一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
63回大会(2011年)
選択された号の論文の301件中51~100を表示しています
5月28日
  • 永井 伸夫, 波多野 南, 小柴 朋子, 田村 照子
    セッションID: 2P-53
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    【目的】ヒトは身にまとう衣服によって気分に変化が生じ,自分が好きな衣服を着用した時に高揚感が生ずる場合がある。本研究では,このような現象のエビデンスを検証するための一助として,好みの衣服,または嫌いな衣服を着用した時の心理学的,生理学的反応について検討した。
    【方法】健康な女性5名(20~22歳)に,事前にファッションの嗜好性に関して質問紙による調査を行った。被験者は,好みの衣服,または嫌いな衣服に着替える前後において,心理的ストレス指標としてState-Trait Anxiety Inventory (STAI)の状態不安(state anxiety; A-State),自律神経機能の評価として心拍変動の周波数解析,唾液中ストレスマーカーとしてα-アミラーゼ活性と分泌型IgA(secretory IgA; sIgA,enzyme immunoassay法にて測定)について測定した。また,着用した衣服を他人に見られることによる影響を想定して,90分間の講義受講後に各種マーカーについて測定を行った。
    【結果】好みの衣服を着用することにより状態不安(A-State)のスコアが有意に低下し,不安によるストレスが軽減したものと思われた。自律神経機能の解析により,好みの衣服により副交感神経系で若干の亢進がみとめられた。唾液中ストレスマーカーにおいては,嫌いな服装によりアミラーゼ活性を一過性に上昇し,sIgA濃度は低下した。好みのファッションを身にまとうことで,口腔,鼻腔などの粘膜における局所免疫を担うsIgAの濃度が上昇し,免疫力の向上を促す可能性が示唆された。
  • 角田 由美子, 石川 亜沙美, 山本 いづみ
    セッションID: 2P-54
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    目的 サンダルはデザインによって歩行しやすいものと歩行しにくいものがある。女子学生を対象にサンダルのデザインと歩行のしやすさについてアンケート調査を行った結果、デザインによって足の甲が固定されず、脱げやすい、早く歩けない、つまずきやすいなどの問題が起きていることが明らかとなった。これはサンダルのストラップの位置が関係していると考えられるため、歩行しやすいサンダルのストラップの位置について検討を行った。
    方法 ヒール高5.5cmの下駄サンダルにストラップ(1cm幅、1本)の位置を変えて固定し、歩行のしやすさを検討した。ストラップの位置は1)MP関節(中足指節関節)に平行2)小指付け根を固定し内側斜め3)親指付け根を固定し外側斜め4)立方骨を固定し外側斜めの4種類である。これらの位置を1cm間隔で移動させた。被験者は21~22歳の健康な女子学生7名である。サンダルを着用して歩行した状態をVTR撮影後、デジモ社製動作解析ソフト2D-PTVを用いて踵と爪先のずれを測定した。さらにニッタ株式会社製ゲイトスキャンとフットスキャンを用いて測定し、歩きやすさについて5段階法による官能評価を行った。
    結果 歩行しやすいストラップの位置は1)MP関節に平行では、MP関節から中足骨の中間を固定する。2)小指付け根を固定し内側斜めでは、舟状骨の位置を固定する。3)親指付け根を固定し外側斜めでは、第5中足骨粗面の位置を固定する。4)立方骨を固定し外側斜めでは、足の甲の峰線の形状に沿わせて固定する。これらの位置では、踵と爪先のずれは少なく、大きな歩幅で速く歩行することが可能となり、官能評価も良好であった。以上の結果から、サンダルのストラップの位置が歩きやすさに影響を与えることが明らかになった。
  • 兵藤 亮, 田村 直也, 藤原 久美子, 佐藤 安信, 蓼沼 裕彦, 高岡 弘光
    セッションID: 2P-55
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    目的 昨今の衛生意識の高まりから、衣類の洗濯において目に見える汚れだけでなくニオイや菌といった“目に見えない汚れ”まで落としたいというニーズが高まっている。本研究では部屋干し者の衣生活サイクルで生じる悪臭を中心に、種々ニオイの不快度やニオイを感じる場面を調査、生活者の意識と共に実態についても明らかにすることとした。
    方法 普段の生活の中で生じた悪臭のする衣類を実家庭より回収し、ニオイの質ごとに悪臭を分類、把握した。更にその上で、確認された代表的な臭気を発する数種の衣類を生活者に実際に嗅いでもらい、各々がどのような場面で感じるニオイであるかなどについて調査(主に部屋干しする人 38名、主に外干しする人36名、計74名)を実施し、実態を整理した。
    結果 回収した衣類から衣生活で生じる悪臭としては、脂肪酸、アルデヒド、アミン、チオールなどが主体となる様々なニオイが確認された。各々の臭気を感じる場面に関して、特に洗濯後部屋干し乾燥により生じやすい中鎖脂肪酸を主体とする「汗のような酸っぱいニオイ」などでは、乾燥が進むにつれ感じにくくなるものの、使用により湿ることで再発生しやすいニオイであるという認識が強いことがわかった。実際に、部屋干し時に悪臭を発していた衣類を用い使用時を想定した実験を行った結果、湿ることによりニオイの再発生が認められ、更に臭気強度が高まる要因としては水分だけでなく温度の影響も大きいことがわかった。各場面での悪臭の発生要因などを詳細に整理し、対応した抑制技術を開発することが重要である。
  • -伝統衣服と洋服-
    猪又 美栄子, 谷井 淑子, 加藤 求, 下村 久美子
    セッションID: 2P-56
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    目的 伝統的な衣服文化は生活の近代化とともに無くなりつつあり、後世に伝えるためには詳細な調査と保存活動が必要である。昭和女子大学の国際文化研究所の服飾部門では、研究プロジェクト「ベトナム伝統農村集落の地域比較研究と保存」に参加して、2005年からベトナム北部・中部・南部の衣生活調査を行っている。70歳以上の高齢女性は伝統的な衣服を日常的に着用しているが、高齢男性では日常的に着用している人は既に少数である。ベトナムの国家文化財に指定されているハノイ近郊のドゥオンラム村の高齢女性について、冬の衣生活の調査を行い、伝統衣服と洋服の着用状況について考察した。
    方法 (1)2010年12月に行った衣生活調査のうち、14名の高齢女性(71~91歳)について解析した。(2)聞き取り調査の内容は、着用衣服の種類と枚数、就寝時の着用衣服、1日の生活時間、昔の防寒衣についてなどである。(3)室内において、衣服の最内層の温度・湿度を上腹(剣状突起直下)で椅座位安静で5分間測定し、温熱的快適感について5段階で評価させた。室内の温度は17.1~21.0度であった。
    結果 (1)夏は伝統衣服だけを着用しているが、冬は伝統衣服の上に毛糸のカーディガンやベルベットの上着を重ね着していた。(2)上半身の衣服枚数は平均4.4枚(3~8枚)で、下半身はクアン(ズボン)に素足で、サンダルを履いていた。9名はクアンを2枚重ねていた。衣服の最内層の温度は平均32.4度で、伝統的な衣服に洋服を組み合わせて、快適に過ごしていた。(3)就寝時は、日中に着用していた衣服の上にカーディガンや毛糸のズボン等を重ね着し、耳を覆うためにスカーフを被り、靴下や手袋を着用して寒さを防いでいた。
  • 小町谷 寿子, 石原 久代, 間瀬 清美
    セッションID: 2P-57
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    目 的 高等教育における情報化の中で,多くの大学がe-Learningのシステムを導入しているが,被服の分野で十分機能しているとは言い難い.一方,大学入学生は,高等学校での学習指導要領の改訂により「家庭基礎」と「家庭総合」などの履修者に入学時から被服の知識・技術において大きな差がある.そこで我々は,これらのレベル差に対応する手段としてLMSを使い学生が自由に自主学習できる環境整備のためにコンテンツを作成し,その評価と課題について検討してきた.今回はスカートの作図について検討したので報告する.
    方 法 タイトスカート作図方法のコンテンツをPowerPointで作成し,本学のLMSであるWebCTを利用し,アップロードの方法を検討した.実験は70名の学生をコンテンツから作図する学生とプリントから作図する学生に分け,評価と課題を調査した.さらに,完成した製図を教員が評価し,実際の理解度を検討した.
    結 果 本研究は科目間を横断的に繋ぐことが重要であるため、コンテンツ作成は汎用性を重視し、特殊なソフトを使うことなくPowerPointを利用したが、アニメーション機能を使用するとWebCTへのアップロード時に不規則な図形の変形が生じた.そこで,Adobe CaptivateによりHTMLへ変換した結果,Web上で正常に図形とアニメーションが作動することを確認した.作成したコンテンツに対する評価は,分かりやすさ、理解度ともにコンテンツの利用の方が高かった.製図の教員評価でも,正解率が最も低い「後ろ中心側ダーツ」で,プリントの54.3%に対しe-Learningでは94.3%に向上するなど,難しい部分に対する理解度の向上が確認できた.本研究は,平成21年文部科学省科学研究費補助金の助成を受けて行った.
