一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
70回大会
選択された号の論文の293件中151~200を表示しています
ポスター発表
  • ー昆虫に着目してー
    渡部 美佳, 細井 香
    セッションID: P-158
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
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    「目的」:「昆虫」は、子どもの身近な環境の一つである。それらを捕獲したり、観察、飼育したりするといった光景が日常的に見られる。その一方、保育者養成校で学ぶ学生の昆虫に対する苦手意識は高く(栗原他 2008,木村他 2016)、子どもの意識との乖離がみられる現状がある。これまでの子どもと虫との関わりに関する研究は、山下(2005)のように「小さな無脊椎動物」を含めてムシ類として扱っているものが多い。しかし、保育において利活用されている昆虫を生物学上の種のレベルで明らかにすることは、各々の昆虫の特徴を掴み、それらを有効に活用した保育の展開へと繋げられる可能性があるのではないかと考えた。そのため本研究では、保育内容(環境)の教科書でとり挙げられている「昆虫」の実態調査を行い、より具体的に保育で用いられる昆虫を明らかにすることを目的とした。
    「方法」:国立情報学研究所情報サービスWebcat Plusにおいて抽出した、保育内容(環境)教科書20冊を収集した。これらの教科書の中から「昆虫」に関わる語を抽出し、それらを昆虫の分類に従って整理した。
    「結果」:昆虫に関する記述がされていたページ数は4ページから48ページと教科書ごとに大きく異なっていた。また、総称が約半数で用いられていた。その一方、チョウ目やカメムシ目に含まれる昆虫は、標準和名で記述されている割合が高かった。
  • -料理本分析とインタビュー調査から-
    黒川 衣代, 大森 桂
    セッションID: P-159
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
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    目的 家事能力は,男女を問わず,一生を通じて必要な能力である.とりわけ食事作りは,頻度において他の家事の比ではなく,健康や命に関わるので,最重要の家事である.現実の家庭生活では女性が担っていることが多いが,男性が高齢期に独居となる可能性もある.そこで,本研究では,普段あまり調理をしない男性の調理能力を考慮した,料理作りの意欲を高める調理のアプローチや要因を探ることを目的とした.
    方法 目的を達成するために,男性向け料理本(21冊)の分析と60歳前後を主な対象者として半構造化されたインタビューを行った(2016年7月~9月,20名).インタビュー内容は属性の他,学校における調理の学習,現在の調理状況,栄養・調理に関する知識,自分の調理能力の認識,レシピの理解力,料理作りの障害となっている事柄,料理作りの意欲を高めてくれる事柄等である.
    結果 男性向け料理本21冊を分析した結果,様々な料理器具や手順が必要な作り方が7割強を占め,「初心者」「入門」「簡単」「自立支援」というキャッチコピーとは矛盾していた.インタビュー調査からは,50歳を過ぎたあたりから調理に関心を持つようになり,「料理をしたい気持ちはある」が,多くの調査協力者は知識も技術もない現状では行動に移すことが難しく,実際に自分で食事を用意する段階には至っていないことが分かった.また,意欲を高める要因が心理的・人的つながりであることが推察できた.
  • マイクロティーチングの省察を通して
    駒津 順子
    セッションID: P-160
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
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    目的 家庭科教員の養成の立場からの提言では、家庭科教育において不得手な分野の少ない力のある教員を養成するための改善策があげられている。児童・生徒や教員の職場環境などを取り巻く種々の教育課題に対応した教員養成に対し、教科内容学の深化は一層重視されるべき視点と捉えられる。本研究では、小学校教員養成における家庭科の授業実践力の向上を目指し、模擬授業の省察から学生が抱える課題を捉え、家政学の視点における課題の分析を行った。
    方法 初等家庭科教育法を受講した学生を対象に、模擬授業として受講生全員が10分間のマイクロティーチングを実施した。受講生は事前に学習指導案、学習展開案、板書計画を提出し、当日は児童役として授業を受け相互評価を行った。授業後は、相互評価を元に、4つの観点に基づき行った省察を分析し、課題を抽出した。
    結果 「教材・学習課題」の観点では、衣服の清潔と洗濯の内容では、「体操服で導入したことは身近に感じられた」一方で「めあてが難しく感じられた」と評価し、「学習展開案とはかなり異なった意見に戸惑った」ことを原因としてあげている。また、1食分の献立を考える内容では、「実施しやすい単元かと思ったが実際にしてみると難しかった」と評価し、「内容自体はそれほどでもないが、どのように説明や発問をすれば良いか難しかった」ことを原因にあげている。教材の内容の深化により学習展開に予測が立てやすくなることに対する課題が示唆された。
  • 齋藤 益美
    セッションID: P-161
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
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    目的:衣服を自分で作る、母や祖母に作ってもらうといった時代は遥か昔のこととなり、ミシンがない家庭が一般的になってきている。既製衣料の充実、中でもファストファッションの流行によって、衣服を作ることだけではなく、修繕することも少なくなってしまった。糸と針を使う機会はなくなってきている。
     本学生活科学専攻へ入学する学生も例外ではない。しかし、家庭科教員を目指す学生が多い本専攻では被服製作に必要な技能が必要となる。それらの技能の習得と、教員としての資質を養うために行っている学生主体の「ECO+ものづくりプロジェクト」における活動を通して培われる能力と、どのような活動を行うと効果的かを考える。
    方法:活動スタートから5年の活動内容と成果、学生アンケートから見る活動の成果と今後の課題を考察する。
    まとめ:3年生の意識の変化が現れた。また、活動開始から年々活動に対しての意欲や興味が増す傾向にある。上級生との関わりが深まり情報交換の重要性、「縫う」技術の上達を感じている学生が多いことがわかった。
     グループ活動やワークショップの開催、クラフト店への出店などのイベントを通し、企画・運営力、コミュニケーション力、粘り強く取り組む力等を身につけることは教員の被服製作技術の向上だけではなく、学級運営にも必要な力となるであろう。
  • お菓子を題材に減災の大切さを学ぶ
    仲島 聖子, 延原 理恵
    セッションID: P-162
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
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    目的 近年,震災や水害などの自然災害が頻繁に起こり,多くの被災が報道されている.いつ起こるか分からない災害を防ぐことができないが,十分な対策を行うことで災害によって生じる二次災害を減らすことができる.また,対策を取っていない人は多く,まして子どもが減災の大切さを理解できるような災害対策はほとんどできていない.そこで,本研究は子どもの好きなお菓子を題材に災害や減災について学ぶ授業の展開を考え,高校生が学び伝えることで,高校生を中心に地域を巻き込んだ減災教育を検討することを目的とする.
    方法 授業は,災害や減災,佐用水害について外部講師から学び,災害の恐ろしさや減災の大切さ,日常の有難さに気付かせる.その後,小学校1年生を対象に災害や佐用水害、減災について紹介し,お菓子を使って非常持ち出し袋を製作した.製作した減災リュックを地域のファッションショーで披露して地域に紹介した後,お菓子開きをして減災教育は終了した.この授業は,兵庫県立佐用高等学校2年生35名,佐用町立佐用小学校1年生35名を対象に1年間を通して行い,授業前後の感想文等の比較を行った.
    結果 高校生は,災害や防災を学ぶだけでなく,地域の災害や復興に関しても学ぶことができた.小学生は防災の大切さだけでなく,日常があることの幸せまでも気づくことができた.また,減災教室を通して,小学生や高校生,地域の方が一緒に減災について考える交流の機会をもつことができた.
  • 佐藤 ゆかり, 藤井 和子
    セッションID: P-163
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
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    目的 ARAHE2017におけるシンポジウム「ロボットによる生活支援」の開催や家政学とロボティクスの融合を図ることを目的とした研究会の実施等,最先端技術を日常生活に導入及び活用するための議論が始まっている.他方,学校教育ではICT等の活用・充実に加えて,技術に対する科学的素養を全ての子どもに育んでいくこと等が求められている.子どもの日常生活そのものに関わる学習を展開する家庭科教育ではこのことをどのように考えて教師教育を行うべきなのであろうか.このような問題・関心から本研究では,最先端技術の一端を知り得る機会となる研究会を実施し,その会への参加者を対象とした調査から,子どもに科学的素養を育むことができる教師教育のための家庭科教育の課題について考察することを目的とした.
    方法 「日常生活」,「ICT」をキーワードとする研究会を2017年11月と12月に実施した.調査内容は基本属性,ICT等の学校教育での活用場面,活用上の課題等であり,記述内容のカテゴリー化を行った.
    結果 科学的素養を子どもに育むことができる教師教育を行うために,家庭科教育では日常生活をどのように捉えるか,科学技術の発達が生活の質の向上にどのように寄与するか等の内容を改めて検討し,学習内容に反映させることが求められると考える.
  • 三宅 元子, 白井 靖敏
    セッションID: P-164
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
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    目的 消費者教育では,公正かつ持続可能な社会の形成に積極的に参画する力の育成を目標としている.目標達成のためには個人的及び社会的意思決定能力が必要であり,大学での主体的な学びがその基盤作りとなる.そこで,アクティブラーニング型授業の一環としてプレゼンテーションとレポート課題にルーブリック評価を導入し,効果を検証する.

