一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
69回大会(2017)
選択された号の論文の326件中301~326を表示しています
口頭発表 5月28日 食物
  • 影山 志保, 束原 史華, 緑川 洋一, 諸岡 信久
    セッションID: 3H-15
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
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    目的 2011年東日本大震災以降、福島県郡山市にある本学は放射線測定施設を整備し、放射線に関する専門知識や技術を導入した教育を行っている。本発表では、2016年に学生が食品衛生学の授業に持ち込んだ試料(農産物や土壌)の放射線の分析結果を報告する。
    方法 放射線分析試料の産地と試料数は福島県92、宮城県4、山形県12および栃木県2の合計110であった。農産物は付着した土壌等の汚れを落とし、皮を食べない農産物は皮を剥いた。試料を0.5cmの正方形に切り、専用の測定容器に詰め放射線の分析試料とした。放射線の測定はオートガンマカウンター(パーキンエルマー)およびゲルマニウム半導体検出器(キャンベラ)を用い、20分から60分測定した。
    結果 結果は野菜別に分類し示した。野菜別の内訳と試料数は葉茎菜類33、果菜類2、根菜類30、穀類は玄米10、精白米14、果実類は12、土物類6、その他3である。それぞれのセシウム平均値および標準偏差は葉茎菜類6.9±5.5Bq/kg、果菜類4.0±0.6Bq/kg、根菜類3.9±2.6Bq/kg、穀類の玄米3.5±1.8Bq/kg、精白米2.6±2.3Bq/kg、果実類7.4±7.9Bq/kgおよび土物類3.3±2.6Bq/kgであった。放射線量が最も高い野菜は果実類、次いで葉茎菜類であった。全試料中放射線量が最も高い試料は果実類の柚子(皮)で22.9Bq/kg、福島県産であった。
  • 奧田 真友美, 阿部 結理, 神笠 梨沙子, 柴田 紗知, 飯島 遼平, 伊豆 英恵, 藤井 力, 松原 主典
    セッションID: 3H-16
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
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    【目的】我々は酒粕機能成分の抗老化作用について検討を進めている。これまでに,グリセロホスホコリン(GPC)とS-アデノシルメチオニン(SAM)の脳機能保護効果について報告し,更にその作用機構について検討を進めた。また,他の酒粕機能成分の抗老化作用についても検討を進めている。
    【方法】GPCとSAMの脳機能保護効果については,両成分を投与した老化促進マウスSAMP8の脳組織を用いて,アルツハイマー病との関連性が示唆されているトランスサイレチン(transthyretin: TTR)抗体による免疫染色で評価した。他の酒粕機能成分もSAMP8への経口投与を行い,脳機能保護効果を行動試験により評価した。また,これらの酒粕機能成分のTTR安定化効果についても検討した。
    【結果】脳のTTR免疫染色では,GPCやSAMを摂取した群では対照群に比べTTRの染色は弱く,TTRの沈着が強く抑制されていた。一方,両成分はTTRを直接安定化する効果はなかった。従って,GPCやSAMは生体成分の変性を引き起こす炎症等を抑えることによりTTR沈着(アミロイド形成)を抑制し,脳機能保護効果を示すことが示唆された。他の酒粕機能成分についても脳機能保護効果の可能性が示唆されたが,TTRを直接安定化する効果は認められなかった。
    本研究はSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)「次世代農林水産業創造技術」によって実施された。
  • 長野 隆男, 片瀬 満, 津村 和伸
    セッションID: 3H-17
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
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    目的 接触過敏症(CHS)動物実験系は,ヒトでのアレルギー性接触皮膚炎のよいモデル動物実験系である。前回,私たちはCHS動物実験系を用いて,大豆イソフラボン(SI)のCHS抑制効果を報告した。本報告では,抗生剤を用いてSIのCHS抑制効果と腸内細菌叢の関係について明らかにすることを目的とした。
    方法 6週齢雌BALB/cマウスを用い,CHS対照(CC)群,SI摂取CHS(SI)群,抗生剤PとSI摂取CHS(PSI)群,抗生剤NとSI摂取CHS(NSI)群の4群で実験を行った。抗生剤Pとしてバンコマイシンを,抗生剤Nとしてシプロフロキサシンとメトロニダゾールを用いた。CHSの評価として耳介の腫れと耳介組織への炎症細胞の浸潤を指標とした。腸内細菌叢の解析は,糞を採取して16SrDNA配列を次世代シークエンサーで分析した。
    結果 耳介の腫れと耳介組織に浸潤した炎症細胞数は,CC群と比べてSI群とPSI群で抑制されたが,NSI群では抑制されなかった。腸内細菌叢を調べた結果,抗生剤を摂取していないCC群とSI群で様々な科の腸内細菌が検出された。一方,PSI群では Lactobacillace Entrobactenaceae が、NSI群では Erysipelotrichaceae Streptococcaceae が増加していた。以上の結果から,SIのCHS抑制効果に腸内細菌叢の関与が示唆された。
  • 佐藤 祐子, 和田 佳苗, 﨡原 絹子, 谷口(山田) 亜樹子
    セッションID: 3I-01
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
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    目的 近年、パン原材料の値上げや消費量の減少が起きている一方で、パンブームにより個人ベーカリーや国内産小麦パンが注目を浴びている。今回、高校生におけるパンの嗜好性を調査する目的で官能評価と質問紙調査を行った。
