一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
68回大会(2016)
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口頭発表 5月29日 被服
  • 太田 茜
    セッションID: 3H-04
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的
    婦人雑誌の服飾に関する記事の中には、流行を紹介する他に、「どうやって衣服を手に入れて、着るか」といったことを伝えるものがある。アメリカにおいて既製服が普及するのは1920年代以降のため、それ以前の誌面には裁縫の手ほどきをする記事が多く掲載されている。この裁縫指南記事は衣服の作り方を伝えるだけでなく、何を着るべきかという服装に関する規範の元に書かれており、啓蒙の対象は直接の読者だけでなく、未来の読者、つまり読者の娘をも含んでいる。そこで本研究では婦人雑誌に掲載された裁縫指南記事から、20世紀初頭のアメリカの少女の衣生活について探る。

    方法
    資料にはアメリカで発行された婦人雑誌Ladies Home Journal(以下LHJ)を主に用いる。1883年に創刊されたLHJは「セブン・シスターズ」とよばれる大手婦人雑誌のひとつであり、中産階級の女性を対象に編集されている雑誌である。内容はHome、つまり家庭に関するさまざまなことを扱っており、既製服が普及するまでは家庭裁縫を前提に記事が書かれていた。本研究では、20世紀初頭に掲載された家庭裁縫に関する記事の分析を行う。

    結果

    裁縫を指導する記事を分析した結果、継続的に少女向けの裁縫指南記事を確認することができた。内容は概ね次のシーズンに必要な衣服を紹介し、作り方と選ぶべき素材や布の色等の解説がされた。したがって雑誌には少女たちが裁縫技術を習得するテキストとなると同時に、服装に関する規範を母から受け継ぐ役割を担っていたといえよう。
  • 潮田 ひとみ
    セッションID: 3H-05
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    掛け布団の管理状況ならびに要求される性能について調査した。
    掛け布団の管理状況に関するアンケート調査を行った。その結果、居住状況の違いによって、掛け布団の手入れやその頻度といった管理状況が異なることがわかった。いずれの居住状況においても、掛け布団を洗濯することができるならば洗濯したいと回答していた。掛け布団のボリューム、温かさといった布団の性能面よりも、布団の衛生面を気にする傾向が見受けられた。また、普段の管理方法としては、布団の天日干しがよく行われている手入れ方法であることが確認できた。
    そこで、手入れ方法の違いによって掛け布団の細菌汚れがどのように変化するかを、フードスタンプを用いて、A:天日干し、B:スプレー式消臭剤、C:洗濯・タンブル乾燥による手入れ後に測定した。その結果、掛け布団の細菌汚れに対して、最も有効な方法は、洗濯後のタンブル乾燥であると推測されたが、天日干し、スプレー式消臭剤、洗濯・タンブル乾燥のどの手入れ方法においても、手入れを行うことによって細菌コロニー数が減少する傾向がみられた。
  • 水野 一枝, 水野 康 , 西山 加奈
    セッションID: 3H-06
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】これまでに、震災時の避難所、学校の体育館での集団宿泊で睡眠が妨げられることを報告してきた。本研究では夏期を想定した環境で、避難所で使用する寝袋が高齢者と若年者の寝床内気候に及ぼす影響を検討することを目的とした。
    【方法】被験者は書面による同意の得られた心身共に健康な高齢者(72.4±6.4歳)と若年者(21.6±2.2歳)各14名とし、7~9月に実験を行った。25~26℃に保たれた前室で、半袖Tシャツと短パンを着用して50分安静を保った後、27℃RH60%に設定した人工気候室に入室し、覚醒したまま仰臥位安静を1時間保った。皮膚温、衣服内気候、寝床内気候を連続測定し、耳内温と舌下温、および温冷感、快適感、眠気、寝袋に関する主観申告を15分毎に測定した。
    【結果】舌下温は高齢者で若年者よりも有意に低かった。皮膚温は、前額、大腿、足背が高齢者で若年者よりも有意に低かった。寝床内温度は、高齢者で若年者より足部が低かった。主観申告では、高齢者で若年者でよりも眠気が低く、温冷感が涼しい側であり、腰の痛みが少なかった。
    【結語】高齢者では若年者よりも寝袋就寝時の大腿や足背の皮膚温、足部の寝床内温度が低く、暑さや腰の痛みを感じにくい可能性が示唆された。
    *本研究は、東北福祉大学感性福祉研究所における文部科学省の私立大学戦略的基盤形成支援事業(平成24年度~平成28年度)における私学助成を得て行われた。
  • 深沢 太香子, 邱 艶暁
    セッションID: 3H-07
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 熱産生量を指標とした温熱的快適感を覚える閾値の推定式が提案されている.本研究では,この推定式による日本人における温熱的快適性評価の適合性について検討した.
    方法 日本人大学生の男性と女性の各5名を被験者とした.指標とした皮膚ぬれ率の温熱的快適性評価への適用範囲を考慮して,熱産生量条件を2, 3, 4, 5 Metと安静時代謝の計5条件とした.
    結果 皮膚ぬれ率を指標とした各熱産生量での温熱的快適感閾値は,男性の場合,安静時:0.34 ± 0.27,2Met:0.52 ± 0.23,3Met:0.62 ± 0.23,4Met:0.43 ± 0.09,5Met:0.60 ± 0.21で,女性の場合,安静時:0.16 ± 0.10,2Met:0.22 ± 0.11,3Met:0.24 ± 0.14,4Met:0.23 ± 0.16,5Met:0.24 ± 0.14であった.温熱的快適感閾値は,男女とも熱産生量の増加に伴って上昇した.両者の間には有意ではないものの,強い相関の成り立つ傾向がみられた(男性:r=0.84(p=0.08),女性:r=0.86(p=0.06)).男性の温熱的快適感閾値は,推定式よりも大きくなったものの,熱産生量の増加に伴う温熱的快適感閾値の変化は推定式とほぼ同等であった.一方,女性のそれは推定式よりも小さく,熱産生量の増加に伴う温熱的快適感閾値の変動は緩やかであることがわかった.
  • 谷 明日香, 諸岡 晴美
    セッションID: 3H-08
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    【目的】加齢に伴い基礎代謝が大幅に減少するため、高齢者においては何らかの熱源を要する場合がある。本研究では、効率的に加温できる部位を明らかにすることを目的として、その基礎研究としてまず若齢者を対象として、寒冷環境下における局所加温が生体反応に及ぼす影響について検討した。
    【方法】20歳代女性5名を被験者とした。加温部位を、動脈が皮下の浅い部分を通る腋窩部および鼠径部とし、一般的な加温部位として腰部を加えた3か所とした。局所加温には、薄くかつフレキシブルなヒータとして、カーボンナノファイバーをコーティングした糸で織られた布に電源とコントローラを作製して、42℃に制御した。実験環境を18±1℃とし、準備時間と安静時間の計30分の後に計測を開始し、さらに10分間安静を保った後にヒータONとした。コントロールではOFFのままとした。測定項目は皮膚温、口腔温、心電図、血圧、皮膚血流量である。
    【結果】平均皮膚温は、加温によっても時間とともに低下したが、コントロールと比べると低下抑制が認められた。部位間では鼠蹊部の加温で最も効果が高かった。拇趾で測定した皮膚血流量においても同様の傾向がみられた。しかし、心拍数ではコントロールと局所加温間の相違はほとんどみられず、心拍数に影響を及ぼす程度の実験条件ではなかったと推察された。その他の計測項目についても検討を行った。
  • 特にエアロバイクを用いた有酸素運動において
    三野 たまき
    セッションID: 3H-09
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 肥満は成人病などの様々な病気の原因とされ,健康的な生活を送るためには,普段から食生活に気を配るとともに運動習慣を身につけ,体脂肪を適量に保つ必要がある.誰でもが無理なく行える有酸素運動条件下で体脂肪が燃焼しやすい運動負荷強度について調べることを目的とした.

