一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
63回大会(2011年)
選択された号の論文の301件中1~50を表示しています
ポスターセッション
5月28日
  • 家政思想史研究序説
    八幡(谷口) 彩子
    セッションID: 2P-1
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    目的 言語活動を重視する新教育課程を背景に、教師と児童の「対話」を中心に据えた小学校家庭科の「探究」型の授業について検討を進めている。授業者との交流を通して、家庭科が何を「探究」すべき教科なのか、という教科論を深める必要性を痛感する。本研究では、プラトン、クセノポンらの著作に示されたソクラテスの「対話」による知的探究の成果をもとに、古代ギリシアにおける家政学とその教育のあり方について考察する。
    方法 田中秀央・山岡亮一(訳)『クセノポーン 家政論』生活社(1944)、プラトン、藤沢令夫(訳)『メノン』同(1994)、『国家(プラトン全集11)』同(1976)ほかに記されたソクラテスの「対話」による知的探究の成果をもとに、古代ギリシアの家政思想を検討する。
    結果 (1)ソクラテスは「無知の自覚から知に至る」特有の方法によって、帰納的に概念の定義を導く。「適切な質問と当を得た回答」による「真理探究の技術」がその「対話術」である。また「徳は知識である」ことを知的探究の成果として導き出した。(2)『クセノポーン 家政論』では、ソクラテスとクリトブーロスの対話により、「家政」とは「技術」であり、「善き家父の任務は自己の家を十全に管理する」ことであるという概念が示される。さらに、優れた家政術探究の手段として、優れた家政管理者の観察という方法を提示し、優れた農業経営者として登場するイスコマコスとの対話により主婦と家父がなすべき仕事について語られる。(3)ソクラテスは、知的探究を行う1つの対象として家政に関する概念規定を試みた。
    [引用文献]O.ディットリッヒ、橋本隼男(訳)『ギリシア倫理学史(上巻)』内田老鶴圃(1976)
  • -甲府市消費者問題懇話会調査より-
    志村 結美
    セッションID: 2P-2
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    目的 甲府市消費者問題懇話会は、消費生活の安全及び向上を図るため、消費者行政を推進するにあたり、調査研究し、その結果を甲府市長に提言し、今後の消費者行政に反映させることを目的として設置されている。平成20年~22年においては、近年、問題が多発している「食の安全・安心」をテーマに、甲府市に在住する消費者と甲府市で営業等をする事業者の両者にアンケート調査を実施した。そこで、本報告では、「食の安全・安心」に関する甲府市における消費者と事業者、両者の各々の立場の認識と実態を明らかにし、さらには、その認識や実態の相違から見えてくる課題を探ることを目的とした。
    方法 甲府市在住の消費者722名、甲府市で営業している事業者75名を対象にアンケート調査を行った。調査期間は2009年11月~2010年1月である。調査内容は、消費者対象調査においては、食の安全・安心に関する意識、食品の表示、食の消費行動、食生活、食の安全対策等、事業者対象調査においては、食の安全・安心に関する意識、食品の表示、食品・食材の仕入れ、事業者として消費者に期待すること、行政への要望等である。
    結果 日本の食の安全性に対して、不安であると感じている消費者は85%、事業者は61%であり、消費者の方がより不安感を持っている結果となった。食品表示で気をつけている項目や、食品購入時や仕入れ時に気をつけている項目は、消費者、事業者ともに概ね同様であったが、食品添加物に関しては、消費者の方が意識している割合が多い傾向が明らかとなった。概して、消費者・事業者ともに食の安全・安心に対して関心が高く、一部異なる認識も見られたが、両者が今後協力して食の安全・安心について求めていく必要性が認められた。
  • 榮 光子
    セッションID: 2P-3
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    ◆目的 近年、世界は「経済合理性」を基礎とし、自己利益の最大化を求める伝統的経済学とは相反するwin-winの思想に基づく社会共生・協働の方向に向かっており、地域、世界、地球レベルの複雑化するさまざまな問題に対応して対処しようという考えが広がっている。日本の衣食住における家庭生活においても同様の動きが進んでおり、2008年財務省「貿易統計」、総務省「産業連関表」によれば、家庭製品や食料の半数以上が開発途上国から輸入されたものである。しかし、日本の消費者は製品を供給する生産者・労働者の生活、教育、労働等への関心は低く、グローバル化する経済の中で消費者として先進国としての責任を果たしていないのが現状である。本調査では、南アジアの開発途上国で農業に従事する農村女性の生活に関する問題を明らかにすることを目的とした。 ◆方法 2011年1月に南アジアの農村女性(22~65歳)約100名を対象にクオリティ―コントロールの手法を用いて問題発掘調査を実施した。本調査では1つの問題につき1枚のカードを使用した。1人20枚のカードを配布し、表面には現在抱えている生活の問題とその重要度を3段階(A:とても重要な問題、B:まあまあ重要な問題、C:まあまあ重要な問題)で、また、裏面にはその解決方法を記入してもらった。得られたデータについて統計ソフト(SPSS 18.0)を用いて計量的に解析した。 ◆結果 南アジア農村女性の抱く土地所有権に関する問題、配偶者に関する問題(飲酒、労働等)、収入に関する問題、自己実現に関する問題、医療に関する問題、子供の教育に関する問題等が抽出された。本調査で得られたデータをもとに、問題の構造について特製要因図を用いて影響度の高い要因を特定し、問題の発生原因を分析した。
  • 藤田 昌子, 松岡 依里子, 若月 温美, 中山 節子, 中野 葉子, 冨田 道子, 坪内 恭子
    セッションID: 2P-4
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    【目的】構造改革による貧困と格差の拡大、2008年の金融破綻による経済危機は、高校生の修学・進学・就職にも深刻な影響を与えている。近年、若年者の労働や生活の実態は徐々に明らかにされているが、高校生に焦点をあてた調査は少なく、彼らの自立支援のための基礎資料は十分でない。本研究では、労働(アルバイト)、生活時間、生活不安に着目し、高校生の生活と労働の実態を明らかにすることを目的とする。
    【方法】山形・東京・千葉・神奈川・兵庫の公立・私立高等学校5校1~3年生622名を対象に、生活と労働に関する質問紙調査を実施した。調査時期は2010年7~10月である。
    【結果】4割の高校生がアルバイトを行い(アルバイト禁止校を除く)、その理由は「小遣い」「貯金」「家計補助」「学費」等であった。就労状況は、平日は週3~4日、4時間以上が最も多く、深夜時間帯や休日の8時間以上の就労といった労働基準法に抵触しているケースも少なくなかった。厳しい家庭の経済状況のもと、生活費や学費を稼ぐために長時間働かざるを得ない実態や高校生の雇用環境が明らかになった。こうした実態は、睡眠時間・学校以外での勉強時間に影響を及ぼし、「ストレス」「体調不良」「勉強時間がとれない」といった心身と学業面の問題を引き起こしていた。また、高校生は将来の生活に対して、進学や就職、就職後の経済生活、結婚や子育て、介護に至るまで不安を感じていた。このように貧困・格差は、学費や家計費を補うためにアルバイトを余儀なくされている高校生を生み出し、ワーク・ライフ・バランスに問題を生じさせるだけでなく、彼らの進学・就職、その後の将来に対する不安も助長していた。
  • 松岡 英子
    セッションID: 2P-5
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    <目的>要介護高齢者を在宅で介護している介護者のストレス対処行動とその効果を明らかにすることを目的とする.
    <方法>質問紙による配票調査を実施.N市高齢者福祉課の協力により,「要介護3」以上の高齢者を在宅で介護している市内の全ての介護者4,349名に対して調査依頼をし,同意を得た1,330名から有効回答を得た.
    <結果>13項目の対処行動のうち介護者の実行度が高いのは,「あきらめ」「肯定的思考」などの認知的な対処であり,反対に実行度が低いのは「友人・親戚への援助依頼」「介護者同士の励まし合い」「情報収集」などの行動的な対処であった.因子分析(主因子法,プロマックス回転)の結果,「積極的認知」「同調・回避的認知」「問題解決的行動」3因子が抽出された.「積極的認知」(α=.80 )を従属変数とする多元配置分散分析の結果,高年齢者ほど積極的な認知をしていることが示された.13項目の対処行動のうち効果的だと評価されたのは「気分転換」「家族の協力」「介護サービス利用」「専門家の援助」であり,効果的だと評価されなかったのは「友人・親戚への援助依頼」であった.各項目の実行得点と効果得点にはほとんどに相関関係が認められ,特に「同調・回避的認知」は実行していないと効果的ではないと評価される傾向が強かった.また,「問題解決的行動」因子の中でも「気分転換」は実行していない人にも効果的と評価される傾向が認められた.介護ストレスをためない工夫に関する自由記述の分析では251単語が抽出され,5つの対処パターンに識別できた.趣味,外出などの気分転換型が865ケース(43%)を占め,最も多かった.次いで,デイサービスやショートステイの利用などの公的支援型が416ケース(21.0%)であった.お勧めの対処方法に関する自由記述の分析では,認知的対処よりも行動的対処に関する単語が多く抽出された.
  • 黒川 衣代, 南部 法子
    セッションID: 2P-6
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    目的 平成17年に成立した「食育基本法」は前文で「子どもたちが豊かな人間性をはぐくみ,生きる力を身に付けていくためには,何よりも「食」が重要で」「生きる上での基本」と小児期の食生活の重要性を述べている.そこで本研究では小学時の食事経験が大学生になった現在の食事観に関連しているかどうかを調べる.
    方法 徳島県内の大学に在籍する大学生を対象に2009年11月に質問紙による調査を行った(回収585票:学校教育学部381名,人間生活学部204名).主な調査内容は,属性,小学校5,6年生時の家庭環境,食事経験(共食頻度,食卓の雰囲気,食卓でのコミュニケーション,家事への参加,食教育,料理への配慮,食習慣),現在(大学生)の食事観(食事の目的,嗜好,栄養・バランス,調理,伝統,行事,食事の雰囲気,食事マナー)である.
    結果 小学校5,6年生時の食事経験を上記括弧内の項目別に,大学生の食事観各項目(上記括弧内)と相関分析を行った結果,ほとんどすべての項目間で有意な相関関係が認められた。相関係数が0.3以上の関係が一番多かったのは,小学校5,6年生時の食事経験のうち料理への配慮で,その次が食卓でのコミュニケーションであった.小学校5,6年時の食事経験と大学生の食事観には関係があると考えられ,子どもの頃の食事経験の重要性が示唆された.
