一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
67回大会(2015年)
選択された号の論文の265件中201~250を表示しています
口頭発表 5月24日 福祉・国際・震災・児童
  • 池谷 真梨子, 柳沢 幸江
    セッションID: 3C-13
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
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    目的 保育所に通う乳幼児は増加し、保育所における食事提供の意義は大きい。そこで手づかみ食べに着目した自分で食べる行動の発達特性を詳細に分析し、加えて母親の手づかみ食べに対する意識や行動との関連を検討し、保育所において適切な援助を行うための一助となることを目的とした。

    方法 対象は、2013年5月~2014年8月の間、9~24ヶ月齡に該当する東京都J保育所に通う10名とした。週2回、保育所での昼食摂取状況をビデオ観察した。「援助」「手づかみ食べ」「食具を使用」の行動をカウントし、生起頻度(回/分)を算出した。「手づかみ食べ」と「食具を使用」を合わせて「自分で食べる」とし、主成分分析により手づかみ食べの発達特性を分析し分類した。インタビュー調査で母親の手づかみ食べへの姿勢や食事場面における援助を調査し、質的分析を加えた。

    結果と考察 対象児の手づかみ食べ開始月齢は平均12.8±2.1ヶ月であり、食具を使用が手づかみ食べを上回った月齢は、平均18.6±1.7ヶ月であった。主成分分析の結果、2つの群に分類された。1群は手づかみ食べの発達が早く、その頻度も高い群。2群は手づかみ食べ開始時期は遅いが、急速に発達する群であった。2群間において母親の手づかみ食べへの積極性や援助に差異が見られた。保育所での自分で食べることへの援助は、月齢を目安とした対応ではなく、乳幼児の発達特性に応じた援助と養育者への働きかけが必要であることが示唆された。
  • 父親・母親がもつ子育てに対する意識の特徴
    吉川 はる奈, 澁谷 龍之介
    セッションID: 3C-14
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
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    目的:子育てを社会で行う風潮が高まり、子育て支援の施策は全国で進んでいるものの、子育てにおける不安やストレスという言葉はなくならない。子育てに喜びを感じられる要因とは何か。父親や母親の子育てに対する意識の特徴から明らかにしていく。喜びを感じられる要因から父親・母親が必要とするサポートについて考察していく。

    方法:調査対象;乳幼児をもつ母親・父親各7名。調査期間;2014年8月~2015年1月。調査方法;半構造化面接によるインタヴュー法。面接時間;平均1時間30分。調査内容は、結婚・出産前の子どもに対するイメージ、仕事について、妊娠期、出産時の様子、誕生後1年間で子育てにおいてうれしかったこと、大変だったこと、しつけ、子どもの将来について、将来の生活について、パートナーに対する思い等についてたずねた。

    結果:M-GTA(修正版グランデット・セオリー・アプローチ;木下2003)を用いてインタヴュー内容を分析し、父親、母親の意識の特徴を明らかにした。生活の大部分が子どものために費やされると強く感じている、食事の準備や食事中に大変さを感じている、誕生後1年頃までは父親として子どもに対してどうしていいかわからないことが多いなど、乳幼児をもつ父親としての戸惑いや母親の負担感等、大変さが語られる一方で、母親同士では生活に密着した何気ない情報での繋がりによって、支えあいが行われていることが明らかになった。
  • 親子ペアによる検討
    岡野 雅子
    セッションID: 3C-15
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
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    目的 近年、ニ-ト・フリ-タ-が増えているが、職業観の形成過程の検討は年齢をさかのぼる必要があると指摘されている。職業認知は小学生期にできるとされるが、本研究はその前段階の幼児のしごと観を探り、将来のしごとについて家族と話しているかについて明らかにした。
    方法 北関東T市の幼稚園・保育所の5歳児の保護者を対象に質問紙調査を行い、回答のあった保護者の子どもと面接調査を行った。親子の回答が揃った64組(男児31、女児33)を資料とした。調査時期は平成26年7月(質問紙調査)、11月(面接調査)。
    結果と考察 (1)子ども回答は、男児はスポ-ツ選手45.8%、警察官16.7%が多く、女児はケ-キ屋(パン屋アイス屋)41.9%、幼稚園保育所の先生19.4%が多い。男女ともキャラクタ-やアイドルもあり、未定・無回答は14.1%である。子は回答1つが85.6%、未定・無答14.1%で、親は回答1つが68.8%、複数回答25%、未定6.3%である。親子で回答の一致は64組中34組(53.1%)で、女児の親子の方が、親が若年層の方が、一致率は高い傾向にある(p<.1)(2)親子で話し合うかは「よく話す」子回答8.1%、親回答45.3%、「話したことはない」子回答21%、親回答3.1%で、親子間に認識の隔たりが認められ、複数回答の親は親子の回答一致率は高く(p<0.01)、親が若年層の方が子回答で「話し合う」率が高い(p<0.05)。(3)子どもは本来未来指向性をもち大人になることは期待をもって想い描く事柄と言えるが、今日の家庭生活では「よく話す」と答える子どもは1割弱で、親回答も半数に満たない。現代の生活状況は子どもの将来像を想い描くことが難しい背景があると考えられるのではなかろうか。
  • -東京都多摩地区の小・中学校の活動例を通して-
    佐々木 剛, 草野 篤子
    セッションID: 3C-16
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
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    目的 本研究は、日本国内で登録されている705校(2014年)のESD活動のうち、東京都多摩地区2市44校で実践された例を基に、学校教育にある世代間交流プログラムの概念を探ることである。

    方法 2014年5月から12月に、東京都稲城市及び多摩市の小・中学校44校の資料の分析と関係者への聞き取り調査を行った(小学校29校、中学校15校)。結果は質的研究法により内容を分析した。

    結果 2市44校中の学校で祖父母を含めた高齢者と交流を行っているのは、小学校で13校、中学校で6校であった。これら小学校では、13校全校が生活科で「昔遊び」等による世代間交流、7校が「総合的な学習の時間」等を活用した菜園活動による交流を実施していた。その他、施設訪問は4校で実施していた。一方、中学校では全校が、職場体験等、キャリア教育として施設等への訪問により高齢者と交流していると答えた。各学校とも、世代間交流プログラムとの認識ではなく、ESD活動としてこの実践を行っていた。

