一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
68回大会(2016)
選択された号の論文の290件中51~100を表示しています
ポスター発表 5月28・29日 被服
  • 高品質に特化したタオルの開発
    西川 良子
    セッションID: P-051
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    「地域ブランド」は今や地域振興や再生において欠くことの出来ないキーワードとなっている。地域の歴史や伝統に基づいた特産品の拡販や伝統産業の強化のみならず、それらに由来する新たな商品開発や技術の応用を試みることで新しい価値を生み出し、再度注目を集めるケースも増えてきた。また2000年代以降は、国家レベルで法律や制度の整備が進み、地域への支援も活発に行われている。しかし、地方の伝統産業の自立、グローバル化、物流や情報発信力の向上には行政をはじめとする機関からの支援が必要であり、さらに新たな市場を開拓しマーケットを循環させるには専門知識やノウハウも必要となってくる。このように地域が持つ特性や付加価値が見直されている昨今、効果的にマーケティング戦略を行うために地域ブランディング事業において専門家やコンサルタントなどの第三者を外部からブレーンとして招聘するケースが見られるようになっている。
    120年の長きにわたりタオルの産地として君臨してきた愛媛県今治市のタオル生産者たちは、安価な海外製タオル進出により圧迫を受け存亡の危機に立たされていた。再生をかけて模索を続ける四国タオル工業組合はアートディレクターの佐藤可士和を招聘し、今治タオルのブランディングを進め、復活を成し遂げた。ターゲットを極限まで絞り込んだ「今治タオル」の品質に注目し、タオル開発と生産ライン形成からのブランディングを解析する。
  • -新たに展開した取り組み-
    井上 美紀, 川又 勝子
    セッションID: P-052
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的  本研究では、地域服飾産業の活性化を図り、今後の東北の産業を担う専門的人材の創出を目的とした実践的教育プログラムを検討し、東北の伝統素材を用いて商品の企画、製造、広報、販売までを本学学生が実践するブランドマネジメントとして実践してきた。本報告では、これまでに実践したプロジェクトから、新たに展開した取り組みについて報告する。
    方法  初年度のプロジェクトをきっかけに外部団体の要請を受け新たに取り組んだ。プログラムを実践している本学服飾文化専攻3年次「ブランドマネジメント演習」の履修学生と前年度履修学生を中心に、授業と別の時間を設定し展開した。さらに活動の幅を広げるため全学年から参加学生を募り、活動の一部を各学年で開講される「家政特別講義」の中で展開した。
    結果  2010年度から海外の妊産婦支援や震災後の母子支援を目的とし、外部団体とのパートナーシッププロジェクトとして実施した。妊産婦支援では、勉強会参加、ボランティア活動、アフリカ布を使った洋服と服飾雑貨の企画・制作を行った。全学年で展開した震災後の母子支援では、演習で使用している素材の青苧とアフリカ布のコラボレーション雑貨の企画・制作を行い、支援活動に繋げられた。2015年度には、ブランドマネジメント演習で連携している青苧の有志団体がある地域イベントに出展し、演習の前年度履修学生が青苧の情報発信やワークショップを行う等、地域振興の活動にも繋げた。
  • 花田 朋美, 夏目 佳奈, 木﨑 鮎紗
    セッションID: P-053
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的  ポリ乳酸繊維布の生分解性に及ぼす収縮加工の影響について検討することを目的としている。

    方法  ポリ乳乳酸繊維の良溶媒ジクロロメタンと貧溶媒エタノールを用いた混合溶媒法により収縮加工を施した収縮率の異なる(0%、10%、15%、20%)布帛を、家庭用バイオ式生ゴミ処理機を用いて処理し、強伸度と重量の経過時間変化を観測して生分解性を評価する。

    結果  すべての試料において投入7日後に強度低下が観測され、処理時間の経過に伴い強度低下の割合が大きくなり、生分解の第一段階である加水分解が進行していた。更に、強度低下の割合は収縮率の増大に伴い大きくなり、収縮率依存性を示すことが明らかとなった。また、収縮率20%の試料においては、投入40日後に重量減少を観測することができ、生分解の第二段階である微生物分解が進行しており、重量減少においても収縮率依存性を示す結果が得られた。混合溶媒法の収縮機構は配向した非晶鎖の分子鎖配列の乱れによるものであることから、収縮率の増大に伴い分子鎖配列がより乱れることにより、生分解がより進行しやすい環境になるものと考えられる。従って、収縮率を変化させることにより、生分解速度をコントロールすることが可能となり、ポリ乳酸繊維布の新たな用途展開が期待でき、混合溶媒法による収縮加工を施すことにより更なる付加価値を付与することができると考えている。
  • 福田 典子
    セッションID: P-054
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的】人工汚染布として、日本油化学会法や日立ライオン法、EMPAなどが洗浄力評価に利用されているが、それぞれ洗浄挙動特性が異なる。近年のニット消費量の増加や、住空間の気密化による固体微粒子汚れの減少から、固体微粒子無添加の油性ニット汚染布の必要性も考えた。本研究では、脂肪酸と油溶性染料より油性ニット汚染布を試作し、人工汚染布としての可能性を探ることを目的とした。

    方法】試料として綿スムース(C布)、ポリエステルニット(P布)を、脂肪酸としてオレイン酸、ステアリン酸を、油溶性染料としてOil Yellow OB、Oil Yellow ABを用いた。単一染料を脂肪酸混合物に投入した汚染浴に試料を浸漬・付着後、乾燥機内でエイジングさせ汚染布を作製した。洗浄前後の表面反射率より、洗浄率(D値)への脂肪酸混合率、染料の種類、生地組成等の影響を比較検討した。

