形態・機能
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11 巻, 2 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
総説
  • 福井 達也, 村上 加奈, 吉永 一也
    2013 年 11 巻 2 号 p. 80-85
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/07/28
    ジャーナル フリー
    精巣に含まれる水(液体)は精細管上皮を構成するセルトリ細胞によって産生される。このような管腔液は精巣内精子を精巣上体へ輸送する媒体として機能し、また精細管の液性環境を形成・保持するために重要な役割を果たしている。アクアポリン(aquaporins=AQP)は主に細胞膜に内在するタンパク質で、水やグリセロール、尿素、イオンなどを透過するチャネルとして生体内で機能し、腎臓、脳、眼、呼吸器などさまざまな器官に分布している。精巣ではAQP13 種のうち、AQP0、AQP7、AQP8、AQP9、AQP11 がセルトリ細胞や精子形成細胞に発現しており、これらは精子形成や精子放出など精巣の生理機能に関与している可能性が考えられる。本稿では、精巣で発現するAQP の分布と機能との関連について概説する。
原著論文
  • 粟田 絵里加, 千葉 映奈, 油井 千里, 平野 茂樹
    2013 年 11 巻 2 号 p. 86-91
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/07/28
    ジャーナル フリー
    肝臓の洞様血管の発生機構は十分明らかになっていない。そこで洞様血管の形成過程を明らかにするため、造血期にあるマウス肝臓を組織学的に観察した。観察にはパラフィン包埋した材料のヘマトキシリン・エオジン染色標本、エポキシレジン包埋材料の準超薄切片のトルイジン青染色標本、更に洞様血管内皮細胞を認識するため、CD-146抗体による免疫組織化学染色標本を用いた。  本研究で、洞様血管は、その形成過程の中で部分的に内皮細胞を欠いた壁を持ち、そこから肝臓細胞や造血細胞が洞様血管内腔に裸出している場所のあることが明らかになった。また洞様血管の壁を作るCD-146陽性細胞が内腔に向かって丘状に突出した状態から次第に扁平な内皮細胞に変わって行く様子が観察された。更に肝細胞や造血細胞の間にCD-146陽性細胞が散在しているのも観察された。これ等の所見は、洞様血管は発生初期の肝臓内にあった毛細血管網から出芽して形成されるのでなく、CD-146陽性の内皮前駆細胞から形成されることを示唆している。
  • 別府 秀彦, 水谷 謙明, 高柳 尚貴, 新里 昌功, 園田 茂, 高橋 久英
    2013 年 11 巻 2 号 p. 92-101
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/07/28
    ジャーナル フリー
    C57BL / 6- Polycystic kidney disease mouse (B6-cpk) の系統維持中酩酊歩行を示す個体が発見された。その異常行動は、後肢によろめき、ふらつき(wobble about;wob)が見られ、突発的に横転をすることで確認できる。このマウスは我々の手で育種されていることから、B6-wob/takahashi(tentative(t)) と名付けられた。この研究は、B6-wob/tの行動異常の評価を行うこと、その原因はどこにあるのかを明らかにすることにある。我々は、B6-wob/tの行動解析をopen fieldactivity、footprint、 rotarod test、beam walking test、hanging and grip strength test、 pole test で評価を行った。open field activity における frequencies of reverse,moving backward and pivoting の回数は、B6(n=10)に対しB6-wob/t (n=5)は、有意(p<0.05~0.001)な増加がみられた。一方rearing, preening and grooming は回数の減少が有意(p<0.05~0.001)に認められた。またrotarod testではB6のrod上の滞在時間が600±0.0secに対しB6-wob/tは3.42±1.0secで有意に(p<0.001)短かった。  さらに、全身の臓器の病理学的検討を行ったところ、脳の肉眼的所見により、小脳萎縮と重量の低下が認められた。このことは協調運動支配の中心的な小脳の萎縮が運動失調の主な原因であることを示唆している。なおこの論文はB6-wob/tに関する研究の最初の報告である。
  • 中島 由加里, 井内 映美, 向井 加奈恵, 小松 恵美, 北山 幸枝, 尾崎 紀之, 中谷 壽男
    2013 年 11 巻 2 号 p. 102-108
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/07/28
    ジャーナル フリー
    我々は先の研究より、上前腸骨棘を通る水平線と大転子中央上縁を通る垂線との交点を新殿筋注点と定め、これがクラークの点と同様に安全な筋注部位であることを明らかにした。本研究では、神経と血管への刺入のより正確な観察を行うために、クラークの点と新殿筋注点にゲル1 mlを注入する手法と、適切な刺入の深さを調べるために超音波診断装置を用いて検討を行った。59~100歳の29御遺体の右側29側において、両点における神経や血管への刺入数は、以前の我々の研究とほぼ同数であり、新殿筋注点の安全性が再度確認された。注入したゲルは、小殿筋と中殿筋の間に固まっていたことから、血管損傷を起こした場合の大きな血腫形成の危険性や、この部位を走行する上殿神経や血管へ影響を及ぼす可能性が示唆された。脂肪と筋の厚さから、クラークの点と新殿筋注点における安全な刺入の深さは皮膚に対して直角に3 cmほど刺入するのが適切と考えられる。しかしながら、より安全に殿部筋肉内注射を実施するには超音波診断装置を用い、脂肪の厚さや血管走行を確認するアセスメントが必要であると考えられる。
  • 中島 由加里, 向井 加奈恵, 小松 恵美, 井内 映美, 北山 幸枝, 中谷 壽男
    2013 年 11 巻 2 号 p. 109-115
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/07/28
    ジャーナル フリー
    我々は先の研究より、股関節を伸展した状態で、上前腸骨棘を通る水平線と大転子中央上縁を通る垂線との交点を新殿筋注点と定め、これがクラークの点と同様に安全な筋注部位であることを明らかにした。本研究では新殿筋注点の臨床応用のため、さらに股関節屈曲のある者においても、新殿筋注点は安全な筋注部位であると言えるか検討すること、また新殿筋注点における適切な刺入の深さを決定することを目的とした。21~27(21.5 ± 1.4)歳の成人女性の右殿部において、クラークの点、股関節を伸展させた状態(股関節屈曲0°)での新殿筋注点、股関節を45°屈曲させた状態での新殿筋注点、股関節を90°屈曲させた状態での新殿筋注点の4点を定めた。各新殿筋注点とクラークの点との距離を測定後、各点において超音波診断装置による画像を撮影し、脂肪厚、中殿筋厚を計測後、血流音聴取を行った。その結果、股関節屈曲状態における新殿筋注点でも、これらはクラークの点と近く、脂肪厚、中殿筋厚、血流音聴取数も同程度であったため、安全に殿部筋肉内注射を実施できる筋注部位であることが明らかとなった。刺入の深さに関しては、脂肪厚を考慮すると、約3cm皮膚に対し直角に刺入することが皮下組織・神経・血管損傷を避け、安全に殿部筋肉内注射部位を実施する上で重要と考えられる。
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