口頭発表 5月24日 家政学原論
  • 人間の生活の複雑さに対応するもの,現実から生みだされるもの
    大西 友恵, 谷村 千絵
    セッションID: 3D-1
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
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    目的 「関口富左『家政哲学』の再考-クリティカル・リアリズムの視点から-」(於第61回日本家政学会中国・四国地区支部研究発表会2014年10月)では,1970年代に関口が提示した「家政哲学」を再考し,関口がとらえようとしていた家政学は多様性に対応すること,現実から作り出すことを重視するものであることを明らかにした.関口はドイツの教育哲学者O.F.ボルノーの哲学に依拠していたが,現代においてこれを補う視点として,クリティカル・リアリズム(以下CR)という新たなアプローチを用いることを提案した.本発表では,三者の違いをさらに考察し,家政学とは何かという問いに対する,現代における回答を試みる.
    方法
    関口富左の「家政哲学」,ボルノー哲学,CRの三考に関わる諸文献をもとに考察する.
    結果
    関口の批判した科学は,人間の日常における現実から切り離された形式的な科学である.人間存在を重く見た関口は,ボルノー哲学にその可能性を見たが,ボルノー自身は科学について多くを言及していない.他方,CRを教育に援用しているR.オドノヒューによれば,CRはReal,Actual,Empiricalの現実の三つのドメインを想定し,それらを繋げる社会的活動を科学としている.CRの視点を家政学に取り入れることで,主体的に思考する力,即ち,知の創造を育むことが可能になり,新しい家政学のありようを示すことが可能となると考える.
  • 今和次郎の生活学の検討を中心に
    野崎 有以
    セッションID: 3D-2
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
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    目的 生活学は、考現学の創始者として知られ評論家的な立場から家政についても論じた今和次郎によって提唱されたとされている。生活学は今和次郎の家政論における大きな特徴のひとつとも言える。多くの先行研究では、今和次郎は1951年に生活学を提唱したとされているが、それ以前より生活学の構想について言及しており、生活学の提唱時期については先行研究によって大きな開きがある。生活学の成立時期のずれを探ることによって、生活の捉え方の変化について検討していくが本発表の目的である。
    方法 主に今和次郎の生活学や家政に関する著作や工学院大学図書館今和次郎コレクション所蔵資料などをもとに考察した。
    結果 生活学の成立時期のずれについてはいくつかの理由が考えられた。ひとつには今和次郎の生活学などを含む家政思想が、生活科学などの戦時期の思想と結びつくおそれがあったということが挙げられる。しかし、そうした否定的なものだけではないとも考えられた。祐成保志や山森芳郎らの先行研究やその他の資料から、今和次郎は娯楽や休養などの側面から生活を把握する独自の立場をとっていたため、生産優先の戦時的な生活研究と余暇と消費を重視する戦後的な生活研究が対比されるなかで、彼の生活学が「戦後的」なものであるとの判断が定着したことが要因のひとつであることや、戦後の家政学における政策的な面についての疑問から再度生活学を提唱する必要が生じた可能性が指摘された。
  • -「鹿内瑞子旧蔵資料」を資料として-
    八幡(谷口) 彩子
    セッションID: 3D-3
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
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    目的 「鹿内瑞子旧蔵資料」には小学校家庭科の検定済教科書刊行以前の昭和20~30年代に各地で刊行された副読本等の教材資料が多数含まれているが、まだ検討が行われていない。本研究では「鹿内瑞子旧蔵資料」に含まれる昭和20~30年代の小学校家庭科の教材資料の検討を通して、検定済教科書が刊行されるまでにどのような学習指導が行われていたのかを明らかにする。
    方法 国立教育政策研究所教育図書館所蔵「鹿内瑞子旧蔵資料」のうち、昭和27~35年に全国各地で刊行された小学校家庭科に関する教材資料104点を資料として、この時期の小学校家庭科の教材資料の特徴、学習指導の実際について検討する。
    結果 (1)分析対象とした資料は、実際に小学校家庭科の学習指導に携わる現場の教員らの家庭科研究会による刊行が大半を占める。教科書がない中で、戦後、昭和35年頃までの小学校家庭科の学習指導は、現場の教師によって教材研究が進められていたことがわかった。(2)学習指導要領と教材資料との対応について検討した結果、学習指導要領に指定された題材や学年配置とは異なる学習指導が行われていた。学習指導要領に準拠しながらも、実際の家庭科の学習指導に携わる立場からよりよい方法が模索されていたと考える。(3)多くの教材資料において、易しいものから難易度の高いものへと実習題材等の配置に系統性が見られる。一方、問題解決的な学習を紹介する資料等も散見され、各地でさまざまな学習指導が試みられたことが窺われる。
  • NHK「婦人百科」を対象に
    渡瀬 典子
    セッションID: 3D-4
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
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    <目的>近代の女子教育では「裁縫」に多くの時間が割かれ、余暇活動としてこれらの行為を行うことも奨励された。「社会生活基本調査」によれば「趣味・娯楽」として「編物・手芸」をする女性は32.4%(昭和61年)→19.3%(平成23年)、「和裁・洋裁」は28.7%→12.1%と減少している。しかし、昭和51年の同調査で「和裁・洋裁・手芸」を余暇活動に挙げた女性が9.0%だったことを考慮すると、バブル期前後にこれら行為を「余暇活動」として日常生活で楽しむ状況が生まれたと考えられる。本報告はNHK「婦人百科」(現在は「すてきにハンドメイド」)に焦点を当て、バブル期前後にあたる10年間に取り上げられたテーマと記事に付されたキャプションに注目し、「手芸」の意味付けについて考察する。「婦人百科」を分析対象としたのは80年以上に渡り手づくりに関する情報を提供してきたからである。<方法>「婦人百科」[No.241~336:1985年4月~1993年3月],「おしゃれ工房」[No.337~372:1993年4月~1996年3月]の記事にある「和裁・洋裁・手芸」のテーマ、各テーマについて付されたキャプションの内容分析を行った。<結果>「家族」のためだけではなく「自分」のため、「社会」のための手づくりという視点が見える。また、工程が複雑、高度な技術が必要な時間がかかる作品から「手軽に」作ることができるものへと変化している。
口頭発表 5月24日 家族・家政教育・家庭経営・経済
  • 中岡 泰子, 山下 美紀, 正保 正惠
    セッションID: 3D-5
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
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    目的 私たちは2014年第61回中国・四国支部大会において,中国・四国地域の高出生市町の母親は,行政サポートを含め様々なサポートを得て育児を行っていること,同じ高出生地域でも異なった地域特性が見られることを報告した.本報告では,高出生市町の母親が持つサポート資源が,子育て満足度や子育て観,さらには理想の子ども数にどのような影響を及ぼしているのか明らかにしたい.
    方法 中国・四国3県の中で2010年の合計特殊出生率が高く,2005年から2010年の合計特殊出生率の伸び幅が高かった市町の中から7市町を抽出し,子育て家庭を対象にアンケート調査を実施した.調査時期は2013年11月~2014年5月で,有効回答は1276票(回収率65.8%)であった.記入者が母親である1226票を分析対象とした.
    結果 中国・四国地域のサポート資源は,母方の親からが多いのが特徴であった.また,子育てを地域の温かい目で見てもらえている,多くの人に助けられているといったように子育てにおいて安心感を持つ母親が多く,子育てを楽しめている人ほど育児不安得点が低い傾向がみられた.一方で,子育てや教育にお金がかかりすぎる,あるいは雇用が安定しないため,将来に不安を感じる人も多く,育児不安得点も高くなる傾向がみられた.子育てを通じて人との輪が増え居場所ができたと感じている人ほど理想の子ども数は多いが,一方で経済的負担感を感じる傾向がみられた.
  • フィンランド・ネオヴォラをてがかりに
    木脇 奈智子, 太田 由加里
    セッションID: 3D-6
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
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      日本の子育て支援は、「母子保健法」に代表されるように、一貫して「母子」をセットとみなして実施されてきた。次世代育成基本法(2003)には、子育ての社会化 、すなわち子育ては国、地方公共団体、事業者の責務であることが明記された。しかし、子育ては親の責任(とりわけ母親の責任)であるとみなす社会規範が変化したとは言えない。エンゼルプラン(1994)以降の子育て支援に関する法制度が、少子化対策としての成果を出していないのも、ジェンダー化された子育て規範によるところが大きいと言えるだろう。
    フィンランドでは第二次世界大戦以降、一貫して男女平等政策を推し進めてきた。男性も女性も家庭的責任と経済的責任を持ち、働きながら子育てを可能にすることを国が保障した。この理念が子育ての社会化を実現し、子どもの教育費や医療費は無償であり、社会全体で子どもの誕生を歓迎する精神がある。
    本報告では、 1)フィンランドの家族支援ネオヴォラの父親も含めた切れ目のないフォローと、2)出産時に国から贈られるパッケージ(新生児と親の必需品が入っている)、3)日本の市町村で試行されている日本版ネオヴォラ、について報告する。
    これらの制度から「子育ての社会化」「子育てとジェンダー」の理念を見出すことができる。その結果から、日本の子育て及び子育て政策が抱えている問題を考察する。

  • 久保 桂子
    セッションID: 3D-7
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
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    目的 本研究は、共働き夫婦における夫の家事・育児参加に対する妻の評価について、実際の夫の家事・育児参加の度合いとともに、夫妻の性役割意識や妻の仕事から家庭生活への葛藤などとの関連を検討する。さらに、夫の家事育児参加と、妻の男性の家庭役割意識、妻の評価の3項目の関連について検討する。

    方法  2013年11月に千葉県西部の公立保育所21保育所の保育園児の保護者を対象に行った質問紙調査の結果を用いて分析する。調査票は家族票・母親票・父親票を組にして2119世帯に配布し、回収は1118世帯分であった(回収率52.8%、有効票は1099世帯、51.9%)。平均年齢は、父親37.5歳、母親35.7歳、平均子ども数1.7人である。

    結果 (1)夫の日々の家事・育児参加度が高い場合や、男性の家事・育児参加を支持する意識が高い場合は、夫の家事・育児参加に対する妻の評価は高い。(2)夫の通勤労働時間が長い場合は、夫の家事・育児参加が低いために妻の評価も低い。(3)妻の仕事から家庭生活への葛藤が高い場合は、夫の参加度に関わらず妻の評価は低い。(4)男性の家事・育児参加を支持する妻の場合は、夫の参加への評価が低い。(5)実際の夫の家事・育児参加度が低い場合、男性の家事・育児参加を強く支持する妻とそれほど高くない妻との間で、妻の評価の差が有意に大きい結果が示された。実際の参加が高いグループについては、有意な差は認められない。
  • 増渕 哲子
    セッションID: 3D-8
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
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    目的 演者は2013年度の東北・北海道支部研究発表会において,2013年発行の高等学校家庭科「家庭基礎」の文部科学省検定済教科書10冊について,各教科書の見出し,本文,キーワード,図表,コラム等の貧困に関わる記述内容を比較検討し,2009年改訂学習指導要領にもとづく新教科書記述の特徴として報告した。教科書の「貧困」への感度は大きく異なっており,国内の貧困の存在,貧困状態のとらえ方,相対的貧困という貧困認識の変化への対応等に関して差異があった。この間国内の貧困率はさらに上昇し,格差や貧困はより一層厳しさを増している。本研究は前報に続いて,家庭科教科書の「貧困」記述分析から家庭科教科書の性格あるいは型を探り,教科書にあらわれた家庭科の教育論について考察する。
    方法  現在使用されている高等学校家庭科教科書を中心に,家庭科教科書の記述内容の分析をおこなう。
    結果  教科書の「貧困」への感度は,教科書の他の記述とあわせて考察すると家庭科教科書の性格や型を問うものとなっている。例えば自己責任なのか,制度の作り直しなのかというような,個人と社会の関係性の示し方は,家庭科教科書の教育論として読み解くことができる。またそれは家庭科教科論として検討すべき対象でもある。
  • 兼安 章子
    セッションID: 3D-9
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
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    1.目的

    本研究は、中学校家庭科教師が授業を変容させていく過程に着目し、その促進要因・阻害要因を明らかにすることを目的とする。



    2.方法

    (1)質問紙調査

    授業変容の意識に関する質問紙調査を2014年3月にX県344校の公立中学校及び中等教育学校の家庭科教師365名を対象として行った。調査は、郵送回答法により行い、128名(35.1%)より回答を得た。そのうち、欠損値等のあったものを除く有効回答率は、29.5%であった。

    (2)インタビュー調査

    調査は、公立中学校家庭科教師2名を対象に行った。内容は過去の授業の実施内容や使用教材、今後の授業のアイデア、学校の様子や仕事の状況、研修や家庭生活についてとした。2014年7~8月に1回目の調査、同年11~12月に2回目の調査を行った。



