結核
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83 巻, 7 号
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  • 臨床分離株を用いたDDH法との比較検討
    長野 誠, 市村 禎宏, 伊藤 伸子, 富井 貴之, 鹿住 祐子, 武井 勝明, 阿部 千代治, 菅原 勇
    2008 年 83 巻 7 号 p. 487-496
    発行日: 2008/07/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    〔目的〕われわれは,16SrRNA遺伝子あるいは16S-23SrRNA遺伝子internaltranscribedspacer(ITS-1)領域の菌種特異的塩基配列にプロ一ブを設定することにより23菌種の抗酸菌を同定できるInvader法を開発した。今回,多数の臨床分離株を用いInvader法とDNA-DNAhybridization(DDH)法の同定結果を比較検討した。〔方法〕2005年11月~12月の間にDDH法による菌種同定を受託した小川培地培養菌636株を評価に用いた。Invader法では13種類のプローブセットを用い,高温蛍光マイクロプレートリーダーで蛍光を計測することにより菌種を同定した。DDH法,アンプリコアPCR法,アキュプローブ法による測定はキットの添付文書に従った。同定不一致株については16SrRNA遺伝子の塩基配列を解析し菌種を決定した。〔結果〕今回調べた636株中615株(96.7%)はInvader法で同定可能であった。DDH法で同定対象になっていないM.lentiflavumが14株,M.parascrofulaceumが3株,M.intermediumが1株Invader法で同定された。一方,DDH法では,1回目の測定で636株中511株(80.3%),2回測定を繰り返すことにより580株(91.2%)の同定が可能であった。lnvader法で複数菌種陽性となった8株を除いた628株のうち551株(87.7%)の結果はlnvader法とDDH法で一致した。両法の結果の不一致例は,主にM.gordonae,M.avium,M.lentiflavumあるいはM.intracellulareで認められた。同定不一致株について,16SrRNA遺伝子のシークエンス解析などによりInvader法の結果が正しいことを確認した。〔結語〕臨床上重要な23菌種の抗酸菌の同定を目的としたInvader法により,DDH法に比べてより正確に抗酸菌種を分類および同定できることがわかった。また,臨床分離株のおよそ97%がこの方法で同定可能であった。
  • 滝 久司, 小川 賢二, 村上 達也, 二改 俊章
    2008 年 83 巻 7 号 p. 497-501
    発行日: 2008/07/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    〔目的〕Pyrazinamide(PZA)は肺結核治療の短期強化療法のなかで初期2カ月間に投与される抗結核薬である。抗結核薬の副作用はさまざまであるが,このうちPZAが原因と考えられる高尿酸血症に注目し,その患者背景と尿酸値との関係,さらにPZA投与による尿酸値の変動,また高尿酸血症出現時の尿酸コントロール薬使用および痛風・関節痛症状の有無など多施設共同によるレトロスペクティブな疫学調査を実施した。〔方法〕2006年1月から2006年12月までの期間に肺結核として入院し,短期強化療法にPZAを投与した国立病院機構4施設226例を対象に検討を行った。〔結果と考察〕男172例,女54例,平均年齢59.5歳。平均BMI19.8kg/m2。PZA投与前の血清尿酸値は平均4.73±1.78mg/dl,PZA投与後の血清尿酸最高値の平均は10,63±2.67mg/dlとなり両者にはp<0.0001と統計学的有意差が認められた。またPZA投与による8mg/dl以上の高尿酸血症は845%に見られたが関節痛は4.42%の出現であった。さらに投与中断または中止例は51例(22.57%)に見られたが,その理由はIsoniazid(INH),Rifampicin(RFP)が原因として起こる可能性が高い肝機能障害と発疹であり,尿酸値上昇によるPZA中断例は見られなかった。また,高尿酸血症に対する尿酸コントロール薬の使用例は21例(9.29%)であった。〔結論〕短期強化療法においてPZAの投与は重要であり,その副作用として特有な高尿酸血症は出現しても経過観察は可能であり投与中断には至らないことが分かった。
  • 渡瀬 博俊, 小池 梨花, 井口 ちよ
    2008 年 83 巻 7 号 p. 503-506
    発行日: 2008/07/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    〔目的〕1950年代のBCG未接種の乳幼児のツベルクリン検査の成績から,東京都における当時の結核蔓延状況の推定を試みた。〔方法〕1954年に行われた東京都江東区城東地域のBCG未接種の乳幼児(月齢5カ月から24カ月)728名に対するツベルクリン検査の結果に基づき,乳幼児の結核既感染率を推定した。〔結果〕0歳児コホート448名(平均年齢0.69歳),1歳児コホート280名(平均年齢1.44歳)の推定結核既感染率は,ツベルクリン検査の感度,特異度を95%,98%とした場合において,それぞれ2%(95%C.I.0.4~4.3%),16%(同11.9~21.5%)ほどと推定された。〔結論〕当時は全国的に結核が広く蔓延していた時期であり,乳幼児に対する感染危険率も高かったと推定され,現在と異なり,生後の早い段階から結核既感染率は急速に増加したと考えられた。また同時期の東京都区部では,全国的な結核感染状況と比較して,感染リスクが高く推移した可能性が考えられた。