    方法 「消費生活論」の第8回「持続可能な社会を構築するエシカル消費」で実施後,アンケート調査を行った.評価は,「発表に対する意欲が向上した」等17項目について「非常に思う」から「まったく思わない」までの5件法とした.対象は大学3年生 49名(女性)であり,実施期日は2017年6月とした.
    結果 ルーブリック評価の経験者は,半数以下(44.9%)であった。今回の評価を「効果的」とした学生は83.7%であり,具体的には「発表準備の進め方がわかった」「資料の作り方がわかった」を除く15項目で「非常に思う」「やや思う」をあわせて70%以上であった.特に,プレゼンテーションとレポート課題のいずれも「目標が明確になった」「課題(テーマ)の内容が具体的になった」が80%以上を示した.さらに,プレゼンテーションでは「他者評価がしやすかった」,レポートでは「自己評価がしやすかった」も80%以上を示し,高い評価が得られた.ルーブリック評価は,成績及び課題の目標や評価の視点が明確になることから有効であるとわかった.
  • 手島 彰孝, 好田 年成, 森田 洋
    セッションID: P-165
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
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    農作物に被害を与える要因としてハダニ類が挙げられる。ハダニ類の中でもナミハダニ(Tetranychus urticae)は900種以上の植物に寄生する害虫として知られている。ナミハダニは、主にマメ科作物や果樹などの葉の裏面に寄生して吸汁することにより褐変や落葉などを引き起こす。またナミハダニは薬剤に対して耐性が発達しやすく、防除が困難という点も問題となっている。これよりナミハダニを制御可能であり、なおかつ安全性の高い薬剤の創出が求められている。そこで本研究では多分岐型高級脂肪酸に着目し、ナミハダニに対する防除効果について検討を行った。研究に使用した多分岐型高級脂肪酸は日産化学工業株式会社製のファインオキソコールRを使用した。殺ダニ試験の結果、多分岐型高級脂肪酸はナミハダニし対し高い殺ダニ効果を示すことが明らかとなった。また、各殺ダニ試験の結果より、全てのサンプルにおいて、スプレー散布法による殺ダニ試験の方が、葉片散布法による殺ダニ試験よりも高い殺ダニ効果を示した。また殺ダニ効果の濃度依存性について調べた結果、イソステアリン酸が0.31 %(v/v)の濃度においても補正死亡率100 %と最も高い殺ダニ効果を示した。これより、イソステアリン酸の新規ダニ防除剤としての有効性が示唆された。
  • 丸岡 明希, 好田 年成, 森田 洋
    セッションID: P-166
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
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    目的 チリダニは生体や糞、死骸がアレルギーの原因となることが知られている。近年使用されているダニ防除剤には人体への影響が懸念されるものもあり、効果が高く、かつ毒性の低い新規ダニ防除剤の創出が望まれている。そこで本研究では分岐型高級脂肪酸に着目し、チリダニの一種であるヤケヒョウヒダニの防除効果について検討を行った。
    方法 分岐型高級脂肪酸は日産化学工業(株)製のファインオキソコールRを使用した。殺ダニ試験法は黒い布(45×45 mm2)の上にアース製薬(株)より分譲を受けたヤケヒョウヒダニの成虫30 匹を放虫し、サンプル100 μLを滴下後、接触24 h後に致死判定を行った。忌避試験法は黒い布の1/4区画にサンプル100 μLを滴下し、6 h保存後、1/4区画に成虫30 匹を放虫し、接触3 h後にダニの残数をカウントした。
    結果 イソパルミチン酸K、イソステアリン酸、イソステアリン酸N、イソステアリン酸Tがヤケヒョウヒダニに対し高い防除効果を示した。その中でも特にイソパルミチン酸Kが最も高い防除効果を示した。また、イソパルミチン酸Kの最小殺ダニ濃度と最小忌避濃度を検討した結果、3.2 %の濃度においても殺ダニ効果が一般的な判定指標である50 %を上回り、忌避試験の結果、生ダニのほとんどが薬剤から逃避することが明らかとなった。以上のことから、イソパルミチン酸Kのヤケヒョウヒダニに対する新規防除剤としての利用可能性が示唆された。
  • 林 琴美, 好田 年成, 森田 洋
    セッションID: P-167
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
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    目的 人の体には皮膚常在菌が存在し、中でもMoraxella osloensisは人や動物の口腔、上気道、粘膜などに常在し、皮膚を保護する役割を担っている。一方で洗濯後の衣類に発生する雑巾様臭の原因菌として挙げられる。このため現在、洗濯用洗剤には様々な抗菌剤が使用されているが、より効果が高く、かつ安全性の担保された抗菌剤が求められている。そこで、本研究では分岐型脂肪酸類に着目し、Moraxella osloensisに対する抗菌効果について検討を行った。
    方法 研究に使用した分岐型脂肪酸類(ファインオキソコールR)は日産化学工業株式会社製を使用した。抗菌試験はサンプルと細菌懸濁液を接触させ、10~180分接触後に寒天培地に塗布し、2日間培養後コロニーカウントを行った。
    結果 分岐型脂肪酸であるイソパルミチン酸及びイソパルミチン酸Kは接触60分で6オーダーの抗菌効果を示した。これをカリウム塩としたものでは接触10分で6オーダーの抗菌効果を示した。さらに持続性試験の結果、脂肪酸塩は培養14日間まで生菌数に変化がなかったことから、殺菌的であることが示唆された。また、最小発育阻止濃度(MIC)の結果より、分岐型脂肪酸よりも脂肪酸塩の方がMIC値は小さかった。これよりイソパルミチン酸カリウム塩及び、イソパルミチン酸Kカリウム塩の新規抗菌剤としての有効性が示唆された。
  • 西村 穂乃果, 森田 洋, 好田 年成
    セッションID: P-168
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
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    目的 室内環境を汚染するカビの1つにCladosporium属菌が挙げられる。風呂場のタイルや食品の汚染・劣化を引き起こすだけでなく、ハウスダストアレルギーや日和見感染症などのヒトに対する健康被害を引き起こすことでも知られている。そこで本研究では脂肪酸類に着目し、Cladosporium cladosporioides に対する抗真菌効果について検討を行った。
    方法 脂肪酸類は直鎖脂肪酸塩と多分岐型高級脂肪酸(ファインオキソコールR、日産化学工業株式会社製)を使用した。菌株はCladosporium cladosporioides NBRC 30314を用いた。抗真菌試験法は、サンプルと胞子懸濁液を1:1の割合で10分・60分・180分接触させたものをポテトデキストロース寒天培地に塗布・培養後にコロニーカウントにより生菌数を測定した。
    結果 直鎖脂肪酸塩であるカプリル酸カリウム、カプリン酸カリウム、ラウリン酸カリウム、ミスチリン酸カリウムは10分で4オーダー(99.99%)の高い抗真菌効果を示した。また脂肪酸塩の炭素鎖の長さが抗真菌効果に影響を与えることが示唆された。一方で多分岐型高級脂肪酸のイソパルミチン酸K、イソステアリン酸はほとんど抗真菌効果を示さなかったが、いずれもカリウム塩にすることにより10分で4オーダー(99.99%)の高い抗カビ効果を示した。
  • 山田 夏代, 板橋 未奈, 石田 和夫
    セッションID: P-169
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
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    目的手洗いの目的は目に見える汚れと、外界由来の有害微生物の除去にある。特にノロウイルスの場合患者・保菌者の糞便から手指を介しての食中毒が多く、食品を取り扱う業務においては手洗いの重要性が再び注目されている。本実験では、生菌数およびATP拭き取り検査から手洗いの効果を比較評価した。実験方法手洗い指導を受けていない本学学生23名を対象に実施した。石けんを使った手洗いは「自己流:泡立て15.3秒、洗い21.2秒、すすぎ21.3秒(平均)」「30秒・1回洗い:泡立て20秒、洗い30秒、すすぎ20秒」「30秒2回洗い:泡立て~すすぎを2回繰り返す(大量調理施設衛生管理マニュアル準拠)」の3通りである。手洗い前は右手、手洗い後は左手からGlove juice法に従って抽出回収した溶液を検液として生菌数、ATPの測定に用いた。結果(1)生菌数:3通りの洗い方全てにおいて、手洗い前後の生菌数は10CFUであり、有意な差はなかった。(2)ATP:3通りの洗い方全てにおいて、手洗い後に有意な減少があった。(p<0.01)(3)生菌数とATP値の間に有意な相関は無かった。まとめATP値の有意な減少はATPを含む汚れ(有機物+一過性微生物)の洗浄除去によるものであり、手洗いの入念度が関係する。生菌数に有意な差がなかったのは、手洗い後に皮膚深層部から湧出して来る膨大な数の常在微生物に相殺された形になったものと推察された。
  • 影山 志保, 広井 勝, 束原 史華, 緑川 洋一, 諸岡 信久
    セッションID: P-170
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
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    目的 2011年東日本大震災以降、福島県郡山市にある本学は放射線測定施設を整備し、放射線に関する専門知識や技術を導入した教育と地域の食品や農産物、環境試料などの放射能分析を行っている。今回の発表では、2013年から2016年に本学で測定したきのこのセシウム濃度を報告する。
    方法 きのこの産地と試料数は福島県1587、宮城県57、栃木県52、岩手県および埼玉県8、青森県および富山県1の合計1710であった。きのこは付着した土壌等の汚れを落とし、0.5cmの正方形に切り、専用の測定容器に詰め放射線の分析試料とした。放射線の測定はオートガンマカウンター(パーキンエルマー)を用い、60分測定した。結果はセシウム134とセシウム137の合算値で示した。
    結果 福島県のきのこの放射性セシウムの最大値は、2013年は飯館村産アミタケで33,003Bq/kg、2014年は相馬市産のムラサキアブラシメジモドキで35,456Bq/kg、2015年は飯館村産のコウタケで62,963Bq/kg、2016年は飯館村産のムラサキアブラシメジで11,399Bq/kgであった。また、きのこの放射性セシウムの平均値は2013年が1,631Bq/kg、2014年が2,040Bq/kg、2015年が2,858Bq/kgおよび2016年が1,583Bq/kgであり、東日本大震災以降年数が経過してもきのこの放射性セシウムに大きな変化が認められなかった。
  • 山田 直子, 後藤 のり子, 宮澤 洋子, 土田 満
    セッションID: P-172
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
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    目的 食物アレルギー(FA)児の母親における負担が大きいことが報告されているが、QOL、育児ストレスに関する報告は限られている。QOLについては一定の見解が得られておらず、育児ストレスについては家族の役割調整や相談援助の必要性が示唆されている。今回、FA児を持つ母親へのサポート体制を明らかにすることを目的に、QOL、育児ストレス等を検討した。
    方法 A県B市内の4保育園に通園する児童の母親を対象とし、2017年3~4月にアンケート調査を実施した。FA群18名と非FA群84名におけるQOL(WHOQOL26)、育児ストレス(養育意識・行動尺度)、食生活負担等を比較検討した。
    結果 母親のQOLは、全年齢(1歳1ヶ月~6歳11ヶ月)では「主観的な健康状態」で、FA群が非FA群より有意に高く、「精神性・宗教・信念」、「思考、学習、記憶、集中」はFA群が低い傾向にあった。3歳未満では、「社会的関係」で、FA群が有意に低かった。育児ストレスは、全年齢では、因子分析により抽出された4つの下位尺度でいずれも有意差は認められなかった。3歳未満では、「育児生活のストレス」でFA群が低い傾向にあり、「育児のために自分は我慢している」項目が有意に低かった。食生活での負担は、全年齢では、FA群で食品の原材料表示を気にしているが、友人宅へ遊びに行く傾向が認められた。FA児の特に3歳未満を持つ母親におけるサポートの必要性が示唆された。
  • 食種・治療別の比較
    古川 香, 田中 隆介, 城田 直子, 峯木 眞知子
    セッションID: P-173
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
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    【目的】
    都内2病院の入院患者331名を対象とし、病気後の味や匂いの感じ方について病気前と比較したアンケート調査を行い、第1報で報告した。その中から、高血圧・心臓病食、糖尿病食の喫食患者、 抗がん剤治療および透析患者を抽出し、食事や味覚・嗅覚状況を分析した。その分析より、食種別に病院食を作成すべきかどうかを検討する。
    【方法】
    入院患者331名(回収率は67.7%)を対象としたアンケート調査を留置き法により実施した(調査時期平成28~29年)。高血圧・心臓病食(高心群:26名)、糖尿病食(糖尿群:17名)および抗がん剤治療患者(抗がん剤群:14名)、透析患者(透析群:15名)を抽出して、分析した.
    【結果】
    食欲があると回答した患者は、高心群61.5%、糖尿群82.4%であったのに対し、抗がん剤群35.7%、透析群33.3%であった。食欲がないと回答した患者は、高心群、糖尿群は少なかったが、抗がん剤群28.6%、透析群33.3%では多かった。抗がん剤群、透析群では、「食事量が減った」「匂いが気になる」「味の感じ方が変わった」「味がわかりにくい」などの回答比率が高かった。病気後の味の感じ方では、塩味、苦味、辛味がわかりにくくなったと回答した患者が多かった。抗がん剤群では、酸味とうま味が敏感になったと答えた患者が多かった。 味については、食種別に注意する必要があると考える。
  • 石垣 和恵, 村山 良之
    セッションID: P-174
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
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    目的 本研究は、中学校・高校の防災教育と防災管理の現状を把握し、防災の視点を取り入れた家庭科教育プログラム開発のための基礎資料とすることを目的とする。

