肩関節
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44 巻, 1 号
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基礎研究
  • 三浦 雄一郎, 福島 秀晃, 甲斐 義浩, 幸田 仁志, 木田 圭重, 森原 徹
    2020 年 44 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
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     側方リーチ時の肩甲帯運動の特徴を明らかにするために側方リーチ距離と肩甲骨運動との関連性を検討した.対象者は健常男性9名であり,平均年齢は28.0±7.9歳であった.肩外転90度位を基本肢位とし,リーチ10,20,30cmに設定した.前額面よりX線撮影を行い,画像解析ソフトを用いて分析した.測定はscapulohumeral angle(SHA),肩甲骨回旋角変化量(上方回旋+,下方回旋-)とした.統計は分散分析後,Turkeyの多重比較検定を行った.SHAは基本肢位で153±9°,10cmで156±8°,20cmで158.8±10°,30cmで169±8°であり,30cmは0,10cmと比較して有意に増加した(p<0.05).回旋角変化量は10cmで-2±4°,20cmで-3±4°,30cmで-9±3°であり,30cmは10,20cmと比較して下方回旋方向に有意に減少した(p<0.05).リーチ距離増加に伴う肩外転は肩甲骨下方回旋が関与したと考える.リーチ動作では,上肢挙上と同様に肩甲上腕関節が外転するが,肩甲骨運動が異なることが示された.
診察・診断法
  • 石井 壮郎, 石毛 徳之, 荻野 修平, 黒田 重史
    2020 年 44 巻 1 号 p. 5-9
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
    近年,医療過疎地での医師の負担が増大している.一方,最近は人工知能の発達が目覚ましく,画像認識の精度が著しく向上してきた.本研究の目的は,医療過疎地での上腕骨近位端骨折のX線診断をサポートする人工知能を開発することである.
    上腕骨近位端骨折のⅩ線画像1168枚を収集し,同時に,その治療方法や経過についての情報も収集した.Convolutional Neural Networkを用いて,Ⅹ線画像から上腕骨近位端骨折の有無を認識し,推奨される術式を提案するモデルを作成した.これにより,スマートフォンから画像を送信すると,十数秒以内にその判定結果がスマートフォン上に表示される.
    人工知能に今回の画像を5万回学習させたが,学習にかかった日数は1日だけだった.学習により,上腕骨近位端骨折の術式を94%の精度で提案できるアプリケーションを作成した.本システムでは,新規に保存された画像を人工知能の再学習に利用できるため,人工知能の精度はさらに向上する.
検査
  • 橋本 瑛子, 落合 信靖, 野島 大輔, 梶原 大輔, 嶋田 洋平
    2020 年 44 巻 1 号 p. 10-13
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
     反転型人工肩関節(RSA)の肩甲骨コンポーネント(ベースプレート)の設置は,術後合併症や臨床成績の観点から下方傾斜が推奨される.関節窩傾斜を3D-CT補正を行い計測し,腱板断裂性肩関節症(CTA)の関節窩の特徴を,特にベースプレート設置面(関節窩下方)に着目して検討した.RSA術前のCTA60肩(平均年齢78.8 ± 5.8SD歳)と関節窩及び腱板病変のない正常肩60肩(平均年齢64.3 ± 13.7SD歳)を比較した.3D補正にて設定した肩甲骨関節窩面と肩甲棘のなす角度を関節窩のInclinationと定義し,ベースプレート設置面を基準とした傾斜をRSA-Inclinationと定義し測定した.CTA群・正常群の平均値は各々Inclinationで上方に10.9度,8.6度,RSA-Inclinationで上方に21.9度,15.5度であり,CTA群で有意に大きい上方傾斜を認めた.Favard分類E1・E3関節窩では両Inclinationの差が有意に大きく,目標とする肩甲棘と平行な下方傾斜のベースプレート設置を行う為には,術前計画や術中設置手技において十分注意を要すると考えられた.
  • 藤巻 洋, 中澤 明尋, 竹内 剛
    2020 年 44 巻 1 号 p. 14-16
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
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     手術野における表在アクネ菌の検出率を肩関節手術52例(肩群)と膝関節手術38例(膝群)で比較した.各群とも手術野を含む術側肢全体を10%ポビドンヨード液で消毒し,執刀直前に皮膚擦過により採取した検体を培養し検出率を比較した.アクネ菌検出率は肩群が25%,膝群が0%であり,その他の菌検出率は肩群が42%,膝群が5%でありいずれも肩群で有意に高値であった.さらに肩群の10%の患者ではアクネ菌と同定できないもののグラム陽性桿菌の増殖を認めた.肩群においてアクネ菌陽性群は陰性群に比べ有意に若年であったが,性別では統計学的有意差を認めなかった.肩関節手術患者は皮膚消毒後にも関わらず表層から高率にアクネ菌を含む菌の増殖を認めており,手術部位の感染対策を再検討する必要があると考えられた.
脱臼
  • 原田 洋平, 岩堀 裕介, 梶田 幸宏, 高橋 亮介, 出家 正隆
    2020 年 44 巻 1 号 p. 17-20
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
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     高齢者の肩関節前方脱臼の臨床経過と,初回脱臼時の外固定の遵守がその後の脱臼再発と関連があるかを調査した.初回もしくは反復性前方脱臼で当院を初診し,初回脱臼時年齢が65歳以上の30例30肩(男性6例,女性24例,初診時平均年齢77.3歳)を対象とした.初回脱臼21例(F群),反復性脱臼9例(R群)であった.両群で当院初診後の臨床経過と初回脱臼時の外固定遵守期間を調査した.F群で脱臼再発はなく,R群で5例(56%)が再脱臼し2例で手術を施行し2例が陳旧性脱臼に移行していた.F群/R群の保存症例において脱臼不安感が残存した症例は0%/71%(P < 0.05),疼痛のある症例は29%/71%(P=0.08),平均Single Assessment Numerical Evaluation scoreは79.0/52.3(P=0.05)であった.初回脱臼時の平均外固定期間はF群で14.7日,R群で6.0日であった(P < 0.05).反復性脱臼の臨床経過は不良で,初回脱臼時の外固定に対するコンプライアンス不足が脱臼再発リスクの一因になる可能性が示唆された.
  • 松田 淑伸, 間中 智哉, 伊藤 陽一, 市川 耕一, 平川 義弘, 清水 勇人, 中澤 克優, 飯尾 亮介, 山下 竜一, 中村 博亮
    2020 年 44 巻 1 号 p. 21-24
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
     陳旧性肩関節前方脱臼に対して様々な治療法が報告されている.本研究の目的は陳旧性肩関節前方脱臼に対するリバース型人工肩関節置換術(以下RSA)の短期臨床成績を評価することである.対照は10例10肩,女性9肩,男性1肩で,手術時平均年齢は78.4才であった.臨床成績は術前,術後1年時に評価し,肩関節自動可動域(屈曲,外転,下垂位外旋,内旋),日本整形外科学会肩関節疾患治療成績判定基準(以下JOAスコア),Constantスコアを測定した.肩関節自動可動域は屈曲が術前平均46.5度から術後1年で平均104度に,外転が術前平均46.5度から術後1年で平均92度に,下垂位外旋が術前平均-6.5度から術後1年で平均11.5度に,結帯スコアは術前平均1.6点が術後1年で平均4点に,JOAスコアは術前平均32.6点が術後1年で平均67.4点に,Constantスコアは術前平均23.3点が術後1年で平均50.3点に有意に改善みられた(全てp < 0.05).陳旧性肩関節前方脱臼に対するRSAの術後1年での臨床成績は良好であった.