  • 小野寺 泰子, 川又 勝子, 佐々木 栄一
    セッションID: 2P-7
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    [目的]本研究では,小学校家庭科の実験教材開発を目的として,被服材料の水に関係する性質・機能のうち,特に撥水性に着目し,その性質を顕著に示す繊維を取り上げて検討した。現在,小学校では,様々な被服材料を観察することを通して被服材料の学習も行っている。このような授業の中に新しい撥水性被服材料を使った簡単な実験を組み入れ,汎用繊維と比べてその性質の違いを顕著に示すことができれば,被服材料が持つ性質・機能を理解させることができると考えた。
    [方法]繊維材料としては超極細繊維織物,汎用繊維織物を用いた。布の撥水性を確かめるため,刺繍枠に固定した布の上に滴下した水滴の観察,顕微鏡による観察,洗浄瓶による水かけ実験,傾斜する布帛試料面上に落下する水滴の挙動を観察する簡単な撥水性実験装置等を考案した。これらの実験の中から,刺繍枠に固定した布の上に滴下した水滴の観察を小学校家庭科の授業で取り上げ,実施した。
    [結果]授業の結果,刺繍枠の固定した撥水性布帛上で水滴がボール状に付着している様子や指で押しても潰れることもなく形状を保持すること,および試料を傾斜すると水滴が転がることが観察できた。木綿は水滴を即座に吸収し,ポリエステル上の水滴は試料の傾斜によって形状が崩れて流れるが、ボール状のまま転がることはなかった。この観察によって汎用繊維と撥水性繊維上の水滴の挙動の違いを観察することができ、撥水性の違いを示すことができることが分かった。
  • 長野 晴菜, 鳥居 咲希, 篠原 陽子
    セッションID: 2P-8
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    目的 「国連ESDの10年」の採択を受け,平成20年の中央教育審議会答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について」では,改善すべき事項に「環境教育」を挙げ,家庭科において「資源や環境に配慮したライフスタイルの確立,技術と社会・環境とのかかわりに関する内容の改善・充実」が求められた.家庭科では、自分・技術・社会・環境との関わりの中で学習し,生徒のライフスタイルの改善を目指す授業が必要になってきた.そこで,高等学校家庭総合の衣生活領域において,持続可能な衣生活を営むための授業が可能であるのかを検証し,授業開発を行った.
    方法 わが国におけるESD実施計画他,国内外の関連資料を分析した。平成22年版高等学校学習指導要領解説家庭編と高等学校家庭総合教科書(平成14~18年検定,5社)の衣生活領域の環境に関する教育内容を分析した.これらから資源・環境に配慮したライフスタイルとは如何なるものであるのかを考察した.
    方法 衣生活領域の環境に関する教育内容は,管理に伴う環境汚染の問題と資源エネルギー問題の2つに分類できた。これらは、家庭,世界,企業,行政などの実態に関する内容で,生徒に環境問題の主体は自分であることを認識させる記述は少なかった.教科書によっては,断片的知識しか得られないものもあった.新しい授業では,管理に伴う水環境汚染を取り上げ,生徒に環境汚染の主体は自分であることを認識させ,資源・環境に配慮したライフスタイルとはどのようなものかを考えさせる.そのために必要な概念・知識を獲得できる授業を開発した.水環境汚染の実態の認識及び課題の解決にあたり,科学的根拠を与えるための基礎実験を行った.
  • 鳥居 咲希, 長野 晴菜, 篠原 陽子
    セッションID: 2P-9
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    目的「国連ESDの10年」の決議を受け,平成20年の中央教育審議会答申「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について」では,改善すべき事項に「環境教育」を挙げており,家庭科を中心として「資源や環境に配慮したライフスタイルの確立,技術と社会・環境とのかかわりに関する内容の改善・充実」が求められている.そこで,まず,教科「家庭」とESD概念との関係を整理した.中学校技術・家庭(家庭分野)の衣生活の学習で,生徒がESD概念に基づいた衣生活を営むことができるかを検証し,新しい授業を開発した.
    方法国内外のESD関連資料を分析した.また,平成20年版中学校学習指導要領解説技術・家庭編及び中学校技術・家庭(家庭分野)の教科書(平成17年,20年検定,2社)の環境に関する教育内容を分析した.
    結果教科書の衣生活領域では環境に関する内容として,水環境及び資源・エネルギー問題が扱われていたが,生活者としての自覚を促すに留まっていた.ESD概念に基づく持続可能な衣生活を目指すならば,衣服の購入,着用,手入れ,廃棄の過程で総合的にライフスタイルを見直す必要がある.それには「衣服は資源である」という概念を必要とし,衣服の素材に関わる性能を理解することが求められる.授業では,衣服の原料である資源の枯渇と自分の衣生活の実態を把握することで,資源の有効利用の必要性を認識させる.そして,衣服の性能として強度・耐久性に焦点を当て,素材による強度の違いなどを比較し,耐久性を考慮した意思決定が行えるような科学的知識・概念を獲得することを目指した.衣服材料の強度・耐久性試験として,JIS法に準ずる引張り試験を行った.
  • -被服を中心として-
    小池 真莉子, 阿部 栄子
    セッションID: 2P-10
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    【目的】 現在、家庭科は男女共修教科であるが、高等学校においては1994年度から男女共修教科として開始した背景があり、それ以前は女子のみに課せられた教科であった。そこで本研究では、高等学校の家庭科の教科書の変遷について、当時使われていた教科書を参照し時代背景もふまえ検討した。 【方法】 高等学校の家庭科教科書を基に、当時の学習指導要領や時代背景もふまえ考察した。 【結果および考察】 戦後の家庭科は、民主的な家族を学ぶ新しい教科として誕生し、小学校から高等学校まで男女共に学ぶ教科であった。1947年度の学習指導要領をみると、高等学校の家庭科は実業科という教科の選択教科の一つとして存在していた。しかし、男女共に学ぶ教科であったにも関わらず、内容では戦前の女子教育で行われていた家事能力の育成が主となっていることが読み取れ、女子が選択することがあらかじめ念頭に置かれていた教科であったといえる。被服製作においても、袷長着や単衣長着などの和服、洋服、下着や布団の製作まで行っており、被服製作にかなりの時間を費やしているだけでなく、当時の高校生の製作技術の高さが伺える。1949年度の学習指導要領の改訂により、家庭科はさらに女子のみ履修の教科としての歩を進め、1960年度の指導要領改訂では、女子のみ必修の教科となった。被服製作においてもワンピースやスカートの製作など女子が履修することを念頭に置かれた内容であったが、1989年度の学習指導要領の改訂で、家庭科は男女共修の教科となり、男女が共に学ぶ家庭科の本来の姿を取り戻した。製作内容は男子生徒も考慮したハーフパンツやエプロンなどの製作が行われているが、授業時間数の影響で被服製作の時間が減少しているのが見受けられる。
  • 川又 勝子, 井上 美紀
    セッションID: 2P-11
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    [目的]かつて東北地方は川上を中心とした繊維産業が盛んに行われていたが、現在は服飾産業のグローバル化により大変厳しい状況にある。そこで東北地方の服飾産業の活性化を図ることを目的とし、今後服飾産業を担う本学服飾文化専攻学生のための実践的教育を行った。本報告では東北地方の企業が開発した素材を用いて、学生が商品の開発から展示会までを実践した2009年度の取組について報告する。
    [方法] 取組は、「ブランドマネジメント演習」として新規科目に位置づけた。授業ではブランドや商品コンセプト設定、ロゴ作成、素材の発注と仕入れ、パターン作成、縫製、品質管理、プロモーション活動を全て学生が中心となり展開した。商品の開発にあたり、素材の提供や現場での研修は地元企業の協力を得た。
    [結果]授業の中で、本学や東北地方のイメージをコンセプトに盛り込んだ模擬企業「mishima&co.」を設立した。また山形県の鶴岡織物工業共同組合の協力を得て、同組合所属企業が開発した新素材「捲絹形状記憶素材」を商品の素材として用いることにした。商品の開発にあたっては、鶴岡に赴き、絹繊維の取り出し、精練、製織、染色を行っている同組合企業4社で研修を行い素材に対する理解を深めた。捲絹形状記憶素材は大変かさ高で伸縮性に富んでいる。2009年度は素材の良さを生かしたウェディングドレスとフォーマルウェアーのブランド「@m」を企画し、商品を展示会で発表した。このような東北地方の繊維素材を利用したブランドマネジメントを通じ、展示会まで行ったことで東北地方の服飾産業について広く情報発信でき、学生は産業の実際を体験し、実践力や協調性等、企業人として必要な力を養うことができた。
  • ジーンズを教材として
    堀内 かおる, 土屋 善和
    セッションID: 2P-12
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    目的 近年、消費生活のグローバル化が進展し、ジーンズの価格破壊が著しい。本研究者は第62回大会において、大学生を対象として消費生活のグローバル化の現状を考える参加型の授業試案を提起し、その効果について検証した。本研究は、その継続として、高等学校家庭科の授業時における生徒の学びを質的にとらえ、現代的な生活課題について考える家庭科授業の可能性について検討することを目的とする。
    方法 2010年11月に、ジーンズを教材として東京都立X高等学校1クラスにおける消費生活の授業を実施してもらった。授業では、価格の異なる4種類のジーンズを比較することを通して、その違いに生徒が気づき、違いの理由について考えを深める手立てとしての話し合いとディベートが行われた。本研究者は授業を参与観察し、ICレコーダーおよびビデオによる音声と映像記録をもとに、グループワークとディベートにおける生徒の対話を採取した。授業後の感想文も分析資料とし、クラスメートとの対話を通した生徒の気づきや意識変容を考察した。
    結果と考察 グループ内での対話は、生徒自身の考えや気づきが共有され、グループの共通の見識となる手立てとなった。ジーンズの実物を前にして、一人の気づきが契機となって比較の視点をもたらし、議論を活性化することになった。ディベートは資料を客観的に読み解き見解をまとめて主張する手立てとしては有効であった。その一方で、経験に基づく主観的な主張も台頭し、消費生活のグローバリゼーションに基づく論点が希薄化するという課題も見られた。 
  • 武藤 祐子, 高橋 佐智子
    セッションID: 2P-13
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    目的ファッションショーにおいてはデザイナーが、自らのイメージをモデルとヘアメイクへ明確に伝えることが求められる。しかし、大学間で行なうショーでは、短期間の中で十分に意思伝達が行われているのか疑問である。本研究では、衣装担当、モデル、ヘアメイク担当の各立場からショーにおけるヘアメイクに関する意識を検証した。
