肩関節
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38 巻, 2 号
肩関節_38_2
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解剖
  • 植木 博子, 吉村 英哉, 日山 鐘浩, 望月 智之, 二村 昭元, 秋田 恵一
    2014 年 38 巻 2 号 p. 369-371
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
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     小胸筋腱の停止が烏口突起をこえて延長する解剖学的破格は以前から知られている.過去に我々が調査した屍体解剖実習体では小胸筋延長腱の発現率は34.6%(81肩中21肩)であり,延長腱は烏口突起を越えて関節包の方に広がっていた.今回,肩腱板断裂症例において鏡視下修復術時に小胸筋延長腱の有無を確認し形態について観察した.
     対象は2012年6月から12月までに当院で鏡視下腱板修復術を施行した腱板断裂症例25例(男性13例,女性12例)であった.術中にまず烏口突起基部を同定し小胸筋延長腱の存在を確認した.
     延長腱は25例中10例(40%)に認められた.烏口突起に停止せずに上面を滑動し棘上筋の方向に向かい,烏口上腕靭帯とは明瞭に区別がついた.
     臨床でも延長腱の発現頻度は比較的高く,その走行および付着の形態より肩甲上腕関節機能に影響を与えることが示唆された.鏡視下手術では延長腱の存在を留意する必要があると考えられた.
機能
  • 江川 琢也, 水掫 貴満, 仲川 喜之, 二階堂 亮平, 酒本 佳洋, 井上 和也, 田中 康仁
    2014 年 38 巻 2 号 p. 372-376
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
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     2009年1月 ∼ 2012年3月まで当院で腱板修復術を施行した97例を対象に,術後いかなる動作が改善していたかを上肢障害評価表(DASH)にて調査した.男性52例,女性45例,手術時年齢は64.5(40-83)歳であった.術前と術後1年のDASHを各項目別に比較した.また,DASHとJOA scoreとの相関を統計学的に調査した.最も改善率が高かったのは「レクリエーション活動」と「頭上の電球の交換」であった.術後1年でのDASHは39.7点から11.0点へ改善し,JOA scoreは67.8点から95.3点に改善した.DASHとJOA scoreの間に相関を認めた.患者立脚型評価法であるDASHと医療者側の評価法であるJOA scoreとの間で相関を認めることがわかった.術後の機能評価としてDASHは有用な評価法であると思われた.その中でも「レクリエーション活動」「頭上の電球交換」で高い改善率を認めることを術前説明に用いても問題はないものと思われた.
検査
  • 呉屋 五十八, 山口 浩, 末永 直樹, 大泉 尚美, 金谷 文則
    2014 年 38 巻 2 号 p. 377-379
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
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     陳旧性腱板広範囲断裂例の単純X線像において上腕骨頭が大きくなっているのか調査した.対象は,陳旧性腱板広範囲断裂15肩.男性7肩女性8肩,平均年齢は76歳であった.両肩単純X線肩正面像の上腕骨頭最大直径(HD),肩甲骨関節窩長(GH),肩峰骨頭間距離(AHI),骨頭上方化(SM),鎖骨幅(CW)を計測.比較項目は1)HD,2)GH,3)AHI,4)SM,5)AHI+SMとした.1)HD;患側53.9mm • 健側48.9mm,2)GH患側37.8mm • 健側35.7mm,3)AHI;患側5.5mm • 健側9.2mm,4)SM;患側5.9mm • 健側1.5mm,5)AHI+SM;患側11.4mm • 健側10.7mmであり,1)HD,3)AHI,4)SMは患側と健側で有意差を認めた. 骨頭が大きくなる理由としてmechanical factorとして腱板機能消失による骨頭上方化と著明な不安定性により起こる可能性やnutritional factorとして腱板損傷による動きや機能の低下,関節液からの軟骨栄養機構や関節内圧の変化により起こる可能性が考えられる.陳旧性腱板広範囲断裂例において骨頭直径が有意に大きいことより上腕骨頭は肥大する可能性が示唆された.
  • 今井 恒志郎
    2014 年 38 巻 2 号 p. 380-383
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
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     腱板断裂に対して手術を施行した患者に対して,術前のエコー所見と,MRI所見,術中の鏡視所見を比較し,腱板断裂の診断に対するエコーの感度を調べ,それについて検討した.
     腱板断裂の診断で関節鏡手術を施行した,43例43肩に,全例手術当日に全身麻酔下で,エコー検査を両肩施行した.検査肢位は,ビーチチェアポジションで行なった.
     その後に同じ体位で,関節鏡視下に手術を施行した.
     腱板断裂のエコー検査の感度は86.0%であった.そのうちで,不全断裂は62.5%,完全断裂は91.4%であった.
     完全断裂にもかかわらず,エコーにて断裂がないと診断した3例中2例は,腱実質部分での断裂であり,大結節の腱板付着部の腱板組織は残っていた.このような断裂は,肩峰が障害となってプローブを垂直に当てられない.エコー検査の感度をより上げるには,肩関節伸展位での,前方アプローチでの短軸像を見る必要があると思われた.
  • 新福 栄治, 内山 善康, 大見 博子, 橋本 紘行, 持田 讓治, 繁田 明義
    2014 年 38 巻 2 号 p. 384-387
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
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     腱板不全断裂に対して手術を行なった症例をretrospectiveに検討し,滑液包面不全断裂(以下BS)に対する術前MRIの有用性を検討した.対象は手術所見が棘下筋または棘上筋の腱板断裂であった201例(完全断裂132例,BS 30例,腱内断裂28例,関節包面不全断裂11例)である.手術時平均年齢は61.2歳であった.術中所見と術前MRIを比較した.術前MRIは1.5Tで表面コイルを用い斜位冠状断撮影を行なった.BSの形態はMRIと手術所見から4型(菲薄型,途絶型,弁型,層間波及型)に分類した.BSに対するMRIの感度は67%,特異度93%,正確度89%であった.BSの術中断裂形態は弁型が15例(50%)と最も多く,MRIと術中所見の断裂形態が一致したのは11例(36.7%)であった.断裂形態4型とも特異度,正確度,陰性的中率は高かったが,弁型と層間波及型の感度は低かった.
  • 落合 信靖, 佐々木 裕, 山口 毅, 木島 丈博, 橋本 瑛子, 松木 圭介, 見目 智紀
    2014 年 38 巻 2 号 p. 388-391
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
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     拡散強調画像は細胞内の水分子の運動を強調し,拡散の大きさはApparent Diffusion Coefficient(ADC)値で表され,筋活動評価が可能である.この拡散強調像を用いて肩甲下筋の診断テストでの腱板の筋活動評価を行った.Bear hug test,Bear hug 45° test,Belly press test,肘を体幹につけた状態でのBelly press test,Lift off test,臀部でのLift off testで30秒間15Nの負荷を加え,その前後で撮影し比較検討した.その結果,すべてのテストで肩甲下筋のADC値のみ負荷後有意に上昇していたが,棘上筋、棘下筋では有意差を認めなかった.本研究ではすべてのテストで選択的に肩甲下筋のみのADC値が上昇しており,すべてのテストで肢位に関係なく肩甲下筋の筋活動を特異的に誘発しており,肩甲下筋の検査として有用と考えられた.
  • 佐々木 泰輔, 前田 周吾
    2014 年 38 巻 2 号 p. 392-395
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
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     目的は肩MRI斜矢状断像における肩甲骨関節窩の前傾角度を検討することである.2011年に施行された175肩のMRI斜矢状断像を評価し,Z軸に対する関節窩長軸の前傾角度を計測した.手術された23肩では,関節窩長軸を基準として撮影したMRIの報告書と手術所見を対比した.
