一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
68回大会(2016)
選択された号の論文の290件中151~200を表示しています
口頭発表 5月28日 食物
  • 市 育代, 柳本 彩, 藤原 葉子
    セッションID: 2F-04
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】食事性の酸化ステロールは動物性食品の調理、加工、保存の際に自動酸化によって生成される。このような酸化ステロールのうち7β-hydroxycholesterol (7β-OH) や7-ketocholesterol (7-KC) は、アテローム性動脈硬化症など種々の病変への関与が示唆されている。また、2型糖尿病患者では血中の7β-OHおよび7-KCが高値であることが報告されているが、代表的なインスリン標的臓器である骨格筋における酸化ステロールの糖代謝に及ぼす影響を検討した報告はない。そこで、食事性酸化ステロールがC2C12骨格筋細胞の糖代謝に及ぼす作用について検討した。
    【結果】10 μMの7β-OHおよび7-KCの24時間の処理は細胞生存率に影響を与えないことことから、添加濃度を10 μMとして実験を行った。C2C12骨格筋細胞において、インスリン刺激によって増加した糖取り込みは、7β-OHおよび7-KC添加によって有意に減少した。そこで糖取り込み抑制のメカニズムを調べるため、AMPKおよびAktのリン酸化に対する影響を調べたところ、7β-OHおよび7-KCを添加したC2C12細胞ではインスリン刺激によるAktのリン酸化が減少した。 以上より、骨格筋細胞において、食事性の酸化ステロールはインスリン応答性のAkt活性化を阻害することによって、糖取り込みを減少させる可能性が示唆された。
  • 山上 小百合, 中田 理恵子, 本郷 翔子, 滝澤 祥恵, 井上 裕康
    セッションID: 2F-05
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 赤ワイン等に含まれるレスベラトロールは、長期摂取による心血管系疾患の発症リスク低下に関与する成分として注目されている。我々はレスベラトロールによる核内受容体PPARα,β/δ,γの選択的な活性化、PPARα活性化を介した脳保護効果、PPARαの直接的な活性化(PLOS ONE 2015)を明らかにしてきた。さらに、生理的条件に近い低濃度のレスベラトロールで処理したヒト血管内皮細胞で、血管拡張や血小板凝集抑制に関与する血管内皮型NO合成酵素の発現誘導とともに、生体の恒常性維持に関わるオートファジー関連および活性酸素消去や抗炎症作用に関与する遺伝子群の発現が誘導されることを報告した(第66回本学会, Br. J. Nutr. 2013)。本研究では、動脈硬化症モデル動物を用い、レスベラトロールの効果を検討した。
    方法・結果 レスベラトロール(0.05%)を3ヶ月間摂取したApoE欠損マウスでは、血漿HDL コレステロール濃度が有意に増加した一方で、non-HDLおよび酸化LDL コレステロール濃度、non-HDL/HDL比が有意に低値であった。また、大動脈全体および弓部の相対的脂肪沈着面積が有意に減少していた。さらに、起始部組織切片の染色から、血管壁の肥厚と肥厚部分への脂肪沈着の抑制傾向と、マクロファージ浸潤の抑制が観察された。以上より、レスベラトロールの長期摂取によって動脈硬化の進展が抑制される可能性が示唆された。(共同研究:キリン(株))
  • 村上 恵, 南埜 幸, 宮崎 智子, 鈴木 久美子
    セッションID: 2F-06
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 これまでの研究で食品から抽出した葉酸は抗酸化性をもつことが分かっている。抗酸化性と動脈硬化性疾患との間に関連が認められていることから、動脈硬化の成り立ちの一つである血栓形成に着目し、アスパラガス中に含まれる葉酸の血栓溶解性の有無を検討した。またアスパラガス中の葉酸と血栓溶解性との関連を明らかにするため、葉酸抽出液のプラスミン様活性についても検討を加えた。
    方法 試料はアスパラガスを上部、中部、下部の部位別または無作為に選んだ部位を用いた。アスパラガス中の葉酸抽出は加圧抽出法、葉酸定量は葉酸キットを用いた。血栓溶解性についてはフィブリンプレート法を、プラスミン様活性は合成基質法を用いた。
    結果 アスパラガスの葉酸抽出液には血栓溶解性が認められるが、その溶解面積にはばらつきが見られた。葉酸量は上部>中部>下部>無作為の順に少ない値を示したが、葉酸量と血栓溶解性との間に明確な相関は認められなかった。葉酸が血栓溶解性に直接関与していない可能性が考えられたため、アスパラガスの生搾り汁を調製し血栓溶解性を検討したところ、高い血栓溶解性が認められた。葉酸抽出液と生搾り汁についてプラスミン様活性を測定すると、葉酸抽出液には活性が認められず、生搾り汁には高い活性が認められた。これらの結果から、アスパラガスの血栓溶解性には葉酸よりも他の成分が関与し、その成分はプラスミン様活性をもつと考えられた。
  • 滝澤 祥恵, 本郷 翔子, 中田 理恵子, 井上 裕康
    セッションID: 2F-07
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 誘導型シクロオキシゲナーゼ(COX-2)はプロスタグランジン産生の律速酵素で、非ステロイド性抗炎症薬の標的として知られ、発癌や生活習慣病にも関与している。一方、核内受容体PPARはリガンド依存性転写因子で、α、β/δ、γのサブタイプが存在する。いずれも脂質および糖代謝等に関与しており、生活習慣病予防の標的として注目されている。我々はPPARγがCOX-2の細胞特異的発現調節に関与することを見出し、COX-2発現抑制およびPPAR活性化を指標とした食品成分の機能性評価を続けている。これまでに、両効果をもつ成分を植物精油や香辛料等から複数同定し、本学会にて報告してきた。今回は、食用植物由来の辛味成分について検討した。
    方法・結果
    培養細胞系でのCOX-2発現抑制とPPAR活性化は、各々ウシ血管内皮細胞を用いたレポーターアッセイにより評価した。その結果、辛味成分はLPSによって誘導されたCOX-2プロモーター活性をγ非依存的に抑制し、PPARα、β/δ、γを選択的に活性化した。さらに、辛味成分(0.04%)を4週間摂取したマウスでは、PPARα依存的な血漿トリグリセリド量と遊離脂肪酸量の有意な減少、および肝臓のPPARα応答遺伝子群の発現誘導が認められた。以上より、辛味成分はCOX-2発現抑制およびPPARα活性化を介して生活習慣病予防効果を有する可能性が示唆された。
  • 奧田 真友美, 柴田 紗知, 中邑 真悠, 大久保 剛, 伊豆 英恵, 藤井 力, 松原 主典
    セッションID: 2F-08
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】酒粕に多く含まれ,レシチンの脱アシル化によって得られるグリセロホスホコリン(GPC)の老化促進マウスにおける経口摂取での有効性について,本大会で報告してきた。酒粕にはGPC以外にも多彩な生理機能を持つ成分が含まれており,なかでもS—アデノシルメチオニン(SAM)は脳機能への有用性が示されている。そこで,本研究ではSAMやGPCの単独摂取に加え,両成分を同時に摂取することによる老化現象への影響について検討を行った。 【方法】早期老化・学習障害モデル動物である老化促進マウスP8系(SAMP8)に,SAM溶液(10 mg/100 ml)・GPC溶液(7 mg/100 ml)・SAM+GPC溶液・水(対照)を与え,老化への影響を検討した。評価は,外観・脳機能(行動解析)・血液分析・各種臓器への影響により行った。 【結果】老化に伴う外観の変化は,40週齢まではSAMやGPCの摂取により抑制されたが,その後差がなくなっていった。脳機能に関する行動科学試験では,新奇物体認識試験においてSAMとGPCの同時摂取が有効であることが示された。また,血液検査でも絶食によって生じる異常な低血糖がSAMとGPCの同時摂取によって抑制された。一方,回収した臓器の組織化学評価では、明確な差は認められなかった。  本研究はSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)「次世代農林水産業創造技術」によって実施された。
口頭発表 5月28日 被服
  • 貝淵 正人
    セッションID: 2H-01
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー


    目的   5本指靴下の継続的着用によるパフォーマンスの効果と着脱に与える影響を明らかにし,高齢者への5本指靴下の推奨について検討すること.

    方法   健常男子大学生12名を対象とし,普通靴下群と5本指靴下群に6名ずつ分け,1日8時間以上の着用を5日間行った.そして介入前後に重心動揺と反復横跳びの測定,靴下着脱時間の計測,主観的評価(履き心地の悪さと着脱困難感)を行った.

