肩関節
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40 巻, 3 号
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筋腱疾患
  • 黒河内 和俊, 高橋 成夫, 與田 正樹, 山本 隆一郎, 中島 基成
    2016 年 40 巻 3 号 p. 996-1000
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル 認証あり
     腱板断裂症例における上腕二頭筋長頭腱(以下LHB)損傷に関して,肩甲下筋腱(以下SSC)断裂を合併していない症例について調査した.関節鏡視下腱板修復術(以下ARCR)で一次修復が可能だった腱板断裂症例150例で,LHB損傷合併症例は56例であった.56例を,SSC断裂を認めない12例とSSC断裂を認めた44例の2群に分け,性別,年齢,外傷歴や肩関節脱臼の有無,LHB損傷の程度,腱板断裂サイズ,ARCR術後成績を比較した.術後経過観察期間は最低1年とした.性別と年齢では2群間で差を認めなかった.外傷歴でも差を認めなかったが,SSC断裂を認めない症例に3例の肩関節脱臼症例が含まれていた.SSC断裂を認めない症例では,LHBの軽度損傷が有意に多かった.腱板断裂サイズや術後可動域ではSSC断裂の有無で差を認めなかったが,SSC断裂を認めない症例の方が認めた症例より術後JOA scoreが高かった.

    “この論文は第42回日本肩関節学会で発表した”
  • 梶山 史郎, 松尾 洋昭, 尾﨑 誠
    2016 年 40 巻 3 号 p. 1001-1004
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル 認証あり
     鏡視下腱板修復術を行った症例の上腕二頭筋長頭腱(LHB)病変の有無と,術前の各種臨床検査及び3D-CTによる結節間溝(BG)形態との関連を検討した.対象は83例84肩で手術時平均年齢は63.1(38-80)歳.LHBに関連する3つの臨床検査(BG圧痛,Speed Test(ST),Yergason Test(YT))と3D-CTでのBG形態(5 type)を術前に,LHB病変の有無とhourglass test(HGT)を術中に評価し比較検討した.BG圧痛,ST,YTのLHB病変に対する感度はそれぞれ63%,65%,46%,特異度は52%,38%,62%であった.BG形態のTypeが進行するにともない,LHBの損傷形態は有意に重症化し,HGTの陽性率も有意に高かった.術前3D-CTによりBG形態を評価することは,LHB病変の存在やHGTの結果の予測に有用であることが示唆された.
  • 植田 安洋, 乾 淳幸, 美舩 泰, 坂田 亮介, 無藤 智之, 原田 義文, 高瀬 史明, 片岡 武史, 国分 毅
    2016 年 40 巻 3 号 p. 1005-1008
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル 認証あり
     糖尿病と腱障害との関連が報告されているがその分子生物学的な発生機序については未だ明らかではない.本研究ではその機序の一端を明らかにするために,糖負荷が腱細胞に及ぼす影響について検討した.正常ラットアキレス腱細胞を高グルコース培地で培養し通常グルコース培地の場合と比較した.蛍光プローブを用いて活性酸素種(ROS)を検出し顕微鏡で観察し定量した. Real-time PCR によりNADPH オキシダーゼ(NOX)及びコラーゲンの遺伝子発現を, WST assay により細胞増殖活性を測定した.その結果,高グルコース培地では腱細胞におけるNOX1, NOX4の発現量及びROS産生の増加を認めた.また,腱の主要構成成分である 1 型コラーゲンの発現が減少し,細胞増殖活性の低下を認めた.以上より,酸化ストレスが糖負荷により亢進し,腱障害の一因となっている可能性が示唆された.
