結核
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77 巻, 11 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 豊田 恵美子, 箕浦 茂樹, 宮澤 廣文
    2002 年 77 巻 11 号 p. 703-708
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    妊娠・出産合併した結核治療については, WHO (World Health Organization), ATS (American Thoracic Society), BTS (British Thoracic Society) はそれぞれガイドラインを出している。1993年から2001年の8年間に当センターで取り扱った妊娠から出産後6カ月までに診断された活動性結核22例についてレトロスペクティブに検討した。41%が外国籍で, 症状が妊娠や出産によるものと紛らわしく, 発症がわかりにくく概して診断の遅れが推定され, 肺外結核が多い傾向があった。2症例が出産後に治療を脱落しており, 一般の結核と同様にDOTなどによるサポートが必要である。患者の治療に加えて, その児や周囲の新生児・妊婦への感染防止対策は重要で, とくに分娩時感染性ならば, 個別換気の部屋での分娩, 母児分離, 新生児の予防内服などの計画が必要であった。
  • 5年以上経過を観察した生存例と対比して
    原田 進, 原田 泰子, 落合 早苗, 江森 幹子, 加治木 章, 北原 義也, 高本 正祇, 石橋 凡雄
    2002 年 77 巻 11 号 p. 709-716
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    【目的】肺MAC症の予後に影響を及ぼす因子を明らかにすること。【方法】肺MAC症死亡例の臨床像を, 5年以上経過を観察し現在なお生存している症例と比較した。【結果】1.肺MAC症の治療開始時, 死亡例は生存例に比べ高齢であり, 病変の拡がりが広く, 空洞も高頻度に観察され, 画像上重症な進行症例が多かった。2.肺MAC症の臨床病型では, 死亡例において二次感染型が高頻度であり, 中葉・舌区, その他の肺炎型は1例もなかった。3.肺MAC症死亡例の進展様式を結核様進展とびまん性進展に分類した。一次感染型の結核類似型と二次感染型は結核様進展を, びまん型はびまん性進展を高頻度に示した。結核様進展を示した症例は, 死亡時高頻度に喀痰検査陽性であり, びまん性進展を示した症例はすべて陰性であった。肺MAC症の発症推定時期から死亡までの期間は, びまん性進展に比べ結核様進展のほうが短かった。【結論】肺MAC症の予後の悪化因子は, (1) 治療開始時重症, (2) 発症時高齢, (3) 空洞を有する結核類似型, (4) 二次感染型であった。また結核類似型と二次感染型は結核様進展をとり, 持続排菌になる頻度が高く, びまん性進展に比べ進展速度も速かった。
  • 2症例の切除肺病理所見
    奥松 昌夫, 岩井 和郎, 尾形 英雄, 水谷 清二, 吉森 浩三, 伊藤 邦彦, 中島 由槻, 工藤 翔二
    2002 年 77 巻 11 号 p. 717-723
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    胸部CT上, 小葉中心性の小結節の集簇と気管支拡張症, すなわちNodular bronchiectasis (NB) を呈した肺Mycobacterium avim complex (MAc) 症2症例の病理組織学的所見を検討した。切除肺標本は呼吸細気管支周囲の肺胞領域に, リンパ球浸潤を伴った類上皮細胞肉芽腫からなる肉芽腫性細気管支炎を呈していた。末梢から中枢側の気管支壁にかけても同様にリンパ球浸潤を伴った類上皮細胞肉芽腫が形成されており, ところによっては気管支腔内に肉芽腫がポリープ状に発育し, その末梢肺胞領域の一部には過膨張の所見が認められた。気管支病変は末梢から中枢側の気管支に沿って進展し, 平滑筋の萎縮, 消失を伴い, その結果として気管支拡張症を形成するものと思われた。その他今回の症例では, ほぼ小葉大の非乾酪性組織球性肉芽腫を形成している所見もみられた。また類上皮細胞肉芽腫が小葉間隔壁のリンパ管腔内や肺門リンパ節にも認められ, リンパ行性進展も示しうることが考えられた。
  • 小林 賀奈子, 矢野 修一, 加藤 和宏, 斎藤 慎爾, 徳島 武
    2002 年 77 巻 11 号 p. 725-728
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    非定型抗酸菌症において胸膜病変を合併することは非常に稀である。今回, 私たちは胸膜炎を伴った肺Mycobacterium avium (以下M.avium) 症を経験したので報告する。症例は生来健康な76歳の男性で咳と微熱のため当院に紹介入院となった。胸部レントゲン写真および胸部CT上, 中葉・舌区の浸潤影と小葉中心性の粒状陰影を認め右胸水貯留を合併していた。入院50日前に右気胸の既往があった。喀痰の抗酸菌塗抹は陰性であったが, 胸水の抗酸菌塗抹は陽性でM.aviumのPCRが陽性であった。胸腔鏡下胸膜生検標本ではフィブリン塊のみであったが, 経気管支肺生検標本では類上皮細胞性肉芽腫を示した。肺野病変および胸水ともにM.aviumによるものと判断し治療を開始した。M.aviumによる感染が臓側胸膜へ波及し臓側胸膜を破壊し気胸を発生したものと考えられた。
  • 伊藤 祐子, 山田 憲隆, 後藤 邦彦, 安藤 隆之, 小川 賢二, 田野 正夫
    2002 年 77 巻 11 号 p. 729-733
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は20歳女性。咳, 倦怠感, 体重減少を自覚していたが3カ月間放置していた。呼吸困難が増強し歩行不可能となったため2001年4月に近医を受診し入院となった。検査結果より重症肺結核, 播種性血管内凝固症候群と診断され翌日当院に救急搬送された。入院3日後に急性呼吸促迫症候群, 高度な肝機能障害, 乳酸アシドーシスを合併したが人工呼吸器管理で治療を行い軽快した。その後・i薬剤感受性検査の結果isoniazid, rifampicin, ethambutolに耐性を持つ多剤耐性結核と判明したためstreptomycim・pyrazinamide, levofloxacinで治療を行い入院3カ月後には結核菌は塗抹, 培養とも陰性化した。しかし胸部CTでは正常肺はわずかに残存するのみで両肺に多発性の巨大嚢胞を認め, 結核菌陰性化後も増大し続けた。また, それに伴い両肺の難治性気胸を繰り返し呼吸不全が遷延した。入院7カ月頃に嚢胞の進行が停止し人工呼吸器離脱が可能となり, 入院1年後の現在は酸素吸入下で結核治療続行中である。肺結核において多発性嚢胞が形成され結核菌陰性化後も増大し続けた症例報告はない。嚢胞形成の機序は不明であるが, 胸部CTにて肺の変化が詳細に追えた貴重な症例であり報告した。
  • 金 尚材
    2002 年 77 巻 11 号 p. 735-740
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    薬剤耐性は耐性変異株が選択されるような環境があれば容易に発生する。結核対策においては, 不適切な薬剤方式, 患者の不規則な受診, 市中薬局での抗結核薬の販売, 薬剤供給の中断, あるいは無料の診断治療が受けられない, といった問題が薬剤耐性を作り出す。薬剤耐性結核の患者は地域で菌をばらまき, 初回耐性患者を作り, 彼らはまた次の世代の患者を作ることになる。世界の薬剤耐性結核サーベイランスに関するWHO報告によれば, 薬剤耐性はどの国にも広く行きわたっているが, 国によってかなりのばらつきが見られる。既治療患者の中で主要4剤 (INH, RFP, SM, EB) の少なくともいずれか1剤に耐性の割合はメジアンで25.2% (レンジ8.3%~68.5%), また多剤耐性 (少なくともINHおよびRFPに耐性) の割合は8.7% (0~48.2%) であった。未治療患者では (初回耐性) についても同様にばらつくが, 何らかの耐性がある者の頻度はメジアンが10.9% (レンジ1.7%~40.6%), また多剤耐性は1.1% (0~14.1%) であった。初回患者における多剤耐性の頻度が3%を超えるところも12力国 (地域) にみられた。これら多剤耐性結核患者の治療は困難で, 多くが不治のうちに他人を巻き込むような状態になる。このような菌による集団発生事件すら報告されている。このような問題を予防するために, 新たに発見した患者を確実に治癒し, 同時に早期に多剤耐性結核を発見・治療するため最大限の努力をすべきである。
