火山
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58 巻, 1 号
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  • 原稿種別: 口絵写真
    2013 年 58 巻 1 号 p. App1-
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー
  • Masato Iguchi
    2013 年 58 巻 1 号 p. A1-
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー
  • 井口 正人
    原稿種別: 総説
    2013 年 58 巻 1 号 p. 1-18
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー
    地震観測と地盤変動観測に基づいて1914年,1946年,1955年以降と3つの特徴的な噴火が発生した桜島火山におけるマグマ供給系とマグマの動きに関する研究について総説する.桜島のマグマ供給系は桜島の北方,姶良カルデラの地下約10kmにあると推定される深部マグマ溜り,中央火口丘下の深さ3~6kmの浅部マグマ溜りおよび南岳山頂火口につながる火道から構成される.上下変動の空間分布と時間変化から,年間107m3のマグマが深部溜りに供給されてきた.浅部溜りは,地盤の上下変動,爆発的噴火直前の火口方向の隆起の傾斜変化や地震波の異常減衰域の存在から推定される.姶良カルデラの隆起に続く桜島への隆起中心の移動と火山性地震の震源の深部から南岳直下の浅部へ移動は中央火口丘下へのマグマの移動・上昇に対応する.中央火口丘下のマグマ溜まりと火口底をつなぐ火道の存在とその大きさをせん断破壊により発生するA型地震と体積膨張に伴うB型・爆発地震の震源位置の違いから推定できる.火道内をマグマがスムーズに上昇して火口底に達した時は,BL型地震を伴うストロンボリ式噴火が発生し,脱ガスしたマグマが火道上部に蓋とガス溜まりを形成している状態でマグマが貫入してきたときはブルカノ式噴火が発生する.いずれの場合も火口周辺の地盤の隆起と伸長が観測され,噴火の発生とともに沈降,収縮へ反転する.マグマの揮発性成分は火道上部のガス溜りの形成と火山ガスの漏洩に伴う圧力低下によって引き起こされるマグマの急激な発泡に重要な役割を果たす.
  • 高橋 正樹, 大塚 匡, 迫 寿, 川俣 博史, 安井 真也, 金丸 龍夫, 大槻 明, 小林 哲夫, 石原 和弘, 味喜 大介
    原稿種別: 総説
    2013 年 58 巻 1 号 p. 19-42
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー
    桜島火山および姶良カルデラ地域における61ka以降のマグマ化学組成の時間変化とマグマ溜りシステムの進化について噴出物の全岩化学組成に基づいて検討した.61ka以降桜島火山および姶良カルデラ地域のマグマは,(1)マントル起源の玄武岩質および玄武岩質安山岩質マグマ,(2)地殻起源の流紋岩質および高シリカ流紋岩質マグマ,(3)デイサイト質マグマ,(4)マグマ混合によって形成された安山岩質マグマ,の4グループに分けられる.姶良カルデラ地域では,61ka頃に玄武岩質,玄武岩質安山岩質,安山岩質そして流紋岩質マグマの活動があり,敷根安山岩や安山岩質スコリアおよび流紋岩質軽石からなる岩戸火砕流堆積物が噴出した.24,000年ほどの静穏期の後に流紋岩質マグマの活動が再開し,29kaには大量の高シリカ流紋岩質マグマが噴出して,大隅降下軽石堆積物および入戸火砕流堆積物が形成された.60kaの岩戸火砕流堆積物の流紋岩質マグマと,29kaの大隅降下軽石堆積物および入戸火砕流堆積物の高シリカ流紋岩質マグマは同源と考えられ,前者の結晶分化作用によって後者が形成されたと考えられる.姶良カルデラ地域では30,000年余りの期間にわたって,流紋岩質~高シリカ流紋岩質からなるマグマ溜りが長期に安定であったものと推定される.3,000年余りの静穏期の後,桜島火山の活動が26kaに開始された.13.8kaには姶良カルデラ内で燃島軽石の海底噴火が生じたが,これは桜島火山とは別のマグマ溜りシステムからもたらされたものと考えられる.桜島火山のマグマ溜りシステムは,高Ti-Pタイプおよび低Ti-Pタイプのデイサイト質および安山岩質マグマからなる.このうちの安山岩質マグマは,玄武岩質~玄武岩質安山岩質マグマと高Ti-Pタイプおよび低Ti-Pタイプのデイサイト質マグマのマグマ混合によって形成された.低Ti-Pタイプのマグマ溜りシステムは14kaから4kaに活動的であり,全岩化学組成からは少なくとも3つのサブシステムからなる.8世紀以降の歴史時代噴出物は高Ti-Pタイプであり,全岩化学組成からは3つのサブシステムからなるが,最新のものは1779年ADの安永海底噴火以降に噴出したものである.桜島火山のそれぞれのマグマ溜りシステムの持続時間は数100年から数1,000年程度と短い.