    結果   2群間に重心動揺の変化は認めなかった.しかし,反復横跳びでは5本群において有意な向上を認めた.また,着衣時間,主観的評価においても5本群に有意な減少を認めた.理由として,重心動揺においては,対象が変化の少ない男子大学生だったことが考えられる.反復横跳びでは,前内側部の接地面積が広く,ストップ時に床を蹴りやすくなるため,素早く次の動作に移ることが可能となり,5本指群で向上を認めたと考える.主観的評価の変化は,継続的着用による慣れが生じたと考えられる.そのため,今後は高齢者への5本指靴下の推奨について明らかにすべく,着用期間を延長した再実験をおこなう必要である.
  • 辻 幸恵
    セッションID: 2H-02
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 雑貨の中でハンドメイドと既製品とに分類し、さらにハンドメイドを手芸・趣味の分野とアートの分野に分類をして3者の相違を明確にし、それぞれの評価基準を明らかにすることである。
    分析 関西圏に在住する学生420人を調査対象とした。12月中旬に調査票を用いた調査を実施し368人からの回答を得た(回収率87.6%)。そのうち記述ミスを省き、有効回答数365を得た。これらの回答をデータとして既製品、ハンドメイド(手芸)、ハンドメイド(アート)の3分野の基本統計、主な選択基準を集計した。それぞれの特徴を因子分析から見出した。
    結果 既製品は価格因子、ハンドメイド(手芸)は親しみやすさの因子、ハンドメイド(アート)は希少価値の因子が得られた。
    考察 大量生産が可能は既製品は価格競争になるので、製品は定番志向になる。ハンドメイド(手芸)は自分でもつくれそうだという親しみやすさやほのぼのとして仲間意識が主流であり、競争的な要因は少ないと考えられる。ハンドメイド(アート)は独自性と希少価値を売り物にして販売戦略をたて、差別化を必要とする製品が求められていると考えられる。
  • 長谷 博子, 丸山 眞澄, 佐橋 那央子, 平林 由果
    セッションID: 2H-03
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 生活の中の香りについて,香り付き商品の使用状況と香りに対する意識を探るため、アンケート調査を実施した.  
    方法 調査は,10歳代以上の男女を対象とし,2015年9月~10月に実施した.学生は集合調査法,その他は留置調査法により調査した.居住空間,衣服,身体に分け,香り付き商品の使用状況,香りに対する意識や嗜好を尋ねた.自意識尺度や生活習慣についても尋ね,それらとの関連を分析した. 
     結果 有効回答数は996部で,男性27.2%、女性72.8%であった.学生が77.7%を占めており,回答者の79.6%が10~20歳代で,30~40歳代,50~60歳代以上は,それぞれ1割程度であった.居住空間は,「何もしない」が居間・寝室・玄関では40~60%と最も多いが,香り付けには,ルームフレグランススプレー型と置き型が多く使用されていた.衣服から香りがする方が好きと回答したのは,約8割であった.香りを好む程度が高いほど、香り付けを行うという関係が認められた.衣類への香り付けには,柔軟剤や衣類用スプレー・ミストが主に使用されていた.ファッションに気を遣っている人ほど,また流行を意識している人ほど,衣類への香り付けをしていた.自意識尺度の高い人ほど衣類や身体からの香りを好み,自分や他人,居住空間のにおいを気にする傾向が確認された.このことから,香りへの意識の高さは、自意識尺度の高さと関係していることが考えられる.
  • 藤本 和賀代
    セッションID: 2H-04
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 中国は生活水準も上がり日本への旅行客も増加、爆買いなどとも言われているが値ごろ感へのこだわりを見せるなど以前とは買い方にも変化がみられる。子供関連では品質の良さに安心感を求め日本ブランドの需要も多く市場拡大が見込める有望なマーケットである。前回中国人の子供服購入におけるこだわりを調査した結果、ずば抜けて素材へのこだわりが高いことが明らかになった。そこでどの様な品質の素材を求めているのか更に踏み込んだ調査を行った。

    方法 中国と日本で園児を持つ母親を対象にアンケート調査を行い、狩野分析により比較評価する。狩野モデルは品質条件を分析するのに有効なツールで、「無関心(無知)」から、「魅力的品質」「一元的品質」「当り前品質」「無関心」へと品質のステージを変遷していく事により、将来のステージを予測することができる。

    結果 中国では、7項目中5項目が最も基本的な一元品質から当たり前品質へ、すなわち「機能が備わっていると満足、備わっていないと不満」から「備わっていて当り前」へ移ってきており、品質の安定が進んできていることが分かる。また、素材と着心地は重要度もかなり高いことからこの2項目は必須条件と言えよう。中国では品質への安心感を求め海外製品人気の傾向があるがそれは日本製への関心ではなく製品品質の良さであることが明確となった。
  • -『美少女戦士 セーラームーン』からの考察 -
    武藤 祐子, 小出 治都子
    セッションID: 2H-05
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 髪型が人物の印象に与える影響は少なくない。このことは、マンガの世界においても例外ではなく、登場人物の髪の長さや色が、キャラクターの個性を表すものとして重要な意味を持つことがある。本研究では、特徴的な髪型をしたマンガキャラクターの例として「美少女戦士 セーラームーン」に着目し、美容の技巧・文化的な視点から髪型とキャラクター設定との関係性を考察した。

    方法 1992年に連載が始まったマンガ『美少女戦士 セーラームーン』の文献資料を基に、主人公セーラームーン(=月野うさぎ)の頭部を5セクション(フロント、サイド、トップ、バック、ネープ)に分類し、各セクションのスタイル構成の分析を行った。

    結果 髪型の構成を分析した結果、各セクションに、戦士を連想させるアクティブ要素やプリンセスを連想させるエレガント要素などの、キャラクター設定と共通する印象を与える要素がスタイルとして採用されていることが分かった。また、セーラームーンのベースの髪型である「ツインテール」は、主人公の「少女」表象に附与し、更に、このベースの髪型の長さ、色、形状の変容により、物語の中の時代、その時々のキャラクターの役割、心情を表現していることが分かった。これらのことから、キャラクター設定時の髪型がその後の物語の展開に影響する可能性が示唆された。
  • 内田 直子
    セッションID: 2H-06
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 衣生活では、何か別の行動に変わる時、服装を替えることは通常よくある行為である。しかし着替えることなく別行動に移行した場合、自身は他の人に出会いたくない、またそれを見る他者には、なぜそのような服装なのかなどの感情が生ずることがある。本研究では、ある特定の場所での服装は、どのエリアまで移動することが可能なのか、地理的許容範囲について考察した。
    方法 自宅着、職業的に限定的な服装などで行動範囲が変わる時、どの程度自己、他者は気になっているかなどについて質問紙調査を実施した。実施年と評価者は2013年女子大学生93名、2014年女子大学生109名、男子大学生28名である。
    結果 女子9割、男子6割が、自身の部屋着で自宅外のどこまでも行くことはできず、女子の場合ゴミ捨て、自宅近くの自販機までは比較的行きやすいが、コンビニや公園までは行きにくく、またサンダル履きでは公共交通機関を利用することも憚られた。対人に遭遇するかどうか、自力で行動できるかどうかが一つの境界とみられる。また、医療白衣着用者の職場外出を見た場合、その場所が病院の近所より遠方、また飲食処であると女子はそれが気になり不快感も高くなっている。しかし、男子は女子ほど気にならず、また不快感も低い結果となった。男女間の外出時の意識の違いが、服装の圏域・境界の意識の違いに通じ、場合によって社会的場違いや違和感の一因になっているのではないかと思われる。
  • 増田 智恵, 大鹿 友子, 村上 かおり
    セッションID: 2H-07
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的】60歳以上のエルダー層成人女子の衣生活を支援する情報を得るため,自己意識を含む衣服観のタイプと着用するデザイン服との関係について検討した。
    【方法】1.デザイン服のイメージ評価:成人女子130名(平均年齢67.30歳)によるデザイン服16着の15項目に関する5段階評価,2.自己意識を含む衣服観の調査:成人女子243名(平均年齢69.23歳)によるデザイン服の利用実態・価値観と衣服観の43項目に関するアンケート。3.多変量解析による分析。
    【結果】1.デザイン服16着のイメージを主成分分析とクラスター分析を用いて4つに分類した。2.服の利用実態・価値観と自己意識を含む衣服観の高年齢に伴う生活観の低下と着心地要求,服の購入による精神的満足や衣服の社会的役割意識および衣服管理の維持などを捉えた。3.自己意識を含む衣服観を,因子分析とクラスター分析により5つのタイプ(高齢タイプ,衣服購入時の着心地選択優先タイプ,衣服満足・衣服行動充実タイプ,衣服行動やや充実タイプ,生活観充実タイプ,衣服行動否充実タイプ)に分類した。4.衣服観分類による高齢タイプでは大半のイメージでやや地味な服の評価が高く,衣服満足・衣服行動充実タイプでは高齢タイプと同じイメージでもその中の明るい傾向のデザイン服も好んだ。5.年齢やタイプに関わらず「着てみたいおしゃれだと思う服」は,レディ・フェミニン&エレガント・シックやモダン・シャープイメージの評価の高い外出着であった。
  • 石井 彩也香, 川上 梅
    セッションID: 2H-08
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー


    目的 本研究では,自己意識の発達段階にある高校生及び大学生の自己意識を詳細に検討した上で,自己意識が化粧意識や化粧行動に与える影響について明らかにする.

    方法 調査対象は,高校生男子500 名,高校生女子572 名,大学生男子210名,大学生女子310 名である.調査期間は2015年5月~9月で,調査内容は自己意識59項目,化粧意識10項目,化粧行動26項目である.解析は,自己意識は男女一括,化粧意識及び化粧行動は男女別に因子分析(最尤法,プロマックス回転)を行い,下位尺度を求めた.下位尺度得点を使用し,相関分析及び重回帰分析を行い検討した.

