〔目的〕肺結核後遺症により慢性呼吸不全に陥り,在宅酸素療法(HOT)を受ける患者の特性を明らかにする。〔対象と方法〕国立療養所共同臨床研究の呼吸不全研究として,1998年7月から2001年7月まで慢性呼吸不全によるHOTが新規に開始された402症例を調査した。〔結果〕HOT開始年齢は72.2±8.1歳(平均±標準偏差)で60歳以上が945%を占めた。肺結核罹患年齢は37.7±19.4歳であり,30歳までの発症群と30歳以降の発症群とに分かれた。肺結核罹患からHOT開始までの期間は33.1±19.1年であり,20年以下の群と40~50年をピークとする群に分かれた。BMI20未満が68.6%に見られ,栄養障害の合併が多いものと考えられた。HOT導入時に呼吸機能検査が施行された症例では,97.4%に拘束性障害,52.2%に閉塞性障害が見られた。また,HOT導入時の血液ガス検査では,PaO
260.4±10.7Torr,PaCO
2は50.5±9.4Torrであった。吸入酸素流量は安静時O.94±0.64L/min,労作時151±O.70L/minであった。外科治療の有無に分けて比較検討すると,HOT開始年齢は両群で差がなかったが,肺結核罹患年齢は外科治療あり群で28.2±9.7歳,なし群で45.4±;21.5歳結核罹患からHOT開始までの期間は外科治療あり群43.0±10,9年,なし群25,3±20,3年であり,有意差をもって外科治療あり群が若い年齢で罹患し,呼吸不全出現までの期間が長かった。呼吸機能検査では外科治療あり群はなし群より%VCが小さく,PaCO
2が高く,吸入酸素流量は少なかった。HOT導入時のBMI,1秒率,PaO
2,SpO
2には両群問で差を認めなかった。〔結論〕肺結核外科治療群と内科治療群とは,病態とそれに基づく臨床経過が異なるものと考えられた。
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