  • 柴田 知之, 鈴木 淳, 芳川 雅子, 小林 哲夫, 味喜 大介, 竹村 恵二
    原稿種別: 論説
    2013 年 58 巻 1 号 p. 43-58
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー
    姶良カルデラの後カルデラ期の桜島火山に産する溶岩,及び,桜島周辺に産する前カルデラ期と単成火山の玄武岩について,主要元素・微量元素,ストロンチウム(Sr)・ネオジム(Nd)・鉛(Pb)同位体組成を測定した.桜島火山の溶岩は斜方輝石,単斜輝石,斜長石(稀にかんらん石)の斑晶を持つ,安山岩及びデイサイトである.微量元素組成から,島弧マグマの典型であるNbの枯渇,Rb・K・Pbの富化が観察され,マントルウェッジに水に富む流体が付加されたことを示す.Zr/Nb比はMORBの比に類似し,また,Sr・Nd・Pb同位体組成はMORB型マントルとフィリピン海プレート上の堆積物の混合曲線付近にプロットされる.これらは,桜島及びその周辺のマグマは,MORB型のマントルが沈み込んだフィリピン海プレート起源の流体の付加を受け部分溶融して生成したことを示す.さらに,Zr/Nb比や同位体組成が,前者はMORBの値から,後者はMORBとフィリピン海プレート上の堆積物との混合曲線から,それぞれ地殻物質の値へ向かう傾向を示すことから,地殻物質がマグマの化学組成に影響を与えた可能性が指摘される.Sr-Nd-Pb同位体組成から,少なくとも二つの地殻物質が桜島のマグマの起源に関与しており,そのうち一つは四万十層群の堆積岩を起源とすると考えられる.主要元素組成はハーカー図において,P2O5とTiO2を除き,直線的な傾向を示す.この事から,P2O5濃度をもとに,試料をlow-Pとhigh-Pに区分した.Low-Pとhigh-Pは斜長石の斑晶モード組成に対するSiO2,P2O5,TiO2濃度,及び,87Sr/86Sr比との間で,それぞれ異なるマグマ混合の関係を示す.また,主要元素と同位体組成の関係から,マグマ混合の両端成分を生成するには,地殻同化と結晶分化作用が同時に進行する過程(AFC)などの過程が必要であることが示された.
  • 安井 真也, 高橋 正樹, 島田 純, 味喜 大介, 石原 和弘
    原稿種別: 論説
    2013 年 58 巻 1 号 p. 59-76
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー
    桜島火山の歴史時代の大規模噴火である安永噴火(1779-1782年)と大正噴火(1914-1915年)の噴出物の岩相や層序,地形,噴火当時の記録を比較した.両噴火では山頂をはさんだ両測山腹で割れ目火口列が活動した.割れ目の推定の長さは大正噴火で約2.3km,安永噴火では5kmに及ぶ.噴火開始後数10時間の大正噴火と安永噴火の噴火様式は共通しており,プリニー式噴煙柱から火口近傍への大量の火砕物降下により斜面上に火砕丘を形成しながら火砕成溶岩をもたらした.引き続く数週間には両噴火とも溶岩流出が繰返されて溶岩原が形成された.その後は,大正噴火が陸上での溶岩流出を主としたのに対し,安永噴火では北東沖で海底噴火が起きて安永諸島を形成した点で大きく異なる.両噴火とも噴火初期に割れ目火口近傍へ著しい火砕物降下があることが特徴的である.これは火山体形成の観点からは,両噴火では山頂部の地形変化はほどんどないが,山腹斜面が成長したことを意味する.また桜島の大規模噴火の減災という観点では,居住地域近くまで到達しうる割れ目火口の活動への迅速な初期対応の重要性を示している.
