結核
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81 巻, 6 号
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  • 小川培地併用の意義
    伊藤 邦彦, 青野 昭男
    2006 年 81 巻 6 号 p. 401-405
    発行日: 2006/06/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    〔日的〕結核菌検出率の観点から肺結核診断時にMGIT(Mycobacteriumgrowthindicatortube/ベクトン・ディッキンソン社)に小川培地を併用する意義を検討する。〔対象と方法〕2002年1月1日~2003年9月30日の間,著者らの病院(以下,当院)で,肺結核疑い時の喀痰培養検査をMGITと小川培地(1本)の両方で行った。この間に当院を受診した肺結核患者を対象とし,これらの患者の診断時検痰に対する後ろ向き検討を行う。〔結果〕喀痰結核菌培養陽性肺結核370症例/1103検痰を対象とした。このうちMGIT陽性86.0%,小川陽性795%で,MGITで有意に高い(p<0.001)。MGITで雑菌汚染検体中の小川陽性率は56.1%(23/41),MGIT陰性検体中の小川陽性率は2,7%(3/H3)で,この3検体は各々別の患者から提出されており,3例中2例では他の検疾でMGIT陽性であった。小川培地でしか培養しえない結核菌株は多くとも0.27%(1/370)であった。MGITで雑菌汚染をきたした41検体中15検体で再処理が行われており,このうち小川陽性は46,7%(7/15),MGIT再処理による培養陽性は73.3%(11/15)で,両者で有意差はなかった(p=0.289)。〔考察と結論〕結核菌検出率の観点から見た場合,MGITに小川培地を併用する意義のほとんどはMGITでの雑菌汚染の場合のバックアップにある。MGIT雑菌処理時のMGIT再処理を前提とすれば,菌検出率の観点から検体単位で見た場合,MGITに小川培地を併用する意義は乏しいと推測された。
  • 岩永 知秋, 池田 東吾, 町田 和子, 川城 丈夫
    2006 年 81 巻 6 号 p. 407-412
    発行日: 2006/06/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    〔目的〕肺結核後遺症により慢性呼吸不全に陥り,在宅酸素療法(HOT)を受ける患者の特性を明らかにする。〔対象と方法〕国立療養所共同臨床研究の呼吸不全研究として,1998年7月から2001年7月まで慢性呼吸不全によるHOTが新規に開始された402症例を調査した。〔結果〕HOT開始年齢は72.2±8.1歳(平均±標準偏差)で60歳以上が945%を占めた。肺結核罹患年齢は37.7±19.4歳であり,30歳までの発症群と30歳以降の発症群とに分かれた。肺結核罹患からHOT開始までの期間は33.1±19.1年であり,20年以下の群と40~50年をピークとする群に分かれた。BMI20未満が68.6%に見られ,栄養障害の合併が多いものと考えられた。HOT導入時に呼吸機能検査が施行された症例では,97.4%に拘束性障害,52.2%に閉塞性障害が見られた。また,HOT導入時の血液ガス検査では,PaO260.4±10.7Torr,PaCO2は50.5±9.4Torrであった。吸入酸素流量は安静時O.94±0.64L/min,労作時151±O.70L/minであった。外科治療の有無に分けて比較検討すると,HOT開始年齢は両群で差がなかったが,肺結核罹患年齢は外科治療あり群で28.2±9.7歳,なし群で45.4±;21.5歳結核罹患からHOT開始までの期間は外科治療あり群43.0±10,9年,なし群25,3±20,3年であり,有意差をもって外科治療あり群が若い年齢で罹患し,呼吸不全出現までの期間が長かった。呼吸機能検査では外科治療あり群はなし群より%VCが小さく,PaCO2が高く,吸入酸素流量は少なかった。HOT導入時のBMI,1秒率,PaO2,SpO2には両群問で差を認めなかった。〔結論〕肺結核外科治療群と内科治療群とは,病態とそれに基づく臨床経過が異なるものと考えられた。
  • 高嶋 哲也, 團野 桂, 田村 嘉孝, 永井 崇之, 松本 智成, 韓 由紀, 阿野 裕美, 吉多 仁子, 河原 邦光, 露口 泉夫
