筆者らによる阿蘇カルデラのMT探査の結果,中岳火口下は低比抵抗であることが明らかになっている. 1989〜1990年の噴火に際して,火口周辺部の比抵抗構造,特に低比抵抗層の上面深度を明らかにすること,および火山活動に伴うこの低比抵抗層の変化の検出を目的として,阿蘇中岳火口を含む地域で,CSMT観測を1989年,1990年各1回実施した. これらのMT,CSMT観測の結果から次のことがあきらかになった. (1)中岳火口下の極めて低比抵抗な層は,火口周辺に限定されており,また,その低比抵抗層(層厚約200m)は,火口下の比較的浅部(約100m深度)から存在する. (2)また,この低比抵抗層は火山活動が活発であるときも,静穏時でも存在し,1989〜1990年の噴火に際しては,比抵抗の減少,その領域の拡大が見られた. この低比抵抗層は,火口下のイオンを多く含む帯水層であり,この帯水層の存在は,1989~1990年の噴火時に見られた地下水との相互作用で生じる小規模な水蒸気爆発や地磁気異常の変化と調和的である. このことは,この低比抵抗層のモニターが,阿蘇火山の噴火のプロセスの解明,および噴火予知にとって重要であること示す.
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