    方法 被験者は健康な若年成人女性18名であった.測定前夜7時間の睡眠を取った被験者は毎朝5時に起床し,6時に規程食を摂食した.綿100%の半袖Tシャツとポリエステル100%のハーフパンツに着替え,環境温度24.5±0.3℃,相対湿度50.3±2.5%,照度827±27lx,気流8.0±0.1cm/sに設定した人工気象室7時に入室した.椅座位安静を1時間保った後,呼吸代謝と心拍数を8時から40分間測定した.運動負荷は,最高心拍数から年齢を差し引いた値のHRMAXの30,40,50,60,30%の強度で6分間ずつ自転車エルゴメーターをこがせた.運動負荷の前後には5分間の無運動負荷のコントロールを測定した.

    結果 エネルギー・糖・脂質消費量と相対心拍数は,ともに前コントロールに比べ,各運動段階及び後コントロールよりも有意に増加した.エネルギー・糖消費量と相対心拍数は有意に1<2<3<4段階であったので,運動強度を増せば,エネルギー・糖消費量や相対心拍数が増した.一方脂質消費量は,どの運動段階の組み合わせでもい有意な差がなかった.このことから,有酸素運動下では運動強度を高めても脂質消費量は増さないので,敢えて運動負荷強度を大きくする必要がないことがわかった.
口頭発表 5月29日 住居
  • 澤島 智明, ゴ ティ トゥ フェン
    セッションID: 3H-10
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 近年、ベトナムでは経済成長による生活水準の向上に合わせてエアコンの所有率・所有台数が大幅に増加している。本研究はベトナムの住宅居住者の冷房実態を把握し、冷房エネルギー増加を抑制するための知見を得ることを目的とする。
    方法 ベトナム・ハイフォン市に建つ一戸建て住宅4件を対象に居住者へのインタビューと室温測定を行った。対象住戸4件中3件はペンシル住宅と呼ばれる住宅型式で、間口が狭く奥行きの深い3・4階建ての住宅である。他の1件は平屋建ての農家住宅が拡大する都市に取り込まれたものと思われる。インタビューは2014年8月に行い、①エアコン・扇風機の使用状況、②住戸内各空間の使用・滞在状況、③室内の暑さ・涼しさなどについて質問した。インタビュー結果から室温測定の対象空間を定め、2015年7月に10分間隔で測定を行った。
    結果 インタビュー調査時のエアコン所有は4件中2件であったが、翌年の室温測定時には3件に増えており、ペンシル住宅全邸でエアコンが使用されていた。いずれも昼寝に短時間と夜間就寝時に長時間使用されていた。ベトナムでは伝統的に家族が同室で寝る習慣があり、冷房室である2階主寝室などに家族が集まって就寝していた。そのため自然室温が高い4階や3階の個室はあまり使われておらず、見方によっては効率的な冷房が行われていた。また、農家住宅は植物による遮へい効果により日中の最高気温が低く抑えられていた。
  • 飯野 由香利
    セッションID: 3H-11
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的  高齢者に住環境教育を行うことの意義・効果を明らかにし、教育方法の提案を行う。

    方法
     2014年に住宅や住環境の実態及び身体機能に関する知識について高齢者151人にアンケート調査を行った。また、加齢による身体的機能の変化と住環境との関係に関する体感型講義を12人に行い、教育方法に関する意見を得た。さらに、2015年9月に高齢者32人を対象に加齢による生理的・身体的変化の特性、体温調節機能と熱中症やヒートショックの発生原理との関係及び対策に関する講義を行い、講義内容及び家庭実践に関する意見を得た。講義後約1ヶ月半経った時点での講義で学んだ知識の活用に関する追跡調査を行い、29人の実態を捉えた。

    結論 

    1)多くの高齢者は、住環境に関する教育を受けておらず、加齢による身体的特性に関する正確な知識を持っていないことを明らかにした。

    2)高齢者の多くが学習したい内容として、住宅の耐震構造と福祉住環境整備、及び居住環境や住まい方を挙げた。

    3)熱中症やヒートショックなどの住環境問題に関する講義を通して、対策の内容と各問題の発生原理や体温調節の仕組みを教授する方法は、理解度の向上に効果的であること、及び講義時点から早々に発生する住環境問題に関する興味・関心が高いことを確認した。さらに、簡易的な対策は家庭実践に繋がることがわかった。