     前傾角度は最小19度,最大50度,平均38(標準偏差:5.7)度であった.関節窩長軸を基準として撮影したMRIにより,前方複合体損傷(n=16),Hill-Sachs lesion(n=15),腱板損傷(n=7),SLAP lesion type 3(n=1)をほぼ正確に診断できた.
     肩甲骨関節窩の前傾角度にはかなりのばらつきがみられた.このことは,通常の撮像面が関節窩長軸と交差する角度にもかなりのばらつきがあることを示す.肩MRIの撮像面は関節窩長軸を基準とすべきと考えられた.
  • 弓削 英彦, 岡田 貴充, 山本 卓明
    2014 年 38 巻 2 号 p. 396-398
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
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     軟骨に対する画像検査の中で,我々は早期軟骨変性に鋭敏なT1rho mapping法に着目した.肩関節では,同方法を用いて軟骨変性を調査した報告は渉猟した限りではなかった.本研究の目的は,健常者の上腕骨頭軟骨のT1rho値を測定,検討することである.健常人7人7肩,平均30.3歳,3.0tesraのMRIを用いて評価した.結果:平均T1rho値は40.63msで,上腕骨頭下方領域での平均T1rho値は,上方領域と比較して有意に高値であった.上腕骨頭下方領域でのT1rho値の上昇は,健常肩関節の動態上で下方領域は上方領域より軟骨への負荷が掛かることが原因であると考えられ,上腕骨頭下方領域でのGAG含有濃度の低下を示した.今回の結果は,過去に報告された膝 • 股関節での軟骨のT1rho値と近似していた.肩関節領域でT1rho mapping法は軟骨の評価法として有用であった.
  • 宮武 克年, 武田 芳嗣, 藤井 幸治
    2014 年 38 巻 2 号 p. 399-402
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
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     鏡視下腱板修復術(ARCR)の術前MRIにおいてDavidsonの提唱したGeometric classification(GC),及び棘上筋の短縮(MR)と棘上筋腱長(TL)が術後の修復状態を予測する因子となるかを検討した.ARCRを行った88例91肩を対象として,術前MRIにおいて,断裂の前後径と内外径からGCを4タイプに分類し,MR,TLはMeyerの方法によって計測した.術後6ヶ月のMRIでの修復状態を元に,それぞれの項目の再断裂率および再断裂に対するオッズ比とカットオフ値を算出した.結果は,GCは有意にmassive (contracted) typeの再断裂率が高く,オッズ比は6.0であった.再断裂群は修復群に比べMRが有意に長くTLが短かった.カットオフ 値はMRが36.5mm,TLが14.5mmであった.以上からGC,MR,TLは再断裂予測因子として利用できる.massive contracted type,MRが36.5mm以上, TLが14.5mm以下 の症例は注意を要する.
  • 見目 智紀, 宮島 玄陽, 落合 信靖, 山崎 博範, 佐々木 裕, 山口 毅, 木島 丈博, 橋本 瑛子, 佐々木 秀一, 田中 優路, ...
    2014 年 38 巻 2 号 p. 403-406
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
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     本研究の目的は自動運動及び他動運動の肩関節内外旋動作をCine-MRIで撮像し,自動運動時と他動運動時の腱板形態の比較を行う事である.対象は健常成人22名44肩.MRIはSigna1.5T,撮像はFIESTA法を用いた.撮像断面は肩甲下筋小結節付着部近位約1/2の軸位画像,撮像動作は20秒間の肩関節下垂位内外旋自動運動及び他動運動とした.評価は肩甲下筋と棘下筋の動作中の筋形態変化及び中間位に対する最大内外旋位の断面積比とした.他動運動でも両筋の形態変化は自動運動と同様であった.自動,他動運動ともに中間位に対する最大外旋位, 最大内旋位の筋断面積比は両筋肉ともに遠心性収縮時の方が有意に大きかった.しかし,自動運動と他動運動間では有意差は認められなかった.他動的な可動域訓練においても自動運動と同様の協調運動が得られており,腱板筋への促通効果があるものと考えられた.
病態
  • 寺林 伸夫, 伊藤 芳毅, 松本 和, 瀧上 伊織, 大野 貴敏, 渡邉 恒夫
    2014 年 38 巻 2 号 p. 407-410
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     腱板断裂患者は,坐位や肩を温めることで夜間痛が緩和することがある.我々は夜間痛を有する腱板断裂患者において前上腕回旋動脈上行枝(以下AHCA)の収縮期血流速(以下PSV)が速くなっている事を報告した.そこで坐位や肩を温めることで,AHCAのPSVが遅くなるのではないかと仮説を立て,健康成人において坐位と肩関節加温下でのPSV変化を測定し解析した.健康成人10名を対象とし,以下の2つの状況でAHCAのPSVを測定した.体位変換実験は,10分間の安静臥床後,坐位に変換させた.加温実験は,10分間の安静臥床後,5分間42℃で肩関節周囲を加温した.体位変換では,臥位20.0cm/s,坐位直後10.4 cm/sと坐位で有意にPSVの低下を認めた(P<0.05).温度変化では,加温前20.7 cm/s,5分加温後17.7 cm/sと有意にPSVの低下を認めた(P<0.05).健常肩における坐位と加温状況での2つの実験においてPSVの低下が認められ,実際の患者における関節包血流速の変化と夜間痛の症状との関係が推察された.
  • 佐々木 毅志, 山本 敦史, 小林 勉, 設楽 仁, 一ノ瀬 剛, 下山 大輔, 濱野 哲敬, 高岸 憲二, 大澤 敏久
    2014 年 38 巻 2 号 p. 411-413
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     夜間痛は肩関節疾患の特徴的な愁訴の一つであるが,その詳細については不明な点が多い.本研究の目的は肩関節疾患における夜間痛について調査を行い,その特徴と背景因子について検討することである.2011年4月1日から2013年3月31日の期間における当科肩外来初診患者232人を対象とした.男性121人,女性111人,平均年齢56.4歳であった.年齢,性別,診断名,罹患側,肩関節痛の症状,肩関節可動域,筋力,夜間痛の頻度,夜間痛の症状,理学所見との関連について調査を行った.対象の58.2%に夜間痛を認め,その64.4%は肩痛のためほとんど毎日夜間に覚醒し,93.3%は体位による疼痛の増減を認めた.夜間痛がある例はない例と比較すると年齢が高く,安静時痛が強い例が多かった.
脱臼
  • 笹沼 秀幸, 菅谷 啓之, 高橋 憲正, 河合 伸昭, 渡海 守人, 大西 和友, 上田 裕輔, 星加 昭太, 森石 丈二
    2014 年 38 巻 2 号 p. 414-417
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     高齢者の陳旧性肩関節脱臼に対する関節鏡視下整復術とキルシュナーワイヤーによる一時的肩甲上腕関節固定併用療法の臨床成績を報告する.対象は2003年から2012年までに加療した8例8肩であり,平均年齢71(58-71)歳(男性1例,女性7例)である.脱臼放置期間は平均12(4-40)週で,前方脱臼が7例,後方脱臼が1例であった.手術時間,術後再脱臼の有無,最終診察時のX線上の関節症性変化の有無,可動域,Rowe スコアおよび日本肩関節学会肩関節不安定症評価法(以下,JSS-SI Score)を調査した.平均手術時間は60(33-134)分であり,術後再脱臼はなく,可動域,RoweスコアとJSS-SI scoreは術後有意に改善した.しかし,修復不能な腱板断裂や巨大なHill-Sachs病変を合併していた3例で,最終診察時に変形性関節症性変化を認めた.本研究の結果は過去の観血的手術の報告と比較しても,ほぼ同等の臨床成績であった.鏡視下手術という低侵襲性に加え脱臼整復が容易であることから,高齢者の陳旧性肩関節脱臼に対する本法は有用な治療法である.
