイーストとなり、ヨーグルトは最も低くなった。パンの抗酸化能はいずれのパンもスペルト小麦で高く、発酵液の種類によっても違いがみられた。
  • 平野 利恵, 長野 宏子
    セッションID: 2E-8
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    【目的】前報では、東南アジアにおける伝統的な発酵食品である発酵米麺カノンチーンを取り上げ、その製造時に微生物酵素が作用し、米たんぱく質の遊離アミノ酸の増加、たんぱく質分解及び低アレルゲン化していることを明らかとした。今回、東南アジアで食されている米と果物の調理を参考に、果物に含まれる酵素も同様に米たんぱく質に作用することが期待できると考えた。そこで、本研究では米にキウイフルーツを加え、浸漬・炊飯し、キウイフルーツプロテアーゼの米たんぱく質への作用を検討した。
    【方法】(1)洗米コシヒカリにキウイフルーツを混合し、時間と温度の条件を変えて浸漬した。その後電気釜にて炊飯し、飯とした。(2)飯を凍結乾燥し、粉砕した。(3)0.5MMaClにて抽出し塩可溶画分の試料とし、残渣をUrea・Trisにて抽出し塩不溶画分の試料とした。米の浸漬時にpH測定を行い、各抽出試料を用いて、たんぱく質含量測定(Lowry法)、遊離アミノ酸含量測定(ニンヒドリン法)、SDS電気泳動実験を行った。
    【結果】キウイフルーツを加え、浸漬したものはpHが4.0~4.5程度であった。塩可溶・塩不溶たんぱく質ともに、浸漬時間が長くなるとたんぱく質含量・遊離アミノ酸含量ともに増加した。このことは、キウイフルーツプロテアーゼによって、たんぱく質が可溶化しやすくなったこと、またたんぱく質が分解され遊離アミノ酸が増加したと考えられる。SDS電気泳動実験より、塩可溶・塩不溶たんぱく質ともに時間の経過によってたんぱく質の分解が進んでいた。
  • 左右の送り方向による差異
    鎌田 佳伸, 千葉 真澄, 亘 麻希, 江端 美和
    セッションID: 2F-1
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    目的:刺繍ミシンの縫い機構は本縫いミシンと同じであるが、ステッチ長の変化が大きく、前後・左右・斜めと種々の方向に縫いが行われるので縫いは極めて過酷である。縫い方向で縫目形成状況が変わるとすれば、それは光沢にも影響を及ぼすことが考えられる。したがって、よりよい光沢を得るためには先ずは縫目形成の実態調査が必要であると考える。本研究では、送り方向による縫目形成の差異について、糸締まり率と動的上糸張力の測定から検討した。なお、刺繍枠の送り方向は左右に限定した。刺繍ミシンはジャノメメモリークラフト10001、設計用ソフトはデジタイザープロ、刺繍糸は♯50ジャノメ刺繍糸(アクリル、濃い緑色(品番206))を用いた。実験要因にはステッチ長と縫い速度を採用した。
    結果:糸締まり率:本研究において縫目は下締まり状態にある。その中で、枠が左へ移動する時は刺繍として適正な縫目形成状態にあると思われるのに対して、右へ移動する時は過剰に縫い目がゆるんでいた。これは顕微鏡観察でも確認されている。ピーク引締張力の変動は刺繍枠が左に移動する場合に対して右方向に動く場合は大きい。したがって、枠が右よりも左へ移動する時の方が安定した良い縫目形成となる。なお、ピーク引締張力の大きさの左右差はステッチと縫い速度の両者で差が認められなかった。
    結論:糸締まりの左右差は縫い方の違いに由来すると考えられる。すなわち、枠が左へ移動する時のパーフェクトステッチに対して、右に移動する時のヒッチステッチでは上糸張力による下糸の引き上げが不十分となり糸調子皿から余分な上糸の引き入れが行われるために上糸がゆるむと推測される。
  • 松本 朋子, 高橋 佐智子, 高部 啓子
    セッションID: 2F-2
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    目的 日本では高齢化率が2007年に21%を超えその後も急速に増加している。つまり5人に1人が65歳以上の時代を迎え、今後、高齢者を対象とした既製服市場が拡大してくると予測される。一方、現在の既製服生産では購買力が高いと考えられている若年または中年を対象とする製品を生産の中心に据える傾向が強い。従来の研究から、加齢に伴い人体形状は寸法的に変化すること、特に腰腹部の変化が激しいことが指摘されている。しかし高齢者の立体形状に関しては未だ十分なデータの蓄積がされておらず、裁断用ボディの開発も十分に行われていない。そこで本研究では高齢女性を対象に変化の大きい腰腹部の立体形状について若年女性との比較から検討した。
    方法 2007年12月~2008年2月、7月、9月に、65歳以上の高齢女性ボランティア90名および女子大生ボランティア103名の直接計測11項目および三次元計測を行った。三次元計測にはコニカミノルタ製VIVID910を2台と回転台を使用し、4回計測、8枚の画像を貼り合わせ、全周画像を作成した。この画像上で3D-Rugleを用いて、点計測、体表長と断面計測を行い、立体形状の観察や横断面重合図の形状、直接計測値の分析等から高齢女性と若年女性を比較し、腰腹部立体形状を検討した。