    4)体感型講義や生理的観点事項を取り入れた教育は、高齢者の理解度を向上させ、住まい方に関する意識を変え、住生活の改善に寄与することを明らかにした。
  • -高齢者と若齢者の一日の経時変化と活動量との関係-
    佐々 尚美, 東 実千代, 久保 博子, 磯田 憲生
    セッションID: 3H-12
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】地球温暖化が進み夏の気温が上昇するにつれ、熱中症にかかる患者も増加している。中でも高齢者の割合が高く、住宅の中での発症が多い。そこで、夏期の室内温熱環境や生活行動などを調査し、活動量や住まい方などから検討することを目的とする。
    【方法】健康な65歳以上の高齢者男女60名と、若齢者男女34名を対象とした。皮膚温と人体周囲温湿度、活動量、生活行動調査(居場所、使用冷房器具など)、主観申告などを測定した。連続した3日の間に測定し、調査は2012年〜2015年の夏期に実施した。
    【結果】冷房器具使用状況は、1日の半日以上「クーラー」を使用している高齢者は約18%、若齢者は約44%と若齢者の方がクーラーを使用する時間が長かった。1日のWBGT(暑さ指数)の経時変動は、若齢者は終日ほぼ28℃以下であったが、高齢者は25〜28℃の警戒域となる割合が高く、更に、日中は25〜31℃の厳重警戒域以上となる割合が若齢者と比べ高かった。年代別に平均すると、終日、高齢者は警戒域を、若齢者は注意域での変動であった。また、冷房使用時、くつろぎなどの行動別に平均すると、高齢者の方がWBGTは高く危険である。WBGTの温度基準別に活動量を平均すると、高齢者も若齢者も28〜31℃の厳重警戒域での活動量が最も高く、高齢者は31℃以上の危険域での活動量が次いで多く、注意が必要であることが示唆された。本研究は文部科学省科学研究費補助金(基盤研究(C)課題番号24500934および15K00769)により実施した。
  • 水分摂取量の実態について
    東 実千代, 岡本 啓子, 佐々 尚美, 久保 博子, 磯田 憲生
    セッションID: 3H-13
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    [目的] 高齢者の熱中症予防に向けた対策を検討するため。夏期の日常生活環境下における温熱環境実測、生活習慣や暑熱対策、熱中症に関する意識調査を実施してきた。本報では、暑熱対策として重要な要素である水分摂取量の実態調査結果を報告する。
    [方法] 被験者は65歳以上の高齢男女30名(男性14名、女性16名)、男子大学生20名とした。一日に摂取した水分の種類と量、食事内容をできる限り詳細に記入してもらうよう依頼し、大学生の食事についてはスマートホンを用いた写真撮影による記録も併用した。人体周囲の温熱環境(小型温湿度データロガーを携帯し、2分間隔で温湿度を自動計測)、居場所、生活行動、エアコンや扇風機の使用状況、着衣状況、温冷感などの主観申告(申告用紙に記入)は、高齢者30名と大学生9名の協力を得た。調査時期は2014年8月(高齢者)、2015年8月(若齢者)である。本研究は畿央大学研究倫理委員会の承認を得て実施した。
    [結果] 高齢者の水分摂取量の平均は、男性が約1.5L、女性が約1.3Lであったが、アルコールを除くと男女とも約1.2Lとなり、差はなかった。食事は女性の方がバランスよく多品目を摂取する傾向があり、食事からの摂取水分量を算出した結果、男性より約200ml多かった。さらに、水分摂取に対する意識や温熱環境と実際の摂取量の関係を分析し、年代等による違いを比較検討した。
    本研究は文部科学省科学研究費補助金(基盤研究(C)課題番号24500934および15K00769)の助成を受けた。
  • 田中 彩, 惠良 真理子, 森田 洋
    セッションID: 3H-14
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】浴室では温度・湿度が高くなりがちであることから、カビによる汚染やバクテリアによる汚染が問題となってくる。後者としては、バクテリアにより形成されるバイオフィルムによる汚染が挙げられる。バイオフィルムには細菌食性のアメーバも集まってくると言われている。アメーバの中でもHartmannella vermiformis に着目し、制御するために、本研究では脂肪酸塩に着目した。 
    【方法】抗アメーバ試験には、炭素鎖の長さが異なる9種の脂肪酸塩を用いた。脂肪酸塩の濃度は350 mMであり、pHは10.5とした。また、比較対象としてpHを10.5に調整したpH調整水を用いた。アメーバ懸濁液と脂肪酸塩を1:1で接触させ、0、10、60、180 分接触後にサンプリングを行い、トリパンブルーにて染色後、プランクトン計数板を用いて計数を行った。脂肪酸塩接触時の形態観察も同時に行った。 
    【結果】脂肪酸塩の抗アメーバ効果の結果は、C12K、C18:1K、C18:3Kが高い抗アメーバ効果を示し、10 分の接触で4 オーダーの抗アメーバ効果が認められた。3 種の脂肪酸塩についてMIC測定試験を行ったところ、C12K=1.36 mM、C18:1K=0.17 mM、C18:3K=0.34 mMとなった。アメーバの形態観察を行ったところ、アメーバが青く染色され死細胞となっている様子が観察された。
  • 尾畑 夢歩, 森田 洋
    セッションID: 3H-15
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 コナヒョウヒダニは、室内環境に多く発生し、様々なアレルギー症状を引き起こす事から問題視されている。そこで本研究では、界面活性剤の一種で、石けんの主成分である脂肪酸塩のコナヒョウヒダニに対する殺ダニ効果の検討を行った。 方法 殺ダニ試験は、シャーレ上でコナヒョウヒダニの雌成虫(20 匹)に1匹ずつ脂肪酸塩(175 mM)を2 µL滴下した。1 分間接触後、コナヒョウヒダニを直径9 cmのろ紙に筆を用いて移した。ろ紙は二つ折りにして、二方をクリップで留めて固定した。これらを25 ℃、65 %RHの条件下で保存し、48 時間後に致死判定を行った。判定は実体顕微鏡下で行い、生きていた状態よりも乾燥していること、針で刺激を与えても動かないもの、かすかに反応を示す瀕死虫を、死虫とした。結果は、pH調製水を対照区とした。 結果 コナヒョウヒダニに対して、脂肪酸塩による1 分間の接触を行った結果、いずれの脂肪酸塩においても、コナヒョウヒダニの補正死亡率は著しく低かった。また、接触48 時間後のコナヒョウヒダニを観察すると、生虫は、未処理と同様の活発な運動が確認できた。これまで脂肪酸塩は多くのカビや細菌類に対して高い抗カビ・抗菌効果を有していることが筆者らの研究により明らかとなっているが、コナヒョウヒダニに対しては殺ダニ効果を示さないことが明らかとなった。
  • 廣瀬 正幸, 棚村 壽三, 光田 恵
    セッションID: 3H-16
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的:私たちが感じている食物の味は、味と香りが合わさった風味として感じており、香りからの影響が大きいとされている。既往の研究ではフレーバーを添加した場合の検討が行われているが、本研究では鼻腔経由の香りが味に与える影響を対象とし、香りを住空間における環境フレグランスとして想定した際の味感覚の変化を検討した。 方法:味をつけた溶液の入ったプラスチックカップの淵に香料を付香し、付香した側の淵が鼻に近くなるようにして、その香りを嗅ぎながら呈味溶液を試飲させた。その際に感じた味を回答させ、鼻腔経由の香りが味の認識に与える影響について検討を行った。 結果:レモンの香気成分であるシトラールの香りを嗅ぎながら酸味溶液を試飲した際、香りを付香しなかった酸味溶液と比較して酸味の評価が増加することが確認できた。D-リモネンの香りを付香した場合も同様な結果が得られ、鼻腔経由の香りが味の認識に影響を与えることが確認できた。
  • 高田 宏, 水馬 義輝, 佐々木 直之
    セッションID: 3H-17
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 将来,家庭をもつ子ども達への省エネ行動の定着は重要であり,家庭用エネルギー消費の削減を考える上でも,子どもの省エネ行動は検討の余地がある。本研究では,家庭における親子の省エネ意識・知識・行動および水・エネルギー消費の実態を明らかにすることを目的とする。
    方法 広島市・呉市近郊の11世帯を対象として,夏期:2014年8~9月,秋期:2014年11月,冬期:2015年2月に,省エネ意識・知識・行動のアンケート調査と水・ガス・電気使用量の実測調査を行った。
    結果 子どもの省エネ意識は大人に比べて低いが,子どもの地球環境問題への関心や生活での環境への意識は夏期から冬期にかけて増加傾向にあった。大人は省エネを身近なことと捉えているのに対し,子どもは地球のために必要と捉える割合が多く,親子で差異がみられた。大人は子どもに省エネ知識を教えているが,子どもは学校など家庭以外で得た省エネ知識の方が印象に残りやすい傾向がみられた。各世帯の生活における省エネ行動の実行割合は年間平均56~88%と世帯間で差がみられた。アンケート調査結果から算出した省エネ「意識得点」および「省エネ行動実行割合」と,実測調査結果の1日あたり水・ガス・電気使用量の関係を考察した結果,意識得点,省エネ行動実行割合ともに水・ガス・電気使用量との関連がみられた。入浴行為を対象として,個人の意識・行動・実態の関係を考察した結果,子どもの意識得点と入浴の水使用量にやや関連がみられた。
  • 神戸市立Y小学校・N小学校の事例より
    梶木 典子
    セッションID: 3H-18
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 学校の授業中に姿勢が悪くなることの原因の1つとして身体に合っていない机・いすを使用していることがあげられる。本研究では、小学生の身長と学校用机・いすの適合状態、使用感、姿勢について検証ことを目的とする。
    【方法】
    神戸市立Y小学校とN小学校の2年生・5年生(485人)を対象としてアンケート調査を実施した。調査期間は、2014年11月から12月。
    【結果
    】「児童の身長と学校用机・いすの号数が適合している」は、Y小学校が2年生20.9%、5年生5.1%、N小学校は2年生5.2%、5年生0.7%であった。両校共に児童の身長よりも大きい号数の机・いすの配当が多かった。また、身長に不適合な机・椅子を使用しているにも関わらず「適合している」や「使いやすい」と感じている児童が多かった。各教室には児童の身体に合った号数の机・いすそのものが不足していた。授業中の姿勢は「足を後ろに曲げている」が最も多く、次いで「顔に手をついている」「いすの前足を浮かしている」が多かった。成長が著しい小学生だからこそ、身体に合った机・いすを使用し、正しい姿勢で勉強することは重要である。号数の違う机・いすを使用している児童同士や学年をこえて交換することで調整したり、長時間、正しい姿勢を保つことができない児童に関しては、体幹を意識させることや、楽しみながら体幹を鍛えさせることが有効であると考えられる。
    (本研究は2014年度卒業生:秋武志歩との共同研究である)
  • 竹原 広実, 佐々 尚美, 梁瀬 度子
    セッションID: 3I-01
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    研究目的 近年和室の減少傾向が顕著である。日本の建築文化、生活文化の継承の観点から懸念される。本研究は和室に対する意識を基に対象者の類型分けを試み、今後の和室の展望に関連する要因を探る。本報は第62回大会発表の続報である。
    研究方法 質問紙調査を実施した。現在居住している住宅や和室使い方の実態、和室に対するこだわりやイメージ、和室の必要性などの項目に加え、和室写真18種に対する評価である。
    研究結果 有効回答1374件について18アイテム43カテゴリーを説明変数としコレスポンデンス分析を行った結果、“和室への親近性”と“和室への関心やこだわり”の2軸が抽出された。対象者は4つのクラスターに分類できクラスター1(24.7%)は「親近性小、関心小」、クラスター2(32.3%は「親近性大、関心大」、クラスター3(39.0%)は「親近性や関心が高くも低くもない」、クラスター4(3.9%)は「親近性小、関心大」である。クラスター2は現住居に和室数が多く日常的に和室使用、和室は絶対必要で2室以上あるいは全室和室を是とし、書院など格式にもこだわりをもつ。クラスター1は現住居に和室が少なく日常的に使用せず、今後の住まいに1室などである。好む和室スタイルは、クラスター1は洋室に畳仕様のもの、クラスター2は伝統的なスタイル、クラスター3は洋室の一角に畳コーナーがある和洋折衷、クラスター4はどのスタイルも評価が低い。以上の通りクラスターで現住まいと意識、好むスタイルの関連が見られた。
  • -若年層の住生活の実態ー
    中村 久美
    セッションID: 3I-02
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 外部環境との応答性に関わる住生活には、①環境調整(温熱、光、空気環境の調節)、②防犯・監視(見守り)、③生活の豊かさにつながる知覚(眺め、自然や四季の変化の感受)、④コミュニティや景観形成(演出、表出による親しみ、通りの景観形成)の諸側面が存在する。もともと開放的で内外中間領域(縁側)を有する日本の住空間では、外の自然や周辺環境と親しむ住生活が存在したが、地球環境問題や地域コミュニティとの関係が問われる現代は、そのような住生活のあり方は重要である。現代における外部環境との応答性ある生活様式の再構築をめざし、まずは若年層の窓と窓周りの住生活の実態を明らかにする .
     方法 女子大生151名を対象に、窓やカーテンの開閉など窓周りの住生活や自宅の窓周りの生活様態に関する質問紙調査を実施。
    結果 自宅開口部の様態を見ると、1年中雨戸や窓が締切の部屋がそれぞれ約2割、4割存在する。日差しの調節にすだれなどを活用している(4.5割)一方、天気の良い日中でもリビングの照明をつけている(4.5割)。内外中間領域のうち、ベランダ・バルコニーは7.5割が有しているが、縁側、テラス(ともに2割)を有する家は少ない。またそこでは物干し以外の住生活行為は特に行われていない場合が多い。学生自身の窓周りへの働きかけをみると、換気の習慣が定着していない学生が一定数存在し、厚いと感じたら窓を開けずにエアコンをつける者が1/3をしめる。「窓の外を眺める」「空模様を見る」ことを全くしない学生も2割存在する。そもそも自室の窓の方位を認識しない学生が多い。住空間への意識として窓や空間の開放性に関心のない学生ほど当然のことながら窓や窓周りへの働きかけはない。総じて外部環境への関心や窓を介した外との関係が希薄な学生が少なくない。
  • ―中国・内モンゴルフルンボイル市エヴェンキ旗輝ソムを事例に―
    斯琴 托亜
    セッションID: 3I-03
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    1、目的