    3.結果

    第1に家庭科教師同士のインフォーマルな関係は、教師相互の授業変容を促進していた。フォーマルな研修の場は、家庭科教師の出会いの場であり、ネットワーク形成促進の場でもあった。第2に、家庭科教師が学校内で家庭科の授業を担当していないことにより、その間、授業の変容がないだけでなく、授業のアイデアも創出しにくい状況にあることが明らかになった。第3に、家庭生活において、子育てや結婚、出産の経験があることによる影響はみられなかった。しかし、今現在、子育て中であることが保育分野の授業に関する授業変容の促進要因として認められた。
  • -高等学校の教科書分析から-
    速水 多佳子, 西村 睦美
    セッションID: 3D-10
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
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    目的 住まいは生活の器であり,健康で豊かな生活を送るために必要不可欠なものである。学校教育の中で住まいに関する内容を主として扱っている教科は家庭科である。しかし家庭科では,授業時間数の減少や指導の困難さから扱いが低調であることが指摘されており,限られた時間の中で効果的な指導をしなければならないという現状がある。そこで,教科書から学校現場の家庭科住居領域として取り扱われている学習内容を整理して分析し,指導すべき内容を把握することを目的とした研究を行った。
    方法 平成26年度に高等学校共通教科家庭科で使用されている17冊の教科書(家庭基礎6社10冊,家庭総合6社6冊,生活デザイン1社1冊)を対象とした。ページ数,太字表記の語句,図表数,内容の分類,記載順序について分析を行った。
    結果 教科書全体に占める住居領域のページ数の割合は,生活デザイン13.2%,家庭総合10.3%,家庭基礎9.5%であり,現在は家庭基礎を選択履修している学校が最も多いが,住居領域の記載は最も少ない。住居領域の内容を詳しく見ると,記載が多い順に,住居の機能と計画,住居の室内環境,住生活と環境,住居の安全,地域社会とのかかわり,住生活の文化,住生活関連法規であった。太字表記の語句は,家庭基礎121,家庭総合134,生活デザイン30が抽出されたが,教科書によって扱いに差が見られた。記載順序については,すべての教科書に共通した流れはなかったが,傾向を見出すことができた。
  • 大竹 美登利, 藤原 玲子
    セッションID: 3D-11
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
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    <目的>2009年度から小学校の学校掃除における教員の指導が、児童の掃除の知識技術の習得や取組みに与える影響について研究を行ってきた結果、教員が指導計画に基づき指導に取組むことや、家庭での掃除の取組みが、掃除の技術習得や理解の向上に影響を与えることがわかった。そこで本研究では、企業が取組む教員セミナーや児童対象の出前授業が児童に与える影響を明らかにすることを目的とした。具体的には、「教員セミナーのみ」受講した教員から指導を受けた児童、「出前授業のみ」受講した児童、セミナーを受けた教員から指導を受け出前授業も行った「両方」の児童の掃除に対する意欲・関心・取組姿勢の相違を分析した。 
    <方法>教員には指導内容、児童の取組姿勢、企業の社会貢献活動に期待するもの等を、児童には指導の取組前後に掃除に対する意欲・関心・取組姿勢のアンケート調査を実施した。児童の調査結果は、「教員セミナーのみ」「出前授業のみ」「両方」に区分し比較検討した。
    <結果>教員については「両方」に取組んだ教員が最も積極的に取組みを行っていた。児童は「出前授業」より「教員セミナー」「両方」のグループの方が掃除を楽しいと考え、家庭の掃除にも積極的に参加していたが、知識の習得に自信を持っているのは「出前授業」「両方」のグループであった。教員セミナーに参加した教員が指導することで掃除に対する児童の意欲を引き出し、出前授業によって掃除の知識や技術の習得度が増し、両方では双方の効果が出ることがわかった。
  • 藤田 智子
    セッションID: 3D-12
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
    会議録・要旨集 フリー
    目的 男女共同参画社会となり、家庭科教育も男女共修となって20年が過ぎた。女性の社会進出が進む一方、男性の家事育児参加率は低いままである。大学生の家事実践状況と、家庭での家事分担状況や家庭科での学習経験との関連を明らかにし、家事実践につながる要因を探る。
    方法 男女共修家庭科を学んだ大学生に対してインタビュー調査をおこなった。調査人数は、36名(女性24名、男性12名)である。所属は教育学部生21名(家庭科専攻10名、家庭科専攻以外11名)、その他の学部生15名である。
    結果 大学生の家事実践状況は、自宅か一人暮らしかで大きく異なった。自宅生の場合、多少家事を手伝うということはあっても、通学に時間がかかることもあり、ほとんど行っていなかった。一人暮らしの場合、一通りの家事を行っており、特に料理に関しては「ちゃんとやっている」と認識していた。洗濯もきちんとしていると思っていたが「仕分けはしない」「(持っている)洗剤は一種類」「最近、(洗濯機の)洗剤の投入口を知った」といったように、適切な方法で洗濯できていないようであった。家庭科での学びは直接役立っているというよりは、興味をもつきっかけや、楽しむ場のようであった。班活動が多いことから、人間関係への言及もみられた。高校生までの家事の実践状況には、母親の就労形態による違いよりも、役割として家事を割り当てられていたかが影響しているようであった。
    なお、本研究はJSPS科研費 26780493の助成を受けた。
  • 松山 礼子, 加藤 洋子, 金田 利子, 草野 篤子
    セッションID: 3D-13
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
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    この研究は、科学研究費助成事業「基盤研究C」(代表:草野)として、「子どもの人権を守る地域コミュニティづくりと保育所のあり方に関する研究会」が2011年に実施した「乳幼児の生活実態、子どもを取り巻く地域環境、社会資源、育児・子育て意識等の調査」結果と、 1974年に「子どものシビル・ミニマム研究会」が実施した「乳幼児の生活実態調査」結果を縦断的に比較検討することを目的とし、佐野英司らで行った。方法として、2011年8月~9月に、東京都小平市東部地区のうち、就学前の子どもがいる家庭1,440世帯へ質問紙を郵送した。このうち、570世帯より回答を得た(回収率39.6%)。質問項目には、乳幼児を抱えた家庭の生活状況について、就学前の子どもの生活について、子どもと遊びについて、育児・子育てにおける親の願いと地域環境について、親の労働と子育てについてなどが含まれている。その結果、37年間という歳月を経て、住環境の近代化など子育てを巡る環境が大きく変化していることが明らかとなった。また、そのなかで、乳幼児実数と乳幼児人口比率の大幅な減少や、育児・子育て世帯の生活条件の悪化が示唆された。そして、子どもの人権を守る地域コミュニティの再生はもとより、人々の交流に欠けた街の再生そのものの必要性が浮き彫りとなった。
  • 関 錦銘, 平田 道憲
    セッションID: 3D-14
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
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    目的 女性の生活時間配分の中日比較を行い、中日女性の生活時間に影響を与える諸要因を明らかにすることである。
    方法 中国については国家統計局が実施した「2008年時間利用調査」のデータを用いる。日本については総務省統計局が実施した「平成23 (2011)年社会生活基本調査」のデータを用いる。
    結果 (1)既婚女性の生活時間をみると、仕事時間は中国のほうが長く、家事労働時間は日本のほうが長い。既婚女性の週全体の仕事の行動者率をみると、中国は日本の約2倍である。未婚女性の場合は、仕事時間と自由時間は日本のほうが長く、学業・学習時間は中国のほうが長い。(2)無業既婚女性の生活時間をみると、仕事時間は中国のほうが長く、家事労働時間は日本のほうが長い。中国では無業既婚女性の週全体の仕事の行動者率が約40%である。介護・育児や自由時間では両国において差が小さい。(3)中日の有業女性の生活時間の差は小さい。無業女性の生活時間をみると、睡眠時間は日本のほうが長く、仕事時間や学業・学習時間は中国のほうが長い。(4)女性事務従事者の生活時間をみると、平日の仕事時間は日本のほうが長く、土日の仕事時間の差は小さい。週全体の自由時間と平日の睡眠時間は中国のほうが長く、平日の家事労働時間は日本のほうが長い。(5)どのグループの比較においても、身の回りの用事の時間は日本のほうが長い。
  • 色川 卓男
    セッションID: 3D-15
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
    会議録・要旨集 フリー
    2009年に消費者庁が設置以来、地方消費者行政に関する検討が様々な形で行われてきたが、都道府県レベルに関しては、あまり検討されていない。しかし消費者行政が自治事務であり、市町村も消費生活センターや消費生活相談窓口を設置しているところも多く、都道府県との二重行政ではないかという問題も生じている。
    そこで本発表では、全国の都道府県にアンケート調査及びヒアリング調査を行い、都道府県の現状と課題について、探っていくことにした。結論をまとめると、都道府県のおかれている地域的な特性や歴史などの影響によって、都道府県の在り方にはタイプがあり、市町村との関係は単純ではなく、色々と入り組んでいることがわかった。また、都道府県といっても、人口規模や市町村との関係によって、タイプを分けて検討することが必要であり、国も地方に対する施策を進める場合に、このタイプ分けをして取り組むことが必要であると考える。
     
