結核
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78 巻, 2 号
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  • 亀田 和彦
    2003 年 78 巻 2 号 p. 65-68
    発行日: 2003/02/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    結核診査協議会 (以下, 診査会) は1951年に設置されて以来, 結核予防法を通してわが国の結核医療水準の向上と適正医療の普及に大きく寄与してきた。設置当時は長期治療でX線所見重視の時代であったが現在では短期治療で菌所見重視の時代となり, 疫学的様相も大きく変貌したことを背景に患者管理の考え方も著しく変化した。一方結核専門医の減少, 一般医師の結核離れ, 保健所の結核管理機能の低下もあり, 今日的な結核対策の理解も混乱し診査会の対応にも格差が生じている。全国の診査会が可能なかぎり統一基準でup to dateの運用がなされればわが国の結核対策にとって大きな利益がもたらされるであろう。以下診査会における34, 35条申請の取り扱い方, 適正医療の普及のための助言, マル初, 病型判定, 非定型抗酸菌陽性例, 肺外結核についてその対応上統一できればと思われる各論的な事項を述べ提言とした。
  • 河尻 克秀
    2003 年 78 巻 2 号 p. 69-78
    発行日: 2003/02/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    MPT63はM.tuberculosisH37Rvの培養濾液から最初に永井らにより分離された分泌タンパクである。本研究ではM.bovis BCG Tokyo株のソートン培地8日目の培養濾液から, 永井らの方法によりこのタンパクの分離精製を行った。その結果, M.bov's BCG Tokyo株も, このタンパクを分泌しており, さらに種々抗酸菌についてMPT63をコードするmpt63遺伝子の存在をPCR法で調べた結果, M. tubemlosts complexに特異的であった。従ってM.bovis由来のタンパクについては, 抗酸菌の他の主要分泌タンパクであるMPB59やMPB64などと同じように, MPB63またはMPB/T63と呼ぶのが適切である。またMPB63とMPT63のタンパクをコードする遺伝子の塩基配列を比較した結果, 一塩基のみの違いであり, アミノ酸レベルでこの両者は全く同じタンパクであることが分かった。
    M.bovis BCGの生菌, 加熱死菌またはM.tubmulosisの加熱死菌で免疫したモルモットのいずれにおいても, 皮内注射したMPB63に対して遅延型反応はみられなかった。しかし, MPB63を抗原としてELISA法により結核患者血清の抗体を調べたところ, 感度74%, 特異性96%であった。従って, 結核の血清診断用抗原の1つとして有望なタンパクであると考えられる。
  • 井上 哲郎, 田中 栄作, 種田 和清, 田口 善夫, 加藤 晃史, 櫻本 稔, 前田 勇司, 馬庭 厚
    2003 年 78 巻 2 号 p. 79-82
    発行日: 2003/02/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    1996年にピラジナミド (PZA) を含む抗結核療法が標準療法に加えられたが, 当科ではそれ以降, 活動性肺結核患者の退院・基準を見直し, できるだけ在院日数 (入院期間) の短縮を図る方針としている。今回, PZA導入および退院基準の見直しによって在院日数が実際にどの程度短縮されたかをretrospectiveに検討した。当院に入院した活動性肺結核患者 (初回治療例) をPZA導入前のA群 (1992年4月~1996年3月入院), PZA導入後のB群 (1996年4月~2000年3月入院), の4年間ずつに分類した。PZA投与率はA群23.3%, B群80.1%であった。塗抹陽性例の排菌陰性化までの平均月数はA群2.5±1.0ヵ月, B群1.8±0.7ヵ月とB群で有意に短縮を認めた。在院日数は活動性肺結核全体ではA群 (N=200) 平均133.8±65.6日, B群 (N=234) 平均63.7±41.8日, 塗抹陽性例に限るとA群 (N=147) 平均147.5±62.6日, B群 (N=154) 平均73.0±41.8日, といずれもB群で有意に短縮を認めた。在院日数の短縮によって生じる可能性のあるマイナス面 (副作用, 通院中の服薬自己中断や再排菌など) の明らかな増加は認められなかった。排菌陰性化後も入院継続を要する症例への個別の対応は必要であるが, 当科で実現した程度の平均在院日数の短縮は可能であろうと思われた。
  • 1994年から2001年までの集計
    米丸 亮, 豊田 丈夫, 白井 哲, 芳賀 孝之, 塩見 哲也, 鈴木 恒雄, 川城 丈夫
    2003 年 78 巻 2 号 p. 83-87
    発行日: 2003/02/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    長年減少してきた結核罹患率が近年増加し, 結核菌薬剤耐性率は倍増したと報告された。しかし, 耐性率の増加を報告した調査では, 結核菌薬剤感受性検査には比率法の採用と耐性基準濃度の変更がなされていた。
    本研究では1994年~2001年に国立療養所東埼玉病院に入院した患者から得られた結核菌の薬剤感受性結果を集計し, 当院において薬剤耐性率が増加しているか否かを検討した。初回治療例における完全耐性率はINH1.9%, RFP0.81%, SM5.1%, EB0.81%, MDR0.32%であり, 再治療例での完全耐性率はINH9.7%, RFP11.5%, SM7.3%, EB2.4%, MDR6.1%であった。これらの耐性率に経年的な増加を認めず, 1994年~1997年と1998年~2001年での耐性率にも統計学的に有意な増加を認めなかった。
    わが国における従来の報告との比較では, 初回治療例で薬剤耐性率の増加を認めず, 再治療例の割合およびその薬剤耐性率は低値であった。今日HRS (E) Zを主軸とした多剤併用療法が一般化しているが, 今回の結果から多剤併用療法は結核菌の耐性獲得を誘導しにくいと考えられた。
  • 近藤 信哉, 伊藤 真樹
    2003 年 78 巻 2 号 p. 89-93