    内モンゴルフルンボイル市は地理的にロシア・モンゴル・中国3つの国の境界線に位置している。ここはかつて遊牧民族が代々家畜を追って遊牧生活をした場所である。そして今モンゴル族以外にエヴェンキ族・ダウール族など12の民族がここに集住している。

    本研究では、エヴェンキ族がモンゴル民族と同じく草原地域で牧業を営んでいるが、放牧方式と住居関連(固定住居バイシンと移動住居ゲル)、そして部屋の平面変化と内部空間の使い方の現状と変化を把握し、モンゴル族とエヴェンキ族の放牧様式から居住空間、生活様態の違いを分析することを目的とする。

     

    2、方法

    2014年9月にエヴェンキ旗の輝ソムでエヴェンキ族の20世帯を3週間に渡って家族を訪問し、生活様態や住居に関する項目についてヒアリング調査と測量を行った。収集した詳しいデータを分析しながら比較する方法を使用した。

     

    3、結果

    ・新バラグモンゴル族の季節移動式放牧と比べれば、エヴェンキ族が夏営地と冬営地(拠点)に限られている。

    ・分配された土地をフェンスで囲むことが少なく、夏にはガチャの共用地を自由に利用している。冬には、家畜を他人に委託している状況が分かる。

    ・固定住居バイシンの空間や役割分担が違う。例えば、入口が北に設けられ、客室が北方に設置されるなどの事例がみられる。そして、改築や増築が行われている。増築は北の入口から北へ広げて増築がされていることが分かる。
  • 福島給食センター建設プロジェクト
    児玉 達朗, 遠藤 晶, 綱川 隆司, 田中 愼太郎, 飯田 憲司
    セッションID: 3I-04
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 厚生労働省の認証制度である「総合衛生管理製造過程」(通称マルソウ)の適用対象となる3000食対応の給食センターにおける衛生管理区画の事例からHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)対応の管理手法に基づいた衛生管理区画を計画する際に用いたFM(Facility Management)ならびにBIM(Building Information Modeling)に着目し,その有効性を明らかにする。