  • 吉武 新悟, 中溝 寛之, 堀江 亮佑, 川田 明伸
    2020 年 44 巻 1 号 p. 25-27
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
     肩後方不安定症に対して施行した鏡視下肩後方関節唇形成術後の関節窩骨形態について検討した.対象は手術前,術後12ヵ月時にCTを計測し,臨床成績が追跡できた18例18肩(男9肩,女9肩),手術時平均年齢21.3 ± 9.7歳,平均観察期間18.8 ± 8.7ヵ月であった.検討項目は術前後の臨床成績(JSS-SIS),術前および術後12ヵ月時CTでの関節窩面積減少率ならびに関節窩横径減少率などである.JSS-SISは術前62.4 ± 9.4点から術後92.3 ± 5.3点に改善した.関節窩面積,横径はいずれも18肩中7肩で5%以上の減少を呈しており,面積減少率は平均3.7 ± 2.0%,横径減少率は平均4.8 ± 4.1%であった.また12肩において関節唇縫着部の骨浸食像が認められた.前方不安定症に対する肩関節唇形成術で見られる変化と同様に,肩後方関節唇形成術においても術後に関節窩骨形態の変化が認められたが,臨床成績との関連は明らかではなかった.
  • 吉冨 洋樹, 岩噌 弘志
    2020 年 44 巻 1 号 p. 28-31
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
    本研究の目的は陳旧性肩鎖関節脱臼に対する鏡視下烏口鎖骨靭帯再建術とCadenat変法の併施手術の術後成績を報告することである.対象はRockwood分類type III以上の陳旧性肩鎖関節脱臼に対して手術を実施した7例.全例男性,平均年齢は39.3歳,type III: 3例,type V: 4例,平均術後観察期間は13.7か月であった.最終経過観察時のJOA score,JSS-ACJ scoreと術後レントゲン評価を行った.JOAスコアは平均95.3点,JSS-ACJスコアは平均95.0点で良好であった.術後レントゲン評価は,type IIIでexcellent 2例,good 1例,type Vでexcellent 2例,good 1例,fair 1例であった.術後1年での整復損失の進行度は平均7.2%であった.陳旧性肩鎖関節脱臼に対する鏡視下烏口鎖骨靭帯再建術とCadenat変法の併施手術で良好な機能成績を得た.
  • 西本 竜史, 五藤 和樹
    2020 年 44 巻 1 号 p. 32-38
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
     鏡視下Bankart修復術後の関節窩前縁骨形態変化について調査した.術直後と術後6か月以降にCTを撮影できた55肩を対象とした.関節窩最大横径と各アンカー孔から関節窩前縁までの距離を術翌日と術後6か月以降(平均14.3 ± 7.2か月)で測定し,関節窩前縁骨形態変化を調査した.高周波装置(RF)の使用,骨性バンカート病変の有無との関連を評価した.最大横径は,減少21肩,維持18肩,増加16肩であった.骨性Bankart病変があると最大横径は有意に増加していた.アンカー孔前方距離は,減少203アンカー,維持67アンカー,増加27アンカーであった.修復後のアンカー孔前方に骨片があるとアンカー孔前方距離は有意に増加していた.いずれの測定法でもRF使用による影響は見られなかった.骨性Bankart病変がある症例でも,アンカー孔前方に骨片がない場合はアンカー孔前方距離が増加することなく過半数が減少していた.
  • 高辻 謙太, 古川 龍平, 木田 圭重, 森原 徹
    2020 年 44 巻 1 号 p. 39-42
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
     肩関節前方不安定症に対する鏡視下Bankart-Bristow変法(以下ASBB法)は再脱臼率が低いと報告されている. 一方で術後外旋制限のため,オーバーヘッドスポーツでは復帰に影響を及ぼすと考えられる.今回,投球時に肩関節脱臼を生じた関節弛緩性のある高校野球投手に対してASBB法を施行し,術後1年で投手として復帰できた.関節弛緩性を伴う投球側の肩関節脱臼に対して,ASBB法は有用な選択肢と考える.
  • 野呂瀬 美生, 二村 昭元, 鈴木 志郎
    2020 年 44 巻 1 号 p. 43-46
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
     スポーツにより反復性肩関節脱臼を発症した12歳男性に対し,MRIで関節唇剥離を認めたため,初回受傷後14ヵ月で鏡視下Bankart修復術を施行した.術後半年からCTで関節窩の骨形態変化を認めたが,症状なく術後1年でサッカーに復帰した.術後2.5年,サッカーで再脱臼した.成長期で骨未成熟な場合,Bankart修復術は関節窩縁の軟骨侵襲により骨成長障害が危惧されるため,長期の経過観察が必要である.
  • 土屋 篤志, 大久保 徳雄, 杉本 勝正, 後藤 英之, 吉田 雅人, 武長 徹也
    2020 年 44 巻 1 号 p. 47-50
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
     関節鏡下Bankart-Bristow変法(ASBB)により設置した烏口突起の位置を評価した.2018年3月より12月に施行した16例17肩,平均年齢は20歳,男性13例14肩,女性3例3肩.術翌日にCTを撮影し,関節窩に対する烏口突起の上下方向で関節窩の上方からの設置位置(VD%),水平断で関節窩に対するスクリューの内側への角度(A-angle),矢状断での関節窩赤道面に対する角度(S-angle),関節窩縁と烏口突起外側縁の距離(HP)を検討した.VD%は平均60.7(47~85)%でおおむね良好だった.S-angleは-14.9(2~-23)度とスクリューは関節窩に対してやや下方向きで,A-angleは8.9(0~23)度と関節窩に対してやや内側向きで挿入されていた.HPは+0.52(-1.5~4)mmで軽度の外側設置だった.骨癒合や合併症,再脱臼など慎重な経過観察が必要であるがASBBは烏口突起を比較的良好な位置に設置可能な有用な手技と考えられた.
  • 今井 洸, 内山 善康, 新福 栄治, 大見 博子, 鷹取 直希, 渡辺 雅彦
    2020 年 44 巻 1 号 p. 51-54
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
     当院で経験した50歳以上の中高齢者反復性肩関節前方不安定症の病態と術後臨床成績を調査した.対象は,2012年から2017年に手術加療した50歳以上の反復性肩関節前方不安定症11例11肩(男性4肩,女性7肩,手術時平均年齢59.6歳,術後平均観察期間22.5ヵ月)である.Bankart病変単独5肩45%,腱板断裂単独2肩18%,前下方関節包断裂単独1肩9%,Bankart病変+腱板断裂1肩9%,前下方関節包断裂+腱板断裂2肩18%であった.初回脱臼年齢が40歳以上は6肩56%であり,そのうち5肩83%が大断裂以上の腱板断裂であった.全例術後再脱臼や術前後可動域制限は認めず,JOA score,JSS-SIS,ROWE scoreすべて有意に改善した.中高齢者反復性肩関節前方不安定症の病態は様々であり,病態に合った治療を行うことで術後臨床成績は良好であった.
