〔目的〕肺非結核性抗酸菌症(PNTM)の診断における気管支鏡検査の有用性について,後ろ向き検討を行った。〔対象と方法〕1995年~2006年の当院入院PNTM909例中,喀痰塗抹陰性(100例)または喀痰採取不能(7例)のため気管支鏡検査が行われ,最終的にPNTMと診断された107例(12%)について,気管支鏡検体の塗抹,培養,PCR,生検の結果を臨床像,X線所見や喀痰検査の結果と対比した。〔結果〕107例中92例は肺MAC症で,この92例における気管支鏡検体と喀痰検体の陽性率の比較では培養で100%(92/92例)vs50%(45/90例),PCRで87%(72/83例)vs27%(22/82例)と,気管支鏡検体が有意に高く(共にp<0.0001),気管支鏡検体の塗抹陽性率は66%(61/92例),生検陽性率も63%(36/57例)に達した。他のPNTMでも概ね同様の結果であった。陽性率と肺MAC症のX線所見との間には関連がなかった。検査直後の喀痰検査も含め,気管支鏡検査を施行したことで肺MAC症と診断できた症例は74%(68/92例),生検陽性かつ気管支鏡検体のPCR陽性より肺MAC症診断の予測ができた症例は47%(17/36例)であった。〔結論〕気管支鏡検査で各種検体を採取することはPNTM/肺MAC症を早く確実に診断するために有用である。
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