    結果 (1)腰腹部立体形状の平均形状を明らかにした。特に高齢女性で腹部前面の突出、側部上方での張り出し、後面大殿筋の衰えによる腰部の扁平化が顕著であった。(2)腰腹部の形状を表す要因抽出のための主成分分析では高齢女性で3主成分、若年女性で4主成分が抽出された。(3)主成分得点を用いて、高齢女性、若年女性それぞれ4つの類型に分類することができた。
  • (1) 集団保育施設におけるリスク実態
    武井 玲子, 鍋山 友子, 藤井 美香
    セッションID: 2F-3
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年、乳幼児の事故例が社会問題化している。そこで、乳幼児の被服や身につけるモノによるリスクを低減化するリスクマネジメント研究の一環として、保育所や幼稚園の集団保育施設における事故実態を把握することを目的とする。
    【方法】福島県を中心として保育所95ヶ所、幼稚園90ヶ所、計185施設の0~6歳児、16,752人を対象として、郵送法により質問紙調査を行った。調査期間は、2008年10~11月。
    【結果】92%の施設で事故が1回以上起きており、種類別事故発生率は上着20%、靴下17%、靴12%、カバン・オムツ各8%、ズボン・スカート・パンツ各7%、雨具・装飾品各6%であった。多く見られた事故例は、靴下やタイツ着用時、床などで滑って転んだ、上着のファスナーで顔や首の皮膚に傷がついた、などであり、他人にフードを引っ張られたり、ふざけていて転びそうになった、など集団施設での潜在リスクも存在していた。雨具や帽子などは、危害例は多くないが、潜在リスクと考えられる「ひやり・ハッと」事例が高い傾向であった。また、保育施設に設置されている遊具と身につけるモノが関係した事故発生率は、滑り台が一番高く、その他の遊具も10~15%であった。保育施設から、保護者に対して事故防止指導をしており、保護者は比較的よく指導に従っている結果であったが、一方、行政機関からのリスク情報などの提供を受けている施設はわずかであった。リスクマネジメントには、法規制やガイドライン策定などの施策も必要であるが、保育施設、保護者、製造・販売業者、行政機関などの関係者間があらゆる関係情報を共有化するリスクコミュニケーションの推進が重要となる。このリスクコミュニケーションの視点からみると、いくつかの問題点があり、効果的なリスクコミュニケーションの展開が今後の課題と考える。
  • バーチャルボディ設計のための
    渡邊 敬子
    セッションID: 2F-4
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    【研究目的】人体の形状を3D-CAD内で工業用ボディのようなゆとりの入った形に自動変換するための基礎的な資料として、動作による背部体表面の変化を明らかにしようとした。今までの体表面の変化に関する研究は、変化をとらえるための基準線の数が限られており、計測の条件も皮膚の伸展が最大になると思われるような姿勢に限られている。本研究では動作による段階的な体表面の変化を明らかにすることを目的とし、その方法と精度についても検討をした。 【研究方法】被験者は19歳から22歳の若年女性15名で、それぞれ背面と上腕部に格子状の基準線(緯線14本と経線7本)をアイライナーで描いた。計測条件は、45°毎の上肢の挙上と屈曲を組合せた10ポーズと、体幹の前屈・座位姿勢などの4ポーズを設定した。この姿勢を支柱によって保って三次元計測を行い、3D-Rugleで基準線間のトレース長を求めた。それぞれの格子長と立位正常姿勢の値との差を求め比較検討した。 【結果及び考察】経線の長を部位別に観察した結果、いずれの上肢動作でも伸展が大きかったのは後腋点付近で、この部分を中心に量は次第に少なくなる。アンダーバストの高さを中心とする領域では正中線付近の伸展が大きく、ウエストラインの高さ以下はほとんど変化が見られない。屈曲程度により伸展の量は異なるが、この傾向はいずれの動作にも共通していた。また、腕部でも後腋点を通る線の伸展が大きく挙上135°・屈曲135°では平均24.0mmで、身頃のゆとりには腕部の伸びをも同時に考慮する必要があると考えられた。衣服の体表とずれや浮きについても併せて検討しゆるみの設定へつなげたい。
  • 川端 博子, 田中 美幸, 鳴海 多恵子
    セッションID: 2F-5
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    (目的)複雑な指運動は脳の活動を促すことが報告されており,幼児教育やリハビリ・医学的治療に取り入れられている.しかし,児童においては,便利な生活機器の普及や遊びの変化などにより, 手指の巧緻性を高める機会が減少している.本研究では,糸結びテストと生活・学習などに関する調査をもとに手指の巧緻性に関わる要因を分析し,手指の巧緻性を高めるものづくり学習の意義に対する示唆を得ることを目的とする.