  • 平林 由果, 青山 喜久子, 平岩 暁子
    セッションID: 2P-58
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    【目的】高齢者施設を訪問して装い支援を行う活動「ビューティーキャラバン」において、パンツを着用している高齢女性にスカートを提案すると喜んで受け入れられた。そこで、高齢女性のパンツ、スカート着用の実態と意識を把握するために調査を実施した。更に、パンツの機能性を持つスカート風フレアパンツを提案するため、手指などの機能障害により着脱が困難なリウマチ患者にも着用評価を依頼した。 【方法】まず、ビューティーキャラバンに参加した高齢者に対し、服装に関して聞き取り調査を行った。ボランティアの美容師がヘアメイクを施し、写真撮影を行った後、装いの満足度についても尋ねた。次に、腰部ニット切り替えのフレアパンツについて、切り替え部のみ異なるニット地を使用して4種類を比較した。体型に合うものを着用してもらい、着脱しやすさ、立位時、座位時の快適性などを評価してもらった。評価者は、高齢者8名、リウマチ患者10名で、日常生活動作についても調査した。 【結果】普段はパンツをはくと回答した人が約9割で、大部分の高齢女性が日常はパンツスタイルであることが分かった。「おしゃれする時にスカートをはきたいか」という設問に対して、はきたいと答えた人が約4割で、多くの高齢女性は「スカート=おしゃれ」という感覚を持っていることが確認された。高齢者に好まれたフレアパンツはタテ方向に伸びない、あるいは伸びにくいニット地であった。伸びやすいニット地は、座位時に布がたるんで見栄えが悪いと不評であった。リウマチ患者では、ウエストゴム部の伸びにくいニット地は評価が低かったが、残りの3種類はいずれも好評であった。以上より、好まれる腰部ニット地は手指の症状により異なることが示唆された。
  • 工藤 彩, 川端 博子, 生野 晴美
    セッションID: 2P-59
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    目的 授乳期においては体型の変化や授乳により妊娠前とは違った衣服が求められ、ブラジャーに関しては授乳専用品が利用される。授乳専用ブラジャーは一般に母乳パッドと共に使用され、乳頭部の保護と母乳を吸収する役割を果たす。本研究では、綿の授乳専用ブラジャーに3種のパッド(不織布と吸水ポリマーからなる使い捨て、綿100%布製、ポリエステル100%布製)を装着し、パッド内部の温度・湿度環境の実態把握と着用感の比較を目的とする。
    方法 授乳期の女性の協力を得て、日常生活の中でパッドに付着する母乳の量と、パッド内部の温度・湿度の推移を把握した。室温28℃・湿度60%の人工気候室内で、女子学生被験者15名が30分間安静を保ち着用感の評価をした後、母乳にみなした37℃の温水を4mlパッド内部に注入し、安静30分後に再び着用感評価を行なった。5名については、小型のロガー付きセンサーを用いてパッド内部の温度・湿度を測定した。
    結果 交換時までに使い捨てパッドに付着する母乳量には、同一人物でも、左右差があるなど一定の傾向はみられない。多い時には10gを超えるケースもある。パッド内部の温度は36℃前後、湿度は90%を超え、高温多湿である。一方、女子学生では温度33℃、湿度40~50%前後であった。
     人工気候室内の被験者5名の水注入前のパッド内温度・湿度の平均は35℃、60%前後で、3試料間には温度・湿度ともに差はみられない。水注入後には、使い捨てでは温度・湿度はほとんど変化しないが、綿とポリエステル製では温度はともに下降した。湿度は、綿では急激に、ポリエステルでは緩やかに上昇するが、30分後には両者とも約90%になる。このことから、布製では母乳の漏れがある時にドライな環境を保つのが難しいと考えられる。不快感においても、水注入前には3試料間に差はみられないが、水注入後には使い捨てがもっとも優れていると評価された。
  • 葛西 美樹, 奈良 拓哉, 工藤 寧子
    セッションID: 2P-60
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    目的 ほとんどの学生は、これまでの家庭科教育を通して被服実習について学習している。しかし、その技能は、地域・規模・学科の種別等により違いが見られ、さらに個々の理解度により習熟度の個人差がかなり大きい。そのため不得手な学生は進度が遅れがちになり、学習意欲の欠如を生む一因となる。そこで、本研究では苦手意識の早期克服や意欲向上を目的に、基礎縫い技術の習得を支援するDVD-Video教材の開発を試みた。
    方法 これまで基礎縫いを中心に利き手に対応した布標本を活用してきたが、自学自習支援教材としては分かり易さの点で不十分であると感じた。そこで動画や写真・音声・アニメーションを組み合わせたオーサリングシステムの開発を行った。完成したマルチメディア教材は学内および家庭での学習を可能にするため、DVD-Videoフォーマット規格に準拠した。さらに、左利き学生に対する支援・家庭科教員を目指す学生の実技指導力向上も視野に入れた。開発段階では、本学学生を対象に聞き取り調査を行い、完成度を高めるために改良を繰り返した。
    結果 学生からは、動画とアニメーションの組み合わせが効果的であり、自学自習や衣服の修繕に活用できる等、全体的に良好な評価を得た。課題としては、動画の指先部分の拡大表示。用具の使い方や布の取り扱い等、基礎縫い以外の部分について要望があげられた。
    [使用ソフトウエア]Adobe Creative Suite 5 Master Collection
  • 千葉 桂子
    セッションID: 2P-61
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    目的 衣服設計の上で重要な要因である布は,繊維組成,組織,色および柄などの組み合わせにより多種多様なものがある。製作する際には,質感についても吟味し,選択できる能力が求められる。大学生たちはファッションに対する意識は高いものの,布の質感についての関心は低く,授業中の説明においても布の質感を表すイメージが共有されているのか疑問である。そこで,試みとして大学生に布の質感に対する評価を行わせ,そのイメージを明らかにするとともに学生間の共有の程度について把握することを目的とした。
    方法 被験者には,試料を実際に触りながら評価を行わせた。被験者は本学学生,女子20名であった。試料はポプリン,ボイル,デニム,など12種類の布とした。評価には,9つの形容詞対に5段階の評定尺度を設定した評価シートを用い,各人のペースで行わせた。なお,試料は同色で揃えることができなかったので,なるべく色については無視するように注意を与えた。評価終了後には,イメージと繊維や組織との関連性について理解したことや感じたことについて書かせた。実施日は2011年1月17日であった。
    結果 各試料の平均評定値によりイメージプロフィールを求めたところ,モスリン(平織,毛100%)とボイル(平織,綿100%),ジャカード(紋織,ポリエステル100%)と綿サテン(朱子織,綿100%)が,それぞれ類似した結果を示した。また,各試料の個々の評定値の標準偏差をみると,評価性を表す「好きな-嫌いな」等において比較的値は小さかった。中でも,全員の評価が一致したのはボイルに対する「厚い-薄い」であり,最もばらついたのはギャバジンの「光沢のある-光沢のない」であった。
  • 岡村 好美, 森長 莉加
    セッションID: 2P-62
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    【【目的】衣類におけるクロスエージ消費は90年代に母娘において注目されるようになった.この消費傾向は今日ますます盛んになっており,様々な方向から母娘消費に至る要因が解析されている.一方,家族役割の中で最も変化が見られるのは父親であり,“育メン”が注目される中,男目線に応えられるデザインの製品が開発され,父子消費という新たな消費領域も形成されているようである.  本研究は,既にクロスエージ消費を実行しているかあるいは,近い将来“育メン”の可能性がある大学生を対象として,被服における親子消費の実体を調査するとともに,消費形態と生活意識の関係を検討した. 【方法】2009年11月から2010年5月にかけて,宮崎市および周辺に在住する大学生351名を対照に質問紙による調査を実施した.質問内容は生活状況,被服行動,および,63項目の生活行動意識である.生活行動意識は5段階尺度で評価を求めた.回答は単純集計等により解析・考察した. 【結果】大学生が自由に使える金額は月に1~2万円位である.被服の着用において女子学生は母親・姉妹との間で50_%_程度が被服貸借を行っているが,男子学生では15_%_程度であった.家族間の被服貸借は親子間より兄弟・姉妹間において肯定的で,この傾向は男子学生でより明瞭であった.大学生の共通した生活行動意識として「自己充実」,「経済性」,「イメージ」意識が抽出された.女子学生では「情報」意識も認められ,これが女子学生の特徴であると考えられた.また,被服貸借をする大学生の男女共通意識として「経済性」が認められ,相違意識は男子学生では「自己充実」,女子学生では「イメージ」意識が認められた.
  • 庄山 茂子, 青木 久恵, 窪田 惠子, 栃原 裕
    セッションID: 2P-63
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    目的近年、看護服のスタイルはワンピース、上衣とパンツやスカートなど様々である。しかも白だけでなく様々な色や柄が施されている。このような変化には、機能性の向上、白衣が威圧感や恐怖感を増幅させるなどの様々な背景が考えられる。現在、多くの医療機関で、どのような看護服を採用すべきか検討がなされている。 そこで、本研究では異なるデザインの看護服に対し、看護師がどのような印象を抱くか明らかにする。
    方法(1)調査概要 1)試料作成:パンツ、スカート、ワンピースの3スタイルに白地に柄無しと花柄有りの2種、合計6サンプル、2)対象者:福岡県の女性看護師304名 (平均年齢31.8歳、SD10.6歳)、3)調査方法:配票留置法による質問紙調査、(2)調査内容:患者の立場で好ましい、好ましくない看護服の1位、看護する立場で着用したい、着用したくない看護服の1位、各サンプルに対するイメージ評価(3)分析方法:単純集計、t検定、一元配置分散分析、因子分析
    結果患者の立場と看護する立場で好ましい看護服の1位は、パンツスタイルで柄無しの白衣であった。患者の立場と看護する立場で好ましくない看護服の1位は、ワンピースで白地に花柄であった。看護服のイメージについては、「責任感」、「思いやり」、「美しさ」、「個性」、「機能性」の5因子が得られた。スタイル別に平均因子得点を分析した結果、「責任感」、「美しさ」では柄なしの白衣、「思いやり」、「個性」では花柄のスタイル、「機能性」では、柄の有り無しともパンツスタイルの因子得点が高かった。これらの因子は看護服に求められる要素であるため、今後これらを具備するデザインの検討が必要である。
  • 河地 洋子, 原田 季典, 梅林 千晶
    セッションID: 2P-64
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    学校制服は、制服を制定する学校、購入する保護者、着用する生徒から成り立ち、着用者が好きな服を購入する一般アパレルとは大きく異なる衣類である。
    しかし近年の少子化により、学校も制服を制定する際、生徒の嗜好を無視できなくなって来ている。そこで生徒と学校=大人の色彩嗜好差、学校制服における第一印象の着眼要素の違いの2点について調査した。
    調査1は、現在の女子高校生と成人に対して130色のカラースケールを見てもらい、10の設問に解答してもらう意識調査を行った。
    調査2は高校を卒業したばかりの女子短期大学1年生75名と20~60代の成人男女53名を対象に心理学の色・形テストを応用して実験を行った。実験は8枚の制服写真を見てもらい、直感で2グループに分類してもらう手法をとり、分類する際に色・形のどちらに着目する傾向があるのかを調査し、成人との比較を行った。
    調査1の結果は、成人は青紫の色相を好み、高校生は赤紫や赤の色相を好む。両者の間には明確な差異が現れた
    調査2の結果は、高校生は形に着目し、成人は色に着目する傾向がある事が分かった。2つの結果から高校生と成人の間には色の嗜好、制服の識別に関して、明確な差があることが分かった。
  • 羽成 隆司, 増田 智恵, 石原 久代, 原田 妙子, 大澤 香奈子
    セッションID: 2P-66
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    目的 着装行動に関わる意識の高い男性が数多く存在する一方で,いわゆる中年期にある男性の中には,着装への関心が低い者も多く存在していると思われる.“適度なおしゃれ”は,心身の健康にとって有効であることが指摘されているが,近年の中年期男性におけるメンタルヘルス危機の問題を考える上でも,彼らの着装行動の特徴を把握することは重要である.本研究は,この年代の男性を対象にした質問紙調査によって,着装行動の特徴と意識,また,それらと親子関係との関連について分析した.
    方法 151名の男性が分析対象であった(平均年齢:52.6歳,SD:4.5).彼らは著者らが指導している女子大学生の父親であり,女子大学生を通して質問紙調査への協力を依頼した(回収率54%).質問項目は,職場でのドレスコード,着装へのこだわり,被服選択の自主性,満足度,メンタルヘルス,人間関係,ファッションに関わる社会規範への意識,父娘関係等から構成されていた.
    結果 全般的な傾向として,買い物や外出時の服の選択は自身で行い,自身の服装に概ね満足しており,仕事や人間関係に服装は重要であると考えている一方,自身をおしゃれだとは思っておらず,服の購入は量販店や大型専門店が中心であり,ファッション意識はあまり高くないという特徴が見出された.家族や職場の人間関係は概ね良好であるが,心身の不調や仕事上の不具合を感じている男性が多かった.娘との関係は良好な場合が多いものの,娘の服装に関心を持っていない男性が多かった.なお,メンタルヘルス上の問題を自覚している男性に,むしろ着装意識の高い場合が多く,“おしゃれな男性は健康”という単純な結びつきは該当しないことが示唆された.