骨折
  • 水掫 貴満, 仲川 喜之, 藤井 修平, 倉田 慎平, 井上 和也, 田中 康仁
    2020 年 44 巻 1 号 p. 55-58
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
     Head-split型上腕骨近位端骨折はまれである.我々は10手術症例を後ろ向きに調査した.手術時平均年齢は65.7歳.骨折型は全例Neer分類Articular surface型で,Edelson分類head-split 3part型3例,head-split shield型3例,head-split 4part型2例,Shattered shield型1例,head-split 3part型の陳旧変形治癒1例であった.手術法はノンロッキングプレート固定3例,ロッキングプレート固定1例,エンダー釘+軟鋼線固定2例,ポストスクリュー補強を併施したスクリュー固定+人工骨充填2例,人工骨頭置換術2例であった.高齢者の骨接合例では,整復不良の1例で人工骨頭再置換術を要し,1例で変形治癒となったが,壮年者の骨接合例や高齢者の人工骨頭置換術の成績は良好であった.治療法は高齢者では人工骨頭置換術が第一選択となるが,若・壮年者に対しては骨接合術が選択される.その際,骨頭壊死予防のために最小侵襲固定材を使用し,変形治癒に備え,関節内子突出が生じない固定法を行うことで比較的良好な治療成績が得られるものと考えられた.
  • 瀬戸 貴之, 古旗 了伍, 平賀 聡, 高田 裕平, 白澤 英之, 大木 聡, 松村 昇
    2020 年 44 巻 1 号 p. 59-62
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
     上腕骨近位端骨折に対する骨接合術は,高齢化に伴い症例数が増加している一方,成績不良例も散見される.本研究の目的は上腕骨近位端骨折に対する骨接合術の成績不良例を解析し,その原因や問題点を明らかにすることである.
     5つの関連施設で経験した成績不良例30例を後ろ向きに解析した.本研究では,予期せぬ再手術が必要になった,挙上90度未満,日常生活に支障をきたしている強い疼痛の残存,のいずれかを認める症例を対象として原因を検討した.
     成績不良が避け難かったとみられる症例を27%に認めた一方,術式選択と手術手技の問題により成績不良となったと考えられた症例は73%に達した.手術方法の改善や手術手技の向上によりそれらを減少できる可能性が示唆された.
  • 鷹取 直希, 内山 善康, 新福 栄治, 今井 洸, 渡辺 雅彦
    2020 年 44 巻 1 号 p. 63-66
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
     高齢者の上腕骨近位端骨折偽関節2症例に対し,リバース型人工肩関節置換術(以下RSA)を行った.Neer type2の上腕骨近位端骨折2症例に対して受傷後3ヶ月間と9ヶ月間の保存加療を受けるも骨癒合得られず,RSAを施行し良好な成績が得られた.上腕骨近位端骨折の治療は,骨折型に応じて術式が選択される.高齢者で十分な機能改善が得られない可能性がある場合は,RSAも選択肢の一つとなり,症例によって治療法を選択する必要がある.
  • 永井 宏和, 中島 亮, 森 基, 米田 真悟, 今井 晋二
    2020 年 44 巻 1 号 p. 67-71
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
     関節窩前縁骨折に対する鏡視下骨接合術の治療成績を報告した.対象は2014年1月から2018年9月に手術を行い,1年以上経過観察できた9例とした.手術は関節唇を7時頃まで剥離し,骨片は関節唇ごと4個以上のアンカーで修復した.術前Glenoid Indexは30%であった.腱板断裂を認めた3例は鏡視下に同時に修復した.臨床評価はJOAスコア,可動域,画像は術後1年時CTで評価した.術後JOAスコアは93点で,自動屈曲は平均170度,外旋は平均58度で術後再脱臼を1例に認めた.骨癒合は9例中7例に認めた.骨片の修復は元の位置が5例,上方が2例であった.術後Step Offが大きい症例に新たな関節症変化を認めた.腱板断裂を合併した症例は腱板断裂を合併してない症例と比べ高齢であった.骨癒合が得られなかった要因として骨片の分節化や縫合時の骨片の反転が考えられた.
  • 木村 礼, 永元 英明, 大泉 晶
    2020 年 44 巻 1 号 p. 72-75
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
     肩峰骨折に対しメッシュ型ロッキングプレートで固定した2例を報告する.症例1は39歳女性.車に左肩を衝突受傷し,プレート固定をした.術後早期にリハビリを行い,術後1年でJOA score 94点であった.症例2は70歳男性.転落し右肩を衝突受傷し,プレート固定をした.術後早期にリハビリを行い,術後1年でJOA score 100点であった.メッシュ型ロッキングプレートは肩峰骨折の骨接合術に使用するインプラント選択の1つであると考えられる.
  • 鷹羽 慶之, 武長 徹也, 吉田 雅人, 後藤 英之, 土屋 篤志, 多和田 兼章, 竹内 聡志, 杉本 勝正, 村上 英樹
    2020 年 44 巻 1 号 p. 76-80
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
     肩甲帯部重複損傷に対する手術成績を調査した.肩甲帯部重複損傷に対して手術を行い,術後1年以上経過観察可能であった6肩(42~82歳,全例男性,右2肩,左4肩)を対象とした.手術としては固定部位数が損傷部位数と同数または-1となるようにし,鎖骨と烏口突起骨折に対しては全例で骨接合を行い,その他でも転位が大きい部位に骨接合を行った.受傷機転としては高エネルギー外傷が多く,肺損傷などの多数の重篤な合併症を認めていた.最終観察時(平均観察期間18.2ヵ月)に全例で骨癒合が得られ,平均JOAスコア90.2点,平均挙上角度143.3度と比較的良好な成績を得られた.関節窩の粉砕が強かった1肩で術後変形性肩関節症を生じた.比較的アプローチしやすい鎖骨や烏口突起骨折に対して積極的に手術を行うことで固定部位数を増やし,肩甲帯部重複損傷に対して比較的良好な手術成績が得られた.
筋腱疾患
  • 尼子 雅敏, 伊佐治 雅, 山田 真央
    2020 年 44 巻 1 号 p. 81-84
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
     鏡視下腱板修復術後の等運動性外旋筋力が術後12か月までに健患比正常範囲を達成するための術後早期の外旋筋力の目標値を設定することを目的とした.一次修復が可能であった50例を対象に,術後3,6,9,12か月に外旋運動時のピークトルク健患比を算出し,術後12か月の時点で0.9以上を陽性,0.85未満を陰性とした二分変数を従属変数とした.受信者操作特性(ROC)曲線を用いて術後3,6,9か月における外旋筋力健患比のカットオフ値を算出し,妥当性を検討するため曲線下面積(AUC)を求めて評価した.各時期におけるAUCは,術後3か月0.63(p=0.08),術後6か月0.69 (p < 0.05),術後9か月0.72(p < 0.05)であった.カットオフ値は術後3か月0.55,6か月0.80,9か月0.79であった.各時点での目標設定は,患者のリハビリテーションの指標となり,意欲向上につながるものと期待できる.