    (方法)2008年7~11月,東京都世田谷区内の4小学校の6年生(男子188名,女子174名)を対象に手指の巧緻性を測定する糸結びテスト,質問紙調査(生活の自立度,手指を使う作業への得意意識,知的好奇心とものづくりへの意識,放課後の生活時間など),学力を測る小テスト(漢字・計算など全7問10点満点)を実施した.
    (結果)5分間で完成した糸結び数の平均は男子7.6個,女子11.9個であった.手指の巧緻性の男女差は,価値観・興味関心と生活の自立度の違いよって手指を動かす機会が異なることで生じたと考察する.糸結び数の上下各3割を抽出した糸結び上位群と下位群で比較すると,男女ともに上位群では,生活の自立度,手指を使う作業への得意意識,ものづくりへの意識において下位群より高い傾向がみられた.また,小テストの得点の上下約3割にあたる成績上位群と下位群の比較では,成績上位群で, 生活の自立度,手指を使う作業への得意意識,知的好奇心,ものづくりへの意識が高く,糸結び数も多かった.手指の巧緻性に優れることは,生活の自立・手指を使う作業への得意意識とともに学力の高さに関連したことから,ものづくり学習の新たな効果と意義が示されたと考える.
  • 小柴 朋子, 新藤 麻奈美, 田村 照子
    セッションID: 2F-6
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】服装において肌の露出が、着用者あるいはその着用者を見る人の心理に及ぼす影響は大きい。肌の露出に対する女子大学生の意識について調査し、肌の露出に対する注目度と露出部位あるいは露出程度がストレス程度に及ぼす影響について評価した。
    【方法】1)肌の露出に対するアンケート調査:18~22才の女子大学生320名を対象とし、人前で肌を露出できる限界、露出への関心度などについて調査した。2)視線の観察:被験者は21~22才の女子大学生5名。中等温環境下の室内で、腕・脚・胸・腹の露出程度の異なる着衣条件で、5分間被験者は鏡に映る自分を凝視。鏡の横で観察者が椅座。アイマークレコーダ((株)nac)で視点を測定した。3)心拍変動評価:21~22才の健康な女子3名を対象とし、2)と同様な測定条件・着衣条件下で心電図を記録後、BIMUTAS2(キッセイコムテック(株))でR-R間隔変動を周波数解析した。4)肌露出時のストレス測定:唾液中αアミラーゼ活性をストレス指標とし、各着衣実験終了直後に唾液を採取、α―AMY(ヤマハ発動機(株))を用いて測定した。
    【結果】アンケートの結果、肌を露出できる限界は胸のふくらみが始まる程度、背中は肩甲骨上端、腕全体、大腿部中間、腹部は露出できないという回答が多いことが示された。視点の滞留時間については、露出者は、胸と腹の露出部分への注視は短く、腕と脚の露出部分へは注視時間が長かった。第3者の視線も同様な結果を示した。心拍変動解析の結果では、露出したくない部位を露出した場合、副交感神経活動が小となる傾向が見られ、脚部では露出の影響が少なく、腹部では大きかった。唾液アミラーゼ活性からは、腹の露出が胸や腕よりもストレスが大きいことが推測された。
  • 大森 志保, 石原 世里奈, 芳住 邦雄
    セッションID: 2F-7
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    <目的>社会の複雑化の影響は、女子学生においても避けることは出来ない。さまざまな生活環境ストレスが原因で心身に悪影響をもたらすことが知られている。女子学生が日常的にどのようなストレスを感じ、どのような影響が及ぼされているのかを明らかにすることが、本研究の目的である。ストレスを拍動に基づく生理学的指標で評価することが本研究の特質である。
    <実験方法>拍動変動のパワースペクトル解析から被験者の交感神経、副交感神経の作動比率を評価し、ストレス状態を定量化した。本研究では、Biocom Heart Rhythm Scannerを用いて「心拍変動のスペクトル解析」により実施した。同時に、実験時の心身の状態を被験者に対してアンケート調査を行った。被験者は女子学生204名である。