神経疾患
  • 大西 信三, 馬見塚 尚孝, 坂根 正孝, 山崎 正志
    2016 年 40 巻 3 号 p. 1009-1011
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/28
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     胸郭出口症候群の画像検査として3DCT angiographyの有用性が報告されているが,造影剤や放射線被曝の問題,神経・静脈系の描出が不十分などの問題点がある.MR画像におけるmaximum intensity projection(MIP)法は,脳血管系の描出が良好であることが報告されている.本研究は胸郭出口症候群例でのMIP法の有用性を検討した.臨床的に胸郭出口症候群と診断された10名を対象とし,Wright testに準じた肢位で3D-STIRを撮像,MIP画像に再構成し肋鎖間隙での鎖骨下動静脈陰影を評価した.10例中5例で鎖骨下静脈陰影の狭小化,3例で途絶を認め,狭窄なしは2例であった.MRI-MIP法は,静脈と動脈の独立した評価が可能な補助診断法で静脈性の胸郭出口症候群の診断に適し,血管起源の胸郭出口症候群の診断に有用と考えられる.
変性疾患
  • 立原 久義, 浜田 純一郎, 山口 光國, 小川 清久
    2016 年 40 巻 3 号 p. 1012-1014
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル 認証あり
     我々は,凍結肩を「大胸筋(前方)タイプ」と「肩甲骨・肋骨(後方)タイプ」の2つに分類できることを報告した.震災後,「Hypermobile scapula(HS)タイプ」の存在が明らかになったため,タイプ別の臨床的特徴を明らかにし,治療戦略を確立することを目的とした.凍結肩と診断した99例を,診断基準に従い3タイプに分類し,性別,年齢,初診時のVASとROM,治療後1カ月後のVASとROMの改善度,治療期間を比較した.その結果,性別と年齢に差は無かったが,初診時のVASとROM,治療後1カ月後のVASとROMの改善度,治療期間において,前方タイプが他の2タイプと比較し有意に経過が良かった.以上より,前方タイプは大胸筋などの関節外因子が拘縮の要因であり,理学療法の反応が良いが,他の2タイプは関節内因子の関与が強く,適切な時期に授動術または鏡視下手術を考慮すべきであると考える.
  • 名越 充, 廣岡 孝彦, 檜谷 興, 石濱 琢央, 橋詰 博行
    2016 年 40 巻 3 号 p. 1116-1119
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/04/26
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    明らかな誘因のない拘縮を伴う肩関節痛(凍結肩)の治療成績および成績に影響する因子を検討した.症例は120例120肩(男性42例,女性78例,平均年齢53.8歳)で,ステロイド(プレドニゾロン®5mg/日)を治療開始1ヶ月間内服とリハビリテーションによる保存的治療を行った.成績はJOAスコア,Visual Analogue Scaleで評価し,年齢,性,拘縮重症度,既往症,罹病期間,治療期間,自動可動域などの影響について多変量解析を用いて統計解析を行った.VASは治療前8.6cmが1ヶ月後5.6cm,治療後1.7cm,JOAは治療前64.1点から88.2点と有意に改善した.プレドニゾロン®の効果を表す1ヶ月後VASは,女性は男性と比較して効果が出ると解析された.治療後VASは,拘縮が軽症で,罹病期間が短く,治療前VASが低い方がその値が小さくなることから,症状が軽く,早期に治療した方が満足度はよいと判断された.
  • 西頭 知宏, 笹沼 秀幸, 飯島 裕生, 金谷 裕司, 福島 崇, 齊藤 寿大, 竹下 克志
    2016 年 40 巻 3 号 p. 1015-1017
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル 認証あり
     本研究の目的は,自己報告式の健康調査票であるSF-36を用いて,第5.6頚椎神経根ブロック下肩関節授動術前後で患者QOLが改善しているかどうかについて調査することである.
     対象は15人15肩(男6人,女9人),年齢は平均57.9歳(36-73),右肩9例,左肩6例で,授動術までの罹病期間は平均9.7カ月(6-19)であった,評価項目は授動術前,術後24週のSF-36(8つのsubscale)とした.