  • 黒川 大介, 守屋 秀一, 田中 稔
    2020 年 44 巻 1 号 p. 85-89
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
     肩腱板断裂に対して行ったテープ縫合糸を用いた鏡視下骨孔法腱板修復術の術後2年の治療成績を報告する.適応を1)初回断裂の中断裂で術中の修復に烏口上腕靭帯の切離や腱板付着部の内方化を要した症例,2)初回断裂の大,広範囲腱板断裂,および3)腱板修復術後の再断裂症例とした.術後2年の経過観察が可能であった47例(平均年齢66歳)を対象とした.手術は,ARTHROTUNNELER ™ を用いて,2-3個の骨孔にそれぞれテープ縫合糸を1-3本含む計3-5本の縫合糸を使用し腱板を修復した.断裂の大きさ,JOAスコア,術後2年におけるSugaya分類評価を検討した.断裂の大きさは中,大,広範囲断裂の順に9例,28例,10例,JOAスコアは術前65点が術後2年で93点に改善した.44例(94%)が一次修復可能で,3例が部分修復であった.一次修復例の術後2年のSugaya分類はtype1-5の順に31,9,2,1,1例であった.大,広範囲断裂症例の再断裂は部分修復を含めても38例中5例(13.2%)と頻度が少なく,術中に骨孔や腱板のカットアウトは生じず,有用な術式と考えられた.
  • 日野 雅仁, 松田 智
    2020 年 44 巻 1 号 p. 90-93
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
     一次修復が困難な広範囲腱板断裂は治療に難渋する.半腱様筋腱と薄筋腱移植術(以下ST/G移植)の術後成績を評価し,術式の適応について検討した.2012年から2018年までの対象患者101例に対し,術前後の肩関節可動域,前方挙上筋力,JOAスコア,Quick DASH,術前単純X線のHamada分類,術後1年時MRIでSugaya分類を用いて検討した.肩関節自動可動域,前方挙上筋力,JOAスコア,Quick DASH,はいずれも術後1年で有意に改善を認めた.術後1年のMRIでSugaya 分類1(以下S1)が17例,S2が47例,S3が14例,S4が5例,S5が17例,MRI撮影不可が1例であった.術前Hamada分類と術後1年時Sugaya分類の間に強い相関関係を認めた.ST/G移植の再断裂率はS4,5を再断裂として21.8%であった.術前Hamada分類がST/G移植における成績の予想に有用であり,関節症性変化の少ない症例にST/G移植が有用であると考えた.
  • 塩崎 浩之, 北原 洋
    2020 年 44 巻 1 号 p. 94-97
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
     本研究の目的は一次修復不能な大・広範囲腱板断裂に対するテフロンフェルトを用いた鏡視下パッチ法の長期成績を明らかにすることである.対象は2003年から2011年に手術を施行した全8例で,全例男性,手術時平均年齢68.3歳,平均経過観察期間は11年6か月であった.これらに対し,術前と最終観察時のJOAスコア,単純X線所見などを検討した.平均JOAスコアは術前51.0点が最終観察時72.1点に改善した(p < 0.01).6肩は疼痛も少なく機能も比較的良好に保たれていた.自動可動域の平均は,挙上が術前63.8°が最終観察時120.0°に改善したが(p < 0.01),外旋・内旋は有意な変化はなかった.単純X線所見で術後に関節症の進行を2肩に,また,テフロンに対する異物反応によると考えられる上腕骨頭の嚢腫様変化を3肩に認め,うち1肩では重度の関節症に至っていた.
  • 四本 忠彦, 大久保 敦
    2020 年 44 巻 1 号 p. 98-102
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
     広範囲腱板断裂に対する関節鏡視下腱板修復術(ARCR)の成績を,筋前進術(DP)追加の有無によって比較検討する.術後1年以上経過観察できた患者44名44肩を対象とし,ARCR群25名25肩(平均年齢74歳),DP追加群19名19肩(平均年齢72歳),平均経過観察期間はそれぞれ69か月,34か月であった.ARCR群の1例にアンカー逸脱を認めた以外,両群とも合併症を認めなかった.JOA スコア(術前)はARCR群85.1点(59.3点)に,DP群89.8点(60.9点)に有意に改善した.再断裂はARCR群36.0%,DP群15.8%でDP群が有意に低かった.再断裂例の術前GFDIはARCR群2.2,DP群2.6であり,非再断裂例(ARCR群1.9,DP群1.9)に比べ腱板脂肪浸潤が高度であった.高度な脂肪浸潤を有する症例には限界があるが,広範囲腱板断裂に対するDPの追加は,再断裂率を減少させるのに有用であった.
  • 四本 忠彦, 大久保 敦
    2020 年 44 巻 1 号 p. 103-107
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
     一次修復不能な広範囲腱板断裂に対する棘下筋回転移行術の短期成績を報告する.棘下筋回転移行術を行い1年以上経過観察できた患者6名6肩(平均年齢71.3歳,平均経過観察期間は17.5か月)を対象とした.肩甲上神経・動脈が通る棘上・棘下筋断端間の腱性部の連続性を温存し,棘下筋のみを肩甲骨から剥離してその断端を大結節前方まで回転移行した.術前GFDIは平均3.0であった.全例,合併症や再断裂を認めなかった.JOA スコア(術前)は86.1点(55.5点)に有意に改善した.ROM(術前)は前方挙上161.7°(93.3°),外旋25.0°(19.2°),内旋L1.5(L3.8)へ,MMT(術前)は前方挙上4.0(2.8),外旋3.0(2.7),内旋4.7 (3.5)へ,外旋以外はそれぞれ有意に改善した.棘下筋回転移行術は,高度な脂肪浸潤を有する一次修復不能な広範囲腱板断裂に対し,外旋以外は良好な機能回復が得られ,有用であると考える.
  • 長谷川 彰彦, 三幡 輝久, 河上 剛, 竹田 敦, 根尾 昌志
    2020 年 44 巻 1 号 p. 108-111
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
     鏡視下肩上方関節包再建術における大腿筋膜グラフト採取が股関節機能に与える影響について検討した.修復困難な腱板断裂に対して鏡視下肩上方関節包再建術を行い,術前および術後12か月以降に日本整形外科学会股関節機能判定基準(JOA Hip score)および日本整形外科学会股関節疾患評価質問票(JHEQ)による股関節機能の評価を行うことができた25例(平均年齢69.4歳,44-81歳)を対象とした.大腿筋膜採取部のVAS値は術前後で有意な変化を認めなかった(P=0.21).JOA Hip scoreおよびJHEQ集計点数についても,術前後で有意な変化を認めなかった(P=0.08,P=0.13).術後合併症は大腿筋膜採取部の血腫を1例(4.0%)に認めたが,穿刺,吸引にて軽快した.本研究の結果から,鏡視下肩上方関節包再建術における大腿筋膜グラフト採取が術後の股関節機能に及ぼす影響は少ないと思われた.