    結果】脂肪酸二成分混合ニット汚染布のD値は、ステアリン酸混合率が高いものほど低下した。ステアリン酸10%混合P汚染布のD値は、Oil Yellow OB系よりもOil Yellow AB系の方が大となった。本油性汚染布を48hエイジングした場合、処理時間とともにD値は大となった。いずれの組成の汚染布も、SDSよりもDBSの方がややD値は大となった。ステアリン酸混合率の高い汚染布ほどD値が低下する傾向は、P布に比べC布において顕著であった。
  • 佐々木 麻紀子
    セッションID: P-055
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 天然染料を使った木綿の染色は藍を除くとタンニンを含んでいないものはほとんど染まらない状態である.絹はタンパク質繊維であるため天然染料の色素を吸着することから濃色に染色が可能である.綿の場合もたんぱく質をつけることで絹に近い染色を可能にするとされている.そこで天然染料を用いた綿染色の可能性を探ることを目的に前処理剤による染色布の濃色効果について更にそれらの各種堅ろう性について検討を試みた.
    方法 豆汁,市販の豆乳,タンニン等を前処理剤とし,試料として綿布(JIS金巾)を用いた.天然染料の茜(100%owf),コチニール(20%owf)で浸染による染色を行った.媒染はアルミ先媒染法,スズ同浴媒染法で行った。染色布は色差計でL*値a*値b*値を測定し比較した.耐光,洗濯,摩擦,汗染色堅ろう度試験はJISに準拠した方法で行い評価した.
    結果 茜及びコチニールを染料とし,豆汁を使用した場合,豆汁に浸漬した染色布は共にムラになりやすく,刷毛引きの方が適していた.前処理後の放置日数が長くなると染色布に濃色化が認められた.特に両面から刷毛引きした場合a*値,b*値が高く赤み,黄みが強くなった.市販の豆乳を用いた場合,豆汁と同様の結果であった.市販豆乳の濃度は60g/Lが適正であった.タンニン酸を用いて浸染により前処理を行った場合,くすみのある染色布が得られた.得られた染色布は豆汁引処理の茜染めの場合,耐光3級,洗濯2-3級,摩擦3級,汗3級以上であることがわかった.
  • 熊谷 伸子, 井田 民男, 芳住 邦雄
    セッションID: P-056
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 衣類の廃棄物処理は、循環型社会の形成を実現するための重要課題であり、その要因解明が求められていると言える。本研究は、衣類の廃棄物処理の従来手法である単純な焼却によるサーマルリサイクルでなく、その概念を超えたケミカルリサイクルへの途を検討することを目的としている。すなわち、衣類の廃棄物をガス化・油化を含めたコークス化するプロセスの基礎的検討を行うことに主眼を置いている。
    方法 衣類廃棄物対象物には、文化学園大学における縫製実習時に生じる裁断残布を用いた。それぞれをウール、コットンおよび化学繊維に分別して仕分けした。それらから約100gを用いて、個別に150℃に加温し、20MPaで加圧した状態を15分間保った。その結果、直径48mm、高さ44mm程度で比重1.3を超える固形成形品が得られた。
    結果および考察 衣類廃棄物は加温、圧縮した結果、外観上の3種の異なる固形成形品となり、接着物の添加なしに固着物となることが認められた。特に、ウールの繊維廃棄物は滑らかな表面を呈する黒色の固形物となった。強度もコットンおよび化学繊維によるものと比較して大きいと言える。ウールは表面が撥水性、内部が吸湿性の高いタンパク質系の繊維であり、廃棄物としては扱いが容易でないとされている。しかし、本研究の結果では、固形物の特性として有用性の高いものであることが判明した。一方、コットンおよび化学繊維は、それぞれの基本物性を反映した特徴を有していると言える。
  • 天木 桂子
    セッションID: P-057
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 三陸沿岸に位置する岩手県宮古市は日本有数のうにの産地である.しかし,可食部を除いたうに殻は利用価値がないとされ,ほたて殻やかき殻とともに海岸に山積みにされ廃棄物として処分されてきた.本研究は,こうしたうに殻を再利用することを目的に,染料を抽出して各種繊維を染色しそのメカニズムを探ることを目的とする.また,堅牢性も重要であることから,特に洗濯堅牢性に着目して各種条件下で洗浄実験を行い,結果を比較しながらうに染めの可能性を探った.
    方法 染色に用いるうに殻は,可食部採取後洗浄水切り工程を経て冷凍保存したものを用いた.試料布は,染色実験用平織布3種(綿,毛,絹)とし,いずれも1.0g/枚に裁断した.布1gに対し10gのうに殻を用い,酸性浴,中性浴,アルカリ浴中で80℃20分間処理後ろ過して染料抽出液とした.染色にはアルカリ抽出液をpH4,7,10に再調製し,浴比1:50,80℃で20分間染色した.媒染剤はスズ,アルミ,鉄,銅,ミョウバンとし,先媒染または後媒染を行った.評価は,抽出液は吸収スペクトルと色彩(L*a*b*)を,染色布は色彩(L*a*b*)を測定して行った.洗濯堅牢性は,各種界面活性剤および市販洗剤を用い,染色布と白布を恒温振盪機で洗浄して処理前後の色彩を測定して,退色と移染を比較した.
    結果 ①うに殻からの色素抽出はアルカリ浴が適している.②染色で最も濃色が得られたのは酸性浴であった.③毛と絹はある程度濃色に染まったが,綿は効果が低かった.④洗濯堅牢性は,弱アルカリ性洗浄液に対して非常に低く,中性洗剤の利用が示唆された. 
  • -染色条件と媒染条件による比較-
    葛西 美樹, 安川 あけみ
    セッションID: P-058
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 スチューベン果皮を用いて,種々の条件で絹布,綿布および羊毛布の染色を行なった。抽出液中の含有色素を調べ,繊維の種類別に染色条件と得られる染色布の色調の関係を検討した。また,各々の繊維について最適な染色条件を決定した。
    方法 冷凍のスチューベン果皮を同重量の水と混合し,加熱(80℃,20min)後,果皮を除去して色素液(pH3.3)を得た。絹,綿,羊毛(5×5 cm²,JIS染色堅牢度試験用白布)を試料布とし,これらを濃度,時間,温度,pHをいろいろ変えて浸染した。各繊維に対する最適な染色条件は,無媒染染色布で決定した。その他,6種類の媒染液(Mg2+,Al3+,Ca2+,Ti4+,Fe3+,Cu2+)を用いて,種々の濃度で後媒染を行なった。染色布の色彩測定は分光式色彩計によりL*,a*,b*を測定した。なお,含有色素を調べるために,色素液をpH1~13にした溶液も調製した。
    結果 色素液は酸性から中性で赤~ピンク~紫色と変化し,アントシアン系色素の存在が確認できた。また,アルカリ条件で黄色から褐色を呈したことから,フラボノール類,カテキン類,タンニン類が含有する可能性が示唆された。各々の繊維について,濃色に染める最適条件を,pHはいずれも3程度,絹布は80℃-20分,綿布は25℃-20分,羊毛布は80℃-60分と決定した。媒染液の種類と濃度を変えた媒染染色の結果,絹布ではa*の範囲が広い種々の色が得られた。これに対し綿布ではL*とb*が広範囲におよび,一方,羊毛布は色調の変化が小さかった。
  • 注染型紙について
    川又 勝子, 佐々木 栄一
    セッションID: P-059
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 大正期から昭和50年代にかけて、仙台地方では注染による浴衣・手拭染色が多数行われた。これまでに、仙台地方の染色製品等について明らかにするために、当時使用された注染用型紙953枚の調査と文様の電子保存を行った。引き続き、調査対象の染色工場所蔵の型紙保存箱約20個のうち第6番(全96枚)の注染用型紙について調査した結果を報告する。
    方法 注染用型紙の保存状態の調査と計測を行った後、CCDセンサー・イメージスキャナによる型紙文様の電子化を行い、文様等の型紙形状を調査した。また、電子データを活用し電子的文様補修とデータベースを作成した。
    結果 破損・欠損箇所のある型紙は96枚中12枚(12.5%)で、保存状態の良い型紙が多数を占めた。柄行については、名入れ型紙が97.9%であり、そのうち名入れ手拭(87.5%)が殆どを占めた。また、53枚の型紙からは名入れの発注主を文様から読み取ることができ、神奈川県(26.4%)、山梨県(13.5%)と県外の型紙が多く、仙台地方の染色産業は東北地方だけでなく、関東圏まで販路を有したことが示された。一方、文様分類の結果、文字(97.9%)、器物文様(35.4%)が多く見られた。さらに、電子保存した型紙文様は、汎用画像処理ソフトを用いて破損・欠損箇所の補修を行い『仙台型染資料集Ⅷ』(紙媒体とEPUB形式)にまとめた。なお本研究は、JSPS科研費24700780の助成を受けて行った。
  • 下村 久美子, 山口 庸子, 中村 弥生
    セッションID: P-060
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 近年、新たな洗浄システムとしてオゾンファインバブル水が注目され、この機能を利用した洗濯機も発売されている。しかし、衣類に対するオゾンファインバブル水の洗浄効果は明らかにされておらず、明確な評価方法も確立されていない。本報告では、オゾンファインバブルの発生機能を内蔵した市販の洗濯乾燥機を対象に、実際的な洗浄系におけるオゾンファインバブル水の洗浄効果について検討した。
    方法 洗濯機(ハイアール社製)を用いた洗浄試験は、人工汚染布(血液 DFT CS-1)15枚を用いて、オゾンすすぎコースですすぎ洗いを行った。比較に水道水のみのすすぎ洗いを行った。洗浄前後のK/ S値の変化から洗浄率を求め、さらにペトリフィルム(3M社製)を用いて除菌効果を評価した。また、オゾン発生量を紫外線吸収方式(オキトロテック社製OZM-5000L2)にて測定し、これを基に、オゾン濃度の異なるファインバブル水のATP除去効果を評価した。
    結果 洗濯機の廃液中のオゾン発生量を測定した結果、平均0.086mg/Lであった。血液汚染布を用い、洗剤を添加せずオゾンの有無の差異で処理した結果、数値にばらつきも少なくオゾン有にて洗浄効果が認められた。ペトリフィルムを用いた除菌効果の評価において、オゾンの有無による差異は認められなかった。ATPの測定では、オゾン濃度に関わらす残液中の除去が認められた。しかし、低オゾン濃度では汚染布のATP除去効果は認められなかった。評価法を含めて今後さらに検討が必要である。
  • 花田 美和子
    セッションID: P-061
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目 的 循環型社会に対応する衣生活のあり方の一つにリユースが挙げられる。中古衣料は現在、実店舗の他インターネットサイトやスマートフォンのアプリなどで広く流通しているが、一方で他人が着用したものへの抵抗感も根強くある。前回の報告では、中古衣料の品質を表す「使用感(着用感)」という言葉がネット上で多用されていることに着目し、アンケート調査の結果、これが「色あせ」「のび」「毛羽立ち」に起因する可能性を示した。そこで本報告では、中古衣料の色が「使用感(着用感)」に及ぼす影響について検討をおこなった。
    方 法 着用年数の異なる婦人用半袖ポロシャツを試料とし、分光測色計を用いてL*、a*、b*値を測定した。ポロシャツはいずれも同じメーカーのもので、組成は綿、ポリエステル他の混紡である。さらに、子供服13点についても同様に測色した。いずれの試料の色も経年変化が目立ちやすい白と黒に限定し、測定部位は前身頃と後身頃、袖の3部位とした。
    結 果 白ポロシャツでは着用年数が長いほどL*値が小さくなり、黒ポロシャツではL*値が大きくなることが確認できた。a*、b*値ともに未使用の試料よりも数値が大きくなる傾向がみられ、着用によって異なった色みに変化していることがわかった。また、子供服は婦人用と比較してL*の部位差が大きく、色ムラも「使用感(着用感)」につながると考えられる。
     本研究はJSPS科研費26560038の助成を受けたものである。
  • 田澤 紫野, 小松 恵美子, 森田 みゆき
    セッションID: P-062
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 土顔料で直接布を染色する方法を研究している。これまでの検討で,本研究の土顔料染色布は洗濯堅ろう度は低いが再汚染は起こりにくいことがわかり,作成が容易な洗浄試験用の汚染布として応用できる可能性がでてきた。今回はこの染色布と湿式人工汚染布(洗濯科学協会製)で洗浄試験を行い,結果を比較考察した。