    方法 調査時期は2016年9月、K県内の高校生を対象に2種のパン試料の官能評価(3段階評価)と質問紙調査を実施した。調査Iでは有効回答の得られた35名、調査IIでは62名を対象とした。調査Iは試料A(食パン)・B(フランスパン)、調査IIは試料B・C(ライ小麦パン)を用いて内・外相(色、味、硬さ)の官能評価を行った。質問項目は試食したパンの嗜好性や国内・外国産小麦パンに対する意識等である。
    結果 官能評価(内相)は、調査Iでは色がA:2.6B:2.5、味がA:2.5B:2.4、硬さがA:2.3B:2.4、総合評価がA:2.6B:2.4とAがBよりも高い評価を得て、調査IIでは色がB:2.8C:2.3、味がB:2.7C:1.8、硬さがB:2.7 C:2.4、総合評価がB:2.8C:2.2とBがCよりも高い評価を得ていた。パンの好みは、調査IではA・Bともに41%であり、調査IIではBが90%、Cが10%であった。食パンを購入する際、約5割が国内産小麦パンを選択し、約3割が外国産小麦パンを選択していた。パンを購入する際、安全性、価格、おいしさを判断基準としていることがわかった。
  • 谷口(山田) 亜樹子, 佐藤 祐子, 﨡原 絹子, 吉田 真史, 長谷川 織子
    セッションID: 3I-02
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
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    目的 神奈川県の学校給食のパン食は,現在,週2日以下であり,今後,パン製造業者はこの現状を維持またはパン食を増やしたいと考えている。しかし,ユネスコ無形文化遺産に和食が登録され,和食が世界的に注目されていることから,米食を推奨する傾向にある。パン食について,時代に合わせた見直しを検討する必要があると考えた。本研究では,アンケート調査を行い,パン食の利点,欠点を考え,改善できる点を模索し,さらに,新規パンの開発を行い,データを提供したいと考えた。

    方法 2016年5月,20歳前後の女子大学生41名を対象に,学校給食のパンに関する項目についてアンケート調査を行った。内容は学校給食のパンとご飯のどちらを好んだか,その理由について調査した。さらに,好きな種類のパンについても調査した。また,栄養価を考えたパンの開発を行なった。

    結果 アンケート調査を行ったところ,学校給食のパンとご飯では,パンが好きと答えた学生が63%と多かった。その理由は,2週に1回しかなくて,楽しみだったから,色々な種類があっておいしいから,パンの香りが好きだから,などであったさらに,新規パンの開発を行い,タピオカでんぷんを添加したパン,海藻を添加したパン,ホエータンパク質を添加したパンなどを製造し,少しでも嗜好にあうように工夫した。また,栄養計算をして,機能性が高まる工夫を示した。
  • 長野 宏子, 村山 美穂, 井上 英治, 鈴木 徹
    セッションID: 3I-03
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
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    目的 パンは紀元前から食べ続けてきた。伝統的なパンは、焼き、蒸し、揚げるなどで作られるナン、チャパティ、饅頭などがある。近年、ワインや酒に使用されているSaccharomyces cerevisiaeの系統関係を、マイクロサテライト領域を用いて明らかにした研究が行なわれている。本研究では、熱処理されたパン片からのDNA分析の可能性を探求することと、日本の自然発酵パン酵母S. cerevisiae株の系統関係をみることを目的とした。

    方法 ①試料は、S. cerevisiae保存菌株、市販酵母、焼成パン試験過程の市販酵母とそのドウである。さらに、日本各地の天然酵母パン、蒸す・揚げる試料等のパン欠片である。②試料からのDNA抽出はDNeasy Blood & Tissue Kit(QIAGEN)で行った。③マイクロサテライト6領域をPCR後、DNAシークエンサーで遺伝子型を決定し、系統樹は、アリル頻度のデータからCavalli-Sforzaの最尤法により作成した。

    結果 焼く、蒸気及び揚げる等の加熱調理したパン試料全てで、マイクロサテライト領域の遺伝子型を決定でき、処理の有無に関わらず同じ株は同じクラスターに位置した。今までのパン酵母S. cerevisiaeの系統関係の報告は、分離した株、保存機関や研究室等の生菌であったが、加熱調理したパン欠片からの多型解析を示した初めての報告である。
  • 内山 裕美子, 高橋 貴洋, 築舘 香澄, 山下 まゆ美, 岡本 由希, 加藤 みゆき, 大森 正司
    セッションID: 3I-04
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
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    目的 ネパールの紅茶はイラム地方(ネパール東部、インドダージリンと国境を接している地方)において生産されている。しかし、世界の茶の生産量490万tに比べると、ネパール紅茶の生産量は僅か2万t(0.4%、2014年)である。イラム紅茶はその立地・気候・製造条件などを勘案し、予備調査による官能所見の結果から上質であると判断された。今回は2016年にネパールのイラム地方を訪問し、イラム紅茶について調査・実験し、知見が得られたので報告する。
    方法 試料は、ネパールのイラム地方で2016年に生産された15種類の紅茶を用いた。分析した成分は、カテキン(酒石酸鉄法およびHPLC法),カフェイン(HPLC法),アミノ酸(アミノ酸分析計)で、常法により測定した.水色は官能評価法に準じて浸出し、380nmで比色するとともに溶媒分画法で検討した。さらに味覚センサーを用いて、同試料溶液についてうま味,渋味,苦味などを測定するとともに,官能評価により風味の特徴の検討を行った.