  • 青山 広道, 菅谷 啓之, 高橋 憲正, 松木 圭介, 渡海 守人, 森岡 健, 星加 昭太, 上田 祐輔, 竹内 康剛, 上條 秀樹, 出 ...
    2020 年 44 巻 1 号 p. 112-115
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
     本邦におけるリバース型人工肩関節置換術後の上腕骨側レントゲン評価に関する報告はほとんどない.本研究の目的は,リバース型人工肩関節における上腕骨側のレントゲン評価について調査することである.対象は2014年4月~2018年3月までにリバース型人工関節置換術を施行し,1年以上の経過観察が可能であった165名171肩であり,平均経過観察期間は29か月であった.診断は腱板断裂性肩関節症,および腱板広範囲断裂が多かった.セメント固定109肩,セメントレス62肩,in-lay124肩,on-lay47肩であり,検討項目は,最終診察時レントゲンにおけるlucent line,stress shielding,大結節消失,インプラントの緩みとした.またlucent line,stress shieldingについては部位についても調査した.Lucent line,stress shieldingの有無で年齢,性別,セメント使用,機種の違いを検討した.Lucent lineを24肩(14.0%)に認め,大多数はZone1,7に発生していた.In-lay(P=0.02),セメント使用症例(P < 0.001),経過観察期間が長い例に有意に多かった.Stress shieldingを17肩(9.9%)に認めたが,検討項目に有意差はなかった.大結節骨吸収を2肩(1.2%)に認めた.インプラントの緩みは認めなかった.本研究の結果は,欧米の短・中期での報告と比較してlucent line, stress shieldingとも発生率に大きな違いはなかった.しかし,長期の報告では高率の発生が報告されており,長期の経過観察が必要と考えられた.
  • 内山 善康, 新福 栄治, 大見 博子, 橋本 紘行, 今井 洸, 鷹取 直希, 渡辺 雅彦
    2020 年 44 巻 1 号 p. 116-119
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
     一次修復不能な広範囲腱板断断裂(IRCT)に対して小径人工骨頭置換術を用いて腱板修復術を行い,2年以上経過観察可能(平均60.5ヵ月)であった13例13肩(男性10例,女性3例)を対象とし,術後JOA score 60点以上の成績良好(G)群(9例)と60点未満の成績不良(B)群(4例)に分けて成績不良因子を検討した.両群間に年齢,性別,利き手,Hamada分類,棘上・棘下・小円筋の脂肪変性,頚椎疾患有無には差は無かった(p > 0.05).しかしG群に比べB群で術前の肩甲下筋脂肪変性は強く(p=0.015),烏口肩峰靭帯欠損がみられる症例が多かった(p=0.003).IRCTに対する小径人工骨頭置換術を用いた腱板修復術の成績不良因子は肩甲下筋の脂肪変性程度と烏口肩峰靭帯の欠損が見られる症例であった.修復腱である術前の肩甲下筋萎縮と烏口肩峰靭帯損傷による骨頭の前上方化が術後成績の悪化要因と考えられた.
  • 森 大祐, 水野 泰行, 船越 登, 小林 雅彦
    2020 年 44 巻 1 号 p. 120-124
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
     70歳未満の腱板大・広範囲断裂を有する患者39人39肩を棘下筋の脂肪変性の重症度別にして,大腿筋膜パッチ法と部分修復術の長期臨床成績を比較した.棘上筋脂肪変性がGoutallier分類のStage3か4かつ棘下筋脂肪変性がGoutallier分類Stage 2以下の肩に対して,部分修復術を12肩(手術時平均年齢57.6 歳,最長経過観察期間101ヶ月),パッチ法を15肩(手術時平均年齢60.5 歳,最長経過102ヶ月)に施行し,ConstantかつASESスコア,棘下筋腱再断裂率に有意差はなかった.しかし,棘上筋腱かつ棘下筋脂肪変性がGoutallier分類Stage 3以上の12肩(手術時平均年齢63.1 歳,最長経過101ヶ月)にパッチ手術した群は他の2群より臨床スコアかつ棘下筋腱再断裂率は有意に劣っていた.本研究の結果から,棘下筋脂肪変性に基づいた分類は腱板広範囲断裂の適切な治療選択に有用と考える.
  • 森原 徹, 木田 圭重, 古川 龍平, 祐成 毅
    2020 年 44 巻 1 号 p. 125-129
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
    腱板断裂に対する手術法として,鏡視下手術による一次修復が行われる.しかし断裂が大きくなると一次修復が困難となり,さまざまな手術方法に変更する必要がある.本研究では,これまでわれわれが腱板大・広範囲断裂に対して行ったDebeyre-Patte変法の中・長期臨床成績を検討することである.連続的に腱板断裂に対して腱板修復術を行った232例233肩中,腱板大・広範囲断裂は49肩であった.鏡視下に腱板断端をrefleshし断端が30N未満で大結節に届かなかった45肩では,Debeyre-Patte変法を行った.全症例の臨床成績では,JOAスコアは術前57点から術後91点(最終観察時)と有意に改善した.修復群のJOAスコアは再断裂群より有意に点数は高かった(P=0.01).
    術前MR画像において腱板断端が関節窩縁付近(stage III),肩甲下筋,棘上・棘下筋のGoutallier分類がすべてgrade IIIまでの症例では,Debeyre-Patte変法による一次修復での術後再断裂は少なく,臨床成績も良好であった.腱板大・広範囲断裂症例に対するDebeyre-Patte変法は有用な治療法のひとつと考える.
  • 秋本 浩二, 落合 信靖, 橋本 瑛子, 野島 大輔, 梶原 大輔, 嶋田 洋平, 伊勢 昇平
    2020 年 44 巻 1 号 p. 130-135
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
     修復術後中後期以降の修復後腱板の状態を MRIで評価した報告は少ない.本研究では,鏡視下腱板修復術を施行された353例(手術時平均年齢65.5歳,平均経過観察期間30.5か月)における,術後1年から2年の修復後腱板のMRI変化(cuff integrity[Sugaya分類]と腱板筋の脂肪変性)と術前後の臨床スコアの変化の関連を調査した.術後1年における再断裂率は15.0%,術後2年では19.0%であった.術後1年から2年の間で再断裂した14例のうち,10例が術後1年時のcuff integrityがSugaya分類TypeIIIであり,それらは術後1年時では臨床スコアに有意差は認めなかったが,術後2年時で再断裂群のスコアが有意に低かった.術後2年時における再断裂群の術前の腱板筋の脂肪変性は修復群より有意に高度であった.また術後2年時において,腱板修復の成否に関わらず,脂肪変性の改善は乏しかった.