    方法 2017年3月、山形県内の中学校および高等学校防災担当者を対象に、郵送法による質問紙調査を実施した。調査内容は避難訓練の内容、防災教育に関する職員研修、災害時の備え、防災教育の内容等である。回収数は中学校41校(41%),高校31校(51%)である。

    結果 教職員向けの防災教育研修の実施率は中学校44%に対して高校は29%と低く、また研修の内容は中・高ともに不審者侵入対策、火災、地震が多く、津波、洪水などは少ない。必要とする教職員研修の内容として、地震、火災、不審者侵入に次いで避難所支援が挙げられたがその割合は29%である。学校が避難所として利用されることを想定した備えは、中学校の63%、高校の42%が行っているとし、その中身は食料備蓄などである。防災教育の実施率は中学校の教科教育で高く66%、高校では45%であり,中学校では理科42%、家庭科と保健体育ともに32%、社会科24%、高校では家庭科23%である。防災教育実施上の課題は時間が十分に取れないことがもっとも多くあげられたが、指導方法がよくわからない、適切な教材がないとの回答が高校で多い。以上より,家庭科では防災の視点で生活力を高める学習・教材の提案をすべきである。
  • 宮城県石巻市での調査
    佐々井 啓, 久慈 るみ子, 菊池 直子, 山岸 裕美子
    セッションID: P-175
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】東日本大震災後、被災者の生活支援に関して様々な観点からの研究がなされてきたが、衣生活に関する取り組みについては十分にし尽くされているとは言い難い。そこで標題の内容のうち、今回は衣服が独自にもつ精神的機能に着目し、震災から6年以上が過ぎた今だからこそ可能な、衣服に対する「思い」を中心に据えた調査を行った。
    【方法】石巻市の仮設住宅集会所において手芸教室を開催し、参加者にインタビューを行った。また、復興公営住宅の集会場での活動に参加している利用者に対してもインタビューを実施し、実際の衣服を提示していただきながら心情を傾聴した。
     インタビューの内容は、①震災によって失われた服飾に対する思い②衣服に対する考え方の変化③表面にはあらわれない下着についての質問④和服に対する興味などである。特に④は、石巻市には古くから呉服店が多くあり、和服の文化が存在することから設けた項目である。実施期間は2017年9月~12月である。
    【結果】被災者にとっての衣服とは、被災した当時は生存保証としての「着る」モノでしかなかった。しかし、歳月を経て生活の軌道を取り戻すことにより、衣服に対する各自の考えが構築され、自身のために「装う」衣服とへと変化している。そのため、衣服独自の機能を活かすことにより、今後の復興公営住宅におけるコミュニティの形成手段としても有効であることをつきとめた。
  • -岩手県釜石市・大槌町での調査-
    菊池 直子, 佐々井 啓, 久慈 るみ子, 山岸 裕美子
    セッションID: P-176
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
    会議録・要旨集 フリー
    目的 東日本大震災後,被災者の生活支援に関して様々な観点からの研究がなされてきたが,衣生活については十分にし尽くされているとは言い難い.そこで,今回は衣服が独自にもつ精神的機能に着目し,震災から6年以上が過ぎた今だからこそ可能な,衣服に対する「思い」を中心に据えた調査を行った.また,生活再建過程における手芸活動が果たした役割についても調査した.
    方法 釜石市の仮設団地内サポートセンター,および大槌町の仮設団地集会所において衣生活に関するインタビューを行った.インタビューの内容は,震災によって失われた服飾に対する思いや,衣服に対する考え方の変化などである.また,大槌町の「手作り工房おおつち」を対象に,手芸活動の契機や活動による生活の変化などについてインタビューを実施した.実施機関は2017年9月~10月である.
    結果 生活のすべてを流失した被災者の中には,あまりの喪失感から愛着や思いも全くないという回答があった.その一方,流失した衣服を諦められず何度も思い出すという回答もあった.震災から年数が経ち,高齢女性の服装が鮮やかな色調に変化したという回答が複数認められた.明るい気持ちになりたいという思いが服装に表れたと考えられる.また,手芸活動については,支援物資の衣服のお直しや布製の袋物が必要とされたことから始まったこと,徐々にコミュニティが形成されたこと,生きる活力につながったことなどが確認された.
口頭発表
  • 神戸市立和田岬小学校における実践結果より
    白川 未希子, 梶木 典子
    セッションID: 2E-01
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
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    【目的】子どもが、災害から身を守るためには、日頃から防災の意識を高めておく必要があり、その手段の一つとして「地域安全マップ活動」がある。本研究は小学生を対象として「防災に着目した地域安全マップ活動プログラム」を開発、神戸市の小学校で実施し、事前・事後・追跡アンケートを通して、その学習効果を検証することを目的とした。
    【方法】2017年11月17日に神戸市兵庫区の神戸市立和田岬小学校区において、5年生34人を対象に地域安全マップ活動を実施。活動内容は防災について楽しく簡単に学べる構成とした。本研究で開発したプログラムの有効性と学習効果を検証するため、活動実施前と実施後、そして活動実施2週間後の計3回アンケート調査を行った。
    【結果】本プログラムは、事前学習、まち探検、マップづくり、発表で構成し、少人数で活動することで、子どもたちが主体的に学べるよう工夫を凝らした結果、全ての活動内容で児童らの評価は高く特にまち探検の評価が高かった。事前・事後・追跡アンケートによる学習効果については、全ての項目で学習効果が上昇、持続していた。研究で開発したプログラムは一定の学習効果を得たことが確認できた。今後の活動をより良いものにするため、防災に関して児童の知らないこと・知っておいて欲しいことを事前に明確にしプログラムに取り入れていく必要があるといえる。