    方法 東京電力福島給食センター(3000食対応)の企画・計画,建設ならびに運営に関わるプロジェクトを研究対象とする。

    結果 HACCP の前提条件となる施設と敷地,水の供給,排水処理など基本的な建築条件を踏まえて全体規模の計画を行った。施設計画では,汚染・非汚染の衛生管理レベルに従って厨房員の調理,食材・食品の搬入・搬出など,その使われ方を踏まえた作業区間を検討する際,FM施設計画手法を用いることが効果的であることが確認された。また,各種動線の検討に当たってトイレ,手洗い施設,衛生装備の着替えと保管,ゴミの廃棄等に関わる諸施設をエリア単位で配置が移動しスケルトンの変更が生じる。一般的にプロジェクトの設計期間に制約がある場合,途上における大幅な計画変更は実施が困難である場合が多いが,BIMを用いることが効果的であることが確認された。
  • 小学校における保健室の改修事例を通じて
    藤平 眞紀子
    セッションID: 3I-05
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 保健室に求められる機能は多様化してきている。従来からの処置や休養、健診とともに、特別な理由がなく来室した児童・生徒がほっとして退室していけるような保健室づくりが目指されている。そこで、小学校での保健室の内装塗装改修および内装の一部木質化の改修事例を通じて、生活空間としての保健室のあり方について検討した。 方法 奈良県内のA小学校において、児童を対象としたアンケート調査、養護教諭へのヒアリング調査および行動観察調査を行い、現状の課題を抽出するとともに、内装一部木質化後の変化について検討した。 結果 内装の塗装改修、一部木質化と段階的に改修を行った。改修後、児童および養護教諭から室内環境、保健室内の様子、保健室で感じること、それぞれにおいておおむね良好な評価が得られた。のびのびできる、気持ちがいい、のんびりできると評価されていた。また、木製のベンチや木のテーブルは人気であった。さらに、空間のスペース分けが明確になり、来室児童の動線が交差しにくくなった。なんとなく来室した児童がほっとして退室していけるような保健室づくりを目指して改修を段階的に行ってきたが、それぞれ児童および養護教諭に受け入れられてきていると考えられる。今後は、使用に伴う木部の変色や傷みに対し、適切なメンテナンスを行いながら、生活空間としての保健室づくりをさらに検討していきたい。本研究は2013年度LIXIL住生活財団の研究助成を受けて実施されたものの一端である。
  • ―雑誌「婦人之友」の記事を用いた住生活の学び その1―
    小池 孝子, 浅見 美穂, 山中 優, 定行 まり子
    セッションID: 3I-06
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 大学における住生活に関する授業においては、学生自らが自分の生活を客観視することが学びのきっかけとして重要であると考えられる。しかし受講者である女子大学生のみを対象とした事例だけでは偏りが避けられないことから、婦人雑誌「婦人之友」を題材とした新たな教材づくりに取り組むこととした。
    方法 これまで、住居学科2年次学生を対象に、時代の変遷とともに家族の形がどう変化し、住宅内における生活の時間や場所がどのように移り変わったのかということについて考えさせることを目的に、親世代、祖父母世代への聞き取り調査を課題としてきた。調査内容は学生自身、親世代、祖父母世代が子どもの頃に住んでいた家の間取り図の作成と、各部屋で行っていた生活行為の書き出し等である。この調査結果について、日本全体の傾向と捉えるべきか否かを判断するため、婦人雑誌「婦人之友」を対象に、掲載記事より住居・住生活に関する記述を抜粋し、比較分析をおこなった。
    結果 「婦人之友」より得られた子ども部屋および子どもが生活する空間に関する記事の分析からは、子ども部屋の共有・専有の状況、設えなどについて授業における調査課題と同様の変遷があったことを示す結果が得られた。また「婦人之友」の記事の分析からは、授業課題からは収集できなかった年代の資料も得られ、今後の授業において家族関係と子どもの生活空間のあり方を検討する資料として有用であると見込まれる。
  • -雑誌「婦人之友」の記事を用いた住生活の学び その2-
    浅見 美穂 , 小池 孝子, 山中 優 , 定行 まり子 
    セッションID: 3I-07
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 
    少子高齢化や世帯の縮小化、ライフスタイルの多様化などを背景に、人々の時間の使い方や家族との関わり方は大きく変化してきている。住生活を学びこれからの住居を考える上で、学生自らが自分の生活を客観視することが学びのきっかけとして重要であると考えられる。婦人雑誌「婦人之友」を題材に新たな教材作りに取り組み、学びの可能性を探る。

    方法
    これまで、住居学科2年次学生を対象に、時代の変遷とともに家族の形がどう変化し、住宅内における生活行為、場所、生活時間がどのように移り変わったのかということについて考えさせることを目的に、親世代、祖父母世代への聞き取り調査を課題としてきた。この調査結果と、婦人雑誌「婦人之友」の掲載記事より生活時間に関する記述を抜粋し、比較分析をおこなった。

    結果
    「婦人之友」より得られた生活時間に関する記事の分析からは、夕食・入浴・就寝時刻とも時代を追うごとに遅くなっていることなど、授業における調査課題と概ね同様の変遷があったことを示す結果が得られた。また「婦人之友」の記事からは、それぞれの時代の主婦が家事(料理・洗濯・裁縫・掃除・買い物など)にかけている時間や、就労時間など、学生の聞き取り調査からは得にくい当時の生活を読み取ることができた。今後の授業において、家事行為のあり方や生活時間と家族関係、さらには住環境のあり方を検討する資料として有用であると見込まれる。
  • 金指 有里佳, 小池 孝子, 定行 まり子
    セッションID: 3I-08
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 昨今、ひとり親世帯数は増加を続け、ひとり親世帯の半数以上が貧困層にあたる現状は、子どもの生育の課題や生活環境への影響を内包していると考えられる。ひとり親世帯は生活の中で多くの課題に直面していると思われるため、ひとり親世帯の生活実態及び自治体の支援施策を調査し、特に支援を受けるにも生活基盤となる適切な住まいの確保が重要であることから、住まいを中心にひとり親世帯の今後の支援のあり方を考察した。
    方法
    東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県の区部及び市部145自治体でひとり親世帯の支援を主に行っている子育て支援課等の部署宛に、ひとり親世帯の支援に関するアンケート調査を郵送により実施し、回答率は64.1%となった。
    結果
    住まいの支援としてひとり親世帯の多くが望む公営住宅の当選率引上げ等を行うも、空き戸数も少なく公営住宅に頼ることに限界があり、民間賃貸住宅では適切な価格の住宅がないこと等から、ひとり親世帯には住まいの確保が非常に難しい。しかし自治体によっては、家賃補助や保証会社の紹介等を行い民間の住まいを少しでも容易に確保出来るよう居住支援施策を実施していることがわかった。 以上より、ひとり親世帯の住まいのセーフティーネット施策として、公営住宅には限界があるため民間の住まいの居住支援施策を多くの自治体で取り入れることが重要であり、その施策がひとり親世帯のニーズに沿い積極的に活用されるよう工夫することが求められる。
  • 大谷 由紀子, 佐藤 隼
    セッションID: 3I-09
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    [目的] 増加する空き家に対し、自治体は実態把握と具体的な対策計画策定が求められている。空き家対策は2方向あり、第1は保安上、衛生上問題のある特定空き家の除却等、第2は前者以外の資源活用である。本研究は資源活用に着目し1)、自治体がどのような活用促進に取り組んでいるか、近畿圏6都道府県下198自治体を対象に施策を把握する。
    [方法] 自治体HPとパンフレットから関連情報を収集し分析を行う。そのうえで特徴的な取組みは電話や訪問による聞き取り調査を行う。期間は2015.10~2015.12
    [結果](1)活用促進の施策は空き家バンク、補助金、相談員、不動産提携に大別される。(2)何らかの施策を展開するのは131件であり、空き家バンク108件、補助金85件、相談窓口14件、不動産提携5件である。空き家バンクと補助金の両方実施は49件である。最多の空き家バンクは登録件数がわずかなケースが散見され、それらの自治体では単独での実効性は乏しいと思われる。(3)補助金はリフォーム、改修工事、移住補助、耐震改修工事、家財撤去、その他に分類され、利用には年齢、期間、空き家バンク利用などの条件が付されている。 (4)自治体独自の取組みは大学やNPOとの連携、空き家コンシェルジュの設置などがあるが、歴史的まちなみや建築的価値のある住宅の集積地域が主である。一方、一般的な住宅や補助対象でない空き家は、民間組織やまちの不動産業者がリノベーションする事例が徐々に増えている。
    【参考文献】1)中山恵介、大谷由紀子,「空き家バンクの利用と運営に関する全国調査からの考察」,日本建築学会大会梗概,平成25年度,北海道大会pp.1467-1468
  • 大塚 順子, 定行 まり子
    セッションID: 3I-10
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 UR都市機構(以下UR)では、急速な高齢化に伴い2008年より順次、一部の団地(平成28年1月現在で全国39団地)に生活支援アドバイザー(以下アドバイザー)を設置しており、日本総合住生活株式会社(以下JS)は、競争入札によりその多くについての業務を受託している。本研究では、業務の現状を把握し、団地高齢者がもつニーズに応じてアドバイザーに求められる役割と業務上の課題を明らかにする。
    方法 JSが業務を受託している33団地のうち、アドバイザー30人を対象に業務に関するアンケート調査を行った。(期間2015年9~10月、JS支社を通して配布、回収)そのうち、ヒアリング調査が可能だった18人について、聞き取り調査を実施した。(期間 2015年11月~12月)
    結果 (1)アドバイザーは、就任時、業務内容等が居住者等に十分認識されないことも多かったが、徐々に信頼関係を築き、重要な役割を担っている。困難事例への対応や業務のノウハウは、JSが実施する研修やアドバイザー同士の情報交換会によるところが大きい。(2)安心コールや巡回は居住者の問題発見に結びつく重要な業務の一つである。(3)居住者の家族、地域包括支援センター、自治会などとの業務上の連携、情報共有が重要と感じている。(4)イベントは、外出のきっかけや安否確認の一助になっているが、男性の参加が少ないことが課題である。本調査研究は、JSからの委託研究として実施したものである。
  • ~都営戸山ハイツを対象に~
    古賀 繭子, 定行 まり子
    セッションID: 3I-11
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的
    公営住宅は高齢の長期居住者が多く、生活用品は増加傾向にあるため、衛生的で健康的な居住環境維持のためには生活用品の整理が必要となる。そこで本研究は高齢居住者の生活用品に対する意識や習慣を把握し、住まいにおける生活用品の実態を明らかにすることで住戸内居住環境整備に必要となる要件を抽出することを目的とした。
    方法
    調査対象は都営戸山ハイツ居住者792名とし、2014年8月に直接訪問及び留め置き式のアンケート調査を実施した。回収率は32.7%(259名)であった。
    結果
    住まいおける生活用品の状態は使わない生活用品で収納が埋まり、使用中の生活用品の収納場所が確保できず、出しっぱなしになっている人が多く、居住年数が長いほど、出しっぱなしになっている人が多い傾向にある。出しっぱなしの生活用品は洋服が最も多く、定期的な処分が行われているが、処分頻度は女性より男性が、年齢が上がるにつれて低くなる。高齢者は生活用品が不要でも処分しづらいという意識や、しばらく使わなくともとりあえず残す習慣が多く、日々、生活用品が増加する傾向にある。生活用品増加の一方で生活用品の整理希望意識は高く、高齢者本人が整理できるようなサポートが必要と考えられる。また、生活用品の状態がこのままで良いという意識の男性高齢者や生活用品が重いため運べない身体の弱い高齢者に対する整理サポートが必要と考えられる。
  • 住民生活の事例
    村田 順子, 田中 智子, 藤平 眞紀子
    セッションID: 3I-12
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 調査対象地域の奈良県T町は、街道沿いに残る伝統的な住宅を活用してシニア住民が自主的にまちづくり活動を行い、住民同士の交流が活発になるなどの成果を上げてきた。しかし、住民の高齢化が進み、活動の継続が危惧されている。今後のまちづくり活動、及び町並み維持のためには、住民の居住の継続が必要である。居住の継続を可能とする要因を探るため、2010年に自宅を訪問し、ヒアリング調査を実施したお宅を再訪問した。時間の経過による居住者の生活の変化、現在の住宅の状況を把握することを目的とし経年調査を実施した。本報では、居住の継続にもっとも大きく関わる住まいに視点を置き、実施されてきた住宅の改修や建て替えについての具体的事例を、居住状況および身体状況の変化との関係性から報告する。
    方法
    2010年に調査したお宅の中から了解を得られた6軒を再び訪問し、高齢者や同居家族に対してヒアリング調査を行った。調査項目は、前回調査からの家族構成・身体状況・生活の変化、住宅改修等の有無などである。調査期間は2015年6月26日~7月18日である。
    結果 調査対象6例のうち、家族構成に変化があったのは3例である。前回調査対象だった高齢者が亡くなっていたのが2例あった。前回調査から建替え、住宅改修を行ったのがそれぞれ3例あった。建替えや住宅改修のきっかけは、高齢者が亡くなった、子どもの勧め、維持するためなどだった。身体状況が低下し、住宅に不便感を感じている人もいた。
  • 広島県川根地区の事例
    柳井 妙子, 中山 徹
    セッションID: 3I-13
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 地方の限界集落においては、高齢化に伴う過疎化が進行し、村自体が消滅することもある。住民が永年住み慣れた地域において、終の棲家として人生の終焉を迎えられるかは、地域住民による地域再生に負うことが少なくない。行政サイドの活動が財源的に限界に来ている現在、住民自ら地域の再生を考え、試行錯誤を繰り返しながら地域のコミュニティを維持し、経済的にも自活できるシステムを創る時期にきている。今回は、高齢化率が50%以上に達した広島県の限界集落である川根地区を対象に、住民が住民のための終の棲家づくりへの取り組みを整理し、地域自治のあり方を通して、コミュニティが活性化している状況を知見し報告することを目的とする。

