形態・機能
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12 巻, 1 号
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原著論文
  • 高橋 敬
    2013 年 12 巻 1 号 p. 2-9
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/08/21
    ジャーナル フリー
    転移性がん細胞がプラスチック培養面上でコロニーを形成する過程では、細胞同士および細胞と培養面との接着や増殖・移動(浸潤、転移)などのインビトロでの生物学的現象を観察する事ができる。ヘパリンは硫酸基をもつ多糖類であり強い細胞接着効果を持つ1)ので、その結果増殖や移動が抑制されることをコンピュータ・シミュレーションによりすでに明らかにした2)。本研究はコロニー間の機能的相互作用に及ぼすヘパリンの効果をさらに検討するために、ボロノイ(Voronoi)とドローネ(Delaunay)幾何学に基づいたネットワークコミュニケーションを数理モデルに採用した。すなわち、ボロノイは最適配置領域(凸多角形のドメイン;なわ張り)を決定し、それらが隣接するドメイン内コロニー同士をつなげたドローネ三角形からなるネットワークを細胞間相互作用と考え、AGNA(Applied Graphics and Network Analysis)で解析した。その結果、ヘパリン・コロニーはコントロール・コロニーに比べて情報伝達の平均頂点間距離が大きく(それぞれ、1.990、1.846)、頂点次数(それぞれ、4.530、4.750)、クラスター係数(それぞれ、0.498、0.539)とエントロピー(それぞれ、0.964、1.100)はいずれも有意に小さい値を示した。したがって、ヘパリン効果はコロニー同士の相互作用(受容体を介した増殖因子の生理作用)を抑制した。一方コントロール・コロニーは隣接するほど相互作用が大きくなり、次数の高いハブ・コロニーが出現する事が考えられた。
  • 新里 昌功, 別府 秀彦, 水谷 謙明, 園田 茂, 片淵 俊彦, 井福 正隆, 花田 麻未, 高柳 尚貴, 山口 久美子, 中川 博之, ...
    2013 年 12 巻 1 号 p. 10-19
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/08/21
    ジャーナル フリー
    我々は現在、後肢にふらつき、さらには転倒を繰り返すB6-wob/t mouse を維持している。先行研究では、12 週齢におけるB6-wob/t のRotarod test 等の運動失調の評価と脳重量について検討した結果、病因は小脳萎縮による小脳性運動失調であることが示唆された。本研究の目的は、経時的な運動評価と小脳の萎縮を形態学的に解析することで発症の時期を確認することにある。先ず、生後4 ~ 12 週齢マウスに対し、Rotarod 試験で協調運動の評価を行った。3rpm/分の回転におけるB6-wob/t の落下時間は4 週齢で36.58 秒、12 週齢で25.10 秒となり、週齢における有意差は認めなかった。一方対照のC57BL/6 mouse は、いずれの週齢も180 秒間以上を達成し落下することはなかった。この結果よりB6-wob/t は筋協調運動失調であるこが示唆された。次に両群の12 週齢マウス小脳の解剖組織学的比較を Luxol Fast Blue 染色と蛍光抗体法で行ったところ、B6-wob/t の小脳病変の主な原因は萎縮にあり、小脳Purkinje 細胞の変性および脱落であることが判明した。さらに、Purkinje 細胞の変性と脱落の時期を特定するため、生後5 日、10 日、15 日目のマウス小脳にHE 染色および抗Calbindin 抗体を用いた免疫染色を施行した。その結果、B6-wob/t は生後10 日齢から小脳Purkinje 細胞の発達障害が起こり始め、15 日齢でPurkinje 細胞数の減少が明らかに認められた。一方C57BL/6では異常は認められなかった。以上の結果から、B6-wob/t は生後10 日以降からPurkinje 細胞に異常が認められ、4 週齢で小脳性運動失調を発現することが判った。
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