    結果 イラム紅茶は、ダージリン地方と地理的条件や気候等が類似していることから、官能所見としては、いわゆるマスカットフレーバーと称されるダージリン紅茶特有の芳香が漂っていた。含有成分についてはカフェイン2.5%、ポリフェノール11%、カテキンは5%と、ダージリン紅茶と同様の値であった。浸出液については、溶媒分画法で、MIBK画分等の水色も薄く、フレーバーに力点のおかれた紅茶であることが示唆された。味覚センサーを用いて測定したところ、渋味が少なくてボディ感も控えめなものが多く、素材感・複雑感が際立っているものと考えられた。
  • 岡本 由希, 木村 優花, 山下 まゆ美, 内山 裕美子, 加藤 みゆき, 大森 正司
    セッションID: 3I-05
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
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    目的 日本の後発酵茶には,伝統的に継承されて作られてきた富山県の黒茶,徳島県の阿波晩茶,高知県の碁石茶,愛媛県の石鎚黒茶の4種類が存在している.後発酵茶は,地域性もあり,製造方法が複雑なことに加えて,食生活の変化などにより生産量も減少して,一地方の茶として知られる程度となっている.そこで,本研究では,国内産の後発酵茶のイメージ,嗜好性,風味の特徴などについての実態調査を行うと同時に,日本における後発酵茶の存続について検討することを目的とした.
    方法 2016年8月に3種の国内産の後発酵茶(富山県の黒茶,徳島県の阿波晩茶,高知県の碁石茶)の嗜好調査を10~60歳代の健康な男女40名に実施した.茶葉の外観,浸出液(5℃)の水色,香り,味などについて5段階で評価してもらった.同時に,後発酵茶の味の特徴の1つでもある酸味について,酸味のある食品の嗜好を質問することで調査した.
    結果 3種の後発酵茶を試飲してもらったところ,若年層には受け入れにくいが,年齢層が高くなるにつれて比較的受け入れやすいということが明らかとなった.また,富山の黒茶は,「くせがある」「飲みづらい」という意見が多かった.阿波晩茶は,「酸味がある」という意見が多く,他に「冷やして夏に飲むとすっきりとしておいしそう」「疲れを取りたい時に飲みたくなる」という意見もあった.碁石茶は,「飲みやすい」という意見が多かった.これらのことから,国内産の後発酵茶の一般的な味の特徴をつかむことができた.さらに,酸味のある食品の好みについては,どの年代においてもかんきつ類の酸味が好みだということが分かった.
  • 米村 友子, 佐藤 哲
    セッションID: 3I-06
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
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    目的 「和食」は、ユネスコ無形文化遺産に登録され、世界中で食されている。日本では、洋食化が進み、中食や外食が多い傾向だが、現代の日本人は、「和食」を喫食しているだろうか。筆者が、1974(昭和49)年に実施した「おせち料理」に関する調査資料が保存されていた。43年後の2016(平成28)年に、同じ葦北地方の高校生に同様の調査を実施することで、日本の伝統的食文化である「和食」が伝承されているかを検証する。
    方法 1974年実施の資料を元に調査用紙を作成した。調査期間は、2016年1月1~3日、対象生徒196名、留め置き自記式で実施した。伝統的な「おせち料理」を中心に、三が日に喫食した料理について分析した。
    結果 1974年実施の調査では、対象生徒44名が全員「おせち料理」を喫食していた。内43名は家庭での手作りであった。一本物のブリを卸して、刺身・吸物・塩焼き等に調理している。「雑煮」の喫食者は37名で、「雑煮」か「吸物」の汁物を食した者は43名だった。2016年の調査では、「おせち料理」の喫食者は93名(47.4%)であった。食べなかったと回答した103名の中で、52名が「家に用意されていなかった」と理由を挙げている。「あったが食べなかった」が21名、「おせち料理でないものを食べた」が17名と続いた。クロス集計の結果、「おせち料理」喫食の有無は、祖父母との同居とは無関係ということなどが分かった。
  • 海老原 誠治, 古久保 彰, 堀川 悦夫, 西尾 チヅル
    セッションID: 3I-07
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
    会議録・要旨集 フリー
    ◎目的
    2015年国連本部における「国連持続可能な開発サミット」において「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択され、その目標として17項目を中心とする「持続可能な開発目標;SDGs(Sustainable Development Goals)が設定された。  一方、国内の学校教育では、30年度から順次実施される学習指導要領の改訂においては、「教育課程総体の力を発揮させて資質・能力を育成できる」事を目的とし、各学校が設定する「教育目標を踏まえた教科等横断的な視点で、その目標の達成に必要な教育の内容を組織的に配列」するカリキュラム・マネージメントが実施される。  この様な背景の中、学校教育における食文化教育のありかたの模索する上で、学校における教育目標を、SDGsと想定したさいのプログラムの適合性を評価する。