  • 横山 泉
    原稿種別: 論説
    2013 年 58 巻 1 号 p. 77-90
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー
    桜島火山は歴史時代において,数度にわたり大噴火が起こり,溶岩流出と地盤の変動が記録されている.それらの中で,1914年噴火は当時の水準で種々の定量的観測がなされている.ここでは特にこの噴火によって生じた沈降の回復を詳論した.水準測量の結果は1916年の発表以来,しばしば議論されているが,姶良カルデラ周辺の沈降の中心は,海域のためもあり,その位置の決定には任意性がある.今回,噴火直後の三角測量の結果をも参考にして,従来より広範囲の沈降について,その中心の位置を桜島の北岸辺に決めた.そして,1914年噴火に伴った大規模の沈降の回復をB.M.2474を例にとり解析した.その際,活動的なこの地域で変動の基準を決めることは極めて難しい.本来は歪みなしの状態(No-strain level)を基準とすべきであるが,ここでは全く便宜上,1914年噴火に先立つ1892年(水準測量の開始)を基準(Reference level)にした.従来,観測を重ねることにより,漸近的に,歪みなしの状態を決められるであろう.結論として,その永年変化は地盤の粘弾性的回復と桜島直下の圧力源の増強との2要素で説明される.1914年噴火直後から粘弾性的回復が進行した(遅延時間は約16.6年).平行して,次第に圧力源へマグマが蓄積するに従って,約20年を経て,その効果が沈降回復へ寄与している.2000年現在は,沈降歪みは既に1892年の基準まで回復して,それにマグマ圧の効果が蓄積している状態である.この議論に付随して,姶良カルデラ地域の地殻上部の粘性を求めた.このような火山地域における粘弾性的地殻変動の他の例として,1983年三宅火山噴火後の沈降を論じ,上記と同じ桁の粘性値を得た.
  • 横山 泉
    原稿種別: 論説
    2013 年 58 巻 1 号 p. 91-102
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー
    桜島火山には多くの寄生火口が地質及び地形の面から認められている.また,その噴火史において寄生火口の噴火がしばしば記録されている.寄生火口の分布パターンを調べるのに,色んな方法が提案されてきたが,ここでは,火山中心から半径方向の密度分布(km^2当たり)を調べた.一般論として,火山の下に点力源を仮定して,地表面で直応力の分布と水平差応力の分布を考え,岩石の強度を考慮すると,寄生火口の生ずる地点の見当がつく.それは,地表で力源を伏角51°で見る山腹の地点で,火山中心に対して対称な2点である.多くの火山では,対で生ずることは少ない.桜島火山の寄生火口の火道が主火道から分岐する深さを求めると,深さが3kmと10kmの2群となる.これらの深さと既に推定されているマグマ溜まりとの関連について触れた.桜島火山の歴史時代の(1471年以降の3)回の大噴火は総て,山頂に対称的に対をなして形成された.このことは力学的には正常であるが,事例としては例外である.ただ,分岐の深さが10kmの場合(1779〜80年噴火),山頂に対して対称位置に寄生火口が生じていない.この例外的な事例は,桜島地下で,浅部と深部で地殻構造が異なることに起因するのかも知れない.更に,寄生火口が再噴火しない機構について仮説を述べた.次の桜島火山の噴火地点は何処であろうか.山頂火口か,それでなければ,寄生噴火である.その場所は統計的に,山体の中心軸から約2.5km或は8.5kmの円環上で,かって噴火したことのない地点が考えられる.寄生火口の火道が主火道から分岐する機構が未解明である限り,これ以上のことは言えない.
  • 山科 健一郎
    原稿種別: 論説
    2013 年 58 巻 1 号 p. 103-114
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー
    桜島火山の噴火活動について見通しを得るため,北部鹿児島湾とほぼ位置が重なる姶良カルデラの周りの地殻変動について,特に水準点2474番と2480番の相対的な高さの変化に注目して検討を加えた.この区間では,これまで注目されることがほとんどなかったが,1914年の桜島火山の大きな噴火に先立って明瞭な膨張が生じていたであろうことが確かめられた.これにより,大きな噴火に先立って姶良カルデラ地下に蓄えられたマグマの1914年時点の限界量が推測される.1914年の噴火によって姶良カルデラでは顕著な収縮が生じたが,その後膨張が進んで1900年(大噴火まで14年)の水準を超え,1970年代初め頃には1914年の限界値にかなり近づいたと考えられる.桜島では,1970年代から80年代にかけて爆発的活動が活発に続いた.この期間,姶良カルデラの膨張は停滞およびやや後退していたが,桜島の爆発的な活動が低下すると再び変動が進み始めた.近年,ここで推測された1914年の限界値にさらに近づきつつあり,大きな噴火の可能性があり得ることを示している.一方,姶良カルデラ地下のマグマ量の増減と桜島からの噴出物量の収支については課題があり,今後の検討に委ねられる.