    方法 土顔料はOchre de France製のRouge ercolano,布はJIS染色堅ろう度試験用のナイロン,PETを用いた。300ml三角フラスコに緩衝液(pH4)100mlと土顔料0.1gを入れ,3分間超音波照射で分散後,布0.5gを入れ130r.p.m.の振盪機で室温処理した。布を取り出し約24時間室温で乾燥後,蒸留水100mlで2回すすぎ,再び完全に乾かし染色布とした。洗浄試験はJIS洗濯堅ろう度試験A法のA-1号に準じて行い,目視,測色等により評価した。
    結果 土顔料染色布は湿式人工汚染布と同等の洗浄率が得られた。湿式人工汚染布には泥,有機成分,カーボンブラックが含まれている。それに対して本染色布に含まれているのは土顔料粒子のみで色も鮮やかなため,湿式人工汚染布よりも洗浄後の退色の程度が目視でわかりやすいことから,純粋な土(泥)汚れモデル汚染布として,学校教材に適している可能性がある。今後は本染色布を洗浄試験用汚染布として,学校現場で洗濯実験などに使用する際の実験方法や条件について検討していく。
  • 熱海 春奈, 小松 恵美子, 森田 みゆき
    セッションID: P-063
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 環境負荷の少ない土顔料を用いた染色方法を開発している。地域の特性を活かしたものにするため,北海道剣淵町で採取される“剣淵粘土”を用いて布を染色し,土顔料粒子の表面付着状態についてSEM観察を中心に調べた。
    方法 300mlの三角フラスコに緩衝液(pH4)100mlと乳鉢ですり潰した剣淵粘土0.1gを入れ,3分間超音波を当て粒子を分散させた。そこにJIS染色堅ろう度試験用白布1枚(0.5g)を入れ,130r.p.m.の振盪機を用いて室温で染色処理した。得られた染色布は24時間室温乾燥後,100mlの蒸留水で2回すすぎを行い,再び完全に乾かした後にSEM観察を行った。剣淵粘土には,800℃に設定した電気炉で0.5時間焼成したものを用いた。
    結果 焼成粘土で染色したナイロン染色布およびPET染色布は土の付着量が少なく,繊維表面よりも繊維間隙への細かい粒子(粒径1マイクロメートル程度)の付着が見受けられた。キュプラ染色布は,土が多く付着している部分とそうでない部分があり,色ムラの大きさに関与していると考えられた。絹染色布は,付着している粒子に突出して大きいものは見受けられず,細かいものがまばらに付着していた(約1~5マイクロメートル)。綿染色布は付着している粒子の大きさがバラバラで,大きいもので約29マイクロメートル,小さいもので約1マイクロメートルであった。
  • 都甲 由紀子, 佐藤 恵利菜, 西口 宏泰
    セッションID: P-064
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 畳の材料であり草木布の材料としての可能性を持つシチトウイとイグサの構造を明らかにし、天然染料による染色性に及ぼす影響を調べることを目的とする。
    方法 シチトウイとイグサの断面と側面を走査型電子顕微鏡(日立TM3000)により観察した。シチトウイとイグサをキハダ、インドアカネ、タデアイ(化学還元法)により染色した。染色の前処理として、蒸し処理、灰汁炊き処理を行い、染色性への影響を調べた。染色結果は分光色差計(日本電色NF777)による測色と目視によって評価した。
    結果 
    ・染色の結果は、シチトウイもイグサもキハダとインドアカネでは均一にある程度の濃さで染色できたが、タデアイでの染色では均一に染色できなかった。すべての染料で、蒸し前処理を行うことで濃くなり、灰汁炊きの前処理をすることで暗い色に染めることができた。
    ・シチトウイとイグサの構造の違いは、基本組織である柔組織の髄の部分に大きく表れた。シチトウイの髄の構造は比較的密度が低く隙間が不均一で、垂直方向に細胞壁が見られないのに対し、イグサの髄の構造は網目状でスポンジのような海綿状組織になっている様子が観察できた。染色にあたり、シチトウイは茎を割いて乾燥していることから、染液を浸透させやすいが、イグサの髄はスポンジのような構造でありシチトウイよりも多く空気を含んでいるため、染液を浸透させにくい構造が染色性に影響を与えたと考えられる。 
  • 雨宮 敏子
    セッションID: P-065
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 これまで媒染染色により染料を銅の主な担持サイトとした消臭綿布を調製してきた.本研究では染料を用いず,多価カルボン酸を用いて綿布にカルボキシ基を導入後,銅処理を行った.調製した試料布のアンモニアやエタンチオールに対する除去能を検討した.
    方法 綿ブロードを25℃のクエン酸水溶液に浸漬し,予備乾燥後,熱処理を行った.クエン酸処理後,硫酸銅(II)五水和物を用い85℃で30 min,銅処理を行った.試料布を入れた2 Lテドラーバッグにアンモニア1000ppmまたはエタンチオール100ppmを含む空気を導入後,バッグ内の気体の残存濃度を気体検知管法または炎光光度検出器を用いたガスクロマトグラフ法で経時的に測定した.
    結果 アンモニア除去については,30 min後,クエン酸未処理綿布(白布)では 600ppmであったのに対し,クエン酸処理綿布では0ppmを示し,クエン酸処理によりアンモニア除去性能が顕著に向上した.導入されたカルボキシ基との酸塩基中和反応による除去が行われたと考えられる.また,クエン酸処理により銅の取込量が増加したことから,導入されたカルボキシ基が銅の結合サイトとして用いられたことが示された.本研究で得た試料布はこれまでの媒染染色による銅量より少なかったが,エタンチオールに対する酸化分解型の除去能は示された.近年のアゾ染料への規制強化を考慮し,染料を用いずに綿布に銅を担持する方法は有用であると思われる.
  • 長山 芳子, 鮑 清爽, 小田 瑞姫, 伊達 結菜
    セッションID: P-066
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的:固体粒子汚れは洗濯において除去しにくい汚れであり、酸化鉄汚れもその一つである。この洗濯試験に供する酸化鉄人工汚染布を作成することを目的とし、分散方法および分散濃度の影響を検討した。さらに、作成した汚染布を用いて石けんおよび重曹による洗濯試験を行った。方法:固体粒子汚れモデルとして、酸化鉄(Ⅲ) (Fe、粒子径20~40nm)、石けんとしてオレイン酸ナトリウム、洗浄剤として重曹を用いた。酸化鉄(Ⅲ)濃度は0.02~0.1g/250mL水溶液とし、30℃恒温水槽中でホモジナイザーを用い8000~15000rpm回転で分散した。分散液に綿および羊毛5cm正方、20枚を投入し、ストロングシェーカーで振とう汚染した。洗濯試験は30℃、10分間とし、洗たく試験機(スガ試験機)を用いた。分散性は分光光度計、汚染布表面の色彩および明度は分光測色計により測定した。洗浄率は布表面のY値からK/S値を求め、洗浄率Dを算出した。結果:酸化鉄(Ⅲ)希薄水溶液では、分散回転数および分散時間の増加に伴い吸光度は高くなる傾向にあったが、液温も上昇することから、分散は回転数15000rpm、30分間、布汚染は3分間とした。今回の酸化鉄(Ⅲ)分散濃度範囲では、分散濃度とともに綿汚染布のY値は低下傾向にあった。綿汚染布の石けんによる洗浄力は、分散濃度が低いほど高い傾向にあり、石けん高濃度では低下した。重曹はいずれの濃度においても洗浄力は低い傾向にあった。
  • 小山 京子, 川畑 昌子
    セッションID: P-067
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    【 目 的 】 近年和服着装の機会は、冠婚葬祭・和の稽古事と狭範囲である。夏まつりのファッションアイテムとしての斬新的な着こなしを含め観ることも極めて少なくなっている。和服の縫製技術の伝承は「口伝」が主であり、その為文献の記載は貴重である。そこで、家政学会誌創刊より、記載内容を分類調査している。和裁関連文献にはその先人たちの知恵と工夫が内包されており、初めて大学で「手縫い」に挑戦する学生達の一助、教育の場に応用出来ると考え調査した。
    【 方 法 】 前報と同方法で、本報は日本家政学会誌1970年より1989年までの20年間の全報文・被服分野と和裁分野の各件数を調査した。和裁報文は掲載内容を工程別に解析し、創刊より1969年との比較検討も行う。
    【 結 果 】 今回調査の20年間では、日常的にまだ和服着用がみられた時代であった。前報では報文のみを扱ったが、本調査では和裁分野の記載を網羅するため掲載の総説・報文・資料・ノート全てを取り上げた。文献総件数2228件、被服分野751件、和裁関連81件であった。前20年間との比較では、年間発行回数の増加もあるが、和裁報文は約2倍と増加しており、盛んに研究が行われていたようである。大学での和服製作様相は、著者の約40%が短期大学所属で、多人数の短大でもゆかた製作が盛んに実施されていたと思われる。比して、2015年では年間総文献数が56件と少なく、被服は12件で、うち和裁関連として一件のみ挙げられるが、本調査文献とは内容・調査方法など差異あり、時代の変遷も伺えた。
  • 松本 幸子
    セッションID: P-068
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    ■目的
    浴衣の流行が引き続き続いている現在、浴衣は、様々な柄・色・着装の装飾を加えて少しずつ変化している。変化を遂げながら、夏の代表的な和服の浴衣として着用されている。このように、身近な日本の伝統衣装の一つとして、認識されている浴衣の定義は、「木綿の浴衣地で仕立てた夏の単衣長着のことで、家庭用のものであり、原則としては外出には着用しないもので、湯上りのくつろぎ着として用いられることが多いものである。」とあるが、現在の浴衣として定着したスタイルの変化を雑誌より調査し考察する。
    ■方法
    ハースト婦人画報社の『美しいキモノ』は、1953年創刊の60数年前より和服のライフスタイルを提案している着物の専門誌の草分け的存在であることから雑誌の傾向調査は、ハースト婦人画報社の『美しいキモノ』2003年2007年2012年の5年毎と近年の2013年と2014年2015年の掲載用語・色・柄等から変化を調査した。
    ■結果・考察
    浴衣は、近年ではカジュアルスタイルから、新感覚のワンランク上を行くお出掛け着スタイルとしての、着用場面の変化が起きている。これは「晴れ(ハレ)」の場面での着装へと変化したことと判断され、日常着であった浴衣にとっては、「格」の大きな変化の向上と考え、非日常着の枠に変化した。このように新しいカテゴリーが表れ、伝統衣装である和服の一番身近な浴衣に変化が見受けられる結果となった。
  • 下村 久美子, 谷井 淑子, 猪又 美栄子, 小原 奈津子, ファン ハイ リン
    セッションID: P-069
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 2005年からベトナム北部・中部・南部の農村にて、伝統的な衣服の着用実態や形態の変化などを解明することを目的として現地調査を実施している。これらを基盤として、2014年から商業地区の中部ホイアンにて現地調査をした結果、葬儀用の衣服について詳細な知見を得た。
    方法 ホイアン遺跡管理センターの協力を得て、2014、2015年に現地調査を実施した。かつて伝統的な葬儀用の衣服を仕立てていた高齢者を対象に、ホイアンの伝統的な形式の葬儀において、死者および親族が着用した衣服の種類、色や素材、着装方法などについて聞き取り調査を行なった。
    結果 (1)死者に着用させる伝統的な衣服は、上衣に白いアオ・ババ、その上に赤いアオ・ザイを重ね、下衣に白いクアンを着用させる。男性は7つ、女性は9つの命が宿るとする考え方から、男性は7本、女性は9本の紐で縛る。女性の場合は、幅90cm、長さ150cmの布を3枚に切り分け、両端から途中までを短冊状に裂き、裂いてない部分を死者の下に敷き、裂いた布で身体を包むように結ぶ。(2)親族の衣服は、伝統的な形式の白いアオ・ババとクアンで、死者との血縁関係によって、衣服の形式や被り物、杖など持ち物に決まり事がある。(3)葬儀用の衣服は、かつては仕立屋が縫製していたが、1990年代以降は葬儀会社が利用されている。
    本研究は科学研究費基盤(C)(26350080)の助成による。
  • ベトナム中部のホイアンの調査から
    猪又 美栄子, 谷井 淑子, 下村 久美子, 小原 奈津子, ファン ハイ リン
    セッションID: P-070
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 ベトナムの伝統的衣服は時代とともに変化し、失われつつある。商業地区ホイアンで仕立ての経験のある高齢者から聞き取り調査を行い,丈の長い上衣のアオ・ザイと短い上衣のアオ・ババの形や縫製方法の変化について考察した。

