九州地区における多剤耐性結核入院症例の臨床的検討。〔対象および方法〕九州地区の国立病院機構12病院において,1998~2003年に多剤耐性結核で入院となった56症例の検討。〔結果〕男性44例,女性12例,年齢は62.1±18.6歳であった。49歳以下で14例中7例が初回耐性であった。基礎疾患は29例(51.8%)にみられ,糖尿病10例(17.9%),肝臓病5例(8.9%),腎不全4例(7.1%)であった。臨床病型では肺結核が54例で,病変は両肺におよぶ症例が41例(75.9%)であった。薬剤感受性検査ではisoniazid(INH),rifampicin(RFP)の2剤耐性は8例で,5剤以上耐性は27例にみられた。予後は,耐性薬剤が5剤以上では,排菌停止は6/27(22.2%)で,死亡は10/27(37。0%)であった。一方,耐性薬剤が4剤以下では,排菌停止は17/29(58.6%)で,死亡は6/29(20.7%)であった。外科的切除は7例のみで,5例は排菌停止,2例は再排菌がみられた。〔考察〕49歳以下では半数が初回耐性であった。基礎疾患が半数にみられ,病巣が広範囲におよび外科的症例が少なかった。耐性薬剤が5剤以上の症例は約半数にみられ,4剤以下に比べて排菌停止率が低く,死亡率が高かった。
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