背景: 日本では定期検診での胸部X線検査が結核患者発見のために行われてきた.
方法: 都内の一結核病院にて診断された培養陽性肺結核患者を対象とし, 患者発見方法, 検診受診歴によって診断時の重症度を比較し, また, 過去の検診が患者発見に生かされているかどうか検討した.
結果: 有症状受診者のうち, 検診受診歴がある者とない者とで, 診断時喀痰塗抹のグレードには差がなかったが, X線所見は後者が有意に重症であった. 検診受診歴のある有症状受診者に比して検診発見者の診断時喀痰塗抹のグレードは低かったが, X線所見では有意な差は見られなかった. 年齢別に比較すると, 検診歴のある有症状受診者と検診発見者を比べると, 塗抹X線所見とも40~59歳のみで有意な差 (検診発見のほうが軽症) があり, その他の年齢層では有意な差が見られなかった. 検診受診し要精査治療となっていたが精査を受診していなかった者が21名おりそれらの者が発病した時の喀痰塗抹はその他の検診受診者よりも重症であった.
議論: 症状が重くなるまで病院に来ない検診の必要性が高い人々に対して, 必ずしも検診が行われていない可能性が示唆された. 検診発見者は有症状検診受診者よりも軽症で発見されているが, 40~59歳を除くと軽症発見に結びついていない可能性がある. 要精密検診者中精密検診未受診者など改善が必要である.
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