    方法 ホイアン遺跡管理センターの協力を得て、平成26・27年に伝統的衣服の仕立をしていた高齢者9名と高齢者16名に聞き取りと所持衣服調査を行った。内容は伝統的衣服の袖の形式やネックライン、ゆとり量、縫製方法などである。1954年から伝統的衣服を作っていた80歳の男性に、1950~60年頃の形式のアオ・ババの製作を依頼し、アオ・ババの古い形式について検討した。また,伝統衣服の仕立屋に現在のアオ・ババ(裁ち出し袖、ラグラン袖)の製作を依頼し、形式および縫製の違いについて検討した。

    結果 (1)伝統的衣服の上衣は裁ち出し袖であったが,1950年代半ばに洋服のデザインを取り入れたラグラン袖のものが作られるようになった.ネックラインは,丸形であったが、ハート形,V型が加わった.男性のアオ・ザイは現在も裁ち出し袖で,ゆとり量も多い.(2)ラグラン袖は、身頃・袖のゆとり量が少なくても動きやすく、胸・ウエストダーツがあり外観が良いことから,女性用はラグラン袖に変化した.(3)古いタイプのアオ・ババは、ネックラインと前打ち合わせに続く見返しが付けられていたが、1960年代に着用されたものには見られなかった.

    本研究は科学研究費基盤(C)(26350080)の助成による。
  • 石垣 理子, 上西 朋子, 成田 千恵, 川上 梅, 猪又 美栄子
    セッションID: P-071
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 若年女性と高齢女性各50名の身体計測値から、衣服設計に関わる身体寸法とプロポーションについて検討した。
    方法 被験者は関東在住の若年女性50名(平均年齢19.6歳)、高齢女性50名(平均年齢71.3歳)で、2014年に身体計測を行った。比較資料として、公表されている通産省工業技術院の1970年と1978-1981年、(財)人間生活工学研究センターの1992-1994年と2004-2006年の身体計測値を用いた。さらに、学校保健統計調査報告書(文科省)を参考にした。
    結果 (1)今回の結果では、高齢女性の平均身長は150.58cm、若年女性は159.48cmで約9cmの差があった。高齢女性が20歳代の時の平均身長は153.59cm(1970年データ)であることから、加齢により身長が約3cm低くなったことが推察できる。1970年の20歳代女性の平均身長は153.59㎝であることから、約6cmは時代差であることが確認できた。(2)若年女性の平均身長は1960年代以降の約30年間に3cm程度の増加がみられたが、1990年代以降の増加傾向は減速している。今後、時代が進むと高齢者と若年者の身体サイズの差は小さくなると考えられる。(3)若年女性の身体プロポーションを検討するために身長に対する比率を求めた。乳頭高0.7、上前腸骨棘高0.5、乳頭位胸囲(バスト囲)0.5、腰囲0.6であった。若年女性の乳頭位胸囲/身長は0.5で、高齢者よりも0.1小さかった。他の3項目は高齢女性との差は認められなかった。1992-1994年と2004-2006年の身体計測値から時代差について検討したが、今回の結果との差は認められなかった。
    本研究は科学研究費 基盤(A)(25242010) の助成による。
  • -教員養成系学部の大学生を対象とした事例-
    高橋 美登梨, 川端 博子, 祖父江 仁成, 亀崎 美苗
    セッションID: P-072
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    【目的】家庭科の布を用いたものづくりの課題として,少ない授業時間の中で学習者に知識・技能を定着させることが挙げられる。一方で教員養成系の学生の知識・技能が高くないとの報告もあり,教員の育成も急務といえる。大学生を対象にした基礎縫いの調査では動画は有効な補助教材であることが示唆された。本研究の目的は,大学生のミシン操作の習得において動画教材を活用する効果の検証と学習内容の提案である。

    【方法】教員養成系学部の大学生29名を対象にミシン縫いによる小袋の製作を行った。授業時数は2コマ(180分)である。補助教材としてプリントと動画(製作工程ごとに作成,タブレットPCにダウンロードし2名で1台使用)を用いた。授業の前後に質問紙にてミシンに関する知識や指導に対する意識と不安等を調査した。

