抗酸菌培養検査のため同時に前処理した7検体のうち,結核菌液体培養陽性となった5検体についてRFLP分析を行ったところ,4検体でパターンが一致したことから検査室内Cross-contaminationが判明した。汚染源(Source)の喀痰検体の症例は治療開始前の肺結核であったが,偽陽性3検体の臨床診断は治療開始間もない活動性肺結核,非結核性肺炎および肺結核治療後であり,後2者が偽陽性判明のきっかけとなった。処理順序,塗抹菌量,症例の以前の検体のRFLPパターンとの比較から最初に処理された検体をSourceと判断した。検査室内Cross-contaminationの原因として,検体処理段階での喀痰溶解液,NALC-NaOH液,緩衝液分注の際の混入など人為的要因が強く考えられた。検査室内Cross-contaminationによる偽陽性は,液体培地でようやく陽性となる程度のきわめて少量の菌量で生じることが報告されている。偽陽性から不必要な治療や誤った治療変更へとつながる可能性があり,偽陽性が示唆される場合,臨床診断との照合はもちろんのこと,検体処理過程中に起きえた可能性を振り返って検討できるよう一括連続処理した検体やその処理順序を記録保存しておくべきであり,さらにはRFLP分析等で同一菌株かどうかの検討ができるよう,ある一定期間,陽性検体を保存しておくべきである。
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