    方法実践女子大のファッションショー(2010年11月)にて山野美容芸術短大がヘアメイクを担当した。衣装担当9名が4班に分かれ、モデル36(衣装担当含)名、ヘアメイク14名が参加した。ヘアメイク担当者は、9月にデザイン画を受け取り、10月のリハーサルで衣装担当者と確認した。代表学生による2回の打合せ以外の意思疎通はメールを活用し、これらを基に作業用紙を作成、ヘアメイクを行った。ショー後、質問紙による意識調査を行った(有効回答率74%)。
    結果と考察ヘアメイク担当の位置づけについて、衣装、ヘアメイク担当の約3割、モデルの約6割が制作者と回答した。また、ヘアメイクと意思伝達は、モデルのみに不満の回答があった。これは決定済のデザインへの不満やその場で変更可能にも関わらずモデルの意思反映がなかったことに起因する。一方、ヘアメイク担当がモデルの意見を取入れたケースもあり、その結果、完成したヘアメイクがヘアメイク担当のデザインに近いとする衣装担当の回答があった。ヘアメイク担当は衣装担当とモデルの両者の意見に応えたことから満足度が高かった。ファッションショーにおいてはデザイナーによる意思伝達が重要であるが、学生ショーでは3者の総意が満足度を高めることが分かった。そのためにも短期間で3者がコミュニケーションを図ることが重要と推察された。
  • 松田 典子
    セッションID: 2P-14
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
     近年、少子化の影響や働く女性が増えたことで、子育て支援が必要と言われている。子育て支援は、行政、会社の職場など様々な場において行われている。一方、子どもとの関わりがある場所としては、学校や児童館がある。子どもと関わりが深い児童館では、子どもだけでなく、その母親達に対してどのような子育て支援が行われているのだろうか。  H市内にある児童館を中心に、地域の児童館における子育て支援への取り組みや実施状況について、児童館職員に対し、インタビューを行った。その結果、児童館では、母親への育児相談という直接的な支援だけでなく、子育てのネットワーキング作りへの取り組みもなされていることがわかった。また児童館同士の連携もあり、児童館の規模などによってそれぞれの役割があり、地域全体でのサポートがなされていることがわかった。
  • 米浪 直子, 土居 香織, 君ヶ袋 志麻, 中山 真理子
    セッションID: 2P-15
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    【目的】食事誘発性体熱産生(DIT)は摂取エネルギーと食事内容に影響され、高たんぱく質食を摂取した場合、食後の熱産生により摂取エネルギーの約16%が消費されるといわれている。さらに運動後のアミノ酸投与は筋たんぱく質の合成率をより高めるという報告もある。本研究では、高たんぱく質食を運動後に摂取することがエネルギー代謝にどのような影響を及ぼすか検討を行った。 【方法】女子大生7名を対象として、30分間の65%VO₂max強度での運動負荷後、食事を摂取し、食後6時間までの心拍数、RQ、酸素消費量、DITを測定した(運動条件)。同様に運動を負荷せず安静状態で測定を行った(安静条件)。食事内容は高たんぱく質食644kcal(PFC 34:28:36%)と一般食642kcal(PFC 15:25:60%)とした。 【結果・考察】酸素消費量、発生熱量は食事摂取前に運動を負荷することによって高たんぱく質食条件が一般食条件よりも有意に高い値を示した。また、RQは運動負荷により高たんぱく質食条件が一般食条件より有意に低く、脂質燃焼が亢進することが示された。DITは、運動条件においては一般食条件よりも高たんぱく質食条件で高くなる傾向を示したが、安静条件では食後6時間までは両食事条件で有意な差は見られなかった。以上のことから、DITは一般食では運動による影響が見られないが、高たんぱく質食は運動後に摂取することで脂質の燃焼を促進するとともにDITが高まる可能性が示唆された。
  • 伊藤 知子, 熱田 翼
    セッションID: 2P-16
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】現在、多くのプロテインサプリメント(以下、プロテイン)が販売されている背景には、メタボリックシンドローム予防、健康増進など近年の健康ブームが影響していると考えられる。しかし、プロテインは摂取するだけで効果を期待することは難しく、過剰摂取になる場合もある。大学生を対象として、運動経験の有無や頻度によってプロテインに関する認知度や利用状況の違いについて明らかにすることを目的とし、調査を行った。
    【方法】2009年11月に大学生を対象として質問紙調査を行った(n=131)。質問項目は過去の運動経験、現在の運動頻度、プロテインに対する、イメージ、利用状況などであった。
    【結果】対象者の88%が過去に運動経験があり、72%が現在も何らかの形で運動習慣を持っていた。50%がプロテインの利用経験があった。プロテインに含まれていると思う成分はたんぱく質が、含まれていないと思う成分はBCAAが最も多かった。成分についての知識が十分でないことが示唆された。プロテインのイメージは筋肉増強が最も多かった。
     運動頻度別に比較したところ、運動頻度が高いほどプロテイン摂取経験が多かった。運動頻度が中程度(週1・2回程度)の群で筋肉増強効果を目的とする割合が高かった。食事摂取状況については、運動頻度が中程度の群が3食しっかり食べる割合が最も低く、サプリメント利用割合が高かった。これらの結果から、運動頻度が高い競技スポーツを行なっている学生よりも、過去に運動経験を持ち、現在の運動頻度が中程度の学生が、3食しっかり食べることよりもプロテインやサプリメントの効果に期待していることが示唆された。栄養成分に関する知識は十分とはいえず、何らかの対策が必要であると考えられた。
  • 大下 市子, 亀井 文, 白井 睦子, 箱田 雅之
    セッションID: 2P-17
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    目的 本研究第1報においては、20歳前の女性の骨量と食生活および生活習慣を調査し、骨量の形成には過去の運動習慣と乳の摂取習慣との相関が高い事を示した。今回は食生活の中でも食習慣に着目し、骨量形成に関与すると考えられる項目について分析した。 方法 調査時期は2004年~2006年、対象は18~20歳の女子大学生280名、平均年齢は18.5±0.5歳である。骨量は超音波骨評価装置AOS-100NW(アロカ製)により音響的骨評価値(OSI)を測定した。食生活や運動などの生活習慣に関するアンケートも実施した。食品・栄養素摂取量推定は、エクセル栄養君食物摂取頻度調査FFQgVer.2.0を用いた。今回、骨量(以後、骨)の平均(2.790±0.299)の高低と、食習慣(外食、コンビニなどでの弁当・総菜購入、欠食・共食者など)の項目を数値化し食習慣得点(以後、食)とし、その高低とで4群に分類し分析した。 結果 骨高食高群のエネルギー摂取量は1851kcal(n=65)、骨高食低群1859kcal(n=65)、骨低食高群1725kcal(n=65)、骨低食低群1814kcal(n=65)であった。食高群は、骨の高低に関わらず、米飯、魚や小魚、副菜として酢の物や和え物の料理の摂取習慣が高かった。骨高食高群は、肉類、豆類や果物も多く取る傾向であった。一方、骨低食高群は緑黄色野菜や海藻を多く取る傾向であった。また、食低群は、骨の高低に関わらずパン・麺類、菓子や清涼飲料水の摂取が多かった。これらから骨量形成にはカルシウムだけでなく、たんぱく質摂取の必要性、また骨密度の維持には食習慣の見直しが必要であることが示唆された。
  • 食事摂取状況と栄養バランスについて
    大里 怜子, 千葉 俊之, 川崎 雅志, 佐々木 隆, 本間 義規, 原 英子
    セッションID: 2P-18
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    目的 本学では50年程前に岩手県内の4地区を対象とした生活調査が行われていた。そこでこの調査結果をもとに50年前と現在では生活実態がどのように変容したかを把握するため、同4地区を対象とした衣食住および文化に関する生活調査を各分野連携のもと実施した。本研究では食分野に関しての変容を把握することを目的とした。
    方法 対象の4地区にアンケート用紙を配布し、回答後に郵送してもらった。配布時期は2008年12月から2009年6月であった。アンケート項目は「家族構成」「住宅について」「衣類について」「食生活および食環境について」「健康・衛生面について」「文化について」「農業・漁業の従事について」であった。回収後集計し、項目ごとに担当者が比較検討を行った。本研究では「食生活および食環境について」の比較検討を行った。2)食事調査:アンケートで追跡調査への協力者を募り、承諾を得られた家庭の食事について調べた。献立と材料名の記録とデジタルカメラでの撮影による食事調査を行い、記録と画像をもとに栄養計算を行った。過去の食事については資料に記載のあった献立を用いて栄養計算行った。
    結果 過去の食事において主食は毎食米飯であったが、現在の食事ではパンやめん類も主食として利用され多様化が窺われた。過去の食事形式はみそ汁・漬物が主だったが、現在の食事ではおかずが2から3品加えられた食事形式が大半を占めていた。栄養素別の摂取量について過去の食事では炭水化物の摂取量が多く、PFC比にすると炭水化物エネルギー比が約80%であった。現在の食事では多くの栄養素およびPFC比はほぼ適切な摂取割合であった。過去と比較し現在の食事バランスはよい方向へと変化したことが窺われた。
  • 高木 亜由美, 本 三保子, 鈴木 敏和
    セッションID: 2P-19
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    【目的】緑茶カテキンは脂質の吸収阻害や異化代謝酵素の活性化作用により、体脂肪蓄積を抑制し、血中LDLコレステロール値を下げる。本実験では、ラットへ緑茶抽出物を与えた場合、血清脂質値にどのような変化を与えるか検討した。
    【方法】緑茶抽出物は、ポリフェノンG(カテキン40%を含む)を使用した。6週齢のSD系ラットを4群に分け、それぞれに標準食(C、総エネルギーの10%が脂肪由来)、高脂肪食(HFC、総エネルギーの40%が脂肪由来)、標準食+3%緑茶抽出物(C-GT)、高脂肪食+3%緑茶抽出物(HFC-GT)を4週間摂取させ、4週間の摂食後、全採血を行い、血清中の中性脂肪(TG)、総コレステロール(TC)およびHDL-コレステロール(HDL-C)濃度を測定した。