口頭発表 5月24日 被服
  • 井上 真理
    セッションID: 3E-1
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
    会議録・要旨集 フリー
    目的 布の防しわ性を評価する方法として、従来からモンサント法をはじめとしていくつかの方法がある。これらの防しわ性評価方法に、新たにレーザーを用いた非接触での測定方法を加え、得られた結果を、スーツ地の物理特性、風合い特性と比較することで、スーツ地のしわにかかわりの深い要素を特定することを目的とした。
    方法 試料はウール100%29種、ポリエステル混紡布21種の、番手、込数など組成が異なる紳士スーツ地用織布計50種である。KES-Fを用いて、各試料の力学的特性、表面特性を測定した。また、JIS法、IWS法、ニッケビジュアル法(NV法)、レーザー法で試料の防しわ性を測定した。レーザー法とはシームパッカリングの測定を応用した非接触の防しわ性測定方法である。レーザー変位計を用いて試料表面にレーザー光を走査し、試料までの距離、すなわち実測の表面形状を捉えてこれを積分することで波高の平均値および平均偏差値を求める。
    結果
    それぞれの防しわ性測定法の結果を比較すると、それぞれに特徴があるが、IWS法とNV法、レーザー法に類似した傾向が見られた。また、スーツ地の防しわ性には繊維素材及び織密度が大きく寄与していることが明らかになった。今回使用した評価法の中ではIWS法、NV法、レーザー法変化率の結果において、特に引張特性、せん断特性に関わる物理特性値やその組み合わせ値、仕立て映え、風合いにかかわる客観評価値との相関がみられた。
  • 吉村 利夫, 中村 瑞穂, 藤岡 留美子
    セッションID: 3E-2
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
    会議録・要旨集 フリー
    博多湾などに大量発生している海藻のアオサから生活資材を得る検討を行っている。これまでに、アオサに含まれる水溶性粘性多糖の化学変性によって、生分解性に優れる界面活性剤が得られることを明らかにした。本研究では、上記の残渣として得られる水不溶性の構造多糖から紙を得る検討を行った。アオサを粉砕、紙すきをしたものは低強度であったが、加熱プレス処理を行うことによって強度が向上した。これにパルプを添加したものは、強度はむしろ低下したが、粘結剤を用いて紙すきし、プレス処理することによってさらに強度が大幅に向上し、市販のコピー用紙よりも高強度なものが得られることが明らかとなった。
  • -青苧プロジェクト-
    井上 美紀, 川又 勝子
    セッションID: 3E-3
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
    会議録・要旨集 フリー
    目的 本研究では、地域服飾産業の活性化を図り、今後の東北の産業を担う専門的人材の創出を目的とした実践的教育のプログラムを検討している。これまでのプロジェクトでは、絹の新素材に着目して実施してきたが、2013年度から新たに東北地方の伝統素材である「青苧」に着目した。青苧栽培は、古くには産業として深く根付いていたが、現在では衰退している。本報告では、学生が青苧を用いて服飾関連商品の企画、製造、広報、販売までを実践したプロジェクトについて報告する。
    方法 青苧プロジェクトは、服飾文化専攻「ブランドマネジメント演習」の授業において2013年度と2014年度に実施した。学生は同演習で設立した模擬アパレル企業の一員として活動し、青苧を利用したファッションブランドのマネジメントを展開した。青苧は、青苧で地域産業の掘り起しを目指し活動する地元有志団体が栽培したものを利用した。
    結果 ブランドマネジメントでは、学生が中心となってコンセプトの立案や商品企画を行い、青苧の素材は学生が苧引き(繊維の収穫)の作業をして原料を得る所から関わった。商品開発には青苧の原麻や糸、学生が織物や編物にしたものを使用し、さらに地元企業の協力を得て原麻を混ぜた青苧の和紙を作成し使用した。2013年度はカジュアルファッションブランド「ラミー×ラミー」、2014年度は和をテーマにしたブランド「和-なごみ-」を創出し、年度毎に展示・販売会を開催した。
  • シリコンゴムを接着可能とする技術開発:医療器具への応用など
    金澤 等, 稲田 文
    セッションID: 3E-4
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
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    【緒言】高分子材料の中で、シリコン樹脂またはゴムは、衛生的であるために、食器やパッキング材などに使用されている。しかし、強い撥水性があり、接着性がない。これまでの表面改質では改良が困難であった。そこで、新しい改質法を検討して、接着性の改良を行った。 【方法】材料:シリコン樹脂材料:市販のシリコンゴムシート(アズワン6-611-01、厚さ0.5または1.0mm)、シリコンゴム管(アズワン6-586-20、内径6mm、外径8mm)ををメタノールで洗浄、乾燥した。試薬:酸化剤、高分子化合物、溶剤等は市販品をそのまま用いた。処理:高分子材料について酸化剤処理、紫外線照射または放電等で酸化処理を行った。活性化材料をモノマーまたは高分子その他の溶液と共に加熱した。処理はKANA2法とした。 【結果】シリコン樹脂のシートを水に濡れるようにした。次に、水性塗装のコーティングを可能とした。さらに、粘着テープで付着可能として注射器などの医療器具用途を可能とした。
  • エタンチオールの消臭
    小原 奈津子
    セッションID: 3E-5
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
    会議録・要旨集 フリー
    目的 これまで、酸化した羊毛繊維を種々の金属化合物で処理することによりエタンチオールの消臭性能の付与を試みてきた。この結果、銅化合物と乳酸亜鉛で処理した酸化羊毛が顕著な消臭性能を示したが、これらの消臭機構は異なっている可能性が示唆された。本研究ではこれらの処理羊毛の消臭機構を検討した。
    実験 (試料)先の研究と同様に、過ギ酸酸化羊毛を酢酸銅あるいは乳酸亜鉛水溶液で処理した。(方法)分析:エタンチオールを加えたフラスコ中に処理羊毛を共存させGC分析した。また、亜鉛担持酸化羊毛とエタンチオールを12時間共存させた後の生成物を水およびエタノールで抽出しLCMS分析した。さらに、システイン酸残基のモデルとしてメタンスルホン酸水溶液にエタンチオールおよび乳酸亜鉛を加えて処理し、生成物をLCMS分析した。
    結果 GC分析では、銅担持酸化羊毛を加えるとエタンチオールは速やかに減少しジエチルジスルフィドが生成した。他方、亜鉛担持酸化羊毛では、エタンチオールは減少したがジエチルジスルフィドの生成はほとんどなかった。一方、LCMS分析では亜鉛担持酸化羊毛とエタンチオールの反応ではC2H5SO4Hや1C2H5SO3Hなどの酸化物が生成していることが見いだされた。さらに、乳酸亜鉛の存在下でメタンスルホン酸をエタンチオールと反応させた場合もC2H5SO3Hが確認され、銅担持酸化羊毛と異なる酸化反応が起こっていることが示唆された。
  • 村﨑 夕緋, 諸岡 晴美, 中橋 美幸
    セッションID: 3E-6
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
    会議録・要旨集 フリー
    目的 補整下着など整容性を目的とした女性用ファンデーションにおいては、着用時の衣服圧により身体形状が変形し、逆に審美性を低下させる場合が多々みられる。身体にフィットするファンデーション設計のためには体表面の圧縮柔らかさの定量化が非常に重要である。しかし、サイズ設計の基となる身体寸法計測データは存在するが、体表面の柔らかさに関するデータはみられない。本研究では美しいシルエットを形成するファンデーション設計のための基礎的資料として、各年代における体表面の圧縮柔らかさを測定するとともに、それに影響を及ぼす要因を明らかにした。
    方法 被験者は20代から70代までの成人女性とした。携帯型圧縮試験機を使用し、左後腋点からウエストラインまで、また左後腋点から正中線側へそれぞれ3cm間隔で計32か所の圧縮特性を10gf、20gf、30gf荷重下において測定した。また、被験者の体型項目として、身長、体重、体脂肪率、BMIを計測した。
    結果 圧縮変形量(ε)が大きい箇所としては、後腋点とその下方の3点(BL)およびウエストライン上の3点(WL)があげられた。また、各3点平均と年齢との間には有意な相関がみられ、体表面の圧縮柔らかさには年齢の影響が最も大きいことがわかった。また、WLに比べてBLでのε増加が大きいこと、加齢とともに個人差も大きいことなどが明らかとなった。その他、体脂肪率やBMIとεとの関係を明らかにした。
      