  • 佐藤 哲也, 中川 照彦, 多嶋 佳孝, 宮本 崇, 松山 嘉彦, 鈴木 志郎, 木田 将量, 土屋 正光
    2014 年 38 巻 2 号 p. 418-421
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
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     陳旧性肩脱臼に対して,症例毎の骨欠損部に応じ,関節窩側の骨移植,上腕骨側の欠損部充填,関節窩と上腕骨の両方の再建の3種類の手術を行った.その予後につき報告する.対象は,15例15肩である.手術時の平均年齢は65.3歳,受傷から手術までの期間は約3.9か月,手術後の経過観察期間は平均約20.2か月であった.前方脱臼が10肩,後方脱臼が5肩であった.再手術を2肩で行った.JOA scoreは,術前31.5点から術後75.5点に有意に改善した.合併症は,1例で再脱臼し,2例で亜脱臼位が遺残した.腋窩神経麻痺が1例,重度の関節症性変化が1例で生じた.上腕骨頭や関節窩の著しい骨欠損は陳旧性脱臼の主要な不安定性の要因と考えられた.このため,関節窩の骨欠損には烏口突起移行術が,上腕骨の骨欠損にはそれに応じたMcLaughlin法や人工骨頭置換術の選択が有効であった.
  • 星加 昭太, 菅谷 啓之, 高橋 憲正, 河合 伸昭, 渡海 守人, 大西 和友, 上田 祐輔, 森石 丈二
    2014 年 38 巻 2 号 p. 422-425
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     肩鎖関節脱臼は,肩外傷の約10%を占め,比較的遭遇することの多い外傷である.今回肩鎖関節脱臼に対して保存療法を行ったスポーツ選手56例をオーバーヘッドスポーツ群13例(O群),コンタクトスポーツ群43例(C群)に分け受傷原因,Rockwood 分類Type別に受傷から競技復帰までの期間を比較検討した.
     スポーツ復帰期間はO群で平均8.2週,C群6.0週で両群間に有意差を認めた.Rockwood分類Type別における復帰までの期間に有意差を認めなかったが,各TypeでO群の復帰期間は長い傾向にあった.またO群の投球側で平均7.6週,そのうちType IIIでは平均9.7週であった.
     両群に対する保存療法は,過去の報告と同等の成績で十分有効であると考えられた.早期復帰のためには脱臼の遺残を容認し,早期にリハビリテーションを開始することが必要であると思われた.またオーバーヘッドスポーツ競技者に対する早期スポーツ復帰に関しては肩甲帯を含む身体機能の改善が重要であると思われた.
  • 櫻井 真, 柴田 陽三, 伊崎 輝昌, 三宅 智, 藤澤 基之, 篠田 毅, 熊野 貴史
    2014 年 38 巻 2 号 p. 426-430
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     肩鎖関節脱臼に対し,肩鎖靭帯再建術のみを施行した群(AC群)と,肩鎖靭帯と烏口鎖骨靭帯を同時に再建し,再建した烏口鎖骨靭帯を烏口突起に縫合した群(AC+CC suture群)と,烏口突起下にループ状に通した群(AC+CC loop群)の臨床成績を比較検討した.AC群はRockwood分類type3が4例,AC+CC suture群はtype3が2例 • type5が1例,AC+CC loop群はtype3が2例であった.術前 • 術後 • 最終観察時の,烏口突起から鎖骨下縁までの最短距離(CCD)の患健比と,肩峰下縁から鎖骨遠位端下縁までの距離(ACD)を肩峰高で除した割合を検討した.CCD比は,AC群は術前193% • 術後103% • 最終観察時119%,AC+CC suture群はそれぞれ244% • 142% • 169%,AC+CC loop群は289% • 107% • 110%であった.ACD比は,AC群は術前72% • 術後6% • 最終観察時10%,AC+CC suture群はそれぞれ104% • 2% • 45%,AC+CC loop群は81% • 0% • 2%であった.肩鎖関節脱臼に対する肩鎖靭帯と烏口鎖骨靭帯の再建術は有用な術式である.今回の検討では,AC+CC loop群が最も整復位が良好であった.
  • 中川 滋人, 武 靖浩, 尾崎 律郎, 水野 直子, 前 達雄
    2014 年 38 巻 2 号 p. 431-433
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     関節窩骨欠損を伴う外傷性肩関節前方不安定症に対し鏡視下Bankart修復術を行い,術後1年以上の経過観察が可能であった85肩を対象とし,骨欠損の大きさと骨片の有無により4群に分け再発率を調査した.次に,骨片があった症例のうち術後CT評価が可能であった41肩につき,骨癒合の有無を調査し,再発率を比較した.再発は14肩(16.5%)にみられた.骨欠損20%未満骨片なし群で3/25(12%),骨欠損20%未満骨片あり群で6/36(16.7%),骨欠損20%以上骨片なし群で3/5(60%),骨欠損20%以上骨片あり群で2/19(10.5%)と,骨欠損20%以上骨片なし群で有意に再発率が高かった.CT上33肩で骨癒合が確認でき,再発は4肩(12.1%)にみられた.一方,骨癒合が得られなかった8肩のうち4肩(50%)で再発し,有意に再発率が高かった.骨片の有無以外に,骨癒合を得ることも重要であることがわかった.
  • 後藤 晃, 菅本 一臣
    2014 年 38 巻 2 号 p. 434-438
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     本研究の目的は,これまで不明であった骨性Bankart lesionの骨片の転位による肩関節の安定性への影響を調査することである.
     肩関節前方安定性を評価するために,新鮮屍体6肩をload-cell machineに設置.計測条件は,正常関節窩,25%骨欠損,25%骨性Bankart lesionの2mm内側転位,5mm内側転位,2mm下方転位,5mm下方転位である.
     骨性Bankart lesionの内側転位型は,正常関節窩に比べて,肩安定性が65%低下.また,転位骨片が脱臼直前に肩安定性に寄与していた.一方,下方転位型では,2mm,5mm転位型とも,肩安定性が40%低下し,脱臼直前まで安定性に関与していた.
     骨性Bankart lesionの骨片の転位量・転位方向に関する本研究結果は,手術適応や術後評価に有用となるのではないかと考えられた.
  • 高橋 博之, 山本 宣幸, 永元 英明, 井樋 栄二, 黒川 大介, 佐野 博高, 檜森 興, 田中 稔, 佐藤 克巳
    2014 年 38 巻 2 号 p. 439-443
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     CT画像を用いて日本人の烏口突起の大きさを計測し,Latarjet法を行うのに十分な大きさを有しているかどうか調査すること.
     反復性肩関節前方脱臼患者57人のCT画像を用いた.画像解析ソフトzioTerm 2009 TM を用いて烏口突起の大きさを計測し,患者の身長や性別との関連を検討した.