    2006 年 81 巻 6 号 p. 413-418
    発行日: 2006/06/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    〔目的〕妊婦多剤耐性肺結核に対する二次抗結核薬を中心とした化学療法の有効性と安全性の検討。〔対象と方法〕大阪府立呼吸器・アレルギー医療センターにおいて妊娠中に多剤耐性肺結核と診断され,妊娠を継続した3症例の臨床経過と出産状況を後ろ向きに検討した。〔結果〕妊婦多剤耐性肺結核の3症例は,妊娠中にピラジナミド(PZA),エタンブトール(EB),パラアミノサリチル酸(PAS),サイクロセリン(CS)およびクラブラン酸カリウム/アモキシシリン(AM-PC/CVA)の5剤治療を受け,全例が化学療法に反応して臨床症状および胸部X線所見が改善し,出産時には喀痰培養は陰性化した。妊娠中に重大な副作用は見られなかった。2例は妊娠40週で経膣分娩し,残りの1例は妊娠38週に帝王切開を受けた。新生児は全例健康で,ツベルクリン皮内反応検査および胎盤の組織検査で結核感染を認めなかった。〔結論〕妊婦多剤耐性結核は,有効かつ胎児に安全な抗結核薬を用いることができれば,治療ならびに出産は可能である。
  • 愛知県における19年問の新登録患者の疫学調査から
    井上 武夫
    2006 年 81 巻 6 号 p. 419-424
    発行日: 2006/06/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    〔目的〕二次患者を伴う気管支結核,喉頭結核患者を比較し,感染の実態を解明する。〔対象と方法〕1985年から2003年までの19年間に,名古屋市を除く愛知県下の保健所で新登録された結核患者の登録票を見直し,病名欄に気管・気管支結核,喉頭結核と記載された患者を選別し,接触者の中に発病者の有無を調査した。感染経路を同じくすると考えられる複数の発病者が認められた場合,最初に登録された患者を初発患者,他を二次患者とした。〔結果〕気管支結核は147名,喉頭結核は28名で,対人口10万人年間罹患率は,0.17および0.032であり,新登録患者に占める割合は,055%および0.10%であった。気管支結核は喉頭結核と比べて,学会分類II型が少なく(7.5%vs21.4%,p<0.05),皿型が多い(73.4%vs50.0%,p<0.05)。また,女性が多く(755%vs39.3%,p<0.001)男性が少なく,20歳代が多く(13.6%vsO%,p<0.05),30歳代が少ない(6.1%vsIZ99e,p<.05)。しかし,喀痰塗抹陽性の割合には有意差がなかった(64.7%vs53、6%)。気管支結核と喉頭結核のうち初発患者の占める割合は,全体の2.0%と10.7%(p<0.05),喀痰塗抹陽性の2.1%と20.0%(p<O.05),学会分類0型の0%と20.0%(p=O.18)であった。〔考察〕気管支結核および喉頭結核は,感染力が高いとされているが,発生頻度が低いため疫学研究の対象とならなかった。患者登録票を用いることによって後ろ向き研究が可能となり,わが国の登録患者に占める割合と二次患者の実態を明らかにした。〔結論〕気管支結核は,喉頭結核より結核感染力が弱い。
  • 谷口 浩和, 泉 三郎
    2006 年 81 巻 6 号 p. 425-428
    発行日: 2006/06/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は83歳男性で, 肺浸潤という診断での治療歴がある. 微熱と咳噺を主訴に近医を受診, 胸部X線写真およびCTにて右慢性膿胸を認めた. 同膿胸部の穿刺液は, 抗酸菌塗抹陽性(2+)であ り, 当科紹介となった。穿刺液は, PCR-Mycobacterium intracellulare性であり, M. intracellulareによる慢性膿胸と診断した. その後は経過観察としたが, 診断の1カ月後に気管支胸腔痩が発症もしくは増悪して, 肺内にもM. intracellulareの感染をきたした. EB, RFP, CAM, SMの4剤で治療を開始 した結果, 感染は改善を認めたが, 高齢であったことと, 長期にわたる慢性炎症による衰弱のため, 治療開始6カ月半後に死亡した.
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