  • 桑野 洋輔, 衛藤 正雄
    2020 年 44 巻 1 号 p. 136-139
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
    本研究の目的は鏡視下腱板修復術(ARCR)の治療成績について肥満者(BMI ≥ 25)と普通体重者(18.5 ≤ BMI < 25)とを比較検討することである.2013年4月からの5年間でARCRを行い術後1年にMRI,JOAスコア,Shoulder36を評価し得た症例で低体重者(BMI < 18.5)を除く100肩(肥満群36肩,普通体重群64肩)を対象とし,術前後JOAスコア,自動屈曲・外転角度,Shoulder36,再断裂率について検討した.術前後の治療成績は両群ともに全項目で有意に改善し,術後成績はJOAスコアとShoulder36は両群間に有意差はなかったが,外転角度は肥満群が有意に小さかった.再断裂率は両群間に有意差がなかった.本研究では可動域はやや劣る結果になったもののその他の成績は満足いく結果となり,肥満者の肩腱板断裂に対する手術方法としてARCRは有用な選択肢の一つと考えられた.
  • 杉森 一仁
    2020 年 44 巻 1 号 p. 140-145
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
     同サイズの腱板断裂に対して行った関節鏡視下腱板修復術において,術後に外転装具あるいは三角巾とバストバンド固定による臨床成績を比較した.不全,小あるいは中断裂の110肩を対象とした.外固定期間を6週間とし,外転装具使用(B群)が63肩,三角巾とバストバンド固定(S群)が47肩であった.平均年齢はB群65.7 ± 10.1歳,S群62.9 ± 10.8歳であり有意差を認めなかった. B群において不全断裂が20肩,小断裂が15肩,中断裂が28肩であり,S群においては不全断裂24肩,小断裂は12肩,中断裂11肩であった.術後4,12ヶ月においてS群の自動外旋角度がB群より有意に高かった.中断裂の症例に比べ,小断裂において群間の可動域の差を認めた.再断裂率はB群5.3%、S群4.5%と有意差を認めなかった.
  • 結城 一声, 村 成幸, 宇野 智洋, 鈴木 朱美, 佐竹 寛史, 高木 理彰
    2020 年 44 巻 1 号 p. 146-149
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
     関節鏡視下肩腱板修復術後の連続性はあるが菲薄した修復腱板と,上腕骨頭上方化の関係を検討した.術中に腱板大断裂以上と診断し,術後1年のMRIで修復腱板の連続性はあるが菲薄した50例を対象とした.単純X線で,術後装具を外した直後より術後1年で肩峰骨頭間距離(AHI)が1.5 mm以上縮小した15例(あり群)と,しなかった35例(なし群)に分け,術後1年での筋力,自動可動域,JOAスコア,腱板筋脂肪変性について両群を比較した.術後平均肩筋力は,90° および45° 外転位外転筋力,下垂位外旋筋力が上方化あり群で有意に低く,下垂位内旋筋力,全ての可動域,JOAスコアに有意差はなかった.腱板筋脂肪変性は,Goutallier分類のstageの平均で,棘下筋のみ上方化あり群で有意に高かった.連続性はあるものの菲薄した修復腱板で,術後AHIが1.5 mm以上縮小した例では,外転および外旋筋力が低く,棘下筋の脂肪変性が高度であり,腱板機能回復が不良であることが示唆された.
  • 石谷 栄一, 原田 伸哉
    2020 年 44 巻 1 号 p. 150-153
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
     腱板断裂のMRI T2 FatSAT像にて三角筋に対する腱断端の信号強度比(C/D)を使い3群に分けStump分類と定義した.C/D が高いStump Type3が高率に再断裂した.Stump分類と腱断端組織像の関連性を検討するためARCR術中に腱断端より組織を採取した14例を調査した.手術時年齢は65.3歳,男性9例,女性5例.採取組織をH-E染色し,準定量的変性スコアを用いて変性度数を算出した.またC/Dと変性度数の相関を調べた.全症例にて線維配列の乱れや核の円形化さらに硝子化などの変性所見のいずれかを認めた.変性度数はコントロールとして採取した上腕二頭筋腱などの平均が4.6点だったのに対し,腱断端は平均9.1点であった.Stump タイプ1が6.3点,タイプ2が7.0点,タイプ3が10.9点でありタイプ3の変性度数が有意に高値であった.またC/Dと変性度数の相関係数は0.729(P < 0.01)で強い相関を示した.Stump分類タイプ3は断端の組織学的変性と有意に関連していた.
  • 宇野 智洋, 村 成幸, 結城 一声, 大石 隆太, 髙木 理彰
    2020 年 44 巻 1 号 p. 154-158
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
     鏡視下腱板修復術(以下,ARCR)における修復部の緊張は術後成績や再断裂に影響する.本研究の目的は,グラスパーテンショニングアタッチメント(GTA)を用いた腱板断端張力と術前,術中,および術後所見との比較検討を行うことである.ARCRを行った71例を対象とし,臨床成績,術中の腱板断裂の前後径(AP径),内外側径(ML径),GTAによる断端張力を統計学的に検討した.断端張力と相関関係を,年齢(相関係数r =0.26),棘上筋のGoutallier分類(r =0.21),AP径(r =0.33),ML径(r =0.45),DeOrio & Cofield分類(r =0.40)で認めた(いずれもP < .05).術後1年のSugaya分類Type 3,4,5(n =15)の断端張力は平均11.1 ± 2.4 NでありType 1,2(n =56)の平均9.6 ± 2.4 Nと比較して有意に大きく,カットオフ値10 N以上とすると相対危険度は4.2(P = .02)であった.腱板断端張力が10 N以上では,cuff integrityが不良になることが示唆され,処置の追加や後療法への考慮が必要である.
  • 川田 明伸, 中溝 寛之, 堀江 亮佑
    2020 年 44 巻 1 号 p. 159-162
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
     PEEK製アンカー及び骨伝導性アンカーを使用し鏡視下腱板修復術を施行した患者における術後臨床成績及びMRIでのアンカー孔周囲の液体貯留の頻度について調査した.対象は2014年3月から2018年3月に鏡視下腱板修復術を施行した216例223肩(男性123例128肩,女性93例95肩),手術時平均年齢は64.1歳(38~80歳)であった.断裂形態,使用したアンカー数,術後MRIにて周囲に輝度変化を認めたアンカー数,術前後のJOAスコア,再断裂の有無について評価した.使用したアンカーは内側列476個,外側列451個であった.術後12ヶ月で24肩34本にアンカー周囲の液体貯留を認めた. JOAスコアは術前平均64.6点(38~91点)が術後93.9点(76~100点)に改善した.術後12ヶ月で13肩に再断裂を認めた.骨伝導性アンカーは生物学的適合性に優れ,術後1年時における臨床成績は良好であり腱板修復術において有用な手術材料であると思われた.
  • 梶田 幸宏, 岩堀 裕介, 原田 洋平, 高橋 亮介
    2020 年 44 巻 1 号 p. 163-165
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
    【目的】翻転した腱板断裂(翻転+群)に対するARCRの治療成績を,翻転を認めなかった腱板断裂(翻転-群)と比較報告する.