    【結果】4週間飼育後における摂取1000kcalあたりの体重増加量は、HFC群はC群に比べて28%増加した。C-GT群はC群に比べて25%、HFC-GT群はHFC群に比べて26%低下した。血清TG濃度は、HFC群はC群に比べて44%増加し、C-GT群はC群に比べて28%、HFC-GT群はHFC群に比べて60%減少した。血清TCおよびHDL-C濃度はC群とHFC群の間に差は認められなかった。しかし、C-GT群はC群に比べて53%、HFC-GT群もHFC群に比べて16%TCが増加し、C-GT群はC群に比べて70%、HFC-GT群もHFC群に比べて24%HDL-Cが増加した。 以上の結果より、緑茶抽出物は体重増加および脂肪蓄積を抑制する他、血清中のHDL-Cを積極的に増加させ、コレステロールバランスを調整する可能性のあることが示唆された。
  • 岡田 瑞恵, 岡田 悦政
    セッションID: 2P-20
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    [目的]アルツハイマー症の原因の一つは、神経細胞へのアミロイドβ(Aβ)の蓄積とされている。Aβ蓄積の要因は、過剰な糖、動物性食品、飽和脂肪酸等の過剰摂取によるもの等幾つかの仮説が推論されている。正常であれば、Aβは切断酵素によって処理されるが、この酵素活性が老化等何らかの原因によって低下することが知られ、それら酵素活性低下の原因を食成分から探ることを目的とした。本報告では、糖、タンパク及びペプチド、脂肪酸のmixtureを作り、Aβへの修飾を検討した。
    [方法]Aβをスターターとするmixtureを作成する。組み合わせに使用したサンプルは、Glucose(Glu), D-ribose, Gly-L-Ala, Gly-L-Val, Gly-L-Ser,BSA,ラクトアルブミン(LAB),オボアルブミン(OAB), Palmitic acid(Pa), DHA, Oleic acid(Oa),Linoleic acid(La)を糖+タンパク及びペプチド、糖+タンパク及びペプチド+脂肪酸をそれぞれ組み合わせた。滅菌フィルター処理後、37℃にて25日間インキュベーションし、Glycation, Aggregationについて蛍光測定を行った。
    [結果]Aβと共にインキュベーションし、Aβ単独よりもAggregationが特に高い値を示した組み合わせは、Glu+Gly-L-Ala, Glu+Gly-L-Val, Glu+Gly-L-Ser, Glu+Gly-L-Ala+Pa, Glu+Gly-L-Val+Pa, Glu+Gly-L-Ser+Paであった。そのうち、Glycationの値も同様に高い値となった組み合わせは、Glu+Gly-L-Val, Glu+Gly-L-Ser, Glu+Gly-L-Val+Pa, Glu+Gly-L-Ser+Paであった。
  • 岡田 悦政, 岡田 瑞恵, 澄田 宏子
    セッションID: 2P-21
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】アルツハイマー型認知症(AD)は、病因とされるアミロイドβ(Aβ)を抑制する研究が様々な分野で試みられているが、根本原因となるAβ生成機構は未だ解明されず、幾つかの仮説が推察されている状況下にある。Aβの生成は、過剰な糖、動物性食品、飽和脂肪酸等の過剰摂取等の摂取もその原因として推察されている。また、この生成されたAβによる細胞死抑制も重要な研究テーマとなっている。そこで本研究では、蛋白糖化抑制成分として見つかった植物種子についてその抽出成分によるAβ誘導神経細胞死の抑制について、検討を行ったので報告する。
    【方法】1.植物種子はホモジネイトし、熱水抽出、ろ過後、0.20μmのフィルターを通し、サンプルとして用いた。2.海馬神経細胞は、マイクロプレートに3000個をまき、培養培地中で5% CO2、 37℃の条件下で培養後、Samples 20μLを加え24hr間培養、その後Aβ(10μM)を加え、さらに24hr間培養した。3.その後、酸化ストレス、細胞生存率の測定を行った。
    【結果及び考察】酸化ストレス実験において、コントロールより有意に低いSampleは、上位から、Red shiso、Lettuce、Corn、Scallion種子であった。Komatsuna、Qing geng cai、Spinach種子等は、コントロール以上の酸化ストレスとなった。一方細胞死の抑制は多くの種子で見られ、特に、Komatsuna、Corn、Qing geng cai、Bell pepper、Kale、Crown daisy、Lettuce種子等は明らかな細胞増殖促進効果が見られた。今後、種子成分による細胞死抑制機構の解明及びその有効成分についての検討や、各サンプルについての至適濃度について検討する予定である。
  • 本 三保子, 吉本 奈央, 内田 菜穂子, 橋詰 直孝
    セッションID: 2P-22
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    目的 オレンジ抽出物(OEx)の有効性を血中ビタミンC(V.C)、血中脂質およびアポリポタンパク質(apo)を指標として比較検討した
    方法 健常女性26名(年齢21.2±0.1歳)を被験物質により3群に分けた。被験物質はOEx、アスコルビン酸(AA)、対照としてリンゴ酸(MA)とし、OExは3134mg(V.C 1000mg含む)、AAおよびMAは1000mgを1日2回に分けて4週間摂取させた。摂取前後に血清・尿V.C、血清脂質、apoを測定し、摂取前値に対する変化率を算出した。
    結果 血清V.C変化率は、OEx群はMA群に比べて高値を示し、OEx群とAA群に差はみられなかった。尿V.C/cre変化率は、OEx群はMA群に比べて有意に高値を示し、OEx群はAA群に比べて低値であった。T-chol、LDL-chol、HDL-cholの変化率は、OEx群はMA群に比べて有意に低値を示し、OEx群とAA群に差はみられなかった。apoB変化率は、OEx群はMA群に比べて有意に低値を示し、OEx群とAA群に差はみられなかった。apoA_I_変化率は、OEx群はMA群に比べて低値を示したが、OEx群はAA群に比べて高値であった。動脈硬化指標であるapoB/A_I_の変化率は、有意差はみられなかったがOEx群はMA群に比べて低値を示し、AA群に比べても低値であった。以上の結果より、OExの長期摂取による血中V.C上昇作用、血中コレステロール低下作用が示唆され、その作用はAA摂取に比べて差はみられなかった。尿中V.Cとapoの結果より、OExの方がAAに比べてV.C体内保持作用が高く、動脈硬化軽減に寄与する可能性が推察された。
  • 内田 菜穂子, 吉本 奈央, 本 三保子, 鬘谷 要, 橋詰 直孝
    セッションID: 2P-23
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    目的 本研究では、in vitroにおいて紅茶のリパーゼ活性抑制率を測定し、ラットに紅茶添加の高脂肪食を4週間摂取させたときの内臓脂肪蓄積に及ぼす影響を検討した。
    方法 [実験1] in vitroにおいてダージリン、ウバ、アッサム、キーマンの4種の紅茶のリパーゼ活性抑制率を測定した。また、紅茶4種の総ポリフェノール量を測定した。[実験2]6週齢SD系雄ラットを3群に分け、それぞれ標準食、高脂肪食、高脂肪+紅茶葉食を4週間摂取させた。毎週体重を測定し、試験終了後の内臓脂肪重量を測定した。[実験3]6週齢SD系雄ラットを3群に分け、それぞれ高脂肪食、高脂肪+紅茶抽出物0.5%食、高脂肪+紅茶抽出物1%食を4週間摂取させ、体重測定、内臓脂肪重量測定を実験2と同様に行った。
    結果 [実験1] 4種の紅茶のうち、ウバが最も高いリパーゼ活性抑制率を示した。また、リパーゼ活性抑制率の高い紅茶は総ポリフェノール量が高い傾向を示した。[実験2]体重および内臓脂肪重量は、高脂肪群が標準群に比べ有意に上昇したが、紅茶葉群は高脂肪群に比べ有意な低下を示した。[実験3]紅茶抽出物0.5%群の体重は高脂肪群に比べ低い傾向がみられたが、紅茶抽出物1%群の体重は高脂肪群に比べ3週目より有意な低下を示した。内臓脂肪重量は、紅茶抽出物0.5%群が高脂肪群と同様であったのに対し、紅茶抽出物1%群は高脂肪群に比べ有意に低下していた。
    以上の結果より、紅茶の長期摂取は体重増加および内臓脂肪蓄積を抑制することが示唆された。またその効果は紅茶のリパーゼ活性抑制作用による可能性が示唆され、ポリフェノール類が作用成分として関与している可能性が示唆された。
  • 田中 唯菜, 岩﨑 由美, 鈴木 保宏, 久保田 紀久枝
    セッションID: 2P-24
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    目的 シクロデキストリンはグルコースが環状に結合した構造をもち、その空洞内部に香気成分などを包接することが知られており、近年様々な食品に添加し利用されている。一方、新形質米として開発された低アミロース米は老化しにくい特徴があり、様々な加工米飯に使用されている。しかし、もち米のようなもち臭が課題となっている。そこで、低アミロース米にシクロデキストリンを添加し、低アミロース米の香気の改善効果について検討を行った。
    方法 試料として、低アミロース米の一品種であるミルキークイーン(85%搗精)を使用した。シクロデキストリンはグルコース6個α-1,4結合したα-cyclodextrin(以下α-CD)とグルコース7個が結合したβ-cyclodextrin(以下β-CD)を用いた。シクロデキストリンを添加した米飯香気の改善効果をMSTD(発生ガス濃縮装置)-GC/MSによる機器分析とQDA法(定量的記述分析法)による官能評価の両面から検討した。
    結果 α-CD、β-CD共に米飯香気の改善効果がみられた。α-CDは2-4%添加で課題となっている“もち臭”が減少し、さらに、うるち米に特徴的な“温泉臭”が増加することがわかった。機器分析においてももち臭の減少効果が確認された。β-CDは10%添加によりもち臭の減少効果が機器分析、官能評価ともに確認できた。α-CDの方が少量で米飯香気を改善し、効果が高いことが示された。これは、α-CDとβ-CDでは環状構造に包接されやすい香気成分の構造に違いがあるためであると考察された。
  • 大友 裕絵, 久保田 紀久枝
    セッションID: 2P-25
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    目的 緑ピーマンは、子どもに好まれない野菜の一つである。赤ピーマンは、緑ピーマンのような苦みがなく、味がマイルドで子どもにも好まれるのではないかと思われる。緑ピーマンは一年中手に入るが、赤ピーマンは日本ではまだごく少量しか出回っていなく、香気成分に関する報告も少ない。日本ではピーマンは加熱して食されるのが一般的であることにより、本研究では、加熱赤ピーマンの特徴的な香気成分を明らかにすることを目的とした。
    方法 ピーマンを半分に切り、種・へたを除き、10分間蒸し加熱し、1cm角に切ったものを試料とし、定量的記述分析法(QDA法)による官能評価により香気特性を調べた。蒸したピーマンを3~4個をフードプロセッサーに入れ10秒間破砕し、メタノールで一晩抽出し、PorapakQを充填したカラムに通し、香気成分をペンタン:エーテル=1:1で溶出し有機溶媒層を分離し、さらに高真空蒸留により揮発性成分を分離し香気濃縮物を得た。得られた香気濃縮物の香気成分の分析(GC、GC-MS分析)、特徴香気成分の探索(GC-O分析)をAEDA法(Aroma Extract Dilution Analysis)を用いて行った。
