結核
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80 巻, 11 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 森 亨, 原田 登之
    2005 年 80 巻 11 号 p. 675-686
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    〔目的〕BCG接種歴の影響を受けずに結核感染を診断しうる技術として最近開発されたQuanti-FERON®-TB2ndGeneration(以下QFT)を集団の接触者健診に用いるうえでの有用性について経費効果分析を行った。〔方法〕モデルでは,BCG既接種の青年集団が感染に様々な程度に曝露されたことを想定し,その際感染曝露前の集団(未感染者)のツベルクリン反応(以下,ツ反)分布の強さを種々仮定し,さらに感染曝露によって感染を受けた者のツ反分布が曝露前と比較してどう変わるかも仮定する。QFTの結核感染診断の感度,特異度はそれぞれ89%,98%とした。方策としてはツ反検査の結果,種々の強さの者にQFTを施行することを模擬した。効果は各方策による化学予防の結果として患者発生の回避(それによる医療費の節減),化学予防の対象人数および経費バランス(患者・化学予防の医療費と検査[ツ反検査およびQFT]の経費の差)を検討した。〔結果・結論〕QFTの使用は不要な化学予防の回避に有効,経済的にも比較的高価な検査単価に見合うことが知られた。またツ反検査との併用方法については集団の感染前後のツ反分布などの条件によって決定することが有用である。
  • 吉山 崇, 尾形 英雄, 和田 雅子
    2005 年 80 巻 11 号 p. 687-693
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    〔目的〕多剤耐性結核の予後を知る。〔方法〕複十字病院で1990年1月から1999年12月までに治療した100例の治療成績をレトロスペクティブに検討した。〔結果〕治療終了しその後2年以上の菌陰性を確認できている治癒例は62例,治療失敗12例(慢性排菌2例,結核死10例)であった。ほか,8例が治療を完了していたが治療終了後の2年間の追跡が行われておらず,残る18例は治療終了前転出,治療中断または他因死亡であった。治癒と治療失敗とを比較したところ,高年齢者,空洞がある者(両側 > 片側 > なし),耐性薬剤数が多い.副作用による薬剤の中止,および糖尿病の者で,治療失敗が有意に多かった。5カ月以上培養陽性であった者の中では手術できた例で治療成績がよかった。内科的治療のみで5カ月で培養陰性化していた者66例のうち再排菌が7例ありそのうち3例では治療失敗であった。〔考察〕糖尿病症例では治療成績が悪かった。治療開始後5カ月で培養陽性の場合,可能ならば手術治療が必要と思われたが,5カ月で陰性の場合再排菌予防のための手術の必要性について更に検討が必要である。
  • 谷川 元昭, 齋藤 公正
    2005 年 80 巻 11 号 p. 695-699
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は73歳男性。2004年4月下旬より,発熱,腹部膨満感を主訴とし,近医を受診, 腹水の貯留を指摘され,当院内科に入院となった。内視鏡検査,腹部CT検査では腹水の貯留以外に異常所見がみられなかったが,腹水中の結核菌polymerasechainreaction(PCR)陽性とadenosinedeaminase(ADA)が127.6U/lと高値を認めたため,結核性腹膜炎と診断され,6月1日当科に転科となった。胸部CT検査では,右側優位の胸水の貯留のみで両側肺野には異常所見は認めなかった。喀疾の抗酸菌塗抹,培養,結核菌PCRは陽性であった。最終的に結核性腹膜炎,肺結核,結核性胸膜炎と診断した。抗結核剤による化学療法〔isoniazid(INH),rifampicin(RFP),ethambutol(EB),pyrazinamide(PZA)〕を6カ月間施行した。治療開始2週間後にはMycobacteriaGrowthIndicatorTubeが1カ月後にはCRPが陰性化した。さらに治療開始2カ月後には胸水が,3カ月後には腹水が消失した。結核性腹膜炎は比較的稀な疾患であるが,原因不明の腹水症例に遭遇した場合には本症の存在も念頭において,侵襲的な腹腔鏡検査を施行する前に腹水申の結核菌PCRやADAを測定することが早期診断に必要であると考えられた。
  • 岡部 信彦
    2005 年 80 巻 11 号 p. 701-708
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    新興感染症,再興感染症の出現など,感染症の存在は再び見直されることになった。新興感染症の多くはウイルス感染症である。その発生はいわゆる発展途上国に限ったことではなく工業的先進国にも見られ,アジアに多いことも目立つ。病原体は動物由来と考えられるものが多い。そのような背景のもと,SARSが2003年に現れ,そして消え去ったかのように見えている。感染症対策・公衆衛生対策,感染症と経済,感染症と人権,国際間の入の行き来,国際協力など,多くの問題を提起した。2004~2005年,わが国も含むアジアにおける鳥の問での鳥インフルエンザウイルスH5N1の流行は,その影響としてベトナム,タイ,インドネシアで限定例ではあるがヒト感染例が見られた。そして新型インフルエンザウイルスが登場するプロローグとしての可能性が危惧されている。感染症対策に必要なこととして,感染症の存在の認識サーベイランスの強化,医療機関・保健行政機関・医育機関・研究機関など多くのセクターの協力が必要である。そして感染症対策は,地球的規模で取り組むことが必要である。
  • 2005 年 80 巻 11 号 p. 709-729
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
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