     SF-36の8項目のsubscaleのうち,身体機能,日常役割機能(身体),体の痛み,活力,社会生活機能,日常役割機能(精神)の6項目は術後6ヵ月で有意に改善した.残り2項目の全体的健康感,心の健康は有意差を認めなかった.
     重度凍結肩に対する第5.6頸椎神経根ブロック下授動術は,術後6ヵ月の患者QOLを改善した.
  • 三谷 誠, 藤林 功, 山裏 耕平, 森 裕之, 寛島 佑史, 尾﨑 琢磨
    2016 年 40 巻 3 号 p. 1018-1022
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル 認証あり
     凍結肩に対して超音波ガイド下にC5,C6神経根ブロック後に徒手授動術(M法)を行い,その治療成績について他の方法と比較検討することを目的とした.挙上120°以下の凍結肩62例64肩を対象とした.M法を施行した徒手授動術群(M群)19例20肩,関節内ステロイド注射群(S群)28例29肩,手術群(O群)15例15肩である.M群は1%塩酸リドカイン10~18mlを用いて超音波ガイド下にC5, C6ブロックを行い,さらに肩甲上腕関節内にステロイドを注入後,徒手授動術を施行した.S群は肩甲上腕関節内にステロイドを平均2.9回注入し,理学療法を施行した.O群は鏡視下に関節包全周性切離を施行した.各群の経時的な可動域,夜間痛消失時期などを評価した.術後1ヶ月の時点で他の群と比較してM群が有意に可動域の改善を認め,夜間痛消失時期も早かった.M法は他の方法と比べ早期に疼痛,可動域が改善し,有用な方法である.
  • 村岡 治, 塩崎 浩之
    2016 年 40 巻 3 号 p. 1023-1025
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル 認証あり
     難治性の有痛性変形性肩鎖関節症に対する鏡視下鎖骨遠位端切除術の臨床成績をまとめたので報告する.対象は,2009年~2013年に鏡視下鎖骨遠位端切除術を施行した5例5肩,全例男性で,手術時年齢は33歳~70歳(平均49.0歳)であり,術後の経過観察期間は7か月~20か月(平均12.0か月)であった.JOAスコアは術前平均75.1 ± 4.2(SD)点から術後平均98.3 ± 2.2(SD)点へ改善し,術前に全例で認めた肩鎖関節の圧痛と水平内転テストは全例で術後に陰性化した.合併病変は,上方関節唇損傷(SLAP type II)が4例,棘上筋腱の関節包側不全断裂が4例であり,いずれもデブリードマンを施行した.最終観察時のX線所見では,2例で軽度ながら骨切除部の再増殖を認めたが,症状とは関連していなかった.
炎症疾患
  • 大見 博子, 内山 善康, 繁田 明義, 新福 栄治, 橋本 紘行, 今井 洸, 持田 讓治
    2016 年 40 巻 3 号 p. 1026-1029
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル 認証あり
     化膿性肩関節炎に対し術後に感受性のある抗菌薬を単剤投与した群と抗菌薬の組織移行性を高めるために多剤併用した群の臨床成績を比較検討した.鏡視下あるいは直視下化膿性肩関節炎手術後に起因菌が同定され抗菌薬投与を行い,投与終了後1年以上経過観察し得た10例10肩,手術時平均年齢67.3±6.1(SD)歳を対象とした.2008年~2012年に抗菌薬1剤のみを投与した5例をO群,2013年~2014年に感受性のある抗菌薬1剤にクリンダマイシンの単剤,あるいは,リファンピシンとクリンダマインシンの2剤を併用した5例をM群とした.群間比較の結果,M群はO群に比べ単回の手術で再燃しなかった(p=0.01).また,M群はO群に比べ入院期間が短く術後成績が良い傾向にあった(p=0.06, =0.08).化膿性肩関節炎に対し関節腔・軟骨・骨への薬剤移行性を考慮し,多剤併用することで感染を短期間に鎮静し得る可能性が示唆された.
