九州歯科学会雑誌
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62 巻, 1.2 号
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原著
  • 藤田 優子
    原稿種別: 原著
    2008 年 62 巻 1.2 号 p. 1-17
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/30
    ジャーナル フリー
    小児期のグルココルチコイド投与が骨量の低下や成長遅延を引き起こすことはよく知られている.本研究では,グルココルチコイド(プレドニゾロン)投与によって骨密度,骨質,骨強度の低下,更に成長遅延が惹起された成長期ラットの脛骨,下顎骨に対してリセドロネート治療がいかなる影響を及ぼすかについて比較,検討を行った.海綿骨および皮質骨の骨構造解析には,末梢骨骨塩定量専用CT(pQCT)と3DマイクロCTを用いて行い,骨強度測定には,pQCT解析によって得られた皮質骨密度と断面係数から計算された骨強度指数(SSI)を用いた.また脛骨,下顎骨の骨サイズは,軟エックス線写真を用いて計測した.プレドニゾロン投与は脛骨,下顎骨の骨成長を抑制した.更に,下顎骨の海綿骨,皮質骨の構造を破綻させた結果,骨強度低下を引き起こした.一方脛骨に関しては,骨強度の低下は皮質骨の構造破綻のみによって惹起された.リセドロネート治療は,プレドニゾロン投与による脛骨幅と下顎骨長,下顎骨高の成長遅延を回復させたが,脛骨長の成長遅延を回復させることはできなかった.しかし,プレドニゾロン投与による骨構造破綻,骨強度低下を抑制した.特に下顎骨においては,これらの効果に加え,皮質骨密度の増加を伴っていた.以上の結果から,リセドロネート治療は,プレドニゾロン投与によって引き起こされた成長期ラット下顎骨の骨量,骨強度の低下,骨構造の劣化,成長遅延を回復させることが示唆された.
  • 梶原 英治, 井上 勝一郎, 鱒見 進一
    原稿種別: 原著
    2008 年 62 巻 1.2 号 p. 18-28
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/30
    ジャーナル フリー
    ティッシュコンディショナー硬化物について,レオロジー的性質(客観的測定結果)と歯科医師の指感覚(圧覚)による官能検査結果(主観的測定結果)との間に,どのような関連があるかについて調べ検討した.
    使用した材料は,市販のティッシュコンディショナー4種類で,粉液比はメーカ指示の標準粉液比をはさんで5種類(P/L=0.95/1, 0.975/1, 1/1, 1.025/1, 1.05/1)とした.各材料はプラスチックカップを用いて15秒間練和し,ガラス板上に置かれたステンレスモールド中に移し硬化させた.練和開始から1時間後に離型し,試験片とした.試験片は吸水試験用,クリープ試験用の2つのグループにわけた.クリープ測定は,離型直後のもの, 37℃水中に浸漬し,浸漬開始から24時間,96時間,168時間保存したものについて行った.クリープ荷重は200gとし計測時間は300秒とした.
    官能検査は,プラスチックカップを用いて5種類の粉液比でそれぞれ15秒間練和したペーストをアクリル板上に移し,練和開始から1時間後にその硬化物に触れる形で行った.検査項目は,硬さ,弾性回復,流動性,表面性状,の4項目である.
    その結果,粉液比の対数と各検査項目の結果を対数表示したものとの間には一部を除いて高い相関関係が見られた.主観的測定結果と客観的測定結果との間には,Stevensのベキ級数の法則が適用でき,歯科医師は,臨床経験から適切な性質を材料の弾性からではなく粘性によって識別していることも判明した.
  • 谷口 守昭, 永松 有紀, 山中 雅文, 柿川 宏, 小園 凱夫
    原稿種別: 原著
    2008 年 62 巻 1.2 号 p. 29-38
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/30
    ジャーナル フリー
    電解中性水は強力な殺菌作用をもちながら生体にも環境にもやさしいため,歯科器材の消毒処理に広く用いられるようになってきた.本研究では,この中性水で使用中の義歯を1分間超音波洗浄し,付着菌の除菌およびそれに伴う口臭の抑制効果を調べ,義歯の消毒に中性水を応用したときの有用性について検討した.菌数はATPテスターで求めた.口臭はハリメーターにより測定した.ハリメーターは一般に測定値に疑問がもたれてきているが,ハリメーターの特性を調べ,本実験には十分利用可能であることを確かめた上で使用した.
