樽前火山火口原において, 2000年8月に, CO
2拡散放出量および土壌ガス圧力勾配の測定を行った. 火口原内の1.86km^2の領域において50~100m間隔に分布した約250地点で, 火山体を覆う土壌を通して放出されるCO
2の放出量をチャンバー法(Chiodini et al,1998)で測定し, 同時に地中温度,風速, 気圧も測定した.また,微差圧計を応用した装置(Natale et al,2000)を用いて, 土壌中の深さ方向でのガス圧力の勾配の測定も行った. その結果, CO
2拡散放出量は0.014~3,200gm
-2d
-1と5桁のばらつきがあり, 山頂溶岩ドーム上とドームの東側のフィッシャーに沿って最高値を示した(>1,000gm
-2d
-1). そこでは, 土壌ガス圧力勾配も最高(~10
-3atm m
-1)で,40cm地中温度も一般的に高かった(>30~40℃). また, CO
2放出量の低いところでは地中温度も低かった(<25℃). CO
2放出量と土壌ガス圧力勾配とに相関が見られる測定結果は,地表からのCO
2の放出がダルシー流に従って起きていることを示しているが, この問題は今後さらに検討が必要である. 測定されたCO_2放出量から測定領域1.86km^2のコンターマップを作成し, 樽前火山山頂からの全CO
2放出量を積算すると6t/dとなり, この値はこれまでに測定されている活動的な火山からの放出量と比べてかなり少なかった.このうち, マグマ起源のCO
2の寄与を土壌ガスの化学組成,炭素同位体比などから見積もると43%であり, マグマ起源のCO
2放出量は2.5t/dである.
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