    結果 高校生女子,大学生女子共に女子では,否定感「被評価意識」「否定的家族感情」は積極的な化粧意識に繋がった.一方,化粧意識「変容・印象操作」には,高校生女子では対自己肯定感「充実感」,大学生女子では対他者肯定感「自己表明」が関与した.高校生女子では「被評価意識」は,積極的な化粧意識に正の,“飾る化粧”行動には負の標準偏回帰係数を示したことは,校則で化粧行動が抑止されている高校生の特徴と考えられる.また,大学生女子では「他者受容」が“飾る化粧”行動に,「自己実現的態度」が“慈しむ行為”に関与することが示された.高校生男子,大学生男子共に男子では,対他者に対して健康的である程,同調的化粧行動をとる傾向がみられた.
  • 大矢 幸江, 薩本 弥生
    セッションID: 2H-09
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 家庭科の衣生活分野の学習では、「衣服と社会生活のかかわり」を理解させることが目標として挙げられている。これまで、衣文化への関心を持たせる学習において、きもの文化を取り上げ、ゆかたの着装を含む授業実践を行ってきた。本研究では、きもの文化の学習(きもの単元)と環境共生型の衣生活の単元(環境単元)の共通する部分を接続する教育プログラムを考案、実践し、そのことで、2つの授業内容への興味関心、理解に効果があるかを検証し明らかにすることを目的とする。 方法 平成27年7月に、私立男子高校3年生268名を対象にゆかたの着装を含む授業実践を実施した。環境単元の最初に、きもの単元の振り返りとして、過去の日本人の衣生活が、もったいない精神をベースに循環型のシステムを構築していたことを学ばせた。環境単元では生徒主体となる授業として「制服の一生」すごろくを用い、現代の衣生活の問題点を考えさせた。これらの単元を接続する授業の効果を検証するために、きもの単元のゆかた着装授業の直後と1か月後、環境単元の授業直後にアンケート調査を実施した。     結果 ゆかた着装直後に高まったきもの文化への興味関心が、1か月後には低下したが、環境単元の最初にきもの単元を復習したことにより、きもの文化への興味関心が喚起された。興味関心が高まった生徒は、環境配慮への意識・意欲も高い傾向が見られた。環境配慮への意識・意欲はあっても、実生活への行動には繋がっていない実態も明らかとなった。
  • 與倉 弘子, Htike Htet Htet, 鋤柄 佐千子
    セッションID: 2I-01
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 滋賀県湖西の伝統織物である高島クレープ織物は、日本の盛夏に最適な肌着素材として愛用されてきた。本研究では、織物技術を生かした地域ブランドの創成を企図して、しぼ加工等の織物設計が湿潤条件下での引張り特性に及ぼす影響を評価する。
    方法 糸使いの等しい平織基布を用いて、エンボス加工条件の異なる4種類のクレープ織物を試作した。試料を異なる湿度条件下(25℃、40%~90%RH)で調湿し、各湿度条件におけるよこ糸方向の引張り特性をKES-FB計測システムにより計測した。また、クレープ織物の水分移動特性についても検討した。
    結果 綿クレープ織物の最大荷重時の伸び率EMは湿度の増加とともに上昇した。規則正しいしぼ構造を持つピケ試料は不規則なしぼ構造を持つ楊柳試料よりもEMの増加が大きい傾向が示された。肌着に用いられるピケ(17P)は60%RHを越えるとEMの増加が顕著になり、着用時に伸びやすく、盛夏に着心地のよい素材であると判断される。一方、引張りレジリエンスRTは湿度の増加とともに減少して回復性が悪くなった。残留ひずみについても70%RH以降大きく増加し、その傾向はピケ試料で顕著であった。ピケ試料は高湿条件での着用において楊柳試料よりも回復性に劣る傾向が捉えられた。布の含水率の変化からは、ピケ試料の放水性が高い傾向が示され、盛夏の最内層の衣服として用いるより、ブラウスやソフトジャケットが適していると考えられる。
  • 末弘 由佳理, 鋤柄 佐千子
    セッションID: 2I-02
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 新生児肌着は多数のメーカーが取り扱っており, いずれもパターンや縫製に大差はないが, 使用している布地や価格は様々である. 本研究では, 数種の新生児肌着を試料として布地及び価格と「しっとり」との関係を明らかすることを目的とする.
    方法 日本の子供服ハイブランドである2社の新生児肌着, 子育て経験者評価による上位3位の新生児肌着, オンラインショップ売れ筋ランキング上位7種の中で最も「しっとり」の強い試料1種1) の計6種を試料とした.
    (1) 女子大生20名を対象に, 順位法により, 「しっとり」「肌触りのよさ」「やわらかさ」「あたたかさ」「なめらかさ」について官能検査を実施した.
    (2) KESシステムにより, 表面特性(表面摩擦抵抗, 摩擦係数), 圧縮特性, 曲げ特性, せん断特性, 引っ張り特性, 最大熱流束qmax, 通気抵抗を測定した.
    結果 官能検査の結果, 順位(全項目)に1%水準の有意差が認められた. 最も「しっとり」を強く感じた試料は「なめらかさ」「やわらかさ」「肌触りの良さ」においても強い感覚を有していた. 物性との関係は, 圧縮仕事量の値が高いほど, 「しっとり」が強く, 圧縮やわらかい肌着が「しっとり」を強く備えているという結果であった.
    [文献]1)末弘由佳理, 鋤柄佐千子;日本家政学会関西支部 第37回研究発表会要旨集2015, 12
    ※本研究は文部科学省科学研究費若手研究B(課題番号25750019)の助成を受け, 実施した.
  • 井上 真理
    セッションID: 2I-03
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 カジュアルな場面で着用する洗いざらしシャツ等が、綿本来の風合いを楽しむことができるとして注目されている。本研究では、しわ感の評価方法を検討し、好まれるしわ感とその物性について考察することを目的とした。
    方法 洗いざらしシャツ等と称して市販されている7種類のシャツを試料とした。試料の素材は全て綿100%である。構造は、オックスフォードOX3種類、ピンポイントオックスフォードPinOX1種類、ブロードBR3種類とした。KES-Fを用いて、各試料の物理特性を測定した。これらの特性値を用いて、ドレスシャツ用の客観評価式により、基本風合い値、総合風合い値を計算した。また仕立て映えを決定する力学特性、Z1、 Z2、Z3、仕立て映え値TAVを求めた。しわ感について、主観評価を行うと共に、しわ感を客観的に評価するため、シームパッカリング試験装置を用いて、平らな台に置いたシャツ表面をレーザー法で測定し、20cm間のシャツ表面の凹凸の積分値Fを求めた。
    結果 しわ感は、TAVやレーザー法を用いることで客観的評価が可能であると考えられる。しわ感が好まれる試料はしわが少なく、引張特性が小さく、せん断、曲げ特性が大きい。また、TAVの値が大きいことが特徴であることが明らかになった。
    文献 [1]川端:風合いの標準化と解析,日本繊維機械学会(1980)、[2]丹羽編著;アパレル科学、朝倉書店(1997)
  • 柚本 玲, 沖 若菜
    セッションID: 2I-04
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的
    現在の衣生活になくてはならない編地の生産現場では、現場技術者の経験により、その編成条件や仕上条件が決められてきた。そのため、これらの条件と性能値の関係は明らかになってこなかった。そこで本研究では、編成条件のうち度目(編目の引き込み量)を変え、同時に仕上条件を変えた場合の、編地の外観、硬軟性、伸長性について比較した。
    方法
    編地は毛100%の天竺編とした。これを10ゲージ横編機(SWG-091N)にて、3種類の度目で編み上げた。度目は熟練技術者により10ゲージ風合いとして適切と判断された55(以下適切)、編成可能な限界である30(以下密)と80(以下粗)とした。これらをターゴトメータにより60 rpm、120 rpmでそれぞれ5及び10分間洗浄した。これらについてJIS L1096に準拠し、硬軟性(ハンドルオメータ法)を、伸長特性(グラブ法)を測定した。
    結果及び考察
    度目が適切な編地は、表面に畝が見られず、編目の形が整っていた。一方、粗の場合、編目の形が不揃いで編目の並びがよれていた。また、密の場合は編目がよこに引かれ編目の形がひずみ、表面には横畝が現れた。また適切な条件で洗浄すると編目が整うが、機械力や洗浄時間が大きくなると、フェルト化が生じた。またフェルト化は粗な編地で顕著であった。硬軟性を見ると、度目が小さくなるほど硬くなった。また伸長性では、密では伸長が非常に小さく、粗では伸長が大きく、かつ残留する変形が大きく回復が悪くなった。
  • 坂下 理穂, 諸岡 晴美
    セッションID: 2I-05
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的:高齢になるにつれ、歩行時に転倒が生じやすくなる。その原因として、着床時に足趾が上がっていないことが指摘されている。本研究では、快適なつまずき予防靴下の設計における基礎的な指針を得るために、まず高齢者の歩行動態を若齢者と比較しその特徴を明らかにすることを目的として、動作解析および筋電図解析を行った。

    方法: 20歳代女性8名、高齢女性10名(60歳代2名、70歳代6名、80歳代2名)を被験者として、歩行実験を行った。床面にカーペット(パイル部:BCFナイロン100%、基布:ポリプロピレン100%)を敷き、5m歩行させた。その時の歩行動態を収録するとともに、歩行タイムと歩数を記録した。また、右足踵接地から同じ脚の次の踵接地までを1サイクルとして動作解析を行い、膝関節、足関節、足指関節の角度、角速度 、角加速度を算出して検討を行った。また、大腿直筋、大腿二頭筋、前脛骨筋、腓腹筋外側、腓腹筋内側の計5か所の筋電図を測定した。

