結核
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89 巻, 7 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
原著
  • ─ 高齢者施設の結核集団感染事例の分析 ─
    柳原 博樹
    2014 年 89 巻 7 号 p. 631-636
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/09/16
    ジャーナル フリー

    〔目的〕介護職の結核感染リスクとその要因を示すとともに,高齢者施設における結核対策の課題を検討する。〔方法〕80歳女性の肺結核患者〔bI3,喀痰塗抹(3+),発熱期間1.5カ月〕を初発患者(患者)とした集団感染事例(肺結核2人,潜在性結核感染症34人)で,患者にサービスを行った介護職10人と看護職7人のクォンティフェロン®TBゴールド(QFT-3G)の検査結果と患者との接触状況を比較検討した。〔結果〕最終接触から3週と11~12週に実施したQFT-3G検査で,陽性は介護職8人(肺結核1人を含む)のみで,判定保留は介護職1人,看護職2人であった。患者との1日当たりの接触時間は介護職では約50分で主にオムツ交換,食事介助,体位交換,入浴,清拭,看護職では約20分でバイタル測定,水分補給,与薬,クーリング交換のいずれかを実施していた。看護職は患者の発熱後から,介護職は発熱前の期間から接触し,患者の体温,体重減少,食欲不振の観察と記録が継続されていなかった。〔結論〕介護サービスを行う際の患者との密着性と接触時間の長さが介護職の感染リスクを高めたと考えられた。リスク軽減に向け早期発見・早期対応の感染予防体制を整備する重要性を示した。

  • 榎本 泰典, 萩原 恵里, 小松 茂, 西平 隆一, 馬場 智尚, 小倉 高志
    2014 年 89 巻 7 号 p. 637-642
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/09/16
    ジャーナル フリー

    〔目的〕肺結核症の病勢評価に有用な血液バイオマーカーを明らかにする。〔方法〕2013年2月から4月までに肺結核症の診断で新規入院となった計27例を対象に前向き検討を行った。治療前および細菌学的改善確認日の2点で,サーファクタントプロテイン-A, -D(SP-A, -D),KL-6,C反応性蛋白(CRP),赤血球沈降速度(ESR)の5項目を検査し,治療前値と疾患重症度の対比および治療前後のデータ推移を検討した。〔結果〕男性19例,女性8例であった。各マーカーの治療前値は細菌学的,放射線学的重症例で概ね高値となる傾向を示した。治療開始中央値56日後に再評価され,治療前後の各マーカー中央値はそれぞれ,SP-A(ng/mL)55.3; 39.2,SP-D(ng/mL)71.5; 38.5,KL-6(U/mL)365; 374,CRP(mg/dL)3.8; 0.4,ESR(mm/hr)69; 46と変化した。治療によりSP-A,SP-D,CRPの3項目は統計学的に有意に低下した。〔結論〕SP-A,SP-D,CRPは疾患重症度を反映する傾向があり,かつ経時的評価にも有用なバイオマーカーである可能性が示唆された。

  • 結核療法研究協議会内科会
    2014 年 89 巻 7 号 p. 643-647
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/09/16
    ジャーナル フリー

    〔目的〕抗菌薬であるが結核にも有効なレボフロキサシン(LVFX)については,長期使用に伴う有害事象の頻度についての前向き研究の報告はない。LVFXの結核薬として長期使用の可否が課題となっているため,長期使用に伴う有害事象を検討する。〔方法〕結核療法研究協議会参加施設によるLVFXの長期使用例の前向き検討によって有害事象の頻度を集計・報告する。〔結果〕全91例中,LVFXと関係のある,もしくは,その可能性があると判断された有害事象は7例であった。関節痛または筋肉痛が5例を占め,これらは,LVFX開始後37日から157日で発生していた。培養陽性49例は1例の1カ月後死亡例,1例の画像改善・菌検査なし例を除き,6カ月以内に47例全例陰性化していた。〔考察と結論〕LVFXは安全に長期使用できると考えられたが,関節痛については注意が必要である。

  • 生方 智, 神宮 大輔, 矢島 剛洋, 庄司 淳, 高橋 洋
    2014 年 89 巻 7 号 p. 649-654
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/09/16
    ジャーナル フリー

    〔目的〕在宅医療患者群における新規結核発症に関して自施設管理症例を用いて検討を行い,在宅医療における結核発症状況を明らかにすること。〔対象と方法〕2003年1月から2012年12月の10年間に当院で在宅医療管理を行った症例502人(登録時の平均年齢79.5歳)を対象にして新規結核の発症率と,発症患者の背景,発見契機,診断後の経過について後ろ向きに検討を行った。発症率については統計解析手法として人年法を用い,比較対照群を宮城県全域の70歳以上の一般住民として発症率につき比較した。〔結果〕在宅医療患者群から4/502名(0.8%)が観察期間中に新規に結核を発症した。発症率は10万対298.3人であり,宮城県の一般住民(70歳以上)と比較して8.27倍(95% CI:3.06-22.3)の発症率であった。在宅医療導入から結核発症までの期間は3カ月から最長16年であり,いずれも医療機関受診時に発見されていた。〔考察と結論〕在宅医療由来の結核発症率は高齢一般人口と比較して高く,早期発見が難しい患者群である。在宅医療の推進やニーズが高まっている近年において,結核は在宅医療の現場でなお一層の留意が必要な疾患であることを認識する必要がある。

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