    <結果および考察>アンケートへの回答をクラスター分析した。その結果、「精神的に気分が安定している」と「身体的に気分が不安定である」に分類できた。前者への回答の頻度分布は、比較的高い得点の領域に人数が集中した。女子学生は日常的に、精神的に気分良く過ごしているということがうかがえた。これらに対する評価点の上位、下位で被験者を区分してHF(副交感神経)の測定値を比較した。平均値の差をt-検定したところ、有意水準5%で有意差が認められた。精神的安定度の高い学生はHFのレベルが高いことがわかった。また、身体的に不安定と感じている人ではLF(交感神経)が高かった、いわばストレス状態にあると言える。以上のとおり、拍動の変動によって女子学生の日常におけるストレス状態を把握できることが結論される。
  • 前田 亜紀子, 山崎 和彦, 栃原 裕
    セッションID: 2F-8
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】演者らは衣服内気候と快適性の関係について研究を行っている。今回、冬季における野外活動時に実験を行い、これまでの実験室実験で得られた知見と比較した。
    【方法】被験者は健康な女子学生10名であった。2008年11~12月の計4日、間、全て午前中に実施した。天候は晴天ないし曇天であり、気温9~18℃、相対湿度37~61%であった。衣服条件は各自のものと統一したものに区分した。前者はスニーカー、ショーツ、ブラジャー、後者は靴下、長袖Tシャツ、スパッツ、外衣(透湿性素材による雨衣、上下セパレート型)、リュックであった。また被験者各自の判断による防寒用被服類の追加を許可した。作業は約90分間にわたる歩行(丘陵地、約3.2km/時)とした。胸部衣服内気候は連続的に測定した。また腋窩温、皮膚温(前額および手背)、主観申告値(全身温冷感、局所温冷感、発汗感、不快感、疲労感)は15分毎に測定した。
    【結果と考察】被験者が選択した衣服は、実験当日の気温に対応する構成であり、寒さ感の愁訴はわずかであった。腋窩温は全実験を通じほぼ一定であった。衣服内温度と全身温冷感申告値の関係について、実験室実験で得た回帰式と比較すると、今回の野外実験においては個体差およびバラツキはあるものの、第1層ではほぼ一致し、第2層では衣服内温度は低めとなった。これは、腋窩温の測定による動作および風の影響があったためと推察する。なお、第1層における衣服内湿度と発汗感には高い相関が認められた。冬季の野外活動時における快適性評価に際し、胸部衣服内気候の測定は有用であることを確認した。
  • 杉浦 愛子, 渡邊 友里子, 伊藤 きよ子, 森 俊夫, 日下部 信幸
    セッションID: 2G-1
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    目的 被服の柄のイメージは、着用者の個性を他者に伝える重要な要素である。従来から柄のイメージについて数多くの研究が行われており、人の目で柄のイメージをはかるという方法がとられてきた。しかし、人の目は視力をはじめ、様々な点で同一ではないことから、同じ柄を見ても、目の視覚特性によって柄の見え方や見たものから生じるイメージに差があるのではないかと考えた。そこで、本研究では、衣服デザインへの情報提供を目的に、柄のイメージ研究でよく用いられるストライプ柄について、人の目の視覚特性が柄の見え方やそのイメージに影響を及ぼすかどうかを検討した。
    方法 試料はストライプ柄のワンピースである。ストライプ柄は白地の綿布に黒色のストライプ柄をプリントしたもので、ストライプの幅は0.5_cm_と2.0_cm_の2種類とした。さらに、ストライプ形状および角度をストレート型(0、45、90度)、山型(45度)、谷型(45度)の5種類とした。官能評価は試料をスライドで等身大に映写し、4m離れた位置からSD法による5段階評価法で評価させた。被験者は乱視の方向性などに関する視覚テストによりグループ分けをした。
    結果 0.5_cm_幅ストレート型ストライプや山型ストライプ、谷型ストライプでは、視覚特性によって柄の見え方が多少異なるものの、イメージの違いに大きな差はみられなかった。このことから、ストライプ柄のイメージを検討する場合、人の目の特性は考慮しなくともよいと考えられる。