    【結果】ミシン操作の体験を通して知識や技能に対する自己評価は大きく向上し,将来教員として指導することに対する不安は低下した一方で,作品の出来ばえや返し縫いの技能には課題を感じていた。大学の授業内でのミシン操作の体験は知識・技能の向上と課題を認識する機会になったといえる。動画教材の良い点として指導の待ち時間解消や再生時の利便性を挙げており,製作学習における動画教材の活用には肯定的な回答が多かった。多くの大学生に今後ミシン操作を体験させるために,短時間でも学習可能な内容として動画教材を用いたコースター作りを提案する。
  • マルチデバイス対応型浴衣製作コンテンツ
    小町谷 寿子, 石原 久代
    セッションID: P-073
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的  大学においてICT化が進む中,中高の学習指導要領の改定により和裁の知識・体験が取り入れられ,それに呼応して浴衣製作支援コンテンツを試作検討してきた.しかし,スマートフォンなどの急速な普及により,これまでのPC対応型e-ラーニングからマルチデバイス対応への変更が求められている.そこで、近年普及したスマートフォン端末を利用して,浴衣製作の自主学習を支援できる環境を構築することを目的とした.
    方法  前報で報告した浴衣製作に関するPC用アニメーションコンテンツを,本報ではビデオ化しWebから学生がスマートフォンで閲覧できるようにし,それだけを見て浴衣製作をさせた.また,同学生にアンケートを実施し,13の縫製工程について理解できた「5」から理解できない「1」までの5段階で理解度を評価をさせた.さらに,学生作品を教員が評価し技術の確認をした.実験は2015年6月から7月に実施し,被験者は女子大学生13名である.
    結果  理解度は,13工程の学生評価の平均から見ると,スマートフォンでは4.0でPCでは3.9と差がなかったが,衿付けでPC3.8に対しスマートフォン3.6,額縁ではPC4.1に対しスマートフォン3.5と低い評価となった.自由記述では、画面が小さく動画を静止画で撮り拡大して見たなど画像の大きさに課題があることがわかった.また,教員評価では衿付けや脇縫い等の評価が低く,実践においても課題が抽出された.
  • 小川 秀子
    セッションID: P-074
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 布を用いた教育の実践として、筆者担当の被服構成実習の授業では、ホテルを会場にファッションショー(教科発表)を実施し、11回目を数える。小・中・高等学校において家庭科の授業時間数の減少により、被服製作実習の経験をほとんど持たずに、履修する学生に対しての指導に年々苦慮している。実習前の取り組みとして、イメージするドレスのデザインをパソコン上でバーチャルで作成し、実習授業に生かすことを目標に授業を試みた。  
    方法 授業改善のためのIT活用として、本学では「3次元仮想縫製システム」をベースにした、バーチャルコーディネートをパソコン上で行うソフトを取り入れている。ソフト機能として「アイ・デザイナー」をベースに「i-D Fit」、「i-D Face」、「i-D Accesory」を活用している。①パソコン上で立体の服が作れる。②服を着せかえることができる。③自分の顔写真を取り込むことができる。服種アイテムは22種、布地の色・柄は2,500種以上。既存の他に実際にドレスに使用する布地を取り込み、パソコン上でデザインを行なった。 
     結果 パソコン上でデザインしイメージを確認することで、限られた実習授業時間を有効に活用できた。学生の個性を十分に引き出しているか否か、学生指導に大きく反映した。デザイン画を画用紙で描く手法に比べて、書き直す手間がなく簡単に変更することができるなど、IT活用の効果を得ることができた。
  • 石川 亜沙美, 角田 由美子
    セッションID: P-075
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 足に合わない靴を履いて歩く若年女子をよく見かける。これは歩行時の転倒の危険性や足や体への負担になると考える。女子大学生を対象に靴のサイズの選び方についてアンケート調査した結果、デザインが気に入るとサイズが合わなくても購入していることが明らかとなった。そこで足長、足囲の異なる靴を着用し、靴の適合性評価について検討を行った。
    方法 実験靴(足長23.5㎝、足囲E、ヒール高5cm)をフィッティングし、足に合っている成人女子15名を被験者とした。実験靴はヒール高5㎝の同じデザインのパンプスを用いた。足長の異なる靴は22.5㎝~25.0㎝(足囲E)、足囲の異なる靴は、D、E、EE(足長23.0㎝~24.0㎝)とした。これらを着用し平地を歩行した際の歩容を歩行パターン解析システム(ゲイトスキャン)、足圧分布システム(Fスキャン)を用いて測定した。また、VTR撮影による動作解析、歩行前後のフィット感について官能評価を行った。
    結果 1)歩行前後のフィット感は異なり、歩行後はやや小さめの靴を快適と評価する傾向がみられた。 2)サイズが著しく合わない靴は、接触圧力が大きくなり、左右差が生じた。また、サイズが大きいものは、靴と踵が離れやすくなった。 3)足長23.0㎝、23.5㎝の靴は、歩幅が大きく歩行速度が速いことから快適に歩行できるものと考える。 4)足囲EEの靴は、靴と踵が離れやすくなるため歩幅は狭く歩行速度はやや遅かった。また官能評価ではゆるいと評価された。
  • 永井 伸夫, 齋藤 千鶴
    セッションID: P-076
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    【目的】本研究では、衣服を着用することによって身体に与えるストレスについて心理的ストレス指標としてState-Trait Anxiety Inventory(STAI)の状態不安(A-State)、自律神経機能として心拍変動の周波数解析、唾液中ストレスマーカーとしてα-アミラーゼ活性と,精神的ストレスマーカーとしてクロモグラニンA(CgA)について測定した。
    【方法】被験者は健康な女子大学生5名(平均年齢21.6歳)を対象とし、着用する衣服は被験者が普段着用している「気に入っている私服」および対象として「ジャージ」を用いた。被験者は実験開始から安静15分後に1回目の心電図と唾液α-アミラーゼとCgA、STAIの測定(安静①)を、90分間の図書館での作業後に2回目、その後安静状態で30分間経過した後に3回目(安静②)の測定を行った。
    【結果】状態不安(A-State)のスコアではジャージを着用した場合にスコアが減少し、気に入った私服を着用したときは、安静①と安静②では変化が少なく、ジャージよりも低いスコアが得られた。CgAの濃度変化では、好みの私服を着用した場合、安静①から図書館での作業後、安静②にかけて値が減少していた。好みの服を着用することにより、今回のような軽作業によるストレスを軽減し、同様のストレスマーカーのα-アミラーゼと比較してもより微妙な変化を捉えているものと考えられた。
  • 佐藤 真理子, 濱井 風希, 熊谷 伸子, 小出 治都子 
    セッションID: P-077
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    近年の日本食ブームにより,海外の日本食店は2015年7月時点で約8万店に上った.袴や袴風の装いを店員のユニフォームとする日本食店は多く,和食の無形文化遺産登録もあり,袴式ユニフォームの需要は今後増加が見込まれる.本研究では,その機能性と快適性を明らかにする.
    【方法】
    被験者は健康な若年女性6名(21.0±0.5才),被験服は和食店の袴式ユニフォーム3種(迎賓袴,袴エプロン,袴式本モンペ)と現代パンツの計4種で着用実験を行った.測定項目は衣服圧,可動域,衣服内温湿度であった.
    【結果】
    衣服圧測定では,現代パンツが総じて値の高い傾向を示したが,立ち膝位の膝蓋骨中点等,いくつかの姿勢と部位で袴エプロンの値が高かった.可動域は,開脚時に現代パンツ,膝上げ時に袴式本モンペが狭かった.衣服内温湿度測定では,暑熱環境下の運動時,現代パンツで値が上昇し続けるのに対し,袴式ユニフォーム3種では下降を示した.官能評価では,迎賓袴が温熱的に最も快適であった.本研究で検討した袴式ユニフォームは,現代パンツに比し,暑熱環境下で温熱的快適性の高いことが明らかとなった.運動機能性については3種の差異が大きく,職業動作に配慮したデザインの必要性が示された.
    なお本研究は,科研費26350082(基盤C:袴の機能性研究-世界に発信する”Hakama is cool”-)の助成を受けて行った.
  • 内田 幸子, 丸田 直美, 斉藤 秀子, 田村 照子
    セッションID: P-078
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 1年間にわたる広域定点観察法による写真撮影での調査から、地域における高齢者の着装傾向を把握し、高齢者に好まれる服装や季節による変化を調べることを目的とする。更に、これらの調査結果をもとに、他の地域における先行研究との比較を試みた。

    方法 高齢者の着衣調査は、2014年の秋から2015年の夏までの1年間(11月、2月、4月、8月の合計4回)実施した。実施場所は山梨県甲府市で、地域のスーパーマーケットを訪れる高齢者をデジタルカメラで撮影した。1年間の調査対象者は延べ484名(男性108名、女性376名)であった。撮影した写真から、男女別に最外層の衣服を、上衣、下衣、類衣服別に分類し、服種別着用頻度を集計し、対象者全数を母数とする着用率を求めた。

    結果 着装傾向としては、全ての季節において男女共にロングパンツ、スニーカー、ローファー、帽子の着用率が高いことが示された。季節変化としては、夏は上衣を一枚で着るが、それ以外の季節ではジャケット、コートなどの上着を重ね着していた。また、季節的な特徴として、夏にはサンダル、冬にはショートブーツ、マフラー、手袋の着用がみられた。これらの結果を先行研究の巣鴨での調査と比較すると、女性はスカートの着用率が全ての季節において低く、男女共に春と秋においてシャツとベストの着用率が高く、全ての季節において帽子の着用率が高かった。1年間の調査によって地域の高齢者の衣服の季節変化の概要を把握することができた。
  • 前田 亜紀子, 梶山 まどか  , 山崎 和彦  
    セッションID: P-079
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 衣服は気候に応じて選択され、その適否は健康や快適性に影響する。これまで多くの着用率の調査が行われてきた。外衣と季節や気候との関係は明らかになっているが、内衣構成や素材等を詳細に捉えた研究は少ない。そこで我々は、画像記録により冬季の着用率を調査した。
    方法 着衣画像および表示タグを電子メールにより送信するよう依頼した。調査期間は2014年の①10月中旬、②10月下旬、③11月中旬、④12月中下旬、⑤2015年1月中下旬であった。観察対象は群馬大学生であり、のべ人数は、男性33名、女性156名、合計199名であった。服種は丈や袖など一定基準を設け判定し、上衣20種、下衣8種の計28種に区分した。また、衣服重量は実物および類似服種の複数サイズにおける推定値を求めた。clo値は、ISO/DIS9920をもとに換算値を求めた。
    結果および考察
    肌着および上着の着用率と日内平均気温との間に相関関係が認められ た。各種衣類の着用枚数は女性の方が男性より多かった。肌着素材は、ポリエステルやレーヨンなどの化学繊維が多用されていた。衣服重量とclo値には正の相関関係があるとされ、本調査でも同様の傾向が得られた。しかしながら、衣服重量およびclo値について、35~38年前と比較した結果、現代の若者は、軽くて暖かい衣服を着用していることがわかった。これらの理由として、軽量で保温性が高い化繊による衣服が増えたことや現代の若者が寒さに弱くなったことがあげられる。
  • 村崎 夕緋, 諸岡 晴美, 渡邊 敬子
    セッションID: P-080
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 ブラジャーには整容性および防振性などの効果があり、女性にとって必要不可欠な服種の一つである。効果を発現させるためには身体に圧をかける必要があるが、バックパネルの締め付けにより身体形状が変形し、逆に審美性が低下する場合がみられる。本研究では、バックパネルデザインの異なるブラジャーを用いて、ブラジャー圧が背部シルエットに及ぼす影響について検討した。
    方法 被験者として20歳代から50歳代の女性10名を用い、測定範囲を背部左半身とした。補整用ブラジャー(W)、ヘム仕様のブラジャー(H)および自己所有のブラジャー(M)を試料として、ブラジャー着用時の身体形状を非接触三次元デジタイザVIVID910(コニカミノルタ㈱製)を用いて計測した。解析にはBody-Rugle(㈱メディックエンジニアリング製)を用いた。バックパネルの衣服圧を、上辺テープ、中央部および下辺テープの3ヶ所で測定した。
    結果 三次元計測データの解析から、ブラジャーの上辺および下辺における人体表面のへこみ量(δ)の定量化を行った。どの年代においても試料HよりWのδが大きかった。上下ヘム仕様のHの衣服圧はほぼ均一であった。これに対してWでは、上下テープ部分では非常に衣服圧が高かった。すなわち、バックパネル部分の衣服圧分布が不均一であることが,人体に大きなひずみを生じさせる原因であることがわかった。さらに、Wのサイズ変化についても検討を行った。
  • 西山 加奈, 水野 一枝, 水野 康
    セッションID: P-081
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 東日本大震災では、学校の体育館等の避難所で眠りが妨げられたことが報じられている。本研究では、避難所で使用する寝袋に着目し、夏期を想定した環境で寝袋が高齢者の寝床内気候に及ぼす影響を検討することを目的とした。
    方法 被験者は書面による同意の得られた心身共に健康な高齢男性14名(72.4±6.4歳)とした。実験期間は7~9月とし、2~7日間隔で2回実験を行った。被験者は、25~26℃に保たれた前室で半袖Tシャツと短パンを着用し50分安静を保った後、22℃RH60%(C)、または27℃RH60%(H)に保たれた人工気候室で寝袋に入床し、覚醒して仰臥位安静を1時間保った。皮膚温、衣服内気候、寝床内気候、寝袋内温湿度と連続測定し、耳内温、舌下温、主観申告(温冷感、快適感、眠気)は、入床前と入床時の15分毎に測定、申告してもらった。
    結果 耳内温はHでCより寝袋入床後から有意に高かった。皮膚温は大腿と前額がHでCより有意に高かった。寝床内気候では、足部の温度と湿度がHでCより有意に高かった。主観申告は、HでCより有意に温冷感が暑く、発汗は汗をかいている側であった。
    結語 高齢者の寝袋就寝時の暑さや発汗の感覚は、足部の寝床内温湿度と関連している可能性が示唆された。
    *本研究は、東北福祉大学感性福祉研究所における文部科学省の私立大学戦略的基盤形成支援事業(平成24年度~平成28年度)における私学助成を得て行われた。
  • 小野寺 美和, 谷 明日香
    セッションID: P-082
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的  夜間の交通安全用品として反射板が多く市販されているが,デザイン性に欠け利用する人が少ない.県警の報告によると,歩行中の交通死亡事故の夜間割合は昼間の約2倍の発生状況であり,特に高齢者に多く見受けられる.宮城県警では委託された業者が,一件ずつ反射板(靴のかかと用)を配って歩いているのが現状である.そこで,本研究では太陽光や蛍光灯の光を蓄え暗闇で光を放つ蓄光糸に着目し,障害の有無や年齢,体型に関わらず,どんな人も安心,安全に楽しめる衣類の設計指針の提案をするための基礎的研究として,蓄光糸の力学的特性および表面特性を明らかにした.