  • 芝崎 学
    セッションID: 3E-7
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
    会議録・要旨集 フリー
    目的 日常生活における温度環境は動的に変化し,温度感覚も同様に動的に変化する.動的な温度環境下において,既存のスケールで被験者の温度感覚を表現するにはいくつかの問題があるため,我々は痛み感覚スケールに利用される視覚的アナログスケール(VAS)を応用して,動的な温度変化に対する温熱感覚評価を試みている.しかし,VASも主観的評価スケールであり,温度感覚の客観的・定量的評価には脳機能計測による評価が必要であるが,温度感覚の評価は確立されていない.本研究では現在の脳機能計測機器で温度感覚評価を可能にするための実験アプローチの構築を目的とする. 方法 非利き腕側の前腕内側部に温冷感覚刺激装置を貼付し,5つの異なる安静時皮膚温(10,18,28,33,36°C)から周期的局所温度刺激を実施し,VASで温度感覚を評価した.また,温度に依存しない温度感覚を与えるため,1wt%のメントールを皮膚に塗布し,効果の現れる5分後からどうようの実験を実施した。 結果 個人差はあるものの,周期間で温度感覚に差は認められなかった.温度の振幅は5°Cに統一していたが,VASの振幅は安静時皮膚温が高くなるほど大きくなった.メントールによる増幅も高温時でのみ認められた.皮膚温上昇時下降時で温度感覚の再現性が異なり,安静時皮膚温が33°Cよりも低い場合は下降時に,高い場合は温度上昇時に温度変化に対して高い反応性を示した.
  • 谷 明日香, 諸岡 晴美
    セッションID: 3E-8
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】寒冷環境下における身体作業、災害時における防寒対策、また基礎代謝量が低い高齢者にとって、衣服による加温は非常に重要な役割をもっている。近年、積極保温機能をもつ衣服が市場に出回っているが、その生理的影響については明らかにされていない。本研究では、基礎研究として市販のヒーターベストを用いて局所加温が人体生理に及ぼす影響を明らかにした。
    【方法】健康な女性10名を対象に18℃,65%RHの人工気候室で実験を行った。被験者は、1.08cloの着衣で、10分間ヒーターOFF、その後50分間OFFあるいはONで椅座安静状態を維持した。実験期間は、2014年7月下旬~10月下旬(期間a)および2014年11月中旬~12月上旬(期間b)である。測定項目を皮膚温,口腔温,衣服内温度,皮膚血流量,心電図および主観評価とした。
    【結果】期間a、bともに、皮膚温は、体幹部で上昇傾向がみられ、脚部末梢になるほど低下した。特に、下腿ではOFF時に比べてON時で皮膚温が低く、足先皮膚血流量も減少傾向を示した。期間aでは、ON時の心拍数がやや減少し、HFの上昇(副交感神経の優位性)がみられた。しかし、期間bではONとOFFの明瞭な差異はみられないなど実験期間による相違がみられた。温熱感評価では、両期間ともにON時でも脚部末梢ほど時間とともに寒いと評価され、ヒーターベストによる加温が脚部にまで及んでいないことがわかった。
  • 竜野  恵里花, 三野 たまき
    セッションID: 3E-9
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
    会議録・要旨集 フリー
    目的 我々は皮膚温や唾液分泌量などの自律神経系の諸機能の,圧迫による変化を調べてきた.最終目的は圧迫の人体へ及ぼす影響とその許容範囲を知ることであるが,本研究では発汗現象に着目し,その特性を調べることを目的とした.実験方法①21歳女子1名において,冬季の発汗量を月経2サイクルにわたり測定した.基礎体温,起床時温度,身体情報を日々測定した.7時に規定食を摂取し,8時に人工気象室(30℃,50.0%)に入室し,9時から42℃30分間の足浴(ミナト,ハ゛イサタイサ゛ー使用)を含めた40分間13部位の発汗量を,ろ紙法で測定し,これらの項目間の相関係数を算出した.なお,各部位の発汗量の有意差を検定した.②発汗計(SKINOS)を用いてその経時変化を測定し,左背側上腕部を基準とした全部位の相対発汗量を求め,ろ紙法と比較検討した.結果・考察 ①本被験者の場合,大腿部の発汗量に着目すると,外気温・寝室温・足囲・膝下囲の項目との間に有意な正の相関関係があったことから,外気温・寝室温が高く,周径が長い日ほど,発汗量は多くなることが分かった.またこれらの測定部位の内で額が最も有意に発汗量が多い部位であった.背は額以外の部位に対して有意に高く,胸は四肢に対して有意に高かった.このことから額>背>胸>四肢の順で発汗量が多いことが分かった.②最も発汗量の多い額では,発汗量が5mg/min以上で受感部が飽和したが,比較的発汗量の少ない四肢部では上記実験条件であっても,発汗計の有用性が確認された.
  • 水野 一枝, 水野 康, 松浦 倫子, 丸岡 孝, 中原 皓平, 白川  修一郎
    セッションID: 3E-10
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】これまでに、暑熱環境での入眠過程において冷感素材のパジャマの方が綿よりも寝床内温湿度を低下させ、温冷感を改善する可能性を報告してきた。本研究では、この結果と就寝時のタオルケットによる被覆時間や体動との関連を検討した。
    【方法】被験者は心身ともに健康な成人男性9名とした。実験は人工気候室を用い、29℃70%RHの環境で綿のパジャマ (条件C)と、冷感素材のパジャマ (条件L)を着用した場合の2条件とした。被験者はベッドでベッドマットレスとシーツを用い、タオルケットを使用し13:00~15:00まで就寝した。就寝時の体動はビデオで連続測定し、各身体部位がタオルケットに被覆されている時間、マットレスに接触している時間、姿勢、体動の回数、行動を解析した。
    【結果】タオルケットによる被覆時間は、条件Lで条件Cよりも肩部で有意に増加し、頸部で増加する傾向が見られたが、他の部位では差は見られなかった。各身体部位のマットレスに接触している時間、各寝姿勢の時間、寝返りをうつ粗体動と寝返り以外の体動の回数に条件間で差は見られなかった。両条件とも、身体部位により被覆時間に差が見られ、胸部と腹部、下肢、上肢の順に被覆時間が有意に長かった。
    【結語】冷感素材が暑熱環境での入眠過程における寝床内気候に及ぼす影響は、タオルケットの被覆時間の減少や寝姿勢に関連していない可能性が示唆された。
  • 中田 いずみ, 薩本 弥生
    セッションID: 3E-11
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
    会議録・要旨集 フリー
     目的:暑熱環境下のスポーツ時には熱中症が毎年多数報告されている。現在の熱中症予防のための運動指針には人体の熱収支に影響の大きい気温、湿度、輻射の3つを取り入れたWBGT(湿球黒球温)が主に用いられている。本研究ではWBGTを元にした熱中症予防警報メール(以下警報メール)の配信とともに部活動の活動環境や着衣状況等の調査を実施し、その効果と課題を明らかにすることを目的とする。
      方法:平成25年6月~9月にテニスコート、運動場、体育館にWBGT計測機を設置し、予め登録した携帯に警報メールの配信と調査を実施した。運動部所属者、非所属者あわせて配信対象は大学生・大学院生65名、調査対象は大学生85名である。
      結果:活動環境は晴れの日のWBGTは日中には屋内より屋外が高値を示したが、18時以降は屋内の体育館が高値を示した。曇りの日であっても晴れの日と同様の傾向が見られ、輻射熱の影響が大きいことが明らかとなった。着衣状況は同じ暑熱環境下であっても袖無と短丈から長袖と長丈の下にCGSを着用している部活まで様々であった。警報メールの配信内容と主観との関係を検討したところ、暑熱負荷の厳しい環境で活動している硬式テニス部や、被覆面積の多い着衣を着用している剣道部では配信された警報メールを過小評価と回答するものも多くみられ、現状のWBGTに環境要素に加えて、スポーツ時の皮膚温などの生理データや、着衣量などの要素を加えて修正する必要があることが明らかとなった。
     



