結核
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90 巻, 3 号
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原著
  • 津田 侑子, 松本 健二, 小向 潤, 笠井 幸, 蕨野 由佳里, 廣田 理, 甲田 伸一, 下内 昭
    2015 年 90 巻 3 号 p. 387-393
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/09/16
    ジャーナル フリー

    〔目的〕外国人肺結核の治療成績を改善するため,治療成績と背景因子の分析評価を行った。〔方法〕2006~2011年に大阪市の新登録外国人肺結核患者159例を対象とした。治療成功群と脱落中断群の背景,および国内治療群と国外転出群の背景についてそれぞれ比較検討した。治療成績について,20~30歳代を抽出し,2010~2011年新登録の日本人肺結核患者と比較検討した。〔結果〕①治療成績:治癒53例(33.3%),治療完了55例(34.6%),治療失敗0例(0.0%),脱落中断14例(8.8%),国外転出17例(10.7%),国内転出13例(8.2%),死亡6例(3.8%),治療中1例(0.6%)であった。②治療成功群と脱落中断群の比較:脱落中断は,喀痰塗抹陽性48例では1例(2.1%)であったが,喀痰塗抹陰性69例では10例(14.5%)と,喀痰塗抹陰性例で脱落中断率が有意に高かった(P<0.05)。③国内治療群と国外転出群の比較:国外転出率は,有保険生活保護134例中12例(9.0%)であったが,無保険9例中4例(44.4%)と,無保険例で有意に高かった(P<0.01)。④外国人肺結核患者と日本人肺結核患者の治療成績の比較(20~30歳代):脱落中断率は,外国人13.6%,日本人4.0%と,外国人で有意に高かった(P<0.01)。転出率は,外国人19.1%,日本人5.3%と外国人で有意に高かった(P<0.001)。〔考察〕20~30歳代において,脱落中断,転出は外国人で有意に高かったため,背景因子を考慮した患者支援・服薬支援の充実が必要と考えられた。国外転出は最終的な治療成績の把握が困難な状況であり,治療中断の可能性を考慮し,確実な治療成功へとつなげるための対策が必要と考えられた。

  • ―人口寄与割合と優先政策に関する検討―
    河津 里沙, 石川 信克, 内村 和広
    2015 年 90 巻 3 号 p. 395-400
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/09/16
    ジャーナル フリー

    〔目的〕わが国の結核罹患率は減少傾向が続いている一方で,患者は高齢者,社会経済的弱者,結核発病の高危険因子を有する者らへの偏在化を進めている。これまでに「医学的ハイリスク者」や「高齢者」に対する課題は議論されてきたが,日本における結核のリスク集団の総合的な評価はされてこなかった。本稿では,主に文献調査を通してリスク集団の罹患率比(relative risk: RR)および人口寄与割合(population attributable fraction: PAF)を算出,比較することで,今後必要とされる調査研究等を明らかにし,介入の優先度の決定を導く指標の一つとなることを目的とした。〔方法〕HIV陽性者,糖尿病患者,関節リウマチ患者,血液透析患者,高齢者,医療従事者,ホームレス者,生活保護受給者,外国人,刑事施設被収容者,喫煙者およびアルコール過剰摂取者のRRおよびPAFを算出し,PAFが5%以上を「高PAF群」,1%以上5%未満を「中PAF群」,1%未満を「低PAF群」とし,RRと共に検討した。〔結果〕PAFが5%以上で,なおかつRRも5以上であったリスク集団は高齢者と糖尿病患者であり,これらは公衆衛生上,最も優先度が高い集団と考えられた。

  • 堀田 信之, 宮沢 直幹
    2015 年 90 巻 3 号 p. 401-405
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/09/16
    ジャーナル フリー