    発行日: 2003/02/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    1990年~1999年に発病した結核性髄膜炎乳幼児の現病歴, 検査所見をretrospectiveに検討し, より良い診断法を導くことを試みた。診断基準は発熱, 全身倦怠を有し, 髄液, あるいは胃液から結核菌が検出され, 髄液細胞増多を有し, 抗結核剤治療効果を有したこととした。対象は11例 (男6, 女5) で, 平均月齢は10.7であった。BCGワクチンは3例 (27%) に接種され, 接触歴は7例 (64%) において不明であり, 発症から診断まで平均14.8日を要した。発熱は全員に認められた。髄液では10例 (91%) にリンパ球優位の細胞増多を認め, 結核菌塗抹陽性は3例 (27%), PCR陽性は8例中5例 (63%) であった。10例中6例 (60%) はツベルクリン反応陰性であった。胃液結核菌塗抹陽性は4例 (36%), PCR陽性は8例中5例 (63%) であった。胸部単純X線写真, 造影CT検査において全員が縦隔・肺門リンパ節腫脹を示した。頭部造影CT検査において脳底部髄膜造影効果が全例 (100%), 水頭症が9例 (82%), 脳梗塞が8例 (73%) に認められた。これらの結果はリンパ球優位の細胞増多を伴う髄膜炎乳幼児において, 結核菌検査, ツベルクリン反応, 胸部単純X線写真に加えられた頭部, そして胸部CT検査は結核性髄膜炎の補助診断法として有用であることを示唆する。
  • 森 亨
    2003 年 78 巻 2 号 p. 95-100
    発行日: 2003/02/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    Brief review is made of the interconnections between tuberculosis and poverty and other social factors, with special emphasis on the current Japan's tuberculosis situation. In pre-war Japan, the tubeculosis had apparently an aspect of a socioecomic problem which led to lively discussions. With the progress in medical technology and control measures after the war, such aspect of the disease has become more masked and difficult to see. Often, it is viewed merely as a problem of a small and special fragment of the population such as homelesses, and its wide and diffuse connections with the society and economy are likely to be overlooked. Studies in tuberculosis, both basic and epidemiological, as well as multidisciplinary, should be further encouraged from such a point of view, in order to lay such interconnections bare, on which the new control strategy should be based.
  • 町田 和子
    2003 年 78 巻 2 号 p. 101-105
    発行日: 2003/02/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    The prognosis is very poor in patients with acute respiratory failure (ARF) due to active pulmonary tuberculosis, especially in those who necessitate mechanical ventilation. The underlining factors of ARF are low nutrition, old age and severity because of patient's delay and doctor's delay. So, management consists of two parts, one, early patient detection considering of tuberculosis and early treatment, the other, focused control to high risk groups.
    Patients with chronic respiratory failure due to pulmonary tuberculosis sequelae have long insidious period and mainly restrictive, sometimes mixed pulmonary dysfunction. Hypercapnea, pulmonary hypertension and respiratory disorder during sleep are seen in high percentage in them. In acute on chronic failure the principles of therapy are treatment of precipitating factors such as respiratory infection or congestive heart failure, controlled (low flow) oxygen therapy, bronchial hygiene and maintaining adequate pulmonary and circulatory condition. In chronic stage patient education is very important. Management of chronic stage is constructed of nutrition control, long-term oxygen therapy, pharmacological therapy, pulmonary rehabilitation including controlled breathing technique, physical chest therapy and exercise training. Noninvasive positive pressure ventilation is effective on improvement of prognosis in chronic respiratory failure, and on treatment in acute on chronic failure.
  • 2003 年 78 巻 2 号 p. 107-114
    発行日: 2003/02/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
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