その他
  • 井上 悟史, 菅谷 啓之, 高橋 憲正, 河合 伸昭, 渡海 守人, 大西 和友, 上田 祐輔, 星加 昭太, 濱田 博成, 飯島 裕生, ...
    2016 年 40 巻 3 号 p. 1030-1033
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル 認証あり
     水泳はその競技特性から肩関節の十分な可動域や筋力を必要とする.関節鏡視下腱板修復術(以下ARCR)後に競技復帰を目指す場合,可動域などの機能回復に対する要求は非常に高い.本研究の目的は,ARCR後の水泳への復帰状況を後ろ向きに調査することである.2011年1月から2012年12月の間,当院で腱板断裂に対してARCRを施行した439例中,術前に水泳を行っていた18例を対象とした.男性4例,女性14例,手術時平均62歳(47~78歳),平均経過観察期間は36ヵ月(29~44ヵ月)であった.術前に競技会へ出場していたものは6例で,その他はレクリエーションレベルであった.断裂サイズは,部分断裂5例,小断裂8例,中断裂2例,大断裂2例,広範囲断裂1例であった.検討項目は,競技復帰率,復帰までの期間とした.また,4泳法それぞれにおける復帰率と,断裂サイズによる復帰率を調査した.競技へ復帰できたものは17例(94%)であり,開始まで平均8ヵ月(2~18ヵ月)を要した.術前と同レベルまで復帰できたものは7例(39%)であり,復帰まで平均14ヵ月(4~24ヵ月)を要した.また,術前に平泳ぎ,背泳,クロール,バタフライを泳いでいたものは,それぞれ12例,15例,18例,11例であり,術後に再びその泳法ができるようになったものは,それぞれ10例(83%),11例(73%),17例(94%),5例(45%)であった.また,中断裂以上の5例は全例,術前と同レベルまで復帰できなかった.本研究の結果から,ARCR後であっても多くの症例は水泳へ復帰できる事が明らかになった.しかし,術前レベルに復帰できる割合は39%のみであり,とくにバタフライへの復帰は困難な事が多かった.また,中断裂以上の症例で術前レベルまで復帰できた症例は無く,術後も水泳への完全復帰を希望する場合は,その適応を慎重に検討する必要があると思われた.
  • 藤井 康成, 泉 俊彦, 栫 博則, 小倉 雅, 東郷 泰久
    2016 年 40 巻 3 号 p. 1034-1037
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル 認証あり
     上腕骨後捻角度の投球側での増大に伴い,下垂位での外旋角度も投球側が増大しているかを検証した.対象は,投球スポーツ選手で肩に障害を有する選手19例(障害群)と障害のない選手14例(非障害群)であった.非投球スポーツ選手26例を対照群とした.全例に対して下垂位での外旋角度を両肩で測定した.統計学的検討として,障害群と非障害群においては投球側と非投球側間,対照群では利き手側と非利き手側間の下垂位外旋角度の差を3群間で比較検討した.3群とも投球側および利き手側の下垂位外旋角度が反対側より小さかった.下垂位外旋角度の差は,障害群が-5.0±5.8度,非障害群が-2.9±6.7度,対照群が-0.4±2.4度で,障害群で有意に小さかった(p<0.01).下垂位での外旋角度は,投球側の後捻角の増大にもかかわらず障害群の投球側で有意に低下していた.
  • 土山 耕南, 大井 雄紀, 高木 陽平, 乾 浩明, 吉矢 晋一, 信原 克哉
    2016 年 40 巻 3 号 p. 1038-1042
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル 認証あり
    はじめに:投球障害予防において肩関節最大外旋位(MER)からボールリリース(BR)を含むacceleration相における肩甲帯の役割の重要性が数多く述べられている.我々は投球動作における肩甲帯と肩関節および体幹の運動との関係性について運動学的に検証し,明らかにすることにした.