    本研究は神戸女子大学家政学部山田麻未(平成29年度卒)との共同研究である。
  • 田中 麻里, ジャイムック パポーン
    セッションID: 2E-02
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
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    目的 防災教育において重要な要因はいくつかあるが、自然の恩恵を享受しながら、自分が住む地域への愛着や誇りを持ち、災害時には主体的に避難できるようにすることが大切である。そのためには、過去に実際にあった災害について知ることが重要であり、日本国内ではいくつかの研究がみられる。本研究では、洪水が頻発するタイ・チェンマイ市内の住宅団地住民を対象として、過去の洪水時の対応に関する実態調査を行い、その結果を含めて子どもたちへ洪水経験を伝承する防災絵本の制作ワークショップを行い、その効果を検証することを目的とする。

    方法と結果 チェンマイの住宅団地住民を中心に(66名)過去の洪水時の対応についてヒアリング調査を実施した。その結果を盛り込んだ防災絵本の制作ワークショップを実施した。制作ワークショップの参加者(小学生を中心とする13名)の記入シートをもとに考察を行った。参加者から、今回のワークショップで初めて洪水のことを知った、洪水の原因、避難の様子、避難所として使われた集会所、地域で行われる行事や助け合いなど多くの場面が印象に残った、さらに、住宅団地の歴史を初めて知った、もっと地域のことを知りたいなどのコメントが得られ、洪水の経験を伝えるだけでなく、自分が住む地域への興味や関心を高めることについても一定の効果が検証できた。
  • 対馬と西表のヤマネコ保全の事例
    柳井 妙子, 栁井 徳磨
    セッションID: 2E-03
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
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    (目的)
    地域に存在している絶滅危惧種を地域資源と認識し、地域の活性化の要因の一つと考えているか否かをアンケート調査し、同種の絶滅危惧種の存在する地域を比較検討し知見することを目的とする。
    (方法)
    対馬と西表の住民に、絶滅危惧種であるヤマネコに関する同一のアンケートを実施した。対馬においては、地域のイベント(平成29年6月)の会場で無差別にアンケートに回答してもらい、西表においては、エコクラブの発表会(平成29年11月)を実施した小学校において参加した人たちにアンケートに回答してもらった。
    (結果)
    対馬でも西表でも、ヤマネコの死亡原因のトップが交通事故死である。そのため、どちらの地域においても交通事故死を防ぐための住民への呼びかけがなされている。対馬では、環境省である対馬野生生物保護センターが中心となって看板や標識、キャンペーンを実施している。西表では、小学校の総合の時間を活用して、児童自身がヤマネコの交通事故を防ぐための工作を考え、其々がその考えを各家庭に持ち帰って広めている。自動車のスピードに関して言えば、対馬では、密集地が時速40㎞となり、西表では、時速30㎞となっている。どちらの地域においても、絶滅危惧種であるヤマネコを保護したいという思いは一致している。
  • 辻本 乃理子
    セッションID: 2E-04
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
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    【目的】民間組織の自然環境保全活動と地域コミュニティの関係を探るべく、英国の自然環境に関する活動を行う非営利組織の活動に注目した。英国Wildlife Trustsにおける活動の指針となるLiving Landscapesがどのような経緯で作成されたかを中心に、その理念と活動内容について考察する。【方法】調査対象は、英国において自然環境保全保全に関する活動を行うWildlife Trustsを対象とした。調査方法は、Wildlife Trustsの政策担当者およびLiving Landscapesの実施担当者にヒアリングを行った。調査期間は2016年10月下旬から11月初旬である。【結果】Wildlife Trustsは英国において本部と支部で活動を行っている。本部は、各地支部の新しい考え方や活動を踏まえ、それに「Living Landscapes」という名称をつけた。Living Landscapeの活動の芽は各支部からスタートしており、本部基本となる共通項をまとめ、Living Landscapesという全国的プロジェクトを動かすためのフレームワークを提供した。本部は各支部の地域の実情に合わせた活動を行ってすべきであるという方針であり、各地域の自然環境と地域コミュニティの現状に合わせた活動を展開する中で、組織の活動目的、活動方針が地域で展開されていることが分かった。
  • ー宮崎県南部地域の隠居家調査報告ー
    米村 敦子
    セッションID: 2E-05
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
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    目的 本研究は南九州に継承される隠居家について住文化の視点から探求するものである。本報では宮崎県南部5市2町で実施した隠居家調査の結果を報告する。 方法 従前の継続研究結果を基に、調査地に宮崎県日南市・串間市・えびの市・小林市・都城市・三股町・高原町を選定し、782全自治区で「隠居家と住文化に関する地区調査」を実施した。有効回答540(回収率69%)、調査期間2016年3月~2017年9月。 結果 5市2町全地で「隠居家が今もよく残る」9%、「わずかに残る」29%、「残るが空き家が多い」22%、「今はほとんどない」27%、「昔も今もない」8%と、隠居家の伝統がみられた。隠居家の建物配置は「本家(主屋)と別棟(離れ)」77%、「本家に付設」19%、「厩や納屋の一部」7%等がある。隠居家は農家住宅に多く、隠居家(「インキョ」と呼ぶ)と本家(「トジュ」と呼ぶ)の生活は「食事も家計も別々」「住み方として現代も合理的」とされていた。隠居家を有す理由として、農業の協働と継承と親子の独立性の両立、旧薩摩風習の影響等があがっている。地区評価は人・自然・文化に集中し、各地で過疎化・少子高齢化が進む中、防災・交通道路・地域施設整備等の課題を抱え、隠居家も空き家が増えて、住文化の衰退を危惧する意見もみられた。 (科研費助成研究 基盤研究(C) 代表:米村敦子)
  • 都営戸山ハイツ居住高齢者を対象に
    古賀 繭子, 定行 まり子
    セッションID: 2E-06
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
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    目的 公営住宅は高齢の長期居住者が多い一方で、生活用品は増加傾向にあるため、衛生的で健康的な居住環境維持のためには生活用品の整理が必要となる。そこで本研究は高齢居住者の住まいにおいて、増加する生活用品の種類及び配置を把握すると共に、高齢者のライフスタイルを明らかにすることで、住戸内居住環境整備に必要となる要件を抽出することを目的とする。
    方法 調査対象は都営戸山ハイツ居住者9名とし、2017年2月から6月に直接訪問による観察及び聞き取り調査を実施した。対象者1名に対し、2名の調査員が訪問し、約2時間、観察及び聞き取りを行った。
    結果 日常的に使用していない居室は物置化し、不使用品増加が明らかとなった。同様にバルコニーも不使用品の仮置きが目立ち、日常的に目に入らないため、仮置きが長期化し、結果、処分を負担に感じることから不使用品が増加している。また、台所は家族人数が多かった時期に使用していたものの、現在は不使用の鍋や調理道具、食器等で収納が占領され、使用している食器の収納は限定されている。そのため、日常的に使用する調味料、飲料、食料品等が床に直置きされ、緊急避難時に危険な状態となっている。また衣類の増加が著しい世帯は、衣類の室内への溢れ出しがみられ、ベッド等就寝場所上部に衣類が吊るされ、安全とは言い難い状態であることが明らかとなった。
  • 桂 重樹
    セッションID: 2E-07
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
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    目的 運気の良い家、都市を造る技法である家相の考え方が、現代の住宅にどの程度影響を与えているかについて検討した。仙台市内に建てられている、戦後から現代までの住宅を対象として、吉凶を数値化して家相診断を行い、1994年頃の家相ブームの影響や住まいの造りに対する家相の取り入れられ方を年代別、地区別に調べ、家相と住宅の築年数などとの関係を明らかにする。

    方法 近代住宅にも適用できる家相術を建築学的視点から年代別に解説している清家清の著書「家相の科学 建築が発見したその真理」をもとに、環境、敷地、間取り、構造、設備の5つの分類から成る家相術100項目について検討し、根拠が明確でないものや現代の住宅にそぐわないものは除外した68項目について吉凶に基づく家相診断表を作成した。この表に基づいて、それぞれの住宅における吉、凶に該当する項目数をカウントして吉を正、凶を負として合計した数値をその住宅の得点とした。
    結果 仙台市内の40年ほど前に開発された住宅地、古くからの住宅と新しい住宅が混在している地区および古くからの農村部を対象として、計138戸の住宅を調査した。結果、築年数が古いほど、また農村部の住宅のほうが高得点、すなわち家相を考慮した住まいづくりを意識しているということなどを明らかにした。
  • 井本 佐保里, 田畑 耕太郎
    セッションID: 2E-08
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
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    「目的」

    ケニアでは、農村部から都市部への人口流入が進む中、首都ナイロビ市内に100をスラム(インフォーマル居住地)がその受け皿となっている。従来、スラムは農村部からの出稼ぎ民のための一時的な住まいとしての役割が指摘されてきたが、近年、人々のライフスタイルの変化とともにスラムの役割も変化していると考えられる。本研究では、ナイロビ市内のムクルスラムを対象に、現地の住宅の構成や使われ方から、現在のスラムの居住環境について明らかにすることを目的とする。

    「方法」

    本研究では、2014年10-11月に、ムクルスラム内の2つの地区(Railway/Ruriie)に立地する住宅51件を訪問し、①住宅の実測、および②住宅内スペースの機能、③職業などについてヒアリングを行った。調査にあたっては、現地に精通する住民に通訳の他、調査対象の斡旋を依頼した。

