結核
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78 巻, 6 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 失業・過密・貧困・在日外国人が及ぼす影響
    西浦 博
    2003 年 78 巻 6 号 p. 419-426
    発行日: 2003/06/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    適切な結核対策を進めるための一助とする目的で, われわれは社会経済因子に対する結核罹患率およびその変化率の関係について検討を行った. 東京都特別区において, 1992年統計より得た8つの社会経済因子と, 1988年から1997年の結核新登録患者数から得た標準化結核罹患率より計算した平均年齢調整結核罹患率およびその変化率との関係について後向き生態学的研究を実施した. 重回帰分析の結果, 生活扶助世帯割合 (p<0.001), 10万人当たり公衆浴場数 (p<0.001), 人口密度 (p=0.012), および最低居住水準未満の世帯割合 (P=0.024) について平均年齢調整結核罹患率と正の相関関係を認めた. また, 持ち家世帯割合 (p=0.001), 1人当たり畳数 (p=0.021), および生活扶助世帯割合 (P=0.038) と平均年齢調整結核罹患率変化率との問に負の相関関係を認めた. これらの結果より, 結核罹患に関して明らかな社会経済的要因が存在することが示された. また, 本研究手法は結核に関係していると考えられる個々の社会経済的要因ごとに罹患率の変化を検討する方法として有用であると考えられた.
  • 吉山 崇, 加藤 仁一, 和田 雅子, 尾形 英雄, 伊藤 邦彦
    2003 年 78 巻 6 号 p. 427-434
    発行日: 2003/06/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    背景: 日本では定期検診での胸部X線検査が結核患者発見のために行われてきた.
    方法: 都内の一結核病院にて診断された培養陽性肺結核患者を対象とし, 患者発見方法, 検診受診歴によって診断時の重症度を比較し, また, 過去の検診が患者発見に生かされているかどうか検討した.
    結果: 有症状受診者のうち, 検診受診歴がある者とない者とで, 診断時喀痰塗抹のグレードには差がなかったが, X線所見は後者が有意に重症であった. 検診受診歴のある有症状受診者に比して検診発見者の診断時喀痰塗抹のグレードは低かったが, X線所見では有意な差は見られなかった. 年齢別に比較すると, 検診歴のある有症状受診者と検診発見者を比べると, 塗抹X線所見とも40~59歳のみで有意な差 (検診発見のほうが軽症) があり, その他の年齢層では有意な差が見られなかった. 検診受診し要精査治療となっていたが精査を受診していなかった者が21名おりそれらの者が発病した時の喀痰塗抹はその他の検診受診者よりも重症であった.
    議論: 症状が重くなるまで病院に来ない検診の必要性が高い人々に対して, 必ずしも検診が行われていない可能性が示唆された. 検診発見者は有症状検診受診者よりも軽症で発見されているが, 40~59歳を除くと軽症発見に結びついていない可能性がある. 要精密検診者中精密検診未受診者など改善が必要である.
  • 大森 正子, 和田 雅子, 吉山 崇, 内村 和広
    2003 年 78 巻 6 号 p. 435-442
    発行日: 2003/06/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    老人保健施設における結核の早期発見方策を検討する目的で, 1都4県358の老人保健施設にアンケート調査を実施し, 169 (47.2%) から回答を得た. 施設は併設病院あり36.1%, 診療所あり12.4%, どちらもなし51.5%で, 平均年齢は入所者83.2歳, 通所者79.6歳, 平均利用期間は入所者7ヵ月, 通所者13ヵ月だった. 施設利用時に胸部X線検査を実施していた施設は入所者42.6%, 通所者23.7%, 利用期間中に結核検診を実施していた施設は入所者45.6%, 通所者15.4%だった. 職員への定期結核検診は94.7%の施設で実施していた. 入所者の食欲低下や全身倦怠といった症状は, 67.5%の施設で毎日点検していると答えたが, 呼吸器症状は18.9%と少なかった. 2週間以上続く呼吸器症状で病院を受診させる際, 入所者では93.5%の施設が文書を持たせ, 63.9%が胸部X線と喀痰検査を依頼すると答えたが, 通所者では医療機関受診を勧めるだけで特に症状を説明する文書を持たせず結果を確認することもしないと答えた. 結核患者発生率は, 施設利用者10万対104.6で, 調査地域の一般住民 (同年齢) の結核発生率よりやや高かったが有意の差は見られなかった. 老人保健施設は医療機関とみなされ結核予防法で健診の対象にはなっていない. 法的措置の基に効果的な患者発見方策を確立する必要がある.
  • 藤木 玲, 白石 香, 野田 和人, 大下 祐一, 深堀 茂樹, 城島 浩人, 田中 健, 力丸 徹, 相澤 久道
    2003 年 78 巻 6 号 p. 443-448
    発行日: 2003/06/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は76歳, 女性. 発熱, 食欲不振が出現したため近医を受診, 胸部単純X線写真で粟粒結核を疑われたため当科入院となった. 入院時検査所見で2系統の血球減少, 肝機能異常, 高LDH血症, 高フェリチン血症を認め, また胸部X線およびCT写真で両側肺野全体に拡がる小葉中心性の小結節影と右S6領域の肺胞充満性の浸潤影を認めた. 尿抗酸菌群PCRで結核菌群陽性であり, また骨髄穿刺にて類上皮細胞肉芽腫, Ziehl-Neelsen染色陽性桿菌およびマクロファージの血球貧食像を認め, 粟粒結核に起因した血球貧食症候群と診断した. 抗結核剤およびステロイド剤を開始したところ速やかに寛解した. 本症例は血清sIL-2R, IFN-γ, M-CSF, IL-6などのサイトカインに加え血清IL-18が高値で, また接着分子である血清sICAM-1, sVCAM-1も高値であった. とくに血清IL-18は血球貧食症候群および結核症においてその病勢を反映して高値を示すことが報告されており, これらのサイトカインおよび接着分子が本症の病態に深く関与していると考えられた.
  • 小野 日出麿, 村上 れい子, 鶴若 美亜, 鈴木 慶彦
    2003 年 78 巻 6 号 p. 449-452
    発行日: 2003/06/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    平成12年から平成14年までの3年間に気仙沼保健所に届出のあった結核患者で遠洋漁業に従事していた漁船員の肺結核症4例を経験したので報告する. 遠洋漁業では, 長期間にわたり生活を共にすることとなる. 船室は狭く, 空調はi換気扇程度であり, 結核患者が発生した場合, 同室者, 同乗者が感染する危険性は高いと考えられる. 遠洋漁業では多くの外国人労働者を雇用しているのが現状であり, 今回報告した例でも全例船員の3割から7割の割合でインドネシア人を現地で雇用していた. 日本人漁船員は元より, 外国人労働者についても検診を実施した上で雇用しているが, その検診精度, 効果については十分ではないと考えられた. 外国人労働者など様々な面で人の交流が広域化しており, 海外を含めた結核対策の強化が必要であると考えられた.
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