    結果:足関節の角度、角速度の結果から、加齢とともに底背屈運動が弱まることが明らかとなった。年齢と歩数の関係では、加齢とともに歩数が多くなり、ストライド長が短くなる傾向がみられた。この傾向は、特に70歳以降で顕著であった。また、筋電図についても若齢者と高齢者との相違について明らかにすることができた。
  • カルテットゲームの作成と中学校での授業実践を通して
    中谷 文香, 加賀 恵子, 澤渡 千枝
    セッションID: 2I-06
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】中学校学習指導要領解説技術・家庭編では衣服選択や手入れのために、素材の性質を理解し表象できることが求められている。教科書ではそれらに役立つ写真やグラフ、実験等の記載はみられない。そこで、衣服素材の性質理解や表象できる能力育成のため、衣服素材の性質を反映させた繊維キャラクター及びそれらを用いたカードゲームの考案と授業実践を行った。
    【方法】対象繊維は綿、羊毛、絹、レーヨン、ポリエステル、ナイロン、アクリルの7種とし、キャラクター化した。考案の視点として繊維の分類や性質が分かりやすいこと、同じ分類や性質をキャラクターに相関を持たせて反映することの2点を重視した。キャラクターの外見に示す性質は、①理解しやすい性質、②生徒にとって体験を伴う性質、③手入れ時に考慮すべき性質の3観点から選定し、5つの性質(吸水性、吸湿性、速乾性、耐紫外線、耐塩素系漂白剤)とした。なお、手入れ時の注意点(耐紫外線、耐塩素系漂白剤)は該当繊維のみに表すこととした。
    【結果】7種の繊維キャラクターを考案し、それらを用いてカードゲーム「カルテット」を作製した。カードは繊維ごとに設定する4枚の項目は「原材料」、「汗の吸いやすさ」、「乾きやすさ」、「手入れのしやすさ」とした。中学生に対する授業実践では、キャラクターは「かわいい」、ゲームのルールは「分かりやすい」と、好意的に受け止められ、8割以上の生徒が「楽しく学べる・面白い」と答えた。
口頭発表 5月28日 家政教育
  • 須川 妙子
    セッションID: 2J-01
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近代以降、日本の家事の主軸は裁縫から割烹(料理)に移行し、実践的主婦や料理講師の育成を目的とした教育機関(学校・割烹教場)において料理が科学的に系統立てて教授されるようになった。一方で「習うこと自体が目的」であろういわゆる「教養志向」に促された「お稽古事」として料理教室の存在も当時の個人日記、雑誌、新聞等の記載に散見される。本分析においては「お稽古事として料理を習う(教える)」ことの始まりの時期と地域、階層、教育機関との関係を明らかにする。
    【方法】明治末期の個人日記、新聞記事・広告から料理教室の募集状況、内容、参加者の感想等を収集し、学校教育、割烹教場に関する先行研究と比較検討した。
    【結果】お稽古事として料理を習う女性は幅広い階層にわたり、その要求に応える場は明治期末には存在した。教授内容は系統化されたものではなく、また教授された内容を家庭で再現するなどお稽古後に生活や職業に活かした様子はうかがえない。このような料理教室のあり方は、本分析史料には特段目新しいかたちとしての記載ではないため、明治末期に至る以前から学校教育、割烹教場と並行してお稽古事としての料理教室は始まっていた。その形式を先導したのは関西地域であるとみる。とくに神戸においては外国人居留地住民との接触の中で西洋料理を習うことがその実用性を問わずに価値ある事とされていた。
  • 青木 香保里, 日景 弥生, 志村 結美
    セッションID: 2J-02
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】わが国は、平均寿命が世界上位に位置する一方で、健康寿命との間に10年前後の開きがあり、健康寿命をめぐる概念の普及や実践の必要が指摘されており、小学校家庭科の課題として検討が課題といえる。本研究では、1947年学習指導要領(試案)が示されて以来、現在まで小学校家庭科教材として位置づけられてきた「ごはんとみそ汁」に注目し、健康寿命に関する認識と技能の獲得を目指す教育内容について検討することを目的とする。

    【方法】1.健康寿命、なかでも減塩に関する文献の検討、2.小学校家庭科教科書および小学校学習指導要領「家庭」の記述をめぐる検討、3.小学校家庭科教科書に記載されている「ごはんとみそ汁」に関する調理実験として、1)予備実験、2)みその違い<米みそ、豆みそ>に着目した対照実験、3)みそ汁の調理人数分の違い<1人分、4人分>に着目した対照実験を実施した。

    【結果および考察】1.「健康寿命」「減塩」をめぐって、WHO、厚生労働省が示す目安と各種調査結果が示す塩分摂取量には倍近い差が存在しており、「減塩」が緊急の課題であることが把握できた。2.小学校家庭科教科書および小学校学習指導要領の記述をみると、「健康寿命」「減塩」などに関する記述は殆ど見当たらず、不十分であることが把握できた。3.各調理実験から「みそ汁」の「使用材料」や「調理手順」などには改善すべき課題が多く、「みそ汁」をめぐる教育内容の再検討の必要が示唆された。
  • 日景 弥生, 青木 香保里, 志村 結美
    セッションID: 2J-03
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー


    【目的】近年、生活習慣病、肥満児・痩身児の増加などが社会問題となっている。子どもたちの食生活は家庭の影響が大きいが、学校では自らの食生活を管理するための基礎となる力を育む必要がある。そこで、本研究では、食教育を充実させるために、小学校の献立構成の授業実践と大学生への調査から、献立構成力を調査することを目的とした。
    【方法】1.小学生への授業実践<時期>2015年6月~9月<対象>小学6年生55名(実験クラス34名、対照クラス21名)<内容>「一人で留守番している私が、自分の昼食を作る」と仮定して献立の絵を書かせ、その内容を文字で記載させた。その後、教師や栄養教諭が指導し、再度献立作成を行った。実験クラスには作成した献立を家庭で実践させた。 2.大学生への調査<時期>2015年11月<対象>大学生88名<内容>小学生と同様の献立作成と食生活に関するアンケートを実施した。
     【結果および考察】1.小学生の結果:最後の献立が一汁一飯主菜または一汁一飯主菜副菜となった割合は、実験クラス50.0%、対照クラス66.7%と対照クラスの方が高率だった。これには教師の指導内容が影響したと考える。 2.大学生の結果:献立が一汁一飯主菜または一汁一飯主菜副菜となった割合は、69.3%となった。記載させた献立作成の留意点をカテゴリー分類した結果、栄養バランスはほぼ全員が記載し、費用や能率の記載もあった。これは家庭科学習の効果と一人暮らしの学生が多いことが要因と推察された。
  • -教員対象の調査から-
    速水 多佳子
    セッションID: 2J-04
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー


    目的 住居領域は家庭科で扱う他の内容と比較して、指導の困難さなどから扱いが低調であることが指摘されている。しかし、住まいは生活の器であり、生活を営む上で基礎的な知識は必要である。小・中・高等学校を通して、家庭科の授業時数が少ないという状況の中で、効果的な指導をしなければならない。そこで,現行の学習指導要領に基づいた指導において、学校現場における住居領域の指導の実態を明らかにし、今後の指導を充実させていくための手がかりを得ることを目的とした研究を行った。
    方法 住居領域の指導の実態を把握するため、A県下すべての中学校84校と高等学校42校の家庭科教員を対象にアンケート調査を行った。調査内容は、家庭科教員の属性、住居領域の指導(指導内容、指導上の課題等)についてである。調査期間は2015年2月~3月である。回収数は中学校43票(有効回収率51.2%)、高等学校22票(有効回収率は52.4%)であった。
    結果 回答者の40歳代以上の割合は、中学校約8割、高等学校約7割であった。家庭科の得意な領域は、中学校は食物、被服、高等学校は食物が多かった。住居領域の授業時数の平均は、中学校6.9時間、高等学校「家庭基礎」5.3時間であった。中学校、高等学校の教員ともに生徒の住居領域に対する興味・関心は低いと考えており、中学校よりも高等学校の教員の方が、実習や演習ができる教材や資料を望んでおり、授業で活用したいと考えていることがわかった。
  • 染め織りがもたらす地域生活でのつながり
    松本 由香, 佐野 敏行
    セッションID: 2J-05
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 沖縄県には多様な染織文化が存在するが、生産者は減少傾向にあり、学校教育でほとんど取り上げられないこともあって、その継承は喫緊の課題である。そこで本研究は、沖縄の染め織りに関する衣生活教材の製作を目的とし、その内容となる染め織りに含まれる価値観、染め織りの世代間の継承のあり方と、その今後の持続可能な生活の形成への貢献のあり方について考察する。
    方法 沖縄の染め織りを、平成25・26年度の調査から導いた3つのテーマ、(1)地域生活でのつながり、(2)地域文化の探求、(3)経済性の追求、に分けてとらえ、平成27年度から4年計画で調査研究を行っている。本研究発表では、平成27年度の(1)のテーマである沖縄本島本部町伊豆味、小浜島、久米島、与那国島の事例から考察を行う。
    考察 伊豆味では、藍葉の生産農家が減少していく中で、泥藍が一軒の家内工業でつくられ、地域での藍葉の生産の保護、本部町、沖縄県、また国によってその継承が模索されている。小浜島では、染め織りは高齢女性の生き甲斐であり、女性たち相互のコミュニケーションの役割をもつ。久米島では、染め織りが地域の相互扶助で行われている。与那国島では、地元出身者と移住者とによって染め織りが継承されている。これらの事例から、染め織りが、家族・地域の人々の日々の暮らしの中でワークライフバランスをもって営まれ、家族・地域の人々につながりをもたらす役割を担っているといえる。

