結核
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90 巻, 8 号
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原著
  • 勝部 乙大, 吉川 弥須子, 滝澤 秀典, 長谷 衣佐乃, 森田 弘子, 野村 由至, 小川 佳亮, 沼尾 利郎
    2015 年 90 巻 8 号 p. 607-612
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/09/16
    ジャーナル フリー

    〔背景〕肺結核治療中に喀痰から非結核性抗酸菌(Nontuberculous mycobacteria: NTM)はしばしば検出される。しかし,感染とコンタミネーション,コロナイゼーションの鑑別は困難である。〔目的〕肺結核治療中にNTMが併存した症例の臨床的特徴,病原性の有無,併存が結核診療に与える影響を検討した。〔対象と方法〕2013年1月から2013年12月の期間に当院で治療された肺結核患者59例を対象とし,経過中にNTMが1回以上培養された19例を併存群,NTMが確認されなかった40例を非併存群として臨床的特徴を後方視的に検討した。また,NTM併存群の18例に抗glycopeptidolipid(GPL)core IgA抗体の測定を行った。〔結果〕年齢,性別,基礎疾患の有無,陳旧性肺結核の有無,肺疾患の有無,画像所見,入院時の排菌量では両群に有意差は認めなかった。平均入院期間は入院中にNTMの併存を確認した群で98.8±7.9日,非併存群で58.3±3.5日と有意差を認めた。(p<0.001)。NTM併存群のうち18例で抗GPL core IgA抗体を測定したが,肺NTM症の診断基準を満たす13例を含め全例が陰性であった。〔結論〕結核治療中に併存したNTMは,コロナイゼーションやコンタミネーションである可能性が高い。しかし,入院期間延長に関連することが示唆された。

  • 河津 里沙, 内村 和広, 渡部 裕之, 神楽岡 澄, 窪田 ゆか, 榊原 麻里絵, 石川 信克
    2015 年 90 巻 8 号 p. 613-618
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/09/16
    ジャーナル フリー

    〔目的〕東京都新宿区で活動する元ホームレス結核患者の自助グループが作成した啓発用冊子「結核のしおり」の効果を検証し,生活困難者の結核の知識の把握を目的とした。〔方法〕ホームレス結核健診の受診者に対し,自己記入式アンケートによる結核に関する知識調査を行った。その後「しおり」を配布し,「しおり」配布前と同内容のアンケートを再度実施し,正解率の変化を検証した。〔結果〕有効回答者数は88人であった。結核の印象に関しては事後アンケートにて「結核は昔の病気である」「結核にかかると死んでしまう」の2項目に対して「そう思う」から「思わない」へ有意に変化した。知識に関しては主にリスクや症状に関する項目で正解得点が向上した(54.3%→70.6%,p<0.05)。一方で治療に関する項目群は事前事後アンケート共に正解率が50~60%と,他の項目群と比較して低かった。〔考察〕「しおり」は結核の知識を向上することで対象者の早期受診を促し,結核の早期発見に貢献できる可能性が示唆された。一方で治療に関する知識得点は低く,有意な向上も見られなかった。結核の治療が公費負担であることは受診行動に大きく影響すると思われることから,今後の啓発活動のなかで重点的に発信する必要があると考える。

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