  • 石田 佳樹, 高麗 寛紀
    セッションID: 3E-12
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
    会議録・要旨集 フリー
    目的 着用後の衣類上には洗濯後にも相当数の細菌が生存しており、それらの細菌は、衣類上の残存汚れを分解すること等によって臭気を生じる等の問題の原因となることが報告されている。この臭気発生にどのような細菌が関わっているかを分析することを目的として、洗濯前後の衣類上に存在する細菌群を分子生物学的手法により同定した。
    方法 10名のパネリストを用いて、使用済みのフェイスタオルを、各パネリスト宅の洗濯機で洗浄後回収し、部屋干し条件下で乾燥した後、洗濯前後のフェイスタオル及び乾燥後のフェイスタオルより細菌を抽出した。回収した細菌よりgenomic DNAを抽出し、細菌の16s rDNA領域に対するユニバーサルプライマーを用い、genomic DNAを鋳型としてPCR増幅後、PCR増幅断片の塩基配列を決定し、データベース解析により、各PCR断片の属レベルでの細菌同定を行った。  
    結果 洗濯前のフェイスタオルからはサンプル当り24~118種類の細菌属が検出され、Enhydrobacter属、Strepotococcus属等が高頻度で見られ、グラム陽性菌とグラム陰性菌の比率を比較すると同程度であった。洗濯後のフェイスタオルからは10~125種類の細菌属が検出され、Enhydrobacter属、Skermanella属等が高頻度で見られ、グラム陰性菌の比率がグラム陽性菌に比べ高くなる傾向にあった。グラム陰性菌の比率の増加は、部屋干し中及び洗濯・乾燥後には、より顕著であった。
  • 増田 智恵
    セッションID: 3E-13
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】オーダーメイドによる自動衣服設計のひとつとして,自動立体裁断による幅広い年齢の成人女子用3次元タイトスカートを仮想的に作成して,その曲面形状の特徴を捉え,将来の仮想衣服設計に活かすための情報を抽出する。【方法】被験者は18歳~81歳の成人女子850名(平均年齢:39歳,SD:16歳)である。非接触3次元自動人体計測を行い,既存計測ソフトをオリジナル計測基準点や計測方法による人体寸法が得られるシステムに改善,3次元座標(XYZ)と105の計測寸法を求めた。ウエストから股点までの間の約2.5ミリ間隔の人体水平断面上の凹凸点のうち凸点のみからスカート水平断面形状を形成し,衣服で腰部を包み膝関節までの長さの自動立体裁断タイトスカートシステムを構築した。各被験者のタイトスカートを540の三角形メッシュ(300頂点)で相同モデル化を行い,各頂点の角度による曲率(点集中のガウスの曲率:Kc=360°-θと点集中の測地的曲率: kc=180°-θ)を求めた。【結果】個々のスカートのKc kc の合計は全員ゼロ度の一定値を保ち,スカートの3次元曲面形状を体形の大きさではなく部位の曲面形状による差として抽出できた。Kcでは左右の側部腰部+曲面形状,kcではウエストライン側部の凹曲がり形状が大きい。部位別曲率を用いた主成分得点によるクラスタ分析によるスカート曲面形状分類を行ない,年齢も含めた特徴を捉えた。
  • 石原 久代, 小町谷 寿子, 鷲津 かの子
    セッションID: 3E-14
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
    会議録・要旨集 フリー
    目的 高等教育においてICT化が進む中スマートフォンの急速な普及により、これまでのPC対応のe-ラーニングからマルチデバイス対応への変更が求められている。アパレル製作関連の教育コンテンツは、その作業環境からPCよりスマートフォンの方が使い勝手が良い。しかし、スマートフォンは画面が小さいことやリンクなどが難しいことから課題も多い。そこで、学生が難易度の高い科目として挙げている被服製図のコンテンツを取り上げ検討した。
     方法 タイトスカートの製図における「基礎線を書く」から最後の「地の目線を入れる」までの工程を14分割し、各工程をページとして提示する方法と同じ画像をアニメーションで構成し、動画として提示するという2種類のコンテンツを作成し、LMSにアップロードした。実験は、114名の被験者を2グループに分け、各自のデバイスからどちらかにアクセスし1/4大に製図しながら各工程の画像の見易さ、理解のしやすさ、所要時間などを回答させた。さらに教員により出来上がった製図について採点し、課題の抽出を行った。
    結果 被験者のアクセスデバイスは、80%以上がiphonであり、大きさは4インチが最も多かった。画像のわかりやすさ、理解のしやすいについては1%水準で有意な差が認められ、動画の方が高い評価であった。また製図の正解率についても有意に動画の方が高かったが、いずれも脇のカーブ、ダーツ分量などでの不正解が目立った。
  • 中谷 俊裕, 川端 博子, 田中 早苗
    セッションID: 3E-15
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
    会議録・要旨集 フリー
    目的 布を用いた製作学習は、生徒の技能の低下によって授業の進行が停滞しがちであり、1人の教師がクラス全体を指導するには困難が生じている。本研究では動画教材を活用する授業を実践し、手縫いの基礎技能および布を用いた製作学習における生徒と教師の観察・調査より、ICT活用の効果について考察する。
    方法 プリント資料と黒板での段階標本の提示に加え、新たに基礎縫い、ミシンの使い方、製作学習過程の動画教材を制作しTPC(タブレットPC)を手元に置いて見られるようにした。中学校2年生 (174名)を対象に、基礎縫い(まつり縫い)の一斉指導場面と、トートバック製作の個別指導場面を観察・調査した。生徒の意識と作品の出来ばえや進行状況、教師の動作解析による机間指導の推定移動距離と発話分析にもとづき、TPCの有無で傾向を比較した。
    結果 一斉指導では、動画教材により、生徒の理解が向上し、教師の全体へ示範時間が短縮されてより長い時間の机間指導が行えた。個別指導でも、作業が多岐にわたる中でTPCはよく使用されており、困難と感じた作業で最も多く利用されていたことから、動画教材は生徒の理解の促しに効果があると考えられる。全体への示範・説明がなく全クラス同程度の作業時間であったため、動作解析からはTPCの有無による移動距離の違いはみられなかった。発話分析から、「示範」による停滞が減少し、声かけでの「説明」の回数が増加したことから、より多くの生徒に対応できたと考えられた。ICTによって生徒と教師の両者を支援できる可能性が示唆されたといえる。
  • 衣生活指導に対する保育者の意識と着脱の習得状況
    高橋 美登梨, 川端 博子, 鳴海 多恵子
    セッションID: 3E-16
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
    会議録・要旨集 フリー
    目的  衣服の着脱は基本的な生活習慣の一つであり,自立した生活を送るための基本的技能である。幼児は着脱を家庭や集団保育の中で習得するが,集団保育における衣生活の実態に関する研究資料はほとんどみられない。本研究では,集団保育における衣生活の実態を明らかにすることを目的とし,保育者の意識と着脱の習得状況等を把握した。
    方法  平成26年1月~2月に東京都内の幼稚園・保育所の保育者を対象に着脱の実態について質問紙による調査を行い,10月~12月に幼児園5歳児105名を対象に着脱と微細運動能力(ひも結びテスト)の所要時間を測定した。
    結果  質問紙調査より保育者は幼児が着脱を習得することにより自立心が芽生える,自信がつくといった精神面の発達に効果的であると捉えていた。さらに,動作の習得には園での援助も必要と約6割程度が回答した。日常的に午睡時や登園・降園時に着脱を行っている園は約6割であり,着替えの習得は園服の利用目的のひとつでもあった。動作の習得状況は,3歳児では半そでに腕を通すなど大きな動作を習得し,5歳児ではほとんど援助の必要なく動作を行うといえる。5歳児を対象にしたボタンかけを含む着衣動作の解析では,動作の所要時間と手指の微細運動能力との関連は認められなかった。しかしながら,保育者の約6割は微細運動能力が以前に比べて低下していると感じており,向上させる手段として着替えに着目している記述も見られた。発達段階における着脱の習得と微細運動能力の関連性の検証は今後の課題である。
  • 辻 幸恵
    セッションID: 3F-6
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
    会議録・要旨集 フリー
    目的:若者の結婚観が多様化してきたことは以前から指摘されている。これは価値観の多様化に伴って現れてきた現象のひとつである。本報告では結婚式で用いられるブライダルジュエリーに着目をした。ブライダルジュエリーに対して、大学生たちがどのようなイメージを抱いているのかを明らかにすることが本報告の目的である。仮説としては結婚観は多様化したが、ブライダルジュエリーに対するイメージは多様化をしていないことである。
    方法:関西圏に在住をしている男女各200名、合計400名を対象に質問紙による調査を実施した。集合調査法を用いた。分析手法は因子分析を用いた(主因子法、バリマックス回転)
    結果:質問票から得られたデータを数値化し、分析した結果、女子には3つの因子が得られ、男子には4つの因子が得られた。女子から得られた因子には、憧れ因子、伝統因子、華やかさ因子と名づけた。男子から得られた因子には憧れ因子、華やかさ因子、価格因子と名づけた。
    考察:憧れ因子と華やかさ因子は結婚式というイメージと合致しており、ステレオタイプ的なイメージでもあった。男女の差は伝統を感じた女子と価格が高いという値段のイメージをもった男子との差であった。しかしブライダルジュエリーに関しては多様なイメージが得られなかったことから仮説のとおり、ブライダルジュエリーに対するイメージは多様化していないと考えられる。
  • ―普段の服装と似ていると取り入れやすいか―
    伊藤 海織, 木村 慶子
    セッションID: 3F-7
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
    会議録・要旨集 フリー
    目的 柄と柄のファッションコーディネートを難しいと感じている人でも、取り入れやすい要素があればファッションの幅を広げることができる。そこで好まれる柄と柄のファッションコーディネートの柄の特徴と自分のファッションスタイルと似ていると取り入れやすいかを調査した。
    方法
    被験者は18~22歳の女子学生384名とした。試料は、上衣にTシャツ、下衣にフレアスカートを着用した写真に、ボーダー、チェック、水玉、花の柄をつけた画像とした。上下は異なる柄を組み合わせて48体のコーディネートを提示した。調査内容は、自分がよく着るファッションテイストと柄、1つのコーディネートに2つ以上の柄を使用する頻度、48体のコーディネートのうち好きなコーディネートと嫌いなコーディネート各5体とそれらを選んだ理由、年齢である。
    結果 自分がよく着るファッションテイストと柄、1つのコーディネートに2つ以上の柄を使用する頻度という回答者のグループによって、好きなコーディネートと嫌いなコーディネートに大きな違いはなかった。唯一、よく着る柄に花柄を選んだ人だけが好きなコーディネートによく着る柄を選んでいて、嫌いなコーディネートによく着る柄を選んでいなかったことが特徴であった。よって自分の普段のファッションに似ているコーディネートよりも、直線と曲線、大きな柄と小さな柄の組み合わせのように、上下に異なる要素を組み合わせると取り入れやすくなると考える。
  • -新聞広告と通販カタログにみるWRAPPERS-
    小町谷 寿子
    セッションID: 3F-8
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
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    目的 衣服の入手方法について,ブルジョワジーは注文仕立,一般市民は古着の購入または家内生産という時代から,既製服を購入する時代へといちはやく変遷を遂げたのが19世紀後半のアメリカであった.1報では新聞広告による調査分析法を提案し,女子用スーツの広告が1870年頃より現れたこと,2報ではシャツウエスト,スカート,ジャケットの個別広告から組み合わせによる着装形態の自由度が増したことを示した.本研究では,ワンピース形式に注目し,ドレス単体の合理化という点から既製服浸透の様相を明らかにすることを目的とした.
    方法 当時衣服産業の中心地であったニューヨークに注目し, The New York Times 紙(1851年〜1900年)の広告の中からWrapperを中心に新聞広告上での現れ方を調査分析した.また,Sears RoebuckやMontgomery Wardの通販カタログの広告と比較することによって既製服の浸透の様相を検討した.