    結果 官能評価の結果、赤ピーマンは緑ピーマンより青臭くなく、フルーティな香りが強いことが特徴づけられた。香気成分の分析の結果、カロテノイド関連化合物の含有量が大きいことが分かり、赤ピーマンの香気成分には赤ピーマンの赤色色素であるβ-カロテン、カプサンチンなどのカロテノイド色素由来の化合物が含まれていると考えられる。AEDAの結果、ピーマンらしい香りとして知られる2-Isobutyl-3-methoxypyrazineや甘くフルーティな香りであるLinalool、β-Damascenoneが加熱赤ピーマンの重要な香気成分として確認された。
  • 谷口(山田) 亜樹子, 佐藤 祐子, 松井 友美, 桑原 礼子, 浦川 由美子
    セッションID: 2P-26
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    目的 】おからは大豆を煮て潰し、豆乳を漉した後に残る残渣物である。おからは豆腐製造時に産業廃棄物となるが,食物繊維が豊富であり,ミネラル,ビタミンなどが含まれており,機能性のある食品原料として近年注目される。女子大生のおからに関する意識調査を行ったところ、おからに対するイメージはほとんどが「からだに良い」と回答しているが、おからの食感や香りなど嗜好性の問題から摂取頻度が少なかった。そこで本研究は、おからの未利用資源の食品への利用を考え、効率よくおからを摂取できるようにおからの加工食品の開発を行った。
    方法】 試料のおからは「Ohおから」(大川原化工機(株))の微粒と細粒を使用した。から揚げ粉,揚げ菓子、シフォンケーキ、ソーセージ,肉団子,チャーハン,マヨネーズ,こんにゃくなどにおからを入れ、おからを利用した新規食品の開発を行った。おからを利用した食品の開発の他、各食品のカロリー計算、食物繊維量等を算出した。
    結果】 おからをから揚げ粉に利用したところ、片栗粉のみに比べ揚げ油が濁るが,サクサクした今までにない良い食感、風味を持つ商品ができた。ソーセージはおからを入れることにより,脂のしつこさがなく,さっぱりした味になり,食べやすいという評価を得た。肉団子は肉の臭みがなく保水性が増した。ご飯は炊飯直後、米臭さの匂いは感じられず、チャーハンとしても御飯が離れやすく、高い評価であった。この結果から、おからは安価で栄養価が高く、さらに調理に利用しやすい食品であることが確認できた。
     ※本研究は大川原化工機株式会社の助成により実施した。
  •  調理前の処理溶液について
    片山 眞之 , 片山(須川) 洋子
    セッションID: 2P-27
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
     ヒジキにはヒ素の含有量が多いために、ヒトがヒジキを食べる前にヒ素量を減少させる処理が必須である。我々は前報において、乾燥ヒジキを水戻しすることによって、残存するヒ素が効果的に溶出除去されることを報告したが、今回は水戻しの溶液を酢酸溶液あるいは炭酸水素ナトリウム溶液で置換して実施した場合のヒ素溶出の挙動を追究した。
    方 法 試料は五島列島産乾燥ヒジキを用いた。 試薬はJIS特級、超純水を使用した。 試料ヒジキは5〜10mmに細切し30倍容の4%酢酸溶液または4%炭酸水素ナトリウム溶液を加えて一定時間一定温度にて保ったのち、残渣画分・溶液画分に分画し、それぞれを凍結乾燥してヒ素測定試料とした。ヒ素の定量は熱中性子放射化分析によった。
    結 果 酢酸溶液でヒ素を溶出させる場合、0℃で30%のヒ素が保持されていたが、90℃では15%に減少した。一方、炭酸水素ナトリウム溶液では0℃では未だ50%のヒ素が保持されていたが、液温が90℃になると15%にまで保持量が減少した。  
    考 察 液温に対するヒ素溶出曲線は、酢酸溶液の場合と比べて炭酸水素ナトリウム溶液の場合は急カーブであった。この両者の差異は、組織の膨潤経過に起因すると考えられるが、さらに共存成分の変動も影響していると考えられる。なお、ヒジキ組織の微細構造の変化についても引き続き検討中である。
    結 論 酢酸酸性においては、低温においてもヒ素残存率が低く、炭酸水素ナトリウムアルカリ性の場合よりも残存ヒ素量を軽減するには有効である。
  • 亀井 文, 佐藤 岳志
    セッションID: 2P-29
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    [目的] 胃や小腸で消化吸収されることなく大腸にまで到達するデンプン、レジスタントスターチ(RS)は食物繊維同様に腸内細菌の発酵基質として利用され、そこで産生された短鎖脂肪酸は大腸の健康に重要な役割を果たしている。しかし、でんぷん性食品のRS量が、調理やその後の保存方法によってどのように変化するのかを調べた研究はあまり多くない。そこで本研究は、我々が最も日常摂取している米を用いて、炊飯加水量の変化および初期老化における飯のRS量について実験を行った。 [方法] 本実験は平成22年新潟県魚沼産コシヒカリを用いた。加熱条件を同一とするため、同じ炊飯器(日立RZ-DM3)を用いて炊飯を行った。実験1の炊飯の加水量については、標準である米重量の1.5倍と0.7倍(硬飯)、1.8倍(軟飯)の3条件の加水量で炊飯した。炊き上がり後飯を均一化し、バットに広げて荒熱を取った後脱水操作を行い、炊き立て飯としてRS量を測定した。RS量測定はRS測定キット(メガザイム社)を用いて行った。実験2は、炊飯加水量1.5倍で炊飯後、実験1の炊きたて、1時間室温放冷、6時間および24時間冷蔵後の飯のRS量を実験1と同様に測定した。 [結果] 実験1では、加水量の増減に対してRS量には変化がなく、加水量の異なる炊き立て飯とRS量との間に関係性は見られなかった。実験2では、炊き立て飯のRS量は0.37%に対して室温放冷1時間後にはRS量0.58%と有意に増加し、冷蔵24時間後では0.68%まで増加した。この結果から、炊飯直後から24時間後までの短い保存の間の時間経過と温度変化はRS量の増加に関係があることが示唆された。
  • 飯田 文子, 葛西 真知子, 芦谷 浩明
    セッションID: 2P-30
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    目的 チョコレートに用いるカカオ豆は、1週間程度発酵させてから用いるが、その間の食味の違いは明らかにされていない。そこで発酵度合いの異なるカカオ豆から作製したカカオマスおよびチョコレートの食味の違いとその嗜好を検討することにより、最適な発酵日数のチョコレートを明らかにすることを目的とした。
    方法 ガーナ産のカカオ豆を用い、発酵日数0-8日のカカオ豆を同一条件でロースト後、粉砕して調製したカカオマスを用い味・香りの項目を整理し、官能評価用紙を作成した。また、上記のカカオマスを用い、カカオ分60%の配合割合のチョコレートを調製し、訓練パネル11名および学生66名に7段階評価尺度での官能評価を行った。同時に機器分析として一般成分分析・HPLC・Folin-Ciocalteu法・SPME・GCにより遊離アミノ酸・カフェイン・テオブロミン・ポリフェノール・ピラジン化合物の分析を行い、比較検討した。
    結果 成分分析値よりカカオ豆は発酵日数が増すほど遊離アミノ酸含量・アルキルピラジン化合物は増加し、テオブロミン・ポリフェノール含量は低下した。また、酸合計は4日にピークがみられた。訓練パネルによるカカオマスの分析型官能評価では、発酵により有意に「甘味」「うま味」「香り」が増加し、「苦味」「渋味」が減少し、「酸味」は4日が高くなり、分析値と整合性がみられた。チョコレートを用いた官能評価では、訓練パネルは8日の試料を、学生パネルは6日の試料を高く評価した。重回帰分析の結果より、訓練パネルは「香り」を重視し、学生パネルは「甘み」を重視すると考察された。
    結論 カカオ豆は発酵により「苦味」「渋味」が減少し「香り」が増加することが示唆された。また発酵日数は6-8日が良いと結論づけられた。
  • 長尾 慶子, 佐藤 久美, 粟津原 理恵, 原田 和樹, 遠藤 伸之
    セッションID: 2P-31
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    [目的]ごぼうの褐変は含有する数種のポリフェノールの酵素的酸化が要因であり、これらはアク成分とされ水晒し処理で除去されている。しかしポリフェノールは高い抗酸化能を有するため、水晒し(アク抜き)での損失はごぼうの機能性低下に影響すると予測される。本研究では、ごぼうの風味を保持しつつ抗酸化能の高いごぼう料理の調製法を提案するために、アク抜き時間を変えたごぼうおよび調理したきんぴらごぼうの抗酸化能を比較した。また、きんぴらごぼうに使用する醤油添加量による抗酸化能変化も併せて調べた。
    [方法]千切りごぼう各40g(未浸漬)と、これらを水道水200gにそれぞれ1,20,40および60分浸漬し、ごぼうと浸漬液を取分けた。きんぴらごぼうは未浸漬およびアク抜き20分のごぼう80gを用い調製した。さらに醤油添加量を変えた(0g,6g,12g)きんぴらごぼうを調製した。浸漬液以外の試料は48時間凍結乾燥後、水および70v/v%エタノールで抽出した。抗酸化能は化学発光法によりペルオキシラジカル捕捉活性を測定して、IC50値により評価した。
    [結果]アク抜き処理によりごぼうの抗酸化能は有意に低下した。アク抜き20分以降の浸漬液のIC50値に有意差はなく高い抗酸化能を示すことから、ごぼうの抗酸化成分は浸漬液に溶出し、それが20分で飽和状態になると推察した。きんぴらごぼうでも未浸漬ごぼうを使用することでより高い抗酸化能を示した。醤油添加量を変えたきんぴらごぼうでは、醤油無添加試料が最も抗酸化能が高かった。これは醤油の塩分による影響と考えられ、アク抜き処理を省き、醤油(塩分)量を控えることで抗酸化能の高いきんぴらごぼうの調製が期待できる。
  • ドレッシングおよびマヨネーズを想定したエマルションの乳化安定性
    大橋 きょう子, 入江 真理
    セッションID: 2P-32
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    <目的>亜麻仁油は、n-3系多価不飽和脂肪酸のひとつであるα‐リノレン酸をおよそ60%含む食用油で、近年、生体に対する有効性が認められるとともに、アレルギー体質の改善やメタボリックシンドロームへの対応素材として注目されている。しかし、一般には工業用途の認識が強く、食用油としての認知度はきわめて低い。亜麻仁油に関する報告は少なく、特に調理への利用やその嗜好性を明らかにした報告はごく僅かである。そこで、食用亜麻仁油の調理特性を明らかにし、栄養的にも嗜好的にも有効な利用方法を検討することを目的とした。対照油として大豆油を用いた。
    <方法>酸化測定を、60℃における重量法により比較した。ドレッシングおよびマヨネーズを想定したエマルションの乳化性を検討した。1)試料油:3.5%酢酸水溶液=1:1とし、エクセルホモジナイザーで10,000回転、5分間攪拌しドレッシング様エマルションを調製後、直ちに乳化層の分離状態を経時的に観察した。2)油相体積分率0.7、水相中の卵黄:3.5%酢酸水溶液=1:1、NaClを全量の0,0.8,1.0%添加し、上記と同様に乳化攪拌してマヨネーズ様エマルションを調製した。調製後直ちに4℃で1時間保存後、コーンプレート式回転粘度計を用いて粘度を測定した。