     移行可能な烏口突起長(移行可能突起長)は平均28.3mm,烏口突起基部の幅は12.2mmであった.移行可能突起長が25mm未満の症例は9例(16%)存在し,そのうち7例が女性であった.25mm未満の症例の平均身長は160cmであり,25mm以上の症例の平均身長は168cmで有意差がみられた(p = 0.01).また,女性において移行可能突起長25mm未満の症例の割合は,身長157cm以上では18.8%であったが,157cm未満の症例では66.7%と有意に高かった(p = 0.03).
     臨床的にLatarjet法を行うのに必要とされる烏口突起長が25mmに満たない症例は,日本人においては男性より女性,特に157cm未満の症例に多いことがわかった.
  • 永井 英, 鈴木 一秀, 西中 直也, 上原 大志, 筒井 廣明
    2014 年 38 巻 2 号 p. 444-447
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     本研究の目的は鏡視下Bankart & Bristow変法(以下ASBB法)術後CTで烏口突起設置位置とスクリュー方向を検討し,体格に影響なく安全に良好な設置が可能であるかを検討することである.ASBB法を施行し,術後CTを行ったアスリート16例を対象とした.CT横断像で烏口突起と関節窩縁との距離(以下HP),矢状断での関節窩への設置角度(以下VP),横断像でのscrewの角度(A-angle),矢状断像での角度(S-angle)を計測し,BMI25未満(A群),BMI25以上(B群)の2群に分け比較検討し,合併症の有無について調査した.HPは平均-0.7mm,VPは平均32.1°で1例を除きすべて至適設置であった.A-angle平均23°,S-angle平均-0.3°であった.すべての項目でAB両群間に有意差は認めず,合併症も認めなかった.本法は関節内から烏口突起設置位置の確認が可能であるため,93%が適切な位置への設置が可能となったと考えられた.再脱臼のリスクが高く体格の大きいアスリートに対して,本法は体格に影響なく移植骨片を安全に良好な設置が可能な有用な手技と考えられた.
  • 鈴木 一秀, 永井 英, 上原 大志, 筒井 廣明
    2014 年 38 巻 2 号 p. 448-451
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     安全で確実な骨癒合を目的とした鏡視下Bankart & Bristow変法(ASBB法)の手術手技を提示し普及させることを目的とした.外傷性肩関節前方不安定症例12例(平均19.7才)を対象とした.ロッドをsplitした肩甲下筋々間より関節内に挿入する際,脊椎MEDで使用するダイレーターを用いて肩甲下筋々間を拡大する.関節窩内側の至適位置にガイドピンを刺入,ドリリングした後,ACL再建の骨孔作製用ドリルを用いて関節窩の烏口突起移行部を掘削する.ダイレーターを用いる事で,関節窩のドリリング時に肩甲下筋を巻き込まない,烏口突起移行部の母床状態が鏡視可能,肩甲下筋々間が容易に拡大できるなどの利点があった.ACLドリルを使用する事で烏口突起移行部の母床の掘削が容易かつ確実に施行可能であった.本法は既存の器械を使用することで,安全かつ簡易に施行可能な手術手技として普及することが期待される.
  • 塩崎 浩之, 藤井 俊英, 越川 静和
    2014 年 38 巻 2 号 p. 452-455
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     鏡視下Bankart修復術において,通常の前方ポータルからの関節窩前下方に対するアンカー挿入は,アンカー孔が対側骨皮質を穿孔しアンカーの初期固定力が低下する危険性が指摘されている.我々は,5時ポータルからのアンカー挿入が関節窩対側骨皮質の穿孔を防げるのではないかと考え,鏡視下Bankart修復術を施行した21例の患者を対象に,術前後のCT検査を実施し,穿孔頻度を検討した.その結果,右肩関節窩時計表示で5時~5時半に挿入したアンカーの穿孔率は,ドリル長24mmで35.7%であり,ドリル長17mmで14.3%であった.臨床例で同様の研究はないが,屍体肩を用いた研究では,前方ポータルからドリル長21mmで5時半 ∼ 6時に挿入したアンカーの穿孔率は100%であったことから,5時ポータルからのアンカー挿入は穿孔率を減らせる可能性が高いと考えられる.
  • 大西 和友, 菅谷 啓之, 高橋 憲正, 松木 圭介, 河合 伸昭, 渡海 守人, 上田 祐輔, 星加 昭太, 森石 丈二
    2014 年 38 巻 2 号 p. 456-459
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     中高年の反復性肩関節脱臼(以下,反復脱)は,腱板断裂との関連が示唆されているが,その鏡視下手術の報告は少ない.40歳以上で鏡視下手術を行った反復脱82例を対象とし,初回脱臼年齢40歳未満(Y群:55例)と40歳以上(E群:27例)に分類し,病態と術後成績を検討した.
     関節窩骨形態はY群で摩耗型が多く,E群より骨欠損率は有意に高かった.Bankart損傷は両群とも96%で認めたが,腱板完全断裂を認めた13例は全例E群であった.両群ともRowe/JOAスコアは有意に改善したが,再脱臼をE群の2例に認めた.26例でBankart損傷と腱板断裂を同時に認め,腱板を修復せずにBankart修復のみを行った16例に再脱臼はなかったが,両者を同時修復した10例中4例で関節症変化の進行を認めた.
     初回脱臼年齢が低く罹病期間が長いと骨形態が悪く,高いほど高率に腱板断裂を合併していた.Bankartと腱板の同時修復は術後関節症のリスクがあり,腱板修復を追加して行うかは十分な検討が必要である.
  • 梶田 幸宏, 岩堀 裕介, 斉藤 豊, 佐藤 啓二, 花村 浩克, 筒井 求, 伊藤 岳史, 伊藤 隆安
    2014 年 38 巻 2 号 p. 460-463
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     今回,全身麻酔下に外転90度における前方動揺性を体位と回旋角度を変えて検討した.
     反復性肩関節前方脱臼の40例40肩を対象とした.前方動揺性の徒手評価方法は,全身麻酔下に仰臥位で肩関節を外転90度に保持し,外旋90度と,側臥位で患側の肩関節を外転90度に保持し,外旋0度,45度,90度でHawkinsの分類を用いて行った.
     40肩中14肩(35%)で仰臥位よりも側臥位で前方動揺性が増した.側臥位における前方動揺性は,外旋0度と45度で有意に不安定性ありの症例が多かった.
     側臥位では上腕骨頭の自重が関節窩方向にかかるため,より正確な評価が可能である.肩関節前方脱臼が,IGHLのanterior bandとaxillary pouchが伸長される深い外旋角度ではなく,浅い外旋角度で発生していたと考えられる.前方動揺性の評価は側臥位で行う方が有用であり,外傷性反復性肩関節脱臼が浅い外旋角度で発生していることが示唆された.
  • 間中 智哉, 伊藤 陽一, 松本 一伸, 市川 耕一, 平川 義弘, 松田 淑伸, 中村 博亮
    2014 年 38 巻 2 号 p. 464-467
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     習慣性肩関節後方脱臼は位置性肩関節後方脱臼とも言われ,肩関節90°挙上時に,後方へ(亜)脱臼し,水平外転位により自己整復されて挙上可能になるのが特徴的である.今回我々は本疾患に対する鏡視下後方関節包縫縮術の術後臨床成績を評価した.対象は23例24肩(男18肩,女6肩)である.臨床成績は,自覚症状,posterior jerk testを中心とした理学所見及びJSS shoulder instability score(以下JSS score)による評価を術後6ヶ月及び12ヶ月に施行し,術前と比較した.自覚症状は,術後6ヶ月で全例消失した.しかし術後12ヶ月で,理学所見上の不安定性の再発を4/24肩(17%)に認め,その内3肩では,自覚症状の再発も認めた.JSS scoreは術前平均59.8点から,術後6ヶ月で86.9点,術後12ヶ月で93.7点に有意に改善した(P<0.02).本術式の術後12ヶ月の臨床成績は概ね良好であり,有用な低侵襲手術方法であるが,再発例に対する検討が必要である.