  • 高橋 美登梨, 蒲池 香津代, 赤根 由利子, 高岡 朋子
    セッションID: 2P-67
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    目的 近年,最近の若い男性を表す言葉として「草食系」がメディアに取り上げられるようになった。当初は主に恋愛に奥手な男性を指す言葉であったが,最近では日常生活全般に対して淡白な様を示すこともあり,多様な使われ方をしている。いずれにしても,以前に比べて,男性の生活全般に対する価値観の変化が一因と考えられる。そして,このような価値観の変化は,被服行動にも影響を与えると推察される。そこで,本報告では,生活意識と被服行動の関連性を検討した。
    方法 調査は,男子大学生285名を対象として,2010年10月~11月に集合調査法により実施した。調査内容は(1)被服行動(32項目,5段階評価)(2)生活意識(恋愛観,結婚観,貯蓄・消費態度,生活習慣に関する19項目,5段階評価)である。調査データは,因子分析,クラスター分析等の統計処理により解析した。
    結果 (1)被服行動の項目を因子分析した結果,「流行おしゃれ」,「女性化おしゃれ」,「規範的おしゃれ」,「機能性重視」,「他者重視」の5因子が抽出された。(2)生活意識をクラスター分析した結果,被験者は「堅実型肉食系」,「浪費型肉食系」,「草食系」,「無頓着系」に4分類された。(3)4分類された生活意識と被服行動との関連をみるために,被服行動各因子の尺度得点の高得点者を生活意識4クラスター群で分類し,尺度得点の平均値を一元配置の分散分析・多重比較で解析した。その結果、「草食系」には「女性化おしゃれ」、「堅実型肉食系」には「規範的おしゃれ」の特徴が見られた。草食系の男子学生は女性用の小物やフレグランスをつけるなどの女性的なおしゃれをすることが示唆された。
  • 熊谷 伸子, 青木 博松, 山本  嘉一郎, 芳住 邦雄
    セッションID: 2P-68
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    目的 携帯電話やインターネットなど電子メディアを用いたコミュニケーションの普及が、目覚しい。事実、平成22年9月末現在での携帯電話の加入件数が約1154万件にものぼっている。SNSが浸透したこともあり、携帯電話は今やコミュニケーションツールとして、特に若い世代にとって欠くことの出来ないものと言っても過言ではない。本研究では有力な社会階層の一つである女子大学生を対象として、このような現日常化における携帯電話コミュニケーションと若年女性の流行対応意識の関連性を検討することを目的とした。
    方法 関東圏に在住する女子大学生148名を対象に2010年7月、質問紙による集合調査法で調査を実施した。質問内容は、情報伝達と流行に関する10項目、友人関係に関する7項目等である。これらの項目に対して4段階尺度で評価を求めた。
    結果 調査対象者では全員が、携帯電話を所有しておりその内訳は、1台所有している人が66.2%、2台が33.1%、3台が0.7%となっており、約4割の人が2台以上所有していた。この背景には、iPhonen等スマートフォンの影響があると見込まれる。若年女性における情報伝達と流行対応意識の解析にクラスター分析(ウォード法)を適用した結果、3グループによる意識構造が明らかとなった。第1グループは、ファッションにおいて流行を意識する、スマートフォンに機種変更したい等、「情報伝達においても現出した流行同調意識」であった。第2グループは、持ち物を自分色に染めたい、着せ替えツールを利用して自分だけの携帯にしたい等、「情報伝達においての周りとの差異化意識」であった。第3はiphoneに機種変更したい、化粧においてオリジナリティを意識する等、「情報伝達でも自己でも見た目重視の意識」という群であった。以上のようにファッション意識が携帯電話コミュニケーションの選択に反映され、少なからぬ関連性があることが判明した。
  • 大橋 寿美子, 岡崎 愛子
    セッションID: 2P-69
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    【目的】近年、家族機能の弱体化とともに、地域の社会的サポートネットワークが崩壊してきている。一方で、住宅の一部の地域の人への開放や、空き店舗などを活用した、居住地域での居場所づくりやネットワーク再生の取り組みがみられ始めている。本研究では、誰もが気軽に立ち寄ることができる「もうひとつの居場所」形成の必要性と可能性を考察し、居住地域におけるコミュニティ再生の方法を検証し、実践することを目的とする。なお本報告では先進事例の調査から、居場所づくりの方法や実態を明らかにするべく、設立経緯、空間特徴、運営方法、利用実態について報告する。
    【方法】まちの縁側クニハウス(名古屋の千種区高見、1999年~)を対象事例として、設立者とスタッフへのヒアリング調査、使われ方調査を行った。調査は2009年11月、2010年8月の2回、実施した。
    【結果】設立経緯は、元看護師の経験を活かして、誰もが気軽に会話を楽しんだり相談できる場所として自宅の一部開放、その後現在の全面的な地域開放空間とした。空間特徴は、全面道路から視線が抜け室内の様子が見える、くつを脱がずににふらっと気軽に立ち寄れる土間空間がある、くつろげる畳の小上がりのスペースがある、池や緑がある庭、などである。運営方法は、ボランティアスタッフが2名常駐し、運営している。運営資金は、スタッフの積立金や支援者、見学者、相談者らの寄付金である。子供~高齢者、障害者など平均、日に10人程度の利用がみられる。お茶や会話や遊び、勉強、育児などの相談や障害者家族の交流会、クリスマス会などに使われていた。設立目的である、気軽に立ち寄り会話を楽しんだりや相談できる、もうひとつの居場所となっていた。
  • 生活行動と室内音環境に関するケーススタディ
    藤原 陽子, 鈴木 佐代, 豊増 美喜, 岡 俊江
    セッションID: 2P-70
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    目的 放課後児童クラブの生活環境整備に関して,既報ではアンケート調査から音がうるさいことにより会話や電話に支障が出ていることを明らかにした.本稿では児童や指導員にとって快適な室内環境のあり方を検討するため,放課後児童クラブにおける生活行動と室内音環境の現状を調査し報告する.
    方法 北九州市内の放課後児童クラブ2施設(Hクラブ・Iクラブ)を対象に,夏休みと平日の各1日について生活行動の観察調査と5分間の等価騒音レベルの連続測定を行った.調査実施期間は2010年8~9月.対象クラブは2施設とも2009年竣工で,活動室の床面積はHクラブ約80m2,Iクラブ約100m2,床仕上げ材はフローリングである.
    結果 2施設の夏休みの1日の流れは「朝礼→宿題→外遊び(室内も可)→昼食→室内自由遊び→おやつ→室内自由遊び→帰宅」である.クラブの生活の中で長い時間を占める室内自由遊びの内容は,Hクラブではおもちゃを使用しない鬼ごっこやぬり絵,Iクラブでは積み木やブロック遊びが多く観察された.活動室の騒音レベルは,共通して児童が指導員の説明を受ける時間帯が最も低い(Hクラブ49.8dB,Iクラブ70.4dB).最も高いのは,Hクラブでは昼食終了から自由遊びの時間帯の90.4dB,Iクラブではおやつの時間帯の88.3 dBである.また,騒音レベルが85dB以上の時間帯に観察された発生音は共通して児童及び指導員の声が多い.一方でHクラブでは足音,Iクラブでは積み木・ブロックの音がそれぞれ観察された.2施設の活動室は,天井高や床面積,床仕上げ材等に共通点が多いが,観察調査により児童の生活行動や発生音に相違があることが明らかとなった.
    本研究は平成22年度福岡教育大学研究推進支援プロジェクトの一環として実施した.
  • 王 飛雪, 中山 徹
    セッションID: 2P-71
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    【目的】都市への急激な人口集中と都市経済の拡大によって、中国の歴史都市の多くが急速に変貌を遂げている。中国歴史上「九王朝」の都と言われている洛陽は、河南省西部にあり、黄河の中流に位置している。かつて中国古代の政治経済の中心地でもあり、後漢・曹魏・西晋・北魏・隋などにおいて都城が設置されているが、現在中国の「歴史文化名城」であり、国際旅行都市ともされた。ユネスコ世界遺産に登録された竜門石窟も洛陽市郊外に位置している。戦後の洛陽はこの20年間の間に大きな変化が遂げた。洛陽に関する古代の都市研究は多く見られたが、現代洛陽の都市計画の変遷に関する研究は極めて少ない。 本研究では、戦後洛陽の都市計画を着目し、以下の点を明らかにすることを目的とする。 _丸1_ 近年の洛陽の都市空間構造は、どのように変化しているかを明らかにし、その現状と問題点を歴史的に解明する。_丸2_ 1990年代以後、洛陽はどのように古都の歴史文化的特徴を保持しながら、近代化を進もうとしていることを検討する。 【方法】本研究では、洛陽の都市計画局、洛陽の図書館を訪問し、ヒアリング調査を行い、旧市街地と新市街地の再開発の現場を訪問し、各時期の都市計画の資料を収集する。調査時期は2010年8月である。 【結果】近年の洛陽の都市空間構造を分析し、その時代背景を検討する上、各時期の都市計画の特徴と問題点を明らかにした。1990年代以後の都市綜合計画と最新の第5期の都市綜合計画の内容を明らかにした。
ポスターセッション
5月29日
  • -シリンゴル盟の西東ウジュムチン旗を事例として-
    ヤ ル, 中山 徹
    セッションID: 3P-1
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    【目的】近年、モンゴル民族の生活は大きく変貌し続け、その中で生活水準の向上が見られる。一方、モンゴル民族の固有の文化・生活は希薄になりつつある。民族文化の継承には子どもの頃が重要な時期である。このような時期には、草原地域(牧畜区)の子どもが親元から離れ、教育を受けるため、町に出ざるを得ない。数十キロから200キロまで離れている家から町に出て来た子ども(社会の注目を集めている中国農村の「留守子ども」問題に対し、まだ関心が低い町に来た子どもを「逆留守子ども」と称する)は、政府の援助を得て小学校側が提供した寮に入居せず、「祖父母と町に出かけて借家」、「町で暮している親戚の家」、「町の他人に委託」等の形態で町の小学校に通っている。本研究は、子どもの遊びをはじめ、学校・家庭生活に焦点を当て、牧畜区の「逆留守子ども」の生活環境づくりを検討する。
    【方法】2010年7月に内モンゴル自治区において、教育関係の行政に対するヒアリング調査並びに西ウジュムチン旗に居住する子どもの家庭を訪問し、保護者に聞き取り調査を行った。調査地はモンゴル民族の比率が高く、典型的な牧畜区であるシリンゴル盟の東ウジュムチン旗と西ウジュムチン旗を調査対象地域とするが、本研究では西ウジュムチン旗の事例を取り上げる。
    【結果】西ウジュムチン旗ではモンゴル族の小学校は2校があり、その中、1校は学制寮や食堂等整備された寄宿制小学校であり、2006年10月に8箇所の小学校を合併し、再建設された学校でもある。調査した事例により、多くの子どもは学校の寮に入居せず、通学方法等は個人的、家庭ごとに解決を図っている。
  • 泉 加代子, 塩田 綾子, 吉本 優子
    セッションID: 3P-2
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    目的 前報1) では知的障がい児の衣生活の実態を知るために、京都府内の総合支援学校教員にアンケート調査を実施して衣生活の課題を明らかにし、その結果をもとに布教材を製作した。本研究では、その布教材を用いて知的障がい児の衣生活支援を行い、衣生活能力の変化等を検討する。また、使用して発覚した改善点や教員からの要望をもとに新たな布教材を製作する。
    方法 京都府内の総合支援学校のボランティア活動に参加し、知的障がい児の生活支援や活動補助を行なう中で、前報で作製した「ボタン練習用1,2」「ファスナーおよび面テープ練習用」布教材を使用した際の反応や操作能力の変化などを観察法で検討する。実施時期と回数は2010年9月~12月、計14回、対象児童は3名(男児2名、女児1名)である。また、教員へのヒアリングや現場で気づいた点をふまえて布教材を新たに製作する。
    結果 A児は当初ファスナーのかませる部分や大きなボタンの扱い、指先に力を入れることが困難であったが、指先の使い方や力の入れ方が上達しボタン教材をスムーズに扱えるようになった。ファスナーのかませる部分の操作もかなりできるようになった。B児は当初補助なしではファスナーの操作ができなかったが、教材よりも小さなファスナーのかませる部分の操作が可能になった。C児は当初ファスナーの操作が全くできなかったが、最終回には指導なしで鞄のファスナーを開けることができるようになった。また、1つだけボタンを掛けられるようになった。教材の問題点として、布が硬い、実際の衣服の着脱感覚と異なる、教材自体が大きすぎるという点が挙げられた。そこで、これらをふまえて「ボタン・ファスナー練習用」と「フック練習用」布教材を製作した。 1) 泉加代子他;日本家政学会第62回大会研究発表要旨集、p55 (2010)
  • 岡野 雅子, 西堀 加奈子
    セッションID: 3P-3
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    目的 近年,育メンが注目されているように,育児をする男性が増えている.一方では,児童虐待などの病理的現象も増加しており,育児ストレスは無視することができない問題といえよう.本研究は,幼児をもつ母親・父親の「親性」に着目し,母親・父親の「親性」と「育児ストレス」の関連について明らかにすることを目的とする.