    <結果>1)自動酸化測定における試料油の重量は、両試料油共に測定開始3日間の変化は認められなかった。4日目以降から亜麻仁油の重量は急激に増加した。2)ドレッシングおよびマヨネーズ様エマルションの乳化性は、両試料油共に違いは認められなかった。亜麻仁油で調製したNaCl 1%添加マヨネーズ様エマルションの乳化安定性は大豆油のそれに比べて若干高かった。以上より調製後直ちに使用する非加熱調理においては、亜麻仁油も大豆油と同様に使用可能であることを認めた。
  • 佐藤 久美, 粟津原 理恵, 原田 和樹, 遠藤 伸之, 長尾 慶子
    セッションID: 2P-33
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】日本料理の代表的な汁物である味噌汁は、地域や家庭によって作り方は様々である。味噌にはメラノイジンやイソフラボンなどの抗酸化成分が含まれ、それに抗酸化成分を多く含む具材を加えることにより、活性酸素種から身体を守る抗酸化力の高い食事の摂取が期待できる。本研究では、だし汁の調製法、味噌の種類及び加える具材の種類を変えて数種の味噌汁モデルを設定し、抗酸化力を増強させる味噌汁の調製法を提案する。
    【方法】鰹1番だし、鰹2番だし、昆布だし、混合だし(鰹+昆布)及び煮干しだしの5種類のだし汁を調製した。これらだし汁に味噌(赤または白)を加えた味噌汁の抗酸化能を、ケミルミネッセンス法(化学発光法)により活性酸素ペルオキシラジカルの捕捉活性を測定しIC50値で評価した。[だし汁+味噌]の最も抗酸化能が高かった組み合わせに、具材として[ジャガイモ+長ネギ]を加えたものを「基本味噌汁」献立とした。次に「基本味噌汁」にナス・ワカメ・エノキをそれぞれ添加した計4種の味噌汁モデル試料を得た。それらを凍結乾燥後粉砕し、水及び70v/v%エタノールで抽出後、それぞれの味噌汁献立モデル間の抗酸化能を比較した。
    【結果】だし汁の抗酸化能は鰹1番だし及び混合だしが他のだしより高かったが、鰹2番だし、昆布だし及び煮干しだしに各味噌を添加すると、いずれのだしのみのそれよりも高くなり、白味噌よりも赤味噌添加が大となった。すなわち赤味噌の添加により、だし汁の種類に関わらず高い抗酸化能が得られた。更に具材を味噌汁に添加した際は、ワカメ・エノキの添加に比べて、ナスの添加で全試料中、最も抗酸化力の高い味噌汁献立が得られ、「基本味噌汁」に対し2倍程度まで増強された。
  • 竹下 華織, 仁後 亮介, 松隈 美紀
    セッションID: 2P-34
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年、調理の近代化や簡便化、外食産業の発展等が影響し年中行事や行事食が消滅・簡略化されているが、現在の国際化社会において自国の伝統的食文化を知ることは重要なことである。本研究では食育の一環として食文化を伝承するため現在の行事食の現状を把握することを目的とし、行事食に関するアンケート調査を試みたので報告する。【方法】本研究は日本調理科学会特別研究「調理文化の地域性と調理科学:行事食」の一環として福岡県の調査を行ったものである。○対象:本学短期大学部の1年生164名とその家族各1名の計328名(回収率66.8%、うち福岡県在住者72.6%)○時期:2009年12月~2010年1月○方法:留め置き調査法○内容:15の年中行事における行事食と福岡県の郷土料理に関しての喫食経験や喫食状況等である。【結果】重陽の節句は認知17.6%・経験5.7%、正月・節分・大晦日・クリスマスは認知・経験ともに約90%と、重陽の節句は五節句のうち他の四節句に比べて認知・経験ともに低いことがわかった。またクリスマスは比較的新しい行事であるが現代家庭に定着し伝統的な行事である正月と同様に習慣化されていることがわかった。福岡県の郷土料理では、だぶを除いた料理は認知・経験ともに比較的高く、がめ煮においては92.8%と今でも喫食されていることがわかった。今回の調査で郷土料理や節句行事の料理は、以前喫食していたのに「食べる人がいなくなった」や「作れる人がいなくなった」等の理由により伝承が消滅しつつあるという結果が得られた。これらの結果より、今後も同様のアンケート調査を行っていき行事食の現状を把握し食文化を伝承するための食育に活用していきたい。
  • ヤオ族
    宇都宮 由佳
    セッションID: 2P-35
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    研究背景・目的:東アジア一帯には,イネ,アワ,ハトムギ,モロコシ,トウモロコシのモチ性穀類が分布している.独特の粘りのあるモチは,伝統的な儀式,祝い事などハレの日に多く用いられる.モチには,蒸した米を臼で搗いた「搗きモチ」,米粉などで作る「練りモチ」,生モチ米を笹の葉などで巻いて蒸し・茹でた「チマキ」があり,民族の伝統的な食文化や思想が反映されている.そこで本研究では,モチ文化起源センター(坂本1989)の一部であるタイ北部に着目し,そこに居住する山地民のモチ食文化を分析し,モチに込めた意義を探る.タイには,複数の山地民が居住しており,今回はヤオ族の実態を明らかにする.
    調査方法:2008年2月~2010年8月チェンライ県のヤオ族の村で,モチの名称,種類,使用する道具,作る工程と役割分担,作る時期や目的,食べ方などを写真,動画で記録した.また村長,長老に面接聞取り調査を実施した.
    調査結果:ヤオ族は,中国の雲南省を起源とし,漢字による文書の普及や民間道教の色彩が濃厚な宗教儀礼など,概して中国の伝統文化の影響が顕著にみられる.自らを「ミエン」とよび,漢字を読める年長者も多い.ヤオ族には,搗きモチ「ユアゾン」,チマキ「ユアダオ」と「ユアクイ」がある.搗きモチは,ヤオの正月(旧暦の正月1-2月)に作られ,縦臼横と縦杵,返しベラを用いて,炒ったエゴマをまぶし,船の艪のようなヘラで返しながら搗いていく.チマキは,戦争で亡くなった祖先の霊を慰める行事(8月)の際に作られる. ヤオ族は,各家庭に祭壇があり,そこに花,果物,酒,茶と共にモチを供え,霊媒師に,祖先の名前とともに呪文を唱えてもらう.
  • 久保 加織, 佐藤 有美, 串岡 慶子
    セッションID: 2P-36
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    目的 伝統食を伝承することは、伝統的な食文化の継承や地域農業の活性化に加え、健康増進、生活の質の向上、食料の安定供給の確保につながる食料自給率の向上にも役立つと考えられる。本研究では、伝統食に長年なじんできた高齢者が入所する高齢者施設で給食を提供する栄養士を対象に、伝統食に対する意識を調査し、伝統食の伝承に有効にはたらきかける方法について検討した。
    方法 「給食と伝統食に関する調査」として、平成22年2月から3月に、滋賀県内の高齢者施設(特別養護老人ホーム67 施設、老人ホーム29 施設)で給食に携わっている栄養士に対し、郵送による質問紙調査を行った。有効回答率は71.9%であった。
    結果 伝統食の伝承を全員が必要であると考えていたが、「ぜひ伝承していきたい」と回答した人は25%であった。自身の食において地産食材や有機食材を選ぼうとする人ほど、また、伝統食を食べたり作ったりすることが好きな人ほど、伝統食を積極的に伝承したいと考える傾向が強かった。伝統食を食べたり作ったりすることを好まない人は約10%であったが、伝統食を作るには手間がかかる、技術がいる、時間がかかる、食材調達が難しい、塩分が多いなどと考える人は約50%に達した。伝統食を給食に取り入れることに関して、「入居者に喜ばれる」や「会話がはずむ」などのメリットを感じる人は半数以上いた一方で、手間やコスト、材料調達の面からのデメリットを感じる人も約40%いた。伝統食を給食に取り入れることによるメリットを強く感じる人ほど伝統食を給食に取り入れようとする傾向があったが、デメリットをどの程度感じるかと伝統食を給食に取り入れようと思うかの間には相関は認められなかった。
  • 大久保 恵子, 小竹 佐知子
    セッションID: 2P-37
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    目的:江戸時代後期の広島藩儒頼春水(らい しゅんすい、1746~1816、延享3~文化13)が1781(天明元)年から1815(文化12)年まで35年間記した日記は『春水日記』として知られている。しかし、春水は旅行中にはその日記記載を中断し、別に旅行日記を残していた。そこで、その一つ『壬子東下日程暦』を取り上げ、食品記述の特徴を分析した。 資料:資料には『壬子東下日程暦』翻刻(森銑三・野間光辰・中村幸彦・朝倉治彦編「随筆百花苑 第4巻」収載、中央公論社、1981、55-71)を用いた。 結果:『壬子東下日程暦』は春水5回目の江戸詰の際に、広島から江戸に至る旅程に従って書かれたものであった。船にて広島を出発(8/8)してから江戸に到着(9/7)するまで30日間を要し、14日目の大坂を経た後、16日目の伏見着後は陸路となった。旅程中の食物関連事項は17日間認められた(全日数の57%)。これは、『春水日記』における食物関連事項の記述が全日数の12%であったものよりも割合は高かった。記述内容の多くが沿道で見分した事であり、このうち同年の台風被害による稲・畑作物についての記述の割合が多かった。各地の名産として、鞆津で保命酒、清洲で大根、藤澤~由井で小夜中山の飴を取り上げていた。清洲の大根は現在の清須市春日宮重の宮重大根のことを指しており、当時は尾張徳川家への献上品であった。料理内容は不明だが、名産ということで春水自らもこの大根を使った料理を食し、「美味しかった」と感想が述べられていた。『春水日記』で食品の味について全く記述しなかったのとは対照的であった。
  • 阿部 稚里
    セッションID: 2P-39
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】幼児が食育を受ける場として集団保育施設(保育所や幼稚園)があるが、保育所は厚生労働省所管の児童福祉施設、幼稚園は文部科学省所管の学校教育施設という位置づけから、幼児に関わる職員の食育に関する考えや実態が異なる可能性がある。そこで本研究では、集団保育施設の設置形態に着目して食育に関する調査を行い、今後食育活動を行うための基礎資料を得ることを目的とした。
    【方法】三重県T市内の保育園54施設および幼稚園50施設を対象に、内閣府の食育に関する意識調査に準じた質問紙調査を行った。主な調査項目は、回答者の属性、食育によって園児に期待できること、実際に園で行っている食育の内容である。
    【結果】有効回答数は保育園51施設(有効回答率94.4%)、幼稚園44施設(有効回答率88.0%)だった。有効回答者の主な属性は、保育所と幼稚園で差はなかった。因子分析によって、施設での食育によって期待できること全17項目の回答から3つの因子が抽出された。第一因子を基本的な食教育の重要性、第二因子を心身の健康を維持する重要性、第三因子を一生を通じた食に対する望ましい態度形成の重要性と名づけた。各因子に集団保育施設の設置形態による差は見られなかった。実際に施設で行っている食育の内容は、子どもクッキング、野菜の栽培、行事食に親しむなどが多く、これらに関しても集団保育施設の設置形態による差は見られなかった。
