結核
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81 巻, 7 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 齋藤 朗, 長山 直弘, 八木 理充, 大島 信治, 田村 厚久, 永井 英明, 赤川 志のぶ, 川辺 芳子, 町田 和子, 倉島 篤行, ...
    2006 年 81 巻 7 号 p. 457-465
    発行日: 2006/07/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    〔目的〕肝硬変に合併した結核患者の特徴を調べ治療方針について検討する。〔対象と方法〕1991~2005年に当院に入院した肝硬変合併結核患者44例の臨床的特徴を調査し,当院での治療経過を追えた25例については治療効果や抗結核薬の副作用について検討した。〔結果〕患者は中年男性に多く(平均60±13歳,男性/女性=39/5例),1糖尿病の合併が多かった(14例)。肝硬変の原因としてはHCV感染(17例)だけでなく,アルコール性(13例)の頻度が高かった。死亡率は41%であり,結核死(5例)よりも肝不全死(10例)が多かった。治療経過を追えた25例のうち,治療内容はINH,RFP,EBを含む処方が多く(22例),うち20例で副作用を認めた。内訳は白血球減少症10例,血小板減少症9例,ALT上昇1例,高ビリルビン血症3例であった。治療薬の変更や減感作療法で対応可能であり予後に深刻な影響を与えることはなかった。〔結論〕肝硬変合併結核患者では予後が悪く副作用の頻度も高い。ただしINH,RFP,EBを含む化学療法に耐用可能の場合は,副作用への適切な対応を行うことで治療完遂を期待できる。
  • Saint SALY, 小野崎 郁史, 石川 信克
    2006 年 81 巻 7 号 p. 467-474
    発行日: 2006/07/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    〔目的〕カンボジアの地方でDOTSのプライマリーケアセンターへの展開が完了した2パイロット郡とDOTSが郡病院で実施されている4対照郡で,結核の治療の遅れの期間と患者行動を比較した。〔方法〕2002年5月1日から7月31日にパイロット郡と対照郡で発見登録された全薪塗抹陽性患者に対し,定められた様式に従って聞き取り調査を実施。〔結果〕発症の自覚から治療にいたる期間の中央値は,パイロット郡58日,対照郡232日で有意な差があった(p<0.01)。結核診療施設での診断の遅れの中央値は,パイロット郡で10日,対照郡で6日だった(p<0.01)。患者は症状自覚後比較的早く受診行動をとる(中央値7日)が,その後結核サービスにたどり着くまでの期間が長い(パイロット郡24日,対照郡185日,p<0.01)。結核サービスセンターへの距離と交通費が結核治療の遅れを規定する有意な要素で,性・年齢・識字力などは遅れを規定する要素ではなかった。〔結論〕カンボジアにおけるDOTSのヘルスセンターレベルへの展開は,地方における結核治療の遅れを有意に短縮した。貧しい僻地住民が容易に到達できる所までDOTSを展開する必要がある。
  • 吉田 志緒美, 鈴木 克洋, 露口 一成, 岩本 朋忠, 富田 元久, 岡田 全司, 坂谷 光則
    2006 年 81 巻 7 号 p. 475-479
    発行日: 2006/07/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    M.kansasiiにおけるRFP耐性機序の解明。〔方法〕2001年1月1日から2005年11月30日の期間中,独立行政法人国立病院機構近畿中央胸部疾患センターにて分離同定されたM.kansasii314株を対象に薬剤感受性試験を実施し,RFP耐性と判定されたM.kansasiiについてrpoB遺伝子解析を行った。〔結果〕薬剤感受性試験の結果RFP耐性と判定されたM.kansasiiは314株中3株(0.96%)であり,最小発育阻止濃度(MIC値)はすべて1μ9/ml以上を示した。rpoB遺伝子変異のシークエンス解析において,RFP耐性菌株すべてにrpoB遺伝子領域の変異を認めた(コドン513,516)。〔考察〕M.kansasiirpoB遺伝子変異は結核菌と同じhot spot領域(69bp)にあり,結核菌同様RFP耐性と強い関連性が示された。.