  • 高橋 光良
    2002 年 77 巻 11 号 p. 741-752
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    In the traditional study of tuberculosis epidemiology, information about social contact of persons and patient's illness history used to be an only relevant basis for elucidating transmission of tuberculosis infection. Therefore, it was very difficult to give a clear conclusion of whether isolates from different patients derived from a common source of infection or not. Recently, the subspecies typing of M. tuberculosis strains has become possible, based on the visualization of multiple loci of an insertion sequence (IS6110) that is a relatively stable gene fragment existing in a specific region of the genome. The variability of the number of copies and locations of this IS6110 in a genome is the basis that enables this technique to be used for the above purpose, which is a unique tool applicable to the analysis of M. tuberculosis. Generally, this technique, i.e., restriction fragment length polymorphism (RFLP) analysis, depends on the diversity of pattern of any polymorphic marker found in a genome of a strain. Among various markers so far developed and examined, IS6110 has been proved most appropriate for the purpose of typing strains of M. tuberculosis complex, especially in such circumstances as in Japan where isolated strains' RFLP patterns are similar each with others so that finer subtyping is needed.
    In this lecture, I would like to review the following topics based on the world literature of molecular epidemiology and the findings of our own that we have achieved during 1992 through 2001 in our Institute; 1) typing of the isolates for the identification of the infection source, 2) pathogenesis of tuberculosis under low incidence situation, 3) predominance of certain genotypes endemic in an area, 4) cross-contamination of isolates in the laboratory, 5) the stability of IS6110 patterns, 6) phylogeny of M. tuberculosis complex, and 7) differentiation between M. tuberculosis and M. bovis BCG.
  • がん対策と比較して
    大島 明
    2002 年 77 巻 11 号 p. 753-757
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    Tuberculosis morbidity and mortality statistics show that tuberculosis control efforts in Japan have recently borne little fruit. Almost a similar situation has occurred in cancer control efforts in Japan. To overcome these difficul ties, we should introduce the principles of evidence-based healthcare into control activities and each activity of tubercu losis control and cancer control should be evaluated strictly by technology assessment.
    The most important issue to be discussed is that screening programs for tuberculosis and various cancers have been eagerly conducted in Japan as a public health policy since 1951 and 1961 and there has been no change of“Early diag nosis/early treatment is best”policy although many changes have occurred around the diseases and the society since then.
    From the viewpoint of a cancer epidemiologist, the signifi cance of screening tests for tuberculosis, the completeness of tuberculosis registries, the significance of tuberculosis regis tries as a monitoring system for tuberculosis treatment and the role of health centers in the new programs of tuberculosis control are discussed.
  • 2002 年 77 巻 11 号 p. 759-761
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
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