    【考察】以上の結果から、幼児に関わる職員の食育に関する考えや実際に集団保育施設で行っている食育の内容には、集団保育施設の設置形態による差がある可能性は低いことが示唆された。
  • 岡本 美紀, 工藤 真理子, 武藤 慶子
    セッションID: 2P-40
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    目的  幼児期は将来の食習慣や食生活の形成の基礎となる。それらには保護者の食に対する意識や食生活が大きく影響を及ぼしている。そこで、幼児と母親の食生活の関連を調べるためにアンケート調査を実施した。今回は、母親の食への関心や食行動等に注目して検討したので報告する。
    方法   長崎県内N市内の保育所・幼稚園に通う4~6歳児の保護者267名を対象に2009年7~9月に食生活に関するアンケートを留置法にて行った。アンケート回収率は71.2%(190名)、対象保護者は調理担当をしている母親とし、有効回答率は95.3%(181名)であった。アンケートは、子どもと母親の食生活状況の58項目について行い、得られた回答をスコア化して集計した。統計処理は、統計解析ソフト「SPSS 18.0J for Windows」を使用し、解析は、単純集計及び因子分析、「Kruskal-Wallis検定」を用いた。
    結果   (1)欠食することがあると回答した母親は約3割、中食・外食の利用については半数を超えていた。 (2)生活習慣の因子分析における第一因子について、子どもは食事時間や就寝時間、起床時間の規則性といった「生活リズム」、母親は、新聞や雑誌及びインターネット等から得る「身近な食情報」であった。(3) 母親が中食や外食を利用せず、好き嫌いが少ないほど、子どもの生活リズムが整い、食べ残しや好き嫌いが少なく食べる意欲が高かった。(4)食情報に関心・興味があり食に対して積極性のある母親ほど望ましい食生活であった。
    考察   母親の食生活は、食情報への興味・関心があるほど良い傾向にあり、間接的に子どもの食生活に影響していると推測された。健全な食生活を送るためには、食情報を正しく判断ができるように支援することが重要だと考えられる。
  • 日浦 直美, 今津屋 直子
    セッションID: 2P-41
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    目的:2005年に食育基本法が施行されて以来、食育に関する関心が高まっている。昨年度は兵庫県の認可保育所における食育の実態について報告を行った(今津屋・日浦 2010)。本研究では、就学前教育・保育の現場における食育の実態をより詳細に把握するために、兵庫県の幼稚園に勤務する幼稚園教諭の食育に関する意識と保育現場での実践の実態把握を目的とする。 方法:兵庫県の公・私立幼稚園(694)の5歳児クラス担当者を対象に、郵送による質問紙調査を行ない(2011年1月実施)、その結果をもとに、幼稚園教諭の食育に関する意識と実践の実態および共食時の援助の特徴について考察した。 結果:返送回答(回収率56.2%)、有効回答数(381)の分析から、以下のような特徴がみられた。1)幼稚園間で食育の指標とするものにばらつきがあった。2)給食の実施率は54.2%で、その内、業者委託が46.4%であった。食事場所は保育室(89.0%)、食事の開始は「一斉に始める」(94.5%)、食事時間は「30-60分」(70.9%)が最も多かった。食卓の座席は固定席が47.4%、不定が51.6%であった。3)栄養指導に養護教諭が関わっている園が比較的多かった。4)保育者は昼食時の意義について「子どもの人間関係上、マナーを教える大切な時間である」(80.1%)、「他の時間と同様保育者の意図的な関わりが必要である」(73.6%)、「子ども同士の仲間関係を深める大切な時間である」(69.6%)と考える傾向にあった。
  • 森脇 弘子, 前大道 教子
    セッションID: 2P-42
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    目的 幼児の健康的な食生活の実現を目指して,保護者から幼児への食教育が幼児の生活習慣,食生活および保護者の食意識とどのように関連しているかについて検討した。
    方法 2008年11月~2009年2月,広島市内の協力の得られた保育園5園と幼稚園4園に通園する3~6歳の幼児1,213名の保護者を対象にアンケート調査を行った。有効回収数は774名(有効回収率63.8%)であった。調査内容は,幼児については,属性,生活習慣,食生活,保護者については,属性,食意識,幼児への食教育,受けてきた食教育である。食教育16項目について,「行っている(受けた)」1点,「行っていない(受けてない)」0点とし,合計得点を食教育得点とした。幼児への食教育得点の平均値により「高い群」,「低い群」に分け,それと各調査項目についてクロス集計を行い,カイ二乗検定を行った。カイ二乗検定で有意差の認められた項目を独立変数,幼児への食教育得点を従属変数とし,重回帰分析を行った。幼児への食教育得点と保護者の受けてきた食教育得点についてSpearmanの相関係数を求めた。
    結果 1)幼児への食教育得点が高いほど,間食を夕食2時間以内に食べることはない,平日のテレビ・ビデオの視聴時間が短い幼児が多かった。2)幼児への食教育得点が高いほど,食事作りを負担に思わない,バランスのとれた食事をする,食品を選び食事を整えるのに困らない知識や技術がある保護者が多かった。3)幼児への食教育得点が高いほど,保護者の受けてきた食教育得点が高かった。
     幼児の健康的な食生活の実現のためには,保護者による幼児への食教育が大切であり,保護者が食教育をできるように支援することが必要である。
  • 佐藤 晶子, 中澤 弥子, 吉岡 由美, 小木曽 加奈, 戸井田 英子
    セッションID: 2P-43
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】長野県短期大学幼児教育学科(幼稚園教諭・保育士養成課程)の2年次開講の「小児栄養」において,付属幼稚園の年長児を対象に食育活動を行っている.本報告では,平成21年および22年度に行った調理実習について報告し,今後の課題を検討することを目的とした.
    【方法】調理実習の内容は長野県の郷土料理であり,米の粉を材料にした「やしょうま」作りとした.食育活動の内容は,学生が園児に対して劇などの発表を行った後,学生4~5人と園児2~3人のグループに分かれ,調理実習を行うものである.実習後,学生にアンケート調査を行い,感想や意見,郷土料理に関する知識などについて尋ねた.
    【結果】調理実習は21年2月9日と22年2月7日に行った.アンケート調査の有効回答数は21年度が40名, 22年度が38名で、いずれも回収率100%であった.両年度の回答を合わせた結果、調理実習をして良かったと答えた者の割合は95%以上であり,自由記述の回答からも「とてもいい体験ができた」や「もっとやりたかった」などの前向きなコメントが見受けられた.同時に「もっと食についての知識がほしかった」や「園児にうまく説明できなかった」という反省も多く見受けられた.好きな郷土料理について,3つ以上料理名の記入があった学生は70.5%であり,自分で作ることのできる郷土料理について料理名が3つ以上記入のあった学生は14.1%だった.好きな郷土料理の回答で最も多かったものは「おやき」で59人(75.6%)であった.一方,自分で作ることのできる郷土料理の回答は少なく,「やしょうま」を除き最も多いものは「おやき」で,19人(24.4%)であった.
  • 山梨県北杜市における活動について
    時友 裕紀子, 山内 詩織
    セッションID: 2P-44
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    目的】食育基本法には「農林漁業に関する体験活動等が食に関する国民の関心および理解を増進する上で重要な意義を有する」と謳われており,体験活動の機会を提供する教育ファーム事業が全国に広まりつつある.山梨県北杜市では数年にわたり,小学生対象の教育ファーム事業が展開されており,2010年度からは山梨大学教育人間科学部の学生も同ファーム事業に参加し,小学生とともに活動を行っている.本研究では当ファームの活動状況の把握と,小学生や学生に対する食育の効果について明らかにすることを目的とした.
    方法】2010年度の北杜市教育ファームに参加した小学生,引率の保護者および学生を対象にアンケート調査を実施し,小学生には田や野菜に対する印象などを,保護者には教育ファーム活動によるこどもの変化について,学生には自らの学びや事業に対する評価等について回答を求め,結果の分析を行った.
    結果】2010年度の教育ファームでは米や野菜の栽培・収穫作業の他に,田の生き物調査や豆腐づくり,こども市場,もちつきなど多様な活動が行われた.参加者・回答者数が少なかったため,調査結果は傾向を見るにとどまったが,小学生は田や野菜に対し,好印象を持ち,「自分で育てた野菜はおいしい」「他の野菜も育ててみたい」との回答が多かった.保護者は活動により,こどもの食べ物への興味・関心が高まり,理解・知識が深まったと評価していた.教員志望の学生にとって,活動への参加は食育に関する知識や体験が豊かになり,将来の教員としての資質向上に有意義であると考えられた.
  • 川嶋 比野, 織田 佐知子, 数野 千恵子
    セッションID: 2P-45
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    目的 我々は「染付皿に占める青色の割合が和食に与える影響」(家政誌,2010,Vol.61,no.12)で,白い皿色に占める青色の割合が40%前後の染付皿が多くの和食料理と相性が良かったことを報告した.それを踏まえ,本研究では皿に描かれている絵柄の種類によっても食欲の感じ方に影響があるのか,またどのような絵柄と料理の相性が良いのかについて調査を行った.
    方法 植物,動物,風景,幾何学の絵柄の染付皿から柄の配置等が似ている写真を選び,画像処理ソフトを用いて青色の色合いを合わせ,皿に占める割合を40%程度に調整した.料理は,温菜として筑前煮,天ぷら,卵焼き,磯辺もち,冷菜として寿司,刺身,冷奴,水まんじゅうを用意し,皿と料理の写真を合成して自然な盛り付けに見えるよう大きさを調整した.食物栄養学部の女子大生53名,一般の中高年(40~80歳代)79名を対象とし,料理ごとに4種の皿に盛りつけられた写真を同時に見比べ,どれが美味しそうに見えるか順位法でアンケート調査を行った.
    結果 対象者全体の結果としては,植物は全ての料理と相性が良く,風景は天ぷら,寿司,刺身などの高級なイメージのある料理と相性が良い傾向が見られた.動物は筑前煮や水まんじゅうと,幾何学は磯辺もちと比較的相性が良い傾向が見られた.女子大生と中高年で結果が大きく違ったのは,刺身,磯辺もち,水まんじゅうであり,女子大生はこれら3つとも植物の評価が最も高かったが,中高年は刺身では風景,磯辺もちでは幾何学,水まんじゅうでは動物の評価が最も高かった.中高年の性別で比較すると男性には風景が,女性には植物が好まれる傾向が見られた.また,温菜よりも冷菜で風景が好まれる傾向が見られた.