    【対象と方法】対象は中断裂以下の棘上筋腱単独断裂に対しARCRを施行し,術後1年以上経過観察が可能であった翻転+群16例(平均62.8歳),翻転-群67例(平均61.5歳)とし全例suture bridge法で修復した.患者背景,JOAスコア(術前・6ヵ月・12ヵ月)と術後12ヵ月の再断裂率を比較した.
    【結果】患者背景に両群間の有意差はなく,JOAスコア(術前・6ヵ月・12ヵ月)は,翻転+群が66.0点・88.9点・95.7点,翻転-群が65.9点・89.5点・95.4点と両群とも有意に改善したが両群間に有意差は認めなかった.再断裂率は翻転+群18.8%,翻転-群3.1%で翻転+群において有意に高かった.
    【結語】翻転+群のARCR術後再断裂率が高かった原因として,翻転部における阻血やインピンジメントによる摩耗などの腱板断裂断端の質の低下などが考えられた.
  • 寺谷 威
    2020 年 44 巻 1 号 p. 166-170
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
     腱板損傷に拘縮を伴う症例と伴わない症例の術後成績を比較検討した.術前麻酔下に徒手授動術または術中に鏡視下関節包解離術を併用した症例で術後1年以上経過観察可能であった症例(拘縮群)34肩を対象とした.その他の症例(非拘縮群)186肩をコントロール群とした.JOAスコアは術前が拘縮群で有意に低かったが,術後は2群間において有意差を認めなかった.肩関節他動可動域は,拘縮群で術後6か月まで術前拘縮の影響がみられたが,術後1年では2群間において有意差を認めなかった.再断裂は拘縮群では術後6か月および1年において認めなかったが,非拘縮群では術後6か月,1年ともに棘上筋腱,棘下筋腱で14肩(7.5%),肩甲下筋腱で3肩(1.6%)であった.大断裂を除けばそれぞれ10肩(5.4%)1肩(0.5%)であった.拘縮群で大断裂が有意に少ないものの,再断裂を認めなかった事から術前の拘縮は腱板治癒においては有利である可能性が示唆された.
変性疾患
  • 新福 栄治, 内山 善康, 繁田 明義, 大見 博子, 橋本 紘行, 今井 洸, 渡辺 雅彦
    2020 年 44 巻 1 号 p. 171-174
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
     Pain DETECTを用いて特発性肩関節拘縮(128例)における神経障害性疼痛(Neuropathic pain; 以下 NeP)の特徴について調査した.12点以下は侵害受容性疼痛(NP群),19点以上はNeP群とした.検討項目は腱板疎部・結節間溝の圧痛の有無,初診時の自動可動域(挙上,外旋,内旋)・安静時VAS値,夜間痛の程度(3段階:unaffected, affected sleep, sleepless)である.128例中86例(67%)はNP群であり,12例(9.4%)がNeP群であった.腱板疎部の圧痛陽性はNP群30例(34%),NeP群6例(50%)であり両群間の差はみられなかった.結節間溝の圧痛陽性は,NP群16例(18%),NeP群6例(50%)であり,NeP群が陽性の割合が多かった(p=0.02).また平均安静時VAS値と平均挙上可動域では両群間に差はみられなかったが,平均外旋可動域(NP群 36.1° / NeP群 5° ),平均内旋レベル(NP群 L4 / NeP群 Back-pocket)にてNeP群に可動域制限がみられた(p=0.04, p=0.04).また夜間痛は全例にみられたが,NP群:affected sleep74例/sleepless 12例,NeP群:affected sleep3例/sleepless 9例であり,NeP群にてsleeplessの割合が多かった(p < 0.01).
炎症疾患
  • 吉川 智也, 美舩 泰, 乾 淳幸, 黒澤 尭, 山裏 耕平, 国分 毅
    2020 年 44 巻 1 号 p. 175-178
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
     化膿性肩関節炎に対して手術加療を施行した9例9肩を対象として治療経過を検討した.初回手術の9肩に対しては,鏡視下デブリドマンを施行し,ドレーンを平均2.7本留置した(開放:6肩,吸引:3肩).化膿性関節炎のGächter分類はstage I:2肩,II:2肩,IV:5肩であった.発症から手術までの期間は平均15.1日,術後ドレーン全抜去までの期間は平均12.0日であった.起炎菌はMSSA5肩,MRSA3肩,E.coli1肩であり,各々感受性に応じた抗菌薬治療を行った.2例で再発したが,いずれもGachter分類stage IVで,術前MRIで上腕骨頭に侵食病変を有していた.うち1例は両肩に感染が波及し両肩直視下デブリドマンを施行し,もう1例は抗菌薬治療で治癒した.化膿性肩関節炎に対する鏡視下デブリドマンおよびドレナージは有用な治療方法だが,Gachter分類 Stage IV,MRIで上腕骨頭に侵食病変を有する症例では,再発率が高いため,直視下手術を検討する必要がある.
その他
  • 石井 壮郎, 坂田 淳, 石毛 徳之, 荻野 修平, 黒田 重史
    2020 年 44 巻 1 号 p. 179-184
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
     近年,人工知能の発達が目覚ましく,デジカメの動画から人物の関節位置を自動的に検出できるようになった.本研究の目的は,野球選手において,投球障害の生じやすい動作パターンを明らかにすることである.
     小学生と高校生の健常な野球選手2143名を対象に,デジカメで投球動作を撮影した.この動画に人工知能のアルゴリズムを適用し,全身の特徴点の2次元座標を求めた.これらの選手の前向き追跡調査を行い,どの選手が投球障害を発生したかを記録した.動作データに主成分分析を行い,その抽出した主成分と投球障害との相関関係を調べ,障害と関連性の高い動作パターンを導いた.
     投球時痛の生じやすい動作パターンは,フットコンタクト時に投球肩の水平外転が相対的に大きくなり,それに連鎖して外転角度が小さくなることであった.本システムでは,選手一人一人の投球動作に対して,この連鎖的な動きをビジュアル的に提示できる.
治療法
  • 石垣 範雄, 畑 幸彦, 松葉 友幸
    2020 年 44 巻 1 号 p. 185-187
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
     リバース型人工肩関節全置換術(RSA)後の患者満足度に影響する臨床所見を明らかにする目的で調査した.RSA施行例68例70肩を対象に,術前と術後1年で患者満足度,理学所見(ROM,MMT),UCLA score,Sh36を評価し,術前後で比較検討した.さらに術後の患者満足度と理学所見,UCLA score,Sh36の間で相関を検討した.屈曲,外転,外旋のROMとMMT,UCLA score,Sh36の各ドメインは術後に有意に改善し,伸展と内旋のROMは有意に悪化していた.術後の患者満足度との相関は,屈曲と外転のROM,UCLA scoreの painとtotal score,およびSh36の各ドメインにおいて認めた.したがってRSA術後の患者満足度に影響する臨床所見は挙上角度と疼痛だけなので,RSA施行時の併用(追加)手術は不要ではないかと思われた.またSh36は患者満足度をよく反映すると思われた.