     

    方法 本調査は、川根地振興協議会会長を対象に2008年10月から20016年1月までに数回、聞き取り調査を実施した。

     

    結論 川根地区の再生は振興会が担ってきた。同振興会の活動ではキーパーソンである現会長の長年の貢献が欠かせない。同一人物が長く組織のリーダーに就くと組織の活動が停滞してしまう場合もあるが、川根地区で15年以上も一人のリーダーが停滞もなく地域の活性化を継続している要因には様々なことが考えられる。また、若者の定住、お年寄りのコミュニティビジネス、交流人口の増加を目的としたイベント等、地域を活性化させ地域に誇りを持たせる取り組みが次々と誕生している。その結果、限界集落であった地域が住民自身により地域を終の棲家に変えている。
  • 辻本 乃理子
    セッションID: 3I-14
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    【目的】高齢化の進展により、要介護高齢者だけでなく、介護が必要でない元気で自立した生活を送る高齢者に対しても支援が必要であり、なかでも自然環境に自然環境に関する学習・活動支援の必要性を明らかにした(今津(辻本)2000)。自然環境に関する学習・支援を行っている過去に実施した調査団体のうち、当時もっとも望ましい学習・活動支援プログラムを実施していた組織の現在の活動状況から、今日の自然環境学習・活動支援組織の現状・変化と課題を考察する。 【方法】調査対象は、シニア世代をターゲットに自然環境リーダー養成講座開講22年が経過した「NPO法人シニア自然大学校」とした。調査方法は、シニア自然大学校代表理事、副代表理事へのヒアリング調査と資料。調査期間は2015年4月~6月。 【結果】シニア自然大学校は組織内の講座部門から環境NPOとして発展し、年々会員数を増やし、多くの講座修了生を輩出し、収益も増加させてきた。また、受講申し込み者の問い合わせやその動向、社会の変化に素早く対応し、創設当初の「リーダー養成講座」という趣旨は組織の理念として守りつつ、申し込み者のニーズに合わせた講義編成や募集方法を作り出している。反面、受講生の減少、受講申し込み者の問い合わせ内容、行政からの受託事業の減少など、受講生や社会の変化を感じるようになったとのことであり、組織のあり方を模索している状況であった。
  • 上野 勝代
    セッションID: 3I-15
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    本研究は、障がい者の生活支援の中でも特に立ち遅れている精神障がい者への今後の居住支援システムついて提案を行なおうとするもので、そのために、先進地であるイギリスを対象に調査を行ない、居住システムの状況を明らかにしようとするものである。

