この講演録は,2011年6月4日に化石研究会第29回学術大会での特別講演会「植物化石研究と植物系統学の進展」における講演の内容に加筆したものである.ふつう目にする植物化石といえば,木の葉の化石や珪化木だが,他にもいろいろな保存状態があり,その違いに応じた情報が隠されている.ここでは特に,珪化木のように内部構造が立体的に保存された鉱化化石とよばれる化石が包含する様々な情報と,それがどのように取り出されて研究に供されるのかを紹介しながら,現在の植物化石研究の動向と,植物系統進化研究における役割について触れる.
鉱化化石の性質と成因をわかりやすく説明するために,漬けもの化石と呼ぶことにしている.2億5千万年前の遊泳精子さえみつかることがある良質の保存状態は,植物細胞がセルロースやリグニンで補強されているために,動物よりもはるかに形態保存されやすい特性をもつゆえである.立体的に保存されている鉱化化石は,高解像度X線CTスキャナなどの利用にも適している.CTの観察像を基に新種が記載される可能性も出てきた.姿形が立派で見栄えのする化石が研究対象になりやすいのは当然のことだが,最近,たとえば浅海性堆積物に混在する陸源植物破片をゴミ化石と呼んで研究を進めている.特に,南米南部と南極で進めているゴミ化石探査についても紹介する.
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