    方法 長野市内の幼稚園・保育所に在園(所)する幼児をもつ母親・父親を対象に質問紙調査を行い,母親回答・父親回答を1組として536組に配布し,有効回答280組を資料とした.質問項目は先行研究(及川2005,森永2010,堤2000,長津1991)を参考に母親・父親の親性,育児ストレス,父親の母親(妻)へのサポ-ト度,父親のジェンダ-意識等についてである.調査時期は2010年10月~11月である.
    結果と考察 (1)母親の親性得点と父親の親性得点には相関が認められた(r=.311,p<.01).(2)母親の親性得点と母親および父親の育児ストレス得点は,ともに負の相関があり(r=-.554,p<.01, r=-.174,p<.01),父親の親性得点も同様にそれぞれに対して負の相関が認められた(r=-.159,p<.01, r=-.432,p<.01).さらに,親性得点をもとに3群化(高・中・低)したところ,母親の育児ストレスは,父親の親性高群が最も低く(p<.05),父親の育児ストレスは,母親の親性高群が最も低かった(p<.01).(3)父親のサホ゜-ト得点は母親および父親の親性得点とそれぞれ相関が認められ(r=.323,p<.01,r=.308,p<.01),父親のシ゛ェンタ゛-意識得点は,父親の親性得点と負の相関が認められた(r=-.183,p<.01).(4)したがって,育児ストレスは本人の親性のみならず配偶者の親性が高い場合に低いことが明らかとなり,母親・父親の親性が高いほど父親(夫)の母親(妻)へのサポ-ト度は高く,父親の親性が高いほど父親のジェンダ-・バイヤスは低いことが明らかとなった.
  • 幼児の向社会行動に着目して
    権田 あずさ, 今川 真治
    セッションID: 3P-4
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    目的 幼稚園の自由遊び場面において,3-4歳齢児の対人行動,特に向社会行動の出現の特徴を明らかにすることを目的とした。 方法 広島県H市内のF幼稚園に入園した3歳児クラスの園児(男児9名,女児10名)を対象に,自由遊び場面における幼児の対人行動を自然観察法によって観察した。観察期間は2009年4月から9月であった。1名の対象児につき3分15秒×4回,合計13分のビデオ撮影を行い,総観察時間は1418.5分であった。本研究で観察した幼児の対人行動は,向社会行動(協力・分与・共有・慰め・援助),前向社会的行動(いずれ向社会行動へ発達すると考えられる行動),その他の行動(攻撃・拒否・禁止・横取り),教師への働きかけ,近接他児数であった。 結果 1)3-4歳齢児において向社会行動を示した子どもは少なく,この年齢では向社会性や共感性がまだ十分には発達していないと考えられた。2)前向社会的行動のうち分与行動と共有行動が顕著に出現し,少ないながら,向社会行動の分与行動と共有行動も観察の後半から出現し始めたことから,これらの行動が向社会性の発達の糸口となることが示唆された。3)他者に対する拒否行動は,男児よりも女児に多く見られた。拒否行動は,自らの気持ちを相手に主張するための行動のひとつであり,拒否行動の出現は,自らの気持ちを主張できるようになった証でもある。この行動が女児に多く見られたことから,女児の発達の早さが伺えた。4)幼児の教師への働きかけは,園生活の進行に伴って減少する傾向がみられた。5)対象児から1m以内にいた他児数の平均値は,園生活の進行に伴って増加した。
  • 岡崎 貴世
    セッションID: 3P-5
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】パソコンは日常生活の様々な場面で利用され、現代の情報社会において欠かせないものとなっている。仕事や趣味で1日に何時間もパソコンを使用している人も少なくない。最近では食事をしながらパソコンのキーボードやマウスを操作する人も多く見られるようになり、衛生的に問題はないかと考えられた。そこで共同使用のパソコンキーボードの細菌汚染状況と、汚れたキーボードの操作による手指の再汚染について調査した。
    【方法】キーボードと手指の汚染度は、細菌検査とATPふき取り検査によって測定した。細菌数は、検査面を綿棒でふき取り標準寒天平板に塗布して35℃、24時間培養して形成されたコロニー数から算出した。ATPふきとり検査はルミテスターPD‐20(キッコーマン食品株式会社)を用いた。汚染キーボードはキーボードカバーに試験者の手洗い水を塗布して作成した。一定時間キーボードを操作した後、手指のATP検査を行い、汚染度を評価した。
    【結果・考察】複数の学生が使用する共同使用パソコンのキーボードとマウスの細菌汚染を調査した結果、月変動は見られず季節よりもパソコンの使用頻度の影響を受けると考えられた。キーボードはカバーを装着している方が装着していないものより汚染度が高く、また汚染キーボードを操作することにより手指が再汚染されることが確認された。キーボードにはタンパク汚れや油脂汚れだけでなく生きた細菌が付着していることもあるため、パソコンを使用しながらの飲食はできるかぎり控えるべきであると考えられた。特に共同使用のパソコンは常に清潔な状態で使用するように心掛ける必要があると考えられた。
  • ―2005年から2010年の調査を通して―
    日景 弥生
    セッションID: 3P-6
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】家庭からの廃棄物の約6割を占める容器包装のリサイクル制度を構築するため、2000年に容器包装リサイクル法が完全施行された。さらに、廃棄物の発生抑制のために、2007年容器包装リサイクル法が改正施行され、青森県では2009年2月からレジ袋有料化が実施された。本研究では、弘前市民を対象にしたレジ袋や環境に関する意識とその変容を明らかにすることを目的とした。 【方法】1.時期:2005年から2010年の毎年9月に行った。2.調査対象者:弘前市内のイベントに参加した市民で、調査年により増減があるが、おおむね800~1000名だった。3.調査項目:レジ袋有料化への賛否、マイバック使用の有無、レジ袋の要不要など17項目とした。 【結果】1.「レジ袋有料化に賛成」の者は、2005年には約50%だったが、2010年には約80%になり、おおむね毎年増加した。2.「レジ袋の要不要」では、「必要」とする者は2005年から2010年にかけて約70%で、調査年による違いはみられなかった。3.「マイバック使用の有無」では、「使用している」は2005年には約30%だったが、2010年には約90%になり、年々増加した。4.レジ袋が必要な理由は、「ゴミ袋として使用している」が多く、2005年から2010年にかけて約80~85%で、調査年による違いはみられなかった。これらのことから、弘前市民はレジ袋有料化に賛成する者が年々多くなっているが、その一方で、レジ袋をゴミ袋として必要としている人が多く、レジ袋の必要性は継続していることが分かった。
  • 片山 徹也, 平 桂子, 庄山 茂子, 栃原 裕
    セッションID: 3P-7
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】情報通信技術の進展にともない、VDT(視覚表示端末)を利用する機会が増加している。VDT画面の文字と背景の配色は、疲労感や作業効率に影響を及ぼすことが報告されている。そこで、本研究では文字色と背景色が異なるグレースケール配色のVDT画面を用い、明度差が同一条件となる陽画表示と陰画表示における心理評価及び作業効率を比較した。
    【方法】 (1)画面設定:文字色と背景色の明度差が異なるグレースケール配色の陽画表示8配色と陰画表示8配色、計16配色、(2)時期:2009年3月~11月、(3)対象者:男子大学生16名(平均年齢19.5歳、SD 0.6歳)、(4)VDT作業課題:アルファベット、数字、ひらがながランダムに表示された文字列を見て、指定された3個の文字に「1」を、それ以外に「0」を入力する30分間の作業、(5)測定項目:疲労感25項目、画面に対するイメージ評価、作業量、誤入力率、(6)分析方法:t検定、Pearsonの相関分析、一元配置分散分析、二元配置分散分析
    【結果】主観評価による疲労感については、文字色と背景色の明度差が高い配色の場合、陽画表示の疲労感が低かった。画面に対するイメージ評価では、陽画と陰画の表示モードによって、機能性(見やすさ、読みやすさ)に関する評価と審美性(美しさ、派手さ)に関する評価は異なった。作業量及び誤入力率の明度差による変化には、表示モード間の有意差はみられなかったが、陽画表示では、作業量及び誤入力率と明度差との間に低い相関が認められ、明度差が大きい配色ほど作業量が多く、誤入力率が低い傾向を示した。陰画表示では、作業効率と明度差との間に相関はほとんど認められなかった。
  • 平 桂子, 片山 徹也, 庄山 茂子
    セッションID: 3P-8
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    目的近年、国や地方自治体において法律や条例により積極的に景観に関する取り組みがなされると同時に、人々の景観に対する意識も高まり、地域の個性や特徴を活かした景観形成が求められている。また、地球温暖化や環境汚染、資源の減少など、地球規模での環境問題も指摘されている。本研究では、長崎市民を対象に景観に対する意識と環境や生活への関心の程度を明らかにし、さらに、それらの間にどのような関連がみられるか世代別に明らかにすることを目的とした。
    方法(1)調査概要 1)対象者:長崎市民622名、平均年齢42.4歳、SD16.2歳(20代177名、30代89名、40代134名、50代134名、60代以上88名)2)調査場所:長崎市 3)調査時期:2010年4~6月 4)調査方法:郵送及び留置による質問紙調査(2)調査内容:長崎市内の景観に対する意識(景観・景観色彩への関心、景観保護・管理指針の必要性)、環境や生活への関心(地球温暖化、異常気象、海面上昇など14項目)(3)分析方法:単純集計、χ2検定、Pearsonの相関分析、一元配置分散分析
    結果景観・景観色彩への関心については、世代間に有意差がみられ年齢が高いほど関心が高かった。景観保護の必要性には世代間に有意差がみられなかったが、管理指針の必要性には有意差がみられ60代以上が最も管理指針を必要とした。環境や生活への関心を世代別に比較すると、海面上昇、資源の減少、自宅でのごみの問題、食品の安全、食事の栄養バランスの5項目において有意差が認められ、全項目で60代以上が最も関心が高かった。特に、景観への関心と異常気象、環境汚染、資源の減少など環境問題とに関連が見られた。
