目的 日常生活における温度環境は動的に変化し,温度感覚も同様に動的に変化する.動的な温度環境下において,既存のスケールで被験者の温度感覚を表現するにはいくつかの問題があるため,我々は痛み感覚スケールに利用される視覚的アナログスケール(VAS)を応用して,動的な温度変化に対する温熱感覚評価を試みている.しかし,VASも主観的評価スケールであり,温度感覚の客観的・定量的評価には脳機能計測による評価が必要であるが,温度感覚の評価は確立されていない.本研究では現在の脳機能計測機器で温度感覚評価を可能にするための実験アプローチの構築を目的とする.
方法 非利き腕側の前腕内側部に温冷感覚刺激装置を貼付し,5つの異なる安静時皮膚温(10,18,28,33,36°C)から周期的局所温度刺激を実施し,VASで温度感覚を評価した.また,温度に依存しない温度感覚を与えるため,1wt%のメントールを皮膚に塗布し,効果の現れる5分後からどうようの実験を実施した。
結果 個人差はあるものの,周期間で温度感覚に差は認められなかった.温度の振幅は5°Cに統一していたが,VASの振幅は安静時皮膚温が高くなるほど大きくなった.メントールによる増幅も高温時でのみ認められた.皮膚温上昇時下降時で温度感覚の再現性が異なり,安静時皮膚温が33°Cよりも低い場合は下降時に,高い場合は温度上昇時に温度変化に対して高い反応性を示した.
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