  • 井上 武夫, 子安 春樹, 服部 悟
    2008 年 83 巻 7 号 p. 507-512
    発行日: 2008/07/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    〔目的〕菌陽性患者を初発患者とするニ次患者の実態を知る。〔対象と方法〕1989年から2003年までの15年間に,愛知県7保健所4支所で新登録された10,088名の結核患者登録票を再点検し,感染経路を同じくする2名以上の発病者からなるクラスタ一を選別し,菌陽性患者を初発患者とする二次患者の新登録患者に占める割合をクラスター所属二次患者率(CSR),菌陽性患者の中に占める菌陽性の初発患者+二次患者の割合をクラスター率とした。〔結果〕二次患者は417名,全体のCSRは4.1%であり,塗抹陽性3,332名の3.5%,他陽性2,139名の3.8%,菌陰性3,158名の5.4%,肺外結核1,459名の3.4%であり,菌陰性のCSRは他の3群より高かった(p<0.01~p<0.001)。年齢階級別CSRは,10歳未満425%,10代30.3%,20代11.2%,30代7.4%,40代4.6%,50代3.2%,60代2.4%,70代1.8%,80代1.3%,90代0.6%であり,10代と20代(p<0.001),20代と30代(p<0.05),30代と40代(p<0.05)との問に有意差を認めた。男性のCSRは2.9%で女性の6.3%と比べ有意に低かった(p<0.001)。クラスター率は8.8%で,10代と20代(37.1%対21.1%,p<0.001)および40代と50代(16.4%対8.5%,p<0.001)の間に有意差を認めた。〔考察〕CSRは登録10年前までに菌陽性患者と濃厚に接触していることが確認された患者の割合を示すものであり,見知らぬ患者からの感染および感染後長期間経てからの発病が少ないほどCSRは高くなる。〔結論〕CSRは年齢,性別,登録時菌所見と密接に関係しており,若年者,女性,菌陰性肺結核で高い。クラスター率は年齢が若いほど高い。
  • 若林 規良, 矢野 修一, 小林 賀奈子, 徳田 佳之, 池田 敏和, 石川 成範, 竹山 博泰
    2008 年 83 巻 7 号 p. 513-517
    発行日: 2008/07/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は41歳女性。肺結核に対して1995年1月から7月にかけて,INH,RFP,EBの3剤,7月から10月にINH単独による治療歴あり。その後,肺結核再燃あり2004年7月から2005年1月にかけて,INH,RFP,EB,PZAの4剤にて治療を受けていた。2006年12月頃より湿性咳漱あり,2007年1月6日より高熱が持続するため近医受診,右上葉の無気肺を認め,喀痰抗酸菌塗抹G2が判明し当院入院となった。無気肺の原因は切除標本の病理所見より,気管支壁に乾酪化を伴った肉芽組織が進展したことによるものと判明した。3回施行した液体培地および固形培地における喀痰培養検査のうち初回検体の液体培養のみ6週で結核菌陽性となり,薬剤感受性検査で多剤耐性結核が判明した。感受性結果よりKM,LVFX,PZA,PASによる治療を開始し,現在は塗抹陰性を維持できている。培養陰性のため感受性不明であったが,2度の結核治療完遂後に再燃を認め,多剤耐性結核が判明した症例を経験したので報告する。
  • 川崎 剛, 佐々木 結花, 圃 理, 別宮 玲, 橋本 友博, 玉置 正勝, 山岸 文雄
    2008 年 83 巻 7 号 p. 519-524
    発行日: 2008/07/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は26歳男性。持続する発熱と腹部膨満感のため,近医へ入院,喀疾,腹水の抗酸菌培養およびPCR-TB陽性,胸腹水ADAが高値と判明し,粟粒結核,結核性胸腹膜炎と診断され,当科へ転院した。INH,RFP,EB,PZAの投与を開始した後,直接型優位の高ビリルビン血症を認めたため,RFPを一時中止した。肝障害の改善後,RFP投与を微量で再開したところ,腎障害が出現した。薬剤性腎障害を考慮してRFPを含め疑われる薬剤を中止したが,腎障害は遷延した。腎生検により間質性腎炎と診断し,PSL20mg/日を開始後,腎機能がすみやかに改善した。臨床経過,検査結果からRFPの再投与が間質性腎炎の原因と考えられ,ステロイド治療が奏効した。
  • 2008 年 83 巻 7 号 p. 525-541
    発行日: 2008/07/15
    公開日: 2011/05/24
    ジャーナル フリー
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