結核
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77 巻, 6 号
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  • 小橋 吉博, 沖本 二郎, 松島 敏春, 重藤 えり子, 倉岡 敏彦, 竹山 博泰, 江田 良輔, 矢野 修一, 小林 賀奈子, 大西 隆行 ...
    2002 年 77 巻 6 号 p. 435-441
    発行日: 2002/06/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    MAC症に対して, ATSおよび日本結核病学会が提言した治療ガイドラインが臨床上適切かどうか, 過去の治療法との比較も併せ検討した。対象は, 1995年4月から2001年3月までに6カ月以上治療がなされ, 治療開始から12カ月以上経過観察を施行できた肺MAC症159例とした。治療状況は, 抗結核薬。CAM102例, 抗結核薬のみ33例, その他24例であった。治療効果は, 抗結核薬.CAMが菌陰性化率45.1%, 再排菌率39.1%, 臨床的改善率29.4%であった。一方, 抗結核薬のみは菌陰性化率30.3%, 再排菌率70.0%, 臨床的改善率12.1%と不良で, CAMが含まれた治療法で優れた成績が得られていた。次に, 抗結核薬.CAMの治療が行われた102例ではガイドラインに一致した RFP, EB, SM, CAMの治療が41例に施行され, 菌陰性化率58.5%, 再排菌率37.5%, 臨床的改善率36.6%であった。一方, 他の抗結核薬.CAMは61例に施行され, 菌陰性化率36.1%, 再排菌率40.9%, 臨床的改善率24.6%と, ガイドラインに沿った治療法が最も優れた成績であった。
    しかし, いまだ肺結核に対する治療効果と比較すると不十分であり, 今後新しい非定型抗酸菌に有効な治療薬の開発が望まれる。
  • 佐々木 結花, 山岸 文雄, 八木 毅典, 山谷 英樹, 黒田 文伸, 庄田 英明
    2002 年 77 巻 6 号 p. 443-448
    発行日: 2002/06/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    広汎空洞型肺結核 (bI3) 症例を臨床的に検討した。対象は95例, 平均年齢は49.5±13.0歳であった。結核発見動機は, 有症状受診84例, 他疾患管理中10例, 他疾患受診時偶然発見1例で, 全例が喀痰塗抹陽性であった。社会背景として職業は入院時無職31例, 日雇労務者24例, 生活保護受給者25例と, 社会的弱者が多数であった。入院時病状として重症例が多数であり栄養状態は不良であった。当院入院中に死亡した症例は19例 (20.0%) で全例男性であり, 結核発見動機は全例有症状受診で, 入院から死亡までの期間 (在院日数) は35.0±39.8日と短期であった。有症状受診例84例の受診の遅れの期間は5.5±5.0カ月であり診断の遅れの期間は0.3±0.9カ月と短期間であった。bI3症例は発見の遅れの長期化により重症化し, 受診の遅れがその大部分を占めた。予後不良であるこの病型が生じないために発見の遅れを短期化するよう多様な予防対策の実施が望まれる。
  • 331施設の集計結果報
    日暮 芳己, 三宅 一義, 奥住 捷子, 長沢 光章, 渡辺 正治, 立花 勇一
    2002 年 77 巻 6 号 p. 449-455
    発行日: 2002/06/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    アンプリコア®マイコバクテリウムキットは現在日本で最も多く使用されているPCR法を用いた測定キットである。私たちは, 本キットのユーザー331施設を対象に, 日常検査における測定値の信頼性について,
    模擬検体を配布し調査を行った。模擬検体は NALc-NaoH 処理をした喀痰に, 菌数の明らかなMycobacterium bovis, Mycobacterium intmcellulare の菌液を加えたものを試料として配布, 測定を依頼した。陰性試料を陽性と報告した偽陽性は331施設中6施設 (1.8%) であった。陽性試料を陰性と報告した偽陰性は7施設 (2.1%) あり, 試料ごとの内訳は TB-H で331施設中1施設, TB-L で331施設中5施設, MINでは316施設中1施設であった。また, COBAS 法と MWP 法において正解率に差は見られなかった (χ2検定: P>0.05) 。また, 不正解の報告をした施設と陽性コントロールが低値であった22施設に対して, 検査環境と操作面についてアンケート調査を実施した。その結果, PCRを行う際, 基本的操作が守られていないケースが指摘され, これが不正解に結びついた可能性が示唆された。
    アンプリコア (R) マイコバクテリウムキットは抗酸菌の迅速診断キットとして日常検査に十分な精度を有していると考えられた。
  • 中西 洋一, 出水 みいる, 安部 喜八郎, 原田 大志, 井上 孝治, 綿屋 洋, 南 貴博, 堀内 康啓, 石橋 里恵, 原 信之
    2002 年 77 巻 6 号 p. 457-463
    発行日: 2002/06/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    今後の院内感染防止対策の方向性を探ることを目的に結核に関する意識調査を行った。結核についての関心の高さ, 対応, 基礎的知識につき調査した。対象は40歳未満の医歯学部学生・医師・看護系職員・技師・薬剤師・事務職員である。1999年~2001年にかけて調査し2159件につき解析した。結核に対して関心があると答えた者は61.8%であったが, 実際に講演会に出席したり資料を収集すると答えた者は3.0%にすぎなかった。看護系職員の69.6%が感染や発病に対する不安を有しており, その比率は他に比べ有意に高かった。68.2%が結核検診の実施を希望していた。結核の基本的知識を問う設問では医師を含め正解率は半数に満たなかった。
    以上より, 医学生・医療従事者は結核に対する不安や関心を有してはいるが, 自発的に学習しているわけではなく, 知識も不十分であることが明らかになった。しかし, 機会さえ与えられれば結核の院内感染防止対策に対応する素地は整っており, 教育・検診などについて組織的な取り組みを行う価値があると思われた。一方, 事務系職員は結核に対する知識や危機意識が低かった。窓口業務などを介しての感染のリスクも考えられるため, 結核についての啓蒙が必要と思われた。
  • 藤田 匡邦, 荒川 健一郎, 水野 史朗, 若林 聖伸, 戸谷 嘉孝, 出村 芳樹, 飴島 慎吾, 宮森 勇, 石崎 武志, 澤井 孝宏
    2002 年 77 巻 6 号 p. 465-470
    発行日: 2002/06/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    1998年11月, 44歳男性が発熱, 下腿浮腫を主訴に当科入院した。血液検査所見, 筋電図, 筋生検により多発筋炎と診断され, ステロイド, および免疫抑制剤が投与され諸症状は改善し, 外来にて通院加療を行っていた。しかし発熱, 下腿浮腫に加え, 顔面および両前腕に紅斑が出現し, 2000年1月再入院となった。
    症状, 皮膚症状, 血液検査所見より, 皮膚筋炎としての原病の再燃と考え, ステロイドパルスを施行したが症状は改善しなかった。皮疹の生検結果は一般的な炎症所見を認めるのみであった。各種抗生剤, 免疫抑制剤も投与されたがやはり効果は認められず, 2月12日永眠された。剖検結果は, 皮膚, 皮下組織, 筋肉の結核症と診断された。また, 肺には活動性結核は認められなかった。
    膠原病患者において特に副腎皮質ステロイド投与中は特に易感染宿主と考えられており, 結核の発症リスクも内包している。われわれはそのような患者において結核発症の可能性を常に念頭におき, 早期発見につとめ, 抗結核療法に備えるべきである。また, よりリスクの高い症例では化学予防も必要と思われる。
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