    方法:野球投手321名を対象にモーションキャプチャ・システムを用い投球動作解析を行った.投球動作を計測するため,触診により解剖学的骨特徴点上に赤外線反射マーカを36個貼付し,それら全ての3次元空間位置をサンプリングレート500Hzにて獲得した.肩甲帯の運動を記述するために肩甲帯座標系,胸部座標系を設定した.肩甲帯の運動は屈曲/進展(水平内転/水平外転)・引上げ/引下げ(上方回旋/下方回旋)の2自由度とし,胸部座標系に対する肩甲帯座標系の回転をオイラー角で表現した.ただし,肩甲帯座標系は第7頚椎棘突起,胸骨上切痕,肩峰に貼付した赤外線反射マーカの3次元空間位置情報から設定した.また,肩甲帯の運動,肩関節,体幹運動の関連性を検討するために,腰部座標系と上腕座標系を設定した.肩関節の運動は胸部座標系に対する上腕座標系の回転を,また体幹運動は腰部座標系に対する体幹座標系の回転をそれぞれオイラー角で表現した.
    結果:MERにおいて肩甲帯の水平内転/外転と肩関節の水平内転/外転,および体幹の投球側/非投球側への側屈にそれぞれ相関がみられた.また,BRにおいても肩甲帯の水平内転/外転と肩関節の水平内転/外転,体幹投球側/非投球側への側屈にも同様に相関がみられた.
    結論:投球時の過度の水平外転は関節間力の増強につながり,投球障害予防の点から大切な指標の一つとされている.本研究結果より肩甲帯と肩関節および体幹の運動との間に有意な関係性を認めた.よって肩甲帯の運動を評価することが投球障害予防の観点から重要であると意味付けた.
治療法
  • 伊藤 陽一, 間中 智哉, 市川 耕一, 平川 義弘, 松田 淑伸, 清水 勇人, 中村 博亮
    2016 年 40 巻 3 号 p. 1043-1046
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル 認証あり
     偽性麻痺を伴う広範囲腱板断裂症例に対する最終治療法として,リバース型人工肩関節全置換術(以下,RSA)が導入され,その有効性が期待されている.しかし,従来から行われてきた鏡視下腱板縫合術(以下ARCR)とRSAの術式選択は容易ではない.ARCRが不成功の場合でも,RSA再手術により十分な治療効果が得られるかを判断するために,RSA初回手術例:Primary RSA(P群)と鏡視下手術不成功後のRSA再手術例:Secondary RSA(S群)において,短期臨床成績を比較検討した.対象は43例44肩,P群25肩,S群19肩.評価は,患者背景,自動可動域,筋力,臨床成績を中心に,術前,術後3カ月及び6カ月に施行し,統計学的に検討した.患者背景に有意差を認めず,自動屈曲及び自動外転可動域は両群間に有意差を認めなかったが,自動外旋可動域及び外旋筋力は,S群において有意に低い値を示した.臨床成績は概ね良好な経過を示した.RSA初回手術例でも再手術例でも,自動屈曲及び外転可動域は良好な改善が期待できるが,外旋可動域及び外旋筋力の回復は再手術例において不良であった.
  • 櫻井 真, 柴田 陽三, 伊崎 輝昌, 藤澤 基之, 篠田 毅, 熊野 貴史, 黒田 大輔, 三宅 智
    2016 年 40 巻 3 号 p. 1047-1051
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル 認証あり
     RSA 術後の除痛効果には非常に満足しているが,術後の屈曲角度は症例により大きく異なっている.術前の理学所見・画像所見・既往症から術後の屈曲角度を予測できないかと考え検討したので報告する.対象は,当院にてRSA を施行し術後最短6ヵ月以上の直接検診が可能であった17例17肩である.男性7肩・女性10肩,平均年齢77.9歳,平均経過観察期間9.4ヵ月であった.17肩中7肩,41% がrevision 症例であった.術後の屈曲角度と,年齢・三角筋面積比・患肢延長比,術前の可動域・JOA score との相関関係を検討した.また,患側肩の手術既往の有無との関係についても検討した.術後の屈曲角度と術前理学所見,画像所見は,いずれの項目も相関関係を認めなかった.患側肩の手術既往有り群では手術既往無し群に比し,術後の屈曲角度が有意に低値を示した.RSA 術後の屈曲角度は,術前の可動域・JOA score・関節症変化の程度には影響されず,患側肩に何らかの手術既往を有する場合に改善が乏しい.