  • 大学生の場合
    辻 幸恵
    セッションID: 2G-2
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    目的エコバッグの普及はめざましく、各企業も独自のオリジナル商品としてのエコブランドバッグを消費者に提供している。有名ブランドのものは、プレミアがつくほどである。今回は、大学生を調査対象として、そのようなエコブランドバッグに対してどのようなイメージを持っているのかを明らかにした。
    方法2009年11月中旬に本学を含めて関西圏にある3つの大学に所属する大学生280名を対象に質問紙による調査を実施した。回収率は68.9%で193人であった。内訳は男子118名、女子75名となった。得られた回答を数値データとして、単純集計した後に、分析手法として数量化二類を用いた。
    結果良いイメージを持っている学生たちは、悪いイメージを持っている学生たちと比較をすると、エコバッグの所持枚数が多かった。また、ブランドや流行にも興味があり、買い物が好きであるという傾向がある。一方、悪いイメージをもっている学生たちは、現実的買い物が好きではないこと、つまり、インターネットを利用した通販を利用していることがわかった。日常的な生活において、荷物が多くなることを嫌う傾向にあることも特徴である。
    考察エコバッグそのものに対するイメージは前回の調査では、ダサい、おばさんくさいというものであった。今回はそのようなイメージは少ない。ブランドのエコバッグという限定から、お洒落な要素が加わったためだと考える。単なるエコバッグよりも好悪が明確になった上に、イメージを形成している背景の要因が非常にはっきりとしたことはブランドのイメージがつよいからだと考えられる。
  • 石原 世里奈, 芳住 邦雄, 熊谷 伸子
    セッションID: 2G-3
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    <目的>ファッションは、多様化している。その一方で、雑誌やモデル、芸能人の影響を受けており、いくつかの系統に類型化できるとも言える。本研究では、その印象を構成する要因を解明することを目的とした。
    <方法>雑誌、ストリートファッション、キャンパスルックを参考に、女子学生の服装を4パターンに集約した。これには、必ずしも客観的根拠はなく、女子学生11名の討議による経験的判断である。これらにより着装アイテムを準備し、同一人物に着用をさせ、写真資料を得た。一方、ファッションにかかわる24項目の評価用語をとりまとめた。前述の着装写真を個々に提示して、評価用語に対して4段階の評価得点を求めた。被験者は、東京都内の女子学生230名である。
    <結果および考察>ファッションの4類型が与える印象を24項目での評価に基づいて主成分分析を行った。第一因子は、「女性らしい、愛されスタイル」。第二因子は、「個性的なこだわりスタイル」。第三因子は、「ブランド意識が支える華やかさスタイル」。第四因子は、「流行を追随するスタイル」と解釈した。以上の累積寄与率は、68.2%であった。さらに、因子スコアにより類型化した個々のファッションの特徴を明らかにした。第一因子が支配的なのは、お出かけ系スタイルであった。第二因子では、こだわりカジュアル系スタイルであった。第三因子では、自称一段上の着こなしスタイルであった。第四因子では、スイート系スタイルであった。以上から被験者たちの評価は、類型化ファッションの特徴を充分に識別しており、共通の印象効果が存在しうることが本研究により確認できたと言える。
  • 橋本 光代, 藤田 雅夫
    セッションID: 2G-4
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    目的】 四季のある日本では,古来より衣服は季節に合わせて着用されてきた.しかし,最近は,若い女性の中に季節感に捉われない着装行動を行う者を見かける.本研究では,彼女らが,季節感に捉われない着装行動をどのように捉え,どのような意識を持っているのかを調査した.また,母親と女子学生の意識の相違や,母親の意識が娘に影響を及ぼしているかも合わせて考察した.