     
  • 室 雅子, 上野 顕子, 小川 裕子, 吉原 崇恵
    セッションID: 2J-06
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的:生活者として生きる為に必要な力を「生活力」とし、これまで生活力と家庭科の関わりについて高、大、一般及び外国で調査を実施してきた。本研究ではH11学習指導要領最後の生徒に、身についていると認知する生活力と家庭科への期待、本人の生活課題認識を明らかにし、普通科と専門科の比較も試みた。
    方法:高校3年生を対象に調査を実施した。調査時期は26年8月~翌年2月、対象者は愛知県内の高校(専門科)、高校(普通科)各1校である。
    結果:全体に「できている」「知りたい」「家庭科で学習すべき」の3視点ともに認識割合が前調査より少なかった。 “実践できている”と認識している上位項目は前調査より自分に関する項目が多く、多様性への対応や喫煙・飲酒・薬物問題の実践意識が少なかった。“もっと知りたい”と認識している上位項目には、今回「金融」「養子」「異性交際」「健康な食事」など前調査には上位に無い項目があげられ、地域や異文化コミュニケーションや、仕事・雇用、将来計画等が順位を下げた。“家庭科で習うべきこと(期待)”と認識する項目は変化があまりなく家庭科に期待されている課題は継続していた。普通科生と専門科生で「もっと知りたい」という回答割合の比較では、9割以上の項目で専門科生が上回っており家庭科をより深く長く学習した生徒ほど学習意欲が高い反面、普通科生は「できている」という項目が多く、できると過信している様子が懸念された。
  • 黒川 衣代, 豊成 加奈
    セッションID: 2J-07
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 子どもを取り巻く社会環境の変化の中で,自分に対して自信のない子どもや将来に対して夢や希望のもてない子どもの増加が指摘され,「生きる力」とかかわる自尊感情の育成が重要な教育課題となっている.本研究では,近年,子どもの人格形成に大きな役割を果たすと言われている「家庭の仕事の分担」に注目し,児童の家庭での仕事の分担の実態を明らかにするとともに,家庭生活への興味・関心,保護者の反応,生活技能,自尊感情との関連を調べる.
    方法 質問紙調査を2014年11月中旬~下旬に,N市のA小学校5・6年生を対象に実施し,101名から回答を得た(回収率100%).調査内容は,基本属性,家庭生活への興味・関心,家庭の仕事の分担の実態,保護者の反応,生活技能,自尊感情である.回答者の学年は5年生43人(42.6%),6年生58人(57.4%),性別は男性45人(44.6%),女性55人(54.6%),不明1人(1.04%)であった.
    結果 児童の90%以上が家庭で何らかのお手伝いをしていた.女子は「自分から進んで手伝いたいから」お手伝いをするのが多いが,男子は「褒美がもらえるから」という理由が多かった.保護者にお手伝い時に褒めてもらう,感謝してもらう,あるいは報酬をもらう児童は,家庭で分担している仕事を続けていきたい割合が高かった.褒美がもらえるからという理由でお手伝いをするより,進んで手伝いたいからお手伝いをする児童の方が,生活技能や自尊感情が高かった.また,家庭生活への興味・関心,生活技能それぞれと自尊感情の関係性が認められた.
  • ~3校区間の比較検討から~
    奥井 一幾, 得丸 定子
    セッションID: 2J-08
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】学校が地域に対して開放的であり、地域との質の高い連携(以下「学地連携」と記す)を実現することの重要性が指摘されてから久しい。本研究は、学地連携に関する住民(世帯人員に児童を含まない者)と保護者の評価を地域的特徴が異なる3校区間で比較検討することが目的である。
    【方法】対象は、新潟県上越市内の公立小学校(3校区)の住民(166名)及び保護者(233名)であった。調査項目は、「学地連携評定尺度(小泉:2000)」、「学校支援の希望(岩崎ら:2011)」、「学校教育への期待」、「学地連携関連制度の認知度」であり、各校区内において住民と保護者を対応づけたサンプリングを行った。
    【結果】「学地連携評定尺度」について、確認的因子分析を行った結果、先行研究同様、3因子(「人的交流」、「参加性」、「開放性」)が得られ、「良好」とされる適合度が確認された(GFI=0.941, CFI=0.937, RMSEA=0.058)。次に、この3因子について、2要因(属性×校区)分散分析を行った結果「人的交流」で有意な交互作用が示された(p<0.01)。また、階層的クラスター分析の結果、「学校支援の希望」や「学校教育への期待」において、住民及び保護者間に様々な傾向性が確認された。「学地連携関連制度の認知度」については「放課後児童クラブ」が高いほかは、全体的に低い傾向が示された。今後は、学地連携の推進を図る上で、具体的にどのような介入が有効であるかについて、質的かつ実践的検討を試みたい。
  • 附属長岡校園の事例
    高橋 桂子, 寺井 昌人, 岸 崇, 長谷川 宏之, 井口 浩
    セッションID: 2J-09
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】

    これからの時代、個々が自立し他者と協働しながら、実社会の様々な問題に立ち向かい、持続可能な社会の創造に主体的にかかわることが一層求められている。附属長岡校園では、文部科学省の研究開発指定を受け、平成22年より「社会的な知性」を培うための知の循環型教育システムの開発に取り組んでいる。そこでは①実社会と関わることを主眼とした「社会創造科」の立ち上げ、②幼小中一貫カリキュラム、そして③協働型学習の3つが核である。本研究では、独自作成したアンケート(調査1)や日本生活科・総合的学習教育学会の調査(調査2)を通して社会創造科の取り組みを通した教育効果に関して多面的に検証する。

    【方法】

    調査1:幼稚園から中学3年までの児童生徒を対象に、平成26年と27年の11月、23項目からなる独自アンケートを実施(4件法)。調査2:中学2年を対象に、平成25年から27年の3年間、46項目からなる「総合的学習で育った学力調査」(日本生活科・総合的学習教育学会)を実施(4件法)。なお、本校園では「総合的学習」を「社会創造科」に置き換えて実施した。

    【結果】

    調査1:パス解析から、社会創造科の実践を通して実社会へ参加することが、社会への関心に結びついていることが示唆された。

    調査2:全国平均に比べて本校園は統計的に有意に「家族と社会創造科について話すことがある」がいずれの調査年とも有意に高い。
口頭発表 5月28日 家政学原論・国際・環境
  • 「鹿内瑞子旧蔵資料」を資料として
    八幡(谷口) 彩子
    セッションID: 2K-01
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 「鹿内瑞子旧蔵資料」の「へき地教育関連資料」は、戦後小学校家庭科の展開を考える上で貴重な資料であるとともに「鹿内瑞子旧蔵資料」を特徴づけるものとなっている。本研究では、「鹿内瑞子旧蔵資料」における昭和30年代を中心とする「へき地教育関連資料」の検討を通して、小学校家庭科が「へき地教育」としてどのように展開したのかを明らかにする。
    方法 国立教育政策研究所教育図書館所蔵「鹿内瑞子旧蔵資料」の「へき地教育関連資料」74点(昭和30~55(1955~1980)年頃)を年代順、種類別に分類をして、特に昭和30年代のへき地教育としての小学校家庭科の状況について検討する。
    結果 (1)「へき地教育関連資料」は、①研究発表会等の研究集録 ②へき地教育指導者講座の資料 ③複式学級学習指導案 ④複式学級用教科書 ⑤報告書・新聞・雑誌 ⑥その他 からなる。(2)昭和30年代のへき地における教育の実態調査、そうした実態をふまえた教育方法の研究・発表、研究をふまえた複式学級用教科書等教材の編集、という経時的変化が観察される。(3)『へき地の教育』(全国へき地教育研究連盟編集)によれば、「へき地教育振興法」の決議(昭和28年7月)を背景に、へき地における教育振興のためのさまざまな取り組みが始められたことがわかる。(4)鹿内氏は、へき地の実情に合わせた家庭科教育法を開発することにより、地方への家庭科教育の普及をめざした。
  • 東京都H市のケース
    水野 いずみ, 菅原 育子, 細江 容子, 高橋 桂子
    セッションID: 2K-02
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】

    「第三次H市男女平等行動計画」策定の基礎資料を得る目的で、H市企画部男女平等課と実践女子大学は平成26年、市民意識アンケートを実施した。本研究ではH市民の①男女平等意識に関する意識、②ワーク・ライフ・バランスの実態、③健康満足度について、基本的属性の観点から特徴を明らかにする。

    【方法】

    対象は、2014年1月1日時点で20~89歳のH市男女1,500人である。住民基本台帳に基づき、地域×性別×年齢構成を層とする層別抽出法により抽出した。調査は同年11月、有効回収率は43.8%(有効回収数657)である。

    【結果】

    ①男女平等意識に関する意識:「夫婦関係」因子、「親子関係」因子ともに、年齢が若いほど、学歴が高いほど、有職ほど、より平等意識をもつ、②ワーク・ライフ・バランスの実態:30~49歳の子供のいる既婚者は男女とも、生活全般満足度や家族満足度が他の年齢に比べて低い、③健康満足度:家族満足度が高いほど、健康満足度も高くなる、など確認することができた。