骨折
  • 五嶋 謙一, 澤口 毅
    2014 年 38 巻 2 号 p. 468-471
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     PHILOSを用いて骨接合術を行った上腕骨近位端骨折の治療成績を検討した.対象はPHILOSを用いた23例23肩である.男性7例,女性16例,手術時平均年齢は66.7歳.骨折型はAO分類でA2:2例,A3:4例,B1:10例,B2:1例,C1:1例,C2:3例,C3:2例.臨床評価としてROM,JOAスコアを,X線評価として骨癒合の有無,頸体角,合併症を調査した.JOA スコアは平均88点,AO分類別ではtypeA:96.5点,typeB:91.2点,typeC:73.8点であった.合併症はtype Cの2例に骨頭壊死,また骨頭内反転位を5例に認め,うち3例はtype C骨折であった.PHILOSを用いた骨接合術の成績はtypeC以外は概ね良好であった.高齢者のtype C骨折は内側支持性の獲得は難しく骨移植の併用を考慮すべきと考えた.
  • 中山 雄平, 衣笠 清人, 西井 幸信
    2014 年 38 巻 2 号 p. 472-476
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
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     当院におけるPHILOS を用いた治療成績を報告する.対象は2005年11月 ∼ 2013年1月までPHILOS を用いて骨接合術を行った上腕骨近位端骨折のうちAO分類A2,B1,B2,C2であった81症例.Neck-Shaft angle(NS angle)計測による内反の進行,骨癒合の有無,骨癒合期間,JOAスコア,可動域,合併症をORIF法とMIPO法で比較し検討した.内反の進行,骨癒合の有無及び期間,JOAスコア,平均自動挙上可動域および内旋可動域において,両群間に有意差を認めなかった.平均外旋可動域のみAO分類A2,B2においてMIPO法に有意差(p=0.01,0.0002)を認めた.MIPO法は高度な技術が要求されるため,その適応を熟知し限界を見極めた上で,術者が困難と判断した場合はORIF法を選択する方が賢明である.
  • 塩崎 浩之, 藤井 俊英, 越川 静和
    2014 年 38 巻 2 号 p. 477-783
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     上腕骨近位端骨折偽関節は,もともと骨粗鬆症がある高齢者に生じやすい上に,偽関節部での骨吸収や骨欠損の存在,廃用による骨萎縮の進行のため,治療がきわめて困難である.患者は肩関節機能の全廃に等しい状態で機能障害が大きいため,手術治療が必要となる.我々は,偽関節部の髄内に主に自家腸骨柱を移植してロッキングプレートで内固定した10例(男性2例 • 女性8例,平均年齢73.8歳)の術後1年以上の治療成績を検討した.骨癒合は,2例で再手術を要したが,全例で得られた.術後の自動可動域の平均は,挙上が111°,外旋が29°であり,術後のJOAスコアは平均86.1点であった.挙上が90°以下の症例が4例あったが,3次元空間で手が使えるようになったことで,患者の満足度は比較的高かった.我々の術式は,骨頭骨片が縮小した症例や,骨欠損が大きい症例にも対応可能で,有用と考えられた.合併症として,再手術例も含め計11回の採骨中5例に採骨部骨折を生じており,注意が必要である.
  • 松久 孝行, 西中 直也, 上原 大志, 鈴木 昌, 小原 賢司, 酒井 健, 筒井 廣明
    2014 年 38 巻 2 号 p. 484-487
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     近年、上腕骨近位端骨折に対してantero-lateral acromial approachを用いたminimally invasive plate osteosynthesis(MIPO)法での手術方法が報告されている.当院ではProximal Humerus Internal Locking SystemTM(PHILOSTM)用デバイスを使用したMIPO法を施行しており,その治療成績について検討したので報告する.対象は2012年10月 ∼ 2013年3月までにPHILOSTM用デバイスを使用しMIPO法を施行した8例(男性2例,女性6例),年齢は平均68.9歳,平均観察期間は6.9ヵ月であった.日本整形外科学会肩関節疾患治療判定基準(JOAスコア),肩関節可動域およびneck/shaft angle(NS angle)について検討した.術後平均JOAスコアは81.5点,平均自動挙上角度は124.4°,平均外旋角度は33.8°,術後NS angleは平均131.8°であった.合併症として内反転位を1例に認めたが,良好な骨癒合と機能改善が得られた.上腕骨近位端骨折に対するPHILOSTM用デバイスを使用したMIPO法は軟部組織への侵襲が最小限に抑え,良好な整復位の獲得と適切なプレート設置が可能になることでmedial supportを得られ,良好な骨癒合と機能回復が期待できる有効な治療法と考える.
  • 井戸田 大, 深谷 泰士, 大羽 宏樹
    2014 年 38 巻 2 号 p. 488-491
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     上腕骨近位端骨折に対するCCS固定術の術後成績について検討した.2009年1月より2012年11月までに上腕骨近位端骨折に対してCCS固定術を施行した8例8肩を対象とした.男性5例,女性3例で,平均年齢は54.8歳,観察期間は平均11.9ヶ月であった.手術はdeltoid split approachを用いて,透視併用の直視下に整復しCCS固定を行った.骨折型,最終調査時JOA スコア,自動可動域(屈曲,外転,外旋),骨癒合率と術後合併症について検討した.骨折型はNeer分類で2 part 骨折6例,valgus-impacted 3 part骨折2例であった.最終調査時JOA スコアは平均86.1 ± 11点,平均自動可動域は屈曲144 ± 35.8°,外転134 ± 39.3°,外旋45 ± 18.7°であった.全例で骨癒合が得られたが,肩関節拘縮を1例,大結節の小骨片転位によるインピンジメントを1例で認めた.本研究では全例で骨癒合が得られ,上腕骨近位端骨折に対して,CCS固定術は有用と考えられた.
  • 柏木 健児, 藤原 祐輔, 原田 洋平, 根木 宏, 望月 由
    2014 年 38 巻 2 号 p. 492-495
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     上腕骨外科頚骨折術後骨頭の前後屈変形や回旋変形についての報告は少ない.著者らは上腕骨近位端骨折術後の整復状況を,CT画像を用いて評価し検討した.上腕骨外科頚骨折に対して髄内釘法を施行した25例25肩を対象とした.手術時平均年齢は70.7歳(49 ∼ 85歳),平均経過観察期間は36カ月であった.最終経過観察時,両上腕骨全長CTを撮影し,軸位断面,冠状断面および矢状断面を作成した.軸位断面より後捻角を,冠状断面より頚体角を測定し,矢状断面より結節間溝と骨幹軸のなす角度を骨頭の前屈角とし,健側と比較した.患健側差は,後捻角が平均10.6(0.3 ∼ 39.8)度,頚体角が平均10.3(0.3 ∼ 30.2)度,前屈角は平均8.1(0.4 ∼ 18.8)度であった.単純X線像での評価では,前後屈変形と回旋変形の評価は困難で,今まで良好な整復位と思われた症例も,前後屈変形や回旋変形をきたしている可能性がある.