  • 井口 正人, 為栗 健, 太田 雄策, 植木 貞人, 中尾 茂
    原稿種別: 論説
    2013 年 58 巻 1 号 p. 115-135
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー
    2006年6月に再開した桜島の昭和火口における噴火活動は,年を追うごとに活動的となってきており,2008年から2011年までに2718回のブルカノ式噴火が発生した.本稿では主に地盤変動観測に基づいて,約5年間の活動の推移と個々の爆発的噴火の特徴について述べる.GPS観測により姶良カルデラおよび桜島の地盤は長期的な膨張トレンドを示していること,伸縮計によるひずみ観測により,約1年の周期で膨張と収縮を繰り返していることがわかった.2009年10月に始まった隆起・膨張は,2006年以降の最大の変動であり,2010年6月頃に沈降・収縮に反転した後,2010年10月に沈降・収縮が停止した.2つの球状圧力源からなるモデルを適用したところ,姶良カルデラ下の深さ12kmと北岳北麓の深さ5kmにその位置が求まった.従来から南岳下にマグマ溜りの存在が指摘されており,桜島のマグマ供給系は,姶良カルデラ下の深さ10km付近の主溜りと北岳から南岳にかけての中央火口丘下の深さ5km付近の副溜り群から構成されることがわかった.昭和火口のブルカノ式噴火に先行してひずみ変化が検出され,先行変動継続時間は多くの場合,1時間以下である.ひずみ変化の特性から圧力源の深さは1.5km以浅と推定される.規模の大きい噴火では先行変動継続時間が7時間以上に及ぶことがあるが,その場合は,浅部圧力源に加え,南岳下のマグマ溜りに位置する深さ4kmの圧力源も膨張する.昭和火口に繋がる火道は,南岳下のマグマ溜り,もしくは南岳に繋がる主火道から枝分かれしたものである.地盤変動が急速に進む時期に,噴火活動は活発化した(例えば,2009年12月から2010年3月)が,このことは桜島の中央火口丘下ではマグマの蓄積と放出が同時に進行していることを意味する.マグマの蓄積と放出の同時進行と小規模ブルカノ式噴火の頻発は,細い開口火道と関係するのであろう.
  • 山本 圭吾, 園田 忠臣, 高山 鐵朗, 市川 信夫, 大倉 敬宏, 吉川 慎, 井上 寛之, 松島 健, 内田 和也, 中元 真美
    原稿種別: 論説
    2013 年 58 巻 1 号 p. 137-151
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー
    桜島火山の活動に伴う最近の桜島および姶良カルデラ周辺域における地盤上下変動が,2007年10月-12月,2009年11月,2010年4月および11月と行われた精密水準測量の繰返し観測によって明らかとなった.姶良カルデラ周辺の地盤は,1996年から2010年までの期間において,それ以前の1991年から1996年までの期間に得られていた結果と同様に,カルデラ内部を中心として隆起したことが確認された.球状圧力源(茂木)モデルに基づく解析を行った結果,1996年-2010年の期間において,姶良カルデラ中央部地下の深さ8.8km-10.8kmに増圧源の存在が推定された.この期間,姶良カルデラ地下に推定されるマグマ溜りにおいてマグマの貯留が進行したものと考えられる.2007年-2009年の期間においては,桜島北部地下の深さ4.3kmに増圧源の存在が推定された.このことは,姶良カルデラの深さ10kmから桜島の浅部方向へのマグマの移動が生じた可能性を示唆するが,そのマグマの移動量は小さい.姶良カルデラ地下におけるマグマの貯留は,桜島火山の山頂噴火活動が静穏化した1991年頃から継続している.2009年以降,昭和火口における噴火活動が活発化する傾向にあるが,観測された地盤隆起の継続は,噴火活動が活発化しつつある2010年11月の時点においても姶良カルデラ地下においてマグマの供給量が放出量を上まっていることを示唆している.計算された増圧源において見積もられた容積増加量および観測降下火山灰量に基づき見積もられたマグマの放出量を考慮すると,1991年から2010年までの期間において姶良カルデラの地下に約1.2×108m3のマグマが新たに蓄積されたことが推定される.また,マグマの蓄積に伴う桜島北部付近の2010年11月の時点における地盤隆起量は,1970年代および1980年代の活発な山頂噴火活動が開始した1973年頃の状態を回復し更に隆起が継続した状態となっている.これらの結果は,桜島火山の次の大規模噴火活動についての潜在的なポテンシャルを示唆するものと考えられる.
