結核
Online ISSN : 1884-2410
Print ISSN : 0022-9776
ISSN-L : 0022-9776
82 巻, 5 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 御手洗 聡, 小林 郁夫, 阿部 千代治, 和田 雅子, 鈴木 克洋, 高嶋 哲也, 川辺 芳子, 町田 和子, 田野 正夫, 瀧川 修一, ...
    2007 年 82 巻 5 号 p. 449-454
    発行日: 2007/05/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    〔目的〕INHの薬剤感受性検査について,BACTECMGIT960結核菌薬剤感受性検査用ミジットシリーズ(MGITAST)の精度を評価した。〔方法〕2002年に実施された入院時薬剤感受性調査株を使用し,小川標準法とMGITASTでINHの感受性検査を行った。結果は小川標準法を基準とし,感度,特異度,一致率,κ 指数にて評価した。また,不一致例の臨床経過も検討した。〔結果〕最終的に1,109株を検討した。小川標準法に対するMGITASTのINH感度は100%,特異度は97.1%となり,一致率は97.3%,κ 指数は0,798であった。不一致(MGITAST耐性・小川感受性)を示した30株(2.7%)について,予後の明らかな11例で再発は認めなかった。初回治療例のINH耐性頻度はMGITASTで5.3%,小川標準法で2.7%であった。〔考察〕MGITASTによるINH感受性検査は,感度,特異度,一致率のすべてで95%を超えており,小川標準法に照らして十分な精度を有していた。しかし,MGITASTによるINH耐性頻度は小川標準法に比べて有意に高くなり,さらなる検討が必要である。
  • 中田 信昭, 祷 史明, 中村 夫左央, 針原 重義, 平山 幸雄, 鈴木 陽, 下内 昭, 高鳥毛 敏雄
    2007 年 82 巻 5 号 p. 455-458
    発行日: 2007/05/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    〔目的〕大阪社会医療センターは結核高罹患地域であるあいりん地域に位置し,日雇い労働者や野宿生活者を主な対象とする無料低額診療施設である。地域にある当院の外来受診者について結核検診を行い,結核有病状況を明らかにし,地域における役割を検討することを目的とした。〔対象と方法〕平成17年3月31日から18年6月15日に整形外科単科外来初診患者1,673人中検診同意者(検診受検群)538人(男性523人,女性15人)について胸部エックス線検査を行った。また同時期の内科受診者2,000人(内科受診群)を対照として分析した。〔結果〕検診受検群については要医療率2.4%(13人)であった。一方,内科受診群2,000人については要医療率4.3%(85人)であった。〔結論〕検診受検群の結核患者発見率2.4%は,平成16年度のあいりん地域での結核検診における患者発見率1.1~1 .8%とほぼ同水準,対照群のそれは約2倍高率であった。これらの結果から,結核蔓延地域にある当院には,受診者に対し結核検診をルーチン業務とするとともに,発見患者に対する精密検査および外来診療を行えるよう基盤整備を行い,行政,専門機関の支援を得て,この地域の結核対策に取り組んでいく必要があると考えられた。
  • 築島 恵理, 三觜 雄, 矢野 公一, 高瀬 愛子, 鎌田 有珠, 網島 優, 秋山 也寸史, 藤野 通宏, 飛世 克之, 岸 不盡彌
    2007 年 82 巻 5 号 p. 459-466
    発行日: 2007/05/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    〔目的〕分子疫学的手法により地域の結核流行の特徴を明らかにする。〔対象〕1998年11月から2003年12月までの登録患者で,結核菌培養陽性,研究協力に同意が得られた男性249人,女性96人。〔方法〕標準的なRFLP分析により類似度90%以上の者をクラスターと定義し,患者特性の関連を分析した。〔結果〕345株中207株(60%)がクラスターを形成し,31人(15%)で疫学的関連を認めた。多変量解析により,男性で年齢と感染危険度がクラスターと有意に関連し,調整オッズ比(95%信頼区間:CI)は,0~29歳と比較して,30~59歳0.17(0.03~0.79),60歳以上0.15(0.03~0.69),その他と比較して最重要2.35(1.17~4.70)であった。女性では,結核既往と糖尿病が最終モデルに残り,結核既往0.52(0.22~1.22),糖尿病0.33(0.06~1.85)であった。感染危険度とクラスター形成との関連は,男性の結核既往者で特に高く,最重要4.53(1.16~17.68)であった。〔考察〕対象地域内の感染に対して男性結核既往者の内因性発病が関与している可能性が示唆された。
