結核
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77 巻, 4 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 大森 正子, 和田 雅子, 内村 和広, 西井 研治, 白井 義修, 青木 正和
    2002 年 77 巻 4 号 p. 329-339
    発行日: 2002/04/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    25歳以上の成人の60.3%, 人数にして5, 400万人が毎年定期の集団検診 (結核検診) を受診していると推計された。しかしながら定期集団検診による結核患者発見率は著しく低下し, 1998年には学校健診で受診者1, 000人対0.03, 職場健診で0.06, 住民健診で0.16までになった。ただし新登録中定期健診発見割合は過去10年ほぼ一定で, 1998年は12.8%であった。年齢別では20~30歳代で定期健診発見割合が大きく25.7%であり, 多くは職場健診からの発見であった。なお検診発見患者で排菌が確認されたのは35.1%であったが, この割合は高齢者でより大きかった。
    結核予防会で実施した40歳以上の住民健診成績から1名の結核患者の発見に要するコストは, 全体で440万円, 男で230万円, 女で840万円, 40歳代で730万円, 80歳以上では180万円と試算された。また罹患率人口10万対30の地域では400万円, 罹患率20では670万円と推計された。結核患者を2ヵ月入院, 4ヵ月外来で治療した場合, 治療費は約90万円と見積もられているので, 60歳未満の一般住民や罹患率50未満の地域では, 経費・効果の点で現行の結核検診は必ずしも効果的とは言いがたくなっている。しかしながら定期の結核検診のあり方については発見率やコストの他に発見患者の特性, 公共保健サービス, 国民の意思等も含めて検討する必要があるだろう。
  • 宍戸 真司, 森 亨
    2002 年 77 巻 4 号 p. 341-346
    発行日: 2002/04/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    わが国の医療施設 (老人福祉施設も含む) における結核感染予防対策強化の必要性が特に最近数年の間論じられてきた。病院における感染予防対策の実態, 職員の結核発病等については徐々に明らかにされつつあり, 同時に諸種の改善が進展している。一方, 老人福祉施設に関しては, まだこれらの実態について十分には明らかにされていない。そこで, 老人福祉施設の中でも寝たきり状態の高齢者が集まる特別養護老人ホーム1100施設における結核感染予防対策の現状と職員および入所者の結核発病調査を行い, 施設内感染予防対策の推進に寄与することを目的とした。
    感染予防対策に関しては, 一部の施設においてはかなりの配慮がなされていたが, 全体としてはまだ不十分であった。職員, 入所者の発病率は同年代の一般人口に比して低い結果であったが, 発病した施設からの回答が得られなかった可能性があったのではと推定された。今回の調査を通じて, 老人福祉施設における結核感染予防対策の具体的な要点について言及した。
  • 日野 光紀, 小野 靖, 小久保 豊, 杣 知行, 田中 庸介, 小俣 雅稔, 市野 浩三, 上原 隆志, 工藤 翔二, 葉山 修陽
    2002 年 77 巻 4 号 p. 347-354
    発行日: 2002/04/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    1998年日本結核病学会予防委員会より院内感染対策についてのガイドラインが指導され, ツベルクリン反応 (以下, ツ反) 二段階法が推奨されている。これにはブースター効果を含めた結核感染診断に際して対照値 (ベースライン値) の記録を必要とする。われわれは612名の医療関係者に対しツ反二段階法を行った。その結果を分析し至適方法を確立すること。さらに, ツ反施行前に質問用紙を用いて過去のBCG接種歴, ツベルクリン反応歴およびその反応値を聴取し, その保存状況を把握することを目的とした。ほとんどの者が過去の測定値管理が不十分であった。二段階法の結果, 発赤径, 硬結径ともにブースター効果を認めた。さらに, 年齢別の硬結径の拡大径で壮年群のほうがより拡大傾向にあった。さらに, 職種別, 勤務部署別の計測値には統計学的有意差は得られなかった。二段階法ツベルクリン検査1回目の発赤径値が30mm以上の計測値でありながら2回目で10mm以上の拡大を認める被検者が多くいることから, 院内感染管理の上でこのような対象者に対しても二段階法を施行することが必須であると考えられた。