  • 渡瀬 博俊, 中西 好子
    2006 年 81 巻 7 号 p. 481-485
    発行日: 2006/07/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    〔目的〕近年の東京都特別区における地理的結核罹患状況の特徴を明らかにする。〔対象と方法〕2000年から2002年の東京都特別区における性・年齢層別の結核罹患状況について,空間補間法により表示し,高罹患地域の検出を行った。さらに結核のハイリスク層と考えられる生活扶助者における結核罹患者の分布状況と比較した。〔結果〕地域の結核罹患状況は性・年齢層により分布状況が異なっている傾向を示した。20歳以上の男性において,都心部地域を中心として高罹患地域の集積を認めたが,20歳未満の若年層および女性においては有意な高罹患地域を認めなかった。また地域の生活扶助世帯割合と結核罹患率の問に正の関連を認めた。〔結論〕高罹患地域の地理的分布状況は,生活扶助世帯割合の地理的分布状況との関連が考えられた。しかしながら若年者や女性の罹患状況を考慮すると,地域住民の感染リスクはほぼ一様の傾向と考えられたが、都心部地域ではややリスクが高い状況と考えられた。
  • 松本 武格, 白石 素公, 吉村 尚江, 宗玄 圭司, 原田 泰志, 吉村 力, 荒牧 竜太郎, 山本 文夫, 久良木 隆繁, 渡辺 憲太朗
    2006 年 81 巻 7 号 p. 487-490
    発行日: 2006/07/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    79歳女性。2003年2月に胃癌に対し胃全摘術を施行されている。2005年1月初旬に血疾を認めた。胸部X線上,両側上~ 中肺野に多発性の不整形結節性陰影を発見され当科を紹介受診した。胸部CTにて胸膜下を中心に不整形結節性陰影がみられ,加えて右S6に充実性~ スリガラス状陰影を認めた。経気管支肺生検を右B6より行ったが有意な所見は得られなかった。心機能が低下しており胸腔鏡下肺生検は行われなかった。入院時の喀痰塗抹標本の抗酸菌染色は陰性であったが,液体培地で弱抗酸性グラム陽性桿菌が発育した。Tsukamurellaを疑い千葉大学真菌医学研究センターに同定を依頼した。細胞成分のミコール酸,メナキノン解析によりTsukamurella属と診断された。症状に乏しくその後複数回喀痰検査を試みたがTsukamurellaは検出されず,治療は行っていない。
  • 抗酸菌感染症を中心
    藤田 次郎
    2006 年 81 巻 7 号 p. 491-497
    発行日: 2006/07/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    呼吸器感染症の診断は,病歴,身体所見,微生物検査,および画像診断などを用いて総合的に行うべきものであることはいうまでもない.もちろん最終診断は微生物検査,または病理所見であるものの,呼吸器感染症の多くにおいては,病理検体は得られにくいことが多い。これを補助するものが画像診断であり,近年HRCTの詳細な解析により,pathologic-radiologiccorrelationが確立したことにより,HRCT所見から病理所見を推定することが可能になってきている。本総説においては,主として抗酸菌感染症を対象に,呼吸器系の正常解剖に立脚した画像診断を行うことにより,病変の部位を明らかにすることを試みた。さらに病変の部位のみならず,大葉,小葉,細葉,または病変の分布などの画像パターンから結核と非結核性抗酸菌とを鑑別しうるか否かを探りたい。さらにある種の起炎菌が特有の画像所見を呈するには,その菌と宿主の生体反応の結果が複合されて画像診断に反映されると考えられる。肺の正常解剖に基づく部位診断菌の種類と増殖メカニズム,および宿主の生体反応に基づいた総合的な病態・画像診断の可能性について概説した。
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