  • 大塚 記史, 石田 康行, 矢野 浩明, 谷口 昇, 大田 智美, 中村 志保子, 帖佐 悦男
    2014 年 38 巻 2 号 p. 496-498
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     肩甲骨骨折後遺残痛の原因がquadrilateral spaceへの骨棘と考えられ,骨棘切除にて疼痛が消失した一例であった.症例は49歳,男性.通勤労災事故で右肩甲骨体部骨折を受傷した.近医で保存療法され骨癒合したが右肩痛が残存した.受傷後13ヶ月後,鏡視下デブリドマン施行,術後右肩痛軽快したが特定の肢位での疼痛,右肩外側への放散痛を認めた.CTでquadrilateral spaceへの骨棘を認めた.受傷22ヶ月後,観血的骨棘切除術施行し,術後直後,右肩痛は消失した.
  • 藤井 俊英, 塩崎 浩之, 近 良明
    2014 年 38 巻 2 号 p. 499-502
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     鎖骨遠位端骨折の手術療法に対しては各種の方法が報告されているが,それぞれにいくつかの問題点が指摘されている.われわれはプレート固定に軟鋼線を併用する術式を行ってきたので,その治療成績について報告する.
     2009 ∼ 2012年に手術をした23例(男性17例,女性6例)を対象とした.Craig分類type I 1例,IIa 3例,II b 10例,V 9例であった.
     骨癒合は全例に認めた.肩関節の前方挙上の自動可動域は術後3か月で平均153.2°,最終観察時で平均162.8°であった.合併症はスクリューの緩みを1例に認めた.Craig分類type IIbの3例とType V 1例に肩鎖関節脱臼を認めた.4例とも術後3週間以内の早期に生じていた.
     鎖骨遠位端骨折に対してプレートに軟鋼線を併用する術式は,早期に良好な可動域が獲得可能で,有用な術式であると考えられた.無症状ではあるがtype II bとⅤの症例の一部に術後早期に肩鎖関節脱臼を認めており,円錐靭帯の再建や修復が必要か今後の検討課題である.
  • 渡邊 宣之, 相羽 久輝, 大塚 隆信
    2014 年 38 巻 2 号 p. 503-505
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     転位のある鎖骨遠位端骨折の治療に,骨折部のみ固定する専用プレートであるナカシマメディカル社製NOW-J plate®を使用したので報告する.対象患者は8例8肩であり,全員男性で平均年齢47.5歳であった.骨折型はCraig分類ではI型1例 IIA 1例 IIB 4例 V 2例であった.平均手術時間は70.3分(51-123),プレートはすべて3穴を使用し,3.5mmロッキングスクリューを全例3本用い,2.4mmロッキングスクリューを平均6.3本(3-9)用いて固定した.平均経過観察期間は243.3(118-395)日であった.平均術後自動可動域は外転161.3(120-180)度,屈曲152.5(120-170)度であった.骨癒合は7例に認め,ハンチントン舞踏病と精神疾患を合併した1例が偽関節となった.その他は経過中に骨癒合が得られ,3例に術後平均319日後に抜釘術を行った.最終調査時の日本整形外科学会(以下JOA)肩鎖関節機能評価法では89.2点であった.今回の結果はおおむね良好であったが,1症例に偽関節を認めた.今後は術後経過に不安のある症例はBosworth法を追加するなどの手技の工夫が考慮される.
筋腱疾患
  • 河合 伸昭, 菅谷 啓之, 高橋 憲正, 渡海 守人, 松木 圭介, 大西 和友, 上田 祐輔, 星加 昭太, 森石 丈二
    2014 年 38 巻 2 号 p. 506-510
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     腱板広範囲断裂に対する鏡視下手術の術後成績を評価した.対象は2010年 10月から2011年12月までに腱板広範囲断裂に対して手術を行い術後1年以上経過観察が可能であった58例である.ブリッジングスーチャーによる一次修復(A群)が44例,術中に一次修復不能と判断した14症例に対しては大腿筋膜を用いたパッチブリッジ法(B群)を施行した.術前後の可動域,JOA score,Constant scoreを二群それぞれで評価したところ,両群とも挙上可動域,JOA score,Constant scoreに有意な改善を認めた.術後1年のMRIでは,再断裂をA群で12例(27%),B群で8例(57%)に認めた.鏡視下手術にて良好な成績が得られたが,パッチブリッジ法では外旋筋力が一次修復に劣っており残存腱板機能に影響されることが考えられた.
  • 横矢 晋, 中邑 祥博, 原田 洋平, 越智 光夫, 望月 由
    2014 年 38 巻 2 号 p. 511-515
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     腱板断裂修復術後のcuff integrityを放射状MRIにより評価した.術前および鏡視下腱板修復術後1年で放射状MRIを撮影した51例を対象とし,肩甲下筋腱(SSC),棘上筋腱(SSP),棘下筋腱(ISP)それぞれの再断裂率を算出した.またJOA scoreを用いて術後成績を評価した.放射状MRIではSSPだけでなく,SSCおよびISPに関してもcuff integrityの描出が良好であった.再断裂率はSSCでは0%であったが,SSPは14.6%(7/48),ISPでは19.0%(4/21)であった.SSP+ISP断裂に限定すれば再断裂率は25.0%(2/8),SSC+SSP+ISP断裂では38.5%(5/13)であった.術後JOA scoreはSSPとISP両方とも再断裂を示した群のみで有意に不良であった.このようにSSCやISPの修復状態が良好に描出される放射状MRIは有用である.
  • 小西池 泰三, 竹下 歩
    2014 年 38 巻 2 号 p. 516-519
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     早期の肩甲下筋腱断裂は深層が断裂し浅層が残存するという断裂形態である.このような断裂部位をMRIで直接に描出するのは困難である.Y-shaped viewにおける肩甲下筋の萎縮のように,早期の肩甲下筋腱断裂に有用な二次的病変がないか,術前MRIの矢状断の肩甲下筋周囲の脂肪抑制T2高輝度に注目して検討を行った.術前MRIのY- shaped viewにおいて肩甲下筋の萎縮を認めるものを除外した腱板断裂の症例を,術中に肩甲下筋腱断裂の有無で分類し検討した.Y- shaped viewより外側のスライスで肩甲下筋関節面側に認めるT2強調画像での高輝度変化あるとすれば,肩甲下筋断裂の存在はsensitivity 73%, specificity 92%であった.腱板疎部内側や関節面レベルでの肩甲下筋関節面側のT2高輝度は肩甲下筋腱断裂の二次的所見として有用と考える.
  • 原田 洋平, 横矢 晋, 中邑 祥博, 越智 光夫, 望月 由
    2014 年 38 巻 2 号 p. 520-523
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     腱板大断裂に対し,小皮切のDebeyre-Patte変法を併用して腱板修復を行った患者の腱板構成筋のMRIと筋力変化を検討した.術前,術後3ヵ月,半年,1年でMRIを撮影し,棘上筋および棘下筋の浮腫,脂肪浸潤,筋萎縮について評価した.また術前,術後半年,1年で外転筋力と外旋筋力を測定した. 棘上筋,棘下筋の浮腫はそれぞれ術後3ヵ月で7肩,4肩,術後半年で5肩,2肩にみられ,術後1年では認めなかった.脂肪浸潤は1例を除き術前から術後1年まで変化はなかった.筋萎縮は術前から術後3ヵ月で有意に改善していたが,その後は変化なかった.外転および外旋筋力は術前から術後1年で有意に増加していた.筋起始部を剥離する本法は,一旦は筋に侵襲を与えるものの1年以内に改善し,通常の一次修復と同様に筋力の改善が得られた.一方,術後に見た目の筋萎縮は改善したものの術後3ヵ月以降は筋萎縮の変化なく,脂肪浸潤も変化せず,筋の質自体は術後1年までは変化しなかった.