    「結果」

    本研究より、ムクルスラムに住宅の多くは賃貸であり、3×3メートルの規格のものが多いことが分かった。また、住宅の狭さから、多くの住宅で共通した家具のレイアウトがみられた。小面積の住宅を住みこなす工夫であると言える。さらに、ムクルスラムにおいて小売店を営む者が多く、それにより住宅内の一部を店舗に改修したり、地域内のオープンスペースに露店を出すなどして、商用空間を整備している実態が明らかになった。
  • 梶木 典子
    セッションID: 2E-09
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
    会議録・要旨集 フリー
    目的 冒険遊び場とは、「自分の責任で自由に遊ぶ」をモットーとし、子どもの遊び心を刺激する遊びを可能にした遊び場である。本研究では、自治体事業としての冒険遊び場づくり事業の実態を明らかにし、事業への取り組み方の変化や課題を抽出する。

    方法 全国の都道府県(47件)、市・特別区(814件)、合計861自治体の冒険遊び場事業の関連部署を対象にアンケート調査を実施した。 有効回収数は、都道府県15件(31.9%)、市・特別区338件(41.5%)、全体353件(41.0%)であった。調査期間は2016年11月~12月。

    結果 自治体事業としての冒険遊び場事業は、「実施している」が50件(14.2%)であり、2013年度から18件増えていた。「準備している」は4件(1.1%)で前回まで「実施していない」とした自治体であった。2013年度に「準備している」とした3件のうち1件が今回「実施している」とした。「実施していない」は298件であり、2013年度と比較して冒険遊び場の認識は全国に広まりを見せ、その必要性は高く認識されている。冒険遊び場を実施している自治体は全国的にみると15%に満たないが、その数は少しずつ増加している。課題としては「人材の確保」が最も多く、世代交代が困難なこと、プレイワーカーの高齢化、若手担い手の養成があげられた。(本研究は2016年度卒業生:山本実央との共同研究である)
  • フィンランドのファミリーリハビリテーションについて
    大谷 由紀子
    セッションID: 2E-10
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
    会議録・要旨集 フリー
    目的:本研究はハイリスクな子育て家庭への支援の一環として提供され、ショーステイ形式のファミリーリハビリテーションという取組みについて、理念、取組み概要をハード・ソフトの両方から把握する。この取組みはわが国にはなく、在宅支援の一形態として示唆を得たい。


    方法:ヘルシンキ市にあるオウルンキュラ・ファミリーリハビリテーションセンターにて、責任者と担当者に聞き取り調査、および、施設見学を行った。期間は2016年9月



    結果:(1)ファミリーリハビリテーションは児童保護法の在宅支援に位置付き*1、2011年にヘルシンキに設立された。(2)当施設は一時保護の子どもを親子分離するのではなく、家庭に戻れるように家族で宿泊し、アセスメントと各種プログラムを受けるショートステイである。(3)6家族を1ユニットとし、1ユニットに8名のファミリーインストラクターが就く。(4)家族はステイ期間中も通常の生活を送り、1クルーは2ヶ月である。(5)施設内は家族用の住戸、共用リビング、ランチルーム、体育館、サウナなどで構成されている。



    *1 ヘルシンキでは12歳までは原則、在宅支援であるが、当施設の子どもは家庭が危険な状況にある、子ども自身が危害を加える、あるいは、そのリスクが高いなどの危機的な状況にあるケースがほとんどである。



    *本研究は科研費(基盤B 2014-2017:代表 大谷由紀子)により実施しました。
  • ー英ブリストル市サウスヴィル地区を事例としてー
    原 わかな, 薬袋 奈美子
    セッションID: 2E-11
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
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    高齢者の平均寿命と健康寿命は男性で約9年、女性で約12年の乖離があり、その差は若干広がる傾向にある。日常的な歩行時間の増加は健康寿命の延伸対策のひとつとされており、その為には外出の機会を促し、自宅周辺を歩きやすい環境に整えることが望まれる。
    英国ブリストル市サウスヴィル地区においては、住民主体のコミュニティ組織であるSouthville Community Dvelopment Associationにより住民の外出を促し、楽しく、安心して近隣を歩けるまちにするための様々な取り組みを行っている。“Good Front Garden Award(前庭コンクール)”により、住民の自宅前庭の手入れを促進するだけでなく、近所の素敵な前庭を見るために住民がまちを歩き回るようになった。“Window Wonderland(窓デコレーションイベント)”は、日頃は行かない通りを歩く機会となり、日が暮れるのが早い冬季の夜に道に人が出てくるようになり、安全性向上にも寄与している。“Green Walkway(ウォーキングルート)“の整備は、住民が時を選ばずに気軽に参加が可能な活動である。様々な活動に参加することで住民同士の接点が増え、また共通の話題を持つことで、住民の交流も促進するという効果も現れており、それが更に住民の外出の推進へと繋がっていることが確認できた。本研究はJSPS科研費17K00800の助成を受けたものである。
  • 地域コミュニティとしてのふれあい・いきいきサロンの包括性と持続性に関する研究その2
    中村 久美
    セッションID: 2E-12
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
    会議録・要旨集 フリー
    目的 地域コミュニティとしてのサロンの重要性をふまえ、前報では持続可能なサロン活動の課題を明らかにした。本報はサロンの包括性(一人でも多くの高齢者を包含)に着目し、モデル地域の活動を検証する。
    方法 宇治市22小学校区中、最もサロン立地密度の高い学区をモデル地区に選定。運営代表者へのヒアリング、利用高齢者への質問紙調査等を実施。調査期間2017年7~10月。調査対象サロン12、質問紙有効票117.
    結果 訪ね合う近隣を持たない高齢者(22.2%)、立ち話をする人もいない高齢者(13.2%)もサロン関係者に声をかけられ活動に参加している。彼らは「生活情報を得られる」「地域事情がわかる」点でサロンを評価し、日常、非日常に頼りにする人としてサロン関係者をあげている。サロン利用者の60.6%が地域との関わりがない高齢者の存在を平均4.4人認識しており、そのうち87.8%がサロンに誘ったり彼らの情報をサロン関係者等に知らせている。またサロン利用者の66.7%がサロン関係者以外の近隣とサロンを話題にしている。学区内にサロンをめぐる情報ネットワークが構築されているといえる。さらに1/3が学区内の複数サロンに参加しサロン間の情報をつないでおり、他サロン未参加者の64.5%は他のサロンへの参加希望を有する。本モデル学区ではサロン代表者の連絡会をも立ち上げ、地域コミュニティの1つの核としてサロンが位置づけられる。
  • 高橋 哲也, 鶴永 陽子
    セッションID: 2F-01
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
    会議録・要旨集 フリー
    目的 アロマテラピーは脳に働きかけて心を和ませ、ストレスを低減させる効果を持つ。その効果を有効に利用するには、肌に密接にある被服を用いるのが効果的であると考えられる。本研究では、アロマテラピー繊維を創製する前段階として、スウィートオレンジとラベンダー精油による生理応答への影響について着目し、その心理的影響を検討した。

    方法 大学生20名を対象に本実験を実施した。STAI特性不安検査、タイプ行動パターン検査の心理検査を実施した。その後、3回の時間帯にて、香りを付けていないマスクの装着(前レスト)、香り付きマスクの装着(聴香タスク)、香りを付けていないマスクの装着(後レスト)の状態を5分間ずつ実施した。その際にNIRSおよび心拍変動の測定を行うとともに、主観評価も実施した。

    結果 本実験に用いた2種類の香りには、リラックス効果が見られた。但し、アロマテラピー実験が生理応答や心理に与える影響は、被験者によって個人差が大きかった。NIRSによる測定を行ったところ、聴香タスクでは脳血流量は減少し、アロマテラピーによってリラックス状態を示すことがわかった。さらに、香りの嗜好性も脳血流の結果に影響を与えており、本実験の被験者の嗜好性が高いスウィートオレンジの方が、聴香タスクでの脳血流中の酸素化ヘモグロビン濃度が前レストに比べて大きく減少していた。このことから、スウィートオレンジの方がストレス低減により有効であった。
  • 安川 あけみ, 小澤 真帆
    セッションID: 2F-02
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
    会議録・要旨集 フリー
    目的 我々は現在,Tシャツ,ポロシャツ等の編地(ニット素材)の衣服を多く着用している。布の伸縮性に焦点を絞り,戦後以降の日常着や子どもの体操着の変遷とその背景を調べ,伸縮性素材の需要拡大の要因を考察する。

    方法 服装史,文化史等の文献,アルバム写真および各年代の人への質問により各時代の服装に関する情報を収集した。織物,綿ニット,ポリエステル(PET)ニットおよび綿/PET混紡ニットの計8種を試料布とし,引張試験機(島津オートグラフS形S-500-C形)を用いて,JIS L 1096に則った引張強度・引裂伸度測定を行った。さらに,定荷重法により残留ひずみ率を測定した。また,市販の2種の伸縮性織物パンツ(スラックス:PET60%/レーヨン34%/ポリウレタン6%およびスキニー:綿64%/PET34%/ポリウレタン2%)について,肉眼および顕微鏡で観察を行い,構造を調べた。