  • 上條 秀樹, 菅谷 啓之, 高橋 憲正, 松木 圭介, 渡海 守人, 森岡 健, 上田 祐輔, 星加 昭太, 濱田 博成, 竹内 康剛
    2020 年 44 巻 1 号 p. 188-191
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
     本研究の目的は,上腕骨インプラントのデザインの違いによりリバース型人工肩関節の成績を比較することである.2014年から2018年に施行した 265肩のうち,Grammont typeのAequalis Reversed(G群)またはlateralized typeのAqualis Ascend flex(L群)を用い,術後1年以上の経過観察が可能であったG群26肩,L群19肩を対象とした.術前後の可動域およびConstant score,術後合併症について比較した.Constant score,屈曲・外転は両群とも有意に改善していた.L群の術前後の外旋変化量は,G群に比較して有意に大きかった.術後合併症は,G群でscapular notchingが有意に多かった.外旋可動域,scapular notchingに関しては,lateralized typeが有利であると考えられる.
  • 井上 淳平, 多和田 兼章, 杉本 勝正, 後藤 英之, 土屋 篤志, 吉田 雅人, 武長 徹也, 竹内 聡志, 鷹羽 慶之
    2020 年 44 巻 1 号 p. 192-195
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
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     肩関節CTが撮影された20例20肩(平均年齢69.5歳)を対象とし,Comprehensive baseplate ®(Zimmer-Biomet社,Warsaw,United States)を下方傾斜10度で,肩甲窩下縁とbaseplate下縁が一致するように設置して,screw挿入を仮想した際の骨孔長を測定した. 中央screwの平均骨孔長は27.3 ± 3.9(SD)mm,上方screwの平均骨孔長は26.6 ± 3.7(SD)mm,下方screwの平均骨孔長は28.7 ± 5.6(SD)mm,前方screwの平均骨孔長は9.3 ± 3.8(SD)mm,後方screwの平均骨孔長は8.0 ± 2.0(SD)mmであった.
  • 中澤 克優, 間中 智哉, 伊藤 陽一, 市川 耕一, 平川 義弘, 松田 淑伸, 清水 勇人, 飯尾 亮介, 山下 竜一, 富本 彩夏, ...
    2020 年 44 巻 1 号 p. 196-200
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
     リバース型人工肩関節置換術の術前CT画像を使用し,2次元(以下,2D)評価と3次元(以下,3D)評価を行い,検者間及び検者内信頼性を検証した.対象は12例.3D評価として,術前に1mmスライスで撮像したCTのaxial像のDICOMデータをLEXI社Zed Shoulder®に読み込み関節窩傾斜角(以下,GI),関節窩前後捻角(以下,GV),上腕骨後捻角(以下HR),関節窩最大高(以下,GH),関節窩最大幅(以下,GW)を計測した.一方,2D評価として単純CTを用い計測した.2名の整形外科医で,1か月以上の間隔にて2回計測した.2D計測と3D計測の検者間及び検者内信頼性を級内相関係数(ICC)にて算出した.検者間信頼性において2D計測のGI,GVと3D計測のGI,GV,HRが低く,検者内信頼性において2D計測のGI,GVと3D計測のGIが低かった.今後,3D評価のさらなる再現性と正確性の確立のため,参照点デジタイズの方法の改良および座標系の再構築を行う必要性がある.
  • 菅野 敦子, 相澤 利武
    2020 年 44 巻 1 号 p. 201-204
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
     1機種のセメントステムを使用した,in-lay型反転型人工肩関節術後患者46例50肩(平均年齢76.5歳)における,上腕骨の術後変化を調査した.全体の70%に1mm以上のradiolucent line,50%に1mm以上の皮質菲薄化を認めた.いずれも術後可動域に影響を及ぼさなかった.セメントステムにおいても,セメントレスと同様の術後変化が認められ,長期的な経過観察を要すると考えられた.
  • 佃 幸憲, 瓜田 淳, 松居 祐樹, 岩崎 倫政
    2020 年 44 巻 1 号 p. 205-208
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
     本研究の目的はリバース型人工肩関節置換術(RSA)後のステム周囲の単純X線変化を検討することである.RSA術後1年以上経過観察可能であった40例40肩を対象とした.術直後と最終経過観察時の単純X線正面像にて上腕骨を7分割し,cortical thinning and osteopenia(CNO),spot weld(SW),Condensation line(CL)を評価し,ステムの髄腔占拠率との関係を評価した.CNOは大結節,外側骨幹端,内側近位端で多く,SWは外側骨幹部に多く認められた.CNOを認めた群では認めなかった群と比較して髄腔占拠率が有意に大きかった(P=0.02). In-lay型ではOn-lay型と比較して内側骨幹端にCNOが有意に多かった(P=0.04).本研究によりRSAにおいてステム周囲の骨吸収を防ぐためにはOn-lay型の選択および髄腔占拠率を大きくしないことが重要であることが示された.
  • 中溝 寛之, 堀江 亮佑, 川田 明伸
    2020 年 44 巻 1 号 p. 209-212
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
    ジャーナル 認証あり
     リバース型人工肩関節置換術(RSA)後の外旋機能について日常生活動作の評価方法であるADLERスコアを用いて評価した.対象は腱板断裂性関節症に対してRSAを施行し術後1年以上経過観察できた37例37肩(男18,女19)で術後平均観察期間は34 ± 12.5ヵ月(15-60)である.使用機種はin lay type 28例,on lay type 9例であった.検討項目は術前,最終診察時の肩自動可動域,臨床評価,小円筋の術前MRIにおける脂肪浸潤(Goutallier分類)と術後自動外旋角度やADLERスコアとの対比などである.術前および術後の平均肩関節自動可動域はそれぞれ屈曲63° から132° ,外転48° から113° ,外旋14° から28° へと改善した. Constantスコアは術前平均21点から術後平均59点へと改善した.ADLERスコアは同様に13点から24点に改善した.またADLERスコアは術前後の自動外旋角度と良く相関していた(術前後ともにp = .000).術前小円筋の脂肪浸潤(Goutallier分類)と術後外旋角度,ADLERスコアの対比ではStage 3群の術後自動外旋角度および術後ADLERスコアがStage 0から2の群よりも劣っていた.すなわち,術前に小円筋の脂肪浸潤が強ければ術後の自動外旋角度が小さく,ADLERスコアにも影響していることが示唆された.
  • 富本 彩夏, 間中 智哉, 中澤 克優, 伊藤 陽一, 中村 博亮
    2020 年 44 巻 1 号 p. 213-217
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/19
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     人工肩関節全置換術(以下,TSA)術後の反復性肩関節後方脱臼に対して,リバース型人工肩関節置換術(以下,RSA)を施行した1例を経験したので報告する.症例は86歳女性で,肩関節単純X線でTSA後の上腕骨頭の上方化,CTでグレノイドコンポーネントの後捻と上腕骨頭の後方亜脱臼を認めた.ステムとグレノイドコンポーネントを抜去し,Norris法による腸骨移植を併用し, RSAを施行した.術後1年で再脱臼を認めることなく経過良好である.
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