顕微鏡
Online ISSN : 2434-2386
Print ISSN : 1349-0958
44 巻, 4 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
特集:STEMの生物応用
  • 青山 一弘, 宮澤 淳夫
    2009 年 44 巻 4 号 p. 240-
    発行日: 2009/12/30
    公開日: 2020/01/21
    ジャーナル フリー
  • 青山 一弘
    2009 年 44 巻 4 号 p. 241-247
    発行日: 2009/12/30
    公開日: 2020/01/21
    ジャーナル フリー

    STEMは生物試料の観察にはなじみの薄い結像法ではあるが,トモグラフィと組み合わせた場合には数々のメリットがあることが明らかになった.1)試料の厚さに対して強い.STEMでは基本的に対物レンズの色収差の影響を受けないため,これに起因する像質の悪化がない.2)傾斜時にも全視野にフォーカスが合う.試料を高傾斜した時,TEMでは試料のごく一部にしかフォーカスをあわせることができないが,STEMではフォーカスを変えながらスキャンすることにより像全体にわたりフォーカスをあわせることが可能である.3)環状暗視野検出器により,高コントラストの暗視野像が得やすい.また,そのとき結像に使う電子の散乱角を自由に選択できる.4)コントラストがリニアである.STEMでは対物レンズの球面収差の影響も受けず,またデフォーカスする必要も無いため,これらに由来するアーティフィシャルなコントラストとは無縁である.

  • 平瀬 愛, 宮澤 淳夫
    2009 年 44 巻 4 号 p. 248-251
    発行日: 2009/12/30
    公開日: 2020/01/21
    ジャーナル フリー

    生物試料の電子線トモグラフィーにおいて,走査透過型電子顕微鏡法(STEM: Scanning Transmission Electron Microscopy)は,馴染みの薄いものであった.その理由の1つとして,STEMでは収束電子を用いるため,生物試料に利用する場合には電子線損傷が最も深刻な問題になると危惧されたからである.一方,STEMを電子線トモグラフィーに応用する(STEMトモグラフィー)ことで,超高圧電子顕微鏡法を用いることなく1 µmという電子顕微鏡用試料としては非常に厚い試料の像取得が可能となり,試料の三次元構造を解明できるという利点がある.そこで,実際にSTEMトモグラフィー測定により生物試料が受ける電子線損傷を,撮影視野の中でミトコンドリアなどの分かりやすい形状のものの大きさを測定し,試料の収縮率として定量した.その結果,厚い試料を用いた場合にはSTEMトモグラフィーの方が,通常の透過型電子顕微鏡法(TEM: Transmission Electron Microscopy)を用いた電子線トモグラフィーよりも,電子線損傷が少ない事がわかった.

  • 太田 啓介, 東 龍平, 中村 桂一郎
    2009 年 44 巻 4 号 p. 252-256
    発行日: 2009/12/30
    公開日: 2020/01/21
    ジャーナル フリー

    電子線トモグラフィー法(ET法)の理論的な空間分解能は切片の厚さに比例する.しかし実際には色収差やS/N比の低下などにより,特に試料の辺縁部では理論値通りの分解能が得られない事が多い.走査透過電子顕微鏡(STEM)はET法で問題となる画像取得時の色収差や高傾斜撮影時のフォーカスずれの問題が無いこと,また,高いコントラストが得られることから,理論的分解能に近い三次元再構築像が得られる可能性がある.今回われわれはSTEM暗視野モードでラット小腸上皮厚切り切片の連続傾斜像を取得し立体再構築を行った.その結果,再構築像辺縁部においても組織内スケールとしての被覆陥凹のクラスリン格子構造や,アクチン束の六方格子配列を確認することが出来た.今回観察した試料の厚さ(200~400 nm)から予測される理論的分解能はおよそ10 nmであり,ET法にSTEMを用いることで視野全体にわたり理論的分解能に近い再構築像を得られることが明かとなった.

  • ~次世代のフリーズエッチトモグラフィの可能性に向けて~
    諸根 信弘, 青山 一弘
    2009 年 44 巻 4 号 p. 257-261
    発行日: 2009/12/30
    公開日: 2020/01/21
    ジャーナル フリー

    細胞膜の細胞質側表面を急速凍結・ディープエッチング像で観察すると,カベオラやクラスリン被覆ピット,アクチン膜骨格のネットワークによってアンジュレーションが激しいことがわかる.本特集では,このように視野全体で大きく焦点距離が異なる構造のプラチナレプリカについて,収差補正付き3コンデンサシステムを持った電子顕微鏡を利用して,従来のTEMトモグラフィと収束角を変化させたSTEMトモグラフィによる3次元再構築像を比較した.小収束角HAADF-STEMトモグラフィによる3次元再構成では,ミッシングウェッジによる計算上のアーティファクト(ゴースト)がほとんど生じないことが初めて明らかとなった.細胞膜研究の新しいツールとして期待できる.

解説
  • 西山 英利, 須賀 三雄, 小椋 俊彦, 丸山 雄介, 小泉 充, 三尾 和弘, 北村 真一, 佐藤 主税
    2009 年 44 巻 4 号 p. 262-267
    発行日: 2009/12/30
    公開日: 2020/01/21
    ジャーナル フリー

    光学そして電子顕微鏡は,細胞の生理活動の鍵となる巨大分子複合体を観察する重要なツールである.しかし,光学顕微鏡は分解能が200 nm程度と低く,電子顕微鏡は試料を真空に置く必要がある.薄膜で真空から隔離できる環境セルが開発されたが,容量はわずか数十µl程度の閉鎖系である.そこで,我々は液中での観察を開放系で行う為に,鏡筒先端を薄膜でシールして大気と真空を隔離した倒立型の大気圧走査電子顕微鏡(ASEM)を開発した.試料は薄膜上に置かれ,上部に光学顕微鏡も搭載しており,両顕微鏡での同視野観察が可能である.電子線は薄膜を透過して試料に照射され,反射電子を検出して像を得る.薄膜上の細胞は,外部操作可能で,固定・染色後にASEMで観察できる.組織ブロックも薄切せずに表面を観察できる.この顕微鏡は,10から200 nmのメゾスコピックサイズの構造観察や,がん診断,そして高分子化学にも適用できる.

  • 山本 直紀, 鈴木 喬博, 竹内 健悟
    2009 年 44 巻 4 号 p. 268-274
    発行日: 2009/12/30
    公開日: 2020/01/21
    ジャーナル フリー

    表面プラズモンは,金属表面のステップや光の波長以下の周期をもつナノ構造を介して光に変換される.透過型電子顕微鏡内の試料からの光検出を行うTEM-CL法に新たに角度分解機能を付加して,表面プラズモンによる発光の測定を行った.角度分解スペクトルから表面プラズモンの分散関係を導出し,放射角を制限することで特定の表面プラズモンモードの定在波パターンを観察することができた.この手法は,表面プラズモンが関与するさまざまな発光現象に適用でき,プラズモニクスの基盤となるナノ構造の特性を高い分解能で調べる有力な方法である.

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