    結果 約50年前までは体操着でさえ編地でなく織物が用いられていたが,動作のしやすさやカジュアルファッションの流行とともにニット素材が普及した。その後,綿ニットから合成繊維ニットへの移行により,残留ひずみの小さいニット生地が生産可能になり,人々の意識の変化もあり,広くニット素材の普及を生んだ。また,伸縮性の大きいポリウレタンを芯にしたスパイラルヤーンを用いることにより,型崩れしにくい織物の特長と高い伸縮性を併せもつ伸縮性織物素材が生まれたと考えられる。
  • 花田 朋美, 佐久間 杏子
    セッションID: 2F-03
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
    会議録・要旨集 フリー
    目的 繊維の良溶媒と貧溶媒の混合溶液を用いて非晶領域の分子鎖配列を乱し布帛を収縮する加工法を混合溶媒法とし、既存の合成繊維に新たな付加価値を付与する方法の一つとして研究を進めている。本研究では、ナイロン糸を取り上げ、ナイロン繊維の良溶媒であるギ酸と貧溶媒である水、及びエタノールを用いて収縮実験を行い、貧溶媒の相違による収縮への影響を考察する。更に、糸の太さを変化させ、極細繊維、即ち機能性繊維布への応用の可能性を検討する。

    方法 繊維径の異なるナイロン6の糸を50cmの長さに整え、中心部10cm間に糸印を施し、収縮実験用試料とした。所定のモル分率に混合したギ酸水溶液、ギ酸/エタノール混合溶液に浸漬し、30分経過後に取出して、糸印間の長さ変化を測定し収縮率を算出した。

    結果 ギ酸水溶液、ギ酸/エタノール混合溶液ともに良溶媒モル分率の増大に伴い収縮率は大きくなり、収縮率は良溶媒モル分率依存性を示すことが明らかとなった。しかし、貧溶媒が水の場合に比べエタノールの方がより良溶媒モル分率が高い領域で収縮現象を生じる結果が得られ、収縮には良/貧溶媒混合溶液の分子容が影響するものと考察した。更に、同じモル分率では繊維径が細い方が収縮率は高くなる結果が得られ、分子配向性が影響していると示唆された。従って、配向性の高い極細繊維に代表される機能性繊維布への応用が可能であると考えられる。
  • 稲垣 サナエ, 牛腸 ヒロミ, 小見山 二郎
    セッションID: 2F-04
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
    会議録・要旨集 フリー
    目的 タンパク質繊維の再利用ために、羊毛、絹、羽毛の3種類の繊維のアンモニア(Am)と酢酸(Ac)の消臭性を、表題の二つの処理で向上させ、活性炭を越える性能を得ることを目的とした。
    方法 ①硫酸処理 60℃の10%硫酸で約3時間処理して試料の30%を溶解し、残った70%の固体を良く水洗し、50倍の純水に一晩浸けてpHが7.0±0.5になるまで.水を取り替えたのち、自然乾燥した。②機械的処理 30,000 rpmのブレンダーで5分間処理したのち、①と同様に水で処理して、中性を確かめた。③硫酸処理の後ブレンダー処理をして、同様に中性を確かめた。未処理および①、②、③の処理をしたタンパク質繊維の0.05gを2Lのテドラーバッグ中に置き、115および145ppmのAmとAcの残存率をガス検知管法を用いて、時間的に追跡した。得られた消臭曲線から初速kと、5時間後の平衡残存率からの消臭容量C、(μmol/g)を算出し、試料の消臭性能を評価した。
    結果 羊毛によるAmのCは①②の処理により、未処理の場合より約10%大きくなったが、③の処理により未処理のもののCより、約2.4倍大きくなり、化学用活性炭のCを10%ほど越えた。またAcのCは②の処理により、活性炭のCとほぼ等しい値になったが、③の処理ではそれより約20%小さくなった。絹、羽毛について、同様の処理をした結果を合わせて報告する。
  • 牛腸 ヒロミ, 勝俣 愛実, 高田 彩香, 城島 栄一郎
    セッションID: 2F-05
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】タオルの性能として重要な吸水性と、肌ざわりに関する圧縮率及び圧縮弾性率に及ぼす市販柔軟仕上げ剤の影響を、柔軟仕上げ剤の種類、濃度、洗濯回数の面から検討した。さらに、女子大生を対象とした官能評価から柔軟仕上げ剤が人の気持ちに及ぼす効果を考察した。

    【研究方法】市販タオルを所定の条件で洗濯し、仕上げに6種類の市販柔軟仕上げ剤を使用して試料を作製した。洗濯回数は1回と10回、柔軟仕上げ剤6種の濃度を変化させて、吸水高さ、吸水速度、圧縮率、圧縮弾性率に及ぼす柔軟仕上げ剤濃度の影響を検討した。さらにSD法により、各種試料の香りの官能評価を行った。

    【結果・考察】洗濯回数1回試料では柔軟仕上げ剤濃度を標準濃度の3倍にすると吸水性が低下するものがあった。洗濯回数10回試料では、標準濃度の3倍で、すべての柔軟仕上げ剤の吸水高さが低下した。肌ざわりと関係する圧縮率と圧縮弾性率と柔軟仕上げ剤濃度との関係に関しては、ほとんどの柔軟仕上げ剤において、濃度が高くなるほど圧縮率は高くなった。圧縮弾性率に関してはほとんど濃度の影響を受けなかった。官能評価の結果から、柔軟仕上げ剤使用試料は香りの種類を問わず、品がある、気分が休まる、快い、好きと評価する人が多いことが明らかになった。さらに、柔らかい、軽やかななどの評価は、圧縮率、圧縮弾性率の結果と整合性があった。
  • 大矢 勝
    セッションID: 2F-06
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
    会議録・要旨集 フリー
    目的

    タンパク質汚れの洗浄にプロテアーゼが有効であることは良く言われているが、どの程度のレベルで汚れ除去に寄与するかについては明確にはされていない。そこで本研究では我々のグループで開発してきた確率密度関数法を用いてタンパク質汚れの洗浄に及ぼす酵素処理の効果について検討した。

    方法

    スライドガラスにヘモグロビン溶液を滴下し、オープンで水蒸気加熱したものを試料として用いた。これを水、弱アルカリ水、酵素液にいて一定時間浸漬し、その試料をpH10に調整した界面活性剤水溶液で洗浄した。残留汚れをNaOH水溶液で抽出し、Lowly法で呈色し、分光光度計で吸光度を測定して洗浄率を求めた。時間を変化させて得られて洗浄率を確率密度関数法で処理して洗浄力パラメータσとμを求めた。

    結果

    30℃での酵素処理は顕著な効果は見られなかったが、40℃と70℃では酵素処理で顕著な効果が見られた。特筆すべきは酵素処理を行うことでタンパク質汚れが一定量除去されるとともに、残留汚れも除去されやすい形態に変化するということが確認できた点である。また、酵素処理が比較的短時間でも有効であることも分かった。タンパク質の分子量低下効果が汚れ除去性を高めているものと考えられる。
  • ースマートフォン利用の影響ー
    加藤 千穂, 石原 久代
    セッションID: 2F-07
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
    会議録・要旨集 フリー
    目的 近年のスマートフォン所有率の増加に伴い使用時間が増加し,長時間にわたり同一の姿勢を保持する機会が多いといえる.日常姿勢に関する報告は10年以上前の報告が多く,それらはスマートフォンを生活必需品とする現在の若年女性の日常姿勢を表すものとは言い難い.そこで,本研究では女子大生の日常行動のひとつであるスマートフォン使用が姿勢や疲労度等に与える影響について明らかにする.
    方法 18~22歳の女子大学生126名を対象に,良い姿勢,自分の姿勢,睡眠時間,スマートフォンの使用時間,操作方法,疲労や痛みの部位等についてアンケート調査を行った.調査時期は2017年11月である.スマートフォン使用時間と疲労度等についてクロス集計による分析を行った.
    結果 良い姿勢について自由記述による調査を行った結果,背筋が伸びると回答した被験者は41%と多く,次いで猫背ではない,首が前傾していないであった.自分の姿勢について非常によくあてはまる,ややあてはまると回答しているのは猫背が86.5%と最も多かった.疲労感については,首に強く感じる,かなり感じると回答する被験者が最も多く46.4%であった.また,スマートフォン使用時間の平均は,平日5.8時間,休日6.3時間であったが,10時間を超える被験者が17.7%存在した.さらに,スマートフォン使用時間が10時間以上の被験者の多くは首の疲労感を感じ生活をしていることが明らかになった.
  • 増田 智恵, 村上 かおり
    セッションID: 2F-09
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】今後のネット社会における衣服選択のための情報を得るため,実際にサイトを設定して仮想の着装シミュレーションによる衣服のデザイン評価について,女子学生を対象に実験を試みた。
    【方法】調査期間は2009年2月~2016年1月で,サイト画面上の26着の3次元着装シミュレーションによるデザインイメージ評価(10種類)と回答者自身の衣服選択や購入に関しての衣服観(Q1~Q8)に対する回答の直接入力方式を用いた。女子学生に限定した合計1689回の評価結果を検討の対象とした。【結果】サイト上の26着の10種類のデザインイメージ評価からは,1.1着の服のデザインでもいくつかのイメージを持ち,同じイメージ傾向の服の着用する範囲や効果は似ていた。今回のデザインイメージの服は,体型カバー効果が認められた。2.他者印象に関して,同姓である女性からの評価順位はほほ全イメージの服が高く,一方,男性,同年代,年下からの印象は高くなく,年上からも印象が高いのは3つのイメージで,女子学生自身の着用したい服の評価は少なく低い。3.評価者自身のファッションへの興味は高い傾向を示し,服購入時の要求情報は「似合い度,サイズ適合,デザインイメージ」で,「手持ちの服との重複情報」も要求され,とくに3次元着装シミュレーションでの要求情報として,先の3項目の他に「体型カバー」が要求された。
  • 山本 高美, 中山 雅紀, 宮原 裕貴, 藤代 一成
    セッションID: 2F-10
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
    会議録・要旨集 フリー
    目的 ICT機器の発達とともに3Dスキャナの開発が進んでおり,アパレル業界では人体全身を短時間で計測できる大型のものが使用されている.そこで,3D計測によって採取した人体表面のポリゴンデータから,3Dディスタンス(距離)フィールドを表現するボリュームデータを構成し,ボリュームデータならではの人体計測アプリケーションを開発することを目的とする. 本プロトタイピングでは,ポリゴンデータでは穴になってしまい計測が難しかった,腕付け根回り,首付け根回り,股上前後長に焦点を当てて計測アプリケーションの開発を行う.