    ◎ 方法
    現在実施するプログラムの事例を、SDGsの17の目標にマッピングし、その適合項目や、その適合性に関し評価した。
    ◎結果
    SDGsの17の目標全てに適合はしないが、複数の項目において適合と判断できる項目を得た。
    ◎考察
    食文化は、SDGsを伝えるプログラムとして一部において高い親和性を示すが、カリキュラムマネジメントを前提とした場合、プログラムに設計の余地が多く確認出来た。
口頭発表 5月28日 被服
  • 安川 あけみ, 前田 圭香
    セッションID: 3J-01
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的 紫タマネギ外皮を用いた絹布の染色において,通常茶色外皮で行う約80℃で染色すると茶色外皮とよく似た茶色系の色に,室温以下では独自の色に染色されることを先に報告した。低温での染色は小・中学校の授業で行うにも安全であることから,本研究では絹布よりも身近な綿布を用いて紫タマネギ外皮による染色を行い,染色条件を変えて得られる染色布の結果を絹布と比較検討する。
    方法 紫タマネギ外皮5 gと水100 cm3を混合し,100℃で5 min間加熱して色素を抽出した。この操作を繰り返してすべての染色に必要な量の抽出液を得て混合し,この溶液を用いて綿布および絹布を浸染した。温度,時間,媒染剤および媒染液濃度を変えて染色し,含有色素,染色布の色差,結晶性,表面の形態と原子濃度,熱的性質,耐光および洗濯堅牢度を調べた。
    結果 紫タマネギ外皮の抽出液はアントシアニン類に加えて茶色タマネギと同様の色素も含有していた。無媒染染色布において,染色温度の上昇とともに絹ではしだいに染色布の色が濃くなり,綿では50℃以上で薄くなった。オレンジ色を帯びた絹の染色布に対して,綿布では黄色みのないピンク色に染色され,a*値およびb*値が低かった。絹に比べて綿の方が結晶性が高かったが,染色により繊維の結晶性,表面形態および表面原子濃度に大きな変化はなかった。種々の染色綿布の耐光および洗濯堅牢度試験は絹布よりも少し低かったが,媒染剤の種類により高い効果が得られることがわかった。
  • 岩﨑 潤子, 小林 莉子, 長島 千晴, 小林 泰子
    セッションID: 3J-02
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
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    目的 柿渋は古くから防腐剤や強度安定剤として、人々の生活の中で使用されてきた。成分である柿タンニンは消臭性や抗菌性が期待できる。本研究では堅ろうで消臭性の高い柿渋染色布の調製を行った。
    方法 試料布としてJIS染色堅ろう度試験用綿金巾とシルケット加工綿布をカチオン化処理して用いた。染色にはみます柿渋原液(三桝嘉七商店(株))を3倍希釈で用い、媒染には硫酸銅を2%o.w.f.で用いた。カチオン化処理、柿渋染色、媒染を組み合わせて各種染色布を調製した。JIS法に基づいた洗濯、汗、摩擦、耐光堅ろう度試験、検知管法による消臭性試験を行った。また分光光度計で透過率を求め、アパ対協法に従い紫外線遮蔽率を算出した。
    結果 前処理、重ね染め、媒染を繰り返して色味の異なる染色布を得ることができた。洗濯、汗堅ろう度試験では、汚染堅ろう度は高かったが、変退色堅ろう度は未媒染布で濃色化した。摩擦試験(湿潤)で堅ろう度が低くなった。耐光堅ろう度は実用範囲内だった。アンモニアと酢酸に対する消臭性は高く、特にカチオン化処理と銅媒染を加えた布が高くなった。重ね染めや媒染により紫外線遮蔽率の高い染色布が調製できた。以上の結果から、柿渋染色布は独特の色味、比較的高い堅ろう性、各種機能性を持つことがわかり、今後は、堅ろう性が低かった項目の再検討を行い、高齢者衣料や寝具類などへの展開を図っていく。
  • 稲垣 サナエ, 恒川 弥子, 上西 朋子, 牛腸 ヒロミ
    セッションID: 3J-03
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
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    目的  近年新しく発売された洗濯用洗剤5種とそれ以前に一般家庭で使用されていた典型的な洗濯洗剤1種とマルセル石鹸の合計7種の洗濯用洗剤の洗浄性を、湿式人工汚染布と洗浄機ターゴトメータを使って洗浄し、その表面反射率から評価した。さらに洗浄効率に及ぼす界面活性剤含有量の影響を検討し、家庭用洗剤として実効性があり、かつ環境負荷の小さな洗濯用洗剤の評価を行った。
    方法  6種の洗濯用合成洗剤と脂肪酸石けんの合計7種の洗剤と洗濯科学協会製湿式人工汚染布を用いて、ターゴトメータで洗浄し、洗浄効率を算出した。洗浄条件は洗濯温度30±0.5℃、浴比1:20、洗濯時間10分、すすぎは3分を2回繰り返した。