  • 笹沼 秀幸, 金谷 裕司, 原田 亮, 斎藤 寿大, 安藤 治郎, 竹下 克志
    2016 年 40 巻 3 号 p. 1052-1054
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル 認証あり
     当施設でのリバース型人工関節置換術(RSA)の同種血輸血状況とその特徴を調査したので報告する.2014年4月より2015年10月までに行われた30肩である.男性11肩,女性19肩,平均年齢76.0(67-85)歳であった.ガイドライン上,相対的手術適応となる70歳以上の高齢者の上腕骨近位部粉砕骨折が9肩含まれていた.再置換術は3肩,腸骨移植が1肩,Bio-RSAが4肩,L'Episcopo法3肩であった.評価項目は同種血輸血率,輸血量,輸血群と非輸血群に分けて術前ヘモグロビン(Hb)値,術後ドレーン出血量,原疾患の内訳を比較検討した.全体の同種血輸血率は10肩で33.0%であった.輸血群の術前Hb値は非輸血群のそれより低値であった.輸血群に上腕骨近位部粉砕骨折症例が7肩(70%)含まれていた.急性期骨折症例では術前貧血と周術期出血量の増加により同種血輸血の危険が増す可能性が示唆された.
  • 澤田 雄大, 間中 智哉, 伊藤 陽一, 市川 耕一, 平川 義弘, 松田 淑伸, 清水 勇人, 中村 博亮
    2016 年 40 巻 3 号 p. 1055-1058
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル 認証あり
     リバース型人工肩関節置換術(以下RSA)において,術前の肩甲骨関節窩形態や術後のグレノイドコンポーネントの設置位置を正確に把握することは重要である.今回,RSAの術前・術後にCT評価を行い,肩甲骨関節窩形態やグレノイドコンポーネントの設置位置を評価したので報告する.対象は,14肩14症例.術前の肩甲骨関節窩傾斜角は5.7±8.5°で,術後のグレノイドコンポーネントの傾斜角は,-6.9±8.1°であった.術前の肩甲骨関節窩の前後捻角は,-1.2±8.5°で,術後のグレノイドコンポーネントの前後捻角は -2.1±9.2°であった.術後のグレノイドコンポーネントの下方への張り出しは,4.3±2.4mmであった.CTにて術前の肩甲骨関節窩形態や術後のグレノイドコンポーネントの設置評価が可能であった.
  • 落合 信靖, 橋本 瑛子, 佐々木 康人
    2016 年 40 巻 3 号 p. 1059-1062
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル 認証あり
     本邦でもリバース型人工肩関節置換術(RSA)が施行可能となり,今回その短期成績を報告する.対象はRSAを施行し6ヶ月以上経過観察可能であった55例である.対象疾患はcuff tear arthropathy21例,腱板修復術後(鏡視下及び直視下手術後)腱板断裂再発6例,陳旧性肩関節脱臼6例,関節リウマチ1例,特発性変形性肩関節症5例,上腕骨頭壊死1例,骨折続発症8例,上腕骨頚部骨折7例であった.検討項目はJOA score,UCLA score,Constant score,自動前方挙上,側方挙上,外旋,内旋角度,術中,術後合併症とした.術後すべての臨床スコア,自動前方挙上,側方挙上は有意な改善を認めたが,自動外旋,自動内旋では有意差を認めなかった.合併症として,術後脳血管障害,肺塞栓症,肩峰骨折,肩甲棘骨折,上腕骨骨幹部骨折,base plateの脱転,脱臼を認めた.当院におけるリバース型人工肩関節置換術の短期成績は合併症を認めたが概ね良好であった.
