結核
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82 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 伊藤 邦彦, 星野 斉之, 中園 智昭, 増山 英則, 杉田 博宣, 吉山 崇, 加藤 誠也
    2007 年 82 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    〔目的〕イソニアジドによる潜在性結核治療における肝障害以外の副作用を調査する。〔対象と方法〕都内2施設の外来で,2003年1月1日~2004年12月31日の2年間にINHによる潜在性結核の治療を開始した日本人の診療記録による後ろ向き研究。〔結果〕指示終了ないし自己中断779例および肝障害以外の副作用を理由とする一時中断ないし中止20例の計799例を分析対象とした。自覚症状副作用を呈したものは153例(153/799=19.1%),うち20例(201799=2.5%)が副作用により一時中断(12例)ないし中止(8例)していた。副作用は20歳以下と21歳以上で9.2%vs.232%,男性と女性で16.6%vs.22.1%でいずれも後者に有意に多かった(P<00.5)。症状別では消化器症状(5.9%)>易疲労感ないし倦怠感(4。6%)>中枢神経症状(4.5%)>皮疹(2.6%)>尋常性痙瘡(2.5%)=アルコール不耐症様症状(2.5%)>末梢神経障害(0.4%)>四肢関節痛(0.3%)の順で多かった。一時中断ないし中止を要するものは皮疹(1.3%)>消化器症状(1.1%)>中枢神経症状(0,6%)>尋常性痙瘡(0.1%)の順で多かった。症状はいずれも軽度で入院例はなかった。〔考察と結論〕日本人においては,INHによる潜在性結核治療における肝障害以外の副作用は稀ではないが,ほとんどの場合は軽度であり,潜在性結核治療を大きく阻害するものではない。
  • 藤野 通宏, 岸 不盡彌, 秋山 也寸史, 小笠原 英紀, 松本 英伸
    2007 年 82 巻 1 号 p. 11-17
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    〔目的〕液体培地の培養途中経過から小川培地の培養最終結果を早期に予測し,それを利用して排菌陽性肺結核患者の入院期間を短縮できるかを明らかにする。〔対象と方法〕2001年9月から2006年3月までの全肺結核患者の喀痰3952検体の,液体培地と小川培地の培養途中経過を1週ごとに比較し液体培地の途中経過と小川培地の最終結果に関連があるかを検討した。その結果をもとに新たな退院基準を作成し,結核患者43例を新旧の退院基準に分けて入院期間を比較した。〔結果〕液体培地で最初の2週間培養陰性であった検体の小川培地8週間培養の結果は約99%で1+以下であり,さらにその2週後の検体では約80%が陰性で約20%は1+以下であった。新退院基準に「液体培地培養開始後2週目まで培養陰性」を用いると旧基準の場合と比べ入院期閥中央値が121日から71日に短縮された。〔考察〕結核菌の培養結果の判定に小川培地で8週,液体培地でも6週を要することは結核患者の入院長期化の一因であった。今回われわれは液体培地の途中経過によって小川培地の最終結果を早期に推定できること,および,これを利用して入院期間を短縮できることを示した。
  • 高鳥毛 敏雄, 逢坂 隆子, 山本 繁, 西森 琢, 藤川 健弥, 黒田 研二, 磯 博康
    2007 年 82 巻 1 号 p. 19-25
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    〔目的〕ホームレス者の結核の実態とその対策方策を明らかにすることを目的とした。〔対象と方法〕平成15年から17年までの3年間ホームレス者を対象に公的就労事業にあわせて結核検診を実施した。各年の結核検診の受診者数は1,309人,1,545人,1,546人であった。〔結果〕各年の結核有所見者割合は約30%,要治療者割合は約2%とほぼ同様の状況であった。平成17年の要治療者30人中の過表に受検歴のあった者20人について胸部所見を調査したところすでに胸部結核有所見であった者が13人(65%)と高率であった。平成16年と平成17年両年連続受検者857人の分析では,胸部所見IV型の者20人の中から3人が発症,無所見の者597人からは8人が発症していた。つまり,IV型の者は無所見者に比べて11.2倍発症率が高かった。〔考察と結論〕ホームレス者は結核有所見者の割合が高いこと,有所見者からの発病率が高いこと,有症状受診が困難な者が多いことなどから,ホームレス者の結核検診実施にあたっては胸部所見が安定型の者に対してもQFTを活用するなど,何らかの治療基準を定めて対応することが必要と考えられた。
  • 谷口 浩和, 泉 三郎
    2007 年 82 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は,27歳の男性で,発熱と湿性咳徽を虫訴に近医を受診して,胸部X線写輿にで左肺門部に腫瘤影を指摘された。検査の結果,肺結核と診断され,INH,RFP,EB,PZAにて治療を開始された。血液中のリンパ球が少ないためHIV感染を疑われ,HIV.1抗体(Western-blot法)を測定した結果,陽性であり,後天性免疫不全症候群と診断された。HIV感染症の治療として,ジドブジンとラミブジン・硫酸アパカビルを開始した。肺結核の治療を開始した後は,すみやかに解熱が認められたが,抗HIV薬の投与を開始して10日後から,41℃を超える発熱が出現し,胸部X線写真所見も増悪を示した。免疫再構築症候群と診断し,プレドニゾロン30mg/日を投与した結果,徐々に解熱し,臨床症状および胸部X線写真所見も改善した。
  • 和田 雅子, 水谷 清二, 中島 由槻, 伊藤 邦彦, 御手洗 聡, 星野 斉之, 奥村 昌夫, 吉山 崇, 尾形 英雄
    2007 年 82 巻 1 号 p. 33-37
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    結核診断3年後に転入院した30歳男性の多剤耐性結核。入院時すべての一次抗結核薬,二次抗結核薬に耐性であった。入院2カ月後持続排菌と空洞陰影の悪化のため有効薬剤がないまま右上葉切除術(1998年6月)を施行したが,術後気管支撰となり,1カ月後に膿胸腔開窓術を行った。術後3カ月目から培養陰性となったが,術後1年5カ月目に培養陽性となり,左中肺野に透亮像出現し塗抹培養陽性となり,以後持続排菌となった。その後IFN-γの吸入療法などを試みたが効果なく,2001年3月よリサイアセタゾン(Tb-1)を加えた治療に変更した。4カ月目には喀痰培養陰性となり,左中肺野の透亮像も消失し,菌陰性化2年後に治療終了し,3年後も再排菌はなく治癒した症例を報告する。他に有効薬がなく,Tb-1使用後に菌陰性化したことからTb-1が有効だったと判断した。Tb-1は第二次世界大戦中にドイツで開発された薬剤である。日本では1952年に結核の医療基準に採用されたが,副作用のため広く普及しないうちに製造されなくなり,1986年の医療基準からは削除されている。有効な治療薬のない多剤耐性結核の治療に試みる価値はあると思われた。
  • 2007 年 82 巻 1 号 p. 39-66
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
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