  • 三神 彩子, 菊地 圭子, 山﨑 薫, 長尾 慶子, 江原 絢子
    セッションID: 3P-9
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    <目的>環境に配慮したエコ・クッキングの手法を取り入れることで,調理時の環境負荷が低減することをこれまでに確認しているが,その手法には昔から伝わるものも多い。そこで本研究では,循環型社会のお手本ともいわれた江戸時代の調理工程を視野に入れ,モデル献立を元に現代,エコ・クッキング,江戸時代の調理法とで実測し,比較検討した。
    <方法>江戸時代の調理法を明らかにするため,文献から江戸時代の調理と現代との比較を行った。 次に,江戸時代の「おかず番付」から一汁三菜のモデル献立を組み立て,現代の調理法,エコ・クッキング,江戸時代の調理法で調理を行い(以後,「現代」「エコ」「江戸」と表記),エネルギー,水,生ゴミ量およびCO2排出量,使用器具数,調理時間を実測した。「現代」および「エコ」は,東京ガス新宿ショールームにて,「江戸」は,北区ふるさと農家体験館にて実測した。
    <結果>「現代」,「エコ」,「江戸」の測定平均値はそれぞれ,エネルギー使用量(kWh):2.9,1.6,21.9,水使用量(L):104.8,22.2,34.0,生ゴミ量(g):121.0,20.5,17.0,CO2排出量(g):658.7,308.4,0,使用器具数(個):34.4,22.4,26.0,調理時間(時間・分):2・57,1・29,3・56 となった。「現代」と「エコ」を比べると削減効果は,エネルギー使用量:-45%,水使用量:-79%,生ゴミ廃棄量:-83%,CO2排出量:-53%,使用道具数:-38%,調理時間:-49%となった。「江戸」はエネルギーの消費量は各段に多いが,水,生ゴミ量はエコ法に近く少量であり,CO2排出量は循環型のため計算上ゼロとなった。以上,「現代」は便利だが無駄が多く,「江戸」は環境負荷が少ないが手間がかかる。「エコ」は両者の利点を取り入れ,環境負荷の削減効果大であると確認した。
  • 森田 洋
    セッションID: 3P-10
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】光触媒は殺菌・防汚・環境浄化などの様々な分野に応用されている。これまでに可視光応答型光触媒(S-TiO2)に銅を複合化させることで、殺菌機能性の増大が認められている。本研究ではアルギン酸ゲルが有する網目構造と表面の親水性に着目し、アルギン酸ゲルの光触媒担体としての利用を検討した。
    【実験方法】1 wt%アルギン酸ナトリウム水溶液に可視光応答型光触媒粉末(S-TiO2+Cu(7%)、東邦チタニウム株式会社製)をアルギン酸ナトリウムに対し5~40 wt%となるよう添加した。この溶液について15分間超音波処理を行い、光触媒粉末を分散させた。分散後、低濃度(0.1 wt%)の塩化カルシウム水溶液を同量加え軟質ゲルを得た。次にスプレーガンを用いてガラス板に塗布し、乾燥させた。乾燥後、高濃度(30 wt%)の塩化カルシウム水溶液に接触させることでゲルの補強を行った(二段接触法、特願2009-014483)。接触後、洗浄・乾燥を行い、S-TiO2+Cu担持アルギン酸薄膜を作成した。抗菌性試験は検定菌にEscherichia coli NBRC3972を用いて、光照射時間を3時間、光強度を30000 Lxまたは1700 Lxとして、フィルム密着法により評価を行った。
    【結果及び考察】S-TiO2+Cu担持アルギン酸膜は光触媒含有量の増加とともに殺菌効果が増大し、光強度30000 Lxにおいて、光触媒含有量が20 wt%以上で最大7オーダーの高い殺菌効果を示した。光強度を1700 Lxまで下げたとき、殺菌機能の低下は認められたが、光触媒含有量30 wt%以上で同様の高い殺菌効果が得られた。これらは暗条件において発揮しないことから、光触媒による効果であることが明らかとなった。以上の結果より、本手法を用いたアルギン酸コーティングガラスの光触媒担体としての有用性が示唆された。
  • 吉田 仁美, 奥村 奈央子, 西村 友里, 松田 覚
    セッションID: 3P-11
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年、世界中の医療現場で遺伝子治療が行われている。遺伝子導入技術の検討には、培養細胞が用いられる。近年では導入効率が比較的高いリポフェクション法が主流であるが、この方法で使用される既存の導入試薬は強い毒性が示唆されており、人への応用は難しい。そこで本研究では、人体に安全で医療現場でも扱うことのできる食用油をベースとしたリポフェクション試薬の開発や、その試薬の遺伝子導入効率を最大限に高めることのできる独自のプロトコールを考案したのち、市販の試薬との比較検討を行うことを目的とした。
    【方法】食用油をベースとして、ヒトに比較的害を及ぼさない材料を用いて導入試薬を作製した。開発した導入試薬を用いて、GFP発現プラスミドを種々のヒト培養細胞にトランスフェクトした。48時間後に蛍光顕微鏡やウエスタンブロッティング法、フローサイトメトリーを用いて市販の試薬と導入効率の比較検討を行った。また、アポトーシス、ネクローシス細胞染色法により開発した導入試薬による培養細胞への毒性を測定し、従来の導入試薬と比較検討を行った。
    【結果】食用油をベースとして開発した試薬で、従来と同等以上の遺伝子導入効率が認められた。困難とされていた浮遊細胞への遺伝子導入も可能であった。また、従来の導入試薬と比較して、本研究で作製した試薬の培養細胞に対する毒性は低かった。
  • 奥村 奈央子, 吉田 仁美, 西村 友里, 松田 覚
    セッションID: 3P-12
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】日常摂取するハーブや香辛料・薬味などは、古来より薬理的な役割を担ってきた。例えば、強壮作用、食用増進・消化促進作用、抗がん作用や生理不順改善、不眠解消などである。しかし、健康維持や病気からの回復に用いる香辛料やハーブなどがどのようにして薬理的な作用を持つのか、そのメカニズムは明らかになっていない。そこで本研究では、各種食材や香辛料、ハーブなどをターゲットとし、疾病などに深く関連する遺伝子の発現を誘導するのか、あるいは抑制するのかを、RT-PCR法やウエスタンブロッティング法を用いて検討した。
    【方法】使用した食材、香辛料やハーブは、ローズマリー、緑茶、セージ、七味、しょうが、みょうが、赤しそなどである。これらの成分をエタノールで抽出し、Jurkat細胞、U937細胞およびK562細胞などの培養細胞液中に添加した。一定時間培養後、cDNAを作製した。作製したcDNAを用い各種培養細胞内での遺伝子発現変化を検討した。その後、タンパク質発現変動も検討した。
    【結果】しょうがの成分を抽出したサンプルを添加したとき、U937細胞におけるCNOT3遺伝子の発現上昇がRT-PCR法で確認された。また、セージの成分を抽出したサンプルを添加したとき、Jurkat細胞ではタンパク質分解酵素の内因性阻害因子であるTIMP-1(Tissue Inhibitor of Metalloproteinase 1)の発現抑制が、RT-PCR法およびウエスタンブロッティング法により確認された。
  • 石崎 妃呂美, 甲斐 今日子, 市場 正良
    セッションID: 3P-13
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     近年、シックハウス症候群やシックスクール症候群など、室内環境が及ぼす健康影響が問題となっており、その一つの要因である学校環境についても改善が求められている。そこで、佐賀市における学校環境と児童の自覚症状との関係について明確にすることを目的とし、問診表による児童の自覚症状調査と市内小学校の教室内空気中のシックハウス関連物質の測定を行った。

    【方法】】
     佐賀市内37小学校において、自記式のアレルギー症状及びシックハウス症状等に関する問診票を配布し(2009年1月)、保護者による記入後、回収した(2525回収、回収率81%)。集計及び統計的検定には、統計解析ツールを用いた。なお、問診表の分析については全小学校で回答が得られた6年生(1951)を対象とする。また、教室内空気測定は2009年8月及び2010年8月に、教室内(各学校2室)にアルデヒド類及びVOC類用の拡散式サンプラーを設置し、24時間の空気採取を行った。サンプラーを回収し、溶媒抽出後、アルデヒド類をHPLC、VOC類をGC-MSで分析した。

    【結果】
     問診表調査から、アレルギー罹患経験がある児童は48.5%であり、アレルギー罹患経験がある児童は罹患経験のない児童に比べ、シックハウス症状を有意に発症していた。
     2009年の教室内空気測定の結果、測定を行った全ての教室でシックハウス関連物質が検出され、ほとんどの教室では文科省指針値を下回るが、ホルムアルデヒドが測定70室のうち24室で、アセトアルデヒドが3室で、TVOCが1室で指針値を超えて検出された。アセトアルデヒドが指針値以上の3室は、ホルムアルデヒドも指針値以上であり、その3室のある学校に通う児童は他の学校に通う児童に比べ、アレルギー症状やシックハウス症状を発症しやすい傾向が見られた。
  • 早川 和江
    セッションID: 3P-14
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    目的 江戸時代,日本に初めて伝わったコーヒーは,その当時,薬としても飲用されており,津軽をはじめとする東北の藩士が北方警備のため蝦夷地に派遣された際,病による陣没者の減少に大きく貢献したといわれている.本研究ではこの点に着目し,藩士の飲用したコーヒーが健康に及ぼした影響の詳細について検討した.
    方法 『天明の蝦夷地から幕末の宗谷』(稚内市教育委員会,2009年)を中心に,蝦夷地における藩士たちの生活事情を歴史的背景とともに把握し,現在までに明らかになっているコーヒーの成分や薬理作用に関連する文献・資料とあわせて考察した.