    結果  洗剤の種類により、洗浄効率に及ぼす洗剤濃度の影響は異なった。また、標準使用濃度で洗浄した時の洗浄効率も洗剤により異なった。標準使用濃度での洗浄効率は、洗剤濃度が小さくて洗浄効率が高い洗剤が環境にやさしい洗剤と言える。さらに、市販洗濯用洗剤に含まれる界面活性剤含有量と洗浄効率との関係を調べたところ、脂肪酸ナトリウムを除き、すべての洗濯用合成洗剤の洗浄効率と界面活性剤含有量の関係は直線性を示した。このことは、1回の洗濯に使う界面活性剤の量が同じならば、界面活性剤の種類や含有量に関わりなく洗浄効率は同程度になることを意味している。
  • 吉村 美紀, 川原 貴佳
    セッションID: 3J-04
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
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    目的 洗浄力は多くの因子に影響を受けるが、金属封鎖剤などが無添加の洗濯用液体石けん(以下、液体石けんと表す)を用いる際、水の硬度に影響を受けやすい。日本の水道水は概ね軟水だが、高い硬度を示す地域もある。そこで、本研究では、我々がこれまでに、洗浄力を高めるために有効な方法として示した液体石けんと過炭酸ナトリウムの併用が、水の硬度が非常に高い場合にも有効か検討を行った。

    方法 液体石けんはシャボン玉スノール、過炭酸ナトリウムは酸素系漂白剤を用い(どちらもシャボン玉石けん製)、濃度は30 Lに対しそれぞれ50 mLと15 g とした。洗濯用水には塩化カルシウムで硬度を調整した水を、試験布には洗濯科学協会製湿式人工汚染布を用いた。温度30 ℃の洗濯用水1 Lに試験布10枚と白色布40枚、任意の試料を入れ回転翼を120 rpmで回転させた。洗浄時間は10、60分とし、すすぎは3分を2 回行った。洗浄力の評価には、洗浄前後の試験布の550 nmの反射率から算出した洗浄度を用いた。

    結果 液体石けんのみで洗浄した場合、洗濯用水の硬度が高くなると洗浄度は低下し、100ppm, 200ppm, 300ppmではほぼ同じ値となった。水道水基準の最大値である300ppmの水を用いて、液体石けんと過炭酸ナトリウムを併用した場合、併用しない場合に比べ洗浄度は高くなったが、精製水で液体石けんのみの値(基準値)より低く、過炭酸ナトリウムを併用するだけでは硬度による洗浄力の低下を補えないことがわかった。しかし、洗浄時間を60分にしたところ、基準値よりも高くなった。このことから、高硬度の場合、過炭酸ナトリウムを併用し洗浄時間を長くすることが洗浄力を高める有効な方法であることが示唆された。
  • 柚本 玲, 矢中 睦美, 小林 未佳, 若月 宣行
    セッションID: 3J-05
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的 編地の生産現場では、編成後に洗浄仕上げにより編目や風合いを整える。これは技術者により経験的に実施され、仕上げ条件と編地の性能の関係は明らかになっていない。そこで本研究では、洗浄条件を変えることにより、編目や寸法がどのように変化するのかを明らかにすることを目的とした。
    方法 機械編みで編目の引き込み量の調節項目を度目値といい、度目値が高いほど編目が大きいことを示す。今回は横編機により、3種の度目値(30、55、80)のウール100%平編み地を非イオン界面活性剤(以下POE)、市販お洒落着用洗剤(以下FFD)で洗浄したものを試料とした。これらについて、厚さ、糸密度、編目の拡大画像、寸法の洗浄前後の変化を確認した。
    結果及び考察 POE、FFDで洗浄すると、全度目値でよこ方向に収縮し、たて方向に伸びた。平編地はよこ方向に引かれて編成されるため、洗浄によりそのひずみが戻ったためこの変化が起き、編目の拡大画像からも確認できた。FFDの方がPOEよりも寸法変化が小さかった。洗浄によりひずみが戻るが、POEの場合、さらにフェルト化による変形が生ずるためであると考えられる。厚さを比較すると、FFDよりもPOEが厚く、よこ方向の糸密度がPOEの方が大きかったことから、POEでフェルト化により収縮が起きたことがうかがえる。このようにFFDによる洗浄仕上げが編成時のひずみを整えるのにふさわしいことが確認できた。
  • 吉村 利夫, 藤岡 留美子, 山田 陽三, 嘉副 人文
    セッションID: 3J-06
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
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    目的 紙おむつは使い捨ての手軽さ,すなわち洗う手間がなく,常に新品を用いるので衛生的であることから重宝され,乳幼児に加えて近年は,大人用の使用量が着実に増加している.使用済みの紙おむつは通常,焼却処理がなされているが,大量の水分を含んでいるため,高温で焼却するためには重油などの助燃剤などを必要とし,環境負荷の大きな処理がなされている.一方,福岡県内の企業では,使用済み紙おむつのマテリアルリサイクル事業が,全国で唯一実施されている.水溶化処理された紙おむつから,パルプが分離・回収され,建築資材用途に再資源化されている.
    方法 紙おむつ処理コストの低減を目的として,パルプ以外の紙おむつ成分,すなわち,高分子吸収材やプラスチック類の再資源化・有効利用について,検討を進めている.これらは従来,固形燃料としての再利用がなされるのみであったが,高分子吸収材の再生やプラスチック類をプラスチックとしてマテリアルリサイクルすることによって,採算性の向上が見込める.