  • 重藤 えり子
    2007 年 82 巻 5 号 p. 467-473
    発行日: 2007/05/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    〔目的〕結核の化学療法時の薬剤性肝障害のうち結核治療中断を必要とし,生命に危険を伴う重症例の発生状況を知る。〔対象・方法〕血清ASTまたはALTが1,000IU/l以上,総ビリルビン値が2mg/dl以上となった例の経験数,症例の背景・経過について,結核治療に当たる主要な施設に郵送でアンケート調査を行った。〔結果・考察〕1994年から2003年の70例が報告され,うち33例について背景,経過を検討できた。発生頻度は0.1~0.5%,死亡は0.002~0.01%と推定された。33例中,HB抗原陽性1,HCV陽性肝硬変1,その他の肝疾患2,その他の合併症あり17であり,死亡8例中7例はこれらいずれかをもっていた。肝障害発生時期は32例中28例が2カ月以内であり,大半が肝細胞障害型と考えられた。死亡8例中6例は発見時に総ビリルビン値が5mg/dl以上であった。〔結論〕結核化学療法時の重症薬剤性肝障害は10万対100~500の頻度で発生していると推定された。発症は治療開始2カ月以内に集中し,合併症があると重症化しやすい。肝細胞障害型が大半であり血清ビリルビン値上昇は重症化の兆候である。
  • 川崎 剛, 佐々木 結花, 篠崎 理, 別宮 玲, 橋本 友博, 八木 毅典, 山岸 文雄
    2007 年 82 巻 5 号 p. 475-479
    発行日: 2007/05/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    結核は全身のあらゆる部位に病変をきたす感染症であるが,胸鎖関節に発症する結核はまれである。右胸鎖関節部の腫脹を主訴に来院し,診断および治療に苦慮した胸鎖関節結核の1例を経験したので報告する。症例は70歳女性で,肺結核の既往があり,平成18年2月,右胸鎖関節部腫瘤を自覚し近医を受診した。胸部単純CT写真にて同部位に腐骨をともなう内部がlow densityの腫瘤を認めた。前医および当院で腫瘤の穿刺吸引検査を繰り返し施行したが,確定診断を得られず,臨床経過および検査所見から胸鎖関節結核と診断した。3カ月間,抗結核薬の内服を継続したが病変の改善を認めず,診断および治療目的に病巣掻爬術を施行した。採取した軟部組織標本に抗酸菌を認め,PCR-TBが陽性であったことから,胸鎖関節結核と確定診断した。開放創のまま化学治療を継続したが,病変の増悪はみられていない。結核の既往があり,関節炎が生じている場合には,野発部位でなくても,結核も念頭に診察する必要があり,骨関節結核と診断後,一定期間の化学療法によっても病変の改善傾向がない場合は,確定診断および治療目的の病巣掻爬術を考慮する必要があると考えられた。
  • 加藤 栄志, 山田 典子, 杉浦 孝彦
    2007 年 82 巻 5 号 p. 481-485
    発行日: 2007/05/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は30歳男性,2005年10月初旬より微熱を自覚し時に左胸痛を認めたが放置していた。同月の職場の健康診断にて胸部エックス線翼常を指摘され当院を受診した。胸部エックス線では両側の胸水を認め,胸部CTを施行したところ右胸水は被包化されていた、血液検査では好酸球増多をともなう白血球の増加を認めた。胸水検査では両側とも浸出性胸水であり,ADAの上昇および細胞分画において好酸球の増加を認めた。また右胸水では結核菌MTDが陽性であった。本症例は悪性疾患や膠原病,寄生虫感染症などを疑う所見を認めなかったため,好酸球増多をともなう結核性胸膜炎としてINH,RFP,EB,PZAの4剤にて治療を開始したところ,胸水の減少,炎症反応の改善とともに血液中好酸球も減少していった。好酸球性胸水を認める主な原因としては悪性腫瘍,膠原病,肺吸虫症,薬剤性胸膜炎,アスベストーシス,気胸随伴性胸水や胸部外傷にともなう胸水などがあげられるが結核性胸膜炎の報告は少ない。本症例は血液中好酸球増多を合併しておりきわめて稀と考える。
feedback
Top