    方法 3Dスキャナで,人体計測を行い,本アプリケーションによりポリゴンデータから,ボリュームデータへ変換し,人体計測を行う.ボリュームデータは,穴のない閉じた体表曲面生成を保証し,幾何学的な操作を実行する場合も体表形状モデルとして扱いやすい.また,様々な信号・画像処理技術を適応できるのでスムージングにより滑らかな体表が得られる.さらに,ディスタンスフィールドが容易に導出できるので,体表に沿った計測がしやすい.
    結果 ユーザ評価は,2017年6月~7月に女子大学生5名の実験協力者を得て実施した.3Dスキャナによる人体計測を行い,本アプリケーションを用いた人体計測と,1Dのメジャー計測の比較を行った.これまで,3Dでは計測が難しかった部分も正確に計測でき,本アプリケーションの有効性が示された.
  • 高橋 美登梨, 川端 博子, 一戸 玲美
    セッションID: 2F-11
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】3歳児における着脱の特徴について,前報では保育者の援助(内容と回数)と所要時間より考察した。本報告では,着脱に関わる動作の分類より特徴を捉えることを目的とする。
    【方法】埼玉県内の幼稚園3歳児クラスの20名(男児10名,女児10名)を対象に2016年6月~2017年2月に計15回の観察調査を行った。観察は登園後の着替えの場面とし、通園着から園内服への着替えの様子をビデオカメラで撮影した。録画した画像より,動作をパターン化した。
    【結果】脱衣をパターンに分類したところ,ゆとりの少ないかぶり型衣服(ポロシャツ・カットソー)は,腕から抜くという特徴がみられた。前あき衣服(カーディガンやブラウス)は背面で腕を抜く場合が多いが,かぶり型と同様に最初に腕を抜く動作を行う対象者もいた。また,少数ではあったが,前あき衣服の腕を抜く動作を背面ではなく前面で行う例や,ベストの脱衣において手を脇に入れる例が観察された。脱衣を行う中でそれぞれの幼児が脱衣しやすい動作を模索しながら動作を行うため,さまざまなパターンが出現すると考察される。着衣のパターンは,左右いずれかの手から袖を通すパターンと衣服を背中に回してから袖を通すパターンの2種であった。動作の過程において衣服の形態を確認してから動作を開始する様子が観察されたことから,3歳児では形態を理解した上で動作を行うことが課題のひとつであるといえる。
  • 川端 博子, 長谷川 美悠, 萩生田 伸子, 鳴海 多恵子
    セッションID: 2F-12
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
    会議録・要旨集 フリー
    (目的)便利な生活機器の普及、作業経験や遊びの変化などにより、子どもたちが日常生活の中で手指を使う機会は減少しており、手指の巧緻性は低下傾向である。筆者らは、手指の巧緻性に優れる者は、遊び・手指を使う学習・ものづくりに積極的な参加姿勢があることを明らかにしてきた。本研究では、現代の小学生の手指の巧緻性の現状を把握するとともに、生活実態に関する質問紙調査より手指の巧緻性に関わる要因について考察することを目的とする。
    (方法)2017年7~9月、東京都内の6校の小学6年生478名(男子247名、女子231名)を対象に、糸結びテストにより手指の巧緻性を計測した。併せて質問紙調査(ものづくりに対する意識と生活の自立度、家庭科の既習事項の実践度、遊びの参加度、手指を使う作業の得意意識、学習に対する好きの程度、家庭での生活時間など62項目)を実施した。
    (結果)5分間に完成した糸結び数の平均は、男子5.5個、女子9.0個であった。2007年の平均は男子6.4個、女子10.7個であったことから、今回の結果には個数の低下と男女差が認められた。質問紙の回答をもとに、糸結び数を従属変数として重回帰分析を行ったところ、性別、ものづくりに対する意識、家庭科の既習事項の実践度、手指を使う作業の得意意識が正に関与していることから、家庭科の役割を手指の巧緻性向上の面からも示唆する結果となった。
  • きつく見える服
    山村 美紀, 石垣 理子, 猪又 美栄子
    セッションID: 2F-13
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
    会議録・要旨集 フリー
    目的 現在の市場は、趣味趣向の多様化した消費者に対応した様々な衣服が流通し、その中に動きにくそうな極端なデザインも存在する。本研究では“きつく見えるけれども、動くことができる衣服(シャツ)”をコンセプトに、胸囲ゆとり量をできるだけ少なくしたシャツを設計し、動きやすさの構造について検討した。
    方法 ①実験服は、胸囲ゆとり量を非常に少なくし、体幹に対して捻れて皺が生じるよう設計した。着用すると前後中心線が15度傾く構造である。袖幅には、上腕最大囲+7.5cmのゆとりを加えた。用布は木綿の平織りである。 ②着用実験の要因は「胸囲ゆとり量」とし、2・4・7cmの3水準を設定した。 ③10名の着用者に対して、動きやすさ、及び外観についての官能評価、筋活動、衣服圧の測定を行い、分散分析等の解析を行った。
    結果 ①着用時の捻れによる皺は「見かけのきつさ」を強調しているが、上肢動作によって皺が開いて体表の変化に追従する構造、バイアス地による変形、袖幅の十分なゆとりにより、上肢動作、日常動作が可能であった。 ②着用実験の結果:実験服の胸囲ゆとり量は、2~7cmの範囲で着用できるという一定の評価を得られた。しかし、既製服として多様な体型の消費者を対象にする場合には、カバーできるサイズの許容範囲を考慮すると胸囲ゆとり量は、4~7cmであると考える。 ③平織りの布を用いて、胸囲ゆとり量2cmのシャツが成立した。
  • 和井田 結佳子, 河村 美穂
    セッションID: 2K-01
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】1954年学校給食法成立以降、日本の学校給食は児童生徒の栄養摂取状況改善に貢献してきたことが知られている。一方で学校給食は「教育の一環」としても重要な役割を果たしてきたと考えられるが、特に2005年食育基本法成立及び栄養教諭制度導入以降は食育の推進とともにその教育の場としての役割が重視されるようになったと考えられる。しかし、これまで教育の一環として実施される学校給食について研究動向を分析した報告はほとんどない。そこで本研究では、特に教育の一環として学校給食が重要な役割を担うことになる2005年以降の学校給食に関する研究動向を分析した。

    【方法】2017年11月、Ciniiによるデータベース検索で“学校給食”を検索ワードとして対象論文を抽出した。条件1)2005年以降、2)査読付学術誌及び大学紀要に掲載、3)教育活動に関わりがある、のいずれかに当てはまらないものは除外した。対象論文を「理論研究」「実践研究」「調査研究」の3つに分類し研究の動向を分析した。

    【結果】対象とした論文のうち「理論研究」「調査研究」がそれぞれ40%以上を占めており全体の80%以上となった。「調査研究」の多くは給食の献立や栄養に関する調査及び児童の栄養摂取や食意識食行動に関する調査であった。「実践研究」が少なく特に食に関わる教育活動の効果をはかるもの、学習者の変容について検討したものはほとんど見られなかった。
  • 板東 絹恵, 北畑 香菜子, 上田 留莉
    セッションID: 2K-02
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】摂食障害は思春期、青年期に発症することが多く、歪曲した認知や食行動から、心身の成長発達が妨げられる。そのため本研究では、摂食障害のリスクのある者に対し、早期のアプローチに役立てる多次元の尺度を作成し、その信頼性と妥当性を検討した。【方法】調査期間は201X年7月~201Z年12月。調査対象者は男女高校生と大学生798名(16.5±1.6歳)であった。うち119名へは、4週間あけ本尺度を再度実施した。調査に用いた質問紙は、新たに作成した多次元摂食障害傾向尺度、食行動問題を見るためのEAT-26+EDI、自尊感情尺度であった。【結果】因子分析の結果、25項目4因子からなる多次元摂食障害傾向尺度を作成した。クロンバックのα係数は、25項目合計がα=.893、「体型や摂食へのとらわれ」「自己に対する不満足感」「高エネルギー食の制限」「他者への気遣い」と命名された下位尺度はα=.878~.721であった。また再テスト法による安定性は25項目合計がr=.834(p<.01)、下位尺度はr=.856~.650(p<.01)であった。一方2つの関連尺度との相関をみた結果、EAT-26+ EDIではr=.544(p<.01)、自尊感情尺度ではr=‐.531(p<.01)であった。以上の結果から、多次元摂食障害傾向尺度は、内的整合性と安定性の双方から十分な信頼性を、また構成概念妥当性も備えていることを確認した。
  • 谷口(山田) 亜樹子, 栗 彩子, 佐藤 祐子
    セッションID: 2K-03
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】豆類はマメ科の属する草本植物であり、1年生および越年生のものがある。種実を収穫して食用とし、雑穀と同様に昔から好まれ食されている身近な植物性食品で、栄養があることから食品素材として注目されている。世界のマメ科植物は多種であり、豆類の起源は古く、食文化と深い関係がある。今回は豆類の中でも日本食に良く使われるエンドウとインゲン豆の食品成分の比較を行った。