    結果 蝦夷地での藩士たちを脅かしたのは寒さと浮腫病(水腫病)であった.この病は「腫レ出シ後心ヲ衝キ落命ニ至ル」といわれ,罹患した者の多くは死亡したという.現代でいえば脚気,または壊血病ではないかとされている.1803年に蘭学医・廣川獬が『蘭療法』の中でコーヒーには浮腫病に対する薬効があると説いているが,コーヒー抽出液には脚気,壊血病に有効な成分は含まれていない.一方,蝦夷地での藩士たちの生活は,厳しい寒さと多湿な環境に対して簡便すぎる住居と保温性の低い衣服や寝具,また偏った食生活のため栄養状態も悪く,藩士たちの多くが凍傷,低体温症を患っていたと推察される.これらの疾病は浮腫・むくみ・不整脈・心室細動といった症状を呈し,悪化すると致命率も高いなど浮腫病の症状と一致する.以上のことから,ここでいうコーヒーの薬効とは,コーヒーに含まれるカリウムの利尿作用,またナイアシンの血流改善効果などを指すと考えられ,浮腫病の予防,症状緩和という点において藩士たちの健康維持に有効であったと結論づけられた.
  • 得丸 定子, 名嘉 一幾
    セッションID: 3P-15
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    【目的】近年、いじめ、学級崩壊などの学校教育現場における諸問題を背景として、児童生徒のストレスに関する研究が報告されている。しかし、その解消へ向けた具体的な実践研究は十分ではない。そこで、本研究では探索的取り組みとして、児童へのストレス低減実践の効果について、心理尺度側面からの検討を試みた。
    【方法】本研究におけるストレス低減法として、ジョン・ガバット-ジンが開発したMBSR(Mindfulness Based Stress Reduction)の一部を用いた。具体的には、目を閉じて、自分自身の呼吸に意識を集中させ、体の緊張を緩め、リラクゼーションを図るものあった。対象は,岐阜県高山市内の公立A小学校3年生22名(男子12名、女子10名)、実施期間は1ヶ月であり、MBSRは朝の読書の時間等に5~10分程度、週2回実施した。評価方法として心理尺度アンケート調査を行った。測定項目は、協力校教員の要望を反映した「生活習慣」、「独立協調」、「学習目標志向」、「友人関係」、「学習意欲」の5大項目を構成する下位項目を設けた(属性を含め全24項目、属性以外は5段階尺度)。アンケートにより得られたデータは、サイン検定及び対応のあるt検定を用いて統計的検定を行った。
    【結果】心理尺度5大項目において有意差がみられなかったため、下位小項目の尺度得点におけるサイン検定及びt検定を行った結果、「他者重視傾向」「協同志向」「学習意欲」における小項目のサイン検定で有意傾向(p<.15)、「友人関係」における項目のサイン検定(p<.10)、及びt検定(t(18)=-2.397, p<.05)でそれぞれ有意差が示された。このことから、今回実施したMBSRによって、他者重視傾向が弱まり(独立心が向上)、協同傾向が低くなり、本当の気持ちを話す傾向が高まり、持続・集中力が高くなる傾向が示された。
  • 勤務形態の違いによる比較
    阿部 雅子, 戸田 貞子
    セッションID: 3P-16
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    目的 近年,製造業などの24時間連続の操業に加えサービス業における交代勤務は,便利になった社会では不可欠な勤務形態となっている.交代勤務者の生活習慣,健康影響を明らかにすることは,重要かつ身近な課題である.本研究は,日勤者(日)と交代勤務者(交)の身体状況と食生活を比較検討することを目的とした.
    方法 対象者は,A食品会社の4工場の(日)〈8:30~17:00〉567名,(交)〈1直8:00~16:35,2直 15:25~24:00〉538名の計1122名である.アンケート調査は,自記式質問形式とし,平成22年5月14日と5月22日に行った.
    結果 対象者の身体状況についてみると,腹囲では男性85cm以上,女性90cm以上が(日)21.7%,(交)26.4%で,BMIでは25.0以上が(日)17.2%,(交)22.5%であった.起床時刻は(日)5時台41.0%,6時台40.4%,(交)8時台13.2%,9時台17.5%,10時台20.5%で,(日)の分布幅は比較的狭い範囲であったが,(交)は個人差が大きかった.帰宅後の就寝時刻は(日)と(交)の分布幅に変わりがなかった.欠食率では1食目(出勤前)は(日)6.2%,(1直)11.7%,(2直)3.3%,2食目(勤務中)は(日)7.7%,(1直)8.2%,(2直)53.1%で,3食目(帰宅後)は(日)1.5%,(1直)1.8%,(2直)32.3%であった.スナック菓子の摂取時刻は「出勤前」(日)2.8%,(1直)1.9%,(2直)17.3%で,「勤務中」(日)2.5%,(1直)6.5%,(2直)16.8%であった.(2直)は間食を食事の代替として摂取していることが推測された.
  • 青木 汐里, 腰本 さおり, 山口 敬子, 本間 健
    セッションID: 3P-17
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    目的 日本では戦前まで家庭で最期を看取ることが多かったが、戦後、看取りの場は急速に病院へと移り、看取りの文化は消えた。しかし、家庭での看取りの需要は近年再び高まっている。過去の文学者には、自身の死期が迫りながら日記を残している者がおり、中には詳細な食事記録を書き残している場合もある。これらを現代の看取り期の食事への参考とするため、近代を中心に文学者の日記やその家族の看護記録等の資料を用いて、看取り期の食事傾向について調査を行った。
    方法 文学者の日記・食事記録やその家族の看護記録を基に、時期や病状の変化に伴う献立内容とその頻度・量などの変遷を追い、看取り期の食事の傾向を調査した。
    結果 数名の作家や詩人について食事・看護記録を検討した。詩人の吉野秀雄は気管支喘息や糖尿病を患っていた。主食は飯が主体でほぼ毎日喫食していたが、臨終の3ヶ月半前から朝食にはパンを食べるようになった。発作が起きたときはやわらかい食品、またやわらかく調理された食品を食べる傾向にあった。牛乳・ヨーグルトは、ほぼ毎日提供されており臨終当日はこの2品を口にしていた。作家の高見順は食道がんを抱え、経管栄養と経口摂取の両方で食物摂取をしていた。経口摂取では基本的に粥・スープ・ジュース・とろろのような水分の多いものやとろみの付いたものが出され、疾患による直接的影響が強く表れていたといえる。元々塩辛い食品が好物であり、主食以外の献立も塩味(味噌汁・梅干等)が中心となっていた。臨終の5ヶ月前まではジュースを摂取していたが、それ以降は見られず、甘味を欲しなくなったと思われる。今後、更に食事・看護記録を収集し、これらの疾患別・期間別等の比較検討を進めたい。
  • 藤原 智子, 中田 理恵子
    セッションID: 3P-18
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    [目的]近年、朝食の欠食が生活の質を低下させる可能性が広く認識されつつある。演者らはこれまで生殖機能が成熟する過程にある若年女性の朝食欠食は現在のみならず将来の生殖機能に悪影響を与える可能性について報告してきた。1)今回は朝食の欠食とともに夜遅い食事や間食など、摂食リズムを乱す要因となりうる食習慣が生殖機能に及ぼす影響について、アンケートによる実態調査と食事記録調査を行った。[方法]アンケート調査は2010年に平均年齢19.0±0.7歳の女子学生を対象に、食事摂取の有無や摂取時刻と月経時の自覚症状について自記式で実施し、282名から有効回答を得た。食事記録調査は2008年に平均年齢18.6±0.7歳の女子大学生31名を対象に実施し、23名から有効回答を得た。被験者には自記式による回答と食事内容の撮影を依頼し、提出された回答と撮影画像データの分析を行った。いずれの調査も事前に対象者から同意を得た上で実施した。[結果]今回のアンケート調査でも朝食欠食者は有意に月経痛の程度が強いこと、月経前症候群の自覚症状があることが確認されたが、加えて22時以降の食事摂取頻度が高いと月経痛が強くなること、朝食欠食者が増えることも明らかとなり、夜型の食生活が朝食欠食を誘発している可能性が示された。月経前症候群については、間食摂取頻度が高くなると自覚症状が増え、とくに食事記録調査の分析結果から自覚症状がある群においては夜間の間食による摂取エネルギーが有意に高くなることが明らかとなった。以上の知見から、朝食欠食、夜型の食事、間食の多食といった食事リズムの乱れは若年女性の生殖機能に相乗的または相加的に悪影響を及ぼす可能性が示唆された。
    文献1)Fujiwara T. and Nakata R.Appetite2010:55:714-717.