  • 鈴木 弘文, 長尾 啓一, 宮崎 勝
    2002 年 77 巻 4 号 p. 355-360
    発行日: 2002/04/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    近年結核の罹患率は増加しており, それに伴い肺外結核も増加している。肺外結核の中で, 腸結核は, 多彩な臨床症状と診断が難しいことが知られており, また最近の医師の結核に対する意識の低下などから, 診断が必ずしも正確になされていないのではないかと思われた。そこで, 最近の腸結核の動向と問題点を探る目的で過去5年間の病理剖検輯報を検討した。
    140, 358症例中5, 103例 (3.6%) に結核, 陳旧性結核を認め, うち腸結核は80例 (0.057%, 男性45名, 女性35名, 平均年齢72.7歳) であった。また腸結核80例中71例 (88.8%) に肺結核を認めた。腸のみに病変があると考えられる症例は6例であり, 総剖検数に対し0.004%であった。部位は回盲部に多く認めた。病理診断上悪性腫瘍が併存する症例は14例 (17.5%) 17病変認めた。また, 臨床診断で結核と診断された症例は30例 (37.5%) のみであった。さらに臨床診断で腸閉塞, 便秘, 難治性下痢, 悪性腫瘍または悪性腫瘍の再発とされた症例に腸結核が関与していた。今後高齢化社会を迎えるにあたり, 診断の遅れは重篤な病態, 集団感染を引き起こす可能性があり, 日常診療の際にも肺結核や肺外結核について注意を払う必要がある。
  • 都築 閲, 川田 博, 竹田 雄一郎, 豊田 恵美子, 小林 信之, 工藤 宏一郎, 大数 加光治, 黒木 啓文, 森田 豊彦
    2002 年 77 巻 4 号 p. 361-366
    発行日: 2002/04/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は34歳, 男性。多発関節痛に対し, 慢性関節リウマチとしてステロイド治療が行われていた。レントゲン上骨の萎縮, 関節軟骨の破壊を認めており, 関節周囲結節状隆起の穿刺液から骨関節結核と診断がついた。抗結核剤4剤 (Isoniazid, Rifampicin, Ethambutol, Pyrazinamide) にて治療したが, 局所の感染コントロールがつかず, 腐骨の切除目的に右手根骨, 右足根骨の掻爬, 洗浄, 滑膜切除術を施行した。術後疼痛は消失し, 関節可動域に制限を残すが, 歩行可能となった。難治性の骨関節痛が持続する場合, 骨関節結核も念頭におくべきである。
  • 谷口 夏子, 福岡 篤彦, 天野 逸人, 岡村 英生, 竹中 英昭, 森井 武志, 岡本 行功, 吉川 雅則, 古西 満, 塚口 勝彦, 濱 ...
    2002 年 77 巻 4 号 p. 367-371
    発行日: 2002/04/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    われわれは膿胸関連リンパ腫の症例を経験したので報告する。患者は67歳男性で左側胸部腫脹と疼痛で受診した。既往としては6歳時に肺結核, 24歳時に結核性胸膜炎に罹患していた。生検標本の組織学的検査の結果, 悪性リンパ腫びまん性大細胞B細胞型と診断した。THP-COP (THP, CY, VCR, PSL) による化学療法を施行し徐々に胸痛と腫脹は改善し, 現在維持療法継続中である。また, 分子生物学的見地から膿胸壁のEBウイルス感染を証明した。悪性リンパ腫を併発した結核性慢性膿胸症例の全例にEBウイルスの感染が証明されたとの報告があり, EBウイルス陽性の結核性膿胸の患者ではより注意深く検査を進める必要がある。
  • 阿部 良行, 栗田 聡, 大久保 泰之, 橋詰 寿律, 藤野 忠彦
    2002 年 77 巻 4 号 p. 373-376
    発行日: 2002/04/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は82歳の女性で, 痰の塗抹検査でGaffky3号で培養陽性。薬剤感受性試験でINH, RFP, PASに完全耐性, EB, SMに不完全耐性, KM, TH, CSには感性であった。INH, TH, SM, CSにて加療するも, 排菌は持続していた。入院後約半年後に, 大量の喀血をきたし, 止血剤投与と気管支動脈塞栓術を行った。その後の胸部CT写真にて左主気管支内腔に凝血塊を認め, 左肺は虚脱していた。その直後より排菌は停止し, 培養でも陰性であった。本例は喀血後の左肺の虚脱が誘因となって, 適切な抗結核薬の投与により排菌停止したと考えられた。
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