  • 森 俊夫, 内田 裕子, 杉浦 愛子, 日下部 信幸
    セッションID: 2P-46
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    目的 湿潤-乾燥過程での布表面のしわ外観の変化は極めて多様であるため、これまでに客観的に研究した例はほとんどない。これは、緩和収縮や膨潤収縮、乾燥による収縮などによる布表面の外観変化は大変複雑で、しわ外観の経時的な微妙な変化を視覚的に評価することが極めて困難であったためである。本研究では湿潤-乾燥過程における布のしわ外観の経時的変化を解明するために、カラースキャナを通して布の表面変化を画像として一定時間ごとに計測し、画像解析によりしわ外観の画像情報量を求めた。
    方法 綿とウールの未加工布の湿潤状態に、しわのない外観、ランダムなしわ外観、ランダムな折りしわ外観を付与した。これらの布表面の湿潤―乾燥過程におけるしわ外観の経時的変化をカラースキャナを通して取り込んだ。これらの布表面の画像はグレイレベル画像に変換され、画像情報量として一次統計量(MIU)、角二次モーメント(ASM)、コントラスト(CON)、相関(COR)、エントロピー(ENT)およびフラクタル次元(D)が算出された。
    結果 画像情報量はいずれのパラメータも多かれ少なかれ時間の経過とともに変化するので、時間ゼロに対する時間tの相対比を求め、経時変化を検討した。布は自然乾燥により、乾燥過程で布表面に不均一な外観が形成されることが、画像解析から求められるパラメータにより評価することができた。これは、布が湿った状態では塑性変形を引き起こし、しわ回復性が悪くなり、さらに布が乾燥していく過程において糸や繊維内に吸収されていた水分が蒸発していく時に、糸のクリンプが変化するためにしわが増大すると考えられる。
  • -アカシアマンギュウム樹皮の利用-
    村田 裕子, 古濱 裕樹, 村田 功二
    セッションID: 2P-47
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    目的 世界の森林は毎年1300万haが姿を消していが、その減少速度は1990年代に比べるとやや遅くなっている。これは大規模な造林や森林の自然増加によるものである。これら荒廃地の造林や再植林で注目されるものに早生樹産業植林があり、ユーカリをはじめとする何種類かの早生樹が世界中で広く植林されている。アカシアマンギュウム(Acacia mangium)もその一つで、東南アジアを中心に植林が進められている。この樹木の植林・加工によって、現地に貴重な現金収入がもたらされている。本研究は、アカシアマンギュウムの加工残渣である樹皮を利用し、染色への可能性を検討した。
    方法 アカシアマンギュウム樹皮粉はコシイウッドソリューションより提供を受けた。煮出しによる綿布への染色を試み、Al媒染とFe媒染によって発色性を確認した。さらにエコファッションというテーマで服飾への応用を試みた。
    結果 染色の結果、Al媒染とFe媒染で十分な発色性が確認された。SCI 値の測色結果は、Al媒染ではL*=62.8、a*=8.3、b*=17.9、Fe媒染ではL*=44.1、a*=5.1、b*=12.4であった。染色布を利用して衣服を試作した。色合いやエコロジーとしてのメッセージ性などで興味深い作品を作ることができた。コシイウッドソリューションより提供された資料によれば、樹皮には約30%のタンニンが含まれ、ポリプロピレンと混練りした木質材料では高い抗菌性が確認されている。高濃度のタンニンにより堅牢性を高めることができ、さらに銅イオンを共存させることにより高機能性(抗菌性)の付与が期待できる。
  • 駒津 順子, 小松 恵美子, 森田 みゆき
    セッションID: 2P-48
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    =目的=高等学校家庭科の授業1単位時間(50分等)で実践可能な染色教材の開発を行っている。本研究では作業時間の短縮を検討するために、媒染時間の長短が玉ねぎ外皮染色布の色相および洗濯堅牢度に与える影響について調べた。
    =方法=布と同重量の玉ねぎ外皮を沸騰後20分間煮沸抽出後、濾過したものを染色液とした。室温まで放冷し浴比調整した染色液に綿布を加え、20分間加熱昇温・煮沸して染色した。染色布は軽くすすいで媒染液(6%o.w.f)に5分から20分間浸漬した。媒染後すぐに流水で1分間すすぎ、台所用合成洗剤溶液中(0.75%)で20回撹拌してソーピングを行った後、流水ですすぎ風乾したものを試料とした。浴比は1:50、水は全て水道水を使用した。洗濯堅牢度試験はJIS L 0844のA-1法でLaunder-O-Meterを用いて行い、変退色用および汚染用グレースケールで判定した。また測色色差計で色相と明度を測定した。
    =結果=染色布のL*値では媒染時間の影響は認められなかった。また洗濯前より洗濯後の方がL*値はやや増加した。L*値が最も低かったのはFeであり、一方AlとKはやや高く未媒染と同程度の値となった。色相についても、全ての試料で媒染時間の影響は認められなかった。一方、洗濯前後では色相の変化がみられた。Feはa*値が増加し、Alはa*値が増加しb*値が減少、Kはa*値b*値ともに減少し、何れも未媒染の値に近づく傾向がみられた。洗濯堅牢度は、Feが最も変退色の等級が高く、Alが最も低い結果となった。またFeでは、媒染時間が長いほど堅牢度が高くなる傾向がみられ、10分以上の媒染によって変退色3級以上が得られることがわかった。
  • ‐水分の効果‐
    小原 奈津子
    セッションID: 2P-49
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    目的 化学処理による廃棄羊毛繊維の再資源化を最終目的として、金属塩の羊毛繊維への担持による消臭機能の付与を試みてきた。本研究では、銅塩を酸化羊毛に担持させた場合の含水率の消臭性能向上への効果を検討した。また、銅塩として、硫酸第二銅および塩化第二銅を用い、その消臭性への効果を比較した。
    方法 試料:メリノ種羊毛繊維をジエチルエーテルで10時間ソックスレー抽出した。酸化処理:体積比1:9の30%過酸化水素水と98%過ギ酸の混合溶液に羊毛を加え0℃で20分間撹拌した後(浴比1:30)、水で洗浄した。銅塩の羊毛への担持:4.2%水酸化ナトリウム水溶液に6gの酸化羊毛を加え(浴比1:20)室温で1時間撹拌後、エタノールで再沈させた。得られた処理羊毛を、塩化第二銅水和物(21.8g)もしくは硫酸第二銅五水和物(24.0g)水溶液に加え室温で48時間振とうした。銅含有量:試料を硫酸と過酸化水素中で加熱分解したのち、ICP発光分光分析を用いて定量した。消臭性試験:乾燥空気と1gの処理羊毛を入れた5LのAl製バッグにエタンチオールを注入した後(80~100ppm)、メルカプタン用気体検知管を用いてその濃度変化を4時間追跡した。
    結果 処理により、7.6~10%の硫酸銅担持羊毛および8.4%塩化銅担持羊毛を得た。本試験条件では未処理羊毛の消臭性は認められなかった。一方、硫酸銅担持羊毛では、4時間後のエタンチオール濃度は初期濃度の58%に、塩化銅担持羊毛では、77%に減少し、一定の消臭性を付与することができた。処理羊毛に試料重量の50~200%イオン交換水を含ませた場合、その消臭性は著しく向上した。特に含水率50%の硫酸銅担持羊毛の場合、1時間後のエタンチオール濃度は初期の17%に、同じく塩化銅担持羊毛の場合36%に減少し、4時間後にはエタンチオールはともに検出されなかった。本研究は科研費基盤研究(C)22500722の補助を得て行われた。
  • 古濱 裕樹
    セッションID: 2P-50
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    目的  天然染料は低環境負荷で安全性も高いと一般には思われがちだが、天然色素によって堅牢な染色を行うには重金属を含めた金属イオンによる媒染が高頻度で行われている。環境負荷低減のためには発色や堅牢性を維持できる最小限の金属量で染色されることが望まれる。そこでコチニール染色における金属イオン使用量と発色及び堅牢性の関係の解明を試みた。
    方法 コチニールシルバー(5%o.w.f.)から80℃の蒸留水で30分間色素抽出し染液を得た。Fe2+、Sn2+の各イオン水溶液(濃度を0.02mol/L~1×10-8mol/Lの間で倍数希釈的に14種類調製)で媒染(先媒染、浴比1:50)した平織布(毛、絹、ナイロン66)を、浴比1:50で80℃、1時間染色した。染色布は分光測色計によって分光反射率を得た。染色布の洗濯堅牢性は洗濯試験機を用いて、日光堅牢性は屋外天日照射させて、それぞれ色彩値の変化を調べた。
    結果 金属イオン濃度と発色の関係では、鉄、スズともに1×10-4~5×10-5mol//Lの間に大きな色調の変化がみられた。これがカルミン酸のpHに変動に伴う色調変化ではないことはpH緩衝液を用いて確認した。1×10-4mol/L以上の濃度では色調は安定し、今回の染色条件では1×10-4mol/Lが発色に要する金属イオン最低所要濃度であった。一般的に行われる天然染料染色の金属イオン媒染濃度(1~0.1%w/w)と比較すると50~500倍以上に薄い濃度である。色素濃度や金属イオン吸着状態などについては今後検討を要するが、今回の結果から現代の一般的な金属イオン使用量は多すぎると言える。また、堅牢性は1×10-4mol/Lの濃度より高めても向上しなかった。
  • 身幅の設定について
    知野 恵子, 伊地知 美知子, 川畑 昌子, 小山 京子
    セッションID: 2P-51
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    【 目 的 】 これまで女物浴衣製作について、身体寸法・柄あわせ・製作寸法・縫製方法など基礎となる項目を取り上げ報告した。和服の立ち姿は、後の正中線に背縫い目がある、前の帯下位置で右脇縫い目と上前衽の衿下側が重なっている、腰から下側は裾に向かって窄まったスタイルが美しいとされている。この美しい姿の下肢となるためには、腰囲から算出する身幅(後幅、前幅、衽幅)の設定が重要である。 和服の特徴としてどのような体格・体型であっても限られた一反で製作する。現在実習する学生数は減少しているが、体格にはバラツキが多く、腰囲もこれまでにないほど大きい学生も現れている。このような腰囲寸法への対応は、課題の一つといえよう。本報は各幅寸法設定について、先人たちの知恵と工夫を辿り、体格向上が著しい学生にも適合する寸法の検討を目的とする。 【 方 法 】  高月資料を基に幅に関する記載有無・割り出し方法などの文献調査をする。衿下寸法の位置で幅を狭める合褄幅の有無による形態的差異について比較検討する。 【 結 果 】 これまで扱った学生の腰囲は82cmから120cmである。和服が現在の形態になったのは江戸時代とされており、長着全体の身幅は並幅4枚で前と後、半幅2枚が衽という構成である。各幅寸法は1890年代から現在まで概ね同じ値であり、全体の身幅{(後幅+前幅+衽幅)×2}は計測腰囲の約1.5倍である。前腰幅(前幅+衽幅)が着装時に重なる部分となり、半幅の布を上手く活用している。スカートの脇は約腰囲/4の位置であるが、Kimonoではスカートより脇が前方に約5cm寄り、後幅が広い。この設定により後姿がすっきりし、脇が前寄りのため、丈が腰から踵まであっても歩行の際の足さばきが円滑となる。現在、浴衣地の並幅(36cm)が38cmと広くなり、腰囲120cmであっても計算上は各幅寸法に対応可能である。
  • 植竹 桃子
    セッションID: 2P-52
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    目的 筆者はすでに、紙おむつの模擬的装着を行う事で宣伝等による先入観を払拭し、つけ心地の現実を理解できることを報告した。本研究では、育児を行う母親に対して必要とされる情報・教育を明確化するために、育児中の母親によるおむつに対する評価の実態を把握することとした。
    方法 東京都内および近県に在住で第1子のみをもち、おむつを使用中の母親100名を対象として、郵送調査法による質問紙調査を平成22年12月に実施した。この調査のうち本研究では、紙おむつに対するイメージ語(5語以内の記述)と自由記述回答の分析を行った。イメージ語は、既報と同様のカテゴリーに分類し、おむつに関する自由記述回答(意見・要望等)は、KJ法により記述内容を分類した。
    結果 (1)イメージ語においては、紙おむつ自体の機能を肯定評価する語(蒸れない、通気性がよい、快適、良い、安心)の出現(5~15件)が注目され、つけ心地の現実を体験する必要性がうかがわれた。また、装着・排泄に伴って生じる現象の語(吸収力、もれ、かぶれ)、購入・ゴミ・おむつ離れ等の日常生活に伴って発生する語が出現した。 (2)自由記述回答では、紙おむつのゴミ・環境問題(12件)、おむつ離れへの影響(15件)、布おむつへの興味・肯定(24件)の記述から、布おむつに関する情報の必要性がうかがわれた。また、紙おむつを満足とする記述(24件)の一方、価格・機能・吸収力・もれ・サイズ(22~31件)や選択・購入のし易さ(16件)への要望が認められた。 植竹桃子,紙おむつの手部装着実験を組み込んだ授業,東京家政学院大学紀要(自然科学・工学系),50,21-30,2010年
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