  • 岩城 依里, 大塚 讓
    セッションID: 3P-19
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    【背景】我々は日常的に様々な生体異物に暴露されており、環境汚染物質や発癌性物質、食品添加物等を無意識に摂取している。生体内に取り込まれた生体異物は、一般的には薬物代謝酵素によって活性化、解毒化され、生体外に排出される。生体異物代謝の第一相反応の中心を担うCytochrome P450 (CYP)は、酸素添加酵素として知られ、添加の際に活性酸素を発生させる。活性酸素種による酸化ストレスは、DNAなどの生体高分子を酸化し傷害を与え、癌などの生活習慣病を引き起こす要因になる。生体内では、活性酸素種の消去系である抗酸化酵素により、生体の恒常性を維持している。 【目的】抗酸化酵素が薬物代謝にどれくらい貢献しているかについては不明な点が多い。そこで本研究では種々の抗酸化酵素をノックダウンし、外来異物への応答を明らかにすることとした。 【方法】本研究では、加熱した肉や魚の焦げの部分にでき、ラットにおいて癌を誘発することで知られている、2-amino-1-methyl-6-phenylimidazo[4,5-b]pyridine (PhIP) を用いた。RNAi法を用い、ヒト肝癌由来細胞株HepG2細胞で酸化ストレス応答遺伝子として可能性のある、SOD1、SOD2、SOD3、CAT、Gpx1、HOMX1をノックダウンし、ノックダウン効率や細胞増殖への影響を検討した。さらに、各酸化ストレス応答遺伝子のノックダウン後、PhIPを添加し、MTT assay法により細胞増殖曲線を作成し、酸化ストレスへの耐性を検討した。 【結果】酸化ストレス応答遺伝子のmRNAは71~92%ノックダウンされ、SOD2、CATについてはタンパク質のノックダウンも確認できた。ノックダウン後にPhIPを添加すると、細胞増殖が有意に阻害された。特に、SOD2、CATのノックダウンで顕著に細胞増殖が阻害され、PhIPの代謝時に酸化ストレスが発生していることが示唆された。
  • 諏佐 大志, 露木 野乃果, 齊藤 清香, 峯木 真知子
    セッションID: 3P-20
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    目的 A高校に所属する野球部およびバスケットボール部(以下バスケ部)生徒に、大豆ペプチドゼリー飲料1~2本(大豆ペプチド4gまたは8g)を摂取させ、その摂取および量の違いによる影響を、身体・体力測定、およびPOMSアンケート調査から検討した。摂取期間は平成22年6月19日~8月4日の45日間とした。 方法 A高校野球部 (24名)およびバスケットボール部 (17名)生徒計41名を対象とした。摂取した大豆ペプチドゼリー飲料は1袋180g、エネルギー124kcal、たんぱく質4gのものを使用した。 この飲料を1本摂取した群をA群、2本摂取した群をB群とし、A群は練習後、B群は練習前後に毎日、45日間摂取させた。 対象者からインフォームドコンセンサスを得、食事調査を行った。また、摂取前・後に身長・体重・部位別体脂肪率・除脂肪体重率、50m走・握力・打球スピード・垂直跳び、POMSアンケート調査を行った。 結果・考察 摂取後の身体測定では、摂取前より身長0.45cm伸び、体重0.98kg減り(p<0.01)、体脂肪率は1.86%減った(p<0.01)。摂取前後の体脂肪率の変化は、A群では88.17%、B群では85.49%、除脂肪体重率の変化はA群102.27%、B群102.12%であった。摂取後の体力測定結果をみると、野球部で打球スピード(前後差A群6.30km/h、B群3.38km/h)で、バスケ部で垂直跳び(前後差B群3.88cm)で成績が有意に向上した。50m走はいずれの部でも速くなる傾向を示した。群間における効果では身体・体力測定、POMSアンケートの結果に有意差はみられなかった。このことからペプチド摂取は4g以上で、身体・体力測定に効果がある可能性が示唆された。
  •  
    西川 和孝, 後藤 昌弘
    セッションID: 3P-21
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    目的 シソ科のハナタツナミソウ(Scutellaria iyoensis Nakai)には,D-グルコースの誘導糖であるグルクロン酸が結合した希少フラボノイドを含有することが知られている。そこで,シソ科のコガネバナの代替植物資源として期待されるハナタツナミソウの培養系の確立し,ハナタツナミソウに含まれるフェノール化合物の分析を主目的とした。さらに,応用研究として形質転換根の作出及び機能性評価として抗菌活性の測定を目的とした。
    方法 (1) ハナタツナミソウのin vitro培養系を確立する。 (2) ハナタツナミソウのフェノール化合物を各種スペクトルデータ(NMR,MS,HPLC等)により解析する。(3) Agrobacterium法を用いて,ハナタツナミソウの形質転換根を作出する。(4) ハナタツナミソウ(in vitro植物体)の地上部及び根部の抽出エキスの抗菌テストとして,微量液体希釈法による最小発育阻止濃度(MIC)の測定により評価する。
    結果 (1) 1/2MS固形培地にてハナタツナミソウのin vitro培養系を確立した。 (2) ハナタツナミソウ乾燥根のMeOH抽出エキスより,各種スペクトル解析の結果,各種フェノール化合物を同定・定量することができた。(3) Agrobacterium法を用いて形質転換根の作出を行った。(4) ハナタツナミソウ地上部及び根部の抽出エキスの抗菌テストの結果,各種抽出エキスは,食中毒菌(Escherichia coliPseudomonas aeruginosa等)に対して,発育を抑制することが明らかとなった。
  • 西村 友里, 吉田 仁美, 奥村 奈央子, 北岸 靖子, 立石 知佳, 松田 覚
    セッションID: 3P-22
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    【目的】 長寿の遺伝子として知られているsir2の発現は、多くの生物において抗老化作用があることが明らかにされている。そこで本研究では、sir2の哺乳類ホモログ遺伝子であるヒトSIRT1のmRNAの発現やタンパク質の発現が、一般に使われる香辛料成分の刺激でどのように変化するのかを調べた。 【方法】 細胞刺激物質として、ガーリック、レッドペパー、シナモンパウダー、パクチー、ターメリック、バジル、ブラックペパーなどからのエタノール抽出物を、標的細胞とするDaudi細胞(ヒトB細胞株)などの培養液中に添加した。一定時間培養後、mRNAを精製してからcDNAを作製し、RT-PCRによりSIRT1遺伝子発現を調べた。さらに、ウェスタンブロッティング法により、刺激後の細胞におけるSIRT1タンパク質発現変化を調べた。 【結果】 Daudi細胞におけるSIRT1遺伝子は、種々の刺激後もコントロールとほぼ変化なく、その発現が確認された。しかしSIRT1タンパク質の発現は、ターメリックやブラックペパーを添加した場合でのみ発現が抑制された。これらの香辛料成分は、SIRT1タンパク質の安定性に関与している可能性が示唆された。
  • 加藤  佐千子, 長田 久雄
    セッションID: 3P-23
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    目的 本研究は,高齢者特有の食物選択動機を体系的に整理し,高齢者の食物選択が動機のタイプによって異なることを検証することである.そのため,これまでに高齢者への半構造化面接によって得られた逐語禄をもとに,141語の食物選択動機用語を見出し,報告してきた(日本老年社会科学会第52回大会発表).今回は,その次の段階としてこれら141語の食物選択動機用語から代表語を抽出することを目的とする.
    方法 協力者:生活機能の高い60歳以上の地域在宅男女高齢者490人(男178人,女312人,70.1歳±7.1歳).調査時期:2010年5月~10月.方法:無記名自記式アンケート調査.内容:141語の動機用語と属性.質問文は「どの程度○○○を重要視しますか」とし,「とても重視する」~「まったく重視しない」の5件法で尋ねた.分析:クラスター分析(Ward法)の手法により意味的に近い特徴をもつ用語を集約させる操作を行い,各クラスターから代表語を抽出した.代表語は,協力者をクラスター分析により4集団に集約したのち,分散分析の結果,主効果がありかつ集団間の平均値差(絶対値)の比較をもとに、絶対値が最大の用語を選択した.
    結果 141語の食物選択動機用語は,33個のクラスターに,協力者は,4クラスターに集約された.33クラスターのうち5クラスターから2語を,28クラスターからは1語を抽出し,合計38語が抽出された.大学生や一般成人を対象とした先行研究と同様の用語は,「健康に良い」「体重にあまり影響しない」「肌・歯・髪・爪などによい」「食品添加物を含まない」「ストレスを発散できる」「落ちつく(ほっとする)」の6語であった。残りの32語は先行研究と一致していなかった.高齢者特有の食物選択動機用語が得られたと考えられ,今後はこれらの用語の特徴を明らかにすることが必要である.
  • 小竹 佐知子, 小林 史幸
    セッションID: 3P-24
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    目的:咀嚼中に食品から放散される香気は、口腔から鼻腔へと運ばれて知覚され、食品のおいしさを決める最終的な判断基準の一つとなることから重要と考えられる。この放散香気濃度は、人パネリストが食品咀嚼中に肺から鼻腔へ排出した呼気量に依存する。そこで、食品咀嚼中の人パネリスト呼気流量を測定し、食品の種類による影響、パネリストによる影響を高齢者パネルと若年者パネル間で比較検討した。 方法:試料にはカステラ(2.5cm角,6.3g、文明堂製菓)および大豆(5粒、3.7g、はごろもフーズ)を使用した。パネリストは高齢者7人(59~77歳、男性6人、女性1人)、若年者8人(20~23歳、男性5人、女性3人)とした。パネリストに各試料を供試して咀嚼から嚥下までの呼気量(吸気量および排気量)を気流抵抗管(TV-122T、日本光電)により測定した。同時に、咀嚼筋運動量も測定した(LabChart Pro、AD Instruments)。測定はそれぞれ3回繰り返した。高齢者と若年者の比較はT検定にて行った(p<0.05)。 結果:咀嚼筋運動量の測定結果から算出した咀嚼時間および咀嚼回数はカステラおよび大豆ともに、高齢者パネルの方が若年者パネルに比べて値が大きかったが、咀嚼頻度(回/秒)には差が認められなかった。また咀嚼筋活動量は両試料とも高齢者の値のほうが小さかった。呼吸流量は高齢者と若年者間での差は認められず、両グループともパネリスト間での差が大きかった。また、1呼吸あたりの時間(1回の呼吸に要する時間、秒/回)には、試料間、パネル間での差は認められなかった。呼気流量がパネリストに大きく依存することを咀嚼時の香気放散現象測定では考慮する必要のあることが明らかとなった。
  • 食品成分残留度評価法の検討
    大橋 美佳, 山田 夏代, 松本 美保, 石田 和夫
    セッションID: 3P-25
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    目的食器類の洗浄が不十分であると食品成分の残留や、微生物汚染など衛生上の問題が生じる。一般的に、食器類の洗浄度を調理の現場等で調べる方法として、食品成分の脂質、タンパクおよびデンプン性の残留物を指標とした簡易定性検査が行われる。本研究では、これら簡易検査法を応用し、さらに食器への残留度の定量化を試みた。
    方法給食施設内で使用中の食器についてそれぞれデンプン、タンパク、脂質性残留物の検査を行い、デジタルカメラにて撮影した。得られた画像を画像処理ソフトで着色部分を抽出後、その面積を計測し、食器全体に対する面積比を求め、残留度(%)とした。同時に、コンパクト平板法による微生物検査、ATPによる微生物および食品残渣の計測を実施した。各データはp>0.05で正規性と分散の均一が得られたものについて、一元配置分散分析を行った。
    結果脂質の残留は74.3~100%とデンプンやタンパクと比べて著しく高く、ほぼ全食器に残留が見られた。食器の種類により残留度に有意な差は認められなかった。デンプン、タンパクについてはそれぞれ、0~0.04%、0~15.6%と非常に低く、食器によって全く残留の認められないものも多かった。脂質と同様、食器間の残留度に有意な差は認められなかった。微生物検査においては、大腸菌および大腸菌群は検出されず、一般生菌数もごく僅か検出されたに過ぎない。ATPふき取り検査では、RLU値は0~1009の広範囲にあり、同じ食器間でもかなりばらつきが見られ、有意な差(p<0.05)が認められた。今回の実験で給食施設の食器は脂質の残留が著しく高いことが判明した。
  • 佐藤 祐子, 谷口(山田) 亜樹子
    セッションID: 3P-26