  • 山内 直人
    2016 年 40 巻 3 号 p. 1063-1066
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル 認証あり
     リウマチ肩に対し人工骨頭置換術を施行した8例10肩の中期成績を調査した.手術時平均年齢は63.5歳,平均経過観察期間は92.9ヶ月であった.調査項目は術前の腱板の状態,JOAスコアと再手術の有無,単純X線でのステムの沈下・関節窩方向へのmigrationとした.術前の腱板の状態は厚み2mm以上3肩,2mm未満の高度菲薄化5肩,全層断裂1肩,未評価1肩であった.JOAスコアは術前平均43.1点から術後平均68.5点へと有意に改善した.項目別には疼痛が有意な改善を示したが機能・可動域は有意差を認めなかった.経年的に疼痛が悪化した1 肩のみ術後47ヶ月時に人工肩関節への再置換を行った.X線ではステムの沈下を2肩に認め,関節窩方向へのmigrationを5肩に認めた.ステムの沈下が生じた2肩はJOAスコアが不良であった.migrationを生じた5肩のうち1肩は経年的に痛みが悪化したが,残り4肩では屈曲やJOAスコアへの影響はなかった.また,腱板の高度菲薄化を認めた例でも5肩中4肩は問題を認めなかった.
症例報告
  • 八木 寛久, 間中 智哉, 伊藤 陽一, 市川 耕一, 中村 博亮
    2016 年 40 巻 3 号 p. 1067-1070
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル 認証あり
     79歳男性,Favard分類E3タイプの腱板断裂性関節症に対して非対称性の骨移植を併用したリバース型人工肩関節置換術を行った1例を報告する.術後1週で前方脱臼を認め,観血的脱臼整復術と再置換術を施行した.再置換後は安定化が得られ,術後短期だが経過良好である.Favard分類E3タイプでは,肩甲骨コンポーネントの上方傾斜設置を予防するために過剰なリーミングとなりやすく,lateral offsetが減少し術後脱臼のリスクになるため注意を要する.
  • 山田 祐太郎, 間中 智哉, 伊藤 陽一, 市川 耕一, 中村 博亮
    2016 年 40 巻 3 号 p. 1071-1073
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル 認証あり
     肩峰下滑液包内に発生したガングリオン嚢胞に対して鏡視下手術を施行した1例を報告する.症例は82歳女性,MRI T2強調像で肩峰下滑液包前方に高信号で内部均一で多房性の嚢胞性病変を認めた.穿刺にて黄色で粘稠性の液体を採取したため,肩峰下滑液包内ガングリオン嚢胞と診断し,鏡視下デブリードマンを施行した.右肩前面の腫脹は消失し,術後再発を認めていない.本疾患に対し本術式は有効な低侵襲手術法である.
  • 村上 将一, 平川 義弘, 伊藤 陽一, 間中 智哉, 中村 博亮
    2016 年 40 巻 3 号 p. 1074-1077
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル 認証あり
    はじめに:肩甲骨関節窩の大きな骨欠損は,リバース型人工肩関節全置換術(以下RSA)時のベースプレート固定が困難になる.今回我々は,反復性肩関節脱臼に伴う関節窩巨大骨欠損を合併した腱板断裂性関節症(CTA)に対して,上腕骨頭からの骨移植を併用してRSAを施行し,良好な短期成績が得られた1例を経験したので報告する.
