経済研究
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74 巻, 1.2 号
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論文
  • 左三川(笛田) 郁子
    2023 年74 巻1.2 号 p. 1-32
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2024/04/30
    ジャーナル フリー

    本論は日本銀行が2010年12月に開始した上場株式投資信託(ETF)の買い入れに注目し,高頻度データを用いて日銀の政策反応関数を推定するとともに,中央銀行による大規模かつ継続的な買い入れが株式市場に及ぼした影響について考察するものである.離散選択モデルによる検証の結果,日銀がETFを購入するかどうかは,東証株価指数(TOPIX)の前日終値から当日午前終値までのリターン,TOPIX午前終値の5日移動平均からの乖離率,高頻度データから計測した午前の実現ボラティリティ(Realized Volatility)などが影響していることが確かめられた.また,ETFの買い入れが株価リターンやボラティリティに与えた影響を推計すると,日銀がETFを買い入れた日の午後の株価リターンは買い入れがなかった日よりも上昇する傾向があるほか,Realized Volatilityは低下する傾向が統計的に有意な結果として得られた.一方,予想株式益回りと安全資産利子率の差で表されるTOPIXの予想イールドスプレッドには影響を及ぼしていたことが確認されたが,この点においては,日銀が「リスクプレミアムに働きかける」というETF買い入れの所期の目的を果たしていたと結論付けることは難しい.ETF買い入れ政策の効果については,より幅広い尺度と時間軸で議論する必要があろう.

  • 殷 婷, 川田 恵介
    2023 年74 巻1.2 号 p. 1-13
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2024/04/30
    ジャーナル フリー

    本稿では,労働者が勤務する事業所の運営主体が,労働者の賃金に与える影響について,比較研究を行う.日本の訪問介護労働市場に着目し,運営主体が営利目的か非営利かに応じて,賃金分布を比較する.また本研究では,先行研究が着目してきた平均賃金格差のみならず,労働者の背景属性で条件付けた賃金格差の分布についても推定を行う.結果,営利/非営利間の賃金格差は労働者の背景属性に応じて大きく異なることを示す.

  • 森川 正之
    2023 年74 巻1.2 号 p. 1-34
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2024/04/30
    ジャーナル フリー

    本稿は,雇用者のパネルデータ(2020~2022年)に基づき,日本におけるコロナ危機以降の在宅勤務のダイナミクスを分析する.分析結果によれば,第一に,在宅勤務実施者の割合は減少傾向が続いているが,2022年末時点でも新型コロナ以前に比べてずっと高い水準にある.第二に,平均的な在宅勤務実施頻度は週2~3日という状況が続いており,ハイブリッド型の在宅勤務が支配的である.第三に,在宅勤務の主観的生産性は改善が続いているが,2022年末時点でも平均的には職場に比べて約20%低い.第四に,在宅勤務を継続している雇用者の自宅での生産性は80%台半ばで頭打ちとなっており,最近の在宅勤務の生産性上昇は,自宅での生産性が低い雇用者の職場回帰というセレクション効果のみから生じている.第五に,新型コロナ終息後も高頻度での在宅勤務を希望する雇用者は増加傾向が続いている.以上の結果は,在宅勤務において生産性に基づく自然な選択が働いていること,在宅勤務者にとってこの働き方のアメニティ価値が高まっていることを示している.

  • 岩﨑 一郎, 馬 欣欣, 溝端 佐登史
    2023 年74 巻1.2 号 p. 1-32
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2024/04/30
    ジャーナル フリー

    本稿は,中国及び欧州新興市場21カ国に所在する総計42,146社の取締役会構造を解明するとともに,その決定要因を実証的に分析した.取締役会規模,取締役会長社外登用確率及び取締役会独立性を内生化した連立方程式モデルの構造推定は,先進国企業研究に基礎付けられたこれら3変数の潜在的影響因子に関する筆者らの理論的予測を支持した.しかしながら同時に,取締役会構造に強く作用する影響因子の組み合わせは,中国と欧州諸国及び上場企業と非上場企業の間で,顕著に異なる事実も併せて明らかとなった.更に,本稿の実証結果は,取締役会構造を特徴付ける上記3変数の間には相互に緊密な相互依存関係が生じており,この点への分析的な配慮の必要性を強く示唆した.

  • 雲 和広, シャドリナ エレナ
    2023 年74 巻1.2 号 p. 1-22
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2024/04/30
    ジャーナル フリー

    著名なHill and Gaddy (2004) は,現代ロシアにおける空間経済の歪みの象徴として,ロシアの都市集積が十分な成長を遂げていないということを挙げる.これは端的には,ロシアの都市構造が順位・規模法則に沿っていないということで示され,HillとGaddyはこれをソ連の行政的・指令的計画経済の遺産であるとした.しかしながら本研究は,旧ソ連共和国の全ての都市に関するデータセットを全人口センサスから構築し,それぞれのセンサス年における順位・規模法則の妥当性を検証した結果,より包括的な結論が得られた.第一に,現代ロシアの都市階層構造とは異なり,ソ連の都市階層構造は順位・規模法則に適合していた.第二に,ソ連の都市構造は大きな変遷を見せた.帝政末期およびソ連時代初期においては,当該都市構造は順位・規模法則に従っていた.しかしながら1939年から1959年の間にソ連の順位・規模法則はそこからの乖離を示す.そののち,1989年に至るソ連末期には逆に,ソ連の階層型都市構造は伝統的な順位・規模法則に収斂する傾向を示したのである.これらがデータによって裏付けられ,ソ連の階層型都市構造の変遷は,必ずしも行政的・指令的計画経済システムによる開発政策の産物であるとは言えないものと考えられ得る.

研究ノート
  • 宇井 貴志
    2023 年74 巻1.2 号 p. 1-12
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2024/04/30
    ジャーナル フリー

    2013年以来,日本銀行は人々のインフレ予想に働きかけて2%のインフレ率を実現しようとしてきたが,予想への働きかけは失敗した.本稿ではゲーム理論の視点から「なぜインフレ予想の操作は難しいのか」という問題について考える.予想インフレ率が長期間安定しているとき,その予想インフレ率は共有知識となり,分析哲学者デイヴィッド・ルイスの意味での慣習として定着する.このときインフレ予想を操作するには,一人ひとりのインフレ予想だけでなく,その共有知識の操作が必要になる.共有知識の操作に成功した例として,1994年にブラジルで実施されたレアル計画について検討する.また,共有知識の操作とナラティブ経済学の関係について論じる.

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