  • 大久保 修平, 風間 卓仁, 山本 圭吾, 井口 正人, 田中 愛幸, 菅野 貴之, 今西 祐一, 孫 文科, 坂 守, 渡邉 篤志, 松本 ...
    原稿種別: 論説
    2013 年 58 巻 1 号 p. 153-162
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー
    2009年4月から2011年1月まで,桜島火山の有村観測坑で行った絶対重力の連続観測により,測定誤差を有意に超える,30マイクロガルの重力値の減少が検出された.陸水流動シミュレーションを用いて,降雨等により発生する地下水起源の重力擾乱を取り除くと,重力は両振幅で15~20マイクロガルの変動を示した.変動の様相から観測期間が5つの特徴的なフェーズに分けられることが明らかとなった.これらのフェーズは,火山灰放出量・有村における傾斜変動・爆発回数などの火山活動を示す指標の変動と,きわめて良い相関をもっていた.重力の火道内のマグマ頭位の変動によって重力変動が引き起こされると考え,線質量モデルに基づいて,頭位標高の推移を推定した.その結果から,マグマヘッドは2009年7月〜2010年5月半ばには標高400〜800mと高い位置にあったが,その後の1か月間で標高0m程度まで急降下していると推定された.これらの推定は,昭和火口からの爆発回数の消長ときわめて良い対応を見せている.
  • 横尾 亮彦, 井口 正人, 為栗 健, 山本 圭吾
    原稿種別: 論説
    2013 年 58 巻 1 号 p. 163-181
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー
    桜島において多項目地球物理観測を行い,昭和火口のブルカノ式噴火発生に至る一連のプロセスについて明らかにした.火口下1kmの深さにマグマが貫入することによって,噴火の数時間前から山体が膨張する.噴火開始の数10分前には,火口底にプラグが形成されて脱ガス通路の閉塞が進行し,火口直下に火山ガスの溜まりが形成される.二酸化イオウ放出率の減少や山体膨張率の増加として観測されるほか,夜間であれば,火映が微弱化した後に消滅する.噴火数分前になると極小微動が起こり始める.プラグに亀裂が形成され,そこを通って火口底下に溜まっていたガスの放出が始まることに対応する.その後,放出されるガスが多くなることで,微動の振幅が大きくなる.山体膨張から収縮に転じ,火道内では小規模な減圧が誘引される.減圧の影響が水に飽和したマグマ深度まで到達すると,急激なマグマ発泡,破砕が始まり,爆発地震が発生する.破砕したマグマは火道内を上昇し,火口直下にあるガス溜まりを押し上げる.そのため,爆発地震の発生開始からおよそ0.5秒後には,ガス溜まりの上方にある火口底プラグが隆起して,空振先行相を励起する.プラグの変形が進行して破壊に至った後は,火道内を上昇してきた破砕マグマが火山噴煙として放出される.
  • 風早 竜之介, 森 俊哉, 山本 圭吾
    原稿種別: 論説
    2013 年 58 巻 1 号 p. 183-189
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー
    桜島火山にて紫外線カメラ観測装置を用いてガス観測を行い,南岳火口及び昭和火口から放出される二酸化硫黄放出率の分離を行った.二酸化硫黄放出率は各火口の状態を反映していると考えられるため,複数火口が存在する火山でそれらの放出率を個別に測定する事は噴火活動を理解する上で非常に有用である.観測は2007年から2010年に行われた.その結果,昭和火口の放出率は数百トンから数千トンレベルで大きく変動したが,南岳火口の放出率は100-500トン程度でほぼ一定だった.これより,観測期間中,南岳の火道の状態は安定したままほとんど変化していないと考えられる.また,昭和火口の火道状態は昭和火口の噴火活動・回数に応じて大きく変動している事が示唆される.桜島火山において長期的に行われているCOMPUSSを用いた二酸化硫黄放出率観測データは二つの火口の放出量の合計である.南岳のガス放出率がほとんど変わっていないことから,COMPUSSを用いたガス放出率観測で見出されている放出率変動は主に昭和火口による寄与が大きく,南岳の放出率変化はほとんど寄与していないと考えられる.