    洗浄前の義歯には105~108個/cm2の菌が付着していた.被験者10名の合計13義歯中,7義歯は洗浄によって95~100%の除菌率,3義歯は75~94%,残り3義歯は65%以下の除菌率を示した.洗浄によってハリメーター値は減少したが,義歯の除菌率とハリメーター値の減少量には有意な相関は認められなかった.10名の被験者中7名が洗浄によって爽快息のレベルになった.プラークや食物残渣の堆積が多い義歯は,3分間の超音波洗浄で100%近い除菌率になり,爽快息レベルのハリメーター値になった.2名は喫煙習慣があり,ハリメーター値の減少が少なかった.
    以上の結果から,電解中性水による洗口および義歯の洗浄は口臭抑制の観点からも有効であることが示唆された.
  • —平成7年度から平成18年度について—
    若杉 奈緒, 小田 昌史, 岡部 幸子, 鬼頭 慎司, 田中 達朗, 森本 泰宏
    原稿種別: 原著
    2008 年 62 巻 1.2 号 p. 39-47
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/30
    ジャーナル フリー
    我々は歯科放射線科・放射線部の本学附属病院に於ける役割を把握するため10年程度のスパンで外来患者数ならびに画像検査件数の推移について報告してきた.歯科疾患は硬組織に関連するものが大半を占めるが,歯科医師の知識向上と歯科医療の進歩により,軟組織病変に対するアプローチも増加した.九州歯科大学附属病院は平成11年7月に新築され,当科も当時最新鋭機種である1.5 Tesla全身用MRI装置とヘリカル撮像可能なX線CT装置を導入した.そこで,今回は附属病院の大きな変貌の中で本診療科の役割・存在意義の変化を正確に認識するため調査研究を行った.平成7年4月1日から平成19年3月31日迄の12年間に本学付属病院を受診し,当科において画像検査を受けた患者を調査対象とし,その画像検査件数を調査した.九州歯科大学附属病院が新築された平成11年度は病院全体の患者数が著しく増加すると共に本診療科の患者数も増加した.それに伴い,ほぼ全ての撮影法で件数の増加が認められた.MRI検査の撮影件数は導入以後著しく増加している.顎骨内に発症した疾患はX線CTによる検査がなされ,軟組織に発症したものはMRI検査がなされていたという結果からは,教科書等に記載されているX線CT検査とMRI検査の有効性を本学附属病院の歯科医師が理解し,適切な判断をなしているものと考える.X線CT及びMRI検査に対する他病院からの依頼数は年々増大傾向を示し,特に歯科用インプラントの術前検査は5年前より倍増している.この背景には,近年の歯科医院が歯科用インプラントの埋入に積極的になっていることが挙げられ,今後は更に増加していくことが予想される.一方で,当科のX線CT検査後のデータは市販のフリーソフト等で確認することができず,この点は大きな問題点であり早急の対応を考えているところである.
  • 稲永 清敏, 高田 豊, 豊野 孝, 荒井 秋晴, 後藤 哲哉, 西原 達次
    原稿種別: 原著
    2008 年 62 巻 1.2 号 p. 48-56
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/30
    ジャーナル フリー
    九州歯科大学では,大学院の教育・研究改革の一環として,大学院生の教育および研究に関する調査を行った.本調査では九州歯科大学大学院歯学研究科の大学院生2,3,4年生の全員(43名)を対象にマークシート方式のアンケート調査を行い,34名から回答を得ることができた.心身・生活実態に関して解析を行い,学部学生のそれと比較したので報告する.特筆すべき点は以下のとおりであった.
    1.健康に不安がある,あるいはどちらかといえば不安があると感じている大学院生は23%で,通院している大学院生は16%いた.健康管理室を利用した大学院生は23%で,学部学生に比べると少なかった.