    症例:症例は82歳女性.明らかな誘引なく,右肩痛及び右肩関節水腫を認めた.近医受診し,右肩関節穿刺とステロイド注射等の保存的加療をするも症状改善せず,精査加療目的に当院を紹介受診した.初診時,右肩関節に著明な腫張と圧痛を認め,自動可動域は屈曲60度,外転60度,外旋:30度,内旋:殿部と著明な可動域制限と偽性麻痺を認めた.単純X線では,右肩関節は前方脱臼しており,他動的に屈曲すると容易に脱臼整復される反復性肩関節脱臼の状態であった.整復後の単純X線では,Hamada 分類4A,Favard分類E4のCTAを認め,CTでは,関節窩前方1/3に及ぶ巨大骨欠損を認めた.MRIでは広範囲腱板断裂と腱板筋委縮及び関節水腫を認めた.以上のことより反復性肩関節脱臼症状を呈する関節窩の巨大骨欠損を合併したCTAと診断し,症状発現後4ヶ月時に,上腕骨頭からの骨移植を併用してRSAを施行した.術中,関節窩前方の巨大骨欠損に対して,骨頭を4分割して移植骨を作成し,新鮮化した関節窩縁に圧着させ3.5mmCCSスクリュー2本で固定した.ベースプレートの後方2/3は残存関節窩に固定可能で,前方1/3は移植骨自体に固定可能であった.術後4週間30度外転位固定を行い,術後6ヶ月で,屈曲:160度,外転:120度,外旋:20度,内旋:L5に改善し,JOAスコアは術前30.5点から73.5点に改善した.また術後6ヶ月のCTで,移植骨の骨癒合が完了し,インプラントの設置位置も良好であった.
    結論:関節窩の巨大骨欠損を合併したCTAに対して,上腕骨頭4分割の骨移植を併用したRSAは有効な治療法と判断できた.
  • 渡辺 大樹, 松尾 光祐, 上石 貴之, 森川 耀源, 桑島 佳奈子, 齋藤 知行
    2016 年 40 巻 3 号 p. 1078-1082
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル 認証あり
     症例は59歳,男性.肩悪性軟部腫瘍に対する腫瘍広範切除術後3年で再発を認めた.腫瘍は肩峰下腔に局在し,鎖骨骨幹部と肩甲棘基部で骨切りを行い,肩鎖関節の連続性を保ったまま反転し,腫瘍を切除した.術後1年で再発は認めず,肩関節可動域は術前と同等であった.悪性軟部腫瘍に対する機能温存を考慮した腫瘍切除術は再発のリスクが懸念されるが,本症例は肩鎖関節と三角筋を温存することで,術前の肩関節機能が保たれた.

    この論文は第42回日本肩関節学会で発表した.
  • 山崎 博範, 藤田 耕司
    2016 年 40 巻 3 号 p. 1083-1086
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル 認証あり
     症例は58歳女性で転倒受傷にて,右肩甲骨関節窩骨折Ideberg分類 type Vを生じ手術を施行した.左側臥位で後方アプローチにて関節面を整復し3.5mm 中空性海綿骨螺子 2本にて固定した.術後1年でCT上骨癒合認め,可動域は前方挙上160度,下垂位外旋80度,結帯Th10,JOA90点と良好であった.肩甲骨関節窩骨折Ideberg 分類 type Vに対し観血的整復固定を施行し良好な成績を得た.
  • 森田 修蔵, 仲川 喜之
    2016 年 40 巻 3 号 p. 1087-1090
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル 認証あり
     上腕骨結節間溝内の上腕二頭筋長頭腱に発生した石灰性腱炎の2例を経験した.症例1は64歳男性で,単純X線,3DCT,超音波検査で上腕骨結節間溝に石灰沈着を認め穿刺吸引し薬剤を注入した.症例2は41歳女性で,単純X線,3DCTで上腕二頭筋長頭腱の関節窩起始部と結節間溝内に石灰沈着を認めた.その後石灰は自然消失した.稀な上腕二頭筋長頭腱石灰性腱炎の診断に単純X線結節間溝撮影,3DCT,超音波検査が有用だった.
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