    調査方法としては、2014年9月に現地を訪れ、関係機関を訪問し関係者にヒアリングを行った。

    ヒアリング対象者は病院建築専門家、ソーシャルワーカー、看護師、病院経営者、心理研究者、非営利住宅協会の関係者、精神障がい者を抱える当事者と家族である。

    調査の結果、以下のことがわかった。

    1) 地域―訪問支援型医療・保健・介護・福祉の包括ケアが充実していること。

    2) 病院は脱施設化がはかられており、当事者への敬意を空間で表されていた。また、入院期間は原則28日間と短かった。

    3) 当事者の意見を大事にして多様な住宅を選択できる仕組みがつくられていた。

    なお、本研究実施には発表者以外に室崎生子、真野典子、吉村恵、室崎千重、前田康子も参加しまとめたものを、本発表者が報告するものである。

    また、本研究は平成26年度科学研究費(挑戦的萌芽研究課題番号26560037)を受けたものである。
  • (No.1) 浸水被害の状況と避難情報の入手方法
    平田 陽子
    セッションID: 3I-16
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    【目的】  近年の地球環境悪化に伴い、集中豪雨の回数が増えている。しかし、これまで我が国において、地震対策は講じられてきているが、浸水災害についてはほとんど手が打たれていない。一昨年に発生した福知山市における浸水災害をもとに、市民の防災意識と避難行動を明らかにすることで、浸水災害に対する対策を考える。
    【方法】福知山市の由良川沿いの3地区の住民を対象にアンケート調査を行う。調査日時は2015年9月25日~27日、配布数は313票、回収数は107票、回収率は34.2%である。
    【結果】①床下浸水が22%、床上浸水が75%、その中で2階まで漬かったのは10%ある。しかし、避難をしたのは48%で、5割は避難していない。急な増水により、避難道が水に漬かったからである。②避難のきっかけは、「周囲の状況を見て」判断した人が多いが、その他に、若い世代は「ラジオやテレビのメディア情報」により、高齢世代は「自治会や消防署の呼びかけ」 によるものが多い。③避難準備品は、懐中電灯、飲料水、非常食が多いが、毛布や寝袋などは高齢世代では「重くて持ち出しにくい」との声があった。④防災に関する勉強会や避難訓練には「参加したい」という声が8割近くと高い。  
    【まとめ】①世代による避難情報の提供方法を考えるべきである。②避難活動については、避難訓練の場などで、自治会としてどのような避難活動や準備をすべきかを予め議論しておく必要がある。 
口頭発表 5月29日 家庭経営・経済
  • 冬木 春子
    セッションID: 3K-01
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    幼児期の子どもにとって、生活習慣の基本となる睡眠‐覚醒リズムが規則正しく行われているかは、食事や遊びをはじめとする生活全般に影響を及ぼすとされる(神山、2003)。本研究の目的は、親の社会経済的環境が子どもの睡眠習慣に及ぼす影響を解明し、子どもをめぐる支援のあり方について考察することである。
    調査対象はS市A区B地区にある認可保育所に通う幼児とその親である。2013年1月から2月に、留め置き法による質問紙および睡眠票調査を行い、白票を除く543世帯から回収された。 
    主な結果では、子どもの睡眠‐覚醒リズムにも着目し、対象児の睡眠習慣を4類型に分類した。「睡眠リズムが一定である群(類型Ⅰ)」「週末に睡眠リズムが乱れる群(類型Ⅱ)」「全体的に睡眠リズムが乱れる群(類型Ⅲ)」「夜更かし傾向のある群(類型Ⅳ)」である。対象児を睡眠習慣の4類型に分類したところ、類型Ⅰ276人(52.8%)、類型Ⅱ50人(9.6%)、類型Ⅲ21人(4.0%)、類型Ⅳ176人(33.7%)であった。保育所児の睡眠習慣の特徴として、「夜更かし群」が多く、夜型の生活リズムの改善を要する子が約30%であった。
    母親の社会経済的要因と子どもの睡眠類型との関連を検討したところ、母親の職種との有意な関連が認められた。親の労働環境によって子どもの睡眠習慣は影響を受けることをふまえると、子どもの「健全発達」には社会経済的環境が関連していると言える。
  • 重川 純子
    セッションID: 3K-02
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 家計は必ずしも世帯の収入を一括して管理していないことが知られている。また、家計管理のあり方は、世帯の中の力関係と関係すると考えられている。従前に比べると固定的性役割意識がやや弱くなる、妻の雇用者化等による生活の個人別化などにより、夫妻間の関係に変化は見られるのだろうか。本研究では、夫婦の家計管理パターンの現状、家計管理パターンと支出分配との関係を明らかにすることを目的としている。
    方法 2014年調査の「消費生活に関するパネル調査」((公財)家計経済研究所)の有配偶世帯を対象に分析を行う。対象世帯者は1504人(年齢は25歳から55歳)である。
    結果 対象者のうち、3分の2が共稼ぎ、3分の1が夫のみ稼得である。共稼ぎ世帯では、夫妻の稼ぎを全て一括する「一体型」が約4割、夫妻それぞれが収入の中からいくらかを出し合う「拠出型」は1割強、「支出分担型」は1割弱である。妻収入を家計に拠出しない「扶養型」が4分の1を占める。夫のみ稼得世帯では、夫収入を妻に委ねる「委任型」が3の2を占め、残りが「手当型」である。世代別の比較では、共稼ぎ中、若い世代では「扶養型」が比較的少なく、「夫管理」型が比較的多い。妻分の生活費支出、貯蓄への支出の夫妻合計分に対する割合は、夫妻の手取り収入に占める妻の収入割合に比べ高い。家計管理タイプ別の比較でも、それぞれのタイプの妻分の支出割合は、概ね収入配分割合に沿うものとなっている。
  • 堀越 栄子
    セッションID: 3K-03
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 未成年の子どもでも、親や家族にケアを要する人がいる場合、大人がするようなケア責任を引き受け、自らの心身の発達や勉強、人間関係に大きな影響を受ける場合がある。本報告の目的は、調査により把握したケアを担う子ども(ヤングケアラー)の実態について述べ、その暮らしの改善や将来に向けた支援策について提起することである。
    方法 2015年1月から2月、新潟県南魚沼市立小学校・中学校・総合支援学校の全教職員を対象に郵送による無記名式自記式アンケートを行った。7月には、アンケート回答者のうち協力が得られた教員5名に、教員や学校としてのサポートの現状と課題等について半構造化インタビューを行った。
    結果 回答者271名(回収率60.8%)のうち68人が、これまでにかかわった児童・生徒の中で家族のケアをしているのではないかと感じた子どもがいると答えた。その子どもについての詳細を記入した回答者は65人で、児童・生徒の内訳は男子23人、女子42人、(ケアをしていた当時)小学生36人、中学生29人であった。今回の調査からは、日本においてもヤングケアラーが存在していること、彼らは家族のために家事、精神的サポート、介護等を行い、そのために学校生活、衛生面、栄養面、等に影響が生じていることが確認された。また、学校の教員も、気になる児童・生徒としてその存在を認識しているものの、十分に支援することが難しい状況にあることが示された。
  • 李 秀眞
    セッションID: 3K-04
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 韓国の教育環境の特徴として、家計支出における教育費の割合が高い状況があげられる。個別家庭の対応行動として、教育にかかる費用を賄うために収入源を増やすことが考えられる。すなわち、既婚女性が労働市場に参加することによって、教育費の支出に対応しようとする家計行動が予想される。本研究では、家計の教育費が母親の就業選択に与える影響を明らかいにすることを目的とする。
    方法 本研究に用いるデータは韓国労働パネル(KLPS)16次および17次データである。分析対象は、16次年度時点で有配偶状態にいる20歳から60歳であり、さらに、子どもの年齢が満6歳以上18歳以下の既婚女性834名を対象とする。女性の就業選択の変化および家計の所得および消費を中心に標本を抽出するが、世帯所得および個人の勤労所得、世帯の消費支出の情報は17次年度データから抽出する。