    結果 1870年代の広告にみるWrapperは「1着$1,48で1000着販売」など量産ベースの部屋着であった.1894年には$1.29のスーツ共に79¢でバーゲンされ,合理的な外出着としても定着していったと推察される.1900年には45¢から$2,98のものまで多様な商品が展開され線画入りバーゲン広告として度々出現した.新聞とカタログにおける安価で豊富な既製服Wrapperの広告は,素材と意匠の多様化,既製服の量産,市民レベルでの流行の過程を示すと考えられる.
  • 山村 明子
    セッションID: 3F-9
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
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    目的 従来の主婦論は社会学を基盤として、主婦の存在意義や役割などについての研究なされてきた。しかし、その服飾を研究対象とすることで、主婦・母親に求めた理想的な姿を検証する。近代に日本の家族観、家庭観に強く影響を及ぼしたイギリス社会の家庭生活、主婦像についてその服飾行動から明らかにする。本発表では家事行為と主婦の装いについて、検討する。
    方法 主な資料にイギリスで発行されたThe Lady’s Realmなどを利用する。同誌は1896年に創刊された女性向け月刊誌で、連載小説、家庭生活一般、職業、ファッションといった、当時の女性の関心事を幅広く網羅している。
    結果 もてなしを司る女主人の役割はその家庭の文化度を測る指標であり、主婦の装いは外部に向けて教養や社交術を表明した。20世紀初頭には主婦の役割が家庭内において変化した。主婦の生活スタイルの変容は服飾行動にも関わり、ファッション記事には家庭内での装いとして、Housefrockなどが繰り返し登場する。また、20世紀初頭は家事奉公人の減少や家庭生活技術の発展に伴い、主婦が家事労働に携わる機会が増加、または家事労働の内容が変化した。資料には衣食住の技術や知識の紹介、またはそれらを学ぶスクールを取材した記事が登場し、家事労働の位置づけの変化を認めることができる。ヴィクトリア朝の女性家事奉公人の表象となっていたエプロン姿は主婦=女主人のものへと変化をとげた。
  • 徳山 孝子
    セッションID: 3F-10
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
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    目的 幕末から明治期における金モール刺繍の普及について着目した。この時期は西洋文化が導入され、軍服にもフランス、イギリス式が採用され、金モール刺繍が多く用いられた。例えば、金モール刺繍を施した肩章、襟章などがある。このように多くの用途があり、軍服にはなくてはならないものであった。
      本研究では、金モール刺繍を日本で製織するようになったきっかけ、製織技術の伝来、製織し始めた人物を明らかにすることを目的とした。
    方法 研究を進めていくなかで、金モールの製造には中野要蔵が深く関わっていることがわかった。
    結果 東京・日本橋区呉服町で「中野屋」という名で洋織物商を営んでいた。最初は、慶応時代に輸入業を始めていたことがわかった。外国武官、外交官が来朝した際に、はじめて金モールが何であるかを知ったとされている。1872年の服装制定により、モールが肩章などに多用されることとなった。当初は輸入品で間に合わせていたが不便であったため、機械を購入して金モールを製造し始めたことがわかった。明治12年製造に着手して以来、各地で需要が高まり、東洋派遣米国海軍からの注文、特約店に命ぜられ、宮内省の御用達にもなった。
  • 大矢 幸江, 薩本 弥生
    セッションID: 3F-11
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
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    目的  2006年の教育基本法の改正では、日本の伝統と文化を尊重し、国際社会での役割や態度等を育てる目標が示された。それを受け、中学校の家庭科の学習指導要領では、「和服の基本的な着装を扱うこともできる」が盛り込まれた。 そこで中高校生にゆかたの着装を含む授業実践を行い、きもの文化への興味関心や理解に対する共通点や違いを明らかにし、ゆかた着装後の授業で何を扱うか提案することを研究の目的とする。   
    方法   平成25~26年に附属中1年生134名、公立中学2年生154名、県立高校2年生221名、県立高校3年生21名、公立中学1年生132名の計662名を対象にゆかたの着装を含む授業実践を実施し、授業前後でアンケート調査を行う。アンケートの分析や教員へのインタビューから、きもの文化への興味関心を高めるのに効果的な授業提案を行う。   
    結果  中学・高校の共通点として、きもの文化への興味関心は伝統文化への興味や経験と関係が深いと示された。中学生は学年が低いほど落ち着きがなく理解度は低いが、ゆかたを着ていつもと違う自分を発見したようなので、ゆかた着装後の授業では、まずは理解習得よりも体験重視による内容が有効であると提案した。一方、高校生は精神的に成長度が高く自分の着つけの評価もしていた。ゆかたの理解からきもの文化や構成面の学習など、より深い内容への学習へつなげ主体的に発表したりテーマを決めて調べたりすることが提案できると結論づけた。
  • 安川 涼子, 浦川 宏
    セッションID: 3H-1
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
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    目的 綿-反応染料系におけるインクジェット染色のマイクロ波加熱による固着方法を検討した.マイクロ波照射装置の試作を行ない,布帛の水分率,前処理剤の尿素濃度,マイクロ波の照射出力および照射時間の観点からマイクロ波加熱固着法の有効性を検討した.
    方法 前処理剤の水溶液は,アルギン酸ナトリウム0.5wt%,炭酸ナトリウム3wt%,尿素0~15wt%の濃度となるように調整し,綿布へパジングした.インクジェットプリンタで構造既知の反応染料を前処理済布帛へ塗付した.印捺した布帛は飽和塩調湿法を用いて布帛の水分量を調整し,ハロゲン水分計で水分率を算出した.調湿した布帛は,マイクロ波照射試作装置を用いて,出力300~600W,照射時間0~240秒で照射した.マイクロ波照射中の布帛温度はファイバー温度計を用いて0.5秒ごとに測定した.マイクロ波加熱処理後の染色布は蒸留水で攪拌水洗し,水洗後の洗液の吸光度から固着率を算出した.
    結果 マイクロ波照射出力を500W一定で布帛の水分率を変化させたところ,水分率が20wt%以上になると固着率が上昇した.布帛の水分率20wt%以上で,尿素濃度を変化させたところ,尿素濃度が高いほど固着率が高くなった.マイクロ波加熱固着では,前処理剤の尿素濃度が固着に大きく寄与する.マイクロ波照射出力及び照射時間,布帛温度についての結果は当日報告する.
  • -染色条件による比較-
    葛西 美樹, 安川 あけみ
    セッションID: 3H-2
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
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    目的 スチューベンは東北地方を国内の主産地とする黒ぶどうの一種である。被服関連の利用は見られないことから,その果皮を用いて絹布の染色を試み,種々の染色条件による色調の相違を比較検討した。また,染色布のUVカット性,抗菌性および保存条件による退色性を調べた。
    方法 冷凍のスチューベン果皮を同重量の水と混合し,加熱(80℃,20min)後,果皮を除去して染色液(pH3.6)を得た。これを母液とし,濃度(5~100%),pH(2.0~9.0),温度(5~100℃),時間(1min~24h)を変えて,絹布(5×5 cm²,JIS染色堅牢度試験用白布)を浸漬して無媒染染色をおこなった。布の色調は分光式色彩計でL,a,bを測定した。UVカット性は紫外可視分光光度計により布の透過スペクトルを測定し,抗菌性は黄色ブドウ球菌に対する抗菌性試験(JIS L 1902)をおこなった。退色性は染色布を照度の異なる環境に置いて経時変化を調べた。
    結果 スチューベン中の色素は短時間の加熱で簡単に抽出でき,赤紫色の色素液を得ることができた。染色母液で絹布は紫系の色に染色できたが,pHを上げると溶液は褐色に変化し,染色布は色が薄く赤みが減少した。染色液濃度の上昇とともに布の色は濃くなったが,染色時間20分で最も赤みが強かった。染色前後の布の比較から,スチューベン染色布にはUVカット性と抗菌性が認められた。染色布の退色性を調べた結果,照度が高い環境ほど退色が進み,日光堅牢度が低いことがわかった。
  • 大矢 勝
    セッションID: 3H-3
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
    会議録・要旨集 フリー
    目的 環境問題の関連で非水系洗浄から水系洗浄への移行が求められているが、水系洗浄では油性汚れの洗浄性が低くなる。エマルション洗浄は水系洗浄の改良法として注目されるが、従来の成分(炭化水素系等)では環境面で課題が残る。そこで、高級アルコールに着目し、高級アルコール/SDS/水系エマルションによる油性汚れの洗浄性について検討した。
    方法 炭素数の異なる高級アルコールとSDSを種々の割合でホモジナイザーを用いて混合し、極性の異なる油汚れの除去性を調べた。油性汚れに油性色素を混合して汚染布を作成し、予め洗浄後の反射率と油性汚れの残留量の関係を求めておき、その回帰式を用いて表面反射率から洗浄性を求めた。またエマルションの電気伝導度や表面張力、および高級アルコールの生分解性、水生生物毒性についても検討した。
    結果 極性の小さな油汚れに対してエマルション洗浄が有効であることが分かった。高級アルコールとSDSの割合は、アルコールの炭素数が少なくなるとSDSの割合を増したエマルションで高い洗浄性が得られた。高級アルコールは界面活性剤単独よりも表面張力が小さくなるため、界面活性が高まるためにローリングアップや乳化が進行すると考えられる。ほかに確率密度関数法による速度論的な解析から、エマルション洗浄では可溶化の寄与が大きくなる傾向が認められた。高級アルコールは生分解性や水生生物毒性にも優れていることが確認され、非常に有望な手法であることが分かった。
  • 後藤 景子, 谷 彩香
    セッションID: 3H-4
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
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    目的 衣服の水系洗浄において, 時短は作業の効率化のみならず, 布の損傷や消費エネルギーを抑える観点からも効果的と考えられる. 本研究では震盪に超音波を併用する方法で, 人工汚染布や機械力評価布の洗浄を行い,洗浄性や布の損傷を評価して洗浄時間短縮の可能性を検討した. 方法 モデル汚れにオレイン酸, カーボンブラックおよび赤土を, 原布にポリエステル布および綿布を用い, 人工汚染布を作製した. 機械力評価布として, WAT cloth, MA test pieceおよびEMPA 306を用いた. 硫酸ドデシルナトリウム水溶液(25℃)中に人工汚染布と原布, または機械力評価布と原布を入れ(浴比1:30), 超音波照射有無の条件で震盪(160 spm)洗浄を行った. 洗浄前後の布のクベルカムンク関数から洗浄率および再付着の程度を算出した. 結果 ポリエステル汚染布を用いて洗浄性に及ぼす時間の影響を調べたところ, 超音波照射により汚れ除去が著しく促進され,洗浄率は数分でほぼ一定となった。一方,再付着の程度は時間とともに増大した. そこで, 全ての汚染布について得られた洗浄時間1分と5分における洗浄率と再付着の程度を比較したところ,1分洗浄が望ましいことが示唆された. ドラム型洗浄試験機で得られた洗浄率は震盪/超音波併用洗浄と同程度であったが, 布の損傷が大きいことがわかった. 
口頭発表 5月24日 食物
  • 貝淵 正人
    セッションID: 3I-1
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
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    目的 脳卒中片麻痺患者の包丁操作では,片手での包丁操作により姿勢が固定的となり,下肢の荷重変化が行われにくくなる.脳卒中片麻痺患者の包丁操作能力の獲得に必要な要素を明らかにすることを目的として包丁操作時の床反力の変化・上肢運動の分析を行なった.

