〔目的〕結核隔離病棟を閉鎖した当大学病院における結核患者の発生状況を検討し,今後の院内感染対策を再検討した。〔対象と方法〕200l年1月から2004年8月までに当大学附属病院で結核菌が証明された39例に対して,臨床的事項および院内感染対策について検討した。〔結果〕結核菌が分離された時点での所属科は,呼吸器内科16例に対し,呼吸器内科以外は23例であつた。34例が基礎疾患を有し,悪性腫瘍が14例と最も多くみられた。最終診断名は,肺結核が23例あり,うち13例は入院時から肺結核を疑っていたものの,残り10例は肺炎として治療されていた。検体では,喀痰が21例と多く,このうち院内感染上間題となる塗抹陽性例は13例であった。院内感染対策で,結核と診断後,喀痰塗抹陽性であった13例に対して,家族も含めて,院内職員に対しても接触者検診を積極的に行つているが,現時点では1例の発症も認められていない。〔考察〕悪性腫瘍を中心とした基礎疾患を有した患者に非典型的なパターンを呈する肺結核症例が出現してきており,未だ入院後肺炎として抗菌薬が投与される症例が認められた。当大学病院において,今後も結核に対するさらなる教育指導が必要と考えられた。
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