結核
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81 巻, 8 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 御手洗 聡
    2006 年 81 巻 8 号 p. 501-509
    発行日: 2006/08/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    〔目的〕日本結核病学会抗酸菌検査法検討委員会は検査センターおよび病院検査室を対象として薬剤感受性試験外部精度評価を施行した。〔方法〕薬剤感受性試験を実施している23の検査センターおよび25の病院検査室に耐性既知の結核菌20株を送付し,各施設で感受性試験を実施し,結果を標準判定と比較した。〔結果〕参加施設の検査精度は,INH・RFPで感度・特異度が平均95%を超えており,すべての薬剤で一致率平均が90%を超えていた。しかし,検査センターではINHの感度・特異度・一致率・再現性のすべてが100%であったのに対し,病院検査室では感度90%以下の施設が2施設(8%)認められた。同様にRFPに関しては感度が90%を下回る施設が検査センターで1施設(4.3%),病院検査室で3施設(12%)認められた。2003年度に精度改善のため現地での調査・検討を行った2施設では,いずれも今回精度の改善を認めた。〔考察〕病院検査室間の結果のばらつきは検査センターに比べて大きく,同じ範囲内であっても病院検査室の検査精度は検査センターに比べて低い傾向にあった。また,外部精度評価に基づく検査法の改善は精度の向上に有効であった。
  • 伊藤 邦彦, 青野 昭男, 吉山 崇, 和田 雅子, 尾形 英雄
    2006 年 81 巻 8 号 p. 511-518
    発行日: 2006/08/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    〔目的〕肺結核診断時に必要な液体培地による喀痰培養検査の回数について調査する。〔対象と方法〕2002年1月1日~2003年9月30日の期間に著者らの所属する病院を受診した者のうち,肺結核を強く疑う者すべてを対象とした前向き研究。これらの患者で診断時の連続検痰の各培養を原則的にそれぞれMGIT+小川培地(1本)の両者で行う。〔結果〕対象となった患者は喀痰結核菌培養陽性290例。このうち初回喀痰塗抹陽性例(n=210)ではMGITを3回行う場合,3回目の結核菌培養陽性率の増加は1.0%以下であり,2回のMGITで98.1%の症例で結核菌が検出可能であった。初回喀痰塗抹陰性例(n=80)では,MGITを3回行う場合でも3回目の結核菌培養陽性率の増加は5.0%以上であり,2回のMGITで結核菌が検出可能であるのは90.0%にすぎなかったが,これは従来の小川培地(2本)3回の培養検査での推定値(91.4%)とほぼ同等であった。〔考察と結論〕初回喀痰塗抹陽性例ではMGITによる喀痰培養は2回で十分であると推測された。初回喀痰塗抹陰性例ではMGIT使用の場合であっても3回目の喀痰培養検査の有用性は比較的高いと思われた。
  • 岩嶋 大介, 菅沼 秀基, 小林 淳
    2006 年 81 巻 8 号 p. 519-523
    発行日: 2006/08/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は53歳男性。平成13年4月左頸部リンパ節腫脹,左舌区腫瘤影を認め入院。気管支鏡検査にて左主気管支に隆起性病変を認めるも生検にて特異所見なし。左頸部リンパ節生検ではlymphoidhyperplasiaを認めるのみで悪性所見を認めなかった。退院後,左舌区からの気管支洗浄液よりMycobacterium intracellulare陽性となった。平成13年7月左舌区陰影の再増悪を認め,再度気管支鏡検査を行ったところ左主気管支の潰瘍と舌区入口部気管支内腔の浮腫状の狭小化を認めた。同部の生検標本より強い炎症を伴った肉芽腫性病変を認め,抗酸菌染色陽性の非結核性抗酸菌による気管支病変を認めた。RFP,CAM,EB,SMによる化療を開始するもRFPによると考えられた皮疹を認めたため,RFPをCPFXに変更して化療を続行し軽快を認めた。気管支病変を認める非結核性抗酸菌症は稀であり,貴重な症例と考えられたため報告した。
  • 野上 達也, 関矢 信康, 三潴 忠道, 山口 哲生
    2006 年 81 巻 8 号 p. 525-529