  • 角田 陽平, 山本 敦史, 小林 勉, 設楽 仁, 一ノ瀬 剛, 下山 大輔, 佐々木 毅志, 濱野 哲敬, 高岸 憲二, 大澤 敏久
    2014 年 38 巻 2 号 p. 524-527
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     本研究の目的はMRI斜位矢状断での腱板構成筋群の筋萎縮,脂肪浸潤の程度(FI)の評価が腱板修復術前と術直後で変化するか検討することである.鏡視下腱板修復術を行った65例65肩を対象とした.筋萎縮の評価はThomazeauらの方法に準じOccupation ratio(OR)を計測し,FIは同スライスでGoutallier分類で評価し,これらを術前と術直後で比較した. ORは棘上筋,棘下筋において術前と比べ術直後で有意に改善しており,この変化は中断裂以上の症例で認められた.FIは術前と術直後で変化は認められなかった.腱板修復術後の早期に形態学的な筋萎縮が改善するとは考えがたく,これらの変化は腱板修復術により腱板構成筋群の筋腹が外側に移動したことにより生じたものと推察された.中断裂以上の症例において術後にMRIで筋萎縮の評価を行う際には,手術操作自体にによる影響を考慮しなければならない.
  • 間中 智哉, 伊藤 陽一, 松本 一伸, 市川 耕一, 平川 義弘, 松田 淑伸, 中村 博亮
    2014 年 38 巻 2 号 p. 528-531
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     JuggerKnot TM ソフトアンカーのみを用いた鏡視下腱板修復術後の腱板修復状態をMRIにて評価した.対象は,31例31肩(男性17例,女性14例)である.腱板断裂の形状とサイズ別に,滑液包側腱板部分断裂群(BPRCT群):20肩,小断裂群(S群):6肩,中断裂群(M群):5肩であった.術中に使用したアンカーの個数を各群で検討した.また,術後6ヶ月にて全例MRI撮影し,菅谷らの分類に従って評価した.術中に使用したアンカーの個数は,BPRCT群で平均3.2個,S群で平均3.2個,M群で平均4.8個であった.M群では,BPRCT群とS群に比べて有意に使用アンカー個数は多かった.術後MRI評価にてtype I:11肩,type II:18肩,type III:2肩,type IV:0肩,type V:0肩であった.滑液包側腱板部分断裂,小断裂及び中断裂に対してJuggerKnot TM ソフトアンカーのみを用いた鏡視下腱板修復術術後の腱板修復状態は良好であった.
  • 石田 康行, 帖佐 悦男, 矢野 浩明, 谷口 昇, 大田 智美, 中村 志保子, 大塚 記史
    2014 年 38 巻 2 号 p. 532-536
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     鏡視下腱板修復術はsuture bridge(SB)法へと進化してきた.われわれもSB法を導入し腱板の整復を意識した修復を行っている.今回,滑液包側にknotがでないSB法群(-群),knotがでるSB法群(+群)の臨床成績,腱板修復状態,術後肩峰下骨形態を検討したので報告する.-群29肩,+群20肩を対象とした.両群間で性差,年齢,断裂形態に有意差はなかった.臨床成績を術前,術後1年時のJOA scoreで,腱板修復状態を術後1年時MRIで評価した.肩峰下骨形態は術後1年時CTで,一部が浸食されたimpingement type,腱板の形に適合したcongruity type,変化がないnormal typeに分類し評価した.臨床成績は-群,術前平均60.1点が術後平均92.9点へ,+群,術前平均63.1点が術後平均94.4点へと有意に改善した.腱板修復状態は再断裂率が-群,21%,+群25%であった.肩峰下骨形態は-群でcongruity type,+群でimpingement type,congruity typeの割合が高かった.臨床成績,腱板修復状態は概ね良好であった.肩峰下骨形態に関してはknotの有無,糸の質が影響していた.
  • 檜森 興, 田中 稔, 佐藤 克巳, 井樋 栄二
    2014 年 38 巻 2 号 p. 537-540
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     大結節部の骨孔の作成が簡易なArthro TunnelerTM (以下AT)を用いた鏡視下骨孔法による腱板修復術の,短期成績を報告する.
     対象はATを用いて鏡視下骨孔法による腱板修復術を施行した腱板断裂38例38肩である.性別は男性26肩,女性12肩で年齢は平均65.5歳(49-78歳)であった.腱板断裂の大きさは不全断裂2肩,小断裂2肩,中断裂25肩,大断裂9肩で,平均経過観察期間は6カ月(3-8カ月)であった.検討項目は,術前および最終経過観察時点での日本整形外科学会肩関節疾患治療成績判定基準(以下JOA スコア)の疼痛及び合計点,自動可動域(挙上,外転,外旋),術後3カ月のMRI所見とした.
     術前,術後のJOAスコアはそれぞれ疼痛;8.0点/19.9点,合計;65.8点/80.5点,自動可動域は挙上;135°/157°,外転;126°/150°,外旋40°/38°であった. 術後MRIでは38肩中6肩(16%)に再断裂を認めた.
     本法は成績も良好で骨脆弱症例に対応できるなど多くの利点を有し,アンカー法に代わる有力な手術法となりうる.
  • 廣岡 孝彦, 迫間 巧将, 名越 充, 橋詰 博行, 小瀬 靖郎, 河合 亮
    2014 年 38 巻 2 号 p. 541-545
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     腱孔作成修復術は,腱板関節包側不全断裂の残存腱板にデルマパンチで4ミリの孔を作成し,同部よりfoot printの新鮮化とanchorの挿入を行い,腱板を修復する術式である.完全断裂に形成して修復する方法と比較し,手術時間,術後1年の肩関節可動域,JOAスコア,MRIを検討した.46肩を対象とし,比較対象の完全断裂形成後修復術は10肩であった.手術時間は腱孔作成修復術が有意に短く,術後自動外旋角度が劣っていたが,JOAスコアでは2群間に有意差はなかった.MRIでの再断裂(Sugaya分類Grade4以上)を4例に認め,全て腱孔作成修復術で生じていた.腱孔作成修復術は残存腱板をできる限り温存でき,修復時の残存腱にかかる緊張も少なく,より低侵襲と考えられる.再断裂を防止するには,アンカーの糸をデブリドマンした部位でなく,腱板の正常と考えられる部位にかけることが重要と考えられた.
  • 石垣 範雄, 畑 幸彦, 中村 恒一, 松葉 友幸, 村上 成道, 小林 博一, 伊坪 敏郎, 植村 一貴, 加藤 博之
    2014 年 38 巻 2 号 p. 546-548
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
    【目的】本研究の目的は,一次修復困難な腱板断裂例における術後cuff integrityに影響する術前因子を明らかにすることである.
    【対象】腱板断端をfootprintより近位に縫着した111例のうち,術後2年時のMRI上で修復部が全層性に低信号化した53例(L群)と全層性に高輝度変化が残存した23例(H群)の2群を抽出して術前のROM, MMT, JOAスコアおよび棘上筋の脂肪変性について比較検討を行った.