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    【目的】近年、鶏インフルエンザをはじめ、農薬、食品添加物、BSE、遺伝子組み換え食品、環境ホルモン等の食の安全に関わる問題がメディアに多く取り上げられ、消費者の食の安全に対する関心は高くなっている傾向にある。しかし、その中で食品偽造の問題も多く発生しており、食品情報の混乱がさらに消費者の不安を感じさせ、我々は100%安全なものを口にできない状況におかれている。そこで、今回は若年層の食の安全に対する意識や知識の現状を把握する目的で、女子大生を対象にアンケート調査を行った。
    【方法】調査時期は2010年7月、20歳前後の女子大生91名を対象者に食の安全に関するアンケート調査を行った。調査は、食生活での留意点、食中毒・食の問題・有害物質から連想される内容や事件に関する項目である。
    【結果】本調査により、普段の食生活において3~4割の学生が「食材の産地の確認」や「賞味期限・消費期限の確認」をしていることがわかった。また、食の問題に関する事件に関しては「中国餃子(農薬混入)事件」に約半数の学生が関心を示していた。食中毒から連想されるものに関しては「O-157」との回答が約6割と圧倒的に多く、有害物質から連想されるものに関しては約2割の学生が「水銀」と回答していた。食品の保存に関して普段留意していることについては「食材を冷蔵・冷凍保存している」と約3割の学生が回答していた。全体的に食の安全に関して意識の高い学生が多い傾向にあった。食の安全に関する情報は新聞やテレビ、インターネット等から得る人が大多数で、正確な情報を得ているとは限らない。そのためには、正しい情報を取捨選択する力はもちろんのこと、自らが食品を選ぶ力、食の安全を確保していく必要があると考える。
  • -2008年と2010年の比較-
    明槻 とし子
    セッションID: 3P-27
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    【目的】野菜は、私たちの健康で豊かな食生活に欠かせない重要な食品で栄養的にビタミン、ミネラル、食物繊維の供給源であり食卓を彩る食材としても食生活を支えている。多様化する食環境のなか野菜の摂取量は、近年減少傾向である。そこで野菜の摂取状況について明らかにすることを目的に2008年と2010年に調査を行った。
    【方法】調査対象者は、本学学生に各年6月から9月末までにアンケート調査を実施した。質問項目は野菜の嗜好性、野菜の摂取状況や野菜摂取の自己評価などについて自己記入式で行い、後日回収した。集計は年度別に分類し、表計算EXCELで単純集計およびクロス集計し有意差検定は、年度別間のχ 2検定を行った。
    【結果】有効回答数は2008年218名、2010年114名であった。野菜の嗜好性は、「野菜が好き」は全体では56%で、年度別での大きな差はなかった。野菜を好きと答えたうち野菜を「意識的に食べている」は2008年42.3%、2010年48.4%で「あれば食べる」2008年56.6%、2010年50.0%で野菜を好きでも野菜の摂取努力はやや低い傾向であった。日常の摂取野菜皿数は、1日1から2皿が74%と最も多く、推奨されている5皿以上は0.3%であった、野菜を食べない理由としては、「野菜が嫌い」という理由の他に、「調理が面倒」や「調理時間がない」といった理由があげられた。よく食べる野菜は、キャベツ、人参、玉ねぎ、レタスなど生食用野菜が上位で、よく食べる野菜料理はサラダや炒め物などの簡便な料理が上位で年度別の比較では、サラダ、ス-プが増加し煮物や酢の物など和風の野菜料理が減少傾向であった。
  • -日本酒および発酵調味料との比較-
    西念 幸江, 金子 愛, 峯木 真知子
    セッションID: 3P-28
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    目的熊本特産の赤酒は,淡黄赤色の清酒で,糖度およびアルコール度は本みりんとほぼ同等であり,日本料理屋では調味料として使用されている。著者らは赤酒に浸漬した豚肉は,本みりんを用いた場合よりやわらかく,官能評価において好まれる傾向にあったことを報告している。本研究では,豚肉を赤酒に浸漬させた場合を日本酒や発酵調味料などと比較し,加熱した豚肉のやわらかさについて検討した。さらに,惣菜としての変化も考え,24時間放置(冷蔵庫)したやわらかさについても実験を行った。 方法国産豚ロース肉芯部(約40g)を用い,浸漬液は,赤酒(瑞鷹(株)),日本酒 (宝酒造(株)),発酵調味料(メルシャン(株)),果実調味料((株)キティー)を原液または5倍希釈し,肉重量の50%量とした。豚肉を各浸漬液に1,3,24時間浸漬し,180℃のオーブン((株)ハーマン DR508E)で15分加熱した。実験項目は歩留り,かたさ応力(クリープメータ:(株)山電 RE2-33005B),各浸漬液の加熱前後のpH,塩分濃度および官能評価を行った。 結果各浸漬液による豚肉の歩留りは65%前後で,日本酒が低く,果実調味料が高かった。浸漬後液のpHは,赤酒と日本酒では5.5~5.7であったが,それ以外の試料は7.0付近を示した。官能評価では試料による香の強さには違いがみられず,やわらかさでは果実調味料がやややわらかいと評価された。やわらかさの好みと味の好みでは軟化剤がもっとも好まれた。パネルから発酵調味料と軟化剤では塩味がしたという評価があった。
  • 山本 淳子, 小出 あつみ, 松本 貴志子, 山内 知子
    セッションID: 3P-29
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    目的 海岸に見られるアオサの多くはアナアオサである。一般的にアナアオサは繊維が硬いため青海苔の代用にしか使用されていない。そこで利用の少ないアナアオサに着目し、アナアオサの機能性成分を生かした加工食品の開発を目的として、身近な食品であるパンにアオサ凍結乾燥粉末を添加して調製した。
    方法 試料は三河湾アナアオサを用いた。凍結乾燥させたのち、60メッシュの280μmまで摩砕し、粉末アオサとした。粉末アオサ添加パン3種(0.5%、0.7%、1%)を調製し試料とした。対照パンとしてアオサ無添加パンを用いた。官能検査による食味試験は、105名を対象に4種類のパンについて「色」、「香り」、「食感」、「味」、「総合」の5項目を評価した。走査電子顕微鏡による観察や破断強度・テクスチャー測定を行った。成分分析はVC量をHPLCポストカラム法で、クロロフィル量をArnonの方法で、ポリフェノール量をFolin Denis法で、ヒドロキシラジカル活性をDPPHラジカル補足活性測定法で行った。
    結果 官能検査の結果は、最も評価が良かったパンは0.7%アオサ添加パンであった。破断応力では、1.0%パンが最も破断応力が大きく、テクスチャーでは、対照パンが最もかたさ応力が大きかった。よって、アオサの添加によって破断応力は増加し、かたさ応力は減少し、もろくなることが示された。このことから、アオサをパンに添加することによって、グルテン形成が阻害され、膨化力が低下することが認められた。成分分析の結果は、対象パンよりアオサ添加パンが全体的に高い値を示したので、日常的に食すパンにアオサを添加することで機能性成分を摂取することが期待できると考えられた。
  • 芦澤 志保, 太田 尚子
    セッションID: 3P-30
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    オボムコイドは卵白タンパク質中3番目に多いタンパク質で、卵白タンパク質中約10%を占めている。熱や変性剤などによる変性に対して高い可逆性があることが知られている。また、pH 5.5以下の酸性条件下では90℃以上の加熱処理でも変性しにくいことが分かっている。そこで、本研究では通常種々の起源の食品タンパク質が加熱誘導ゲルを形成すると考えられる総タンパク質濃度10%溶液を用い、pHや処理温度を変化させ、その際のレオロジー特性の変化をいくつかの手法を用いて解析することを目的とした。  試料は、0.2M食塩添加10%オボムコイド溶液pH 5,7及び9の3種類とし、各試料溶液に対する25℃,40℃,60℃及び80℃,30分処理の影響を静的粘弾性測定、超音波分光分析、フーリエ変換赤外分光分析及びネィティブ電気泳動により解析した。  その結果、pH 7及び9での60℃及び80℃処理で、試料粘度のずり速度依存性が増大した。また、これに伴いタンパク質二次構造が変化 (pH 7でのβ-シートの増加や、pH 9での規則構造の減少) した。更に、各試料溶液のネィティブ電気泳動解析により、pH 7,80℃またはpH 9,60℃以上の処理で分子量146kDa以上の可溶性凝集体が形成されていることが判った。  以上のことから、一般に熱安定性が高いとされるオボムコイドタンパク質もpH 7,80℃またはpH 9,60℃以上の処理により高次構造が変化する緩やかな相転移を生じていることが示唆された。また、この際の試料系の変化は超音波減衰をモニターすることでも把握できることが判った。
  • 山口 智子, 大樌 春菜, 小谷 スミ子
    セッションID: 3P-31
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    【目的】小麦粉の代替品として米粉に注目が集まる中、昨今、米粉パンから製造した米パン粉が開発されている。縁者らはこれまでに、市販されている種々の米パン粉と小麦パン粉について、フライ調理過程における吸油率の比較を行い、米パン粉の吸油率が小麦パン粉に比べて低いことを明らかにしている。本研究では、パン粉の粒度による吸油率や着色度の相違を明らかにすることを目的とした。
    【方法】試料として、米パン粉(生)、小麦パン粉(生)、市販小麦パン粉(乾燥)2種を用いた。米パン粉(生)と小麦パン粉(生)は、原材料とその配合割合ができるだけ同じになるようにパンを焼成し、常温で72時間経過後にフードプロセッサーで粉砕、粒度2、3、4mmのパン粉を作成した。水分は常圧乾燥法で、吸油率は全国パン粉工業協同連合会2008による簡易測定法で、着色度は色彩色差計で測定した。また、米パン粉と小麦パン粉を用いたハムカツについて、5段階評点法による官能評価を行なった。
    【結果】米パン粉(生)の吸油率は約30%であり、小麦パン粉(生)より吸油率に低い傾向がみられた。米パン粉(生)では粒度によって吸油率に相違はみられなかったが、小麦パン粉では粒度の小さい方が吸油率が低かった。フライ調理後の着色度については、米パン粉(生)は小麦パン粉より明度L*が低く、赤味a*が強く、黄味b*が弱くなる傾向があった。また、全パン粉において粒度の小さい方が明度L*が高く、黄味b*が強い傾向がみられた。粒度3mmのパン粉を用いたハムカツの官能評価の結果、米パン粉のフライは小麦パン粉のフライに比べて衣の色が濃く、衣がかたく、口当たりがやや悪いものの、味が良く総合評価も高かった。
  • 荒木 葉子, 笹原 麻希, 三神 彩子, 伊藤 貴英, 長尾 慶子
    セッションID: 3P-32
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】我々のこれまでの実験において,エコ・クッキングの考え方を取り入れることで,消費エネルギーや水,生ゴミ量の大幅な削減ができることを明らかにしている。生ゴミについては,献立あるいは使用する食材によって廃棄量が異なり,中でも野菜は,切り方や可食部分の活用により,その量が大きく異なることも確認している。本研究では,家庭での使用頻度の高い野菜50種を取り上げ,家庭で通常行われている切り方およびエコ・クッキングに配慮した切り方での廃棄量を実測し,廃棄率の削減効果を明らかにする。
    【方法】試料として,(社)JA総合研究所の調査「野菜の消費行動について」を基に家庭での使用頻度の高い野菜50種を選択した。実測は一年を通して実施し,旬の時期に栽培された国産の野菜を使用した。個々の野菜の重量および廃棄率は,五訂増補日本食品標準成分表等を目安とした。通常の切り方は,家庭調理を前提に大学の調理実習で実施している方法とした。エコ・クッキングの切り方は,可食部分をできる限り生かし,ヘタや根,種を除き,丸ごと皮ごと使用することとした。以後,通常およびエコ・クッキングの切り方を「通常法」「エコ法」と記載する。1野菜につき,各方法で3回以上実測した。
    【結果】エコ法では,通常廃棄の対象となる葉,茎,皮なども使用すること,意識して,ヘタや根,種を取り除くことで,45種の野菜で可食部分が増加し,廃棄率削減効果が認められた。エコ法と比較し,廃棄率の削減効果が特に高かったものは,カブ(約33%),セロリー(約32%),シメジ(約30%),長ネギ(約26%),ブロッコリー(約23%)であった。いずれの野菜も料理によっては,可食部分全てを使うことが望ましいわけではないため,今後料理ごとの検討,部分ごとの調理やその活用についての実験を考えている。
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