化石研究会会誌
Online ISSN : 2759-159X
Print ISSN : 0387-1924
57 巻, 1-2 号
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特集「東北・北海道の鯨類化石研究の現在と展望」
巻頭言
特集・総説
  • 一島 啓人
    2024 年57 巻1-2 号 p. 3-14
    発行日: 2024/12/27
    公開日: 2025/07/23
    ジャーナル フリー
     クジラ化石の産出の様相は,東北地方と北海道地方ではかなり異なる.東北では,ヒゲクジラ類の化石の数は,絶対的にも相対的にもハクジラ類よりもずっと多く見つかっているが,北海道はその逆で,ハクジラ類の方が相対的に豊富である.この差を解釈するのは難しいかもしれないが,同時に興味深くもある.当時の実際の地理的分布を反映している可能性もなくはないが,単に収集の偏りや保存の偏りの結果であるかもしれない.また,地域における研究の遅速によっても報告される分類群の数は影響され得るので,今後も,両地域間の化石鯨類相の違いをもたらす原因と思われるもの追求する努力は,必要と思われる.
特集・原著論文
  • 長澤 一雄, 渡部 晟, 澤木 博之, 渡部 均, 川辺 孝幸
    2024 年57 巻1-2 号 p. 15-25
    発行日: 2024/12/27
    公開日: 2025/07/23
    ジャーナル フリー
     秋田県男鹿半島の鵜ノ崎海岸に分布する中新世 13-12Ma の巨大なコンクリーションの中に含まれていた 3 点のヒゲクジラ類の下顎骨化石について報告する.コンクリーションは風化や波食によって壊れており,下顎骨化石がその表面に露出していた.化石はいずれも下顎管が見える大型かつ頑丈なヒゲクジラ類の下顎骨であった.それらの断面形態は似ており,次のような形態を示していた.内側が平面で外側が顕著に膨れ,背側が緩い曲面で腹側が鋭角的であった.これらを現生のセミクジラ科,ナガスクジラ科,コククジラ科の各種と比較すると,外側が顕著に膨隆する特徴においてセミクジラ科に最も似ていた.3 点の下顎骨から個体の体長を推定すると,ある程度の誤差を含むが,16〜23m の範囲と推定された.鵜ノ崎の化石の大きさに注目して,日本のセミクジラ科の化石記録等と比較したが,それらは日本の中新世における最大級の個体の可能性がある.
  • 瀬戸 大暉, 長澤 一雄
    2024 年57 巻1-2 号 p. 26-36
    発行日: 2024/12/27
    公開日: 2025/07/23
    ジャーナル フリー
     山形県真室川町に分布する上部中新統野口層から産出したマムロガワクジラ化石群の直上の層準からは,多数の化学合成二枚貝ツキガイモドキ類(Lucinoma sp.)が産出した.これらは,マムロガワクジラ化石群の上位で殻接合面が層理面にほぼ水平に密集した産状を示した.ツキガイモドキ類は,109 個体を計測し,合弁率が 98.5% に達する.また,占有率は 85.2% と他種に対して排他的に優占し,非化学合成二枚貝に対して 93.6% と顕著に優占する.ツキガイモドキ類の殻サイズを計測した.その結果,殻サイズが集中し,頻度分布が単峰形となる傾向が見られた.以上の化石の産状,合弁率および貝殻形態から,ツキガイモドキ類は,生息域から大きく移動しなかったが洗堀によって再配列された同相的群集と推定された.これらの状況は,この場所が化学合成二枚貝群集を涵養しうるのに十分な硫化水素を供給していたことを示唆する.以上から,マムロガワクジラ化石と共産したツキガイモドキ類は,浅海から運搬されたマムロガワクジラ化石群の頭蓋骨や脊椎に含まれた豊富な脂質から生成された硫化水素に依存した化石鯨骨群集であったと推定される.
特集・講演録
  • ー博物館活動で好循環を生みだすー
    田中 嘉寛, 長野 あかね, 百々 千鶴, 安藤 達郎
    2024 年57 巻1-2 号 p. 37-43
    発行日: 2024/12/27
    公開日: 2025/07/23
    ジャーナル フリー
     本稿では,北海道から発見されて近年新属新種となった 3 つのヒゲクジラ類(タイキケトゥス,ヌマタナガスクジラ,フカガワクジラ)について,博物館におけるとりくみについて述べる.これらの種は古生物学だけでなく博物館学においても重要である.命名されることで文化資産として価値を高め,展示や解説など発信しやすい形にまとめ,それを地域や世界に発信していく.化石の研究をもとにして,博物館をめぐる好循環が生まれ古生物学の研究を含む博物館活動がより活発になることが期待される.これらは筆者らにとって実践中の取り組みではあるが,ここに一旦まとめた.
  • ー札幌のセミクジラ類化石を例にー
    新村 龍也, 田中 嘉寛, 古沢 仁
    2024 年57 巻1-2 号 p. 44-49
    発行日: 2024/12/27
    公開日: 2025/07/23
    ジャーナル フリー
     本論文では,特に札幌市小金湯で発見されたクジラ化石(小金湯クジラ)に焦点を当て,化石動物の生体復元における 3D CG 技術の応用について紹介する.3D CG 技術は,単離した骨化石の部位特定や化石の逆変形を可能にし,正確な骨格復元を可能にした.また,3D CG 技術は正確な生体復元において優れた利点がある.本論文では,ZBrush や Blender といった 3D ソフトを用いた具体的な手法を紹介し,化石発掘時のフォトグラメトリー用写真撮影の推奨についても述べた.
原著論文
  • 高橋 啓一, Sanjeeta Sharma Pokharel, 木下 こづえ, 石渡 一人, 添田 雄二
    2024 年57 巻1-2 号 p. 50-57
    発行日: 2024/12/27
    公開日: 2025/07/23
    ジャーナル フリー
     2024年4月26日に北海道東部に位置する野付半島の沖から新たなマンモスゾウの臼歯化石が発見された.化石はよく咬耗した右上顎第 1 大臼歯であり,その年代は暦年補正した年代でおよそ4万2000〜4万1000年前であった.これまで発見されている野付半島沖の 3 点の標本も含めて考察すると,この地域には少なくとも MIS 3 〜 MIS 2 の始まりにかけてマンモスゾウが生息していたことがわかる.化石の包含層は砂礫層であり,潮流で包含層にまで海底が掘り下げられた水深のやや深い場所で,転石の状態で存在している可能性があることなどが推定される.また,今回の化石の δ13C の値は -18.0 ‰であり,この値はこれまで世界各地から知られている一般的なマンモスゾウの値に比較して高い値を示しているが,その原因としてはこの地域あるいは海岸地域に生息していたマンモスゾウの食性が関係している可能性が考えられる.
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