化石研究会会誌
Online ISSN : 2759-159X
Print ISSN : 0387-1924
44 巻, 2 号
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特集「植物化石研究と植物系統学の進展」
巻頭言
特集・講演録
  • -植物化石のエキサイティングな世界-
    西田 治文
    原稿種別: 特集・講演録
    2012 年 44 巻 2 号 p. 47-56
    発行日: 2012年
    公開日: 2025/01/23
    ジャーナル フリー

     この講演録は,2011年6月4日に化石研究会第29回学術大会での特別講演会「植物化石研究と植物系統学の進展」における講演の内容に加筆したものである.ふつう目にする植物化石といえば,木の葉の化石や珪化木だが,他にもいろいろな保存状態があり,その違いに応じた情報が隠されている.ここでは特に,珪化木のように内部構造が立体的に保存された鉱化化石とよばれる化石が包含する様々な情報と,それがどのように取り出されて研究に供されるのかを紹介しながら,現在の植物化石研究の動向と,植物系統進化研究における役割について触れる.

     鉱化化石の性質と成因をわかりやすく説明するために,漬けもの化石と呼ぶことにしている.2億5千万年前の遊泳精子さえみつかることがある良質の保存状態は,植物細胞がセルロースやリグニンで補強されているために,動物よりもはるかに形態保存されやすい特性をもつゆえである.立体的に保存されている鉱化化石は,高解像度X線CTスキャナなどの利用にも適している.CTの観察像を基に新種が記載される可能性も出てきた.姿形が立派で見栄えのする化石が研究対象になりやすいのは当然のことだが,最近,たとえば浅海性堆積物に混在する陸源植物破片をゴミ化石と呼んで研究を進めている.特に,南米南部と南極で進めているゴミ化石探査についても紹介する.

  • 戸部 博
    原稿種別: 特集・講演録
    2012 年 44 巻 2 号 p. 57-65
    発行日: 2012年
    公開日: 2025/01/23
    ジャーナル フリー

     過去数十年間分子情報による系統解析が進み,陸上植物の分類システムは大きく変わった.最新情報をもとに,新しい陸上植物の分類システムと,そこから生まれる新たな課題について紹介した.主な点は,⑴陸上植物はゼニゴケ植物門(タイ類),マゴケ植物門(蘚類),ツノゴケ植物門,ヒカゲノカズラ植物門(小葉類),シダ植物門,裸子植物門,被子植物門という7つの群(植物門)からなること,⑵ツノゴケ植物門が維管束植物の姉妹群であること,⑶マツバラン類とトクサ類はシダ類と単系統群(シダ植物門)であること,⑷現生裸子植物(グネツム類も含む)は単系統群(裸子植物門)であること,などである.また,最も大きな被子植物門は原始被子植物群(側系統群),単子葉植物,真正双子葉植物の3群に分けられ,原始被子植物群のアンボレラ目(Amborella trichopoda1種のみ)が残り全ての被子植物の姉妹群である.更に,被子植物では科の分解,統合,配置換えが進んだ結果,科は446科(うち単子葉植物は81科)を数えるまでに増えた.しかし,10種以下からなる小さな科が全体の33%(148科)を占め,そこに残されている進化の証拠を知るための形態観察(生活史も含む)の研究が遅れている.

  • 楡井 尊
    原稿種別: 特集・講演録
    2012 年 44 巻 2 号 p. 66-72
    発行日: 2012年
    公開日: 2025/01/23
    ジャーナル フリー

     日本における花粉形態研究では,日本産の種子植物のすべての種の花粉について調べられていない.本論では特に,現生の花粉形態研究の現状,外壁構造の重要性,APG分類体系と花粉形態との整合性,絶滅属の問題などについて,いくつかの例を挙げて検討した.スギ科(狭義)の花粉化石記載は,研究者により同定基準が異なるなどの問題点も指摘した.

     近年,花粉化石で記載されるようになった分類群があるので,過去の研究と比較するとき注意が必要である.

原著
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