    結果 私教育費の変化は既婚女性において、未就業状態を持続させるのかあるいは未就業から就業状態へ変化させるのかについてロジスティック分析を行った。従属変数としての既婚女性の就業状態には、16次年度の未就業者のうち、17次年度未就業持続者を0、就業状態が変化したものを1と設定した。私教育費割合の効果をみると、私教育費の割合が高いほど、就業選択の確率が低いことが確認された。世帯所得を3区分して分析した結果、世帯所所得<中>のグループでは私教育費割合が就業選択に負の効果を与えていたが、世帯所得<下>と世帯所<上>のグループでは私教育費の効果が確認できなかった。
  • 『ジュニアスタイル』から見る手作りのあるライフスタイル
    渡瀬 典子
    セッションID: 3K-05
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    <目的>現代社会では、衣服購入の際、「価格」「入手しやすさ」を考慮して大量生産の既製品から選ぶことは少なくない。よって、衣服=「作って着るもの」ではなく「購入して着るもの」とも解釈できる。しかし、ハンドメイド衣料を売買するインターネットサイト等にも注目が集まるなど、消費者の嗜好は様々である。本報告は、かつて女子中高生を対象に鎌倉書房から創刊されたソーイング雑誌『ジュニアスタイル』(創刊当時の題名は『ドレスメーキングのジュニアスタイル』)に注目し、衣服を「作って着る」というライフスタイルが当時同誌においてどのように扱われ、展開されていたかを明らかにする。<方法> 1976(昭和51)年~1985(昭和60)年に刊行された『ドレスメーキングのジュニアスタイル』(1980年から『ジュニアスタイル』)の記事を分析資料とする。<結果>『ジュニアスタイル』は先行誌であり、読者層が同誌よりも高い『ドレスメーキング』と比べて、女子中高生のライフスタイルに即した「流行」「着回し」を意識した服の製図が掲載されている。また、被服製作に関する基礎知識・製作上のヒントが記載されているが、簡単に製作できるものだけではなく、製作のうえで難易度が高いものも含まれていた。
  • 工藤 寧子
    セッションID: 3K-06
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 近年、共働きを選択する世帯も増加して、女性の働き方や仕事に対する考え方に変化がみられる。それに加え、女性は仕事と家庭の両立が求められている。 本研究では、有配偶者女性を対象に、仕事環境がワークライフバランスの満足度に与える影響を明らかにする。仕事環境は支援制度、労働条件および職場環境を要因に設定する。
    方法 分析に用いるデータは、日本政策金融公庫総合研究所の「女性の働き方に関するアンケート,2011」である。このデータは、20から59歳の民間企業で働いている6,568名の女性を対象にしたものであり、勤務経歴や働き方、働く環境についての情報を含んでいる。分析では有配偶者2,962名を対象とする。分析方法は分散分析を用いる。
    結果 仕事環境とワークライフバランスの満足度との関係を分析した結果を以下に示す。(1)短時間勤務制度の有無別にみると、制度がなくても柔軟な働き方ができるグループでワークライフバランスの満足度が最も高い傾向にある(平均2.98)。(2)勤務時間をみると、一週間当たりの労働時間が48時間以上の長時間グループはワークライフバランスの満足度の平均が2.38で最も低い(18時間以下の短時間グループの平均3.00) 。通勤時間でも、10分以内の短時間グループはワークライフバランスの満足度の平均が2.94で最も高い (36分以上の長時間グループの平均2.80)。(3)職場環境については、職場雰囲気が良いとするグループの平均が2.97で、悪いグループの平均2.61より満足度が高い。
  • -大学生と企業の意識調査よりー
    大藪 千穂, 柴田 奈緒美, 三輪 聖子, 奥田 真之, 早川 博美, 野田 しずか
    セッションID: 3K-07
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 男女共同参画をより一般市民に進めていくためには、どのような施策が必要であるかを明らかにするために、特に若い世代の意識と採用側の企業の男女共同参画に対する意識を明らかにすることを目的としている。
    方法
    質問項目は、関心事、男女共同参画社会、就職、結婚、出産、育児・介護休業、家事分担、少子化、介護、セクハラ・DVである。対象は岐阜大学と岐阜女子大学の学生1473人、岐阜県と愛知県の企業237社である。これらについて単純集計とクロス集計を行った。
    結果
    学生の内訳は男性33.6%、女性66.4%である。学年はほぼ同じである。関心事は、子どもに関する制度や問題点、女性に関する内容が高く、介護や地域活動、条例等の関心は低かった。男女共同参画社会の実現には社会の変化よりも自分たち自身が変わらなければならないと感じており、9割以上の学生は就職し常勤で働く意思を持っているが、出産後も働くと、子どもが大きくなってから働く割合がほぼ同じとなった。結婚に関しては、6割はいずれ結婚したいと考えているが、しなくてもよいと感じている学生も15%いた。子どもは2人から3人欲しいが、仕事を続ける上での弊害は育児・介護との両立が難しいが最も多く、その支援を必要と感じている。 一方企業は半数以上で女性管理職なしと回答しており、時間外労働や深夜労働のさせにくさが女性活躍推進の弊害と感じていた。この点は、学生と大きく異なっていた。
  • -愛媛県における事例分析をもとに-
    藤田 昌子
    セッションID: 3K-08
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
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    目的 水産業不振,過疎化,超高齢化など課題が山積している漁村地域において,漁協女性部による地域活性化の特徴と課題について考察することを目的とする。
    方法 愛媛県南予地域にある漁協女性部を対象とし,女性部長へのインタビュー調査,および業務報告書の分析による事例研究である。インタビュー調査は半構造化面接法を用い,2013年12月~2015年6月に行った。 
    結果 漁協女性部による地域活性化の特徴は,地域水産業の振興や地域社会の発展といった地域活性化の視点から課題を見据え,コミットしていることである。地域資源の加工・販売事業においても,作り手主体の「プロダクトアウト型」から,消費者の声とニーズに対応した「マーケットイン型」を経て,地域社会や地域水産業の課題も視野に入れ,独自の強みをもった「価値創造・提案型」の取り組みへと発展させている。こうした地域全体に共有される課題へ視野を広げた活動は,「経済的価値(Economic Value)」だけでなく,「社会的価値(Social Value)」「生活・人生的な価値(Life Value)」を生み出し,漁協女性部は住み続けたい・住み続けられる地域づくりの主体となっている。今後はさらなる地域活性化に向けた課題として,第一に地域住民や他の組織を巻き込んだ協働による展開,第二に地域外から地域に足を運んでもらう仕掛けづくりの必要性を指摘した。
    なお,本研究は科研費26350047の助成を受けた。
  • 2012年度調査と2015年度調査との比較から
    佐藤 海帆
    セッションID: 3K-09
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/04
    会議録・要旨集 フリー
    目的 福島原発事故により、子どもを取り巻く生活環境は大きく変化し、特に屋外遊びの機会が奪われたことは大きな問題である。そこで、本報告の目的は、原発事故後(2012年、2015年)の子どもの遊び環境の変化と課題を探ることである。
    方法 福島県いわき市の幼稚園や保育所に通う子どもをもつ保護者を対象に実施した、震災後の遊び環境についての2012年度調査(配布2,267、回収率57.4%)と2015年度調査(配布2,208、回収率60.4%)の結果から、放射線への心配や屋外遊び環境の状況、遊び環境へのニーズなどの変化を把握し、問題と課題を導く。
    結果 放射線についてみると、心配と回答している保護者の割合は、2012年は約9割であったが、2015年は4割と徐々に減っている。しかし、震災後4年6ヶ月を経過しても放射線への懸念は続いている。保護者の3.5割以上は、放射能の心配により、子どもの遊びは制限されており、特に屋外遊び時間および海や山など自然の中での遊びを増加させたいと回答している。今後の遊びについては、2012年は公園の「除染69%」など放射能の影響を受けずに遊べる環境が求められていたが、2015年は屋外遊び環境の「除染42%」と減少している。一方で、「自然の中での遊び」が求められている。さらに、遊びの制限が、子育てへの負担に影響しているため、特に生活への不安を抱く子育て家庭への対応が必要である。
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