    〔背景〕ピラジナミド(PZA)は1950年代には40~70 mg/kg/dayという高用量で投与され,肝障害を高率に発症した。現在は20~25 mg/kg/dayの低用量が推奨されている。低用量のPZAを他の抗結核薬に加えることで薬剤性肝障害の発生率が増加するかは不明である。〔方法〕横浜市立大学附属病院の結核病棟に2008年1月から2012年9月に塗抹陽性肺結核の診断で入院し,HRZEまたはHREレジメで治療をされた20歳以上の患者を後方視的に解析した。治療開始後2カ月間の薬剤性肝障害のリスクをCoxモデルを用いて評価した。〔結果〕195人の患者(男性123人,63%/女性72人,37%),平均年齢は65±19歳,HRE 65人(33%),HRZE 130人(67%)を解析した。治療開始後2カ月以内に薬剤性肝障害を発症した患者は29人(15%)であった。PZAを含むHRZEレジメは薬剤性肝障害との関連が見られなかった(hazard ratio=0.55,P=0.263)。〔結語〕低用量(20~25 mg/kg/day)のPZAはHREレジメに加えても薬剤性肝障害を増加させない可能性がある。

  • ―MAC症との比較も含めて―
    山田 勝雄, 川澄 佑太, 杉山 燈人, 安田 あゆ子, 関 幸雄, 足立 崇, 垂水 修, 林 悠太, 中村 俊信, 中川 拓, 山田 憲 ...
    2015 年 90 巻 3 号 p. 407-413
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/09/16
    ジャーナル フリー

    〔目的〕今回6例の肺M.abscessus症に対する手術を経験した。肺M.abscessus症に対する外科治療の報告は多くない。同時期に手術を施行したMAC症例との比較検討も含めて報告する。〔対象と方法〕2012年7月から2014年6月までの2年間に6例の肺M.abscessus症に対する手術を経験した。6例全例を完全鏡視下手術で行った。手術を施行した6例の肺M.abscessus症例に対し,年齢,性別,発見動機,菌採取方法,病型,術前抗GPL-core IgA抗体価,術前化学療法,術前治療期間,手術適応,手術術式,手術時摘出組織の菌培養結果,術後入院期間,手術合併症,術後再燃再発の有無に関し検討した。これらの項目の一部に関しては,同時期に手術を施行した36例のMAC症例との比較検討を行った。〔結果〕手術に関連した大きな合併症は認めず,術死や在院死もなかった。6例のうち3例が術後1年以上を経過し化学療法を終了したが,現時点で6例とも再燃再発は認めていない。MAC症例との比較では,肺M.abscessus症例の術前治療期間の平均が5.5カ月とMAC症例より18.9カ月短く,統計学的にも有意差を認めた。〔結論と考察〕肺M.abscessus症に対する手術は安全で有効な治療手段と考える。また内科医が肺M.abscessus症に対してMAC症よりも早期に外科治療が必要と考えていることが示唆された。

  • 井澤 一隆
    2015 年 90 巻 3 号 p. 415-420
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/09/16
    ジャーナル フリー

    〔目的・対象・方法〕結核症の骨破壊の機序について免疫組織学的に検討した。結核性脊椎炎に対し手術施行した30例を対象(結核群)とし,術中検体の永久組織標本を検体とした。対照群は人工膝関節置換術施行例30例であり,術中に切除された骨を検体とした。免疫染色はRANK,RANKL,osteoprotegerin(OPG),osteocalcin(OCN)について行い,2群間を比較検討した。〔結果・考察〕結核群の組織では炎症細胞が広範に浸潤し,それに一致して間質細胞,リンパ球と骨表面の骨芽細胞にRANKL陽性細胞が多数認められた。また同部位に破骨細胞の前駆細胞と考えられるRANK染色陽性の単核細胞が認められた。対照群ではRANK,RANKLの発現は乏しかった。骨吸収抑制の機序となるOPGの発現は両群で有意差がなかった。一方,骨形成マーカーであるOCNの発現は結核群で乏しいことが観察された。以上より,結核性脊椎炎の骨組織ではRANK-RANKL系の活性化による骨破壊が発生する一方で,その抑制系の活性化と骨形成の機序が十分に働いていないと考えられ,臨床像と一致していた。

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