    方法 蓄光糸(A-Muse(製))の特性を電子顕微鏡による観察および力学特性の測定により明らかした.さらに蓄光糸を用いて織物(平織,綾織,朱子織)を試作し,力学特性および表面特性測定を行うとともに輝度の測定を行った.また,試作品として,キーホルダーのホルダー部分に三つ編みした蓄光糸を用いることで,蓄光糸の衣服への活用への足がかりとした.

     結果 蓄光糸はポリエステルとポリプロピレンの芯鞘構造であることが明らかとなった.蓄光糸の強度はポリエステル糸と同程度であり,蓄光糸を用いた布は優れた平滑性があることが明らかとなった.また,蓄光糸の織り方により輝度は異なることが明らかになった.
  • -19世紀琉球古紅型の分析から-
    難波 めぐみ
    セッションID: P-083
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的   第67回大会において,17,8世紀制作と推測されてきた古紅型試料を分析し,赤色は天然の朱であったことを明らかとした.本研究では,その試料が「国宝黄色地松皮菱に菊藤流水菖蒲模様衣裳」と同型と仮説を立て,年代測定と型の照合を実施し,色材と制作年代を明らかとすることを目的とする.
    方法   年代測定と画像照合を中心とする.年代測定(AMS)は,加速器をベースとした14C-AMS装置を使用し,14Cの計数,13C濃度(13C/12C),14C濃度(14C/12C)の測定,画像照合はgazousyougou.lzhを使用する.
    結果   那覇市歴史博物館蔵の国宝紅型の撮影及び聞き取り調査を実施した結果,紅型の型は制作終了後に衣裳と同時に献上することになっており,王家装束と同型の他の染色品が制作されることは無いということがわかった.このことから,前回と同様の古紅型を調査したところ,保存状態が悪く退色が激しかったため,地は無色と判断していたが,色材分析により黄の残留色素がみられたことや透過照合により紅型の型が一致したこと,更に,年代測定分析により1810年から1850年代に制作されたことが示されたことから,本試料と国宝古紅型の制作年代は一致した.第67回発表において分析した顔料は1800年代に使用された顔料であったと判断することができた.本研究はJSPS科研費25350054の助成を受けて行ったものである.
  • ―『ちはやふる』と『信長協奏曲』からの考察―
    小出 治都子, 熊谷 伸子, 佐藤 真理子
    セッションID: P-084
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 我々はこれまで,日本発の有力なソフトパワー“マンガ”における,袴着装キャラクターに注目し,袴が,クールジャパンを発信する際に有効な民族衣装の一つであると主張してきた.本研究では,若年層が影響を受けると考えられるマンガにおいての,袴のイメージ形成について考察する.

    方法 2015年11月,関西圏在住の大学生76名を対象に,集合法による自記式質問紙でのアンケート調査を実施した.袴のイメージ形成に影響を与えたマンガの抽出を行い,それらのマンガに描かれた袴着装場面の内容分析を行った.

    結果 袴のイメージ形成に対し,マンガ等の影響があったと答えた割合は52.0%であった.回答されたマンガタイトルの総数は17であった.その中で回答数の多かったマンガは,『ちはやふる』,『信長協奏曲』,『るろうに剣心』,『ハイカラさんが通る』であった.本研究では『ちはやふる』と『信長協奏曲』に着目した.袴に対して「着るのが面倒」「高価な」と敬遠していた登場人物が,ストーリー展開と共に「貫禄がつく」「きれいに見える」「姿勢が良い」と,その認識を変え実用性の高さを理解する様子が読みとれた.マンガ作品における袴着装キャラクターの登場が,若い世代の袴イメージの一端を形成していると考えられる.
    なお本研究は,科研費26350082(基盤C:袴の機能性研究-世界に発信する”Hakama is cool”-)の助成を受けて行った.
  • ―『赤い鳥』と『コドモノクニ』の表紙絵を中心に―
    井澤 尚子
    セッションID: P-085
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 家庭における裁縫が中心の明治・大正期において、一般家庭の子ども服の洋装化は、婦人服の洋装化より先んじていたと考えられる。大正期には、明治期にはあまり描かれなかった「着物にエプロン」スタイルの子どもの描写が雑誌などでも見られるようになる。本研究では、情報ツールとしての雑誌に着目し、親子で楽しめると定評のあった児童雑誌『赤い鳥』、『コドモノクニ』の表紙絵を資料として、子どもがどのような服装で描かれていたのかを調査し、子ども服の洋装化に与えた影響を考察する。

    方法 児童雑誌『赤い鳥』(大正7年~大正15年発行)第1巻~第17巻、合計100冊、児童雑誌『コドモノクニ』(大正11年~大正15年発行)第1巻~第5巻、合計54冊を資料に、表紙に描かれた子どもたちの服種を分類し考察する。