    【結果】ROMは,屈曲角度のみH群が有意に制限されていた. MMTはすべての方向でH群が有意に低下していた. JOAスコアは2群間に有意差を認めなかった.棘上筋の脂肪変性はH群にGrade3の割合が有意に多かった.
    【考察および結論】一次修復困難な腱板断裂例における術後cuff integrityに影響する術前因子は,棘上筋筋腹の脂肪変性の程度,屈曲制限,筋力低下であった.
  • 田中 稔, 檜森 興, 佐藤 克巳, 井樋 栄二
    2014 年 38 巻 2 号 p. 549-552
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     本研究の目的は,Arthro TunnelerTM を用いた鏡視下骨孔法による腱板修復術の術式を紹介し,手技上の問題点と対策につき検討することである.
     肩腱板断裂に対し鏡視下骨孔法による腱板修復術を施行した71肩を対象とし,術中の問題点とその原因,対策につき検討した.
     外側骨孔の位置不良を16肩(22%)に,術中の内側骨孔拡大を13肩(18%)に認めた.いずれも内側骨孔の作成角度の不良が原因と考えられた.縫合時の外側骨孔部のカットアウトを12肩(17%)に認めた.11肩は部分的なカットアウトであり強固な縫合が可能であった.
     本術式では,外側骨孔の位置不良および内側骨孔拡大が問題点であり,内側骨孔の正確な作成が重要である.多少のカットアウトが生じても術中強固な縫合が可能であり,骨脆弱性の強い症例に対しても有用と思われた.
  • 洪 洋熹, 吉村 英哉, 日山 鐘浩
    2014 年 38 巻 2 号 p. 553-555
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
    はじめに】鏡視下腱板修復術(ARCR) の良好な成績が報告されているが,再断裂に関する議論も避けられない.再断裂の要因は様々だが,術後疼痛との関係の報告はなかった. ARCR後の再断裂と疼痛に関するvisual analog scale(VAS) • 疼痛閾値の関係を検討した.【対象と方法】当院でARCRを行い,術後1,3,6,12ヶ月でVASと疼痛閾値を測定し得た72例72肩を対象とした.広範囲断裂は除外した.術後12ヶ月のMRIで菅谷分類type 1-3 を治癒,type 4 • 5を再断裂とした.腱板治癒群と再断裂群のVAS と疼痛閾値に関し,Mann Whitney検定を行った.【結果】再断裂は8肩(中断裂3肩,大断裂5肩) だった.安静時 • 運動時とも術後3ヶ月時の VAS は再断裂群で有意に低く,1,6ヶ月時でも低い傾向だった.疼痛閾値は有意差を認めなかった.【考察】再断裂群は術後の痛みを感じにくかった.術後VAS低値症例では,後療法を工夫することで再断裂を予防できる可能性がある.今後さらなる検討を要する.
  • 美舩 泰, 乾 淳幸, 無藤 智之, 原田 義文, 高瀬 史明, 国分 毅, 名倉 一成
    2014 年 38 巻 2 号 p. 556-559
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     今回我々は,肩腱板断裂断端部における脂肪変性の有無に関する検討および腱板由来細胞の脂肪分化に対するplatelet rich plasma (PRP)の影響について検討した.まず手術時に採取した腱板断端組織にオイルレッドO染色を行い,脂肪変性を確認した.また採取した腱板組織の一部から腱板由来細胞を分離し,その細胞をPRP存在下に脂肪分化培地で培養し,脂肪分化能およびcell viabilityについて検討した.組織検査では腱板組織の50%にオイルレッドO染色陽性の脂肪変性を認めた.細胞培養ではオイルレッドO染色ならびにreal-time PCRによりPRP添加群で脂肪分化の抑制を認め,WST染色においてPRP添加群で有意に高いcell viabilityを示した.以上よりPRPは腱板組織の脂肪分化を抑制する可能性が示唆され,また脂肪分化が誘導されている状態でも,PRPは腱板由来細胞のviabilityを高める効果があることがわかった.
  • 新福 栄治, 内山 善康, 大見 博子, 橋本 紘行, 持田 讓治, 繁田 明義
    2014 年 38 巻 2 号 p. 560-564
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     一次修復不能な広範囲腱板断裂に対して行った小切開棘下筋腱移行部分修復術の中期成績について報告する.対象は25例,手術時平均年齢は64歳,平均術後経過観察期間は60か月であり,術前 • 2年 • 5年に評価をおこなった.手術はmini-open法にて棘下筋腱を骨頭上前方に移行し重層固定をおこなった.検討項目はJOA score,外転 • 外旋筋力,またMRIにより術前 • 後の筋萎縮(Goutallier grading system)を評価した.JOA scoreは術前53.3点から術後2年で術後85点に改善し,術後5年で85点に保たれていた.また術後外転 • 外旋筋力も術前と比べ術後2年にて改善し術後5年で保たれていた.術前の棘上筋の筋萎縮は術前平均1.9から術後2年にて2.6へ進行し術後5年では変化はみられなかった.棘下筋は術前平均1.6から術後2年で変化はみられなかったが術後5年では2.5へ進行した.
  • 河合 伸昭, 菅谷 啓之, 高橋 憲正, 渡海 守人, 松木 圭介, 大西 和友, 上田 祐輔, 星加 昭太, 森石 丈二
    2014 年 38 巻 2 号 p. 565-568
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
     腱板断裂でPseudoparalytic shoulder(以下,PPS)となり鏡視下手術を行った症例の断裂形態の評価と手術成績を報告する.対象は2008年10月から2011年12月までに術前自動挙上が90°以下だが他動挙上可動域に制限のないPPS患者に対し鏡視下手術を施行し,1年以上経過観察が可能であった28例である.術式の内訳は,一次修復が19例,鏡視下パッチ法が9 例であった.断裂形態は,肩甲下筋腱の完全断裂を含んだ前上方断裂が21例と全体の75%を占めていた.臨床成績は有意な改善を認め, PPSの改善率は86%(24例)であった.術後1年のMRIで再断裂は13例(46%)に認めた.腱板機能のForce coupleが障害されるような偏った断裂形態でPPSが起こることが示唆された.比較的高い再断裂率に関わらず術後臨床成績は良好であり,鏡視下手術にて対応できる症例もあると考えられた.
  • 畠山 雄二, 小林 志
    2014 年 38 巻 2 号 p. 569-571
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル 認証あり
    【目的】徒手筋力計を用いて腱板断裂症例の筋力を計測することである.
    【対象と方法】対象は2011年4月から2012年4月までに腱板断裂で直視下修復術を行った20例である.平均年齢は65歳,平均術前罹病期間は26週である.90°前方挙上位での最大屈曲筋力,下垂位中間位での最大内外旋筋力を計測し非症状側と比較した.
    【結果】 屈曲筋力は術前47.9%から最終評価時75.0%,外旋筋力は59.8%から87.0%,内旋筋力は84.9%から98.3%に有意に改善した.断裂程度別では,棘上筋腱単独断裂群では外旋筋力のみ,2腱以上の断裂群ではすべての肢位で有意に改善した.
    【考察】術後17か月で屈曲,外旋筋力が75%,87%の回復に留まっていたことは,今後の指標になり得る.棘上筋腱単独断裂群でも,外旋筋力が改善したことは興味深い.
    【結語】徒手筋力計は腱板断裂手術症例の筋力回復の評価に有用である.
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