    【方法】試料はエンドウ(青森県産)とインゲン豆の金時豆、うずら豆、大福豆(岩手県産)を用いた。一般成分の測定、ポリフェノールの測定、抗酸化作用(DPPHラジカル消去能)の測定、豆料理の検討を行った。

    【結果】エンドウの一般成分を測定したところ、水分は約14%、タンパク質は約22%、脂質は約2%、炭水化物は約60%、灰分は2.5%であった。3種のインゲン豆の水分は約16%であり、タンパク質は約20%、脂質は約2%、炭水化は約58~59%、灰分は3.5%前後と3種ともに同様な値であった。エンドウとインゲン豆のポリフェノール量は1~3 mg/gおよび抗酸化作用は約14.5~10.1μmol/g(DPPHラジカル消去能)であった。
  • 佐藤 祐子, 谷口(山田) 亜樹子
    セッションID: 2K-04
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】日本人が昔から食べてきた食べ物の1つに「豆」がある。特に「大豆(だいず)」と「小豆(あずき)」は日本人に馴染みのある「豆」である。しかし、近年の国民健康・栄養調査によると、豆類摂取量は他の世代に比べ、10代20代での摂取量が著しく低いことがわかる。今回は、「豆」の食品利用の価値を再認識し、若者に「豆」の魅力を周知する目的で、大豆と小豆の栄養成分を比較し、アンケートによる意識調査や料理の試作を試みた。
    【方法】大豆と小豆の栄養成分と機能性を7訂食品成分表や文献により比較した。また、女子大生を対象にアンケート調査を行った(大豆n=20、小豆n=15)。内容は嗜好性、摂取頻度、調理方法、新商品の提案等であった。また、料理に関しては夏の大豆料理、冬の小豆料理として試作を行った。
    【結果】栄養成分(ゆで大豆・ゆで小豆100gあたり)は、炭水化物が8.4%、24.2%、たんぱく質が14.8%、8.9%であり、脂質が9.8%、1.0%であった。その他、大きく違う栄養成分は「カルシウム」「鉄」「食物繊維」であった。アンケート調査では、大豆を好きと答えた者は9割、小豆を好きと答えた者は8割であった。また、摂取頻度は小豆よりも大豆を日常的に摂取している者が多かった。料理に関しては、大豆料理として「混ぜご飯」「煮こごり」「天ぷら」等を試作し、小豆料理として「チャーハン」「シチュー」「米粉のケーキ」等を考え試作を行った。
  • 栗 彩子, 谷口(山田) 亜樹子
    セッションID: 2K-05
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】りんごは切って空気にさらすと、酸化酵素がポリフェノール化合物を酸化重合し褐変する。この褐変反応は酵素・基質・酸素の共存状態を阻止、酸化生成物を還元、酸化酵素を失活させることで阻害することができる。調理加工において酵素的褐変の制御は重要な課題となっている。本実験では、酵素的褐変反応の制御に代表的な食塩、酢酸、アスコルビン酸の影響を調べ、色彩計による褐変の経時変化・程度に差が見られるか検討した。

    【方法】試料は一般社団法人青森県りんご対策協議会の協力により青森県産サンふじを用いて行った。すりおろしたりんご果肉を素早く食塩水、酢酸水溶液、アスコルビン酸水溶液と混合し、褐変状態の経時変化を観察した。また、色彩計を用いてL*a*b*表色系にて色彩の測定、色差の算出を行った。さらに、食塩水の濃度およびpHを調製して同様に実験を行った。

    【結果】色彩計による測定の結果、L*値は全て時間経過とともに減少、a*値は増加、b*値は増加した。色差を算出した結果、いずれも10分間で急速に増加、その後は緩やかに増加、平衡状態となった。
    L*値、a*値、b*値および色差から、りんごの褐変防止には食塩水、アスコルビン酸水溶液が有用であることがわかった。結果より食塩に着目して食塩水の濃度、pHの調整をした結果、2%食塩水でpH5~pH6の条件で褐変防止効果が高いことがわかった。この条件における色差の変動はあまり見られなかった。
  • 久田 華奈江, 土岐田 佳子, 藤井 恵子
    セッションID: 2K-06
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
    会議録・要旨集 フリー
    目的 米粉を用いたグルテンフリー製品は、食料自給率向上や小麦アレルギー対応食として有効と考えられているが、製パン性の悪さやデンプンの老化による硬化が問題点である。本研究では、グルテンフリー米粉蒸しパンに熱応答性キシログルカンを添加し、製パン性及び保存性に及ぼす影響について検討した。
    方法 基本材料として米粉、砂糖、食塩、油、ベーキングパウダーを用いて蒸しパンを調製し、コントロールとした。これに熱応答性キシログルカン(MTG)、タマリンドガム、キサンタンガムを1%の割合で添加した。焼成後25℃で1時間放冷したのち、25℃、RH65%の環境下で0~3日間保存し、比容積、気泡径、破断特性、X線回折による老化特性を測定した。さらに官能評価を行い、保存性に及ぼす増粘多糖類の影響を食味特性から評価した。
    結果 増粘多糖類を蒸しパンに添加すると比容積及び気泡数が増加した。破断特性は、保存1日目までは破断応力、破断エネルギー、初期弾性率の値にほとんど変化はなかったが、2日目以降、MTG添加試料がコントロールよりも低値を示し、増粘多糖類添加の中で最も保存中の硬化が抑えられていた。X線回折による老化評価では、保存日数が経過するほど増粘多糖類の違いは顕著となり、3日目においてMTG添加試料が最も老化抑制効果を示した。2日間保存した試料についての官能評価では、嗜好型においてMTG添加試料は全ての項目で有意に好ましいと評価された。
  • 武智 多与理, 原 康香, 高村 仁知, 畠中 芳郎
    セッションID: 2K-07
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
    会議録・要旨集 フリー
    目的 米粉パンの膨化には、生地の粘度と粘度の保持が重要な因子である。私たちは既報で、米粉パンを製造する際に加える水の温度(加水温度)によって、生地の粘度が大きく変化し、その後の製パン性にも影響を与えることを報告した。本研究では、グルテンフリー米粉パン生地調製時の加水温度の検討を行い、米粉パン調整におけるパン生地粘度の影響を明らかにして、グルテンや増粘多糖類などを必要としない製パン条件を検討した。

    方法 加水温度を変えて生地を調製し、生地の物性評価(粘度測定)および形態評価(電子顕微鏡観察)を行った。同様の条件でグルテンフリー米粉パンを焼成して、製パン特性評価(比容積測定、断面観察、テクスチャー測定)を行った。パン生地の粘度と焼成パンの品質を比較検討し、パン生地の粘度とグルテンフリー米粉パン調整の関係を解析した。

    結果 高温域(70~80℃)の水添加試験では、72℃近辺で生地粘度が上昇し、焼成したパンの品質も良好であった。高温域水の加水により、デンプンの糊化現象が見られ、「糊化」の関与が推察された。しかし、78℃以上では過剰に糊化が進行し、パン品質を低下させる傾向が見られた。加水温度72℃~76℃の間に、適する加水温度があることが示唆された。
  • 田中 隆介, 野原 千明, 深澤 春乃, 峯木 眞知子
    セッションID: 2K-09
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/28
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】慢性腎臓病の食事管理は、病態に応じてたんぱく質、塩分、リン、カリウムなどの摂取量の制限である。また、たんぱく質が体内でエネルギーとして利用されないために、十分なエネルギーの確保が必要である。主食を低たんぱく米にすることは、良質とされる動物性たんぱく質を多く利用できるようになるため、食事療法として効果的である。一方で、低たんぱく米はにおいと味に課題があり、調理方法も普通米と異なる点もあると報告した1)。本研究では、炊飯方法の違いが、低たんぱく米のおいしさに影響するかを検討した。
    【方法】市販されている低たんぱく米を用いて、3種の炊飯方法(スチコン、電気炊飯器、IH圧力炊飯器)で比較した。低たんぱく炊飯米の特性は、米粒の大きさ、炊き上がり重量、テクスチャー、色度を測定し、順位法による官能評価(パネル:本学学生35名)を行った。
    【結果】炊飯米のかたさと凝集性は、IH圧力炊飯器、スチコン、電気炊飯器試料の順に高かったが、有意差はみられなかった。炊飯米の官能検査では、香りの強さはスチコン試料が弱く、IH圧力炊飯器試料が強かった。総合評価は、スチコン試料とIH圧力炊飯器試料が、電気炊飯器試料より好まれた。スチコン試料は、においと味が好まれたことが、総合評価に影響した。調理方法の工夫によって、おいしさを向上することに繋がる。
    [文献]田中隆介ら;日本食品科学工学会誌,64,p.365-372(2017).
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