    結果 児童雑誌『赤い鳥』では、子どもがモチーフの表紙絵は「男児」27件、「女児」40件、「男児と女児」19件、『コドモノクニ』の表紙絵では、「男児」5件、「女児」9件、「男児と女児」が25件であった。女児はワンピースにエプロンやベストを組み合わせるスタイルが多く描かれており、男児では、当時流行のセーラーカラーやタイ付きのシャツに半ズボンのスタイルが描かれている。このような可愛らしい子どもたちの描写は、子ども自身には憧れであり、親にとっては我が子に着せたい洋服の参考になり得たのではないかと考える。
  • -婦人雑誌・キモノ雑誌の表紙写真50年の変遷-
    高橋 洋子
    セッションID: P-086
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 過去50年から60年ほどの間に刊行された各種刊行物を資料として,衣食住の変遷を可視化する試みに取り組んでいる.本報では,婦人雑誌・キモノ雑誌の表紙に掲載されたカラー写真を資料として,和装時における髪型の調査を試みた.
    方法 婦人雑誌の表紙がカラー写真となった1960年代中頃以降を調査対象期間とし,期間中に刊行された婦人雑誌(「主婦の友」「ミセス」など7誌)の表紙のうち,和装のもの(主に新年号)をカラーコピーして収集した.あわせて,同時期のキモノ雑誌(「美しいキモノ」「季刊きもの」)の表紙写真も収集するとともに,近年刊行されているキモノムック(「七緒」「KIMONO姫」)の表紙を調査した.
    結果 (1)婦人雑誌7誌とも,調査期間を通じて,新年号表紙の和装における髪型は,ほぼ全例がアップであった.新年号以外にも和装の表紙写真が散見されたが,それらの髪型も大半がアップであり,和装時の髪型が定型化している傾向がみられた.(2)キモノ雑誌2誌の表紙では,調査期間の初期から,ショートやダウンの髪型,髪色の多様化など,洋風要素と思われる事例がみられた.(3)2003年から刊行されている「KIMONO姫」の表紙には,帽子を組み込むなどした斬新な髪型がみられた.
  • 孫 珠煕, 瀬戸 翔平
    セッションID: P-087
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 衣服が人の心に与える影響は大きい。和文化を気軽に体験できる衣服として、温泉旅館で館内着として使用されている浴衣(温泉浴衣)があるが、本研究ではその温泉浴衣に注目し、より満足度の高い観内着の提供を目指すために、温泉浴衣の装い行動の構造とその特性を明らかにすることを目的とした。
    方法 温泉浴衣に関する質問紙調査を行った。調査対象者は大学生男女計286名、調査時期は2015年10月~12月である。測定項目は、温泉宿の選択基準(20項目6件法)、温泉浴衣の装い行動(30項目6件法)、温泉浴衣と気分(自由回答)である。
    結果 館内着としての理想の温泉浴衣は、男女ともに「性別で違う地色や柄の浴衣」であることが分かった。特に女子では「男女共に何種類もある中から自分の着たい浴衣を選ぶのがよい」と考える者が約6割であることから、同性同士であっても違う柄・色の浴衣を着用することを楽しみたいと感じていると考えられる。温泉浴衣着用時の装い行動の構造を調べるために、因子分析(最尤法プロマックス回転)を行った。その結果、『快適・癒し』『着用時の見た目』『非日常』『普段着』『選べる浴衣』の5因子が得られた。各因子得点の平均値を男女で比較すると『選べる浴衣』が1%水準、『着用時の見た目』が5%水準でそれぞれ有意な差が見られ、女子は男子より着装時の見た目に対する意識が強く、可能ならば自分の好みに合った温泉浴衣を着用したいという傾向があると考えられる。
  • 松尾 量子, 武永 佳奈
    セッションID: P-088
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 ビジネス・シーンにおいて着用することを前提としたマタニティウエアを開発することを目的とする。
    方法 マタニティウエアについての現状リサーチをもとに検討を行い、体型が大きく変化する妊娠中期から後期にビジネス・シーンにおいて着用することができるパンツ・スーツについてプロトタイプを制作した。制作用のボディは、妊娠6ヶ月のサイズで作られたものを選定し、シーチングと詰め物を使用して制作したベストを着用させることで妊娠後期の体型に対応した。ジャケットは、胸ポケットを左右につけることで、視線を上部に集め、ダブルの打ち合いと前端の斜めのラインによって、腹部のふくらみが目立たない工夫をした。パンツは、体型変化に対応するためにウエストサイズの調節が必須であること、着脱のしやすさを考慮して、後ろウエストにゴムを入れ、前部は面ファスナーを使用している。シーチングによる試作を繰り返した後に、細かなストライプの入ったダークグレーの布地を用いてプロトタイプを制作し、インタビュー形式によるモニタリングにより、インターネット・ショップにおける販売を前提とした商品化に向けての検討を行った。
    結果 マタニティウエアは限られた期間のみの着用であるため、着用者側には価格帯や産後も着用できるかなどを意識する傾向がある。今後はよりユニバーサルな視野から開発を進めることで商品化への糸口を探る必要がある。
  • 60歳代女性を対象に調査
    十一 玲子, 田北 智端子
    セッションID: P-089
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー


    目的 現在、高齢人口の最大のボリューム層となるのは60歳代で、今後の超高齢社会を先導する役割を担っている年齢層である。その年齢層の衣生活における志向や行動とはどのようなものなのか。本報では、60歳代女性の衣生活における意識と実態を明らかにすることを目的とする。

    方法 近畿・九州地区に在住する60歳代の女性139名を対象に、2015年1~3月に質問紙による調査を行った。調査内容は年齢、仕事の有無、外出頻度、余暇活動の頻度、衣服の購入方法、外出着購入時の重視内容、衣生活に関する意識である。

    結果 (1)外出着購入時には、衣服が当然保持していなければならない性能として「動きやすさ」「サイズ適合」「取り扱いやすさ」などが特に重視されていた。さらに嗜好や価値観にかかわる「似合う」「コーディネート可能」「体型カバー」なども重視されていた。(2) 仕事の有無と衣生活意識との関連が認められた。仕事の有無2グループ間の有意性の検定において24項目中危険率1%で4項目、危険率5%で4項目について有意差がみられた。有意差がみられ、そして有職者の方がより肯定的に回答していた項目は「自分の個性やイメージにあった服装」「皆に好感がもたれるような服装」「場所柄をわきまえた服装」「レンタル衣装を用いる」「流行遅れの衣服は着たくない」などであった。外出頻度、余暇活動の頻度と衣生活意識との関連も認められた。
  • 庄山 茂子  , 西之園 美咲  , 栃原 裕    
    セッションID: P-090
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 急速な高齢化に伴い、介護サービスを利用する高齢者が増加している。自宅での介護を望む高齢者も多いことから、介護施設では自宅にいるような雰囲気が求められる。そこで、対人関係の内容やあり方についての情報を伝達する機能をもつ介護服に着目し、要介護者にとって望ましい介護服の色彩を検討した。
    方法 (1)試料:ポロシャツ7種(White、lt-Red、 lt-Blue、 lt-Yellow、lt-Blue Green、d-Blue、dk-Blue)、 (2)時期:2015年6月~7月、(3)対象者:施設利用者216名(平均年齢84.1歳、SD7.6歳)、(4)方法:面接による質問紙調査、(5)内容:施設利用頻度、介護服の好ましさ、介護服のイメージ、 (6)分析方法:単純集計、一元配置分散分析、因子分析
    結果 「好ましい」の回答が最も多いのはlt-Blue Greenで、lt-Blueは男性に好まれ、lt-Redは女性に好まれた。同色相で明度の異なる3種(lt-Blue、d-Blue、dk-Blue )を比較すると、高明度の評価が高かった。7種に対するイメージについての因子分析の結果、「思いやり・癒し、責任感・信頼、活動性、個性、派手さ」の5因子が抽出され、平均因子得点は全ての因子において7種間に有意差がみられた。「思いやり・癒し」の得点が最も高いのはlt-Red、低いのは、d-Blue、dk-Blueの低明度のサンプルであった。「責任感・信頼」が最も高いのは、高明度の寒色系であった。
  • 戸田 賀志子, 井澤 尚子, 畑 久美子, 武井 玲子, 佐々木 由美子
    セッションID: P-091
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 ユニバーサルデザインの観点から、衣生活関連のサインとして色彩を用いるために反対語に着目し、そこに共通する色彩のイメージとは何かを探り、基礎となる資料を得ることを目的に予備調査を行った。反対語対は、衣生活に関連する名詞、形容詞、ファッションイメージワードからなる20組を用いた。

    方法 ①調査対象者 一般色覚男女67名(男性 10歳代~30歳代 13名、女性 10歳代~40歳代 54名) ②調査時期 2016年1月,③調査方法 試料のカラーチャート39色(PCCSのvトーン12色,ltトーン12色,dkトーン12色,w,Gy,Bk)から、衣生活に関連する反対語対20組それぞれに共通すると感じる色彩を選択。集計結果から反対語対をイメージする色彩との関係を考察した。

