形態・機能
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9 巻, 2 号
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総説
  • 高橋 敬, Kwaan HC
    2011 年 9 巻 2 号 p. 45-58
    発行日: 2011年
    公開日: 2015/11/18
    ジャーナル フリー
    フィブリンモノマー(サブユニット)が凝集(重合)するパターンを吸光度の変化で観察するとアクチンやチュブリンのそれと極めてよく似ており、いずれの場合も液相中に繊維状の構造物が析出するので半固相への相転移が示唆される。このようなフィブリン・ネットワーク形成の研究報告は見いだされない。本総説はフィブリン分子の微視的な性質とフィブリン・ネットワーク形成の巨視的なメカニズム、およびその構造と機能をまとめた。  すなわちグローバルな視点に立った新しい理解を得るためにネットワークの形成をモデル化し、コンピュータ・シミュレーションを実行して得られた結果を解釈した。モデリングには2次元格子のサイズを50x50=2500としたパーコレーション(浸透現象)過程(粒子のクラスタリング)を採用し、その浸透確率とクラスター注1)の大きさ(サイズ)を評価した。現実に近づけるための大規模なシミュレーションではないが、凝集の定性的な理解には十分であると考えた。その結果、1)凝集時間とともに確率pが増加するものと仮定すれば、パーコレーションはフィブリン分子の凝集を吸光度で測定した過程と類似した。2)生成した最大クラスターの空間占有率(フィブリン・ネットワークが2次元格子を端から端まで繋がる最小割合)は約十数%だった。これらのことから、フィブリン・ネットワークの形成は従来考えられたようなフィブリン分子の単なる重合ではなく、次のようにステップワイズ的に進行することが示唆された。まずフィブリン分子(サイズ0.05 nm)が横と縦方向に8分子結合しプロトフィブリル(サイズ0.2 μm、モジュール注2))が生成される。モジュールが3つ同士結合しノード(節)を形成(サイズ0.6 μmのドメイン)する。このドメイン内の線維は2分岐する。さらにドメイン同士が急速に結合することによって液相から半固相(semi-solid phase)へと相転移することが考えられた。すなわち血液の急速な凝固は低い空間占有率(14.3%)で起こることが原因である。その速さは血漿中に細胞成分(または血小板や細胞膜の破片=マイクロパーテイクル)が関与すれば注3)さらに大きくなり、損傷した血管部位に血栓を速やかに形成することができる。
原著論文
  • 佐藤 孝史, 佐藤 寿晃, 小西 有美子, 長沼 誠, 鈴木 克彦, 成田 亜矢, 藤井 浩美, 橋爪 和足, 内藤 輝
    2011 年 9 巻 2 号 p. 59-63
    発行日: 2011年
    公開日: 2015/11/18
    ジャーナル フリー
    手根の屈曲と伸展が前腕の回内力に及ぼす効果について調べた。健常男性8名の右上肢を対象に、前腕回外90°(回外位)、60° (S60°)、30°(S30°)、0°位(中間位)で手根の力を抜いた状態(RP)、最大屈曲(FP)および最大伸展(EP)した状態で行った等尺性収縮による回内の最大力を計測した。RP、FP、EPにおける回内力は、回外位ではそれぞれ8.3±1.8(平均±標準偏差)、10.2±2.2、5.7±1.4 kg、S60°で6.9±1.8、8.0±2.3、4.8±1.4 kg、S30°で5.1±1.3、4.8±1.3、3.3±1.0 kg、中間位で3.5±0.8、3.0±0.8、2.1±0.6 kgとなり、どの前腕肢位でもEPの回内力が小さかった。また、RP、FP、EPの回内力いずれも回内に伴い減少した。RPの回内力を100%とすると、回外位、S60°、S30°、中間位で、FPの回内力はそれぞれ124±7%、116±8%、95±23%、86±12%、EPの回内力は68±10%、71±17%、64±14%、61±20%となり、FPの回内力は回外位とS60°で大きく、EPの回内力はどの肢位でも小さくなった。回内力は手根の屈曲により増加、伸展により減少することが示された。
  • 小西 有美子, 佐藤 寿晃, 佐藤 孝史, 長沼 誠, 鈴木 克彦, 成田 亜矢, 藤井 浩美, 橋爪 和足, 内藤 輝
    2011 年 9 巻 2 号 p. 65-69
    発行日: 2011年
    公開日: 2015/11/18
    ジャーナル フリー
    健常男性8名(20-45歳)の右上肢を対象に、肘屈曲角度による前腕回外力の変化について調べた。被験者は、肩外転90°、屈伸0°、内外旋0°、前腕中間位にして上腕と前腕を台の上に載せ、肘を伸展位(0°)から10°毎に130°まで屈曲した状態で、等尺性収縮による最大の回外を行い、その回外力を計測した。回外力は、伸展位で3.9±1.2(平均±標準偏差)kg、10°位で4.5±1.2 kg、20°位で5.1±1.1 kg、30°位で6.2±1.1 kg、40°位で6.8±0.9 kg、50°位で7.7±1.1 kg、60°位で8.5±1.2 kg、70°位で8.3±1.4 kg、80°位で7.7±1.3 kg、90°位で7.3±0.9 kg、100°位で6.5±1.6 kg、110°位で6.0±1.7 kg、120°位で5.4±1.5 kg、130°位で4.8±1.2 kgとなった。回外力は伸展位から60°位までの屈曲で増加、70位°以上の屈曲では減少すること、肘の屈曲角度により回外力は2倍以上変化することが示された。この要因として、肘屈曲に伴う上腕二頭筋の筋線維の長さの変化や停止腱の角度の変化が考えられた。
  • 安部 恭子, 島田 達生
    2011 年 9 巻 2 号 p. 71-78
    発行日: 2011年
    公開日: 2015/11/18
    ジャーナル フリー
    母乳を冷蔵や冷凍で保存した際の影響を形態学的に明らかにするために、冷蔵又は冷凍保存の母乳が光学顕微鏡(LM)と透過電子顕微鏡(TEM)下で調べた。用手搾乳した同一人物の母乳が異なる温度条件(4℃、-2℃、-18℃)でそれぞれ3時間(コントロール)、3日間、6日間そして1ヶ月間保存された。LM用として37℃まで温められた母乳の一滴(20 μm)をスライドグラス上の2%osmium solution中に滴下した。一方、TEM用として遠心分離した上層の黄色の部位を採取した。コントロールにおいて脂質滴からなる脂肪球はオスミウムで黒く染まった小顆粒としてみえた。4℃、6日間および-2℃、1ヶ月保存した母乳中により大きな脂肪球が出現した。冷凍保存した母乳は保存期間に関係なく、大型化した脂肪球が多くみられた。TEM所見においてコントロールの脂肪球は球形で、約2~6 μmであり、脂肪滴とそれを含む限界膜によって包まれていた。脂肪滴と限界膜の破壊した脂肪球がしばしばみられたが、-2℃、1ヶ月保存した母乳では脂肪球はよく保存されているようにみえた。一方、冷凍母乳において脂質球の大部分は限界膜が壊れ脂質滴が大型化していた。
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