結核
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79 巻, 7 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 井上 哲郎, 田中 栄作, 加藤 晃史, 櫻本 稔, 前田 勇司, 馬庭 厚, 田口 善夫
    2004 年 79 巻 7 号 p. 431-435
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    [対象と方法] 1992年から2001年までの10年間に当院を受診し, Mycobacterium kansasii (以下MKと略す) が同定された49例の中で, 肺MK症として結核病学会基準を満たした症例32例と, 肺MK感染症の診断基準を満たさなかった17例の中で経過が不明な4例を除いた13例を対象として, retrospectiveに検討した。 [結果] 肺MK症は10年間で増加傾向にあり, 男性の喫煙者に多くみられたが, 従来の報告と比べると有空洞例の比率が低かった。肺癌との鑑別が困難で外科的切除を要した例や, 肺炎型の画像を呈する例, 10歳代の女性例など臨床像は多彩であった。感受性検査は16例に行われていたが, RFPに対しては全例感受性を示した。化療期間は6-18カ月間であったが, 6カ月化療の行われた1例にのみ再発がみられ再化療を要した。死亡例は3例ですべて他病死であった。一方, 肺MK感染症の診断基準を満たさなかった13例においては, MKが培養陽性となった回数はいずれの症例も1回のみであり, 1カ月から10年の観察期間で肺MK症の発症はみられなかった。 [結論] MKが喀痰などから検出されても, 単なるcolonizationに止まる症例が存在する可能性が示唆された。
  • 鹿住 祐子, 大友 幸二, 高橋 光良, 御手洗 聡, 菅原 勇, 和泉 純子, 安藤 昭子, 長谷川 秀浩
    2004 年 79 巻 7 号 p. 437-441
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    [目的] 同定困難であったMycobacterium skinskuenseの細菌学的解析を行った。 [対象と方法] 37歳女性, 右下肢皮膚潰瘍より分離された抗酸菌 (被検株753) とM.marinum (ATCC927), M.ulcmns (ATCC19423), M.skinskuense (ATCC33728) をDDH, 16SrRNA法, rpoB法, 薬剤感受性試験, 生化学的・生物学的検査を用いて比較した。 [結果] DDH法によって上記の4株はM.marinumとして判定されたが, 遺伝子配列の検索方法 (16SrRNA法・rpoB法) ではこの被検株 (753) が3菌種のうち, いずれであるかを決定できなかった。しかし, 16S rRNA法の中のPortaelsらの方法によってこの3菌種を分類することが可能であった。この方法によって被検株 (753) はM.skinskuenseと同定された。薬剤感受性試験と生化学的・生物学的性状検査においても被検株はM.skinskuenseと同定された。 [考察] DDHにてM.msrinumと同定された抗酸菌で, 発育条件が28℃ 培養で2週間かかり, 暗所培養にて黄色のコロニーを形成するScotochromogenであった場合, 塩基配列レベルの検査と従来法の実施が必要である。
  • 川辺 芳子, 田中 茂, 永井 英明, 鈴木 純子, 田村 厚久, 長山 直弘, 赤川 志のぶ, 町田 和子, 倉島 篤行, 四元 秀毅
    2004 年 79 巻 7 号 p. 443-448
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    [目的] 防じんマスクの密着性の評価に使用されているマスクフィッティングテスターを用いてN95微粒子用マスク (N95マスク) の顔面への密着性の定量的評価を行うことの妥当性を検討することと, N95マスクの装着状況およびマスクの選択と使用方法の指導の重要性を明らかにすることを目的とする。 [対象] 当院に勤務する職員133名で, 男性29名, 女性104名, 常時N95マスクを使用している者は46名, 毎日は使用していない者87名であった。 [方法] 労研式マスクフィッティングテスターMT-02型TMを用いてマスクの漏れ率を測定し, 10%以下を許容範囲とした。基準に達しない場合は装着方法を指導し, それでも達しない場合はマスクの種類を変更した。 [結果] 1回目で漏れ率が10%以下であったのは87名 (65%) であった。10%を超えた46名のうち40名は指導やマスクの変更により10%以下になったが, 最終的に6名は達しなかった。マスクの選択, 鼻の部分の密着性, ゴムひもの使用方法が問題であった。 [結論] マスクフィッティングテスターはN95マスクの顔面への密着性の定量的評価に有用であり, 顔に合ったマスクの選択と日常的な指導点検, 3種類以上のマスクを準備しておくことが重要であることが明らかになった。
  • 伊藤 邦彦
    2004 年 79 巻 7 号 p. 449-451
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は21歳男性。喀痰塗抹陽性全剤感受性肺結核で化学療法終了治癒後6カ月後に喀血し, 喀痰塗抹陽性であったが培養はすべて陰性であった。胸部X線写真上以前より存在した結節影の空洞化が認められ壊死物質の排出による偽再発と判断された。患者は無治療で改善した。臨床症状や喀痰塗抹が陽性であっても再発の診断は慎重を期すべきであり, 原則的に培養陽性によるべきである。
  • 岩田 安弘, 石松 明子, 濱田 美奈子, 江森 幹子, 池堂 ゆかり, 若松 謙太郎, 永田 忍彦, 加治木 章, 原田 泰子, 原田 進 ...
    2004 年 79 巻 7 号 p. 453-457
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は61歳女性。30歳時より統合失調症で精神病院に入院中であった。平成14年5月初旬に腰背部痛, 腹痛を認め, 亜イレウスの診断で当院に入院した。亜イレウス改善後, 38度台の発熱, 右胸水貯留を認めた。また, 自壊を伴う母指頭大の右頸部リンパ節の腫脹を認めた。腰背部痛は持続し, 前胸下に皮下膿瘍の所見を認めた。リンパ節生検, 胸部CT検査, 胸水穿刺と皮下膿瘍の抗酸菌検査, 胸椎MRIなどの所見から頸部リンパ節結核, 縦隔リンパ節結核, 結核性胸膜炎, 胸椎カリエス, 前胸部冷膿瘍の併発と診断した。抗結核薬 (HRSZ) 投与により背部痛以外の症状は軽快した。化学療法開始後, 両下肢の麻痺が出現し, 8カ月後には完全麻痺となった。しかし, その後徐々に麻痺は改善し12カ月後自立歩行可能となった。近年, 複数の肺外結核を併発した稀な症例を経験したので, 脊椎カリエスの治療について若干の文献的考察を加え報告する。
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