結核
Online ISSN : 1884-2410
Print ISSN : 0022-9776
ISSN-L : 0022-9776
89 巻, 8 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
原著
  • 細田 千晶, 萩原 恵里, 篠原 岳, 馬場 智尚, 西平 隆一, 小松 茂, 小倉 高志
    2014 年 89 巻 8 号 p. 691-695
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/09/16
    ジャーナル フリー

    〔目的〕肺癌と肺Mycobacterium avium complex(MAC)症の合併については僅かな症例数での報告が散見されるにすぎない。今回,われわれは肺MAC症と肺癌の合併症例の特徴を検討した。〔対象〕2006年から2012年の間に当院に肺MAC症で受診した症例のうち肺癌を同時期に合併した症例を対象に臨床的検討を行った。〔結果〕肺MAC症530例中,肺癌合併症例は13例(2.4%)。13例の内訳は,男性6例,女性7例,平均73歳で,喫煙者は5例であった。同時発見群6例,肺MAC症先行群7例であった。癌の組織型は腺癌9例,小細胞癌2例,その他2例で,進行期はI~III A期の症例が11例と多数を占め,そのうち小細胞癌の1例を除く10例に対し切除術が行われていた。肺MAC症と肺癌の病変は10例で同一肺葉内に存在していた。肺MAC症の病変は12例で両側に認められたが,拡がりは日本結核病学会の分類で1が9例,2が4例であった。肺MAC症に関しては治療を行ったのは7例で,そのうち2例は副作用により短期間で中止していた。6例は無治療だった。〔結論〕今回の検討では肺MAC症と肺癌の合併率は高く,肺癌・肺MAC症ともに比較的早期の症例が多かった。同一肺葉内に病変が存在する症例が多く,診断が遅れないように両者の合併に注意が必要である。

  • ─ 培養陰性による退院基準の見直しに関する提言 ─
    森野 英里子, 柳川 泰昭, 高崎 仁, 新保 卓郎, 杉山 温人, 小林 信之
    2014 年 89 巻 8 号 p. 697-702
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/09/16
    ジャーナル フリー

    〔背景〕培養検査の判定には6~8週間を要し,治療中喀痰塗抹が持続陽性となる肺結核患者は長い入院を要する。〔目的〕塗抹持続陽性患者を安全かつ効率的に隔離解除する「培養陰性化」の定義について検討する。〔対象と方法〕対象は2007年から2011年に入院した塗抹陽性肺結核患者。退院時の退院基準別に患者背景の比較を行った。培養陰性退院例は,現行の培養陰性化の定義(6週培養陰性・連続3回)とは別の定義(4週培養陰性・連続3回:4週3回,6週培養陰性・連続2回:6週2回,4週培養陰性・連続2回:4週2回)を設定した場合,培養陰性化に要する治療期間がどのように変化するか,また感染管理上の問題がないか検討した。〔結果〕対象は301例。塗抹陰性退院例が224例,培養陰性で退院した症例が77例,入院日数の中央値はそれぞれ56日,107日であった。培養陰性化を4週3回または6週2回または4週2回で定義しても,培養陰性化に要した治療期間はそれぞれ90.8%,90.8%,84.2%で6週3回の場合と同一であった。また,どの定義でも培養陰性の結果が得られた時点(検体提出後4または6週間)の喀痰は,1例(1.3%)を除き全例で6週3回を満たした。この定義変更により入院日数も入院費も大幅に減少すると試算された。〔結論〕塗抹陽性検体ならば液体培地で4週培養陰性・連続2回を確認した時点で隔離解除するのは妥当である。

  • 富田 元久, 吉田 志緒美, 露口 一成, 鈴木 克洋, 岡田 全司, 林 清二
    2014 年 89 巻 8 号 p. 703-709
    発行日: 2014年
    公開日: 2016/09/16
    ジャーナル フリー

    〔目的〕臨床分離Mycobacterium lentiflavum株を対象としたコバスTaqMan MAIにおける偽陽性反応を検証する。〔材料と方法〕コバスアンプリコアMAV,MINにてMycobacterium intracellulare陰性,コバスTaqMan MAIにて陽性と判定された臨床分離13株を用い,10倍希釈系列を用いてその検出感度を検証した。同時に16S rDNAシークエンス解析による相同性の確認を行った。〔結果〕16S rDNAの前半部分(約600 bp)の塩基配列から,対象株はすべてM.lentiflavumと同定された。これらはコバスTaqMan MAIのM.intracellulare検出用プローブにのみ陽性反応を示した。無作為に抽出した菌株とM.intracellulare標準株を希釈系列して作成した菌液において,コバスTaqMan MAIに感度の差が認められた。M.intracellulare検出用プローブ領域におけるM.intracellulareM.lentiflavumが異なる塩基は3カ所あるのみで,その高い相同性によりM.intracellulareの偽陽性が生じたと推測された。〔考察〕現在わが国にはM.lentiflavumを正確に同定できる市販キットは存在しない。臨床検体から培養されるコロニーの性状からの両者の鑑別は非常に困難である。コバスTaqMan MAIに対する偽陽性反応の影響によってM.lentiflavumが過小評価されている可能性が考えられた。〔結論〕わが国において比較的汎用されている抗酸菌核酸増幅法の1つであるコバスTaqMan MAIにおいてM.lentiflavumの偽陽性反応が臨床分離株に認められた。M.lentiflavumの遺伝子的特徴を踏まえたうえでの,抗酸菌同定検査法の一層の改良・開発が今後望まれる。

feedback
Top