長年減少してきた結核罹患率が近年増加し, 結核菌薬剤耐性率は倍増したと報告された。しかし, 耐性率の増加を報告した調査では, 結核菌薬剤感受性検査には比率法の採用と耐性基準濃度の変更がなされていた。
本研究では1994年~2001年に国立療養所東埼玉病院に入院した患者から得られた結核菌の薬剤感受性結果を集計し, 当院において薬剤耐性率が増加しているか否かを検討した。初回治療例における完全耐性率はINH1.9%, RFP0.81%, SM5.1%, EB0.81%, MDR0.32%であり, 再治療例での完全耐性率はINH9.7%, RFP11.5%, SM7.3%, EB2.4%, MDR6.1%であった。これらの耐性率に経年的な増加を認めず, 1994年~1997年と1998年~2001年での耐性率にも統計学的に有意な増加を認めなかった。
わが国における従来の報告との比較では, 初回治療例で薬剤耐性率の増加を認めず, 再治療例の割合およびその薬剤耐性率は低値であった。今日HRS (E) Zを主軸とした多剤併用療法が一般化しているが, 今回の結果から多剤併用療法は結核菌の耐性獲得を誘導しにくいと考えられた。
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