    (注)本調査実施にあたっては、実践女子大学研究倫理審査の承認(#27-35)を受けている。


  • フランスとの比較を通して
    大川 知子
    セッションID: 2K-03
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的:日本におけるファッション・ビジネス教育は、(一財)ファッション産業人材育成機構が運営するIFIビジネス・スクール(1998年正式開講)のように職業人向けの機関が存在するが、主に専門学校を中心に発展を遂げた。近年は、家政系の大学のみならず、経済学部を中心に授業科目の拡充も行われている。“ファッション・ビジネス=商品企画”と捉える向きもあるが、本来、この用語が包含する教育項目は多岐に渡る。しかしながら、研究の積み重ねある他の家政学の領域のように、軸となるガイドラインもない。本報告は、産業の成立そのものから伝統あるフランスのファッション・ビジネス教育の方法について調査を行ない、今後、日本に応用できる点について検討を行う。
    方法:フランス国内のファッション・ビジネス関連の高等教育機関の教育内容調査、及び担当者へのヒヤリングを実施する。  
    結論:ファッション・ビジネス教育の難しさは、感性と科学―、その両面をどのように醸成できるのか―、その一語に尽きる。同時に、現在、ファッション産業自体が大きな転換期にあり、それに対して教育はどのように対応できるのか―、多くの課題も抱えている。カリキュラム、及び教員構成、産業との連関、卒業後のキャリアを含めたフランスの教育機関の取り組み事例を報告する。
  • 天野 晴子, 三神 彩子
    セッションID: 2K-04
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー


    目的 買い替えの際に高効率省エネ機器を選択することは,省エネルギー促進に大いに役立つものの導入コスト負担感から必ずしも選択されない。本研究では,省エネルギーに資する「高効率給湯器」の選択という行動を促すために,省エネ機器買い替え促進要因,阻害要因を洗い出し,持続的な省エネルギー行動誘導策を明らかにする。

    方法 調査対象は,2011年4月以降,ガス給湯器の買い換えに主に関与した経験者とし,首都圏を対象としたWebアンケート調査を行い,高効率給湯器購入者309名と従来型ガス給湯器購入者309名を抽出した。

    結果 給湯機を買い替える主な理由は,故障もしくは機器の調子が悪くなったからが81%を占め,それ以外にはリフォームがあげられており,短期間で購入の意思決定をしなければならない状況であることが確認できた。それぞれの機器を選んだ際に重視した理由は,高効率給湯器購入者の58%はガス代が安くなるからと回答しており,その他,購入価格の割引があったから,ガス料金の割引適用があるからと合わせると77%となり,機器自体は高額で一時支出があるもののランニングコストなどの長期的視点に立って選択をしていることが伺える。省エネ機器促進のためには,買い替えニーズが発生した段階での省エネ機器に関する情報提供ならびにランニングコストを含めた価格面でのコストメリットなどを伝えることが重要であると考えられる。
口頭発表 5月29日 健康・震災・福祉
  • 久保 博子, 桂樹 良子, 寺嶋 綾
    セッションID: 3C-01
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目​的​:現在は成人の3人に1人は睡眠不足を感じていると指摘されているが、睡眠時間の短縮の度合いや夜型化の程度は、10~20歳代で最も著しい*。大学生は生活時間の拘束が弱いため、睡眠覚醒リズムが乱れやすいことが指摘されている。既報の大学生の睡眠に関する調査はアンケート調査が多く、日中の活動量についてはデータがほとんどない。そこで、大学生の日常生活と睡眠覚醒リズムの実態とその関係を検討することを目的に、アンケート調査と日常活動量及び睡眠についての実測調査を行った。方​法:​睡眠の基本的特性や日常習慣および活動について、奈良女子大学学生321名にアンケート調査を行った。このうち比較的規則的な睡眠をとっている学生9名を被験者として採用し、活動量、行動記録、睡眠に関する申告等を2週間、うち4日間は終夜の睡眠脳波などを計測した。​結​果​:​①アンケート調査:睡眠習慣が規則的な方が睡眠の主観的評価は良くなった。②実測調査:就床時刻および起床時刻は25:30±0:57、8:17±1:06で、就床時刻にばらつきがあるほど日中に居眠りをする傾向が認められた。平均の活動度は、金曜日が最も少なかった。本​研​究​の​一​部​は​文​部​科​学​省​科​学​研​究​費​補​助​金 ​(​挑戦的萌芽研究​課​題​番​号​2​5560020​)​に​よ​り​実​施​し​た​。1)NHK放送文化研究所:2010年国民生活時間調査
  • 上島 恭子, 水上 友里, 相葉 茜, 森本 恵子
    セッションID: 3C-02
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的   女性では血中女性ホルモン濃度の月経周期性変動に伴い食欲や体重が変化すると言われている。また近年、ヒトの口腔内に存在する脂肪酸センサーが、脂肪酸の口腔内感受性に関与するとの報告が増えている。しかし、女性ホルモンが脂肪酸感受性に与える影響についてはよく分かっていない。そこで本研究では若年女性において月経周期に伴う血中女性ホルモン濃度の変動が口腔内脂肪酸閾値を変化させ、脂質摂取量に影響を与える可能性について検討を加えた。

    方法   健康な若年女性15名を対象とし、月経期、排卵前期、黄体中期で各1回実験を行った。口腔内脂肪酸感受性を調べるため、オレイン酸を用い、全口腔法・3肢強制選択法で検知閾値を測定した。さらに、植物油の濃度を4段階に変化させたスープを用いて脂肪嗜好性の評価実験を行った。実験後、随意摂食を実施し、エネルギー摂取量、脂質摂取量などを測定した。加えて、月経周期の3期それぞれにおいて実験日前後3日間の食事調査を行った。