  • 松本 亜希子, 中川 光弘, 宮坂 瑞穂, 井口 正人
    原稿種別: 論説
    2013 年 58 巻 1 号 p. 191-212
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー
    九州南部に位置する桜島火山は,2006年6月に昭和火口における噴火活動を再開した.我々は,2006年6月~2010年9月に噴出した火山灰及び火山礫について岩石学的特徴を明らかにし,マグマの特徴とその時間変化,そして噴火活動との関係を検討した.その結果,2006年以降の昭和火口活動が以下の4つの活動期に区分されることが明らかになった.第1期(2006年6月~2009年8月):この期間は,爆発的噴火が少なく,小さな山体膨張・収縮が繰り返された.噴出物中に本質物は認められない.第2期(2009年9月〜2010年3月):この期間は,爆発的噴火の頻度・規模ともに大きくなり,明瞭な山体膨張が継続した.噴出物中には本質物(スコリア・軽石)が認められる.火山礫の全岩化学組成は,1955年以降の噴出物の組成トレンドと調和的で,且つ最も苦鉄質な組成を示す(SiO2=58.5-59.1wt.%).これは,桜島火山では1955年以降同じマグマ系が活動しており,珪長質マグマに苦鉄質マグマが注入していることを示唆している.また,火山灰中の本質物の量比は時間とともに増加し,その石基ガラス組成は時間とともにSiO2量が減少している.従って,第2期では,噴出マグマにおける苦鉄質マグマの割合の増加が活動規模を拡大させていると考えられる.第3期(2010年4月~5月):この期間は噴火頻度が極端に低下し,山体膨張もほぼ停止した.噴出物中に本質物は認められるが,その量は少なく,変質岩片が増加する.第4期(2010年6月~2010年9月):この期間になると,明瞭な山体収縮が始まり,火山爆発も再び活発化した.噴出物中に本質物が多く認められるようになるが,その石基ガラス組成はやや珪長質であることから,この時期の噴出マグマは苦鉄質マグマの影響が小さいと言える.つまり,2006年以降の桜島火山では,マグマ系に注入する苦鉄質マグマそのものが噴出しているのではなく,既に火山下に供給されている珪長質マグマが主体となって活動していると考えられる.
  • 宮城 磯治, 篠原 宏志, 伊藤 順一
    原稿種別: 論説
    2013 年 58 巻 1 号 p. 213-226
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー
    火山灰の噴出を繰り返す火道上部におけるマグマ脱ガス過程を理解するため,1981~2011年の桜島の火山灰の水溶性付着成分(Cl,F,S)と色の時間変化を調べた.水溶性付着成分量により火山灰は,S/Cl比が約10のグループとS/Cl比が約1のグループに大別できる.1981~1991年に南岳山頂火口の活発な噴火で放出された火山灰は,S/Cl比が約1のグループに属する.2008年に活動を再開した昭和火口の火山灰は,ほとんどがS/Cl比が約10のグループに属するが,時間とともに付着成分量が低下し,2010年にはS/Cl比が約1のグループも出現した.2008年に昭和火口から放出された火山灰の色調は,時間とともに黄色みが強いものから弱いものへと推移した.黄色みの強い色調は,自然硫黄(黄色)や熱水変質鉱物の存在を反映していると考えられる.火山灰の水溶性付着成分量および黄色味の強さは,その火山灰をもたらした個々の噴火前の休止時間の長さと正の相関が有ることが判明した.この相関は,火道頂部に滞留しているマグマが,火山灰となって噴火する前に,滞留時間に応じ,噴気ガスの一部を蓄積したためだと思われる.1981~2011年にかけて観察された火山灰の水溶性付着成分量と色の変化は,火道内マグマ対流と噴火によるマグマの入れ替わりに対応した,火道頂部におけるマグマ平均滞留時間の変遷を反映していると解釈される.
  • 宮町 宏樹, 泊 知里, 八木原 寛, 井口 正人, 為栗 健, 山本 圭吾, 大倉 敬宏, 安藤 隆志, 尾西 恭亮, 清水 洋, 山下 ...