    結果 出現率の高い色彩をトーンでみると、vトーンが最も多く39%であった。色彩ではv2、lt24、v8、wの順で出現数が多かった。衣生活関連の名詞、形容詞の反対語対では、vトーン暖色系の出現数が最も多く、ファッションイメージの反対語対では、各トーンの暖色系、紫系、無彩色のw、Bkの出現数が多かった。これらから、反対語対の色彩イメージは、印象の強い「言語」の方に偏る傾向がみられ、鮮やかではっきりした色彩が選択されていることがわかった。
  • 岡村 好美, 田中 翔子, 湯地 敏史, 木之下 広幸
    セッションID: P-092
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】日本における香りの利用は仏教儀式において始まり、以来日常生活のいろいろな状況で利用されてきた。衣生活での利用も多く、“空薫物”として香りを着衣に焚込めることや匂い袋を身につける他に、鬢付け油”や“化粧料”として香りをまとう行動に展開されてきた。近年は、手軽な香り剤として柔軟剤が注目を集めている。柔軟剤の本来の目的は、洗濯後の衣服を柔らかく保つことや帯電防止であるが、香りに注目されるようになって香りの残効性や拡散性を強調した製品が多く提供されるようになってきた。柔軟剤の香りを対象とした研究も増えてきたが、使用状況から香りの働きを解析した報告は少ない。  本研究は、柔軟剤の香りの影響について使用状況から解析した。
    【方法】先ず大学生を対象として、香りへの関心度を5段階評価で実施して香りの使用意識を明らかにし、次いで5種類の市販柔軟剤を用いて、嗜好及び4段階のイメージ評価を実施した。また、使用状況調査および、柔軟処理試料の香りによる感情状態を調査した。
    【結果】学生は適度な強さの香りがある環境は生活に良いと考えており、柔軟剤としては「すがすがしさ」、「気品」が感じられる香りを好んだ。柔軟剤の使用状況は香りの嗜好状況および気分・感情状態と対応した。
ポスター発表 5月28・29日 住居
  • 加藤 悠介
    セッションID: P-093
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的:要保護児童数が増加するなか、一般家庭と同じような環境において養護が必要な子どもが暮らせる家庭養護が注目されており、そのひとつにファミリーホーム(FH)がある。FHを運営する養育者は年齢や養育経験など様々な属性の違いがあることから居住環境も大きく異なると考えられる。本研究では、FHの生活実態と養育者の居住環境への意識について事例調査し、住まい方に関する共通点と差異を明らかにすることを目的とする。
    方法:調査対象は愛知県の4つのFHでる。現地訪問し、養育者へのヒアリングを行い、開設した経緯、運営上の課題や工夫、現在の生活の様子について質問を行った。
    結果:(1)生活リズムでは、朝食と夕食を子どもが全員揃ってとることがFHで共通しており、ダイニング空間が生活の中心となっていた。(2)空間利用をみると、すべてのFHで子どもの年齢が上がると養育者から離れた位置の子ども部屋に移動しており、これは養育者が自立を考慮しているためである。(3)養育者の居住環境に対する意識をみるとコミュニケーションに関する項目が多かった。子どものプライベートに関わる会話を行う場合、養育者が元児童養護施設職員では、静かな場所に移動し対面で行う傾向がみられる一方で、里親経験のある養育者は食事など普段の生活のなかで行う傾向がみられ、養育者の属性の違いにより住まい方が異なる点があることがわかった。
      本研究は科学研究費若手研究(B)「里親ファミリーホームからみた社会的養護における居住環境計画に関する実証的研究」にもとづき実施した。
  • 前田 博子, 森本 富裕菜
    セッションID: P-094
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    現在日本では、17歳以下の子どもの6人に1人が貧困状態であるといわれている。様々な家庭の事情により貧困状態となった親子は、栄養不足や孤食などの問題を抱え生活している。また一人で食事を摂らざるをえない状況におかれた子どもも少なくない。こども食堂は、栄養のある食事が安価で提供され、様々な人々が集いともに楽しく食事ができる場所を地域の中で提供している。本研究では、文献調査およびヒアリング調査、現地調査により、こども食堂の実態を明らかにすることを目的とする。  現在活動を行っているこども食堂は全国に広がりつつあることが確認できる。 また、こども食堂の空間特性をみると、公共施設が最も多く、団体施設と飲食などの店舗が続く。ごくわずかであるが個人宅も確認できた。  活動内容についてはこども食堂ごとによってばらつきが大きくみられたが、大まかな傾向をつかむことができた。実施時期については、長期休みのみ活動、もしくは毎週か毎月に2回ほどの頻度で行われていることが多かった。次にメニューの値段と対象については、概ねこどもは無料か300円、大人は300~600円の間である。他には高齢者も積極的に受け入れるこども食堂や、こどもは手伝えば無料になる、メニューが一定、学習支援もしているなどの事例が確認できた。  こども食堂の今後の進化発展はどのような姿が望まれるのか、またそのためにどのような課題があるのを明らかにしていくことが今後の課題である。
  • 福岡県春日市のログハウス舎の平面構成の変遷
    鈴木 佐代, 福永 美紗, 豊増 美喜, 秋武 由子
    セッションID: P-095
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 福岡県春日市は12の小学校すべてにログハウス造の放課後児童クラブを設置している。ログハウス舎は利用児童数が増加した1992年から2006年の間に、ほぼ1年1棟のペースで新築された。設計に関して、初期の頃は指導員や保護者が要望を出し、変更が加えられていった。本研究では、ログハウス舎の建築図面および指導員対象のヒアリング調査から空間構成の変化を分析し、放課後児童クラブに求められる空間・設備の要件を明らかにする。
    方法 春日市から収集したログハウス舎12棟の建築図面の分析と、勤務年数の長い指導員2名を対象としたヒアリング調査(2013年11月)を行った。
    結果 1)1992年~1996年建築の初期5棟は、1階建て延べ床面積118.8㎡であったが、1997年の6棟目以降は2階建てとなり、建設時期が後になるほど2階の延床面積は拡大した(46.6~62.6㎡)。2)1階は、1室29.7㎡の 4室からなる田の字型プランである。初期の設計では、室間の丸太の壁が大きく、各室の独立性が高かったため、死角をなくし空間を広く使えるよう壁を小さくしていった。3)トイレ空間は、男女共用から男女別へ、和式便器から洋式便器へ、身障者用トイレの導入など変化が大きい。4)台所空間では、流し台の向きが屋外向き→児童の活動室が見える向き→出入口が見える向きへと変化した。また、台所と活動室との間に、おやつを配る際に使用する配膳台が設けられるようになり、後のクラブ舎ほどそのサイズは大きくなった。5)2階からの転落防止網や避難用の2つ目の階段の設置などの安全対策が市によって行われた。
    本研究は、H25~27年度科研費(基盤研究(C):25350048)の助成を受けた。
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    セッションID: P-096
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
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    セッションID: P-097
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
  • 浴室内小物のカビ対策の提案
    渡部 美香, 山岸 弘, 内藤 厚志, 安江 良司
    セッションID: P-098
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 生活者が浴室内でカビを見つけたことがある箇所に,「壁」,「ドアや窓のゴムパッキン」と同様に,「洗面器やシャンプー等の小物」が挙げられており,生活者は浴室内小物のカビが気になっていることが判ってきた.本研究では,浴室内小物のカビ汚染及び掃除実態を明らかにし,簡便に効率よく行えるカビ対策法提案を目的とする.
    方法 掃除実態は,月に1回以上自分で家庭内の掃除をしている首都圏の30~59歳既婚女性450名を対象にWEB調査を実施した.カビ汚染実態は,首都圏の11家庭を対象に浴室内小物のカビ生菌数を測定した.
    結果 生活者の68%は1年間に浴室内小物にカビを見つけたことがあるが,その37%はカビを見つけても掃除をせず放置していることが判った.一方,浴室内小物にカビを見つけたことのある生活者の63%はカビ取り掃除をしているが,その49%は塩素系カビ取り剤を使用せず浴室用洗剤等で掃除をしていた.以上の結果から,浴室内小物はカビ汚染されている可能性が高いと仮説を立て,一般家庭の浴室内小物のカビ汚染実態を調査した.その結果,カビは11家庭中4家庭の洗面器から検出され,最大で数万CFU/cm2,イスにおいては7家庭から検出され,最大で数百万CFU/cm2存在しており,多くの家庭の浴室内小物がカビ汚染されていた.本報告では,さらに浴室内小物も含め浴室内隅々まで簡便に効率よくカビ除菌ができるカビ対策の提案について報告する.
  • 山内 陽介, 大貫 毅, 池主 得巨子
    セッションID: P-099
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 近年、生活者の衛生意識は高まっており、92%の方が手洗い時にハンドソープを使用している。使用者のうち61%は、手で触れるポンプヘッドの「目に見えない菌」に脅威を感じていることが分かった。そこで、本研究では使用時に容器へ付着する「菌」に着目し、菌汚染の実態調査とその対策について検討する。
    方法 洗面台、台所それぞれで1ヶ月間使用したハンドソープ容器を用い、菌種及び菌数を寒天平板法により測定した。次いで、最適な抗菌剤と樹脂の組合せを選定するため、樹脂プレートを用い、JIS Z 2801:2010法により抗菌効果を評価した。また、ポンプヘッドの抗菌効果についても同様の手法で評価した。
    結果 細菌、真菌、酵母の中で細菌がポンプヘッド上に最も付着しており、家庭によっては設置後1ヶ月で細菌が2.5×106(cfu/cm2)存在していた。これは、ヌメリなどの汚れが見られるボトル底部に付着した細菌数107(cfu/cm2、1ヶ月使用時)に匹敵することが明らかになった。そこで、対策として樹脂に抗菌剤を添加することを検討し、「①樹脂劣化が起こりにくいこと」、「②抗菌効果が高いこと」を目標に5種類の抗菌剤を樹脂プレートにて評価した。その結果、両項目を満たす抗菌剤として「ガラス系抗菌剤」を見出した。また、ポンプヘッドを用いた抗菌性評価では、接種12時間後には黄色ブドウ球菌、大腸菌共に検出されず、十分な抗菌効果を確認した。
  • 高齢者と施設職員の比較を通じて
    西尾 幸一郎, 藤原 奨真
    セッションID: P-100
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    背景 近年,高齢者居住施設では,居住者の自立や尊厳を高め,長年住み慣れた自宅と同じような暮らしが継続できるような配慮や工夫が求められている.そして,様々な専門家によって個室・ユニット化,畳の小上がりの設置などの「家庭らしい」環境づくりの盛んに行われている.しかし、高齢者が捉える「家庭らしさ」とはどのようなものかを調査した研究は少ない。

    目的 入居者が日中過ごすことの多い高齢者居住施設のLD空間に注目し,高齢者と施設職員による「家庭らしさ」のイメージ構造と、それに関連する物理的構成要素について比較・分析することを目的とする.

    方法 SD法を用いたアンケート調査を行った。評価尺度は,既存研究3)~5)を参考に合計14の形容詞対を選定した.調査対象は、山口県東部で自立生活を営む65才以上の高齢者130名,及び同地域にある施設の職員60名であり、回収部数はそれぞれ86部、49部であった。

    結果   高齢者・施設職員ともにLD空間の快適性が高いという潜在イメージを持つほど、「家庭らしさ」が高いと評価される。また、両者とも空間内に一般の家庭ではあまり備え付けられていない誘導灯や火災警報器、掲示物などの不自然物が多いと「家庭らしくない(施設らしい)」と評価されることなどが明らかになった。
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