    2.友人関係は良好と答えた大学院生が多く,不良あるいは非常に不良と答えた大学院生はいなかった.不良あるいは非常に不良と答えた学部学生が各学年に4~9%いたことと比較すると総じて良好であった.
    3.精神的な悩みがある,あるいはどちらかいえばあると答えた大学院生は44%で,学部学生よりやや多かった.カウンセリングルームを利用した大学院生は6%で,学部学生に比べて少なかった.しかし,本学以外でカウンセリングを受けている大学院生が9%いた.
    4.自宅から通学している大学院生は27%で学部学生(9~20%)に比べ多かった.1時間以内の通学圏に住んでいる大学院生が94%を占めていた.
    5.サークル活動を現在していると答えた大学院生は12%で学部学生(43~77%)に比べると極端に少なかった.サークル活動をしていたとしても費やす時間は少なかった.
    6.アルバイトをしている大学院生が85%と学部学生(39~60%)に比べて多かった.84%が生活費や学費のために当てていた.小遣い稼ぎ感覚でアルバイトをしている大学院生は3%で,学部学生が40~53%いたのに比べると極端に少なかった.アルバイトの時間の長さは学部学生と同じ程度であったが,大学院生の50%は土日・祝祭日などに,40%が平日の昼にアルバイトを行っていた.
  • 木尾 哲朗, 大住 伴子, 冨永 和宏, 曽我部 浩一, 永松 浩, 西原 達次, 寺下 正道
    原稿種別: 原著
    2008 年 62 巻 1.2 号 p. 57-63
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/30
    ジャーナル フリー
    対人関係を円滑に行うための適応能力は社会的スキルと呼ばれ,この社会的スキルは学習により上達するとされている.より良い歯科医師-患者関係を育むための態度教育において,学生の社会的スキルを評価することは重要であるが,歯学部学生に関する報告は無い.本研究では,歯学部学生の社会的スキルと性格の関係について調査を行った.対象は九州歯科大学学生205名とし,矢田部-ギルフォード性格検査(YG検査)の結果により学生の性格を5つのTypeに分類した.また社会的スキル測定の尺度とするためAffective Communication Test(ACT)を行ない,以下の結果を得た.
    1.YG検査による分類では,Type Dが約40%,Type Cが約20%,次いでType A, B であり,Type Eは約10%であった.
    2.男子学生のACT平均点数は58.7で,女子学生の平均点数は62.9であった.
    3.Type間のACT平均点数の比較では,Type DはType A,C,Eより有意に高く,Type BはType C,Eより有意に高かった.Type CはType A,B,Dより有意に低く,Type EはType B,Dより有意に低かった.
    4.高ACT点数者はType B,Dに多く,低ACT点数者はType C,Eに多かった.
    以上の結果から,性格と社会的スキルの間には相関関係があることがわかり,今後YG検査およびACTを用いて態度教育の効果を評価することが可能であることが示唆された.
症例
  • 張 皿, 福山 宏, 山下 善弘, 黒川 英雄, 友寄 泰樹, 松尾 拡, 高橋 哲
    原稿種別: 症例
    2008 年 62 巻 1.2 号 p. 64-69
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/30
    ジャーナル フリー
    唾液腺良性腫瘍の中でも発症頻度の稀なものにオンコサイトーマがあり,さらに亜分類としてDadrick(1996)はワルチン腫瘍とあわせてもつ型をハイブリッドワルチン腫瘍/オンコサイトーマとして挙げている.今回われわれは本症例(1例)を経験したのでその概要と文献的参考を加えて報告した.患者は66歳男性で右側下顎大臼歯の歯肉癌,と流域リンパ節転移の臨床診断および病理組織学的に扁平上皮癌(SCC;Y-K4C;grade III)と診断されたため,右側下顎骨を含めた区域切除と頸部郭清手術を行った.リンパ節転移を精査する中で右側耳下腺内リンパ節に想定外の腫瘤が検出され,ハイブリッドワルチン腫瘍とオンコサイトーマを有する良性腫瘍(潜在性腫瘍)と診断を下した.
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