    原稿種別: 論説
    2013 年 58 巻 1 号 p. 227-237
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー
    2008年に実施された屈折法地震探査によって得られたP波初動走時により,姶良カルデラおよび桜島火山の深さ3kmまでの速度構造を推定した.本研究地域の基盤層である四万十層群は4.6-5.0km/sのP波速度を持ち,姶良カルデラの中央部に向け傾斜している.姶良カルデラの中央部には,4.2-4.4km/sの低速度域が深さ1.5-3kmに存在している.そして,この低速度域はカルデラ下に存在する深部マグマ溜まりからのマグマ供給系が活発であることを示唆している.また,基盤層は鹿児島地溝帯の北西域の境界に沿って深さ1kmから2.5kmに急激に落ち込んでいることがわかった.桜島火山の速度構造は3.6-3.7km/sの領域が存在することで特徴づけられる.桜島火山の山頂直下で発生している火山性地震の震源域と速度構造の比較から,地下構造が種々の火山性地震の震源域の広がりに強い影響を与えていることを示した.
  • 筒井 智樹, 八木 直史, 井口 正人, 為栗 健, 三ヶ田 均, 尾西 恭亮, 宮町 宏樹, 西村 太志, 森田 裕一, 渡邊 篤志
    原稿種別: 論説
    2013 年 58 巻 1 号 p. 239-250
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー
    桜島火山で反射法地震探査を行い深さ11kmまでの3つの反射断面を得た.2本の地震探査測線は221点の臨時観測点と8点の発振点で構成された.1本の測線は桜島の東麓に展開され,もう1本の測線は桜島の北山腹に展開された.これらのデータに通常の反射法地震探査の処理を行い,深度マイグレーションを施して深度断面を得た.得られた反射断面には4つの連続した反射面が認められる.このうち深さ5.4km付近の反射面は桜島北東部で消失する.この反射面の不連続の下にはマグマかその供給経路が存在する可能性が高い.桜島のマグマ供給経路は先行研究のモデルより西測に位置している可能性がある.
  • 神田 径, 山崎 友也, 小川 康雄, 橋本 武志, 坂中 伸也, 相澤 広記, 高倉 伸一, 小山 崇夫, 山田 健太, 小林 宰, 小森 ...
    原稿種別: 論説
    2013 年 58 巻 1 号 p. 251-267
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー
    2007年11月,第7次火山噴火予知計画の一環として,桜島火山の山麓でAMT法比抵抗構造調査を実施した.南岳山頂火口および昭和火口では,ブルカノ式噴火が繰り返し発生するため,山頂付近へ近づくことができない.そこで我々は,山体の北,西,南東山麓にそれぞれ測線を設定し,合計27観測点で周波数1〜10400Hzの電磁場データを取得した.データは,2Hz以上の周波数帯で概ね良好であった.まず,各測線で得られたデータに対して2次元解析を行った.しかしながら,インピーダンスから推定される構造走向は,全ての測線においてほぼ南北方向を示し,2次元解析は不適当であることが判明したことから,全てのデータを矛盾なく説明するために,3次元解析を行った.3次元モデリングの結果明らかとなった桜島の浅部比抵抗構造は,以下のような特徴を持つ.表層は溶岩層に対応する高比抵抗層で数百から数千Ωmの比抵抗値を示す.その下には,海水や地下水を含む層であると解釈される数Ωm以下の低比抵抗層が続く.基盤構造は,桜島の北部の一部を除いて明瞭ではなく,2層目の低比抵抗層が厚く分布している.表層の高比抵抗層と2層目の低比抵抗層との境界は,概ね海水準付近にあるが,ハルタ山溶岩ドームや鍋山軽石丘などの一部地域の下では,海水準より下に位置する.それらの地域では,過去の噴火に関係した破砕帯が形成されていると考えられる.また引ノ平溶岩ドームから大正火口にかけての地下では,逆に低比抵抗層が地表近くまで盛り上がっており,熱水系の存在が示唆された.一方で,同じ大正噴火の際に溶岩流を流出させた鍋山の縁に位置する火口付近では,そのような低比抵抗層の盛り上がりは見られず,既に熱源が存在しないことを暗示している.
