結核
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88 巻, 4 号
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原著
  • ─JATA(12)-VNTR型別に基づくクラスター形成とその傾向─
    和田 崇之, 田丸 亜貴, 岩本 朋忠, 有川 健太郎, 中西 典子, 小向 潤, 松本 健二, 長谷 篤
    2013 年 88 巻 4 号 p. 393-398
    発行日: 2013年
    公開日: 2016/09/16
    ジャーナル フリー

    〔目的〕JATA(12)-VNTR法は結核菌における遺伝型別法の国内標準法として用いられつつある。本研究では,結核分子疫学サーベイランスを牽引するための基盤構築として,同手法によって定義される各遺伝型の出現頻度を把握することを目的とした。〔方法〕2007年から2008年に大阪市,大阪府,および神戸市において新規登録された結核患者から分離培養された結核菌1,778株について,各地方衛生研究所にてJATA(12)-VNTR型別解析を実施し,その結果を集約してクラスター分析を行った。〔結果および考察〕同型別によって見出されたクラスター形成株は1,086株(61.1%)となり,3地域すべてから分離された菌株によって構成されたクラスターは38組であった。これらのクラスター株は実際に広域的に伝搬したか,JATA(12)-VNTR型別の低分解能に起因する偽クラスターであったと考えられる。クラスターを形成したJATA(12)-VNTR型についてID化を図ることにより,同型別におけるデータ解釈における注意点が明確になると同時に,特定株の分離検出や未知のアウトブレイクの発見を容易に行えるサーベイランス体制が構築できるだろう。

  • 田丸 亜貴, 和田 崇之, 岩本 朋忠, 長谷 篤
    2013 年 88 巻 4 号 p. 399-403
    発行日: 2013年
    公開日: 2016/09/16
    ジャーナル フリー

    〔目的〕結核菌遺伝子型別法として日本国内で標準法となりつつあるJATA(12)-VNTR型別の,結核患者複数発生事例における菌株異同調査法としての有用性を検討した。〔方法〕1999年4月から2011年12月に菌株異同調査依頼のあった結核患者複数発生事例のうち270事例643株を対象とした。菌株の異同の基準には詳細な型別能を有する26 loci-VNTRを用いた。〔結果と考察〕非集団感染64事例でJATA(12)-VNTR型が一致したものはみられなかった。集団感染206事例のうち185事例(89.8%)でJATA(12)-VNTR型が一致した。JATA(12)-VNTR型別で菌株の異同の判別が不能だったのは,12領域中1領域だけでの挿入数が異なった事例で,このような事例は集団感染事例の10.2%,集団感染ではなかった事例の1.6%みられた。全体として,結核患者複数発生270事例中248事例(91.9%)の菌株異同はJATA(12)-VNTR型別だけで正しく判定され,2領域以上の相違に起因する判定の齟齬は生じなかった。以上のことから,1領域違いの事例や地域的に多発する遺伝子型に注意して用いれば,JATA(12)-VNTR型別は結核患者複数発生事例の異同調査に十分有用であると示された。

  • 奥村 昌夫, 佐藤 厚子, 吉山 崇, 野内 英樹, 伊 麗娜, 工藤 翔二, 尾形 英雄
    2013 年 88 巻 4 号 p. 405-409
    発行日: 2013年
    公開日: 2016/09/16
    ジャーナル フリー

    〔目的・方法〕結核病棟を有する当院において,職員に対してクォンティフェロン(QFT)検査による検診を行った。〔結果〕延べ733名を対象に58名が陽性で,陽性率は7.9%であった。職場別では結核病棟勤務従事者の陽性率が高く,職種別では特に結核病棟に勤務する医師,看護師,また放射線技師において陽性率が高かった。1.6%が陰性から陽転化し,陽性のまま推移したのは5.2%にみられた。〔結論〕結核病棟従事者に陽性率が高く,今後も結核感染対策はひきつづき強化していく必要がある。

  • ─第2報 感染曝露後のQFT応答の推移─
    風間 晴子, 濁川 博子, 柏 真知子, 御代川 滋子, 田中 理子, 市岡 正彦, 原田 登之, 森 亨
    2013 年 88 巻 4 号 p. 411-416
    発行日: 2013年
    公開日: 2016/09/16
    ジャーナル フリー

    〔目的・対象〕比較的曝露期間が短い院内結核患者発生に伴う医療職員の接触者健診で,曝露直後から約1年間にわたりクォンティフェロン(2G)応答の推移を観察した。濃厚接触者59人から3人の活動性結核発病例を含む16人のQFT陽転者,7人の判定保留者がみられた。〔結果〕陽転の67%は接触後2カ月以内に,残りは9カ月以内に発生した。2カ月を超えてから陽転した例では一般に応答値は低かった。陽転者には潜在性結核感染症治療(3人には活動性結核治療)が行われたが,治療中・治療終了時までに80%が陰性・判定保留となり,また応答値も有意に低下した。〔考察〕「判定保留者」にも潜在性結核感染症の治療が行われ,その応答値の経過をみたが,その経過は終始応答値が低値にとどまった陰性者とは明らかに異なっており,一部に既感染者を含む例外的な存在であることを示していた。

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