    結果 高分子吸収材の再生はアルカリ処理による検討が,プラスチック類のマテリアルリサイクルは組成の解明がなされている.発表当日はそれらの検討の進捗状況を報告する. 使用済み紙おむつ中の全成分に対してマテリアルリサイクルが達成できれば,今後多くの自治体において,紙おむつのリサイクルが波及していくものと期待される.
  • 高山 紗季, 藤岡 留美子, 吉村 利夫, 山田 陽三, 嘉副 人文
    セッションID: 3J-07
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的 トータルケア・システム株式会社(以下TCS)は,使用済み紙おむつのマテリアルリサイクルの事業化を実施している.紙おむつ中のパルプ成分は分離・回収した後,建築用資材として再利用されている.一方,プラスチック成分は,固形燃料として利用されるに留まっている.そこで本研究では,プラスチック成分のマテリアルリサイクルのための第一段階として,その組成を明らかにするための検討を実施した.
    方法 ポリエチレン(PE),ポリプロピレン(PP)については,示差走査型熱量測定(DSC)による定量を試みた.ポリ塩化ビニル(PVC),接着剤,パルプは溶解性の違いによる分別を実施した.分別に使用した溶剤はテトラヒドロフラン,トルエン,N,N-ジメチルアセトアミド/塩化リチウムである。
    結果 DSCによるPEとPPの定量は,測定に用いる試料量が微量で,取り出す場所による試料むらが大きく再現性に乏しかったために断念した.一方,溶解性による分別においては,再現性良く組成比率を求めることができることが判明した.上記のいずれの溶媒にも溶解しないPEとPPについては,目視による分別を実施することで組成を決定した.また,本来紙おむつには用いられていないPVCが含まれていることが判明した.これは,病院などで使用されている使い捨て手袋がPVC製であり,これが混入するためであると考えられた.
  • 末弘 由佳理, 鋤柄 佐千子
    セッションID: 3J-08
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的 ブランド名及び価格を非開示にて行った新生児肌着の触感評価1)では,国内の子供服ハイブランド2社の肌着は「しっとり」「肌触りのよさ」「なめらかさ」等,選択時に重要な触感と「購入(したい)」において3位以下となった. 本研究では,ブランド名と価格を明示して触感評価をし,ブランド名,価格が触覚に与える影響を検討することを目的とする.
    方法 日本の子供服ハイブランド2社の新生児肌着, 子育て経験者に対する使用した新生児肌着調査の結果,上位3種, オンラインショップ売れ筋ランキング上位7種の中で最も「しっとり」の強い試料1種の計6種1)を試料とした. 女子大生20名を対象に, 順位法により, 「しっとり」「肌触りのよさ」「やわらかさ」「あたたかさ」「なめらかさ」「購入」「厚さ」について官能検査を実施した. 得られた値とブランド名,価格を非開示で行った検査の値1)をノンパラメトリック手法ウィルコクスンの順位和検定により解析した.
    結果 ハイブランド2社の新生児肌着は全ての項目において,非開示の評価よりも順位が上昇した. ハイブランドの肌着において,1社は「購入」,もう1社は「あたたかさ」「なめらかさ」で開示・非開示間の順位に,「しっとり」においては,ハイブランド以外の肌着1種に有意差が生じ,ブランド名及び価格が評価に影響を与えたことが示唆された.
    [文献]1)末弘由佳理, 鋤柄佐千子; 日本家政学会第68回大会研究発表要旨集, 95
    ※本研究は文部科学省科学研究費若手研究B(課題番号25750019)の助成を受け, 実施した.




      
  • 與倉 弘子, 鋤柄 佐千子
    セッションID: 3J-09
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的  滋賀県湖西の伝統織物である高島ちぢみは,盛夏に最適な男性用肌着素材としてとして愛用されてきた.本研究では,婦人用薄手布としての高島ちぢみの触感評価について,女子大学生の主観評価の特徴・布の織構造との関係を検討し,若年層にも好まれる高島ちぢみの織設計に関する基礎的指針を得る.
    方法  市販の高島ちぢみ12種類と糸使い・織設計を揃えて系統的に試作した高島ちぢみ12種類を試料とした.ブラウス等に用いる場合を想定して,手触りによる触感の主観評価を行った.評価はSD法による5段階評価,評価者は女子大学生(18歳~24歳),夏季23名と冬季21名,試料を見ながら評価する場合(触覚+視覚)とカーテンで視覚を遮った状態での評価(触覚)を実施した.
    結果  SD法による触感評価では「やわらか」,「なめらか」,「シャリ感がない」と評価された試料がより好まれ,着てもよいと評価される傾向にあった.女子大学生にとってシャリ感は必ずしも好まれる触感ではなかった.また,本研究の範囲では,触感評価に及ぼす視覚や評価季節の影響は明確ではなかった.布の織構造との関係は,布の厚さ(T0)の値が小さい薄い布が好まれ,着てもよいと評価される傾向が見られた.高島ちぢみの特徴であるしぼとシャリ感を残して,若年層にも好まれる婦人用ブラウス地として用いる場合は,細番手の糸を用いたエンボスファインピケ加工(17P)が適していることが示唆された.