    結果   口腔内オレイン酸閾値は黄体期に比べ排卵前期では低下し、脂肪酸感受性が増加することが判明した。食事調査によると、脂質摂取量および脂肪エネルギー比率が排卵前期では黄体期より減少していた。特に、脂肪酸のうち飽和脂肪酸摂取量が排卵前期には黄体期より有意に低下した。以上より、若年女性では口腔内脂肪酸感受性の月経周期性変動に伴い脂質摂取量が変化することが示唆された。
  • ―大規模小学校の避難訓練に関わる実践事例に着目して―
    八木 利津子
    セッションID: 3C-03
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的)近年の大災害や事件等の発生状況を踏まえ,学校管理下では地震や事件発生時の避難訓練と共に保護者への引き渡し訓練を実施する学校が増えている.引き渡し訓練では教職員や保護者が適切に判断し行動できるように,問題点を把握しその都度改善を加えていく必要がある.しかし,訓練内容には配慮を要する課題が多いと考える.そこで,本研究では緊急事態に備えて子どもの命と安全確保のため,学校における引き渡し訓練について,課題を分析し課題解決に向けて検討した.
    方法)大規模小学校(児童数900名以上在籍)の2校を調査対象とした.引き渡し訓練に参加した保護者(低・中・高学年からバランスを勘案して300名抽出・回収率66,3%)を対象に,質問紙法による自由記述式の調査を2015年6月実施.調査対象校の教職員(安全主任2名・管理職4名・養護教諭4名)に現状や課題等のヒアリング調査を2015年8月に実施した.
    結果)危機管理の教育的訓練の中で火災・地震・防犯訓練は計画的に取り組まれているが,引き渡し訓練の回数は年間1回と少ない.実施計画については保護者の確認方法や引き渡し場所等,学校により違いがあった.また年間計画に位置づけられた経緯が短く,2割の保護者が問題点を示し保護者の指摘と教職員が認識する不安要素に明らかな差異がみられた.訓練後は家庭と学校が協働してふり返る場の設定が望まれる.
  • 中島 明子, 宮野 道雄, 生田 英輔, 萬羽 郁子, 大竹 美登利, 吉井 美奈子, 加藤 浩文, 坂田 隆, 山崎 泰央, 小川 宣子, ...
    セッションID: 3C-04
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 東日本大震災において、「福祉仮設」は応急仮設住宅の一形態として高齢者・障害者のグループホーム(以下GH)が多く供給されたが、自治体により対応は異なる。宮城県石巻市では144戸(県283戸)が建設されている。本研究は、石巻市の「福祉仮設」の実態を把握し、今後の大震災における教訓を得ることを目的として行った。
    方法 関連データ蒐集、GH運営者・制度外GH運営者インタビューと施設見学。期間2016年8月~12月。
    結果 石巻市の福祉仮設住宅は「GH型仮設住宅」をさし3種類ある。①高齢者用は8棟70戸、②障害者用は8棟56戸、③多様な困難を抱える人々用の制度外GH型仮設住宅は2棟18戸供給された。高齢者・障害者用の福祉仮設についてはGHの再建等により順次解体され、2015年8月で高齢者用7棟61戸、障害者用4棟28戸となっている。一般仮設住宅の入居制度については①妊産婦、②乳幼児、③高齢者、④障害者世帯の順位で優先枠が設けられ、在宅の高齢者・障害者はそちらに住むか、仮設住宅に適応できない人々は、被災住宅やその他のところに避難した。明らかになったことは、①GH型仮設住宅が主に既存のGH居住者用となったために、在宅の高齢者、障害者がバリアフリー等が不十分な一般仮設住宅での生活になったこと、②優先戸数が少なかったため仮設住宅入居時期が遅れたこと、③制度外GH型仮設住宅の設置については効果があったことである。
  • 吉井 美奈子, 生田 英輔, 萬羽 郁子, 加藤 浩文, 大竹 美登利, 山崎 泰央, 坂田 隆, 小川 宣子, 佐々井 啓, 中島 明子, ...
    セッションID: 3C-05
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 東日本大震災では,多くの被災者たちが学校や公共施設への避難を余儀なくされた.本研究では,東日本大震災で宮城県石巻市やその周辺地域で被災した学校,及び避難所となった学校教員を対象として,インタビュー調査を実施した.本報告では,被災した学校からの避難指示や児童・生徒の安否確認などに関する課題,図らずしも避難所となった学校教員の運営に関する課題を明らかにする.
    方法 石巻市やその周辺で被災した学校(小,中,高)に勤務していた教員を対象とし,半構造化面接法に基づくインタビューを実施した.調査期間は,平成25年8月~平成27年8月である.
    結果 学校が被災した教員の語りから,発災直後の混乱の中での児童・生徒への適切な避難指示の問題が明らかになり,適切な指示の在り方を再考する必要性がみられた.学校施設は地域住民の緊急避難場所の役割を果たすことが多い.しかし,今回のような長期化する避難所運営にあたった教員の語りから,その運営の責任者が不明なまま,避難所運営に深く関わる結果が明らかになった.支援する教員も多くは被災者であるにも関わらず,更に児童・生徒のケアに期待がかけられ,負担も大きくなった.これらの結果から,特に学校教員には,学校避難所の運営と教育環境の保持,児童生徒のケアといった重層的な負担がかかる事が明らかとなった. 本研究はJSHE生活研究プロジェクトの活動として実施した.科学研究費補助金(課題番号:24300243,25350040)の助成を受けた.
  • -岩手県の場合-
    菊池 直子, 増子 富美
    セッションID: 3C-06
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県は、直後から日常生活のための様々な支援を受けてきた。避難所に届く衣服や洗濯機も支援物資であったが、一般に知られることはあまりなく、衣服に関わる支援の実状はよくわかっていない。今後に予想される災害に備え、衣服分野での有効な支援を検討するため、岩手県の被災者への聞き取り調査と資料収集を行った。
    方法 2015年7~9月、本調査への協力が得られた被災者(久慈市、野田村、宮古市、釜石市、大船渡市、陸前高田市に在住)を訪問し、聞き取り調査を行った。資料収集は、同年5~7月、岩手県立図書館等で行った。
    結果 ライフラインが復旧し、避難所に洗濯機が設置された以降も、手洗いをする人、コインランドリーや親戚の家で洗濯する人が認められた。避難所では、100人以上でも洗濯機1台のところもあり、避難者数に対する台数が十分でないことが認められた。また、大量の洗濯物や乾燥まで済ませるには、コインランドリーが便利であったことが認められた。洗濯物を干す場所は、避難者同士で工夫していたが、下着を干すことを気にしない人がいる一方、干すことを辛そうにする若い女性もいた。
     支援物資では、下着不足が大きな課題であった。また、震災後は雪が降り寒さが厳しかったが、着の身着のままで避難した人が多数であり、火災を恐れて火で暖をとることができない状況下では、早急な防寒着等の支援が必要であった。
  • 南 泰代
    セッションID: 3C-07
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    政府は認定こども園を2006年から創設した。幼保連携推進室は、機能として「就学前の子どもに幼児教育・保育を提供する機能」「地域における子育て支援を行う機能」とした 。しかし、現実は都市地域では待機児童解消のために、定員割れ解消と経営の効率を図る私立幼稚園が移行を進めている傾向がある 。2014年5月規模が大きい園ほど園児1人当たりの補助金を減らす設定になった。2015年2月に補助金案が修正されたが、返上したのは126園であった。しかし、同年4月には2829園となった。2013年の前回の調査1110園の2倍以上になった。千羽は定員の下限は規定されているが上限は規定されていない。1965年以降の経済成長の結果と既婚婦人の職場進出などにより大規模施設が増大した。ひとりひとりの子どもを掌握することが難しく、親との親密な関係を保ちにくい、大きな行事が一斉に出来ない。施設は高層化になり、園庭の使用は時間をきめる、区分けをするなどしていると述べている。安藤が大規模化は保護者との連携の稀薄化。地城から外れた所に建設され、3 歳以上はバスを利用。一人一人へのきめの細かな配慮ができにくく、保育士の心身の余裕のなさは、当然保育内容の質の低下をもたらすと述べている。この問題を2回目の2015年のアンケート調査結果から、移行前と2013年と2015年の定員の動きと内容の相違を報告し、定員との影響を考察するものである。
  • 市区町村の地方創生政策を対象に
    土佐野 美裕, 中山 徹
    セッションID: 3C-08
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    1.目的 現在日本では人口減少に伴う少子化が大幅に進んでいるが,その進行度合いは地域差が大きい.そうした中で地方創生が掲げられ人口対策においても自治体に求められる役割は大きくなっている.本研究は自治体の少子化対策について調査を行ない各自治体での施策の実施現状を把握,その内容を分析し,今後自治体が少子化対策についてどのような施策を実施していけばいいかについて知見を得ることを目的とする.
    2.方法 まず合計特殊出生率と人口動態について統計調査を行い全国の現状を把握した.その上で調査対象を全国の市区町村としアンケート調査を行った.1741団体にアンケート票を送付し,回収数は547件で回収率は33.0%であった.
    3.結果 少子化対策について総合的に取り組む部署があると答えた自治体は全体の31.8%に留まったが,少子化対策に係る事業が他部署に渡る場合各部署での連携があると答えた自治体は72.9%であった。全質問項目のうち実施中と答えた自治体が70%以上あった項目が農林水産業従事者への支援,ひとり親家庭への支援,訪問子育て支援事業等の7項目であり,広く全国で実施されている事業であると考えられる.また質問項目を6つに分類し傾向をみてみると出生率1.8以上のグループでは6項目の施策がバランスよく実施されているのに対し,出生率の低い自治体では子育て支援は充実しているものの住宅・移住支援が不十分であることがわかった.
  • ―「開ける」表示と色彩の関係について―
    内藤 章江, 大澤 香奈子, 小町谷 寿子, 石原 久代, 橋本 令子
    セッションID: 3C-09
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 行動と色には結びつきが見られ,色を利用し生活行動を助けることはユニバーサルデザインを考えるうえで有用と考える.昨年度は生活行動の中でも最も多い開閉行動の種類を明らかにし,その分類を行った.今年度はその結果を展開し,「開ける」表示と色彩の関係性を呈示実験により検討した.
    方法 昨年度の結果をもとに「ペットボトル」,「ハンドクリーム」,「エレベーター」の3アイテムを取り上げ,「開ける」行動を促す「記号(矢印)」と 「文字(あける,ひらく)」の表示を用い,文字のみ,記号のみ,文字と記号を組み合わせた3パターンを付与し,さらに色情報(背景色:W,文字・記号色:v2,v8,v12,v18,lt2,lt16,Bkの計7色)を与えて計63試料を作成した.これを女子大学生252名に呈示し,10段階で「開ける」行動のわかりやすさを評価させた.評価結果の分析には単純集計,多変量解析を用いた.
    結果 各アイテムともに,「文字のみ」よりも「記号のみ」の方が「わかりやすい」の評価は高く,さらに「文字のみ」,「記号のみ」よりも「文字+記号」の方がその傾向は顕著となった.いずれのアイテムもv8(鮮やかな黄)の得点は低く,ペットボトルではv2(鮮やかな赤)とlt2(明るい赤),ハンドクリームとエレベーターではBk(黒)とv18(鮮やかな青)において得点が高くなり,アイテムにより「開ける」表示と色彩の関係性は異なることがわかった.
口頭発表 5月29日 児童
  • 保育経験年数に着目して
    岡野 雅子, 牧野 友里
    セッションID: 3D-01
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    [目的] 近年「気になる子ども」に対する関心が高まっている。その定義は曖昧で、多くはボーダーラインと思われる子どもたちであり、保育現場では難しさや支援・配慮を要するなど気にかける必要がある子どもたちである。本研究は、保育者は「気になる子ども」をどのように捉えてどのような支援を行っているかについて、保育経験年数との関連から考察することを試みた。

    [方法] 質問紙調査法である。調査対象者は、群馬県A市および東京都B区の全幼稚園・保育所に勤務する保育者である。調査票は郵送し記入後に郵送にて回収し、154名(A市103、B区51)の保育者から回答を得た。調査時期は2014年7月である。