    方法】 女子学生とその母親を対象に,アンケート調査を2009年1月に実施した.調査内容は,(1)他人が行う着装行動に対する意識(25項目,5段階評価),(2)自分が行う着装行動実態 (12項目,5段階評価),(3)日本の伝統行事・習慣に関する行動実態(23項目,4段階評価),(4)フェースシート(8項目)である.調査データは,因子分析,t検定などの統計処理により解析した.特に,日本の伝統行事・習慣に関する行動実態と着装行動との関係について考察した.
    結果】 着装行動に対する意識,着装行動実態ともに,女子学生と母親の間で,流行性の高いいくつかの着装行動について,統計的有意差が認められた.因子分析の結果,女子学生では「季節適合性」「流行受容性」「自己の独自性表現」などの因子が,母親では「季節適合性(全体感重視)」「流行受容性」「季節適合性(色・柄重視)」などの因子が抽出された.日本の伝統行事・習慣に関する行動実態については,クラスター分析の結果,女子学生,母親ともに3つのグループに分類された.着装行動に対する意識の因子分析結果と合わせて考察した結果,女子学生,母親ともに,季節感のある伝統行事や習慣を重んじて行う人は,着装行動に関しても季節感を重視する傾向が認められた.その中でも積極性の高い人は流行やおしゃれにも関心が高い傾向が見られる.
  • 明治・大正・昭和前期にかけての女性雑誌の記事と広告から
    玉置 育子, 横川 公子
    セッションID: 2G-5
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
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    目的: 化粧品を通じて“西洋化”の変容を追うこととする。化粧品の変容の背景には化粧品に対する知識、価値観、美への思想が大きく関わっていると考えられる。これらの時代性が化粧品にどのように反映されているかを探ることとする 方法: 明治・大正・昭和前期にかけて創刊および発行された雑誌の閲覧。主たる資料として「婦人世界」、「主婦の友」、「婦人画報」、「女性」の化粧品に関する記事および化粧品の広告を手がかりとする。 結果: 化粧品の変容には美容家と称される人々が台頭し、かれらの思想が大きく反映されていると考えられる。その背景には海外の美容に触発されながら、医学と美容の思想を融合した“整容医学”が反映されており、医師が化粧品の成分の調合を示唆し、その美容的効果を美容家が実証する。また、医師達は鉛白粉の使用に警鐘を鳴らしながら、無縁白粉の開発にも携わってきた。美容家は素肌美を提唱し、その為には油分が含まれたクリームの使用を促進し、マッサージを用いて肌を“掃除”し“マッサージ”で血行を良くすることを奨励したのであった。人気の美容家たちは雑誌で美容相談を行い読者に対して直接的に語りかけるように美容法を伝授してきた。更に美容家達は自らが開発した化粧品を雑誌紙面で販売し顧客の獲得を進めてきた。また化粧品の販売を促進させた会社に東のレート、西のクラブが上げられる。これら2社は大々的に広告を展開し顧客獲得に乗り出したのであった。今日の化粧品の思想および広告展開の礎をこの時期の女性雑誌の記事や広告に見ることができる。
  • 熊谷 伸子    , 山本 嘉一郎, 芳住   邦雄
    セッションID: 2G-6
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/02
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】不特定な人々が存在する公衆場面において化粧をする女性に違和感を抱く人は多い。本研究では、若い女性を対象にこうした行動を誘発する要因を明らかにすることが目的である。研究に際しては、多くの若年女性が参考にしているファッション雑誌に着目した。これは、内面的な志向をも表出する役割を有しているからである。また、実際の場面での行動をも検討対象とした。
    【方法】2009年1月に関東圏に在住する女子大学生211名を対象に質問紙による集合調査法で調査を実施した。質問内容は、公衆場面における化粧行動に関する項目、ファッション雑誌への志向などに関する項目などである。これらの項目に対して4段階尺度で評価を求めた。データ解析にはAmos ver.16を使用した。
    【結果】雑誌への調査から得られたファッション傾向から「ギャル系」と「ナチュラル系」を潜在変数として設定した。さらに、「化粧行動を是認できる公衆場面」を潜在変数として設定した。これに関して「他人しかいない場面」「知り合いに囲まれている場面」という2つの潜在変数を設定した。以上が共分散構造分析モデルである。その結果、ファッション傾向では、ギャル系(パス係数0.42)の方が公衆場面での化粧を是認し、他人しかいない場面(パス係数0.97)の方が化粧行動を促すことが明らかになった。なお、各適合性指標は本研究のモデルが充分な適合性を有していることを示していた。
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