  • 八木原 寛, 平野 舟一郎, 宮町 宏樹, 高山 鐵朗, 山崎 友也, 為栗 健, 井口 正人
    原稿種別: 論説
    2013 年 58 巻 1 号 p. 269-279
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー
    桜島火山の北東に位置する若尊カルデラの海底において,海底地震計(OBS)で観測された地動速度の振幅変化に,明瞭で半日周潮的な周期性が認められた.OBSの投入直後に,海底噴気孔から海面に浮上する気泡を視認したため,OBSで観測された地動はカルデラ底の海底噴気孔の活動によって生じたと考えられる.1分毎の地動速度RMS振幅値(RMSA)を求め,その変化と起潮力の理論値の変化,及び潮位計による水位の観測値の変化とを比較して得られた特徴は次のとおりである.1)2007年9月を通じて,RMSAに明瞭で半日周潮的な周期性が認められた.ただし,時々,不明瞭な期間があった.2)RMSAの極大の時刻が,起潮力の極大の時刻と時間領域で一致する.3)RMSAのパワースペクトルに認められる4つのピークの周波数は,主要4分潮の周波数と同一である.4)詳細にみると,RMSA変化はのこぎり刃状を呈する.また,日潮不等の期間において卓越する.地熱システムの循環の一部を形成する,深部からカルデラ底に向かって上昇する地熱流体の活動が,起潮力によって増加するのであろう.
  • 鈴木 建夫, 西田 泰典, 新井田 清信
    原稿種別: 論説
    2013 年 58 巻 1 号 p. 281-289
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー
    本論文では,火山爆発による放出岩塊の初速度の方位とサイズの依存性を考慮し,空気抵抗をベクトルとして扱う新たな弾道方程式を提案した.本方程式を桜島南岳爆発の岩塊落下地点分布に適用したところ,1982年11月1日,および1983年1月10日の噴火の最大初速度としてそれぞれ,149m/sと135m/sが得られ,いずれもほぼ鉛直方向に爆発したことが推定された.一方,爆発の主軸が傾く1982年10月7日の噴火では,岩塊分布を説明可能なパラメータの範囲が広いことが分かった.
  • 田島 靖久, 田村 圭司, 山越 隆雄, 津根 明, 鶴本 慎治郎
    原稿種別: 論説
    2013 年 58 巻 1 号 p. 291-306
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー
    海に囲まれた火山島では観測できる場所が限られ,火山灰の堆積量を推定することが困難であった.また,火山灰が大量に降ることによって交通,健康,農作物へ影響を生じ,厚く堆積した斜面では土石流が発生しやすくなる.ゆえに火山灰の降下量(降灰量)や分布を迅速に把握する方法の開発は,火山学,防災学上の重要な研究対象となる.このため桜島のように海に囲まれ観測場所が限られる火山での迅速かつより少ない点から火山灰の堆積分布・量を推定する方法を検討した.我々は等層厚線が相似の楕円に近似されると仮定し,各点から得られる楕円近似した等層厚線の軸比を一定とし,分布を幾何学的に単純化した.また,降灰観測データの豊富な噴火事例を検証した結果,面積=層厚がA=αTd(T:層厚,A:面積)とした場合,その減衰はほぼ-1乗に近似可能である.これらの関係より,火口位置などを楕円の軸端点とし,火山灰堆積分布に相当する分布軸が決められる場合,計算上2点の観測値から火山灰堆積量を推定することが可能となる.ただし,本手法では通常,計算軸を求める際に,計算に使用する2点以外の1~4点程度の複数観測点の値が必要となる.本手法については分布軸が精度良く求められることと,複数の観測値を解析結果が矛盾なく説明できることを適応条件とした.本手法を用い桜島2008年の活動について60を超える噴火の火山灰堆積量を推定した.推定した分布から特定の場所における月ごとの累積降灰量を計算した結果は観測量を再現可能である.2008年の桜島の活動を日単位の堆積量として解析すると,ピークは5月6~23日頃であったと推定される.本方法を適応することによって,これまで観測が難しかった火山島での火山灰堆積量観測が可能となる.
  • 中道 治久
    原稿種別: 解説・紹介
    2013 年 58 巻 1 号 p. 307-309
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー
  • 高橋 正樹, 安井 真也
    原稿種別: 解説・紹介
    2013 年 58 巻 1 号 p. 311-328
    発行日: 2013/03/29
    公開日: 2017/03/20
    ジャーナル フリー
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