    [結果と考察](1)「気になる子ども」が「いる」「以前はいた」の回答は9割を占め、保育者の77%は小学校就学に対して不安を感じているが、特に中堅保育者(保育経験6-20年)は不安を感じる割合が高い。(2)就学に対する不安の内容は「衝動的行動」「固執的行動」「誤りの繰り返し」「言語伝達不良」に大別され、ベテラン保育者(保育経験21年以上)は「衝動的行動」「誤りの繰り返し」に強い不安をもつ者が多いが、しかし就学に対する不安の割合は減少していた。(3)支援・配慮については、保育経験の浅い保育者は、自分が発する「言葉かけ」を工夫し、当該児の変化については「言葉が伸びた」「問題行動が減った」など行動として表れる側面に着目するが、経験の長い保育者は「友だち関係の支援」「カリキュラムの工夫」を行っていた。(4)これらの結果から、経験年数の長い保育者は、「気になる子ども」についての理解に基づいて、自分と彼らとの直接的関係だけでなく、他児の存在や園の雰囲気などの保育環境がもつ全体的な保育力を生かした支援・配慮を行っているといえるようである。
  • 日常生活過程の観察を通して
    寒河江 芳枝, 金田 利子
    セッションID: 3D-02
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的:子どもは、発達すると共に自分の要求と親との要求が異なる場合に出会うが、その際、自分の要求を通そうとするとき、葛藤が生じる。1~2歳児は、葛藤が生じた場合には泣いたり、怒ったりするなど感情を直接的に相手に表出するが、3歳児になると相手の要求が自分にとってイヤな気持ちである場合には、間接的に表すのではないだろうか。本研究では、発達と共に子どもが葛藤にどのような折り合いをつけていくのかというプロセスを、特に一般的に言われる3歳児(幼児前期から後期の移行期)の特徴が生活の中でどう出るかの側面から明らかにする。
    方法:本研究の対象児は、200X年2月生まれの男児Yである。家族構成は、父、母、弟K(200X年+3年4月に誕生)の4人家族である。観察記録については、甥Yが誕生してからの日時や時間を設定せず生活の中で、Yとかかわる際には記録を取ってきた。事例は一児であるが、縦断的研究である。ここでは、目的に即して3歳児に焦点を当てエピソードを抽出した。
    結果と考察:3歳児には、発達的に質的な変化が見られるが、それは生活の中では葛藤克服の方略に明確に表れる(表出~表現)ことが分かった。即ち3歳児は、葛藤が生じた場合、自分のイヤな気持ちを間接的に表現するようになる。ここでは、この間接的な表現を迂回と称した。保育では、迂回等間接的な要求表現が予想される頃には、諸表現が可能になるよう、試行錯誤の「間」を取ることが必須であると示唆された。     
  • A小学校の実践事例の分析を通して
    佐々木 剛, 草野 篤子
    セッションID: 3D-03
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的  世代間交流を継続する東京都多摩地区A小学校の実践事例を学習指導要領との関連から分析する。また、このことにより世代間交流プログラムの活動内容と教科概念との関係性を検討・整理する。
    方法  2014年5月から2015年8月にかけて収集したA小学校の実践記録及び保存資料に記載された活動内容と、学習指導要領の内容を検討した。
    結果  東京都多摩地区にあるA小学校は、およそ四半世紀にわたり地域にある高齢者介護施設との間で、 「里孫制度」と呼ぶ世代間交流プログラムを実施してきた。今回の分析及び検討により、これらの実践は生活科・社会科・家庭科・特別活動の領域で教科に組み入れられていることが分かった。学習指導要領には世代間交流に関する直接的な記述はないが、この実践は中学・高校での家庭科との関連性や、小・中学校道徳との関係性が推測される。これら各教科と学習指導要領の内容との整理から、今後の世代間交流プログラムの理論化に向けた課題を検討した。
  • 西 隆太朗
    セッションID: 3D-04
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 乳児期は人間生活の出発点となる時期であり、大人・保育者との保育的関係が不可欠である。保育者と子どもとのかかわりを繊細に読み解き、実践を深めることは、重要な研究課題である。乳児保育(ここでは3歳未満児の保育を指す)については、実践上の取り組みはなされてきたが、とくに実践とそれを支える保育思想との関連が十分に研究されてこなかった。人としての基礎を培う乳児期においては、個々の保育技術を超えて、人間学的な思想から実践を捉え直していくことが必要である。
    方法 子どもと出会う人間学的保育学の研究は、津守眞によって進められてきたが、3歳未満児についての探究はとくに津守房江に見ることができる。本研究は、これらの思想および実践の検討に基づき、次のような視点の意義を示すものである。
    結果
    ①子どもへの敬意
    ケアする・される関係はあっても、人として対等であることの認識は、乳児保育においてこそ重要になる。
    ②かかわりの実践知 関係から身を引く観察者とは異なる形で、主体的にかかわる実践を通して、保育における乳児の心はよりよく理解される。
    ③言葉を超えるものへの着目 感触、体験、雰囲気、環境など、言葉を超えた要素を捉えることが必要になる。
    ④人間的視野 特定の能力や技法だけに焦点化するのではなく、子ども、家庭やコミュニティ、そして保育者自身を含めて、全体性を持った人間の営みとして保育を捉える視野が求められる。
  • 篠原 久枝, 奥田 豊子, 田中 紀子, 濱口 郁枝
    セッションID: 3D-05
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー


    【目的】学童期は心身の成長が著しい時期であり,この時期に望ましい食生活や生活習慣,適切な運動習慣を確立することが望まれる。しかしながら,女子のやせ志向や運動習慣の二極分化など課題も多い。そこで本研究では,宮崎市内の小学生を対象に食生活と運動を含めた生活習慣の関連を明らかにすることを目的とした。

    【方法】2015年3~6月,宮崎市内の5小学校の4-6年生(男子265名,女子270名)を対象に,宮崎大学医学部が実施している運動器検診に併せて食生活・生活習慣調査を実施した。本研究は宮崎大学教育文化学部研究倫理委員会の承認を受けた。

    【結果・考察】痩身傾向児は約3%,肥満傾向児は約10%であり性差はなかった。運動器検診の1次検診の結果,「異常有り」や「しゃがみ込み不全」が約20%に見られた。「調理への関心」や「食事の重要性」についての意識が高い群では豆類,緑黄色野菜,その他の野菜などの摂取量が有意に多かった。年齢別・性別でみた栄養素の摂取量については,いずれの群でもたんぱく質は十分に摂取している傾向であったが,鉄,ビタミンB1などは不足傾向にあり,食塩は過剰傾向にあった。また「体育の時間以外に汗をかくようなスポーツをしていない」が約15%,「排便が週3日以下」も約15%に見られた。さらに「疲労感」を訴える児童も約10%いた。従って,個々の生活習慣の見直しや適度な運動習慣の確立の支援が望まれる。
  • 三輪 穂奈美, 入江 礼子
    セッションID: 3D-06
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 子どもと定期的に関わる経験の有無や就職選択の際何を重視したかということが、就職しての1年を振り返った際に感じるものにどのような違いをもたらすのかを明らかにする。

    方法 東京近郊の保育者(幼稚園教諭・保育士)のうち、アンケート実施時点で1年目を終えた初任保育者を対象に、郵送によるアンケート調査を実施した。調査期間は、20XX年3月~4月。回収数は195名(回収率37.5%)。そのうち1年目以外の保育者からの回答を除くと、有効回答数は165名であった。分析にはSPSSを用いて、記述統計、χ2検定、分散分析を行った。

    結果 分析の結果、1年目を終えた時点で子どもと定期的に関わる経験がある群とない群を比較したところ、養成校時代の学びを通して感じていることに差異はなく、どちらもある程度自己の学びを評価していることが分かった。しかし、子どもと定期的に関わる経験がある群とない群で就職しての1年を振り返ってのことを比較したところ、子どもと定期的に関わる経験がある群の方が葛藤や困難が大きいことが分かった。また、就職選択の際、保育観を重視した群の方が給料や通いやすさを重視して選んだ群より、やりがいや楽しさを感じていた。一方、給料や通いやすさを重視して選択した群の方が保育観を重視して選択したグループより、園の保育方針や他の保育者の子どもへの関わりへ疑問を感じており、保育者間の関係性や連携に課題があると考えていることが分かった。
  • 吉山 怜花, 吉川 はる奈
    セッションID: 3D-07
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー


    目的 子育て支援施設は各地で整備がすすめられ、そのうち政令指定都市は転居の多い家族も多く、子育て中の利用者のニーズが多様であると予想される。全国で進められている子育て支援施策においては各地域に合わせた取り組みをすすめていくことが重要とされているものの十分な検討はされていない。本論では、政令指定都市で子育て支援施設を利用している母親・父親がもつ子育てや生活に関わる意識の特徴について明らかにし、転居者の多い地域にある子育て支援施設でどのような支援が求められているのか、その支援が子育て中の家族にどのような影響を与えるか検討する。

    方法 政令指定都市のうち4市をとりあげ、子育て支援施設の職員4名に利用者の特徴その他について聞き取り調査を行い、転居者の多い地域の子育て支援ニーズと支援の特徴を整理した。調査時期:2015年11月~12月

    結果 聞きとりの結果、子育て支援施設を利用する母親及び父親は他の地域から引っ越してきた人が多く、新たな土地での子育て情報や子育て仲間を求めて来館していること、一方で、子育て仲間の関係形成は課題も多く、慎重にしていく必要があることを強調していた。先行研究では、子育ての不安が少ない母親は自己効力感が高いと指摘があるが、子育ての情報提供や新たな仲間との出会いがスムーズに行われる支援を通して、子育ての充実感、親自身の自己肯定感を高められるよう、予防的な支援が求められる。
口頭発表 5月29日 家族
  • 小崎 恭弘
    セッションID: 3E-10
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 未就学児を持つ保護者(父親、母親)の父親の育児に関する意識を明らかにし、父親の育児支援の方策の理解を得る。特に父親の育児の共有の在り方と学習に関して、具体的な意識を探ることにより、今後の父親支援の在りようについての知見を得る。
    方法 2015年2月時点でA県B町在住で、未就学の子どもを持つ保護者全員を対象とする。未就学児総数514名であり、兄弟がいる家庭については一家庭一部の配布とした。保育所に通っている保護者に保育所を通じて配布と回収をする。また保育施設に所属していない家庭については、町より郵送によりアンケートを発送し回収する。配布総数325部、回収総数166部、回収率51.08%。有効回答数、父親164部・母親164部。調査期間は2015年2月に配布・回収を行う。
    結果 アンケートより3つの点が明らかになった。1.父親と母親の間に育児・家事分担のアンバランスさが存在する。2.父親と母親の間に育児に対する大きな意識の違いが存在している。3.父親は育児参加の意義を認め、育児の共有の場を求めている。
    父親たちは決して育児をしたくないわけではない。長時間労働・通勤などによる物理的な制約。成育歴の中で育児を学ぶことがなかった、自らのスキルや知識不足。男性が育児に関わるべきではないという社会規範。これらの文化の中で育児ができないようになってきた。父親の育児の共有の文脈は、これらの父親たちが育児をできない社会に変化を起こす一つの試みである。
feedback
Top