  • 小野寺 美和, 谷 明日香, 竹本 由美子
    セッションID: 3J-10
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】東日本大震災以降注目されている蓄光材だが,蓄光機能を施したエコテックス認証の衣服は未だになく,暗所での災害救助や情報収集,避難が迅速になることから期待されている.そこで本研究では,蓄光布を用いた衣服設計の実現を目的に,着用や洗濯によってどの程度の耐久性を維持できるのかを検証するとともに,表面状態の変化がりん光輝度に及ぼす影響について明らかにした.
    【方法】(有)ヒロタ工織提供の蓄光糸を複合した4種の各糸(集束撚糸, 蓄光リリヤン4mmテープ, 反射×蓄光, 蓄光起毛糸)を用いて,平織,綾織,朱子織の蓄光布(縦60cm×横30cm)を卓上織機で作製し,洗濯試験及び摩耗試験をおこない,試験前後のりん光輝度測定とデジタルマイクロスコープ及び電子顕微鏡により表面状態を観察した.
    【結果】蓄光起毛糸の平織布が最も高いりん光輝度を示し,洗濯試験後には更に数値が高くなったが,摩擦による表面の汚れが目立ちやすくりん光輝度の低下がみられた.また,他の蓄光布も洗濯により外力が加わることでりん光輝度が高くなる傾向が確認できた.蓄光リリヤーンテープを用いた場合,摩擦により表面の繊維が切れて絡み合いピリングが生じやすく,さらに擦れによる汚れも観察されたが,りん光輝度はそれほど低下していなかった.衣服への応用時には,洗濯よりも摩擦による糸や繊維への影響と汚れによるりん光輝度の低下が課題である.
  • 徳丸 絵里香, 藤岡 留美子, 吉村 利夫
    セッションID: 3J-11
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的 当研究室はこれまでに,セルロースと無水コハク酸や無水グルタル酸との反応で,生分解性を有する高吸水性樹脂を得ている.しかし,難溶性のセルロースを特殊な有機溶剤に溶解して合成を行うため,環境負荷やコストの点で課題があった.一方,代表的な水溶性セルロース誘導体であるカルボキシメチルセルロースも,イソプロピルアルコール中,不均一条件下で合成されている.しかし,有機溶媒の使用は環境負荷,コストの点から不利である.そこで本研究では,水系溶媒を用いて低環境負荷高吸水性樹脂が得られるかどうか検討した.
    方法 セルロースは脱脂綿を粉砕したものを用い,クロロ酢酸ナトリウムは過去の検討から固体として添加するために凍結乾燥したものを用いた.反応は55℃で5時間加熱しながら行った.反応生成物は水溶性チェックのほか,FT-IRでの構造確認,生分解性評価を行った.また,反応生成物は全てジビニルスルホンで架橋し,ティーバッグ法による吸水性評価を行った.
    結果 アルカリウレア溶媒中で,クロロ酢酸ナトリウムの添加量を変えながらセルロースとの反応を行い,反応の進行と水溶性,生分解性のある反応生成物を得られたが,高い吸水性を有する生成物は得られなかった.クロロ酢酸ナトリウムの添加量を極端に増やしても吸水性向上は見られなかった.
  • 由利 素子, 近藤 富士子, 小林 沙織
    セッションID: 3J-12
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的 布地の風合いを評価する方法として、人間の感覚を用いた官能検査と測定機を用い評価する方法とがある。毛織物の風合いを官能検査により、視覚が加わることによる評価の影響について調べる。また、官能検査の風合い値と測定機の風合い値との比較を行い、風合い評価法について検討する。
    方法 構成が異なる毛織物7種を用い、手触りの感覚のみと視覚を伴う手触り評価で官能検査を行った。被験者は若年男女40名、評価形容詞対は17項目である。また、KES法を用い風合い値を求めた。
    結果 条件が異なる官能検査2方法の評価項目間の相関性を見たところ、1%または5%以下で相関が見られた項目は17項目中5項目のみであった。視覚が加わり、布地の色や光沢感、毛羽感などの表面状態を見ることで、評価項目によっては、手触り感に影響を及ぼしていると考えられる。評価項目の特性を見るため主成分分析を行った。両方法ともに3成分に分類され、累積寄与率も94%以上と高い値を示したが、各成分に示されている評価項目は大きく異なった。条件が異なると、評価項目によって風合いの捉え方が異なり評価されている。KES法の風合い値との対応については、「はり」「こし」の評価は、官能検査の硬さ、軟らかさに関係する評価項目との対応が見られた。
  • 井上 真理
    セッションID: 3J-13
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的 衣類の中でも肌着は肌に直接触れるため、肌触りは特に重視される性能の一つである。近年、さらなる快適性が求められるようになり、肌触り以外にも様々な機能を付与した肌着の開発が盛んに行われている。本研究では、2009~2013年に市販された肌着を試料として主観評価に対応する測定条件を決定し、客観評価式を開発して、既存式との比較を行った。 方法 2009~2013年に市販された肌着用編布92点を収集し,試料とした。KES-F(カトーテック㈱)を用いて、編布肌着の標準条件[1]に従って力学特性および表面特性を測定した。学生74名を被験者として手触りによる主観評価を行った。さらに、その主観評価値を目的変数とし、力学特性、表面特性を説明変数として重回帰分析を行い、新たな肌着用編布の風合い客観評価式の開発を行った。式の開発にあたり、試料を回帰群(N=56)と計算群(N=36)に分け、回帰群の試料を用いて式を開発し、計算群の試料を用いて開発式の精度を確認した。 結果 既存式と比較し開発式の回帰結果、計算結果の相関係数はいずれも高い値を示した。また誤差を表すRMS値も小さな値であることから開発式は精度の高い式であることが確認された。 文献 坂口ら;編布肌着の客観的品質評価法の開発,繊機誌,39(3),pp.33-50 (1986)