    方法 健常成人8名を対象に,床反力計,3次元動作解析装置(VICON)を用い,包丁操作時の下肢の荷重変化(COP変動,加速度)を測定した.調理台に対して平行立位(右操作)・45度立位(右/左操作)で包丁操作時のパフォーマンス,肘関節屈曲運動,床反力について測定し比較を行なった.また包丁操作をしていない手を、左手で対象物を固定(固定あり),固定なし,左手を台上に設置(台の上),アームスリングを着用(アームスリング)の4条件でそれぞれ右手による包丁操作を行った.

    結果 45度立位・左上肢操作のみパフォーマンスが低下した.45度立位では非操作側の床反力が徐々に大きくなった.姿勢角度の変化は床反力の荷重に影響していた.また、固定手あり条件では,他3群と比較し包丁操作に伴う右下肢から左下肢への有意な荷重変化が見られた.
  • 岡本 洋子, 吉田 惠子
    セッションID: 3I-2
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
    会議録・要旨集 フリー
    目 的 我々の健康維持や生活習慣病を予防するうえで、塩味や甘味の低減を考慮した食べ物の摂取が望まれる。本研究では、塩味と甘味の感じ方について、呈味量を軽減したうえで満足感を享受できる方法を明らかにすることを目的として行った。
    方 法 健康な女子学生27~34名を評価者として、「塩味均一試料」と「塩味外側試料」について、0.9%,0.6%,0.3%食塩濃度の塩むすびを調製して官能評価を行った。甘味類では、「甘味内側試料」と「甘味外側試料」を調製した。塩・甘味強度と嗜好性を、2点識別・嗜好試験法によって調べた。さらにカテゴリー尺度による評点法を用いて呈味強度と嗜好度を調べ、対応のあるサンプルのT検定を行って解析した。
    結 果 塩むすびにおいて、同一塩分濃度の場合には、「塩味均一」に比べ「塩味外側」が、有意に塩味が強いことが示された(p<0.01)。さらに塩分濃度を2/3あるいは1/3に減じた場合であっても、「塩味均一」に比べ「塩味外側」が、有意に塩味が強いことが示された(p<0.05)。塩を均一に混ぜる場合と外側にまぶす場合では、嗜好性については、有意差はみられなかった。同一甘味濃度では、甘味を試料の内側に入れるより、外側に甘味を添加した方が、有意に甘味が強いことが示された(p<0.05)。6種の甘味試料のうち、5種の甘味試料について、「内側にのみ甘味」と「外側にのみ甘味」の試料間の嗜好性に有意差はみられなかった。食品に塩味や甘味を局在させた方が、塩味や甘味に対する満足感が大きいことが示唆された。
  • 島田 玲子, 鶴岡 真菜美
    セッションID: 3I-3
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
    会議録・要旨集 フリー
    <目的>ショウガは古くから親しまれている薬味で,家庭料理にもよく用いられる。本研究では,日本の家庭料理におけるショウガの利用を調査するために調理書の調査,ならびに官能評価,物性測定によりショウガのマスキング効果,軟化効果の検証を行った。 <方法>調理書の調査には,料理大辞典(田村魚菜1952)を用いた。官能評価には,0および0.5%ショウガを加えて煮た鶏ガラスープを用いた(n=192)。また,0,0.5,1,5%のショウガ汁を加えた調味液に漬けたカツオを焙焼し,破断測定(RE2-3305B山電),官能評価(n=10)を行った。 <結果>全料理のうち,25%以上にショウガが使われていた。特に中国料理では半数以上に使用されており,肉や魚の下処理での使用が多かった。和食では,完成した料理に飾りとして使用されることが多く,洋食では他の香辛料・香味野菜と合わせて肉料理などのスパイスの一部として使用されていた。2種の鶏ガラスープのうち,好きな方としてショウガ入りスープを選んだ人は131名,ショウガなしスープを選んだ人は61名であった。ショウガの好みによって,選ぶ理由が違う傾向があった。また,ショウガに臭いのマスキング効果があることが示唆された。ショウガ汁1%添加,5%添加カツオは破断応力,破断歪率が小さくなった。官能評価では,ショウガを添加したカツオは0%添加よりもやわらかく,魚臭がおさえられていると評価された。
  • 岡本 由希, 内山 裕美子, 高橋 貴洋, 築舘 香澄, 加藤 みゆき, 大森 正司
    セッションID: 3I-4
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
    会議録・要旨集 フリー
    目的 近年,ライフスタイルの変化により,緑茶等のペットボトル飲料が生活に定着し,その原料茶葉は輸入への依存度を増している.国内における茶の生産量は,静岡県が最も多く,次いで鹿児島県,京都府となっており,これら数県だけで大半を占めている.本研究では,国内主要茶産地で生産された代表的な茶について,成分分析および嗜好調査を行い,成分と嗜好性において特徴的な知見が得られたので報告する.
    方法 試料は,2014年春に埼玉県(狭山),静岡県,京都府(宇治)および鹿児島県において生産された緑茶の仕上げ茶を用いた.茶浸出液は,茶葉3gに熱湯200mlを加えて3分間浸出後のろ液および常法により完全抽出して得られたろ液を用いた.分析は,色差計による茶葉そのものの外観の測定,380nmにおける浸出液の水色測定,HPLCによる浸出液のカテキン,カフェインおよびアミノ酸の測定を行った.また,味覚センサーによる浸出液の客観的測定を行った.さらに,それぞれの茶の嗜好性を調べるために,茶葉3gに熱湯200mlを加えて3分間浸出させた各浸出液について,82名のパネルによる官能評価を実施した.
    結果 国内主要茶産地で生産された茶の成分分析を行ったところ,アミノ酸含量は宇治茶,鹿児島茶の順であり,カテキン類については静岡茶および狭山茶において多く認められた.これらは味覚センサーによる客観的評価の測定結果とほぼ対応するものであった.さらに,82名のパネルにより茶の浸出液の官能評価を実施したところ,それぞれの茶の水色,飲みやすさ,滋味についての評価は,成分分析結果や味覚センサーによる測定結果とも相関性が認められるものであった.
  • 内山 裕美子, 高橋 貴洋, 築舘 香澄, 岡本 由希, 加藤 みゆき, 大森 正司
    セッションID: 3I-5
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/15
    会議録・要旨集 フリー
    目的 近年,緑茶の需要の高まりを受けて,緑茶の生産は増加の一途を辿り,2011年には世界の茶の生産量430万tのうち,緑茶が30%以上も占めるようになっている.緑茶生産国は,茶の原産国でもある中国は当然ながら,紅茶生産国としても知られているインドやスリランカ,ケニア,トルコ等にも広がりを見せている.本研究では,緑茶を生産し飲用している国,ベトナムの茶に着目し,茶の成分と風味の特徴および嗜好性について検討したので報告する.
    方法 2014年に,ベトナム北部で生産された5種類の緑茶を試料とした.試料は,茶葉3gに熱湯200mlを加え,3分間浸出後にろ別して得られた浸出液および常法により完全抽出した浸出液を用いた.これらの浸出液について,カテキン(酒石酸鉄法およびHPLC法),カフェイン(HPLC法),アミノ酸(アミノ酸分析計)の測定を行った.さらに,味覚センサーを用いてうま味,渋味,苦味等を測定するとともに,官能評価も実施し,風味の特徴および嗜好性について検討を行った.
    結果 ベトナムにおける緑茶の製造は,茶葉を鎌状の刃を用いて切るように摘み取った後,釜により殺青と乾燥を行う釜炒り緑茶であった.現地で飲用した緑茶は,渋味の強いものであった.カテキンを分析した結果,EGCGおよびECG含量の多いことが特徴であった.本研究で試料としたベトナムの緑茶は,釜炒り茶ということもあり,カテキンの分解物も認められた.また,味覚センサーの測定結果についても,分析したカテキン量に対応していたとともに,うま味および渋味の余韻が強く,口の中に残る風味であることが示された.
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