    発行日: 2006/08/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は72歳男性。1982年からMycobacterium fortuitumの持続排菌があり,咳嗽,発熱,喀血,全身倦怠感などの症状が続き,肺M.fortuitum感染症として近医にて加療されていた。1999年7月からCAM,EB,RFP,KMの4剤併用療法を中心とした抗菌薬治療を受け一時奏効したが再燃し,Gaffky3-5号の排菌が続いた。2001年8月に当科に紹介され,それまでの抗菌剤はすべて中止とし,人参養栄湯の煎液を投与した。投与開始後,徐々に咳嗽,全身倦怠感などの自覚症状は改善し,10カ月後には,一時喀痰中のM.fertuitumは塗抹陰性になった。その後,夏期に疲労感が増悪したため漢方医学的所見の変化に従って清暑益気湯に変更して治療を継続しているが,排菌は塗抹(±)以下を維持し2005年12月に至るまで,良好に経過している。われわれは,本症例においては漢方治療が有効であったと考えている。漢方治療を本症例のような非結核性抗酸菌感染症に用いることは一般的ではないが,有用な方法であると考え報告する。
  • 岩原 義人, 元木 徳治, 大串 文隆
    2006 年 81 巻 8 号 p. 531-535
    発行日: 2006/08/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は37歳女性。咳嗽,呼吸困難憾で発症。他院でステロイドを投与されるも軽快せず,中止された。約2カ月半後に当院にて粟粒結核と診断。抗結核療法を開始し,咳嗽の軽減を認めていたが,治療開始後約2カ月より発熱がつづき,その後陰影の明らかな悪化および縦隔・頸部リンパ節の著明な腫脹が出現した。初期悪化(奇異性反応)と考え,結核治療を継続したところ,治療開始後約4カ月以降,臨床所見は徐々に軽快した。著明な奇異性反応を呈した原因として,粟粒結核自体およびステロイドによる免疫抑制とその後のステロイド中止および強力な抗結核療法による急速な免疫能回復の関与を推察した。
  • 高山 聡, 富永 慎一郎, 塚田 義一, 大河内 稔, 稲瀬 直彦
    2006 年 81 巻 8 号 p. 537-541
    発行日: 2006/08/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は喫煙歴のある68歳男性。主訴は発熱と咳嗽。両側上肺野優位に浸潤影を認め,喀痰塗抹で抗酸菌が陽性であった。しかしPolymerasechainreaction法で菌種を同定できなかった。培養陽性で,DNA-DNAhybridization法を行ったがやはり菌種を同定できなかった。16SribosomalRNAsequencingを行い98.42%が一致してMycobacterium shimoidei感染症と診断した。rifampicin,ethambutol,clarithromycin,pyrazinamide,ciprofloxacinで自覚症状および画像所見は改善し,治療開始後3カ月で排菌も陰性化した。治療開始から4カ月目に施行した胸部CTでも改善がみられた。6カ月間の内服で治療を終了したが,以後も再発はみられていない。
  • 結核とQ熱
    渡辺 彰
    2006 年 81 巻 8 号 p. 543-549
    発行日: 2006/08/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    Q熱は,リケッチア類似のCoxiella burnetiiによる肺炎や気管支炎等の総称であるが,病像は結核症と大きく異なり,急性かつ一過性に経過する.C.bumetiiが結核菌と同様の細胞内寄生菌であるものの,世代時間が数十分単位と結核菌より極端に短いためと考えられている。欧米では市中肺炎の第4~5位を占めるが,無治療でも死亡率は1~2%と予後良好である。一方で遷延する例や予後不良な慢性型もあり,確定診断例や疑いの強い例は積極的に治療したい。血清抗体価の有意上昇で診断するが,上昇までに長期間を要する例が多いので経過を追う必要がある。偏性細胞内寄生性の本菌にβ-ラクタム薬は無効であり,テトラサイクリン薬やマクロライド薬,キノロン薬,リファンピシンなどが奏効するが,自然治癒例も多いためβ-ラクタム薬の投与で見かけ上は改善している例が多い。
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