  • 白井 菜月, 小倉 穂佳, 滝本 郁子, 畠山 貴絵, 飯塚 堯介, 濱田 仁美
    セッションID: 3J-14
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的 麻繊維に含まれるリグニンを化学処理により除去することで、苧麻布の改質を試みる。高い強度や吸湿性の良さを維持し、しわになりやすいなどの短所の改善を目指す。
    方法 試料は、麻ブロードを用いた。油分や加工剤を除去する前処理を行ったのち、亜塩素酸ナトリウムを用いてリグニンの除去を0、1、2、3時間と4段階の処理時間で行った。リグニン除去処理後、KES-Fシステムによる力学特性、熱物性の測定、ドレープ特性、防しわ性、吸水性、吸湿性、乾燥性の評価、及び表面観察を行い、苧麻布へのリグニン除去処理の影響を調査した。
    結果 強度や熱物性においては目立った変化はなく、麻本来の特性を維持することができた。通気性と吸水性は大きく向上した。通気性の上昇については、リグニンを除去したことで繊維がしなやかになって織糸が細くなり、織糸間の空隙が増したことによると考えられる。吸水性の向上については、処理により繊維表面の親水性が増したことで、濡れ性が向上したためと考えられる。乾燥速度は、リグニン除去処理によってほとんど変化はなく、良好な乾燥性を維持していた。吸水性は向上し、乾燥性の良さは保てたことで、夏の衣料としてより快適な布になったと言える。本処理では、麻本来の強度を保ち、接触冷感に優れるという特性を維持したまま、更に吸水性、通気性の高い苧麻布に改質することができた。
  • 谷 明日香, 諸岡 晴美, 村上 修一, 富樫 宏介
    セッションID: 3J-15
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的 卵殻膜にはコラーゲンに含まれる多くのアミノ酸を含有しており,皮膚治癒効果があると報告されている.また,リン脂質ポリマーは化粧品やコンタクトレンズなどにも使われ生体親和性の高い素材として知られている.本研究では,皮膚性状の向上とともに夏季の温熱的快適性の向上を目指した衣服素材を開発することを目的に,卵殻膜パウダーとリン脂質ポリマーを用いた加工を行い,その熱水分移動特性を明らかにした.
    方法 ポリエステル/ポリウレタンから成るトリコット編布(ブランク布)に,卵殻膜加工,リン脂質ポリマー加工,卵殻膜・リン脂質ポリマー同時加工,卵殻膜・親水性リン脂質ポリマー同時加工をそれぞれ行った.各試料について,バイレック法を用いて吸水性を測定した.また,各相対湿度下での水分率を測定した.熱水分移動特性の測定にはサーモラボⅡを使用し,不感蒸散および発汗をシミュレーションした方法を用いた.
    結果 卵殻膜加工布,卵殻膜・親水性リン脂質ポリマー同時加工布において吸水性の向上がみられた.また各加工布の吸放湿曲線から,卵殻膜を付与した加工布において高湿環境でブランク布の約2倍の水分率が観察された.発汗シミュレーション実験では,恒率乾燥期で最大熱損失量が観察され,その後,減率乾燥期となり乾燥に至る.吸水性の高かった加工布において最大熱損失量が高く,乾燥時間が短いことがわかり,卵殻膜・親水性リン脂質ポリマー同時加工布の有用性が明らかとなった.
  • 小林 未佳, 柚本 玲, 若月 宣行
    セッションID: 3J-16
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的 ホールガーメント編機によりニットワンピースを製作する場合、一般的には編目の増減により成型する。本研究では編目の増減をせずに、編目の大きさを変えることによって成型する、新しい製作方法の検討を行った。方法 ホールガーメント横編機MACH2X(8G)およびデザインシステムSDS ONE APEX3(SHIMA SEIKI)により、糸2/48(毛100%)を用い平編みで製作した。編目の大きさは、編機の糸引込み量の設定項目である度目値により変更した。肩からワンピース裾までのよこ方向の編目数を同じにし、度目値設定の変更により編目の大きさを変えた。この変更により起こる寸法変化を利用してワンピースの成型を試みた。ワンピースを円筒に見立て、前身頃と後ろ身頃を同幅で編成した。結果 編成可能な度目値の範囲は度目値30~80であった。度目値10ごと(30、40、50、60、70、80)の1目あたりのたてよこの編目長さを測定し、度目値と編目長さの関係式を得た。肩からウエストまでの前後身頃幅は、仕上り肩幅の長さとし、本編機で編成するのに最適な度目値50で編成した。この場合に必要なよこの編目数を関係式から算出し、編目数136で編成した。裾に向かって幅が大きくなるようにウエストから度目値50から10ずつ80まで上げた。その結果、上半身は身体に沿い、ウエストから裾に向かって広がるフレアスカートワンピースを成型することができた。
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